(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】レゾルバステータ及びレゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
(21)【出願番号】P 2024552321
(86)(22)【出願日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2024006354
【審査請求日】2024-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186875
【氏名又は名称】海老澤 知則
(72)【発明者】
【氏名】松縄 暁
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/124415(WO,A1)
【文献】特開2019-152654(JP,A)
【文献】特開2016-220283(JP,A)
【文献】米国特許第5821652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルバロータの回転角を検出するレゾルバに備えられるレゾルバステータであって、
シート状の基板と、
前記基板に設けられ、外部装置で生成された入力信号が入力される第一コイルと、
前記基板に設けられ、前記外部装置に出力信号を出力する第二コイルと、
前記基板に対して軸方向に重ねて配置されるとともに、前記第一コイル及び前記第二コイルの各々に対して軸方向に対向配置される磁性体のコアと、
前記コアを前記外部装置に接地する接地パターンと、を備えた
ことを特徴とする、レゾルバステータ。
【請求項2】
前記入力信号が、100kHz以上の高周波の交流信号である
ことを特徴とする、請求項1に記載のレゾルバステータ。
【請求項3】
前記コアに軸方向に重ねて配置される金属板をさらに備え、
前記接地パターンが、前記金属板と前記外部装置とに接続される
ことを特徴とする、請求項2に記載のレゾルバステータ。
【請求項4】
前記第一コイル又は前記第二コイルが、多極コイルである
ことを特徴とする、請求項3に記載のレゾルバステータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレゾルバステータと、
前記レゾルバステータに対して軸方向に対向配置されるレゾルバロータと、を備える
ことを特徴とする、レゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、レゾルバステータ、及び、当該レゾルバステータを備えるレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状のコイル(「シートコイル」ともよばれる)を備えるレゾルバステータ及びレゾルバロータを具備するシート型レゾルバでは、ノイズに対する信号の比(S/N比)を向上させる種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、モータに取り付けられるレゾルバにおいて、非磁性導電体で形成されたロータ基板とロータ基板上に形成されたシートコイルとロータ基板及びシートコイルの間に配置された磁性コアとを備えるレゾルバロータを具備するものが開示されている。特許文献1によれば、シートコイルを非磁性導電体のロータ基板でシールドすることで、モータの交番磁界の影響を排除できるとされている。また、非磁性導電体よりなるロータ基板の作用でシートコイルの磁束が打ち消されることを、磁性コアにより防止でき、これによって、S/N比を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示のようなレゾルバでは、シートコイルと磁性コアとの間が寄生容量となり得る。ここで、寄生容量とは、電子部品の内部或いは電子回路の中で、設計意図とは無関係に、物理的な構造に起因して寄生的に存在する容量(コンデンサ成分)を意味する。特許文献1に開示のようなレゾルバでは、このような寄生容量を通じて、シートコイルにノイズが伝搬し、S/N比の低下を招き得る。
【0005】
本件のレゾルバステータ及びレゾルバは、このような課題に鑑み案出されたもので、S/N比を向上させ、レゾルバの検出精度を向上させることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のレゾルバステータ及びレゾルバは、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
【0007】
