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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】複合線材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 23/00 20060101AFI20241017BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20241017BHJP
   B29C 48/20 20190101ALI20241017BHJP
   B29C 48/05 20190101ALI20241017BHJP
   B29C 48/09 20190101ALI20241017BHJP
   B29C 48/49 20190101ALI20241017BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20241017BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241017BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20241017BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20241017BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241017BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B29D23/00
C08J9/04 CET
C08J9/04 CEV
C08J9/04 CFD
B29C48/20
B29C48/05
B29C48/09
B29C48/49
B29C48/92
B29C44/00 E
B29C44/24
B32B1/08 B
B32B27/00 J
B32B5/18
C08J9/04 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024077944
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2024006949
(32)【優先日】2024-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596040493
【氏名又は名称】増田ビニール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 慶太郎
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-025217(JP,Y1)
【文献】特開平09-118770(JP,A)
【文献】特開平10-318447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 23/00
C08J 9/04
B29C 48/00
B29C 44/00
B32B 1/08
B32B 5/18
B32B 27/00
F16L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の外筒体と、該外筒体の内壁に外側面の一部が当接した状態で、前記外筒体の内部に螺旋状に成形した熱可塑性樹脂製の条材とから成る可撓性部材から構成されており、
前記条材は、軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を発泡させた発泡条材であり、
両端部間における前記発泡条材は、前記外筒体内において螺旋状に少なくとも1回転以上回転しており、
前記可撓性部材は、チップ状であることを特徴とする複合線材。
【請求項2】
前記条材の外径は、前記外筒体の内径の1/3以上であることを特徴とする請求項に記載の複合線材。
【請求項3】
前記発泡条材の前記外側面の一部と前記外筒体の前記内壁とが当接している部分は、溶着によって当接した状態を維持していることを特徴とする請求項2に記載の複合線材。
【請求項4】
熱可塑性樹脂製の外筒体と、該外筒体の内壁に外側面の一部が当接した状態で、前記外筒体の内部に螺旋状に成形した熱可塑性樹脂製の条材とから成る可撓性部材から構成されており、
前記条材は、軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を発泡させた発泡条材であり、
前記外筒体の外側面の形状は、円筒形状であり、
