(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】光学シート、液晶表示装置、及び光学シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20241018BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20241018BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20241018BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G02B5/00 B
G02B7/00 F
G02F1/13357
G02F1/1335
(21)【出願番号】P 2023211798
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2020022197の分割
【原出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】柏木 剛
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205640(JP,A)
【文献】特開2019-066622(JP,A)
【文献】特開2017-111349(JP,A)
【文献】特開2016-033663(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0062863(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
G09F 9/00
G02F 1/13357
B32B 3/22
B32B 7/023
B32B 27/40
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置の光源と液晶パネルとの間に設けられる光学シートであって、
第1の基材層と、
前記第1の基材層上に積層される光学機能層であって、前記第1の基材層に沿って互いに所定間隔を空けて配列され光を透過させる複数の光透過部と、隣り合う前記光透過部の間に配置され光を反射若しくは吸収するルーバ部と、を有する光学機能層と、
前記光学機能層を挟んで前記第1の基材層に対向するように配置された第2の基材層と、
前記光学機能層と前記第2の基材層との間に配置された接着層と、
を備え、
前記接着層の貯蔵弾性率は、85℃において、
周波数1~250Hz全域にわたって、1×10
9Paから2×10
9Paである、光学シート。
【請求項2】
前記第2の基材層は、前記接着層と接する側に反射型偏光フィルムを備える、請求項1記載の光学シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学シートと、
前記光学シートを挟んで対向するように配置される光源及び液晶パネルと、を備える液晶表示装置。
【請求項4】
第1の基材層と、
前記第1の基材層上に積層される光学機能層であって、前記第1の基材層に沿って互いに所定間隔を空けて配列され光を透過させる複数の光透過部と、隣り合う前記光透過部の間に配置され光を反射若しくは吸収するルーバ部と、を有する光学機能層と、
前記光学機能層を挟んで前記第1の基材層に対向するように配置された第2の基材層と、
前記光学機能層と前記第2の基材層との間に配置された接着層と、を備える光学シートの製造方法であって、
前記接着層として、光学シート完成後の接着層の貯蔵弾性率が85℃において、
周波数1~250Hz全域にわたって、1×10
9Paから2×10
9Paである接着層を使用する、光学シートの製造方法。
【請求項5】
前記第2の基材層は、前記接着層と接する側に反射型偏光フィルムを備える、請求項4記載の光学シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の観察者側に配置される光学シート、光学シートを用いた液晶表示装置、及び光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載ディスプレイや液晶テレビ等の液晶表示装置には、光源から出射される光を制御して、質の高い光を観察者に提供するために、各種機能を有する光学シートが備えられている。
【0003】
特許文献1には、基材フィルム層の一方の面にプリズム部(本明細書では光透過部と称する)と光吸収部(本明細書ではルーバ部と称する)とが交互に配列された層を有し、薄くしても撓むことを抑制することができる光学シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような光学シートを液晶表示装置に使用するとき、液晶表示装置の各モジュール及びこの光学シートを組み合わせて液晶表示装置の筐体に実装する。特許文献1に記載されたような光学シートを実装する際、接着や筐体の枠による締め付け等で固定を行うが、その固定方法によっては光学シートの自重等に由来して、撓みが生じ得るため、この撓みに由来して光学シートを透過する光のムラが生じてしまうといった課題があった。
【0006】
