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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/42 20200101AFI20241018BHJP
   D06F 33/62 20200101ALI20241018BHJP
   D06F 34/22 20200101ALI20241018BHJP
【FI】
D06F33/42
D06F33/62
D06F34/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021152812
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023044774
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】堀部 泰之
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055016(JP,A)
【文献】特開平10-272279(JP,A)
【文献】特開2019-097965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/42
D06F 33/62
D06F 34/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に揺動自在に弾性支持された水槽と、
前記水槽内に回転自在に内包された回転ドラムと、
前記水槽内に水を給水する給水弁と、
前記水槽内の水を排水する排水経路と、
前記排水経路を開閉駆動する排水弁と、
前記水槽内または前記回転ドラム内の洗剤泡の発生を検知する泡検知部と、
少なくとも前記給水弁および前記排水弁を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記排水弁を開放させて前記水槽内の水を排水する排水動作と、前記排水弁を開放させた状態で、前記回転ドラムの内壁に洗濯物が貼り付く回転数で前記回転ドラムを回転させる脱水動作と、を実行し、
前記泡検知部が洗剤泡を検知した場合、前記排水動作を実行している間に、前記排水弁を間欠的に開放させる間欠動作を実行可能とし、
前記制御部は、
前記泡検知部が洗剤泡を検知した場合、
前記脱水動作の前に実行される前記排水動作において、第1の時間で前記排水弁を開放させる前記間欠動作を実行し、
前記脱水動作の後に実行される前記排水動作において、第2の時間で前記排水弁を開放させる前記間欠動作を実行し、
前記第1の時間は、前記第2の時間よりも長い
洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記排水動作を複数回実行し、
前記泡検知部が洗剤泡を検知した場合、以降の前記排水動作を実行している間においても、前記間欠動作を実行する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、
少なくとも洗い行程、すすぎ行程、及び脱水行程を含む洗濯運転を実行し、
前記泡検知部が洗剤泡を検知した場合、前記すすぎ行程の間に実行される前記排水動作において前記間欠動作を実行する、
請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部は、前記間欠動作において、前記排水弁を、第3の時間で開放させた後に、前記第3の時間よりも長い第4の時間で閉状態とさせる、
請求項1~のいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、洗濯中に発生する洗剤泡の発生を抑制するドラム式洗濯機を開示する。このドラム式洗濯機は、外槽と、回転ドラムと、外槽内の水を排水する排水手段と、外槽内に設けられた一対の電極からなる泡検知手段と、制御手段と、を備える。
【0003】
また、特許文献2は、排水等の逆流を防ぐ逆流防止機能を向上させた排水トラップを開示する。この排水トラップは、洗濯機からの排水が流入する第一流路と、防水パンからの排水が流入する第二流路と、第二流路に配置され、下流側からの排水等の逆流を防止する弁体を有する逆止め弁と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-117139号公報
