(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】銀行間送金の自動化された方法ならびにそれらの方法を実行するシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/02 20120101AFI20241018BHJP
【FI】
G06Q20/02 310
(21)【出願番号】P 2021536774
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 RU2019001005
(87)【国際公開番号】W WO2020139157
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】521274201
【氏名又は名称】ナショナル ペイメント カード システム ジョイント ストック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソロヴ’イヴ,エヴゲニー ゲオルギエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】コレスニコヴ,ドミトリイ アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ペトゥシコワ,ナタル’ヤ オレゴヴナ
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525758(JP,A)
【文献】特開2013-257706(JP,A)
【文献】米国特許第09928490(US,B1)
【文献】特開2011-076166(JP,A)
【文献】特開2002-133127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀行間送金を実行するシステムにおいて、
送金者のコミュニケーションツールと、
送金者銀行の演算システムのうち少なくとも一つと、
受領者のコミュニケーションツールと、
少なくとも一つの受領者銀行の演算システムのうち少なくとも一つと、
少なくとも一つの演算システムを備える中央サーバーコンポネントと、
精算システムと、
通知サービスと、を備え、
送金者のコミュニケーションツールは、送金者銀行の演算システムのうち少なくとも一つと、相互作用するチャンネルで接続し、受領者のコミュニケーションツールは、受領者銀行の演算システムのうち少なくとも一つと、相互作用するチャンネルで接続し、
送金者銀行と少なくとも一つの受領者銀行の演算システムは、相互作用するチャンネルで、中央サーバーコンポネントの少なくとも一つの演算システムと接続し、
中央サーバーコンポネントの少なくとも一つの演算システムは、少なくとも一つのデータベースと、シナリオモジュールと、それぞれの銀行との相互作用のためのインターフェースモジュールと、精算システムならびに通知サービスとの相互作用のためのインターフェースモジュールとを備え、それぞれの銀行、精算システムおよび通知サービスと相互作用するチャンネルを有しており、
受領者のコミュニケーションツールは、少なくとも一つの受領者銀行にデータを送信し、当該データは、受領者銀行における受領者の口座で資金を受け取る旨の受領者の意向についての情報と、少なくとも一つの受領者の社会的識別記号とを含み、
受領者銀行の少なくとも一つにおける
各受領者銀行
は、
当該受領者銀行が、少なくとも一つの社会的識別記号によって特定された受領者に対する
デフォルトの受領者銀行として認識されるように、
特定の社会的識別記号をもつ受領者が当該銀行を資金受け取りのためのデフォルトの銀行として選択したという情報を含むデータを
、事前に中央サーバーコンポネントに送信し、
少なくとも一つの社会的識別記号によって特定された
前記受領者に対する
デフォルトの受領者銀行として
一つ以上の銀行が認識されるように
当該一つ以上の銀行から
、特定の社会的識別記号をもつ前記受領者が当該銀行を資金受け取りのためのデフォルトの銀行として選択したという情報を含むデータを
、受け取った場合、中央サーバーコンポネントは、デフォルトの受領者銀行を確認する要求を、通知サービスを介して受領者のコミュニケーションツールに送信し、
中央サーバーコンポネントの演算システムが送金実施の際の管理を実行し、送金者銀行の口座から資金を引き出し、
デフォルトの受領者銀行の口座に資金を振込むよう精算システムに要求を送り、
中央サーバーコンポネントの演算システムは、送信者が受信者を確認できるように、個人確認メッセージを作成し、
精算システムが送金を実施し、
送金者銀行の演算システムは、送金者のコミュニケーションツールに、送金者の口座から資金を引き出したことを確認するメッセージを送信し、
デフォルトの受領者銀行の演算システムは、受領者のコミュニケーションツールに、受領者の口座に資金が振り込まれたことを確認するメッセージを送信する、ことを特徴とする銀行間送金を実行するシステム。
【請求項2】
通知サービスの演算システムが中央サーバーコンポネントの演算システムに組み込まれうることを特徴とする請求項1に記載の銀行間送金を実行するシステム。
【請求項3】
受領者の社会的識別記号、ならびに、相応するデフォルトの受領者銀行に関する情報を保存するようデータベースが構築されていることを特徴とする請求項1に記載の銀行間送金を実行するシステム。
【請求項4】
インターフェースモジュールが、送金者銀行の演算システムまたは受領者銀行の演算システムからメッセージを受け取り、その完全性を管理し、輸送上のミスの有無を確認し、シナリオモジュールに伝達し、シナリオモジュールからの回答を受領し、メッセージを輸送フォーマットにのせ、相応する銀行の演算システムに伝達するよう構築され調整されていることを特徴とする請求項1に記載の銀行間送金を実行するシステム。
【請求項5】