このような光のムラを抑制すべく、光学シートが撓みにくいように光学シートの剛性を高めることが考えられる。剛性を高めるため、特許文献1に記載されたような光学シートのプリズム部と光吸収部とが交互に配列された層の上に更に第2の基材フィルム層を接着することが考えられる。しかし、従来このような光学シートの接着に用いられていた紫外線硬化型アクリル系接着剤を第2の基材フィルム層の接着に用いると、接着後の光学シートを切断した後、切断面から接着剤がはみ出すことがあった。このような接着剤のはみ出しは、光学シートの実装の際に好ましくない。接着剤のはみ出し防止のため、光学シートの端面について予め凹状に端面処理して接着剤のはみ出しに対するマージンを設けることも考えられるが、光学シートの種類によっては、このような端面処理を行うことができない場合もある。また、接着剤の種類によっては、第2の基材フィルム層を接着したにも関わらず、液晶表示装置への光学シートの実装後に上述した光のムラが発生することがあった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、液晶表示装置、特に車載型の液晶表示装置での使用に特に好適であるような接着剤を用いた光学シートと、この光学シートを用いた液晶表示装置、そして、光学シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、液晶表示装置の光源と液晶パネルとの間に設けられる光学シートであって、第1の基材層と、第1の基材層上に積層される光学機能層であって、第1の基材層に沿って互いに所定間隔を空けて配列され光を透過させる複数の光透過部と、隣り合う光透過部の間に配置され光を反射若しくは吸収するルーバ部と、を有する光学機能層と、光学機能層を挟んで第1の基材層に対向するように配置された第2の基材層と、光学機能層と第2の基材層との間に配置された接着層と、を備え、接着層は、ポリウレタン樹脂である、光学シートという構成を備える。
【0009】
また、ポリウレタン樹脂は、アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、液晶表示装置の光源と液晶パネルとの間に設けられる光学シートであって、第1の基材層と、第1の基材層上に積層される光学機能層であって、第1の基材層に沿って互いに所定間隔を空けて配列され光を透過させる複数の光透過部と、隣り合う光透過部の間に配置され光を反射若しくは吸収するルーバ部と、を有する光学機能層と、光学機能層を挟んで第1の基材層に対向するように配置された第2の基材層と、光学機能層と第2の基材層との間に配置された接着層と、を備え、接着層の貯蔵弾性率は、85℃において、1×109Paから2×109Paである、光学シートという構成を備える。
【0011】
また、第2の基材層は、接着層と接する側に反射型偏光フィルムを備えてもよい。
【0012】
また、上述した目的を達成するための、本発明の他の態様は、上述した光学シートと、光学シートを挟んで対向するように配置される液晶表示装置及び光源と、を備える液晶表示装置である。
【0013】
また、上述した目的を達成するための、本発明の他の態様は、第1の基材層と、第1の基材層上に積層される光学機能層であって、第1の基材層に沿って互いに所定間隔を空けて配列され光を透過させる複数の光透過部と、隣り合う光透過部の間に配置され光を反射若しくは吸収するルーバ部と、を有する光学機能層と、光学機能層を挟んで第1の基材層に対向するように配置された第2の基材層と、光学機能層と第2の基材層との間に配置された接着層と、を備える光学シートの製造方法であって、接着層として、ポリウレタン樹脂を使用する、光学シートの製造方法である。
【0014】
また、ポリウレタン樹脂は、アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0015】
また、上述した目的を達成するための、本発明の他の態様は、第1の基材層と、第1の基材層上に積層される光学機能層であって、第1の基材層に沿って互いに所定間隔を空けて配列され光を透過させる複数の光透過部と、隣り合う光透過部の間に配置され光を反射若しくは吸収するルーバ部と、を有する光学機能層と、光学機能層を挟んで第1の基材層に対向するように配置された第2の基材層と、光学機能層と第2の基材層との間に配置された接着層と、を備える光学シートの製造方法であって、接着層として、光学シート完成後の接着層の貯蔵弾性率が85℃において、1×109Paから2×109Paである接着層を使用する、光学シートの製造方法である。
【0016】
また、第2の基材層は、接着層と接する側に反射型偏光フィルムを備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接着剤のはみ出しを防ぎ、光のムラを抑制する光学シート及び液晶表示装置を提供することが可能となる。また、そのような光学シートを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る液晶表示装置の分解斜視図である。
【
図4】
図2の光学シートに注目して拡大した図である。
【
図5】
図1の光学シートの作製工程の説明図である。
【
図6】
図1の光学シートの作製工程の説明図である。
【
図7】