【文献】特開2017-203266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、水槽または回転ドラム内で洗剤泡の発生が検知された場合、洗濯機から一度に排水される水量を低減することで、排水による不具合を抑制することができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の洗濯機は、筐体と、筐体内に揺動自在に弾性支持された水槽と、水槽内に回転自在に内包された回転ドラムと、水槽内に水を給水する給水弁と、水槽内の水を排水する排水経路と、排水経路を開閉駆動する排水弁と、水槽内または回転ドラム内の洗剤泡の発生を検知する泡検知部と、少なくとも給水弁および排水弁を制御する制御部と、を備え、制御部は、排水弁を開放させて水槽内の水を排水する排水動作と、排水弁を開放させた状態で、回転ドラムの内壁に洗濯物が貼り付く回転数で回転ドラムを回転させる脱水動作と、を実行し、泡検知部が洗剤泡を検知した場合、排水動作を実行している間に、排水弁を間欠的に開放させる間欠動作を実行可能とし、制御部は、泡検知部が洗剤泡を検知した場合、脱水動作の前に実行される排水動作において、第1の時間で排水弁を開放させる間欠動作を実行し、脱水動作の後に実行される排水動作において、第2の時間で排水弁を開放させる間欠動作を実行し、第1の時間は、第2の時間よりも長い
【発明の効果】
【0007】
本開示における洗濯機は、水槽または回転ドラム内で洗剤泡の発生が検知された場合、洗濯機から一度に排水される水量を低減することで、排水による不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における洗濯機および洗濯機周辺の模式図
図2】実施の形態1における洗濯機の洗濯運転のフローチャート
図3】実施の形態1における洗濯機の洗い行程のフローチャート
図4】実施の形態1における洗濯機のすすぎ行程の前半のフローチャート
図5】実施の形態1における洗濯機のすすぎ行程の後半のフローチャート
図6】実施の形態1における洗濯機の脱水行程のフローチャート
図7】実施の形態1における洗濯機の消泡動作の排水弁および給水弁のタイムチャート
図8】実施の形態1における洗濯機の第2の排水動作の排水弁および給水弁のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、洗濯機は住居に設けられた防水パンの上に設置され、洗濯機から排出された排水および洗剤泡は排水トラップおよび床下配管を介して下水に排出されていた。床下配管に多量の洗剤泡が残留した場合、排水トラップ内の水が逆流し、排水が防水パンに溢れ出して住居の床面が浸水する虞がある。そのため、排水トラップ業界においては、特許文献2に開示されるように、排水の逆流を抑制する排水トラップ等が開発されてきた。そうした状況下において、発明者らは、洗濯機の排水動作を制御することで、排水が排水トラップから防水パンに逆流することを抑制するという着想を得た。そして、発明者らは、その着想を実現するには、洗剤泡が床下配管に残留する可能性が高い条件下で排水トラップに流入する排水量を制限しなくてはならないという課題を発見し、本開示の主題を構成するに至った。
【0010】
そこで、本開示は、水槽または回転ドラム内で洗剤泡の発生が検知された場合、洗濯機から一度に排水される水量を低減することで、排水による不具合を抑制することができる洗濯機を提供する。
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0012】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、図1図8を用いて、実施の形態1を説明する。
【0014】
[1-1.構成]
[1-1-1.洗濯機の設置環境]
図1において、洗濯機100は、洗濯機100からの漏水が床面等に漏出しないように住居に設けられた防水パン10の上に設置されている。
【0015】
防水パン10には、排水口11が設けられており、排水口11の下方には、排水を下水道に流す床下配管13と、排水口11と床下配管13との間に設けられた排水トラップ12と、が設置されている。排水トラップ12は、内部に水が溜められており、床下配管13からの臭気が排水口11から逆流することを抑制している。
【0016】
排水ホース15は、後述する洗濯機100の排水経路131と、排水口11と、を接続している。洗濯機100から排水ホース15を通じて排出された洗濯水は、排水トラップ12を経由して、床下配管13に排出される。
【0017】
[1-1-2.洗濯機の構成]
図1において、洗濯機100は、筐体101と、水槽102と、回転ドラム103と、を備える。水槽102は、筐体101内に配設されており、サスペンション(図示せず)および防振ダンパー111によって防振支持されている。
【0018】
回転ドラム103は、水槽102に内包され、回転自在に設けられている。回転ドラム103の後方には、モータ112が設けられている。モータ112は、回転ドラム103を回転させる。回転ドラム103の周面には、多数の通水孔103aが設けられている。通水孔103aは、水槽102と回転ドラム103とを通水可能に連通している。水槽102および回転ドラム103は、有底円筒状に形成されている。筐体101の前面には、回転ドラム103内に洗濯物を投入するための開口である筐体開口部101aが設けられている。