シナリオモジュールが、インターフェースモジュールよりメッセージを受信し、その確認と編集を行い、処理した結果をデータベースに保存するよう構築され調整されていることを特徴とする請求項1に記載の銀行間送金を実行するシステム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のシステムによって実行される、個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法において、
前記方法は、事前の段階と主要な段階とを含み、
前記事前の段階では、
(a)中央サーバーコンポネントによって、事前に、少なくとも一つの受領者銀行の少なくとも一つの演算システムからデータを受信し、当該データは、社会的識別記号によって特定された受領者に対するデフォルトの受領者銀行として認識されるように、受領者銀行についての情報と、少なくとも一つの受領者の社会的識別記号とを含み、
少なくとも一つの社会的識別記号によって特定された受領者に対する
デフォルトの受領者銀行として認識されるように一つ以上の銀行がデータを送信された場合、中央サーバーコンポネントは、デフォルトの受領者銀行を確認する要求を、一つ以上の銀行間において通知サービスを介して受領者のコミュニケーションツールに送信し、
(b)中央サーバーコンポネントのデータベースによって、受領者の社会的識別記号、および、相応するデフォルトの受領者銀行についての情報を保存し、
前記主要な段階では、
(c)送金者のコミュニケーションツールによって、送金者銀行の演算システムに送信されるように受領者の社会的識別記号を入力し、
(d)送金が実行される際、中央サーバーコンポネントの演算システムによって、送金者銀行の演算システムから、受領者の社会的識別記号を含むメッセージを受信し、
(e)中央サーバーコンポネントを介して、受信したメッセージを処理することで、デフォルトの受領者銀行を識別し、
デフォルトの受領者銀行の送金者の確認を求めるメッセージを送金者銀行に送信し、
(f)送金者のコミュニケーションツールによって、送金額を入力し、受領者銀行を確認し、
(g)中央サーバーコンポネントによって、
デフォルトの受領者銀行での受領者の社会的識別記号の確認を求め、
(h)送金者のコミュニケーションツールによって、送金者に対し、中央サーバーコンポネントによって作成された、相応する個人確認メッセージを見せることで、受領者を確認し、
受領者が送金者によって確認された場合、
(i)中央サーバーコンポネントによって、送金者銀行の口座から資金を引き出し
デフォルトの受領者銀行の口座に振込む要求を作成し、精算システムに要求を送信し、
(j)精算システムによって、要求の実行を確認し、
(k)それに応じて、中央サーバーコンポネントによって、送金者の口座から資金を引き出し受領者の口座に資金を振込む要求と共に送金を確認するメッセージを、送金者銀行および
デフォルトの受領者銀行に送信し、
(l)中央サーバーコンポネントによって、送金者銀行および
デフォルトの受領者銀行から送金実行の確認を受信し、
(m)送金者銀行の演算システムによって、送金者のコミュニケーションツールに、資金が引き出されたことを確認するメッセージを送信し、
デフォルトの受領者銀行の演算システムによって、受領者のコミュニケーションツールに、資金が振り込まれたことを確認するメッセージを送信する、個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項7】
送金者銀行と受領者銀行ならびに精算システムの演算システムの相互関係が、送金取引の処理を遂行する中央サーバーコンポネントを経由して行われることを特徴とする請求項6に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項8】
精算システムが送金者銀行と
デフォルトの受領者銀行との間での送金を、取引処理の時点で送金者ごとに個々に行うことを特徴とする請求項6に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項9】
送金者のコミュニケーションツールが受領者の社会的識別記号についての情報を有しているだけであることを特徴とする請求項6に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項10】
個人確認メッセージは、中央サーバーコンポネントによって、受領者の名前、ミドルネーム、苗字の最初の文字から作成されることを特徴とする請求項6に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項11】
請求項1から5の何れか1項に記載のシステムによって実行される、個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法において、
送金者と受領者が同一個人である場合において、
前記方法は、事前の段階と主要な段階とを含み、
前記事前の段階では、
(a)中央サーバーコンポネントによって、事前に、少なくとも一つの受領者銀行の少なくとも一つの演算システムからデータを受信し、当該データは、社会的識別記号によって特定された受領者に対するデフォルトの受領者銀行として認識されるように、受領者銀行についての情報と、少なくとも一つの受領者の社会的識別記号とを含み、
少なくとも一つの社会的識別記号によって特定された受領者に対する
デフォルトの受領者銀行として認識されるように一つ以上の銀行がデータを送信された場合、中央サーバーコンポネントは、デフォルトの受領者銀行を確認する要求を、通知サービスを介して受領者のコミュニケーションツールに送信し、
(b)中央サーバーコンポネントのデータベースによって、受領者の社会的識別記号、および、相応するデフォルトの受領者銀行についての情報を保存し、
前記主要な段階では、
(c)送金者のコミュニケーションツールによって、送金者の社会的識別記号と同一の受領者の社会的識別記号を入力し、送金額を入力し、かつ、
デフォルトの受領者銀行を確認し、
(d)送金が実行される際、中央サーバーコンポネントの演算システムによって、送金者銀行の演算システムから、受領者の社会的識別記号を含むメッセージを受信し、
(e)中央サーバーコンポネントによって、
デフォルトの受領者銀行で受領者の社会的識別記号を確認するよう
デフォルトの受領者銀行に要求し、
