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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】先行車両判定システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20241018BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241018BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241018BHJP
【FI】
B60W30/14
G08G1/16 C
B60W60/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021160496
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050414
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】廣田 智明
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-126190(JP,A)
【文献】特開2001-343460(JP,A)
【文献】特開2009-002697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を基準として前記車両の前方に位置する前方車両の相対位置を取得する前方車両位置取得部と、
前記車両が走行している道路の道路形状を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記車両の前方において前記道路形状に沿って延びる所定範囲に、前記前方車両が位置する場合に、前記前方車両を前記車両の先行車両と判断する先行車両判断部と、を備え、
前記先行車両判断部は、
前記車両の現在位置から前記車両の進行方向に前記道路形状を辿っていき、前記車両が走行する走行車線の中心線が、前記車両の現在位置での車幅方向における前記道路の左端もしくは右端を前記車幅方向において越えた地点から、前記車両の現在位置を起点とし、法定速度および既定の減速度に応じて定まる前記前方車両の検知の対象に対応した最大距離までの区間に前記前方車両が位置し、かつ、前記前方車両から前記走行車線の前記中心線に延びる垂線方向の距離が閾値以内である場合に、前記所定範囲に、前記前方車両が位置すると判断する、
先行車両判定システム。
【請求項2】
車両を基準として前記車両の前方に位置する前方車両の相対位置を取得する前方車両位置取得部と、
前記車両が走行している道路の道路形状を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記車両の前方において前記道路形状に沿って延びる所定範囲に、前記前方車両が位置する場合に、前記前方車両を前記車両の先行車両と判断する先行車両判断部と、を備え、
前記先行車両判断部は、
前記車両の現在位置を起点とし、法定速度および既定の減速度に応じて定まる前記前方車両の検知の対象に対応した最大距離までの区間内であって、かつ、前記車両が走行する走行車線の中心線から車幅方向の既定の距離の範囲内に前記前方車両が位置し、ならびに、前記車両の現在位置から前記車両の進行方向に前記道路形状を辿っていき、前記走行車線の前記中心線が、前記車両の現在位置での前記車幅方向における前記道路の左端もしくは右端を前記車幅方向において越えた地点より手前の範囲に前記前方車両が位置する場合に、前記所定範囲に、前記前方車両が位置すると判断する、
先行車両判定システム。
【請求項3】
前記先行車両判断部は、
前記前方車両が前記所定範囲に位置する場合に追従する、
請求項1または請求項2に記載の先行車両判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方に位置する先行車両を検出するために、車載カメラを用いることが知られている。特許文献1には、CCDカメラや近赤外線カメラで撮影した画像から、自車両が走行する走行車線における左右の走行区画線(例えば白線)を検出し、その検出した走行区画線に基づいて先行車両の存在を判断(検出)する車両制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6589760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両制御装置のように、車載カメラによる画像認識によって走行区画線を検出する場合には、遠方やカーブにおいては、白線の認識精度が低下することがある。このように白線の認識精度が低下すると、白線に基づく先行車両の認識精度が低下する。先行車両の認識精度が低下した状態において、例えば、自車両が先行車両を追従する追従制御を実行している場合には、先行車両の検知が遅れる、または、直前まで先行車両と判定していた車両を先行車両と判定しなくなる(言い換えれば、先行車両を見失う)などの不都合が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、先行車両の検出精度が低下することを抑制できる先行車両判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、先行車両判定システムは、車両を基準として前記車両の前方に位置する前方車両の相対位置を取得する前方車両位置取得部と、前記車両が走行している道路の道路形状を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、前記車両の前方において前記道路形状に沿って延びる所定範囲に、前記前方車両が位置する場合に、前記前方車両を前記車両の先行車両と判断する先行車両判断部、とを備える。
【0007】
すなわち、先行車両判定システムでは、地図情報に基づいて、車両(自車両)の前方に位置する車両が先行車両か否かを判断する。具体的には、自車両を基準として前方車両の相対位置を取得し、地図情報に含まれる道路形状に沿って延びる所定範囲に、前方車両が位置する場合に、前方車両を先行車両と判断する。つまり、カメラ等による前方車両の相対位置の取得に加えて、地図情報が示す道路形状に基づいて前方車両の位置を特定する。これにより、遠方やカーブ区間においてカメラ等によって白線を検出する必要はなくなる。カメラ等によって前方車両の相対位置を検出する必要はあるが、同一距離であれば白線より車両の像の方が大きく、前方車両が遠方やカーブ区間に存在していても白線より検出精度は低下しない。このため、遠方やカーブ区間において白線に基づいて車線の範囲を特定する構成と比較して、先行車両の検出精度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】先行車両判定システムの構成を示すブロック図である。