図1の光学シートの作製工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る光学シート及び液晶表示装置について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
[構成]
まず、
図1から
図4を参照しながら、実施形態に係る光学シート30及びそれを含む液晶表示装置10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る液晶表示装置10の分解斜視図である。
図2及び
図3は、液晶表示装置10の分解図である。説明の簡便のため、
図1に示されるように水平方向、厚さ方向、及び鉛直方向を定めた場合、
図2は、水平方向に沿う方向から液晶表示装置10を示しており、
図3は、鉛直方向に沿う方向から液晶表示装置10を示している。
図4は、
図2等に示した光学シート30の構成を示すため、
図2に示した光学シート30を断面方向から見て半時計回りに90度回転させて拡大したものを示している。なお、図示されている各層の厚さなどは、図の見易さを優先して、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0021】
液晶表示装置10は、不図示の筐体に、電源や電子回路等とともに納められている。液晶表示装置10は、不図示の自動車の車室内に設けられ、ナビゲーション装置の一部として動作する。液晶表示装置10は、液晶パネル15、面光源装置20、及び機能性フィルム40を備えている。
【0022】
液晶パネル15は、液晶層12と、上偏光板13と、下偏光板14と、を有している。上偏光板13は、観察者側に配置され、下偏光板14は、面光源装置20側に配置されている。液晶層12は、上偏光板13と下偏光板14との間に配置されている。
【0023】
上偏光板13及び下偏光板14は、入射した光を直交する二つの偏光成分(P波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸に平行な方向)の偏光成分(例えば、P波)を透過させ、当該一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸に平行な方向)の偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有している。下偏光板14は、偏光フィルムの一例である。
【0024】
液晶層12は、複数の画素が層面に沿った方向に縦横に配列されている。一つの画素を形成する領域毎に電界印加することにより、当該領域の画素の配向が変化する。これにより、面光源装置20側(すなわち入光側)に配置された下偏光板14を透過した透過軸に平行な偏光成分(例えばP波)は、電界印加された画素を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電界印加されていない画素を通過する際にその偏光方向を維持する。このため、画素への電界印加の有無によって、下偏光板14を透過した偏光成分(例えばP波)が、出光側に配置された上偏光板13をさらに透過するか、あるいは、上偏光板13で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。
【0025】
このように、液晶パネル15は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御し、観察者に映像を提供することができるように構成されている。したがって、液晶パネル15の背面側から光を照射する際には、下偏光板14の透過軸に平行な偏光成分を有する光を多く到達させることにより、下偏光板14を透過させて光の利用効率を高めることができる。
【0026】
さらに、液晶パネル15は、その性質上、該液晶パネル15の法線方向からの入射光に対しては、出射光のコントラスト、及び効率(透過率)は優れている。しかしながら、液晶パネル15の法線方向に対して斜めからの入射光、および観察者による斜め方向からの観察についてはコントラストの低下や効率(透過率)の低さが問題となる。すなわち、光の利用効率を高めるためには液晶パネル15の法線方向からの入射光を多くすることも有効である。
【0027】
液晶パネル15の種類は特に限定されることはなく、公知の型の液晶パネルを用いることができる。例えば、液晶パネル15として、TN、STN、VA、MVA、IPS、OCB等を用いることができる。
【0028】
面光源装置20は、液晶パネル15に対して面状の光を出射する照明装置である。面光源装置20は、液晶パネル15に対して観察者側とは反対側に配置されている。面光源装置20は、エッジライト型の面光源装置として構成されており、導光板21、光源25、光拡散板26、プリズム層27、反射型偏光板28、光学シート30及び反射シート39を有している。
【0029】
導光板21は、基部22及び光学要素23を有している。基部22は、所定の厚さを有する板形状を呈している。基部22は、光を案内するとともに、光学要素23のベースとなる部位である。基部22、光学要素23をなす材料としては、種々の材料を使用することができる。ただし、表示装置に組み込まれる光学シート用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料を用いることができる。これには例えば脂環式構造を有する重合体樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)等を挙げることができる。