【0019】
筐体101の前面には、蓋体105が設けられている。蓋体105は、筐体開口部101aを開閉自在に覆う。
【0020】
筐体101の内方上部には、給水部120が設けられている。給水部120は、給水弁121と、給水経路122と、洗剤ケース125と、を含む。給水弁121は、開閉自在に設けられている。給水経路122は、給水弁121と水槽102とを接続している。洗剤ケース125は、給水経路122の途中に設けられている。給水弁121が開かれて、筐体101内に導入された洗濯水は、洗剤ケース125に収容された剤を溶解しながら、給水経路122を通過し、水槽102内に注水される。
【0021】
筐体101の内方下部には、排水部130が設けられている。排水部130は、排水経路131と、排水経路131の途中に設けられた排水弁132と、を含む。排水経路131は、水槽102の底部と、排水ホース15と、を接続している。排水弁132は、開閉自在に設けられている。排水弁132が開かれると、水槽102内の洗濯水は、排水経路131を通過し、洗濯機100の外部に排出される。
【0022】
水槽102内の背面近傍には、泡検知部150が設けられている。泡検知部150は、水槽102の内方下部に設けられた第1の電極151と、水槽102の内方上部に設けられた第2の電極152と、の一対から構成される。第1の電極151は、水槽102内に洗濯水が溜められた状態で、洗濯水に浸水する位置に設けられている。一方で、第2の電極152は、水槽102内の洗濯水の水位よりも上方に設けられている。水槽102内において、異常発泡により多量の洗剤泡が発生し、洗剤泡が第2の電極152の高さに到達すると、第1の電極151と第2の電極152との間の電気抵抗値が小さくなる。第1の電極151と第2の電極152との間の電気抵抗値が小さくなると、泡検知部150は、多量の洗剤泡が発生したことを検知する。
【0023】
筐体101の内方下部には、洗濯運転を制御する制御手段180が設けられている。制御手段180は、給水弁121を開閉することで、給水動作を制御する。また、制御手段180は、排水弁132を開閉することで、後に詳述する、通常排水動作、間欠排水動作、および消泡排水動作を含む排水動作を制御する。
【0024】
また、制御手段180は、水槽102に設けられた水位検知手段(図示せず)が検知した水位と、泡検知部150が多量の洗剤泡を検知した履歴と、を記憶する。
【0025】
[1-2.動作]
以上のように構成された洗濯機100について、以下、その動作および作用を説明する。
【0026】
[1-2-1.洗濯運転の動作]
図2図8を用いて、洗濯運転の一連の流れを説明する。
【0027】
図2において、洗濯運転が開始する(S101)と、洗い行程(S102)、すすぎ行
程(S103)、および脱水行程(S104)が順に実行される。脱水行程が終了すると、洗濯運転が終了する(S105)。
【0028】
図示しないが、S101で洗濯運転が開始してから、S105で洗濯運転が終了するまでの間、泡検知部150は、水槽102内で異常発泡などによる多量の洗剤泡の発生を検知している。泡検知部150が水槽102内の多量の洗剤泡の発生を検知すると、制御手段180は、洗濯運転において泡検知部150が洗剤泡を検知したことを記憶する。
【0029】
[1-2-2.洗い行程の動作]
図3において、図2のS102に対応する洗い行程が開始する(S201)と、洗い動作が実行される(S202)。
【0030】
洗い動作において、制御手段180は、給水弁121を開き、筐体101の外部から洗濯水を導入する。筐体101内に導入された洗濯水は、給水経路122を流下し、洗剤ケース125に投入された洗剤を溶解させながら、水槽102内に流入する。水槽102内の洗濯水が所定水位に到達すると、制御手段180は、給水弁121を閉じる。次いで、制御手段180は、モータ112を駆動させることで、回転ドラム103を回転させて、回転ドラム103内の洗濯物を撹拌して洗う。所定時間洗い動作が実行されると、洗い動作が終了し、洗い行程が終了する(S203)。洗い行程が終了すると、S103のすすぎ行程が開始する。
【0031】
[1-2-3.すすぎ行程の動作]
図4において、図2のS103に対応するすすぎ行程が開始する(S301)と、制御手段180は、S301以前の行程において、泡検知部150が洗剤泡を検知したか否かを判定する(S302)。泡検知部150が、S301以前の行程において洗剤泡を検知していた場合(S302でYESの場合)、水槽102内の洗剤泡の量を減少させる消泡動作が実行される(S303)。
【0032】