図2図2Aは撮影されたカメラ画像の例を示す図であり、図2Bは車幅軸と車長軸とを含む平面図である。
図3】直線区間を特定する模式図であって、図3Aはノード・形状補間点に基づいて特定する例を示し、図3Bは曲率半径に基づいて特定する例を示し、図3Cは曲率半径に基づいて特定する他の例である。
図4図4Aは直線ロジックによって先行車両を判定する例であり、図4Bはカーブロジックによって先行車両を判定する例である。
図5】本実施形態における制御の一例を示すフローチャートである。
図6】先行車両を検知する制御例を示すサブルーチンである。
図7】追従走行制御の終了条件を説明するための模式図であって、図7Aは直線道路の例であり、図7Bは片側1車線のカーブ区間の例であり、図7Cは片側2車線のカーブ区間の例であり、図7Dは交差点の例であり、図7Eは狭角分岐付近の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)先行車両判定システムの構成:
(2)先行車両判定処理:
(3)他の実施形態:
【0010】
(1)先行車両判定システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる先行車両判定システムを含むナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、車両に備えられており、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、および、記録媒体30を備えている。ナビゲーションシステム10は、記録媒体30やROMに記憶された種々のプログラムを制御部20で実行することができる。制御部20は、このプログラムの一つとして先行車両判定プログラム21を実行することができる。記録媒体30には、予め地図情報30aが記録されている。
【0011】
地図情報30aは、交差点の位置の特定や、経路案内等に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、道路やその周辺に存在する地物の位置や形状等を示す地物データ等を含んでいる。なお、本実施形態においてノードは例えば交差点を示している。
【0012】
また、リンクデータには、当該リンクデータが示す道路区間に存在する車線の数および車線の幅を示す情報が対応づけられている。本実施形態においてノードや形状補間点が示す位置は道路区間上の中央線の位置を示しており、当該位置と車線の数および車線の幅によって車線の位置や車線が存在する範囲が特定可能である。
【0013】
ナビゲーションシステム10を備える車両を、これ以降の説明では自車両と称する。本実施形態における自車両は、カメラ40、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43、および、ユーザI/F部44を備えている。カメラ40は、自車両の前方に向けられた視野内の画像を取得する装置である。カメラ40の光軸は自車両に対して固定されており、ナビゲーションシステム10において当該光軸の方向が既知であればよい。本実施形態において、カメラ40は自車両の車幅方向と光軸中心が垂直、かつ車幅方向の車両中心を通る。また、カメラ40は、自車両の進行方向前方が視野に含まれるような姿勢で自車両に取り付けられている。制御部20は、当該カメラ40の出力する画像を取得し、特徴量の抽出等によって画像を解析することによって自車両の周辺に存在する他車両を検出することができる。なお、カメラ40は、従来知られている車載カメラであってよく、例えば単眼カメラやステレオカメラが用いられる。
【0014】
GNSS受信部41は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して地図の座標系における自車両の現在位置(緯度、経度等)を取得する。車速センサ42は、自車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、自車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、自車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して自車両の進行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、自車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、自車両の出発地と走行軌跡とに基づいて現在位置が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された自車両の現在位置がGNSS受信部41の出力信号に基づいて補正される。
【0015】
ユーザI/F部44は、利用者の指示を入力し、また利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル方式のディスプレイやスピーカ等を備えている。すなわち、ユーザI/F部44は画像や音の出力部およびユーザによる指示の入力部を備えている。
【0016】
制御部20は、図示しないナビゲーションプログラムの機能により図示しないユーザI/F部44の入力部を介して利用者による目的地の入力を受け付け、地図情報30aに基づいて自車両の現在位置から目的地までの走行予定経路を探索する。また、制御部20は、当該ナビゲーションプログラムの機能によりユーザI/F部44を制御し、走行予定経路に沿って走行するための案内を実行する。本実施形態においては、当該ナビゲーションプログラムの付加機能として、自車両の前方に位置する車両など周辺に存在する他車両の位置や挙動を推定し、案内することが可能であり、当該案内は先行車両判定プログラム21によって実現される。
【0017】
先行車両判定プログラム21は、当該案内を実現するため前方車両位置取得部21aと、地図情報取得部21bと、先行車両判断部21cとを備えている。前方車両位置取得部21aは、自車両を基準として自車両の前方に位置する他車両(すなわち前方車両)の相対位置を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、カメラ40が撮影した画像に基づいて自車両を基準とした前方車両の相対位置(相対方位および直線距離)を取得する。