開示のレゾルバステータは、レゾルバロータの回転角を検出するレゾルバに備えられるレゾルバステータであって、シート状の基板と、前記基板に設けられ、外部装置で生成された入力信号が入力される第一コイルと、前記基板に設けられ、前記外部装置に出力信号を出力する第二コイルと、前記基板に対して軸方向に重ねて配置されるとともに、前記第一コイル及び前記第二コイルの各々に対して軸方向に対向配置される磁性体のコアと、前記コアを前記外部装置に接地する接地パターンと、を備える。
【0008】
開示のレゾルバは、上記の態様に記載のレゾルバステータと、前記レゾルバステータに対して軸方向に対向配置されるレゾルバロータと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示のレゾルバステータ及びレゾルバによれば、S/N比を向上させ、レゾルバの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態のレゾルバステータが適用されるレゾルバを軸方向に切断するとともに分解して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、実施形態としてのレゾルバステータ及びレゾルバについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0012】
実施形態のレゾルバは、レゾルバステータ(以下、単に「ステータ」ともいう)に対して、回転軸Cを中心として回転するレゾルバロータ(以下、単に「ロータ」ともいう)の回転角を検出する検出器(センサ)である。実施形態のレゾルバステータは、このようなレゾルバが備えるステータである。以下の説明では、回転軸Cが延びる方向(回転軸方向)を軸方向と定義し、軸方向に直交する方向であって回転軸Cから離れる方向及び回転軸Cに向かう方向を径方向と定義する。また、径方向において、回転軸C側を径方向内側とし、これと反対側(回転軸Cから離れる側)を径方向外側と定義する。軸方向に直交する方向であって回転軸C回りに周回する方向を周方向と定義する。
【0013】
[1.構成]
図1は本実施形態のステータ2(レゾルバステータ)が適用されるレゾルバ1を軸方向に切断するとともに分解して示した斜視図であり、
図2はレゾルバ1の構成を示す模式図である。レゾルバ1は、例えば図示しないサーボモータの回転角度検出装置として適用される。
図1及び
図2に示すように、レゾルバ1は、ステータ2とロータ3(レゾルバロータ)とを備える。ロータ3は、ステータ2に対して軸方向の第一方向D1に僅かな隙間をあけて配置される。以下、軸方向において、第一方向D1とは反対の方向を第二方向D2という。
【0014】
ステータ2及びロータ3のそれぞれは、
図1に示すようにシート状の基板21,31を有する。基板21,31のそれぞれには、
図2に示すように、複数のコイル11~15(シートコイル)が形成(プリント)される。つまり、レゾルバ1は、複数のシートコイル11~15を有するシート型レゾルバである。このようにシートコイルを用いることで、各コイル11~15の薄型化を図ることができ、延いては、レゾルバ1の薄型化が図られる。
【0015】
本実施形態において、レゾルバ1は、2入力1出力のレゾルバであり、二つの励磁コイル11,12(第一コイル)と、検出コイル13と、送信コイル14と、受信コイル15(第二コイル)と、の五つのコイルを有する。五つのコイルのうち二つの励磁コイル11,12と受信コイル15とは、ステータ2に設けられ、信号処理回路4(外部装置)と電気的に接続される。励磁コイル11,12には、信号処理回路4で生成された入力信号が入力される。受信コイル15は、信号処理回路4に出力信号を出力する。
【0016】
ステータ2は、レゾルバ1が適用される装置(例えばサーボモータやサーボモータが取り付けられる装置)の図示しないケーシングに対して固定される部品である。
図1及び
図2に示すように、ステータ2は、第一基板21と、励磁コイル11,12と、受信コイル15と、第一基板21に対して軸方向に重ねて配置されたコア22と、を備える。本実施形態のステータ2は、コア22に対して軸方向に重ねて配置された金属板23をさらに備える。
【0017】
第一基板21は、非導電性の樹脂(例えばポリイミド)により形成された薄いシートである。第一基板21は、例えば、
図1に示すように、回転軸Cを中心に展開された円環状の基板部21Aと、基板部21Aの外周縁の一部から径方向外側に凸設された矩形状のコネクタ部21Bとを有する。
【0018】
基板部21Aには、
図2に示す励磁コイル11,12及び受信コイル15が形成される。基板部21Aは、