【0030】
光学要素23は、基部22の裏面側(反射型偏光板28が配置される側とは反対側)に形成されている。光学要素23は、基部22から突出しており、三角柱形状を呈している。光学要素23は、突出した頂部の稜線が水平方向に延びるように形成されている。基部22の裏面側には、複数の光学要素23が、鉛直方向に所定のピッチで並べて配列されている。光学要素23は断面が三角形状であるがこれに限定されることはなく、多角形、半球状、球の一部、レンズ形状等いずれの形状の断面であってもよい。複数の光学要素23の配列方向は導光方向であることが好ましい。すなわち、光源25から離隔する方向に配列され、光源25が配列される方向、又は1つの長い光源であれば該光源が延びる方向に平行に各光学要素23の稜線が延びている。
【0031】
このような構成を有する導光板21は、押し出し成形により、又は、基部22上に光学要素23を賦型することにより製造することができる。なお、押し出し成形で製造された導光板21においては、基部22、及び光学要素23が一体的に形成され得る。また、賦型によって導光板21を製造する場合、光学要素23が、基部22と同一の樹脂材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0032】
光源25は、導光板21の基部22の側面のうち、複数の光学要素23が配列される方向における一方側の側面に配置される。光源25は複数のLED(発光ダイオード)からなる。光源25は、不図示の制御装置により、各LEDの点灯および消灯、並びに/又は、各LEDの点灯時の明るさを個別に独立して調節できるように構成されている。
【0033】
光拡散板26は、入射した光を拡散させて出射する機能を有する。光拡散板26は、導光板21よりも出光側に設けられている。これにより、導光板21から出射した光の均一性をさらに高め、導光板21に存在する傷を目立たなくすることができる。また、光拡散板26は、プリズム層27の支持体として機能している。
【0034】
プリズム層27は、光拡散板26よりも液晶パネル15側に設けられ、複数の単位プリズム27aを有している。単位プリズム27aは、液晶パネル15側に向けて突出しており、導光板21の導光方向に直交する方向に延びている。これにより光学機能層32で光を制御する方向(本実施形態では鉛直方向)において集光し、光学機能層32で光を効率よく全反射させることができ、光の利用効率を高めることができる。
【0035】
反射型偏光板28は、入射した光を直交する二つの偏光成分(P波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸に平行な方向)の偏光成分(例えば、P波)を透過させ、当該一方の方向に直交する他方の方向(反射軸に平行な方向)の偏光成分(例えば、S波)を反射する機能を有している。このような反射型偏光板28の構造は公知のものを用いることができる。
【0036】
光学シート30は、シート状に形成された第1の基材層31aと、第1の基材層31aの一方の面(本形態では導光板21側の面)上に積層された光学機能層32と、光学機能層32を挟んで第1の基材層31aと対向して配置され、接着層37により光学機能層32に接着された第2の基材層31bとを備えている。
【0037】
第1の基材層31a、第2の基材層31bは、光学機能層32を支持する平板形状の部材である。第1の基材層31a、第2の基材層31bをなす材料としては、種々の材料を使用することができるが、図示した実施形態では、第1の基材層31a、第2の基材層31bはいずれもポリエステルフィルムとされている
【0038】
光学機能層32は、光透過部33と、ルーバ部34と、を有している。光透過部33は、光を透過させることを主要な機能とする部位であり、
図1、
図2及び
図4に表れる断面において、略台形の断面形状を有している。
図4に拡大して示すように、光透過部33は、第1の基材層31a、第2の基材層31bの層面に沿って当該断面を維持して水平方向に延びるとともに、この鉛直方向に所定の間隔で配列される。そして、隣り合う光透過部33の間には、当初は略台形断面を有する溝33a(
図6参照)が形成され、当該溝33aに後述する材料が充填されることにより、ルーバ部34が形成される。なお、
図4を含む各図に示された構造は概略的なものであって、必ずしも実際の製品の寸法と一致するものではない。様々な製品において、各層の厚さが図示された寸法の関係と異なることもある。また、ルーバ部34の形成方法については、
図6を参照して後述する。
【0039】
光透過部33は、第1の基材層31aの層面に沿って当該断面を維持して
図4の紙面の手前-奥方向に延びるとともに、これに直行する方向(