【0018】
制御部20は、カメラ画像から前方車両が含まれる矩形の車両領域、すなわちバウンディングボックスを特定する。具体的には、カメラ40で連続的に撮影された画像を取得し、レンズによる歪み補正等を施す。また制御部20は、例えばYOLO(You Only Look Once)やパターンマッチング等を用いた画像認識処理を実行することにより、カメラ画像に、車両の特徴(例えば、貨物自動車、乗用車、二輪車等)が含まれるか否かを判定し、自車両の前方に位置する車両の画像を検出する。図2Aは、カメラ40によって撮影され、歪み補正が行われた後の画像Iの一例を示す図である。図2Aに示すように、本実施形態においてバウンディングボックスBは、画像Iから検出された前方車両を囲む矩形領域である。
【0019】
より具体的に、前方車両の相対位置の取得について説明する。制御部20は、先ず、自車両の位置を基準とした前方に位置する前方車両(その他周辺車両を含む)の相対方位、および、自車両から前方車両までの距離を推定する。ついで、制御部20は、自車両の位置を基準として、前方車両の道路上の位置を推定し、前方車両の道路上の位置から、前方車両の走行車線を特定する。
【0020】
走行車線を特定するための処理について説明する。バウンディングボックスBのサイズや位置は、例えばバウンディングボックスBの左上の頂点の座標と右下の頂点の座標によって表される。制御部20は、バウンディングボックスの対角の2頂点の座標から、バウンディングボックスBの高さh(画素数)と、バウンディングボックスBの代表座標Bo(x、y)を取得する。代表座標Boは、例えばバウンディングボックスの中心座標(幅方向および高さ方向の中点)等である。制御部20は、バウンディングボックスの代表座標Boの位置に基づいて、自車両から見た前方車両の相対方位を特定する。また、制御部20は、バウンディングボックスBの高さhおよび前方車両の種類に基づいて、自車両から前方車両までの距離を特定する。
【0021】
具体的には画像I内の各座標には、自車両を基準とした場合の、当該座標に写る物体の相対方位が対応付けられており、対応関係を示す情報が記録媒体30に記録されている。制御部20は、この対応関係に基づいて、代表座標Boに写る前方車両の相対方位を取得する。本実施形態において制御部20は、車両を基準とした車両座標系を利用する。車両座標系は、互いに直交する車幅軸(車両左右方向の軸(図2BのX軸))と車長軸(車両前後方向の軸(図2BのY軸))とで定義される座標系である。
【0022】
図2Bは、車幅軸と車長軸とを含む平面を示している。この図2Bにおける点Oは、車両における車両座標系の原点である。図2Bの例において、車長軸は自車両の前後方向に平行である。自車両が直線の道路区間を走行している場合、車長軸は道路区間を示すリンクと平行である。相対方位は、例えば、車両座標系の原点と代表座標Boに対応する地点とを結ぶ線分SLと車長軸とのなす角度(θ)で表現される(例えばθが負値の場合は進行方向前方に向かって車長軸の左側、正値の場合は右側であることを示す)。
【0023】
さらに、制御部20は、物体認識処理により、バウンディングボックスB内の前方車両の種類を特定する。前方車両の種類は、車体の大きさを示す種類であればよく、例えば貨物自動車、乗用車、二輪車等のように分類されてよい。また、本実施形態においては前方車両の種類毎に、代表的な車高(例えば乗用車の場合、1.5[m]等)が規定されている。さらに、自車両と前方車両との直線距離と、当該前方車両をカメラ40で撮影した場合のバウンディングボックスBの高さhとが予め計測されている。そして、車両の種類毎に、バウンディングボックスBの高さhと、車両座標系の原点を基準とした直線距離との対応関係を示す情報が記録媒体30に記録されている。
【0024】
例えば、車高の代表的な実寸が1.5[m]の乗用車を囲むバウンディングボックスの高さがh1画素であれば直線距離がD1[m]であり、h2画素であれば直線距離がD2[m]であることが対応付けられている。貨物自動車や二輪車等の他の種類についてもそれぞれ対応関係を示す情報が記録媒体30に記憶されている。制御部20は、この対応関係に基づいて、バウンディングボックスBの高さhに対応する直線距離Dを算出する。以上のようにして、制御部20は、カメラ40が撮影した画像に基づいて、画像I内に含まれる前方車両の相対方位θと、前方車両との直線距離Dを取得する。
【0025】
制御部20は、GNSS受信部41の信号に基づいて特定した自車両の位置を基準とし、上述の相対方位θと自車両との直線距離Dとに基づいて、前方車両の位置を特定する。すなわち、自車両の位置を原点として、車長軸と車幅軸とで定義される座標位置によって前方車両の相対位置が特定される。このように、制御部20は、カメラ画像Iに含まれるバウンディングボックス(車両領域)Bの位置およびサイズに基づいて、自車両を基準とした、前方車両の位置を特定する。また、制御部20は、カメラ画像に基づいて、白線認識処理を行う。白線認識は、例えば、セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)を行うことにより認識する。すなわち、制御部20は、予め用意された機械学習済モデルに画像を入力し、画素毎に各画素に撮影された被写体の種類をラベリングする。ラベルの中には白線が含まれており、自車両の周囲において白線とラベリングされた画素とが自車両の進行方向と平行な方向に延びており、直線または破線を形成している場合に、制御部20は、当該白線を車線の境界線とみなす。また、画像内の各画素の座標毎に、各画素に撮影された被写体と車両との相対距離とが予め対応づけられている。制御部20は、車両の左右に存在する最も近い白線を特定し、相対距離を特定することにより、自車両が走行している車線の境界線と自車両とにおける車幅方向の相対距離を特定することが可能である。なお、白線認識を行う処理は、セマンティックセグメンテーションの他、ハフ変換や白線の特徴量を抽出する画像処理等であってもよい。
【0026】
制御部20はさらに、自車両の速度と、異なるタイミングで撮影された複数のカメラ画像における前方車両の位置の変化量とに基づいて、前方車両の速度を検出する。具体的には、制御部20は、複数のカメラ画像において、前方車両を認識し、認識した前方車両の移動量を特定する。そして、制御部20は、複数のカメラ画像間の時間変化と、前方車両の移動量とから、前方車両の車両に対する相対速度を求め、自車両の速度を加算することで、前方車両の速度を検出する。また、制御部20は、上述のYOLOやパターンマッチング等を用いた画像認識処理により、前方車両の進行方向や移動方向を特定する。