図2に示すように、軸方向において、励磁コイル11,12及び受信コイル15よりも大きな厚みを有する。励磁コイル11,12及び受信コイル15は、基板部21Aにおいて、軸方向に露出することなく(すなわち、基板部21Aに内蔵されるように)形成される。励磁コイル11,12及び受信コイル15は、その軸方向の両側が、基板部21Aの一部をなすポリイミドのシートに被覆されるとも換言される。なお、各コイル11,12,15には、例えば、銅箔が用いられる。
【0019】
コネクタ部21Bは、励磁コイル11,12及び受信コイル15のそれぞれの信号線が配策される部位であり、
図1に示すように、その径方向外側の端部が信号処理回路4のコネクタ部4Aに接続される。これにより、励磁コイル11,12及び受信コイル15は、信号処理回路4と電気的に接続される。なお、各コイル11,12,15の信号線には、例えば、銅箔が用いられる。
【0020】
基板部21Aにおける、各コイル11,12,15の形状や径方向及び周方向の配置は特に限定されない。本実施形態では、一例として、
図2に示すように、励磁コイル11,12に対して受信コイル15が径方向内側に隙間をあけて配置される。励磁コイル11,12は、例えば、基板部21Aにおける、回転軸Cを中心とした円環状の第一領域R1(
図1参照)に形成される。また、受信コイル15は、第一領域R1よりも径方向内側であって、回転軸Cを中心とした円環状の第二領域R2(
図1参照)に形成される。なお、第一領域R1において、二つの励磁コイル11,12は、
図2に示すように径方向に並んで配置されてもよく、径方向の同位置で、軸方向に重なるように、或いは、周方向に互い違いとなるように配置されてもよい。
【0021】
本実施形態において、励磁コイル11,12は、いずれもnXの軸倍角を持つ多極コイルであり、第一領域R1内にn個の磁極対を形成する。なお、軸倍角を表すnの値は、2以上の自然数であればよく、nの値が大きいほど角度分解能が向上する。また、二つの励磁コイル11,12として、正弦励磁コイル11と余弦励磁コイル12とが設けられる。
【0022】
コア22は、第一基板21に対して第二方向D2側(ロータ3から離れる側)に積層されるとともに励磁コイル11,12及び受信コイル15の各々に対して軸方向に対向配置される磁性体の部材である。コア22に用いる磁性材には、例えば、電磁鋼板やアモルファス、フェイライト粉末を含む磁性シートなどが挙げられる。
【0023】
本実施形態のステータ2は、コア22として、励磁コイル11,12に軸方向に隣接配置される第一コア22Aと、受信コイル15に軸方向に隣接配置される第二コア22Bとを備える。第一コア22Aは、
図1に示すように、例えば第一領域R1と略同径の環状をなし、
図2に示すように、励磁コイル11,12との間にポリイミドのシート(絶縁物,基板部21Aの一部)を介して配置される。同様に、第二コア22Bは、
図1に示すように、例えば第二領域R2と略同径の環状をなし、
図2に示すように、受信コイル15との間にポリイミドのシートを介して配置される。なお、コア22には、第一コア22Aの周方向の一部と第二コア22Bの周方向の一部とを接続する部位が設けられてもよい。つまり、コア22は、励磁コイル11,12と受信コイル15との双方に対して軸方向に対向配置される一つの部材として構成されてもよい。
【0024】
金属板23は、コア22に対して第二方向D2側に積層される金属製の部材であり、例えば、軸方向からみて第一基板21の基板部21Aと略同等の外形をなし、基板部21Aを第二方向D2側から覆う板状(シート状)をなす。コア22に対して、金属板23は、図示しない金属のねじなどで直接固定されてもよく、図示しない接着シート(絶縁材)を介して配置されてもよい。
【0025】
金属板23には、例えば、非磁性のアルミ材のシートが用いられる。但し、金属板23は、非磁性材でなくてもよく、例えば、鉄板であってもよい。ステータ2は、金属板23が設けられることで、薄いシート状である第一基板21やコア22のみで構成される場合と比較して、その剛性が高められ、形状の歪みが抑えられる。さらに、ステータ2をケースなどの他の構造物に固定する場合に、ねじ止め、カシメ、溶接などの作業が容易になる。金属板23が、非磁性材である場合には、モータなどの磁気装置からの漏れ磁束の影響(外部磁束によるノイズ)を受けにくい。金属板23の遮蔽物としての外部のノイズ(電磁波)に対するシールド効果は、電気抵抗が低い金属素材の方が高められる。例えば、銅などでもよい。
【0026】
ロータ3は、ステータ2に対して回転軸Cと一体で(回転中心まわりに)回転可能に軸支される部品である。
図1及び
図2に示すように、ロータ3は、例えば、第二基板31と、検出コイル13と、送信コイル14と、コア32と、金属板33とを備える。
【0027】