(f)中央サーバーコンポネントを介して受信したメッセージを処理することによって、送金者と受領者の社会的識別記号が合致するかを確認し、送金者と受領者が同一人物であるとの結論を下し、
(g)送金者のコミュニケーションツールによって、送金者に対し、中央サーバーコンポネントによって作成された、相応する個人確認メッセージを見せることで、受領者を確認し、
受領者が送金者によって確認された場合、
(h)中央サーバーコンポネントによって、送金者銀行の口座から資金を引き出し
デフォルトの受領者銀行の口座に資金を振込む要求を作成し、精算システムに要求を送信し、
(i)精算システムによって、要求の実行を確認し、
(j)それに応じて、中央サーバーコンポネントによって、送金者の口座から資金を引き出し受領者の口座に資金を振込む要求と共に送金を確認するメッセージを、送金者銀行および
デフォルトの受領者銀行に送信し、
(k)中央サーバーコンポネントによって、送金者銀行および
デフォルトの受領者銀行から送金実行の確認を受信し、
(l)送金者銀行の演算システムによって、送金者のコミュニケーションツールに、資金が引き出されたことを確認するメッセージを送信し、受領者銀行の演算システムによって、受領者のコミュニケーションツールに、資金が振り込まれたことを確認するメッセージを送信する、個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項12】
送金者銀行と受信者銀行ならびに精算システムの演算システムの間での相互作用が、送金取引の処理を実行する中央サーバーコンポネントを経由して行われることを特徴とする請求項11に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項13】
精算システムが送金者銀行と
デフォルトの受領者銀行との間での送金を、取引処理の時点で送金者ごとに個別に実行していることを特徴とする請求項11に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項14】
送金者のコミュニケーションツールが受領者の社会的識別記号についての情報を有しているだけであることを特徴とする請求項11に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【請求項15】
個人確認メッセージは、中央サーバーコンポネントによって、受領者の名前、ミドルネーム、苗字の最初の文字から作成されることを特徴とする請求項11に記載の個人間での口座から口座への資金の銀行間送金を実現する自動化された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案するソリューションは、財務産業における情報技術、具体的には、口座から口座への銀行間送金で、送金者が受取人の銀行口座番号または銀行カード番号(PAN; primary account number)を知らない場合の自動化された方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ある個人から別の個人への送金は、以下の既知の方法のいずれかで行う。
【0003】
1.従来の銀行間または銀行内での、送金者の身元証明書を提示したうえで、文書として作成するか、送金者の身元が事前に確認されており、操作を行う時点でその身元を確認する電子的な手段(たとえば、顧客のインターネットバンキングまたはモバイルバンキング)がある場合、電子文書の形式(遠隔操作で)により作成した、銀行支払い指示書を利用する方法。
【0004】
2.銀行送金を行う商業システムのひとつを利用した送金で、送金者が実際にそのような送金の手続きを行う場所(銀行の支部または支店)に赴いて、身元証明書を提示の上手続きをするか、送金者の身元が事前に確認されており、操作を行う時点でその身元を確認する電子的な手段がある場合は、遠隔操作により行う。資金の送金者側、受領者側から見れば、送金は一瞬のうちに行われるが、銀行間での精算は一瞬では行われず、銀行から別の銀行への実際の送金のため精算銀行に提示する、精算集計を行う時間帯(通常一日一回)にのみ行われる。
【0005】
3.送金者の銀行カードから、受領者の銀行カードへの送金で、カードが支払い手段となっている支払いシステムを経由して行われる。このような送金では、操作実行のためのインフラがどのようなものであれ、送金者の身元確認を確実にして行われる。たとえば操作が現金自動預入払出機(銀行ATM)で行われる場合、送金者はカードそのものを提示の上、PINコード(個人別識別番号)を入力する。インターネット上で操作を行う場合は、送金者は自身のカード番号(PAN)を入力し、発行銀行から、たとえばSMSといった代替通信手段のいずれかにより送信される、シークレットコードを提示しなくてはならない。これら二つの例においては、当然、資金の実際の受取人がだれであるかの情報を提示するため、送金者は受領者のカード番号を入力する。そのような操作は、銀行間または同一銀行内でも行われうる。その際、銀行間精算は、厳密に決められた時間帯の中で行われる。ゆえに、受領者が即時振込まれた資金を使う必要がある場合、資金が口座に実際には振込まれていない可能性があるというトラブルが発生しうる。
【0006】
資金を移動させるこれらの方法は、金融機関にとっても、個人にとっても便利ではなく、最近10年間の間にも他の送金方法が開発されており、それらは、送金方法を実現するシステムに接続することや、精算システムの役割を担う機関、主には中央銀行の助けにより、送金のスピードという問題を解決している。
【0007】
同時に、銀行にある送金者の口座から、別の銀行にある受領者の口座への銀行間送金は、瞬間的には行われない。こういった送金は、同種の送金者からの送金申請が集約され、その後精算システムに送ることを前提とする実務により調整されている。精算システムは、集計精算の原則により機能する。つまり、まず申請はグループ別に分けられ、精算(実際の銀行間での資金の移動)は、送金の申請案件個別に行われるのではなく、事前に規定された期間に一度、主には一日一回、最終合計額で実施される。
【0008】