【0027】
地図情報取得部21bは、自車両の現在位置周辺の道路の位置および道路形状を示す道路情報を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。制御部20は、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号と地図情報30aとに基づいて地図の座標系における自車両の現在位置を取得する。このようにして自車両の現在位置を特定すると、制御部20は、自車両の現在位置の周辺の道路形状(ノードデータ、リンクデータ、形状補間点データ、道路の曲率半径など)を取得する。なお、曲率半径は、例えばリンクに対して所定間隔毎に予め定められている。
【0028】
先行車両判断部21cは、自車両の前方において道路形状に沿って延びる所定範囲に前方車両が位置する場合に、その前方車両を自車両の先行車両と判断する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、上述の前方車両の相対位置を特定し、道路形状に沿って延びる所定範囲に、前方車両が位置するか否かを判断する。
【0029】
前方車両が所定範囲に位置するか否かの判断は、道路形状が直線区間またカーブ区間であるかの特定を行い、その直線区間またはカーブ区間のいずれかの区間において、所定範囲に前方車両が位置する場合に、前方車両を自車両の先行車両と判断する。そして、先行車両と判断した場合には、追従走行を開始する。以下、具体的な処理内容について説明する。
【0030】
図3A図3Cは、走行車線が直線区間であると特定する処理について説明するための図であり、これら図3A図3Cのうちの少なくとも一つの手段によって走行車線が直線区間であると特定する。図3Aは、ノード間の形状補間点(P1,P2)から道路形状を特定する例であり、形状補間点に基づく道路形状から所定範囲のエリアを直線区間と特定する。より具体的には、所定範囲は、X軸で示す車幅方向(左右方向)と、Y軸で示す車両進行方向(車両前後方向)とで表すことができる。図3Aに示す例では、自車両が走行車線の中心線(以下、車線中心線と記す)CLを走行しているか否かをカメラ画像による車線境界線(例えば白線)の認識によって判断する。車線中心線CLは、一般的な道路幅(例えば3.0[m])の中心であり、したがって、車線中心線CLから左右の車幅方向にそれぞれ既定距離(例えば1.5[m])の間隔が設けられている。言い換えれば、車線中心線CLから右端Xrまでの距離と、車線中心線CLから左端Xlまでの距離は等しくなる。したがって、自車両Veの中心(車両中心)が車線中心線CLに一致しない場合(すなわち車両中心と車線中心線とがずれている場合)には、車幅方向における既定距離をずれに相当する量に応じてオフセットする。なお、車線中心線CLから左右の車幅方向への既定距離がずれていることは、車両中心が車線中心からずれていることになるので、言い換えれば、ずれに相当する分、車両中心をオフセットするとも言い得る。例えば、自車両(車両中心)が図3Aに示すように車線中心線CLから左側にずれている場合には、車幅を3.0[m]とすると、車線中心線CLから左端Xl(車線中心線CLを原点として負)までの距離、および、車線中心線CLから右端Xr(車線中心線CLを原点として正)までの距離は、
右端Xr=1.5+オフセット値α
左端Xl=-1.5+オフセット値α
となる。また、自車両Veが車線中心線CLから右側にずれている場合にも、同様に上記の計算式を適用できる。なお、オフセット値αは、車線中心線CLから左側にずれると正の値になり、車線中心線CLから右側にずれると負の値になる。このようにして、所定範囲の車幅方向が特定される。
【0031】
ついで、直線区間における所定範囲の進行方向(Y軸)の既定距離について説明する。進行方向の既定距離は、例えば一般道路における法定速度60[Km/h]から0.2Gで停止するまでの距離を想定して最大80[m]とする。なお、60[Km/h]から0.2Gの停止は、運転者や搭乗者に違和感を与えない減速度である。また、最大80[m]は、法定速度に応じた距離であり、したがって、高速道路など法定速度が大きくなる場合には、それに伴って、進行方向の最大距離も増大する。これを前提に、制御部20は、自車両Veの進行方向において、形状補間点から求めた線分で示される道路形状を探索していき、車線中心線CLが左右いずれかの端部を超えた地点を上端T[m]とする。つまり、制御部20は、進行方向に道路形状を辿っていき、車線中心線CLが車幅方向における左端Xlもしくは右端Xrを超えた地点を進行方向の既定距離とする。図3Aに示す例では、車線中心線CLが右端Xrを超えた地点が上端Tとなっている。なお、上端Tが最大距離である80[m]未満である場合には、上端T[m]~80[m]の区間は、後述するカーブ区間となる。
【0032】
図3Bは、曲率半径から道路形状を特定する例であり、曲率半径に基づく道路形状から所定範囲内のエリアを直線区間と特定する。より具体的には、所定範囲は、X軸で示す車幅方向(左右方向)と、Y軸で示す車両進行方向(車両前後方向)とで表すことができる。所定範囲の車幅方向の特定については、図3Aの例と同様であるため、その説明を省略する。
【0033】
図3Bの例における所定範囲の進行方向(Y軸)の既定距離について説明する。進行方向の既定距離は、例えば一般道路における法定速度60[Km/h]から0.2Gで停止するまでの距離を想定して最大80[m]とする。これを前提に、自車両Veの進行方向において、車線中心(左端Xlと右端Xrとの間の中央)から、地図情報30aに記憶された曲率半径の円弧が自車両の前方に延びている状態が想定される。図3Bにおいて、車両前端における車線中心LOから延びる実線は当該円弧を示している。制御部20は、当該円弧に沿って前方に向けて円弧と左端Xlまたは右端Xrとの交点を探索していき、左右いずれかの端部と交差した地点を上端T[m]とする。つまり、曲率半径に基づいて進行方向に道路形状を辿っていき、車線中心線CLが、車幅方向における左端Xlもしくは右端Xrを超えた地点が進行方向の既定距離となる。図3Bに示す例では、車線中心線CLが、右端Xrを超えた地点が上端Tとなっている。なお、この場合においても、図3Aと同様のオフセットが行われる。すなわち、カメラ画像に基づいて、自車両の中心(車両中心)が車線中心に一致しないことが特定された場合、制御部20は、自車両Veの中心と車線中心とのずれ量に相当する量だけ車幅方向の既定距離をオフセットする。また、上端Tが最大距離である80[m]未満である場合には、上端T[m]~80[m]の区間は、後述するカーブ区間となる。