図4の水平方向)に所定の間隔(ピッチ:Pk)で配列される。そして、隣り合う光透過部33の間には、略台形断面を有する溝が当初形成され、当該溝は光透過部33の上底側(導光板21側)に長い下底を有し、光透過部33の下底側(液晶パネル側)に短い上底を有する台形断面を有し、ここに後述する必要な材料が充填されることでルーバ部34が形成されている。なお、本形態では隣り合う光透過部33は長い下底側で連結されている。光学機能層32の構造を特定するために、主にルーバ部34に関して以下のようなパラメータを用いる。略台形断面を有するルーバ部34の略台形形状に関して、短い上底の幅をWeとし、長い下底の幅をWbとする。ルーバ部34の厚み(略台形の高さに相当する)をDkとする。
【0040】
上述した光透過部33のピッチ(すなわちルーバ部34のピッチでもある)Pkは30μm以上100μm以下であることが好ましい。さらに、
図4にθkで示したルーバ部34と光透過部33との斜辺における界面と、光学機能層32の層面の法線と、の成す角は1°以上10°以下であることが好ましい。ただし、この範囲外の角でもよく、例えば0°(すなわち、斜辺が光学機能層32の層面の法線と一致するもの)であってもよい。また、
図4に示したルーバ部34は、ほぼ等脚台形の形状を有するが、一方の脚の長さと他方の脚の長さとが異なっても良い。そしてルーバ部34の厚さDkは50μm以上150μm以下であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましい。ルーバ部34の略台形部の上底の幅Weと下底の幅Wbは、上述したルーバ部34の厚さDk、ピッチPk及び角θkとの関係を満たすように適宜選択される。これらのパラメータを好ましい範囲内とすることにより、光の透過と光の吸収とのバランスが適切になることが多い。
【0041】
光透過部33は、屈折率がNtとされている。このような光透過部33は、後述するように、所定の組成物を硬化させることにより形成することができる。屈折率Ntの値は特に限定されることはないが、屈折率が高すぎる材料は割れやすい場合が多く、また台形断面の斜面におけるルーバ部34との界面で適切に光を反射(全反射を含む。)する観点から屈折率は1.47より大きくかつ1.65以下が好ましく、より好ましくは1.49より大きくかつ1.57以下である。
【0042】
ルーバ部34は、隣り合う光透過部33の間に当初設けられていた溝33aに後述する材料を充填することで形成され、最終的には充填前の溝33aの断面形状と同様の断面形状となる。そしてルーバ部34は、屈折率がNrとされるとともに、光を吸収することができるように構成されている。具体的には屈折率がNrである透明樹脂に光吸収粒子が分散される。屈折率Nrは、光透過部33の屈折率Ntよりも低い屈折率とされる。このように、ルーバ部34の屈折率を光透過部33の屈折率より小さくすることにより、所定の条件で光透過部33に入射した光をルーバ部34との界面で適切に全反射させることができる。また、全反射条件を満たさない場合にも一部の光は当該界面で反射する。屈折率Nrの値は特に限定されることはないが、屈折率が高すぎる材料は割れやすい場合が多く、また当該全反射を適切に行う観点から1.47以上かつ1.65未満が好ましく、より好ましくは、1.49以上かつ1.57未満である。
【0043】
光透過部33の屈折率Ntとルーバ部34の屈折率Nrとの差は特に限定されるものではないが、0より大きくかつ0.14以下が好ましく、0.05以上かつ0.14以下であることがさらに好ましい。屈折率差を大きくすることにより、より多くの光を全反射させることができる。
【0044】
このような構成を備える光学機能層32と第2の基材層31bとは接着層37により貼り合わせられている。この工程は
図7を参照して後述する。接着層37を構成する接着剤370は、ポリウレタン樹脂、特に2液硬化型アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂である。
【0045】
このような構成を備える光学機能層32を含む光学シート30が撓むと、ユーザ(観察者)から見たときの光のムラが発生し得る。具体的には、
図2、
図3に示された光学シート30において、光学シート30の面に対して垂直な方向、すなわち
図2、
図3に厚さ方向として示している方向への撓みが、ユーザ(観察者)から見たときの光のムラの発生に影響を及ぼす。このような光学シート30の撓みの方向のうち、特に
図2に示した光学シート30の厚さ方向への撓み、すなわち光学機能層32の複数の光透過部33とルーバ部34が交互に配列される方向(
図2で「鉛直方向」とされている方向)に対して
図2の紙面内で直交する方向への撓みが、ルーバ部の向きを変化させるため、ユーザ(観察者)から見たときの光のムラの発生に大きく影響する。
【0046】
図1~
図3を参照して液晶表示装置10の構成についてさらに説明する。機能性フィルム40は、液晶パネル15よりも出光側に設けられ、映像光の質を向上させたり、液晶表示装置10を保護したりする機能を有する。例えば、機能性フィルム40として、反射防止フィルム、防眩フィルム、ハードコートフィルム、色調補正フィルム、光拡散フィルム等を用いることができる。また、これらのフィルムを複数組み合わせて用いて機能性フィルム40を構成してもよい。
【0047】
[光学シートの作製方法]
次に、
図5から
図7を参照しながら、光学シート30の作製方法について説明する。
図5から