送金実施のスピードという問題を解決するため、2018年5月3日に公表した特許申請書US20180121975の申請者であるEARLY WARNING SERVICES LLC (US) 社は、ひとつの銀行にある口座から、別の銀行の口座への支払いシステムを描写する技術ソリューションを提案した。当該システムは、現実の時間のスケール内(real time)での支払い用に、現金を受け取る銀行より事前に提示された、「第一の」銀行に対する請求書を支払う(to pay invoice)ことを想定するものである。現実の時間のスケール内で申請される支払いの主な特徴としては、以下が挙げられている。
【0009】
‐ 支払いは提示される請求書に基づいて行われる。
【0010】
‐ このような支払いは、送金銀行が「支払い確約」メッセージ(promise-to-pay message)を送信する、すなわち、本質としては資金の移動ではなく、支払いをするという「メッセージ」(保証)の移動であるため、精算システム(国の中央銀行)に代表される第三者の存在を必要としない。
【0011】
‐ 送金実施はすなわち、「支払い確約」(promise-to-pay message)メッセージを受信した時点での、相手方銀行による受領者口座への融資となる。
【0012】
‐ 「期限通り」支払いが行われる場合の報奨(incentive)が想定される。
【0013】
‐ 報酬(reward)が想定される。
【0014】
‐ 認証を受け、公開識別記号の付与を受ける、「請求先推奨銀行」が選択される。
【0015】
‐ 支払人口座の残高を事前に分析し、その所在地を特定して、支払人への融資提供が想定される。
【0016】
しかし、提示されるソリューションを分析すると、その実現においては受領者の口座への早急な資金の振り込みは行われず、その顧客の口座を貸方または借方に記する、金融機関の間での保証文のやり取りが即時行われるのみである。資金を移動できないことは、調整機関の役割を担い、金融機関同士での精算を直接行うような、精算組織(システムの一部)その他組織が不在であることからも説明される。さらに、申請されるソリューションを実現するためには、金融機関が特別の公開識別記号を受け取ることが必須であり、これは、システム要求との適合を確認するための、金融機関設備の特別な認証制度手続きが必要であることを、追加して証明するものである。
【0017】
精算システムを導入すると、送金者と受領者の間での精算のみならず、受領者銀行による、受領者となる顧客に対する隠れた融資という兆候が発生しないよう、送金者銀行と受領者銀行との間での精算をも瞬間的に行うことができるようになる。一部の国、また一部の国家連合においてさえも、口座から口座への瞬間的な支払いシステムが出現している。たとえば、ヨーロッパ連合においては、SEPA Credit TransferならびにSEPA Instant Credit Transferシステムが登場した。送金者となる銀行の顧客が、共通の個別銀行口座番号IBANを記入のうえ、資金受領者の共通の個別銀行口座番号IBANおよび送金額を記入すると、このシステムがほぼリアルタイムに近い時間内で送金を実施する(送金者の身元確認が確実に行われたという条件のもとで)。
【0018】
加えて、口座から口座への送金実施時に精算システムが存在することを前提とする技術ソリューションが知られており、具体的には2016年2月2日に公開された、特許取得人住友三井銀行、特許番号JP5959578B2の発明で、日本銀行の精算システムRTGS(Real Time Gross Settlement)のインフラに追加して実現されるシステムおよび送金方法となる。
【0019】
RTGSでは、オペレーションごとに精算を実施することができ、個々のオペレーションはRTGSのシステムにそれぞれ登録され、口座のある銀行の職員の手を借りずに、エンドユーザー(顧客)が支払いを実施(RTGSで開始)できるようにすることを目的とする。つまり、独立したサーバーシステムを用いる遠隔アクセスにより、すべての日本の銀行の顧客が、RTGS精算システムと送金を目的とした対話ができるシステムが提案されている。システムにより、エンドユーザーつまり特定の銀行の顧客は、個人であれ法人であれ、その個別の支払いスケジュール、具体的には精算支払いの日にちと時間を決め、その支払いスケジュールに基づいて、顧客の口座が開設されている銀行側の別のサーバーおよびRTGS精算システムと通信できるコントロールサーバーが、顧客の取り決めた支払スケジュールとの相互作用の結果、送金を実施する。
【0020】
上掲のシステムの欠点は、当該システムを実現する際、送金者の申請時に、受領者が受領側銀行の顧客であることを確認できるよう、送金者が入力した受領者データを追加で確認するための、受領側銀行のサーバーへの接触を絶対としないという点で、ゆえに、しかるべきでない受領者に資金が振り込まれるという事案が発生してしまう可能性が高い。
【0021】
さらに、現在、個人のひとりひとりに多数の銀行口座があり、多数の銀行カードの発行を受けている時代、その情報を第三者に伝えるのは安全とは言えず、JP5959578B2の発明においては解決されていないが、受取人口座の銀行口座情報とは異なる識別番号を使用した場合の送金実施のスピードアップは、危急の問題となっている。これらの問題またほかの問題は、申請者が提示するソリューションの実現で解決可能である。
【発明の概要】
【0022】
本発明グループが解決に取り組んだ課題とは、ある個人の銀行口座から、資金受領人が持つ既知の社会的識別記号(social ID)を介し、実際の顧客銀行口座番号やその支払い手段の詳細情報を記入せず、別の個人の銀行口座に送金する際のスピードを上げること、ならびに、二つまたはそれ以上の数の、個人が別々の金融機関に保有する自己の銀行口座間での送金スピードを上げることである。
【0023】
申請するソリューションの技術的な結果は、銀行間送金実施における即効性の改善である。
【0024】