【0034】
図3Cは、曲率半径から道路形状を特定する他の例であり、曲率半径に基づく道路形状から所定範囲内のエリアを直線区間と特定する。より具体的には、所定範囲は、X軸で示す車幅方向(左右方向)と、Y軸で示す車両進行方向(車両前後方向)とで表すことができる。所定範囲の車幅方向の特定については、図3Aの例と同様であるため、その説明を省略する。
【0035】
図3Cの例における所定範囲の進行方向(Y軸)の既定距離について説明する。進行方向の既定距離は、例えば一般道路における法定速度60[Km/h]から0.2Gで停止するまでの距離を想定して最大80[m]とする。またこの図3Cの例では、隣接する形状補間点P3~P6の間の区間毎に曲率半径が定義されている。なお、形状補間点の区間毎曲率半径は地図情報30aに予め定めに記憶されている。これを前提に、自車両の進行方向において、地図情報30aに記憶された曲率半径に基づいて道路形状を探索していき、曲率関係が予め定められた閾値以下になった地点を上端Tとする。上記の条件(すなわち、道路幅を車線中心線CLから左右に1.5[m]ずつ、かつ進行方向の既定距離を法定速度60[Km/h]から0.2Gで停止する場合の最大80[m]とした条件)では、曲率半径が2000[m]以下となった地点が上端Tとなる。図3Cに示す例では、形状補間点P3からP4の曲率半径が2000[m]であり、形状補間点P4からP5の曲率半径が1600[m]となっており、すなわち形状補間点P2の地点が、曲率半径が閾値以下となる点(上端T)である。なお、この場合においても、図3Aと同様のオフセットが行われる。すなわち、カメラ画像に基づいて、自車両の中心(車両中心)が車線中心に一致しないことが特定された場合、制御部20は、自車両Veの中心と車線中心とのずれ量に相当する量だけ車幅方向の既定距離をオフセットする。また、上記の条件(法定速度や道路幅)が変更された場合には、曲率半径の閾値も変化する。また、上端Tが最大距離である80[m]未満である場合には、上端T[m]~80[m]の区間は、後述するカーブ区間となる。以上のようにして、制御部20は、自車両Veの走行車線が直線区間であることを特定する。
【0036】
また、制御部20は、先行車両判断部20cの機能により、前方車両が上述の所定範囲に位置する場合に、自車両の先行車両であると判断する。図4Aは、前方車両Ve_1が先行車両であるか否かの判断処理(直線ロジック)を説明する図であって、制御部20は、直線区間において、自車両Veと上述の上端T[m]との間に前方車両が位置する場合に、前方車両Ve_1を先行車両であると判断する。すなわち、制御部20は、前方車両Ve_1が車幅方向で左端Xlと右端Xrとの間に位置し、かつ上端Tより手前に位置する場合には、先行車両と判断する。つまり、制御部20は、所定範囲に前方車両Ve_1が位置する場合に、その前方車両Ve_1を先行車両と判断する。
【0037】
なお、対向車が、停車中の車両などの障害物を避けて、走行車線に侵入してくる場合がある。また、交差点の場合には、他車両が走行車線を横断する場合がある。したがって、制御部20は、そのような対向車や走行車線を横断する車両を誤って先行車両と判断することを回避するために、各車両の進行方向の向きや移動方向を考慮して、先行車両の判断を行ってもよい。また、所定範囲に位置しない他車両(すなわち左端Xlや右端Xrより外側に位置する車両)は、カメラ画像で認識される場合であっても、先行車両として判断しない。
【0038】
つぎに、図4Bを参照しつつ、自車両の前方に存在するカーブ区間を特定し、カーブ区間に位置する前方車両Ve_1が先行車両であるか否かの判断処理(カーブロジック)について説明する。制御部20は、先ず、地図情報30aに記憶された道路形状からカーブ区間を特定する。具体的には、制御部20は、上述の形状補間点または曲率半径から求めた道路形状において、直線区間でないと判断した範囲をカーブ区間と特定する。図4Bに示す例では、進行方向で先行車両を検知する対象エリア(最大80[m])において、直線区間とカーブ区間とが設けられている。すなわち、直線区間の上端Tから最大距離80[m]以内の区間がカーブ区間となる。
【0039】
カーブ区間における先行車両の判断は、自車両Veが走行している走行車線の車線中心線CLに基づいて実施される。本実施形態において、車線中心線CLは、一般的な道路幅(例えば3.0[m])の中心であり、したがって、自車両Veの中心が車線中心線CLに一致しない場合には、車幅方向の既定距離がオフセット(言い換えれば車両中心がオフセット)されることで、車線中心線CLが特定される。オフセットについては、上述の直線区間で説明したものと同様であるため、ここではその説明を省略する。車線中心線CLは、例えば、上述の図3A図3B図3Cのように特定可能である。すなわち、図3A図3Cの場合、制御部20は、隣接する形状補間点を結ぶ線を車線中心線CLとみなす。図3Bの場合、制御部20は、自車両Veの前方に延びる円弧を車線中心線CLとみなす。
【0040】
ついで、制御部20は、前方車両Ve_1が直線区間の上端Tから最大距離80[m]以内において、前方車両Ve_1から車線中心線CLに延びる垂線方向の距離β(以下、垂線距離βとも記す)が予め定めた閾値以内か否かを判断する。つまり、図4Bにおいて、矢印で示したカーブ区間の車線中心線CLと前方車両Ve_1との垂線距離βが閾値以内か否かを判断する。この垂線距離βの閾値は、道路幅やカーブ形状(すなわち曲率半径)に応じて決定されてよい。この場合の例としては、例えば、道路幅が大きい場合には、道路幅が小さい場合に比べて閾値は大きくなる。また、カーブ形状の曲率半径が小さい場合には、曲率半径が大きい場合に比べて閾値は大きくなる(言い換えれば、曲率半径が大きいほど、道路形状は直線に近づくので閾値は小さくなる)。制御部20は、垂線距離βが閾値以内である場合に、前方車両Ve_1を先行車両と判断する。また、制御部20は、前方車両Ve_1が先行車両であるか否かの判断において、併せて、前方車両Ve_1の進行方向や移動方向を考慮してもよい。具体的には、制御部20は、前方車両Ve_1が自車両Veと同じ方向に移動している場合に、前方車両Ve_1を先行車両と判断する。言い換えれば、制御部20は、自車両Veと同じ方向に移動していない他車両は先行車両と判断しない。また、制御部20は、駐車中、または、停車中の他車両も先行車両と判断しない。
【0041】