前記外筒体及び前記発泡条材は、同一の熱可塑性エラストマーから成ることを特徴とする複合線材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂製の外筒体と、この外筒体の内部に螺旋状に成形した熱可塑性樹脂製の条材とから成る可撓性部材から構成されている複合線材の製造方法であって、
円環孔から軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を第1の押出速度で押し出して、前記外筒体を連続して成形すると同時に並行して、前記円環孔に囲まれた領域のうちの中心位置から偏心した位置に配置された細孔から、軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を前記第1の押出速度よりも大きい第2の押出速度で押し出すと共に発泡させる工程と、
前記第2の押出速度で押し出した前記熱可塑性樹脂材の側面の一部を、前記第1の押出速度で押し出されて連続して成形される前記外筒体の内壁に当接させながら前記外筒体の内部に螺旋状に配置して、前記条材を連続して成形する工程とを含むことを特徴とする複合線材の製造方法。
【請求項6】
前記第2の押出速度で押し出す前の軟化又は融解した前記熱可塑性樹脂材に、発泡剤を溶解させる工程を含み、
前記外筒体の内部に螺旋状に配置された前記条材は、発泡条材であることを特徴とする請求項に記載の複合線材の製造方法。
【請求項7】
押し出されて連続して成形された前記可撓性部材に対して、両端部間における前記発泡条材は螺旋状に少なくとも1回転以上回転している長さで、等間隔にチップ状に切断する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の複合線材の製造方法。
【請求項8】
前記発泡条材の外径は、前記外筒体の内径の1/3以上であることを特徴とする請求項又はに記載の複合線材の製造方法。
【請求項9】
前記第2の押出速度は、前記第1の押出速度の1.5~5倍であることを特徴とする請求項又はに記載の複合線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々の用途に使用可能な合成樹脂製の複合線材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯体となる組紐を有し、その組紐の外部には鞘体となる組紐を被せた柔軟性を有する繊維線状体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-301355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この繊維線状体は、様々な用途に使用可能ではあるが、長手方向における伸縮性については十分ではない。
【0005】
本発明の目的は、多様な用途に使用可能であって、伸縮性等を備えた複合線材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る複合線材は、熱可塑性樹脂製の外筒体と、該外筒体の内壁に外側面の一部が当接した状態で、前記外筒体の内部に螺旋状に成形した熱可塑性樹脂製の条材とから成る可撓性部材から構成されており、 前記条材は、軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を発泡させた発泡条材であり、両端部間における前記発泡条材は、前記外筒体内において螺旋状に少なくとも1回転以上回転しており、前記可撓性部材は、チップ状であることを特徴とする。
また、上記目的を達成するための本発明に係る複合線材は、熱可塑性樹脂製の外筒体と、該外筒体の内壁に外側面の一部が当接した状態で、前記外筒体の内部に螺旋状に成形した熱可塑性樹脂製の条材とから成る可撓性部材から構成されており、前記条材は、軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を発泡させた発泡条材であり、前記外筒体の外側面の形状は、円筒形状であり、前記外筒体及び前記発泡条材は、同一の熱可塑性エラストマーから成ることを特徴とする
【0007】
また、本発明に係る複合線材の製造方法は、円環孔から軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を第1の押出速度で押し出して、前記外筒体を連続して成形すると同時に並行して、前記円環孔に囲まれた領域のうちの中心位置から偏心した位置に配置された細孔から、軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を前記第1の押出速度よりも大きい第2の押出速度で押し出すと共に発泡させる工程と、前記第2の押出速度で押し出した前記熱可塑性樹脂材の側面の一部を、前記第1の押出速度で押し出されて連続して成形される前記外筒体の内壁に当接させながら前記外筒体の内部に螺旋状に配置して、前記条材を連続して成形する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る複合線材によれば、外筒体の内部に螺旋状に配置した条材を備えることによって、伸張方向及び圧縮方向に圧力を加えた際に、適度な反発力が得られると共に、伸縮性に優れた線材が得られる。