社会的識別記号とは、広範な者に知られている、たとえば、電話番号、メールアドレス、ソーシャルネットワークでのニックネームその他、送金者と受領者を識別できる識別記号を指す。上掲の識別記号を利用する際、顧客はそれを自分の口座(複数の口座)がある銀行に通知する。同時に顧客は、その銀行により確実に身元認証を受けなくてはならない。その場合銀行は、これらの識別記号を、顧客が選択するひとつの特定の銀行口座に相応させることができる。
【0025】
また、申請するソリューションの重要なメリットは、銀行が異なる顧客間での送金速度が高速となり、受領者はその際、銀行と、その銀行に開設した資金の受領を希望する口座を指定することができる。
【0026】
当該の発明においては、銀行間送金の実施システムは、送金者と受領者のコミュニケーションツール、たとえば、支払い用アプリをインストールしたユーザーのスマートフォン、送金銀行及び受領銀行の銀行演算システム、あらゆる情報に加えてデータベース、シナリオモジュール、インターフェースモジュール、中央サーバーコンポネントから離れて位置することもある通知サービスを含む、中央サーバーコンポネント、また高速での送金実施時に、資金の移動を可能にする精算システムにより代表させられる。
【0027】
自動化された送金実施方法の第一の場合では、その実現に際し、個人と個人の間での口座から口座への銀行間送金を含む、個人の口座間での資金移動が可能になり、しかも送金者となる個人は、受領者となる個人の実際の口座番号を知らない。
【0028】
方法を実現する第二の場合では、口座から口座への銀行間送金で、送金者と受領者が同一の個人である場合の自動化の方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
システムと方法の実現
の実施形態をわかりやすく表示するため、以下の図表が提供される。
【
図1】
図1は、銀行送金実施システムの高いレベルでのアーキテクチャを図示化したチャートである。
【
図2】
図2は、受領者の支払い情報を特定するための行為の順序のチャートである。
【
図3】
図3は、受領者の支払い情報を確認するための行為の順序のチャートである。
【
図4】
図4は、送金実施のための行為の順序を示す。
【
図5】
図5は、同一個人の口座間での送金のための行為のチャートと順序を示す。
【0030】
図2~5においては、縦方向の線がその時々の段階と行動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
システムコンポネントのアーキテクチャは二方向モデルを根底にしており、送金者側と受領者側が、それぞれ金融機関、つまり各当事者すなわち顧客にサービスを提供する銀行に属しており、以下では送金者銀行ならびに受領者銀行という。これは
図1に見やすく表示されており、当事者間での相互作用を実現するコンポネントを示しており、具体的には以下の通りとなる。
【0032】
‐ 送金者のコミュニケーションツール(101)は、スマートフォン、タブレット、「スマートウォッチ」、「スマートグラス」、コンピューター(携行型を含む)、追加のプログラム(アプリまたはブラウザ)を使うことができ、支払いサービス、銀行のオンラインサービス用個人アカウントへアクセスするための、インターネットに接続できるTVステーションを想定する。
【0033】
‐ 送金者銀行(102)は、ひとつまたは複数の、諸々に加えてデータベース、通知サービスおよび、その他コンポネントを含む、詳細を後述する機能を果たすことのできるよう設計されている演算システム上にある。同時に、演算システムは、銀行顧客にオンラインサービスを提供できるように設計されている。
【0034】
‐ 受領者のコミュニケーションツール(103)は、スマートフォン、タブレット、「スマートウォッチ」、「スマートグラス」、コンピューター(携行型を含む)、追加のプログラム(アプリまたはブラウザ)を使うことができ、インターネット(支払いサービスや、自分の精算口座への振込情報を受信し、オンラインサービス用の銀行個人アカウントにアクセスするため)に接続できるTVステーションを想定する。
【0035】
‐ 受領者銀行(104)は、ひとつまたは複数の、諸々に加えてデータベース、通知サービスおよび、その他コンポネントを含む、詳細を後述する機能を果たすことのできるよう設計されている演算システム上にある。同時に、演算システムは、銀行顧客にオンラインサービスを提供できるように設計されている。
【0036】
‐ 中央サーバーコンポネント(105)は、ひとつまたは複数の、諸々に加えてデータベース(105‐1)、シナリオモジュール(105‐3)およびインターフェースモジュール(105-2)を含む、詳細を後述する機能を果たすことのできるよう設計されている演算システム上にある。その際、シナリオモジュールとは、インターフェースモジュールからメッセージを受け取り、すべての入力されるメッセージの意味上の(記号的な)チェックを行い、その目的と適切さを判断し、その入力が適切な時間に行われているかを確認し、処理した結果をデータベースに保存し、さらに送信用メッセージをインターフェースモジュールに伝達する。
【0037】
インターフェースモジュールとは、以下の機能を果たすプログラムである。
【0038】
1) 特別の通信チャンネルからメッセージを受信し、自動的にそれらを取り出し、それらが完全であるかを管理し、技術的ミスがないことを確認し、シナリオモジュールに実務的な処理のため伝達し、同時にメッセージ送信者に、配送が成功したか、失敗したかの通知を伝達する。
【0039】
2) シナリオモジュールからのメッセージを受信し、それらのメッセージを選択した特別の通信チャンネルに配置し、受信者にそれらを送信し、配送が成功したか、失敗したかの通知を受信する。‐通知サービス(106)は、プログラムと機械の複合で、中央サーバーコンポネントに統合されているか、単独で存在するかのいずれかである。ひとつまたは複数の演算システムとして実行されるものであり、通信チャンネルによって送金者と受領者のコミュニケーションツールならびにデータベースに接続している。
【0040】
‐ 精算システム(107)は、ひとつまたは複数の演算サーバーとして実行されるプログラムと機械の複合であり、諸々に加えて、銀行間での実際の送金を担当する資金配分モジュールを含む。資金配分モジュールは、精算口座内の資金額数値を変える機能を果たすプログラムである。