図7に示すように、消泡動作において、制御手段180は、時間t11(例えば、40秒)で排水弁132を開き、その後、時間t11よりも短い時間t12(例えば、15秒)で、排水弁132を閉じる動作を、複数回実行する。このように、制御手段180は、消泡動作において、水槽102内の洗濯水を間欠的に排水する間欠動作を実行している。制御手段180は、時間t11で排水弁132を開いている間、給水弁121を閉じており、時間t12で排水弁132を閉じている間、給水弁121を開き、水槽102内に洗濯水を導入している。これにより、消泡動作においては、水槽102内の洗剤泡を少しずつ排出するとともに、水槽102内の洗剤泡が自然に破泡することで、水槽102内の洗剤泡が減少する。また、消泡動作においては、給水弁121を開放して、水槽102に水を導入するので、水槽102内の洗剤の濃度を薄くでき、洗剤泡の破泡を促進させる。所定回数、上述の間欠動作を繰り返し実行すると、消泡動作が終了する。
【0033】
図4に戻って、S303の消泡動作が終了すると、次いで、第1の排水動作が実行される(S304)。第1の排水動作において、制御手段180は、給水弁121を閉じた状態で、排水弁132を開き、水槽102内の洗濯水を連続的に排水する。制御手段180は、水槽102内の洗濯水の水位の変化が微小となると、水槽102内の洗濯水の排水が完了したと判定し、第1の排水動作を終了する。
【0034】
なお、泡検知部150が、洗い行程において洗剤泡を検知していない場合(S302でNOの場合)、制御手段180は、S303の消泡動作をスキップし、S304の第1の排水動作に移行する。
【0035】
第1の排水動作が終了すると、中間脱水動作が実行される(S305)。中間脱水動作において、制御手段180は、排水弁132を開いた状態で、モータ112を駆動して回転ドラム103を回転させ、回転ドラム103内の洗濯物に含まれた水分を取り除く。中間脱水動作において、制御手段180は、回転ドラム103を、回転ドラム103の内壁に洗濯物が貼り付く程度の回転数(例えば、80r/min以上)で回転させる。中間脱水動作において、回転ドラム103の最高回転数は、約900~1000r/minで設定されている。所定時間が経過すると、制御手段180は、モータ112の駆動を停止し、中間脱水動作が終了する。
【0036】
中間脱水動作が終了すると、給水動作が実行される(S306)。給水動作において、制御手段180は、給水弁121を開き、外部から筐体101内に洗濯水を導入する。筐体101内に導入された洗濯水は、給水経路122を流下し、洗剤ケース125に投入された洗剤を含まずに、水槽102内に流入する。
【0037】
水槽102内の洗濯水の水位が所定水位に到達すると、制御手段180は、給水弁121を閉じ、すすぎ動作に移行する(S307)。すすぎ動作において、制御手段180は、水槽102内に洗濯水が溜められた状態で、モータ112を駆動させ、回転ドラム103を左右に反転させることで、回転ドラム103内の洗濯物を濯ぐ。所定時間が経過すると、すすぎ動作が終了する。
【0038】
図5に示すように、すすぎ動作が終了すると、制御手段180は、S307以前の行程において、泡検知部150が洗剤泡を検知したか否かを判定する(S308)。泡検知部150が、S307以前の行程において洗剤泡を検知していた場合(S308でYESの場合)、第2の排水動作(S309)が実行される。
【0039】
図8に示すように、第2の排水動作において、制御手段180は、時間t21(例えば、3秒)で、排水弁132を開き、その後、時間t21よりも長い、時間t22(例えば、12秒)で、排水弁132を閉じる動作を、複数回実行している。このように、制御手段180は、第2の排水動作において、水槽102内の洗濯水を間欠的に排水する間欠動作を実行している。第2の排水動作において、制御手段180は、給水弁121を閉じている。所定回数、上述の間欠排水を繰り返し実行すると、第2の排水動作が終了する。
【0040】
図5に戻って、第2の排水動作が終了すると、第1の排水動作が実行される(S310)。S310の第1の排水動作において、制御手段180は、S304の第1の排水動作と同様に、水槽102内の洗濯水を排水する。制御手段180が、水槽102内の洗濯水の排水が完了したと判定すると、第1の排水動作が終了する。
【0041】
泡検知部150が、S307以前の行程において洗剤泡を検知していない場合(S308でNOの場合)、制御手段180は、S309の第2の排水動作をスキップし、S310の第1の排水動作に移行する。
【0042】
S310の第1の排水動作が終了すると、S305~S307と同様に、中間脱水動作(S311)、給水動作(S312)、すすぎ動作(S313)が順に実行される。S313のすすぎ動作が終了すると、すすぎ行程が終了し(S314)、S104の脱水行程が開始する。