図7は、光学シート30の作製工程の説明図である。なお、これらの説明図は、作成工程の概略を示したものであるため、特に光学シート30やその他の各フィルムの厚さ寸法など、実際の構成とは寸法・縮尺が異なる場合がある。
【0048】
上述したように、光学シート30の第1の基材層31a、及び任意的に設けられる第2の基材層31bは、いずれもポリエステルフィルムとされている。ポリエステルフィルムは、任意のジカルボン酸とジオールとを縮合させて得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等を用いることができる。
【0049】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等を用いることができる。
【0050】
ポリエステルフィルムを構成するジカルボン酸成分とジオール成分は、それぞれ1種又は2種以上を用いてもよい。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が用いることができ、好ましくはポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートを用いることができる。ポリエステル樹脂は他の共重合成分を含んでもよい。機械強度の点から、共重合成分の割合は3モル%以下が好ましく、好ましくは2モル%以下、更に好ましくは1.5モル%以下である。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れる。また、これらの樹脂は、延伸加工によって容易にリタデーションReを制御することができる。
【0051】
ポリエステルフィルムは、一般的な製造方法に従って得ることができる。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押し出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理及び必要に応じて弛緩処理を施すことにより、延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。延伸ポリエステルフィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。例えば後述する実施例1で使用されるポリエステルフィルムは、90~120℃の温度において、縦方向に延伸し、次に横方向に延伸しており、縦方向の延伸倍率は2.0倍、横方向の延伸倍率は4.5倍である。また、延伸倍率が大きくなると、その方向における破断強度が強くなることが知られている。
【0052】
ポリエステルフィルムの厚みは任意であり、例えば、15~300μmの範囲、好ましくは30~200μmの範囲で適宜設定できる。
【0053】
以上のように形成されたポリエステルフィルムである第1の基材層31aの一方の面に、光透過部33を形成する。
図5に示されるように、光透過部33の形状が転写できる形状(溝)を表面に有する金型ロールR1と、これに対向するように配置されたニップロールR2との間に、第1の基材層31aとなるポリエステルフィルム310を挿入する。このとき、ポリエステルフィルム310と金型ロールR1との間に、光透過部33(
図1、
図4等参照)を構成する組成物330を供給しながら、金型ロールR1及びニップロールR2を、
図5に矢印で示される方向に回転させる。これにより金型ロールR1の表面に形成された溝(光透過部33の形状を反転した形状)に組成物330が充填され、該組成物330が金型ロールR1の表面形状に沿ったものとなる。
【0054】
光透過部33を構成する組成物330として、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等の電離放射線硬化型の樹脂を用いることができる。
【0055】
金型ロールR1とポリエステルフィルム310との間に挟まれ、ここに充填された組成物330に対し、ポリエステルフィルム310側から光照射装置61によって光線(紫外線等)を照射する。これにより、組成物330が硬化する。そして、離型ロールR3によって、金型ロールR1からポリエステルフィルム310および成形された光透過部33からなる充填前シート36aを離型させる。
【0056】
次に、ルーバ部34を形成する。ルーバ部34を形成するには、
図6に示されるように、充填前シート36aの隣り合う光透過部33の間の溝33aに、ルーバ部34を構成する組成物340を過剰に供給する。その後、余剰分の当該組成物340を、ブレード62等によって掻き落とす。そして、溝33aを充填するようにして残った組成物340に光源(図示せず)から光線(紫外線等)を照射する。これにより、組成物340が硬化し、ルーバ部34が形成され、中間シート36bが得られる。
【0057】
ルーバ部34を構成する組成物340として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等の光硬化型樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂に、着色された光吸収粒子が分散しているものを用いることもできる。
【0058】