【0009】
更に、外側の外筒部に触れると、内部の螺旋状の発泡条材によって凹凸形状が連続しているような感触を得られ、この凹凸形状によって、例えば靴紐材として使用した場合には、凹凸個所が互いに引っ掛かり合い解け難い紐材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の複合線材の横断面図である。
図2】複合線材の斜視図である。
図3】押出成形を行う際に使用する金型の正面図である。
図4】金型の斜視図である。
図5】金型から複合線材が押出成形される状態を示す説明図である。
図6】複合線材の長手方向に沿って二等分にした際の断面図である。
図7】実施例2の複合線材の斜視図である。
図8】金型から押出成形された複合線材の切断加工の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は実施例1の複合線材の横断面図、図2は複合線材の斜視図である。複合線材1は、可撓性を有する合成樹脂製から成り、外筒体2と発泡条材3とから構成されている。この複合線材1において、外筒体2は外側に配置され、発泡条材3は外筒体2の内側に螺旋状に配置されており、発泡条材3の外側面3aの一部が、外筒体2の内壁2aに当接している。
【0013】
外筒体2は、発泡条材3と同様に発泡させることもでき、更に外筒体2内に螺旋状に配置される条材は、必ずしも発泡させなくともよい。外筒体2を発泡させることで、軽量化が図れる反面強度が低下する。また、内部に螺旋状に配置される条材を発泡させない場合は、発泡させた発泡条材3に比べて、外部から圧力を加えた際の反発力は低下する。
【0014】
なお、後述する発泡条材3を含む複合線材1の押出成形時には、外筒体2内で発泡条材3に含まれる発泡剤が発泡することで発生する内圧によって、外筒体2の断面が図示のように円形で固化するのに対して、発泡させない条材を含む複合線材1の押出成形時には、発泡する際に内圧が高まらないため、外筒体2の断面2bは自重によって潰れて楕円状に偏平した形状で固化することになる。
【0015】
外筒体2は直線状に長く延在し、その外側は外壁2cとされており、その内側に内壁2aを有している。発泡条材3の外側面3aの一部と外筒体2の内壁2aとが当接している部分は、固化に際する接着によって当接した状態を維持している。なお、外筒体2の内壁2aに対して、発泡条材3の外側面3aの一部を摩擦抵抗によって当接した状態を維持するようにしてもよい。また、複合線材1が長く延びる方向を軸方向とし、これと直交する方向を径方向とする。また、外筒体2及び発泡条材3についてもこの例によるものとする。
【0016】
外筒体2は熱可塑性樹脂製であり、外筒体2の形状は円筒状とされ、両端が開口しており、その内部が中空であり、その両端の開口が連通している。外筒体2を複合線材1が延在する直線方向に対して、直交する平面で切断すると、その断面2bの形状は円環状をしている。
【0017】
外筒体2は、直線状に長く延在し、その外側に外壁2cを有しており、その内側に内壁2aを有している。外筒体2の外径、つまり外壁2cの外径は、例えば1~20mmであり、外筒体2の内径、つまり内壁2aの内径は、例えば、0.8~18mmである。また、外筒体2の断面2bの厚みは、例えば、0.1~1mmである。
【0018】
外筒体2を生成するための熱可塑性樹脂材は、これを加熱することによって軟化又は融解して押出成形が容易に可能となるものであればよい。このような熱可塑性樹脂材として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性ポリエチレンテレフタレートその他の結晶性熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、非晶性ポリエチレンテレフタレートその他の非晶性熱可塑性樹脂のほか、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、特に熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0019】