以上のように、本実施形態では、自車両を基準とした相対位置と地図情報30aに基づく道路形状とに基づいて前方に位置する他車両の位置を取得し、その前方に位置する車両(すなわち前方車両)が道路形状に沿って延びる所定範囲に位置する場合には、前方車両を自車両の先行車両と判断する。つまり、前方車両を先行車両として判定する。これにより、例えば車載カメラの画像認識により、自車両が走行する走行車線の境界線ある白線と同一の白線に挟まれている車両を先行車両とする従来の構成(前掲の特許文献1)に比べて、正確に前方車両を先行車両と判定することができる。すなわち、上述のように、車載カメラによる画像認識によって車線境界線を検出する場合には、遠方やカーブなどでは検出精度が低下することがあるが、本実施形態では、そのような状況であっても、道路形状をパラメータとして前方車両の位置を特定することにより、先行車両の検出制度が低下することを抑制できる。また、本実施形態では、上述のような制御部20による制御を実行することにより、先行車両の追従制御を行っている際に、前方車両が遠方に位置する場合やカーブ区間に位置する場合であっても、先行車の検知が遅れる、もしくは、直前まで先行車として判定していた車両を先行車として判定しなくなるなどの不都合が生じることを抑制できる。このように、車載カメラによる画像認識に加えて、道路形状から前方に位置する車両を特定することにより、従来知られているシステムに比べて、より正確に先行車両の検知が可能となる。
【0042】
(2)先行車両判定処理:
つぎに、制御部20が実行する先行車両判定処理について説明する。図5は、制御部20が実行する先行車両判定処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態において、先行車両判定処理は、例えば、自車両が先行車両を追従する追従走行時(オートクルーズコントロール:ACC)や自動運転時に実行される。なお、この図5に示すフローチャートの開始の前提として、自車両の現在位置を取得する。自車両の現在位置は、GNSS受信部41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号と地図情報とに基づいて、地図の座標系における自車両の現在位置を取得する。以下、具体的に、制御内容についてフローチャートを用いて説明する。
【0043】
先ず、制御部20は、カメラ40の画像認識により自車両の前方に位置する車両を検出する(ステップS1)。具体的には、制御部20は、前方車両位置取得部21aの機能により、自車両を基準とした他車両の相対方位θとおよび直線距離Dを取得する。上述の図2Aおよび図2Bで説明したように、制御部20は、バウンディングボックスBの対角2頂点の座標から代表座標Boを算出する。そして、制御部20は、カメラ画像I内の各座標と自車両を基準とした相対方位との対応関係に基づいて、バウンディングボックスBの代表座標Boに写る前方車両の相対方位を取得する。また、制御部20は、バウンディングボックスBの対角2頂点の座標から、バウンディングボックスBの高さhを算出する。また制御部20は、バウンディングボックス内の車両の種別を取得する。そして、バウンディングボックスBの高さhを示す画素数と、当該バウンディングボックス内の車両との直線距離Dとの対応関係であって、車両の種別に応じた対応関係に基づいて、制御部20は、バウンディングボックスの高さhに対応する直線距離Dを算出する。
【0044】
さらに、制御部20は、複数のカメラ画像において、前方に位置する前方車両を認識し、認識した前方車両の移動量を特定する。そして、制御部20は、複数のカメラ画像間の時間変化と前方車両の移動量とから、前方車両の自車両に対する相対速度を求め、自車両の速度を加算することで、前方車両の速度を検出する。また、制御部20は、前方車両の進行方向や移動方向を検出する。
【0045】
ついで、制御部20は、カメラ40の画像認識により自車両前方の白線などの車線境界線を検出する(ステップS2)。具体的には、制御部20は、撮影されたカメラ画像に対して例えばディープランニングによる画像認識処理、より具体的には、セマンティックセグメンテーションを行うことによって、カメラ画像を少なくとも道路領域と白線や橙線などの車線境界線を含む非道路領域とに分けることにより白線を検出する。また、制御部20は、カメラ画像に基づいて、白線の形状(実線や破線)、自車両の走行車線における位置、カメラ画像内の各画素の座標情報を取得する。
【0046】
ついで、制御部20は、地図情報から道路形状を特定する(ステップS3)。すなわち制御部20は、地図情報取得部21bの機能により、道路形状を特定する。具体的には、地図情報30aに記憶されたノードデータ、形状補間点データ、および、リンクデータから道路形状を特定する。または、曲率半径から道路形状を特定する。
【0047】
ついで、制御部20は、走行車線における直線区間を特定する(ステップS4)。すなわち制御部20は、先行車両判断部21cの機能により、走行車線における、上述の右端Xr、左端Xl、および、上端Tから求まる直線区間を特定する。
【0048】
ついで、制御部20は、先行車を検知する(ステップS5)。すなわち制御部20は、先行車両判断部21cの機能により、ステップS1で検出した前方の車両が先行車両であるかについての判断を行う。図6は、ステップS5のサブルーチンであって、先行車を検知する際の処理内容(先行車検知処理)である。以下、図6のサブルーチンについて説明する。
【0049】
先ず、制御部20は、先行車として判定対象である前方車両の自車両に対する相対位置が、先行車両検知の対象エリアであるか否かを判断する(ステップS50)。すなわち、制御部20は、上述の進行方向において、自車両から車長軸方向で最大距離80[m]以内に前方車両が位置するか否かを判断する。このステップS50で否定的に判断された場合には、これ以降に説明する制御を実行することなく、リターンする。なお、最大距離80[m]は、法定速度60[Km/h]から0.2G停止する場合の距離であって、法定速度や減速度に応じて変化する。
【0050】
それとは反対に、このステップS50で肯定的に判断された場合、すなわち、前方車両が進行方向において、自車両から最大距離80[m]以内に位置すると判断した場合には、制御部20は、自車両を基準とした車長軸方向における前方車両の相対距離が直線区間の上端T[m]よりも小さいか否かを判断する(ステップS51)。すなわち、制御部20は、前方車両が、直線区間にいるか否かを判断する。言い換えれば、制御部20は、前方車両が直線区間とカーブ区間とのいずれの位置にいるかを判断する。
【0051】