【0041】
それ以外には、中央サーバーコンポネントの描写との類似で、送金者銀行および受信者銀行、通知サービスおよび精算システムの演算システムは、独自のシナリオモジュール、インターフェイスモジュールまたはその他の、演算システムに入力されるメッセージの意味上の(記号的な)チェックを行い、システム上の他のコンポネントから、特別な通信チャンネルを伝ってメッセージを受信し、輸送用フォーマットからそれらを取り出し、その完全性を確認し、通信上のミスの有無を調べる、送信用モジュールにメッセージを伝達するために必要な、同様の機能を果たすプログラムを含むことがある。
【0042】
ここに挙げた
図1のシステムコンポネントはすべて、送金オペレーションを行うための安全規格に適合する特別な通信チャンネルを使って相互に作用するためのゲートウェイを持っている。システム図示を単純化するため、相互作用のためのゲートウェイはコンポネントには記されていないが、メッセージを交換するためにはそれらが必要なことは明白である。
【0043】
方法が特定するパラメーターを含むメッセージの形成、配布、受信、処理は、システムまたは実行プログラムを利用して行われる。
【0044】
送金を実行する第一の自動化された方法を実施するには、資金の受領者となる個人はそのコミュニケーションツールと、その上にインストールされたプログラムを使って、口座のある自分の銀行のアプリを立ち上げるか、アプリまたはブラウザにより自分の銀行のサーバーに接続し、資金の受領に必要なデータを連絡するが、その内容は次のとおりである。
【0045】
1. 銀行に対し、受領者が当該の銀行の自分の口座で資金を受領したい旨を伝える。
【0046】
2. 受領者の口座が銀行に複数ある場合は、どの精算口座に資金の振り込みを実施するか、選択する。
【0047】
3. 銀行に対し、銀行が当該人を特定できる自分の社会的識別記号、たとえば、電話番号、メールアドレスを伝える。システムや方法に対応してどの識別記号を使うかは、受領者が決定し、そのような識別記号は電話番号やメールアドレスに限らず、たとえば銀行アプリのログインまたはユーザー名、ニックネームその他がありうる。
【0048】
受領者が複数の銀行に口座を持っている場合、上述の行為を自分のコミュニケーションツールならびにその上にインストールされたプログラムを使って行う、つまり、ほかの銀行のアプリを立ち上げるか、アプリまたはブラウザにより銀行と接触し、上述項目2~3の行為を繰り返す。
【0049】
受領者銀行は、受領者の提供した情報を確認し、特定の社会的認識記号をもつ受領者が、当該銀行を資金受け取りのためのデフォルトの銀行としたことを、中央サーバーコンポネントに通知する。必要に応じ、たとえば、受領者がすでに別の銀行に対し、資金受領のための主要銀行の選択を含む情報を伝達していた場合、中央サーバーコンポネントは通知サービスに接触し、受領者に対し主要銀行選択の確認を求める問い合わせを送信する。そのような問い合わせは、ショートメッセージまたはそのほかのメッセージ交換システムの手段により、作成発信されうる。
【0050】
上掲のステップは、準備段階の行為であり、既出のシステムコンポネントを使った送金をスピードアップするために必要である。
【0051】
事前の行為が行われたとき、以下に詳細に説明する主要な行為がさらに行われてよい。
【0052】
図2においては、システムコンポネント間での情報の流れという操作の順序ならびに資金受領者の銀行を送金者が選ぶ様子を詳述するチャートが示されている。「受領者銀行」の理解を確定するということは、送金を完了するため、たとえば送金が成功裏に完了した場合資金が振り込まれる受領者の銀行口座番号といった、受領者の銀行口座詳細情報を特定するとも理解される。
【0053】
ここで、図にある通り、送金者は、例えばスマートフォンのような自分のコミュニケーションツールを使い、その上にインストールされたプログラム(当該人が口座を持つ銀行のアプリ、その銀行のサイトを表示するブラウザ)を立ち上げる。受領者の欄に、送金者は、たとえば受領者の電話番号といった、わかっている社会的認識記号を入力(201)する。アプリを用い、当該銀行のサーバーに接触し、ほかの個人に資金を送金する意向を伝える。
【0054】
言い換えれば、受領者の社会的認識記号を入力した瞬間、送金者のスマートフォンにインストールされた送金者銀行のプログラムと、送金者銀行の演算システムとの間に情報の交換(202)が発生し、送金者銀行(203)と中央サーバーコンポネントとの間でも、受領者銀行を特定する目的での情報交換が行われる。このようなメッセージの交換が行われる瞬間、受領者はその社会的認識記号を通知するすべての事前行為を完了しており、その名において受領者銀行の役割をはたす銀行を特定しており、銀行は受け取った情報を中央サーバーコンポネントに伝達し、受領者に関するデータを中央サーバーコンポネントのデータベースに保存するようにしてあることが前提である。
【0055】
受領者銀行特定の問い合わせを受け取る(203)と、中央サーバーコンポネントは、受領者銀行の情報があるか、またはないかを含む回答メッセージを送信(204)し、このメッセージは逆行して(205、206)送金者銀行を通じてアプリに送られ、送金者が送金操作を継続するかを決断できるよう、画面に表示されるようになる。受領者が事前に送金者に対し、どの銀行で資金を受け取りたいかを通知している場合、送金者は受領者銀行に関する第一の問い合わせへの回答を受け取った後、アプリが表示する銀行の一覧の中から、いずれにしても受領者が必要とする銀行を選択することができる。
【0056】
受領者銀行の名称が送金者に判明し、送金者が送金の継続に同意するならば、
図3に表示される、情報メッセージ交換の次の段階に進む。
【0057】
ここでは、送金額に関するデータ、受領者の社会的識別記号、受領者銀行の名称が、アプリを通じて(208)送金者銀行の演算システムに送信されるメッセージに記載され(207)、つぎに(209)中央サーバーコンポネントに送られ、中央サーバーコンポネントは上掲のデータを含む問い合わせ(210)を受領者銀行に送り、送金の確認を求める。