図1図2に示す発泡条材3は、発泡させた状態の熱可塑性樹脂製であり、軸方向に沿って螺旋状に延在している。発泡条材3は発泡によって生じた気泡部分を除き、内部は密とされている。
【0020】
発泡条材3を複合線材1が延在する軸方向に対して、直交する径方向で切断すると、その断面3bは楕円形状とされている。発泡条材3の外径、つまり外側面3aの外径は、外筒体2の内径の1/3以上であることが好ましく、例えば0.3~6mmである。
【0021】
発泡条材3を形成するための熱可塑性樹脂材は、これを加熱することによって軟化又は融解して押出成形が容易に可能となり、これを押し出すと共に発泡させることができるものであればよい。このような熱可塑性樹脂材として、外筒体2と同様に、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性ポリエチレンテレフタレートその他の結晶性熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、非晶性ポリエチレンテレフタレートその他の非晶性熱可塑性樹脂のほか、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、特に熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂材を発泡させるに当たり、その発泡によって生ずる気泡の態様は、単独気泡であってもよく、或いは連続気泡であってもよい。
【0023】
複合線材1は、押出成形によって製造することが可能である。図3は押出成形を行う際に使用する金型Kの正面図、図4は金型Kの斜視図、図5は金型Kから複合線材1が押出成形される状態の説明図、図6は金型Kから押出成形された複合線材1の軸方向に沿って二等分にした際の複合線材1及び金型Kの断面図である。なお、金型Kの外形は略矩形状とされているが、適宜の形状を採用することができる。
【0024】
複合線材1を製造するに際しては、外筒体2と発泡条材3とを同時に押出成形しながら、それぞれの成形と並行して、外筒体2と発泡条材3とが所定の関係を成すように配置させることによって、一度に複合線材1を生成することができる。
【0025】
外筒体2及び発泡条材3の原料と成る熱可塑性樹脂は、それぞれ上述した通りであるが、外筒体2及び発泡条材3は同一の熱可塑性樹脂から成るものであってもよく、同種であるが分子量及び/又は密度が異なる熱可塑性樹脂から成るものであってよく、異なる種類の熱可塑性樹脂を原料としてもよい。
【0026】
図3図4に示す金型Kは、第1の押出口として、外筒体2を成形するために熱可塑性樹脂材を押し出すための円環孔K1を有すると共に、第2の押出口として、発泡条材3を成形するための発泡前の熱可塑性樹脂を押し出すための細孔K2を有している。
【0027】
円環孔K1は円環状の貫通孔から成る第1の押出口であり、ここから軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を押し出すことによって、断面円環状の外筒体2が連続して成形されることになる。なお、円環孔K1の外径及び内径は、成形しようとする外筒体2の外径及び内径に適応したものとする。
【0028】
金型Kは、円環孔K1を外側から囲む周縁部分と、円環孔K1の内側の中央部分とをそれぞれ備えている。更に、中央部分には細孔K2が設けられている。
【0029】
細孔K2は、軟化又は融解した発泡前の熱可塑性樹脂材を押し出すことによって、円形状の断面形状を有する条材を連続して成形するための第2の押出口である。細孔K2は、円環孔K1に比して小径の貫通孔から成り、円環孔K1の内側の中央部分に偏心して配置されている。つまり、細孔K2は円環孔K1の中心位置K3以外の位置に配置されている。図3図4に示す金型Kでは、細孔K2は中心位置K3に対して、若干左側に位置しているが、下側等であってもよい。
【0030】
このように、中心位置K3から偏心した位置に細孔K2を設けることによって、発泡条材3を効率的に螺旋状に成形することが可能となる。また、細孔K2の外径は、成形しようとする発泡条材3の外径よりも小さくされている。熱可塑性樹脂材を発泡させると、気泡が生じて膨張する結果、発泡前に比してその外径が大きくなるためである。
【0031】
複合線材1を押出成形する工程においては、先ず外筒体2を成すための熱可塑性樹脂材を予め加熱して軟化又は融解させておく。同様に、発泡条材3を成形するための発泡前の熱可塑性樹脂材も予め加熱して軟化又は融解させておく。
【0032】
続いて、円環孔K1から軟化又は融解した熱可塑性樹脂材を第1の押出速度で押し出す。これによって、図5に示すように外筒体2が、円環状の断面形状を有するものとして連続して押し出されることとなる。
【0033】