したがって、このステップS51で肯定的に判断された場合、すなわち前方車両が走行している車線が直線区間である場合には、制御部20は、直線ロジックによって先行車両の判定を行う(ステップS52)。すなわち制御部20は、上述の図4Aで説明した直線ロジックにより、前方車両が先行車両に該当するかを判断する。つまり、制御部20は、前方車両が道路形状から所定範囲内に位置すると判断した場合には、前方車両を先行車両と判断する。
【0052】
一方、ステップS51で否定的に判断された場合、すなわち前方車両が走行している車線が直線区間でないと判断された場合、言い換えればカーブ区間であると判断された場合には、制御部20は、カーブロジックにより先行車両の判定を行う(ステップS53)。すなわち制御部20は、上述の図4Bで説明したカーブロジックによる前方車両から車線中心線CLに延びる垂線距離βが閾値以内か応じて、前方車両が先行車両であるかを判断する。つまり、制御部20は、前方車両が道路形状から所定範囲内に位置すると判断した場合には、前方車両を先行車両と判断する。
【0053】
ついで、制御部20は、前方車両が追従対象車両であり、かつ既に追従走行を実行中か否かを判断する(ステップS54)。すなわち、制御部20は、ステップS52の直線ロジックまたはステップS53のカーブロジックの判断によって、先行車両であると判断された前方車両が追従走行の対象であるか否かを判断し、かつ現在、自車両が先行車両を追従している状態であるか否かを判断する。このステップS54で否定的に判断された場合、すなわち、制御部20は、前方車両が追従対象車両でない、または、自車両が追従走行を実行中でないと判断した場合には、先行車両の追従を開始する条件が成立するか否かを判断する(ステップS55)。
【0054】
上述のステップS54で否定的に判断されたことにより、自車両は、少なくとも追従走行の制御を実行していない。したがって、このステップS55では、先行車両を追従する追従走行を開始するか否かを判断する。具体的には、制御部20は、ステップS52の直線ロジックまたはステップS53のカーブロジックに基づいて、前方車両が予め定められた所定時間(数秒程度)継続して先行車両であると判断した場合に、追従制御開始の条件が成立すると判断し、先行車両の追従を開始する(ステップS56)。
【0055】
それとは反対に、制御部20は、ステップS52の直線ロジックまたはステップS53のカーブロジックに基づいて、前方車両が先行車両でないと判断した場合(例えば予め定められた所定時間継続して先行車両であると判断されなかった場合)には、この図6に示す制御例を終了し、リターンする。
【0056】
一方、上述のステップS54で肯定的に判断された場合、すなわち、制御部20は、前方車両が追従対象車両であって、自車両が既に追従走行の制御を実行中であると判断した場合には、先行車両の追従制御を終了する条件が成立するか否かを判断する(ステップS57)。図7図7A図7E)は、先行車両の追従制御を終了する条件を説明するための図である。なお、図7A図7Eに示す符号Pは、ノード・形状補間点を示している。図7Aの例は、先行車両Ve_1が、道路幅3.0[m]の直線区間を走行中に、走行車線から逸脱する場合の例である。この図7Aに示す例では、車幅を想定して、車線中心線CLから左右方向にそれぞれ1.5[m]を閾値として、先行車両Ve_1が走行車線から逸脱した場合に、自車両Veは追従走行の制御を終了する。
【0057】
また、図7Bの例は、先行車両Ve_1が、片側1車線のカーブ区間を走行中に、走行車線から逸脱する場合の例である。この図7Bに示す例では、カーブ区間でのカメラ40による画像認識の精度を想定して、車線中心線CLから左右方向にそれぞれ7.5[m]を閾値として、先行車両Ve_1が走行車線から逸脱した場合に、自車両Veは追従走行の制御を終了する。
【0058】
また、図7Cの例は、先行車両Ve_1が、片側2車線カーブ区間を走行中に、走行車線から逸脱(片側2車線のうちの他方の車線への逸脱を含む)する場合の例である。この図7Cに示す例では、車幅(例えば道路幅3.0[m])を想定して、車線中心線CLから左右方向にそれぞれ1.5[m]を閾値として、先行車両Ve_1が走行車線から逸脱した場合に、自車両Veは追従走行の制御を終了する。
【0059】
また、図7Dの例は、先行車両Ve_1が、交差点付近を走行中に、走行車線から逸脱する場合の例である。この図7Dに示す例では、車幅(例えば道路幅3.0[m])を想定して、車線中心線CLから左右方向にそれぞれ1.5[m]を閾値として、先行車両Ve_1が交差点を右折もしくは左折するなどして走行車線から逸脱した場合に、自車両Veは追従走行の制御を終了する。
【0060】
また、図7Eの例は、先行車両Ve_1が、狭角分岐付近を走行中に、走行車線から逸脱する場合の例である。この図7Eに示す例では、車幅(例えば道路幅3.0[m])を想定して、車線中心線CLから左右方向にそれぞれ1.5[m]を閾値として、先行車両Ve_1が交差点を右折もしくは左折するなどして走行車線から逸脱した場合に、自車両Veは追従走行の制御を終了する。なお、上述の図7A図7Eにおいて、先行車両Ve_1の走行車線からの逸脱を判断する各閾値は、一例であって、道路形状や走行シーンに応じて適宜変更されてよい。
【0061】
このように、制御部20は、先行車両が、走行車線から逸脱した場合に、自車両の追従走行制御の終了条件が成立したと判断し(ステップS57でY)、先行車両の追従制御を終了する(ステップS58)。それと反対に、先行車両が走行車線から逸脱しない場合や、継続して前方車両が先行車両であると判断される場合には(ステップS57でN)、制御部20は、先行車両の追従を継続する(ステップS59)。
【0062】
ついで、図5のフローチャートに戻り、制御部20は、先行車両検知処理が完了すると、処理をステップS6へ進める。ステップS6において、制御部20は、衝突リスクを判定する。すなわち、制御部20は、先行車両の位置、自車両の位置、走行車線における自車両と先行車両との距離、先行車両の移動速度、および、自車両の移動速度等に基づいて、自車両と先行車両との衝突リスクを判定する。例えば、制御部20は、自車両と先行車両とが移動速度を維持して移動した場合の所定時間後(数秒~数十秒後)までの期間において、走行車線の延びる方向における自車両と先行車両との距離が予め定められた所定距離となることがあるか否かを判定する。所定時間後までの期間において、互いの車両の距離が所定距離以内となることがあると判定された場合には、制御部20は、自車両に対する先行車両の衝突リスクがあると判定する。それとは反対に、所定時間後までの期間において、互いの車両の距離が所定距離以内となることがないと判定された場合、制御部20は自車両に対する先行車両の衝突リスクがないと判定する