第二基板31は、第一基板21と同様に、非導電性の樹脂(例えばポリイミド)により形成された薄いシートである。第二基板31には、
図2に示す検出コイル13及び送信コイル14が形成される。第二基板31において、検出コイル13及び送信コイル14は、第一基板21に形成される励磁コイル11,12及び受信コイル15と同様に、その軸方向の両側が、第二基板31の一部をなすポリイミドのシートに被覆されてよい。第二基板31は、例えば、
図1に示すように、軸方向から見て第一基板21の基板部21Aと同等の径を持つ円環状をなす。
【0028】
第二基板31において、検出コイル13は、励磁コイル11,12と軸方向に対向配置される。本実施形態において、検出コイル13は、励磁コイル11,12の位置に対応して、第二基板31の第一領域R1と同径の環状の第三領域R3(
図1参照)に設けられる。また、検出コイル13は、励磁コイル11,12と同様、nXの軸倍角を持つ多極コイルであり、第三領域R3内にn個の磁極対を形成する。
【0029】
送信コイル14は、第二基板31において、受信コイル15と軸方向に対向配置される。本実施形態において、送信コイル14は、受信コイル15の位置に対応して、第二基板31の第二領域R2と同径の環状の第四領域R4(
図1参照)に設けられる。送信コイル14は、
図2に示すように、検出コイル13と電気的に接続(直列接続)される。なお、検出コイル13及び送信コイル14には、例えば、銅箔が用いられる。
【0030】
コア32は、第二基板31に対して第一方向D1側(ステータ2から離れる側)に重ねて配置されるとともに検出コイル13及び送信コイル14の各々に対して軸方向に対向配置される磁性体の部材である。コア32には、ステータ2のコア22と同様の磁性材が用いられてよい。
【0031】
本実施形態のロータ3は、コア32として、検出コイル13に対向配置される第三コア32Cと、送信コイル14に対向配置される第四コア32Dとを備える。第三コア32Cは、
図1に示すように、例えば第三領域R3と略同径の環状をなし、
図2に示すように、軸方向で検出コイル13との間にポリイミドのシート(絶縁物,第二基板31の一部)を介して配置される。同様に、第四コア32Dは、
図1に示すように、例えば第四領域R4と略同径の環状をなし、
図2に示すように、軸方向で送信コイル14との間にポリイミドのシートを介して配置される。なお、コア32には、第三コア32Cの周方向の一部と第四コア32Dの周方向の一部とを接続する部位が設けられてもよい。
【0032】
金属板33は、コア32に対して第一方向D1側に重ねて配置される部材であり、例えば、軸方向からみて第二基板31と略同等の外形をなし、第二基板31を第一方向D1側から覆う板状(シート状)をなす。金属板33には、例えば、ステータ2の金属板23と同様に、非磁性のアルミ材のシートが用いられてよい。また、金属板33は、ステータ2の金属板23と同様に、図示しない接着シート(絶縁材)を介して、コア32に対して配置されてよい。
【0033】
信号処理回路4は、励磁コイル11,12に入力する入力信号を生成するとともに、受信コイル15から出力された出力信号をステータ2に対するロータ3の回転角(角度情報)に変換する電気回路であり、レゾルバ1の外部に設けられる。信号処理回路4は、例えば、
図1に示すように、軸方向においてステータ2及びロータ3とは異なる位置で、回転軸Cを中心に展開された円環状の基板に形成されてよい。信号処理回路4には、
図2に示すように、入力信号を生成する信号生成回路5と、出力信号に基づいて回転角に対応する角度情報を出力する信号処理回路6とが内蔵される。
【0034】
本実施形態において、信号生成回路5は、振幅変調された高周波(例えば100kHz以上)の交流信号(信号波形に搬送波と変調波とを含む信号)を入力信号として励磁コイル11,12に入力する。より具体的には、信号生成回路5は、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号を正弦励磁コイル11と余弦励磁コイル12とのそれぞれに入力する。正弦励磁コイル11にはコサイン波形の交流信号が入力され、余弦励磁コイル12にはサイン波形の交流信号が入力される。
【0035】
励磁コイル11,12に交流信号が入力されると、励磁コイル11,12が励磁して磁束を発生する(
図2の白抜き矢印参照)。この磁束は、ロータ3側の検出コイル13に鎖交して誘起電圧が発生する。これにより、検出コイル13では、位相変調された信号(位相情報を含む合成波形)が生じる。
【0036】
検出コイル13で生じた信号は、検出コイル13に直列接続された送信コイル14に伝達される。送信コイル14は、これにより励磁して磁束を発生する(