また光吸収粒子を分散させる代わりに顔料や染料によりルーバ部全体を着色することもできる。光吸収粒子を用いる場合には、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0059】
このように製造された中間シート36bに、さらに第2の基材層31bを接着剤370を用いて貼り合わせる。具体的には、
図7に示されるように、ロールR4から、中間シート36bを送り出すとともに、ロールR5から、同方向に第2の基材層31bとなるポリエステルフィルム310を送り出す。この際、中間シート36bに含まれる第1の基材層31aと、第2の基材層31b(ポリエステルフィルム310)の流れ方向を一致させて貼り合わせることにより、位相差に基づく偏光の乱れや、それに伴う色彩ムラの発生や透過率の低下を防止することができる。中間シート36b及びポリエステルフィルム310は、ローラ380によって互いに接近するように案内され、一体化する。このとき、ポリエステルフィルム310は、光透過部33やルーバ部34を挟んで第1の基材層31aと対向するように配置される。そして、中間シート36bとポリエステルフィルム310との間に、図示しない接着剤供給部から、混合された2液硬化型アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂の接着剤370を導入し、両者を貼り合わせることができる。そしてこの貼り合わせにより完成した光学シート30は、ロールR6に巻き取られる。所定長さだけ巻き取られると、光学シート30は切断され、巻き取り済のロールR6は新たなロールR6に交換されて次の巻き取りを開始する。
【0060】
なお、
図7に概略的に示す工程において、ロールR5からポリエステルフィルム310を送り出す前に、このポリエステルフィルム310のうち中間シート36bに向き合う面、すなわち接着剤370の接着層と接することとなる面に、事前に反射型偏光フィルムを貼り付けておくことも可能である。この場合、第2の基材層31bはポリエステルフィルム310と図示しない反射型偏光フィルムを備えることとなる。このような構成を備えることにより、光学シートに反射型偏光板28の役割を兼ね備えさせることが可能となる。よって、反射型偏光板28を別個の部材として用いる必要がなくなるため、液晶表示装置の部品点数を削減するとともに、全体の厚さを削減することができ、光のムラの発生を抑制しながら部材の軽量化・薄型化を図ることが可能となる。
【0061】
このように、光学シートを製造するにあたって、複数のロール間での光学シートの受け渡し、すなわちロールトゥロール工程が存在し、最終的にまたロールに巻き取られることになる。
【0062】
(実施例)
実施例に係る光学シートの具体的な形状は次のとおりである。
【0063】
<第1の基材層>
・材料:ポリエステルフィルム
・厚み:80μm
<光学機能層>
・ピッチ(
図4参照):Pk=39μm
・ルーバ部上底幅:4μm(
図4のWa)
・ルーバ部下底幅:10μm(
図4のWb)
・斜面角度:一方が0°、もう一方が3°(
図4のθk)
・ルーバ部の厚み(
図4参照):Dk=102μm
・光学機能層の厚み:125μm
・光透過部の材料及び屈折率:屈折率1.57の紫外線硬化型ウレタンアクリレート
・ルーバ部の材料及び屈折率:屈折率1.49の紫外線硬化型ウレタンアクリレートに平均粒径4μmのアクリルビーズの表層にカーボンブラックを含有させた黒ビーズを20質量%分散
<第2の基材層>
上記光学機能層の上記第1の基材層と反対側の面に更に以下のような第2の基材層を後述する接着剤によって貼り合わせた。
・材料:ポリエステルフィルム
・厚み:80μm
<接着剤>
ポリウレタン樹脂の一例として、以下のような2液硬化型アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂を上記光学機能層と第2の基材層とを貼り合わせるための接着剤として用いた。
主剤:セイカダインTS241プライマー(大日精化工業)
硬化剤:セイカダインTS241硬化剤(大日精化工業)
主剤と硬化剤は、主剤:硬化剤=20:1の比率で混合した。
接着層の厚さは25μmである。
【0064】
(比較例1)
実施例に係る光学シートにおいて、光学機能層と第2の基材層を貼り合わせる接着剤の材料をアクリル接着剤(パナック製 PD-S1)に変更して、比較例1に係る光学シートを作製した。
【0065】
(比較例2)
実施例に係る光学シートにおいて、光学機能層と第2の基材層を貼り合わせる接着剤の材料を比較例1とは別のアクリル接着剤(日東電工製 CS9861US)に変更して、比較例2に係る光学シートを作製した。
【0066】
光学シートの接着層の貯蔵弾性率や、光学シートの切断に伴う切断面からの接着剤のはみ出し、液晶表示装置への光学シートの実装後の光のムラの発生について確かめるため、上述した実施例、比較例1、比較例2の光学シートについてそれぞれ以下に述べる確認・試験を行った。
【0067】
[貯蔵弾性率試験]
実施例、比較例1、比較例2のサンプルを、ミクロトーム(大和光機工業製REM-710)にて断面調整後、ステージに固定して、以下の評価方法で接着層のナノ粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率を得た。