【0063】
ついで、制御部20は、運転者に対してステップS6の衝突リスクの判定に基づいた案内を行う。衝突リスクがありの場合には、制御部20は、他車両との衝突リスクがあることを例えば警告音等によって運転者に案内するとともに、車両の速度制御を行う(ステップS7)。例えば制御部20は、ユーザI/F部44に対して衝突リスクの案内の出力を行う。ユーザI/F部44は、例えば警告音をスピーカから発生させる、あるいは、ヘッドアップ・ディスプレイに注意喚起を促す図形や文字を表示させるなどであってよい。また、制御部20は、車両の速度制御を実行のために、エンジンやモータなどの駆動力源のトルクを低下させる、あるいは、駆動力源の回転数を低下させるなどして、駆動力源の出力を低下させる。これにより、自車両と先行車両との衝突リスクを回避もしくは抑制できる。なお、ステップS6の判定において、衝突リスクがなしの場合には、ステップS7は実行せずに、図5の制御例を終了してよい。また、上述の図6のサブルーチンにおいて、先行車両の追従開始条件を満たさない場合(ステップS55でN)には、先行車両が存在しないことから衝突リスクがないので、ステップS6およびステップS7は実行せず、図5に示す制御例を終了してよい。
【0064】
このように、本実施形態では、カメラ40の画像認識による前方車両の検知に加えて、道路形状に基づいて(すなわち道路形状に沿って延びる所定範囲に前方車両が位置するかに応じて)、前方車両を検知する。そして、前方車両が所定範囲で検知された場合には、先行車両と判断し、追従制御を行う。そのため、先行車両が、比較的遠くに位置する場合やカーブ区間を走行していることにより、カメラ40による画像認識精度が低下する状況下においても、正確に先行車両の判定を行うことができる。
【0065】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、先行車両判定システムは、車両等に搭載された装置であってもよいし、可搬型の端末によって実現される装置であってもよいし、複数の装置(例えば、クライアントとサーバ等)によって実現されるシステムであってもよい。さらに、先行車両判定システムを構成する前方車両位置取得部21a、地図情報取得部21b、先行車両判断部21cの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していてもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、道路形状から延びる所定範囲は、車線中心線CLを基準とした範囲、すなわち車線中心線からの垂線方向の距離の範囲、もしくは、車線中心線から車幅方向の既定の距離と自車両の現在位置からの進行方向の既定の距離とを含む範囲として説明したものの、所定範囲はこれに限られない。例えば、車線境界線を基準として所定範囲を特定してもよい。具体的には、制御部20は、自車両が走行する走行車線に隣接する車両境界線(白線や橙線)に挟まれた範囲と、自車両の現在位置からの進行方向の既定の距離とを含む範囲を所定範囲としてもよい。すなわち、所定範囲の基準は、車線中心線(走行車線の中心線)に限られず、車両境界線を基準に定義されてもよい。いずれの場合であっても、所定範囲は同じ範囲となる。
【0067】
前方車両位置取得部は、自車両を基準として、自車両の前方に位置する車両の相対位置を取得することができればよい。自車両を基準とした相対位置は、自車両において定義された座標系における他車両の位置を示す情報である。自車両を基準とした前方車両の相対位置は、例えば、車両座標系の車長軸と車幅軸とを含む平面における位置で表現されてもよいし、3次元の座標系における位置で表現されてもよい。相対位置は、自車両の周囲を撮影するカメラ、レーダ、LIDAR等の様々なセンサの出力に基づいて取得してよい。また、自車両の前方だけでなく、側方や後方側に存在する他車両の相対位置を取得してもよい。また、カメラが撮影した画像からの前方車両の相対位置の取得は、画像内において前方車両を囲むバウンディングボックスの大きさや位置に基づいて行われてもよいし、その他の方法で行われてもよい。例えば、入力された画像内に含まれる前方車両との距離や相対方位を出力するように機械学習されたモデルを用いて行われてもよい。
【0068】
地図情報取得部は、車両が走行している道路の道路形状を含む地図情報を取得することができればよい。道路形状には、例えば道路の曲率半径が含まれるが、曲率半径は同じ道路であっても、車線毎(例えば複数車線ある内側と外側)に異なるため、道路幅に基づいて車線毎に曲率半径を補正してもよい。また、道路形状は、上述のように、地図情報30aに記憶されたノードデータ、形状補間点データ、および、リンクデータから特定する。もしくは、曲率半径から特定するが、その他、高精度地図に基づく地図情報から特定してもよい。なお、高精度地図は、通常の地図情報より精度の高い地図情報が含まれており、例えば自動運転車両などに搭載される。高精度地図に基づく地図情報を用いた場合には、車線単位の地図形状、曲率半径、車幅、車線中心線や車線境界線の位置などがより詳細に取得することができる。
【0069】
先行車両判断部は、車両の前方において道路形状に沿って延びる所定範囲に、前方車両が位置する場合に、前方車両を先行車両と判断することができればよい。すなわち、先行車両判断部は、カメラによって撮影された画像に基づいて動的に先行車両が存在し得る所定範囲を特定するのではなく、道路形状が含まれた地図情報に基づいて所定範囲を特定することができればよい。
【0070】
さらに、本発明のように、自車両の位置と、自車両に対する前方車両の相対位置と、道路形状とに基づいて前方車両が先行車両であるかを判定する手法は、方法やコンピュータに実行させるプログラムとしても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10…ナビゲーションシステム、20…制御部、21…先行車両判定プログラム、21a…前方車両相対位置取得部、21b…地図情報取得部、21c…先行車両判断部、30…記録媒体、30a…地図情報、40…カメラ、41…GNSS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ユーザI/F部、CL…車線中心線(走行車線の中心線)、Ve…車両(自車両)、Ve_1…前方車両(先行車両)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7