【0043】
[1-2-4.脱水行程の動作]
図6に示すように、図2のS104に対応する脱水行程が開始する(S401)と、制御手段180は、S313以前の行程において、泡検知部150が洗剤泡を検知したか否かを判定する(S402)。泡検知部150が、S313以前の行程において洗剤泡を検
知していた場合(S402でYESの場合)、S309およびS310と同様に、第2の排水動作(S403)、第1の排水動作(S404)が順に実行される。泡検知部150が、S313以前の行程において、洗剤泡を検知していない場合(S402でNOの場合)、制御手段180は、S403の第2の排水動作をスキップし、S404の第1の排水動作に移行する。
【0044】
S404の第1の排水動作が終了すると、最終脱水動作が開始する(S405)。最終脱水動作において、制御手段180は、排水弁132を開いた状態で、モータ112を駆動して回転ドラム103を回転させ、回転ドラム103内の洗濯物に含まれた水分を飛ばす。最終脱水動作において、制御手段180は、所定時間にわたって、回転ドラム103を、洗濯運転における最大回転数(例えば、1000r/min)で回転させる。所定時間が経過すると、制御手段180は、モータ112の駆動を停止し、最終脱水動作が終了する。最終脱水動作が終了すると、脱水行程が終了する(S406)。脱水行程が終了すると、S105に示すように、洗濯運転が終了する。
【0045】
[1-2-5.消泡動作および第2の排水動作]
S303の消泡動作において排出される洗濯水は、S202の洗い動作において水槽102内で発生した、水分含有量が多く、粘性が低い洗剤泡を含む。水分含有量が多く、粘性が低い洗剤泡は、洗濯機100から床下配管13に排出されたとき、床下配管13を流下しやすく、床下配管13を詰まらせにくい。床下配管13が洗剤泡で閉塞されていない状態においては、水槽102内から一度に多くの洗濯水を排水しても、排水トラップ12から水が逆流して防水パン10上に排水が溢れることは起こりにくい。これにより、図7に示すように、消泡動作においては、時間t11のように長い時間で排水弁132を開放でき、一度に多くの洗濯水を排出できる。そのため、水槽102内の洗濯水を排出する排水時間を短くできるので、洗濯運転に要する時間を短くできる。
【0046】
一方で、中間脱水行程において、回転ドラム103が約100r/minから約400r/minで回転すると、洗い行程後に回転ドラム103と水槽102との間に残存した洗剤泡が撹拌され、きめ細やかで、水分含有量が低く、粘性が高い洗剤泡が発生する。S309およびS403の第2の排水動作において排出される洗濯水は、中間脱水行程で発生した、水分含有量が低く、粘性が高い洗剤泡を含む。水分含有量が低く、粘性が高い洗剤泡は、洗濯機100から床下配管13に排出されたとき、床下配管13を流下しにくく、床下配管13を閉塞しやすい。粘性が高い洗剤泡によって床下配管13が閉塞された状態においては、床下配管13に流入した洗濯水の流下を洗剤泡が阻害し、床下配管13を流下できる水量が少ないので、排水トラップ12から床下配管13に排出できる水量も少ない。この状態において、洗濯機100から一度に多くの洗濯水が排水されると、排水された洗濯水が排水トラップ12の容積を超過することで、排水トラップ12内の水が逆流し、排水が防水パン10に溢れ出して住居の床面が浸水する虞がある。
【0047】
制御手段180は、図8に示すように、第2の排水動作においては、時間t21のように短い時間で排水弁132を開放し、その後、時間t22のように長い時間で排水弁132を閉じている。これにより、一度に洗濯機100から排出する洗濯水の量を排水トラップ12の容積よりも少なく抑えつつ、床下配管13を閉塞する洗剤泡を少しずつ流すことができる。そのため、排水された洗濯水が排水トラップ12から防水パン10上に溢れ出ることを抑制できる。
【0048】
第2の排水動作が実行されると、第2の排水動作の前に床下配管13を閉塞していた粘性の高い洗剤泡は、少しずつ破泡するか、床下配管13から下水道に流される。第2の排水動作の後には、粘性の高い洗剤泡による床下配管13の閉塞が徐々に解消されるので、排水を流下させることができるようになる。これにより、第2の排水動作の後に、水槽1
02内の洗濯水を連続的に排水する第1の排水動作が実行されても、排水トラップ12内の排水が逆流し、防水パン10上に溢れ出ることは起こりにくい。
【0049】