この外筒体2の押出成形と並行して、細孔K2から軟化又は融解した発泡前の熱可塑性樹脂材を、第1の押出速度よりも大きい第2の押出速度で押し出すことで発泡し、発泡条材3が押し出される。なお、この発泡は例えば発泡剤である窒素ガスや炭酸ガス等と熱可塑性樹脂材とを高圧下で溶解させた後に、細孔K2から押し出すことで、圧力低下によって気泡が生成されて発泡体が形成される。なお発泡には、このような物理発泡の他に、化学発泡等、適宜な発泡方法を採用することができる。
【0034】
続いて、第1、第2の押出速度について説明をする。押出速度とは、押し出された熱可塑性樹脂材が進行する速度であり、具体的には、押し出された外筒体2が単位時間当たりに進行する道のりをいう。
【0035】
第1の押出速度は例えば、1~20m/minとすることが好ましい。また、第2の押出速度は第1の押出速度よりも大きく、例えば第1の押出速度の1.5~5倍であることが好ましく、第1の押出速度の略2倍であることがより好ましい。従って、第2の押出速度は、2~40m/minとすることが好ましい。
【0036】
ここで、仮に第2の押出速度を第1の押出速度の2倍とした場合を例にすると、外筒体2又はその前駆体は軟化又は融解した状態から、冷却されて固化するまでの過程にある外筒体2が単位時間当たりに進行する道のりを1とすると、発泡条材3又はその前駆体である軟化又は融解した状態から、冷却されて固化するまでの過程における単位時間当たりに進行する道のりは2となる。
【0037】
つまり、第1の押出速度で押し出された外筒体2は、直線又は緩やかな曲線に沿って進行するのに対して、より大きい第2の押出速度で押し出された発泡条材3は、外筒体2の内部において、螺旋状に押し出されながら進行することとなる。このため、外筒体2と発泡条材3とは、第1の押出速度と第2の押出速度との相違、つまりそれぞれの単位時間当たりに進行する道のりの相違に拘らず、それぞれの進行する距離、つまり第1、第2の押出口からの直線距離は、略等しいものとなる。
【0038】
これらの第1、第2の押出速度は、押出圧力を調整することのほか、外筒体2にあっては、引取速度も併せて調整することによって、これを制御することができる。
【0039】
図5図6に示すように、外筒体2を押し出すと共に、発泡条材3は連続して押し出されると共に、外筒体2の内部に螺旋状に配置されることになる。なお、押出成形された複合線材1の長手方向に沿って二等分にした際の発泡条材3の断面3cの形状は、図6に示すように略円形をしており、この断面3cの外径が外筒体2の内径の1/3以上であり、例えば、0.3~6mmである。
【0040】
上述したように、押し出された外筒体2と発泡条材3とは、単位時間当たりに進行する道のりが互いに異なるものとして、それぞれ押し出される。そして、押し出された発泡条材3は、やがてその側面の一部が外筒体2の内壁2aに当接することとなる。
【0041】
つまり、押し出された直後の発泡条材3の外側面3aの一部と外筒体2の内壁2aと当接し、この当接した個所が溶着する。当接個所が溶着した発泡条材3は、第1、第2の押出速度の差から、単位時間当たりに進行する長さが外筒体2の進行する長さに比して長く押し出されているので、外筒体2内をそのまま直線状に進行することができなくなる。一方、細孔K2からは同じ押出圧力をもって新たな発泡条材3が押し出され続けることになる。このため、押し出された発泡条材3は、直線状に進行することに代えて、最初に外筒体2の内壁2aに当接した個所を基点として、外筒体2の内壁2aに沿って螺旋を描くようにして進行することになる。このように、発泡条材3の第2の押出速度を外筒体2の第1の押出速度よりも早くすることで、発泡条材3の一部が外筒体2の内部に対して、螺旋状に溶着しながら配置されることになる。
【0042】
なお、押し出されて発泡した発泡条材3は、発生するガスによって外筒体2の断面を円形に保つ内圧が発生し、時間の経過と共に冷却され、図2に示す複合線材1の状態で固化される。また、外筒体2の断面を円形に保つために金型Kの中央に空気を排出する空気孔を設けるようにしてもよい。
【0043】
更には、外筒体2の外壁2cに手で触れると、内部の螺旋状の発泡条材3によって凹凸形状が連続しているような感触が得られる。この凹凸形状によって、例えば、靴紐材として使用した場合は、外筒体2の外壁2cの凹凸個所が互いに引っ掛かり合って解け難い紐材とすることができる。
【0044】
特に、外筒体2内で螺旋状に配置される条材を発泡させない複合線材1の場合には、前述のように外筒体2の断面は自重によって潰れて、楕円状に扁平した形状となるため、断面長方形であるスニーカの靴紐に代えて、条材を発泡させない複合線材1を用いることで、引っ掛かり合って解け難くなり、かつデザイン的にも優れたものとなる。