装置:環境制御ナノインデンテーション装置 日産アーク製
使用圧子:球形圧子(先端半径1μm)
測定雰囲気:真空(10-3Pa以下)
測定温度:85℃
測定周波数250から1Hz
【0068】
[接着剤のはみ出し確認]
実施例、比較例1、比較例2のサンプルをプレスカッター(トムソンカッター)型抜きで抜き加工し、95℃で1000時間試験した後、切断面の端部における接着剤のはみ出しの有無を顕微鏡を用いて目視により確認した。
【0069】
[光のムラの確認]
光のムラの発生については、各実施例及び比較例の光学シートを12.3インチIPS液晶ディスプレイに実装し、温度95℃の環境において1000時間、温度65℃、湿度95%の環境において1000時間、温度-45℃の環境において1000時間、の信頼性試験を行った液晶ディスプレイを動作させた際の光のムラの有無を目視により確認した。
【0070】
表1は、各実施例及び比較例に関する貯蔵弾性率の測定結果、接着剤はみ出しの確認結果、及び光のムラの確認結果を示すものである。
【0071】
【0072】
このように、比較例1、2のようなアクリル接着剤を使用した光学シートに関しては、接着剤のはみ出しや光のムラが発生したのに対し、ポリウレタン樹脂を接着剤として使用した光学シートに関しては、接着剤のはみ出しや光のムラが発生しないことが分かった。
【0073】
比較例1、2のようなアクリル接着剤を使用した場合の接着層の貯蔵弾性率は0.8~1.0×105Paであり、これらの比較例において接着剤のはみ出しが生じることが分かった。このように、接着層の貯蔵弾性率が低いことは、接着層を構成する接着剤が動きやすく、光学シート切断面の端部からはみ出しやすいことを示唆している。
【0074】
比較例1、2のようなアクリル接着剤を使用した場合の接着層の貯蔵弾性率は0.8~1.0×105Paであり、これらの比較例において光のムラの発生が見られたことから、接着層を構成する接着剤の動きやすさが光学的な影響を生じさせていることが示唆される。つまり、通常は光学機能層において光透過部とルーバ部が規則正しく配列されているが、接着層を構成する接着剤の動き(ずれ)に引きずられるようにして光透過部とルーバ部の配列が乱れてしまい、視野角が変化することで、光のムラが生じやすくなってしまう。特に、光学シートの中心部と、光学シートの外周部とでは、接着剤の動き(ずれ)の量が異なるため、ルーバ部の斜面角度が場所によって変わり、さらに光のムラが生じると考えられる。よって、接着層の貯蔵弾性率が比較例のように0.8~1.0×105Paという低い値となることは好ましくない。
【0075】
その一方で、接着層の貯蔵弾性率が実施例のような1~2×109Paという範囲を大きく超えるような接着剤を使用すると、接着層の剛性が高まり、その結果光学シート全体の剛性も高まることが想定される。光学シート全体の剛性が高くなりすぎると、上述したような光学シートの製造におけるロールへの巻き取りの際に光学シートが割れてしまうおそれがある。このことは製造効率の低下にもつながるため、接着層の貯蔵弾性率が大きすぎることもまた好ましくない。なお、上述した実施例では、ロールトゥロール特性も問題無く、また加工速度は10m/minを有しており、製造効率の観点からも問題は無い。
【0076】
すなわち、上述した実施例の光学シートや、この光学シートを用いた液晶表示装置によれば、接着層のはみ出しや光のムラの発生を抑制することが可能であり、さらに製造効率の低下も防ぐことが可能となる。
【0077】
上述した実施例で接着剤として使用した2液硬化型アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂は、使用前に主剤と硬化剤とを混合する必要がある。このため、各比較例で使用したアクリル接着剤と比較して、その使用にあたり工程数が増加してしまう。しかし2液硬化型アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂の使用は、接着層のはみ出しや光のムラの発生を抑制しつつ製造効率の低下も防ぐという、大きな利点をもたらす。
【0078】
なお、上述した実施例では、ポリウレタン樹脂として、2液硬化型アクリルポリオール-ポリウレタン樹脂を使用したが、このほかにも、ポリエーテルポリオール-ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリオール-ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート-ポリウレタン樹脂などの様々なポリウレタン樹脂を接着剤として使用することも可能である。
【0079】
また、上述した実施例における接着層の貯蔵弾性率と同様の貯蔵弾性率を有する接着層を形成可能な接着剤であれば、他の接着剤も使用することも可能である。
【0080】
また、上述した実施例の製造方法によれば、液晶表示装置、特に車載用の液晶表示装置への使用に好適な光学シートを製造することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 液晶表示装置
14 下偏光板(偏光フィルム)
30 光学シート
31a 第1の基材層
31b 第2の基材層
32 光学機能層
33 光透過部
34 ルーバ部
37 接着層