本実施の形態においては、泡検知部150が洗剤泡を一度検知すると、以降の行程で実行される排水動作においても、間欠的に排水を実行する。例えば、S202の洗い動作において、泡検知部150が洗剤泡を検知し、S301以降の行程においては、泡検知部150が洗剤泡を検知していない場合(異常発泡が解消された場合)も、すすぎ行程および脱水行程において、排水弁132を間欠的に開放する消泡動作(S303)および第2の排水動作(S309およびS403)が実行される。これにより、初回の排水動作によって、洗剤泡による床下配管13の閉塞が解消されなかった場合においても、排水動作における排水量を抑制できる。そのため、排水口11から防水パン10上に洗濯水が漏出することを抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態においては、S303の消泡動作において排水弁132を開放する時間t11は、S309およびS403の第2の排水動作において排水弁132を開放する時間t21よりも長い。これにより、第2の排水動作においては、床下配管13が粘性の高い洗剤泡で閉塞されないように洗濯機100から一度に排出する水量を抑制する一方で、消泡動作においては、一度に多くの洗濯水を排出することで排水時間を短くできる。
【0051】
[1-3.効果]
以上のように、本実施の形態において、洗濯機100は、筐体101と、筐体101内に揺動自在に弾性支持された水槽102と、水槽102内に回転自在に内包された回転ドラム103と、水槽102内に水を給水する給水弁121と、水槽102内の水を排水する排水弁132と、水槽102内の洗剤泡の発生を検知する泡検知部150と、給水弁121および排水弁132を制御する制御手段180と、を備える。制御手段180は、排水弁132を開放させて水槽102内の水を排水する排水動作を実行し、泡検知部150が洗剤泡を検知した場合、排水動作を実行している間に、排水弁132を間欠的に開放させる消泡動作および第2の排水動作を実行する。
【0052】
これにより、水槽102内で洗剤泡の発生が検知された場合、洗濯機100から一度に排水される水量を抑制することができる。
【0053】
そのため、床下配管13に多量の泡が残存する場合に、排水トラップ12内の排水が逆流し、防水パン10上に溢れ出ることを抑制できる。
【0054】
本実施の形態のように、制御手段180は、排水動作を複数回実行し、泡検知部150が洗剤泡を検知した場合、以降の排水動作を実行している間においても、排水弁132を間欠的に開放させる消泡動作および第2の排水動作を実行してもよい。
【0055】
これにより、泡検知部150により洗剤泡が検知されていない場合であっても、一度洗剤泡の発生が検知されていたときは、洗濯機100から一度に排水される水量を抑制することができる。
【0056】
本実施の形態のように、制御手段180は、洗い行程、すすぎ行程、および脱水行程を含む洗濯運転を実行し、泡検知部150が洗剤泡を検知した場合、すすぎ行程の間に実行される排水動作において、排水弁132を間欠的に開放させる消泡動作および第2の排水動作を実行してもよい。
【0057】
これにより、よりきめ細かで水分含有量の低い洗剤泡が発生しやすいすすぎ行程で、洗濯機100から一度に排水される水量を抑制することができる。
【0058】
そのため、床下配管13に、水分含有量が低く、粘性が高い洗剤泡が残存する場合でも、排水トラップ12内の排水が逆流し、防水パン10上に溢れ出ることを効果的に抑制できる。
【0059】
本実施の形態のように、制御手段180は、排水弁132を開放させた状態で、回転ドラム103の内壁に洗濯物が貼りつく回転数で回転ドラム103を回転させる中間脱水動作を実行し、中間脱水動作より後に実行される排水動作において、排水弁132を間欠的に開放させる第2の排水動作を実行してもよい。
【0060】
これにより、よりきめ細かで水分含有量の低い洗剤泡が発生しやすい中間脱水行程以降の行程で、洗濯機100から一度に排水される水量を抑制することができる。
【0061】
そのため、床下配管13に、水分含有量が低く、粘性が高い洗剤泡が残存する場合でも、排水トラップ12内の排水が逆流し、防水パン10上に溢れ出ることを効果的に抑制できる。
【0062】
本実施の形態のように、制御手段180は、泡検知部150が洗剤泡を検知した場合、中間脱水動作の前に実行される排水動作において、時間t11で排水弁132を開放させる消泡動作を実行し、中間脱水動作の後に実行される排水動作において、時間t21で排水弁132を開放させる第2の排水動作を実行し、時間t11は、時間t21よりも長くてもよい。
【0063】
これにより、中間脱水動作の前に位置する、水分含有量が多い洗剤泡を含む洗濯水を排水する消泡動作では、排水弁132を長い時間開放し、よりきめ細かで水分含有量の低い洗剤泡が発生しやすい中間脱水動作の後の第2の排水動作では、排水弁132を短い時間開放する。
【0064】
そのため、第2の排水動作においては、床下配管13が粘性の高い洗剤泡で閉塞されないように洗濯機100から一度に排出する水量を抑制できる一方で、消泡動作においては、一度に多くの洗濯水を排出することで排水時間を短くできる。