【実施例2】
【0045】
図7は実施例2の複合線材1’の斜視図である。この複合線材1’も複合線材1と同様に、外筒体2と発泡条材3とから成る可撓性部材から構成され、連続する可撓性部材を小さく切断して、例えば1~2cm間隔で切断して得られるチップ状の形状を有している。
【0046】
複合線材1’には、所定の間隔を隔てて両側に存在する一対の端部1a、1bを有しており、複合線材1’の端部1aには発泡条材3の一方の端面3dが現出している。また、複合線材1’の端部1bから発泡条材3の他方の端面3eが現出している。この場合に、一方の端部1aから露出する発泡条材3の一方の端面3dに対し、他方の端部1bから露出する発泡条材3の他方の端面3eが、発泡条材3は1回転以上の変位を経た位置に存在している。
【0047】
なお、図7において、発泡条材3の一方の端面3dと他方の端面3eとが一回転の変位を経て同一又は略同一の位置に存在しているが、一回転以上であってもよい。
【0048】
以上のことから、端部1a、1b間において発泡条材3の中心点3fは、外筒体2の中心軸を回転軸として少なくとも360°以上、つまり1回転以上、回転していることになる。
【0049】
図8は金型から押出成形された可撓性部材の切断加工を示す説明図であり、押し出されて連続して成形された外筒体2と発泡条材3とから成る可撓性部材を所定の間隔で、例えば、カッタCにより切断することで、図7に示すチップ状の複合線材1’が得られる。
【0050】
このように、複合線材1’において発泡条材3が、回転数が1回転以上の螺旋形状を有するものを採用することで、チップ状の複合線材1’は、単体でその周囲からの圧力に対して均等な反発力を発生する。また、多数個の複合線材1’を同時に使用することで、それぞれの複合線材1’が有する反発力同士を相互に作用させ合って、その反発力を更に均等なものとすることができる。
【0051】
この性質を利用して、チップ状の複合線材1’を枕、クッション、マット等の寝具の内部に充填して緩衝材として使用することができる。低反発弾性を有するチップ状の多数個の複合線材1’が、寝具の内部における上下左右の全ゆる方向に配置されることで、弾性力が片寄ることなく均等に働き、使用者における寝具の使用感を高めることができる。
【0052】
更には、チップ状の複合線材1’においては、外筒体2も発泡させることで、枕、クッション、マット等の寝具の内部に充填した際に、複合線材1’が互いに衝突しても発生する微細な衝突音が発生することはない。特に、枕に一般的な緩衝材を使用すると、緩衝材から発生する衝突音は微細なものであっても耳の近傍で発生するため、敏感な使用者にとって気になることがある。しかし、外筒体2を発泡させた複合線材1’を緩衝材として使用すると、衝突音が生じなくなるため、敏感な使用者であっても快適な睡眠が得られる。
【0053】
このように、本発明に係る複合線材1、1’によれば、外筒体2の内部に螺旋状に配置した条材を備えることによって、軸方向及び径方向に圧力を加えた際に、適度な反発力が得られると共に、伸縮性に優れた線材が得られる。
【0054】
このような本発明が奏する作用効果は、外筒体2の内部に配置された条材が、螺旋状に成形されていることによって、初めてもたらされたものである。そして、このような構造を有する複合線材1、1’は、従来には存在しなかったものであり、上述した用途以外の用途に応用可能な素材である。
【符号の説明】
【0055】
1、1’ 複合線材
1a 一方の端部
1b 他方の端部
1c 第一の仮想平面
1d 第二の仮想平面
2 外筒体
2a 内壁
2b 断面
2c 外壁
3 発泡条材
3a 外側面
3d 一方の端面
3e 他方の端面
3f 中心点
K 金型
K1 円環孔
K2 細孔
K3 中心位置
【要約】
【課題】多様な用途に使用可能であって、伸縮性等を備えた複合線材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複合線材1は、外筒体2と発泡条材3とから構成されており、外筒体2は熱可塑性樹脂製である。発泡条材3は、発泡させた状態の熱可塑性樹脂製であり、外筒体2の内部において、発泡条材3が螺旋状を呈しており、発泡条材3の外側面3aの一部が、外筒体2の内壁2aに当接している。複合線材1は押出成形により製造され、外筒体2と発泡条材3とを同時に押出成形し、外筒体2の押出速度よりも発泡条材3の押出速度を大きくすることで、発泡条材3の一部が外筒体2の内部に対して、螺旋状に配置される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
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図8