図2の黒塗りの矢印参照)。この磁束は、ステータ2の受信コイル15に鎖交して誘起電圧が発生する。この誘起電圧の波形(位相情報を含む合成波形)が出力信号として信号処理回路6に出力され、信号処理回路6にて回転角に対応する角度情報に変換されて出力される。つまり、本実施形態のレゾルバ1は、振幅変調された交流信号を入力し、それを用いて検出コイル13に生じる位相変調された信号から回転角を検出する変調波型レゾルバである。
【0037】
ところで、上述のようなレゾルバ1のステータ2では、二つの励磁コイル11,12及び受信コイル15とコア22との間のポリイミドのシートの厚み(絶縁体の厚み)が寄生容量となり得る。なお、ここでいう寄生容量とは、電子部品の内部或いは電子回路の中で、設計意図とは無関係に、物理的な構造に起因して寄生的に存在する容量(コンデンサ成分)を意味する。
【0038】
ステータ2では、当該寄生容量を通じて、励磁コイル11,12に入力された入力信号の一部が、受信コイル15にノイズとして伝搬され得る。詳述すると、
図2に薄いドット塗の矢印A1で示すように、励磁コイル11,12と第一コア22Aとの間のポリイミドのシートの厚みが寄生容量となり、当該寄生容量を通じて、入力信号の電圧変化に応じた電流が第一コア22A側で生じる。第一コア22A側で生じた電流は、直接的に、或いは、金属板23を介して間接的に、第二コア22Bに流れる。そして、
図2に濃いドット塗の矢印A2で示すように、第二コア22Bと受信コイル15との間のポリイミドのシートの厚みが寄生容量となり、当該寄生容量を通じて、入力信号の一部が受信コイル15にノイズとして伝搬される。
【0039】
これにより、受信コイル15では、送信コイル14から受信した信号(以下、「受信信号」という)に、寄生容量を通じて伝搬された入力信号の一部がノイズとして干渉し、ノイズを含む波形が出力信号として信号処理回路6に出力され得る。これにより、S/N比が低下し、レゾルバ1の検出精度が低下し得る。
【0040】
そこで、ステータ2には、寄生容量を通じてコア22に流れる電流を受信コイル15に干渉させないようにするための構成として、接地パターン7が設けられる。接地パターン7は、コア22で生じる電流を信号処理回路4に流す(返す)ことで、コア22を信号処理回路4に接地する導線である。なお、ここでいう、接地とは、コア22の電位の基準を定めることを意味し、大地を利用したものに限られない。接地パターン7は、信号処理回路4の基準電位となる導線に接続されることで、コア22を信号処理回路4に接地する。
【0041】
本実施形態の接地パターン7は、金属板23を介して、コア22を信号処理回路4に接地する。接地パターン7は、
図1及び
図2に示すように、その一端が金属板23に接続され、その他端が信号処理回路4の基準電位に接続される。なお、接地パターン7は、
図1に示すように、第一基板21のコネクタ部21Bに配策されて、励磁コイル11,12及び受信コイル15の信号線とともに信号処理回路4に接続されてよい。或いは、接地パターン7は、励磁コイル11,12及び受信コイル15の信号線とは別の経路で信号処理回路4に接続されてもよい。
【0042】
[2.作用,効果]
(1)上述したステータ2及びレゾルバ1では、接地パターン7が設けられる。これにより、励磁コイル11,12(第一コイル)と第一コア22Aとの間の寄生容量を通じて第一コア22Aに生じた電流を、信号処理回路4側に流すことができる。このため、受信コイル15(第二コイル)に対向配置される第二コア22B側に、第一コア22Aに生じた(入力信号の電圧変化に応じた)電流が生じにくくなる。したがって、第二コア22B側と受信コイル15との間の寄生容量を通じて、入力信号の一部が受信コイル15に伝搬されることを抑制できる。つまり、ノイズの原因となる電流を地絡させて、出力信号に含まれるノイズ自体を減らすことができる。よって、S/N比を向上させ、レゾルバ1の検出精度を向上させることができる。
【0043】
特に、シート状の基板21,31に形成されたコイル11~15を有するシート型レゾルバ1では、各コイル11~15の巻数を十分に確保することが難しい。このため、励磁コイル11,12や送信コイル14の磁束が弱くなりやすく、受信信号の強度が弱くなりやすい。このようなレゾルバ1において、ステータ2に接地パターン7を設けることで、寄生容量を通じたノイズの影響を除去すれば、受信信号の強度が弱くてもS/N比を向上させることができるため、レゾルバ1の検出精度を向上させることができる。
【0044】
(2)入力信号が、100kHz以上の高周波の交流信号である場合には、入力信号の電圧変化に応じた電流が第一コア22A側でより生じやすくなる。したがって、高周波の交流信号が入力されるレゾルバ1において、ステータ2に接地パターン7を設けることで、接地パターン7による効果をより享受でき、適切にレゾルバ1の検出精度を向上させることができる。