【0065】
本実施の形態のように、制御手段180は、第2の排水動作において、排水弁132を、時間t21で開放させた後に、時間t21よりも長い時間t22で排水弁132を閉状態とさせてもよい。
【0066】
これにより、洗濯機100から排水トラップ12に排水される水量を抑制しつつ、排水待機時において、排水トラップ12内に溜まった水が下流に排水される時間を確保することができる。
【0067】
そのため、排水された洗濯水が排水トラップ12から防水パン10上に溢れ出ることを抑制できる。
【0068】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0069】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0070】
実施の形態1では、泡検知部の一例として、水槽102内の洗剤泡を検知する泡検知部150を説明した。泡検知部は、水槽内の洗剤泡を検知すればよいため、泡検知部150に限定されない。泡検知部は、回転ドラム内の洗剤泡を検知する構成としてもよい。
【0071】
実施の形態1では、泡検知部の一例として、水槽102内に設けられた、第1の電極151および第2の電極152の一対から構成された泡検知部150を説明した。泡検知部は、水槽または回転ドラム内の洗剤泡を検知すればよいため、泡検知部150に限定されない。泡検知部は、水槽内の水位を検知する水位検知手段であってもよいし、水槽内の特定の空間の圧力を検知する圧力検知手段であってもよいし、回転ドラムを回転駆動するモータの回転数を検知するモータ回転数検知手段であってもよいし、モータに流れる電流の値を検知するモータ電流値検知手段であってもよい。
【0072】
実施の形態1では、洗い行程において泡検知部が洗剤泡を検知した場合に、洗い行程後に実行される排水動作の一例として、消泡動作を説明した。排水動作は、間欠的に排水弁を開放させる間欠動作を実行すればよいので、消泡動作に限られない。消泡動作は、消泡動作よりも排水弁の開放時間が短い第2の排水動作に置き換えられてもよいし、消泡動作の直前または直後に第2の排水動作が加えられてもよい。これにより、排水トラップから防水バン上に水が漏出することはより抑制できるが、第2の排水動作は、排水弁の開放時間が短いため、運転時間が長くなってしまう。そのため、洗い行程直後に排出される洗濯水に含まれる洗剤泡は水分含有量が多く、粘性が低い洗剤泡であるため、洗い行程直後に実行される排水動作は、消泡動作であることが望ましい。
【0073】
実施の形態1では、すすぎ動作の一例として、給水弁121および排水弁132を閉じた状態で実行される「溜めすすぎ」を説明した。すすぎ動作は、回転ドラム内の洗濯物を濯ぐ動作であればよいので、「溜めすすぎ」に限定されない。すすぎ動作は、給水動作および排水動作を実行し、注水を続けながら洗濯物を濯ぐ「注水すすぎ」であってもよい。また、「注水すすぎ」が実行されている間の排水動作においても、排水弁を間欠的に開放させる間欠動作を実行してもよい。また、「注水すすぎ」中の間欠動作においても、第2の排水動作のように、排水弁を開放している時間よりも排水弁を閉状態とする時間を長くしてもよい。これにより、すすぎ動作においても、洗濯機から一度に排水される水量を抑制することができるので、排水トラップから排水が逆流することを抑制できる。
【0074】
実施の形態1では、洗濯運転の一例として、洗い行程、すすぎ行程、および脱水行程を含む洗濯運転を説明した。洗濯運転は、洗濯物を洗濯すればよいので、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程、および乾燥行程を実行してもよい。
【0075】
実施の形態1では、洗濯機の一例として、ドラム式洗濯機である洗濯機100を説明した。洗濯機は、洗濯物を洗濯するものであればよいので、ドラム式洗濯機に限定されない。洗濯機は、縦型洗濯機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、洗濯機および洗濯乾燥機に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 防水パン
11 排水口
12 排水トラップ
13 床下配管
15 排水ホース
100 洗濯機
101 筐体
101a 筐体開口部
102 水槽
103 回転ドラム
103a 通水孔
105 蓋体
112 モータ
120 給水部
121 給水弁
122 給水経路
125 洗剤ケース
130 排水部
131 排水経路
132 排水弁
150 泡検知部
151 第1の電極
152 第2の電極
180 制御手段(制御部)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8