【0058】
受領者銀行の演算システムにより、問い合わせの処理(210)が行われ、中央サーバーコンポネント向けの、受領者とその口座に関する、たとえば、受領者の氏名、ミドルネームその他受領者に関する情報を含む回答メッセージ(211)が作成される。
【0059】
中央サーバーコンポネントは、受領者の氏名及びミドルネームから、名前、ミドルネーム、苗字の最初の文字からなる個人確認メッセージ(PAM: Personal assurance message)を作成し、これを伝達する情報に追加する。このような個人確認メッセージ変形の例は、名前、ミドルネーム、苗字の最初の文字を送金者が受領者を確認するために使うことが、受領者の身元確認のための既知の方法であり、現在銀行に関する行為において一般的に認知されているがゆえ、引用する。ただし、時間の経過とともに、受領者の身元を確認するほかの方法が用いられる可能性もあり、新しい確認フレーズの採用は、申請する方法の実現に影響するものではない。
【0060】
すべての上掲の情報は送金者銀行に返送され(212)、送金者のコミュニケーションツール上のアプリ(213)に到達し、個人確認メッセージが表示される(214)。
【0061】
受領者銀行が受領者のデータ(社会的認識記号)を確認しない場合、確認に失敗したことを伝えるメッセージが作成送信される(211、212、213)。送金者側にはその場合、送金を試みたが失敗した内容のメッセージが表示され、201のステップからふたたび送金を始めることができ、207のステップでほかの受領者銀行を選択する。
【0062】
しかしながら、送金者が(214)ステップで「成功」を示すメッセージを受け取った場合、送金行為そのもの開始(215)が提案される。たとえば、送金者のコミュニケーションツールにあるアプリがそのインターフェース上で、送金者に対し、「送金する」ボタンまたは「継続する」ボタンを押すことを提案する。
【0063】
本発明では、アプリまたは支払いサービスの、ブラウザ経由アクセスするユーザーインターフェースの特徴については言及しない(例として挙げるのみである)。
【0064】
送金操作の開始(215)後、送金者のコミュニケーションツール上のアプリを経由して、資金送金の問い合わせ(216)が送金者銀行の演算システム上に形成され、これは中央サーバーコンポネントに送信(217)され、ここでは、次に、その処理が行われる。処理が成功裏に完了すると、中央サーバーコンポネントは、送金者銀行に操作完了の用意ができたことを確認するメッセージを送信(218)し、送金者銀行の口座から資金を引き出し、受領者銀行の口座に振り込むよう、支払請求(219)を精算システム上に作成する。
【0065】
精算システムは中央サーバーコンポネントが指示する要求事項を実行し、その実行を確認するメッセージを送信する(220)。
【0066】
資金の送金実行を確認するメッセージを受信すると、中央サーバーコンポネントは、送金が成功裏に完了したことについて、相応のメッセージ(通知)を以下送信する。
【0067】
1. 送金者銀行に対し(221)、送金者銀行は中央サーバーコンポネントから送金の実行、すなわち、その口座から資金が引き出されたことの確認を受領すると、顧客たる送金者の口座から資金を引き出し、中央サーバーコンポネントに引き出しを確認する通知を送信する(222)。
【0068】
2. 受領者銀行に対し(223)、受領者銀行は、中央サーバーコンポネントから送金実行ならびにその口座に資金が振込まれたことについての確認を受領すると、資金を顧客たる受領者の口座に振込み、中央サーバーコンポネントに振込みを確認する通知を送信する(224)。
【0069】
こうして、このような自動化された銀行間送金実行の方法を実現する際には、銀行がその顧客の口座に「隠れた」融資を行う可能性は、完全に排除される。
【0070】
送金者銀行が、引き出しを確認する中央サーバーコンポネント宛の上掲の通知(222)を送信すると、送金者銀行の演算システムにより、送金者に対し送金が成功裏に完了し、資金が引き出されたことに関する通知を表示すべく、メッセージが作成送信される(225、226)。類似の行為が、受領者銀行の側でも行われており、こちらは顧客つまり受領者の口座に資金が振込まれ、そのことを中央サーバーコンポネントに伝えるメッセージを送信(224)すると、受領者に対し資金が振込まれたことを知らせるメッセージを送信する(227)。
【0071】
受領者銀行からの受領者への資金振込を伝えるメッセージのほかに、中央サーバーコンポネントは、同時に受領者に対し、通知サーバーの演算システムへの要求送信という手段で、資金の振り込みに関する通知を送ることも可能であり、この場合通知サーバーは中央サーバーコンポネントからの要求への回答として、受領者のコミュニケーションツールに向け、たとえば、(受領者が事前にこれを社会的識別記号として申告していた場合)ショートメッセージ送信、または、(受領者が電子メールを社会的識別記号として申告していた場合)電子メール送信そのほか既知の通信方法により、そのコンポネントがサポートするいずれかの方法で、メッセージを送る。
【0072】
このように、申請する銀行間資金送金実現の自動化方法は、従来では銀行が事前に引き出し要求および振込請求を独自に、たとえばロシア連邦中央銀行のような、精算システムに送信する必要があったのに比べ、申請するシステムに含まれるコンポネント「精算システム」が資金の配分を行うため、これまでに存在していた方法の欠点を排除する。同時に、このような送金で必要な支払い詳細情報の提出を含め、送金上の手続きおよび確認における常識的な要求事項はすべて実行されている。これらすべての詳細情報が送金者(個人)から送金銀行と受領銀行に移動している点が根本的に重要で、これにより送金者による送金手続きが簡略化され、支払い詳細情報を入力する際の様々なミスの可能性が低くなっている。
【0073】