【0045】
(3)上述したステータ2では、接地パターン7が金属板23と信号処理回路4とに接続される。このように、信号処理回路4と電気的に接続された金属板23を介してコア22を接地することによっても、信号処理回路4に対してコア22を間接的に接地することができる。特に、入力信号が、高周波の交流信号である場合には、コア22と金属板23との間に接着シート(絶縁材)が設けられていても、コア22と金属板23との間が寄生容量となり、金属板23を介して、入力信号の一部が受信コイル15にノイズとして伝搬され得る。このようなレゾルバ1において、接地パターン7を金属板23と信号処理回路4とに接続させることで、接地パターン7による効果をより享受でき、適切にレゾルバ1の検出精度を向上させることができる。また、第一コア22Aと第二コア22Bとの双方を個別に接地するのではなく、金属板23を介してまとめてコア22を接地できるので、ステータ2の構造を簡素化できる。
【0046】
(4)また、上述したステータ2のように、励磁コイル11,12が多極コイルである場合には、第一領域R1内に形成される一つの磁極の大きさが小さくなる。このため、励磁コイル11,12の各磁極の磁束が弱くなりやすく、受信信号の強度が弱くなりやすい。このようなレゾルバ1において、ステータ2に接地パターン7を設けることで、寄生容量を通じたノイズの影響を除去すれば、受信信号の強度が弱くてもS/N比を向上させることができるため、レゾルバ1の検出精度を向上させることができる。
【0047】
[3.その他]
上述したステータ2及びレゾルバ1の構成は一例であり、上述した構成に限らない。ステータ2は、少なくとも、信号処理回路4から入力信号が入力される第一コイルと、信号処理回路4に出力信号を出力する第二コイルと、第一コイル及び第二コイルの双方が形成されるシート状の基板とを有するものであればよく、2入力1出力のレゾルバ1のステータ2でなくてもよい。つまり、レゾルバ1は、2入力1出力の検出器でなくてもよい。
【0048】
レゾルバは、例えば、1入力2出力の検出器であってもよい。この場合、ステータは、第一コイルとしての一つの励磁コイルを有し、第二コイルとしての二つの受信コイルを有してよい。或いは、ステータは、ロータ側に励磁コイルが設けられる場合には、第一コイルとしての一つの送信コイルを有し、第二コイルとしての二つの検出コイルを有してよい。レゾルバは、励磁コイル及び検出コイルがステータに設けられ、ロータが、回転角に応じた大きさで励磁コイルの磁界を打ち消す方向に反磁界を生成する導体を有するものであってもよい。つまり、レゾルバのロータにはコイルが設けられていなくてもよい。
【0049】
接地パターン7は、コア22を直接的に信号処理回路4に接地するものであってもよい。すなわち、接地パターン7は、それを構成する導線の一端がコア22に接続され、他端が信号処理回路4の基準電位となる導線に接続されてもよい。この場合、接地パターン7は、第一コア22Aと第二コア22Bとの双方を信号処理回路4に接地することが好ましい。接地パターン7がコア22を直接的に信号処理回路4に接地する場合には、金属板23は省略されてもよく、金属板23に代えてステータ2のベースとなる樹脂製の絶縁部材が設けられてもよい。
【0050】
請求の範囲に記載の「外部装置」は、少なくとも、第一コイルに入力信号を入力し、第二コイルから出力信号が出力されるものであればよい。請求の範囲に記載の「外部装置」は、信号処理回路4ではなく、例えば、レゾルバ1の外部に設けられた制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 レゾルバ
2 ステータ(レゾルバステータ)
3 ロータ(レゾルバロータ)
4 信号処理回路(外部装置)
7 接地パターン
11 正弦励磁コイル(励磁コイル,第一コイル)
12 余弦励磁コイル(励磁コイル,第一コイル)
15 受信コイル(第二コイル)
21 第一基板(基板)
22 コア
23 金属板
【要約】
レゾルバロータ(3)の回転角を検出するレゾルバ(1)に備えられるレゾルバステータ(2)は、シート状の基板(21)と、基板(21)に設けられ、外部装置(4)で生成された入力信号が入力される第一コイル(11,12)と、基板(21)に設けられ、外部装置(4)に出力信号を出力する第二コイル(15)と、基板(21)に対して軸方向に重ねて配置されるとともに、第一コイル(11,12)及び第二コイル(15)の各々に対して軸方向に対向配置される磁性体のコア(22)と、コア(22)を外部装置(4)に接地する接地パターン(7)と、を備える。