図5に表示された銀行間送金を実行するための第二の自動化された方法は、送金者が別々の銀行に保有する自分の口座間での送金をごく迅速に行いたい場合に実現される。この方法は、銀行間送金の第一の方法の変形であり、同じく申請するシステム上で実現されるが、この場合においては、送金者が同時に受領者の役割をも担う。こういった状況では、受領者銀行の口座が特定されており、送金者は事前にそれを知っているため、自分自身が受領者となっている銀行に開設してある自分の振込口座番号を送金者として記入する必要がない。
【0074】
ここで、第二の自動化された方法を実行するには、送金者は自分のコミュニケーションツールとその上のプログラムを使い、送金銀行のアプリを起動するか、送金銀行のアドレスからブラウザを立ち上げ、送金者として別々の銀行にある自分の口座間での資金送金を行いたい旨の問い合わせを作成する。送金者は事前にどの銀行に口座があるかを把握し、具体的にどの銀行に送金する必要があるかを知っている。そのため、受領者銀行の特定にかかわる情報の交換は行われない。そのため、送金者が自分の口座間での送金を行いたい旨の問い合わせを行う時点で、メッセージによる情報の交換は省略される。
【0075】
送金者は自分のコミュニケーションツールで、送金額と、資金振込先となる自分の口座のある銀行を記入する(301)。
【0076】
送金者のコミュニケーションツールは、送金者が入力した金額と受領者銀行のサインと、送金者と受領者が同じである送金のサインを含む情報メッセージを、送金者銀行の演算システムに送信(302)し、その後(303)中央サーバーコンポネントに送り、中央サーバーコンポネントは、上述のデータを含む問い合わせを、送金確認を得る目的で、受領者銀行に送付する(304)。
【0077】
受領者銀行の演算システムでは、問い合わせ(304)の処理が行われ、回答メッセージ(305)が中央サーバーコンポネントに向け作成され、ここに受領者およびその口座、例えば、受領者の氏名、ミドルネームおよびその他の受領者に関する情報が記される。
【0078】
中央サーバーコンポネントは、たとえば受領者の苗字、名前、ミドルネームから、受領者の名前、ミドルネーム、苗字の最初の文字からなる個人確認メッセージを作成し、伝達する情報に追加する。
【0079】
このような個人確認メッセージ変形の例は、名前、ミドルネーム、苗字の最初の文字を送金者が受領者を確認するために使うことが、受領者の身元確認のための既知の方法であり、現在銀行に関する行為において一般的に認知されているがゆえ、引用する。ただし、時間の経過とともに、受領者の身元を確認するほかの方法が用いられる可能性もあり、新しい確認フレーズの採用は、申請する方法の実現に影響するものではない。
【0080】
中央サーバーコンポネントは、送金者と受領者の個人確認メッセージを確認する。この方法により、中央サーバーコンポネントは、支払いが同一個人の所有する口座間での送金であることを、重ねて特定することができる。
【0081】
フレーズが当てはまる場合、処理作業は継続され、フレーズが当てはまらない場合、処理作業は失敗したものとして完了する。
【0082】
上掲の情報はすべて、送金者銀行に返送(306)され、送金者のコミュニケーションツール上のプログラム(307)には、確認フレーズが受信され表示される(308)。
【0083】
資金の送金者と受領者が同一人物であっても、確認フレーズを表示するステップは、資金の誤った移動の可能性を低減するため行われる。ゆえに、確認段階が成功裏に終了(308)したならば、送金者は、送金者のコミュニケーションツール上のアプリを経由してコマンドを送信し、送金を開始することができる(309)。
【0084】
その後、送金の問い合わせ(310)が送金銀行の演算システムに形成され、この問い合わせはそこから中央サーバーコンポネントに向け送信される。
【0085】
確認が「成功」のサインをもって完了した場合、中央サーバーコンポネントは操作完了の用意ができたことを確認するメッセージ(312)を送金者銀行に送り、送金者銀行の口座から現金を引き出し、受領者銀行の口座に振り込むよう、支払請求を精算システム上に作成する(313)。精算システムは、中央サーバーコンポネントが指示する要求事項を実行し、その実行を確認するメッセージ(314)を送信する。
【0086】
送金指示の実行確認を受領すると、中央サーバーコンポネントは送金が成功裏に完了したことについて、相応のメッセージ(通知)を以下送信する。
【0087】
1. 送金者銀行に対し(315)、送金者銀行は中央サーバーコンポネントから送金の実行、すなわち、その口座から資金が引き出されたことの確認を受領すると、顧客たる送金者の口座から資金を引き出し、中央サーバーコンポネントに引き出しを確認する通知を送信する(316)。
【0088】
2. 受領者銀行に対し(317)、受領者銀行は、中央サーバーコンポネントから送金実行ならびにその口座に資金が振り込まれたことについての確認を受領すると、資金を顧客たる受領者の口座に振り込み、中央サーバーコンポネントに振り込みを確認する通知を送信する(318)。
【0089】
こうして、自動化された銀行間送金実行の第二の方法を実現する際にも、銀行がその顧客の口座に「隠れた」融資を行う可能性が、完全に排除される。
【0090】
その後、自分の口座間での送金を一瞬で完了した送金者は、送金が成功したことを伝える相応のメッセージが、引き出しが行われた銀行(送金者銀行)(319、320)および、別途、口座への振り込みが発生した銀行(321)から発信されることで、情報を得る。
【0091】
両銀行からの通知に加えて、中央サーバーコンポネントは、同時に受領者でもある送金者に対し、通知サーバーの演算システムへの要求送信という手段で、資金の振り込みに関する通知を送ることも可能であり、この場合通知サーバーは中央サーバーコンポネントからの要求への回答として、受領者のコミュニケーションツールに向け、たとえば、(受領者が事前にこれを社会的識別記号として申告していた場合)ショートメッセージ送信、または、(受領者が電子メールを社会的識別記号として申告していた場合)電子メール送信そのほか既知の通信方法により、そのコンポネントがサポートするいずれかの方法で、メッセージを送る。
【0092】
このように、銀行間送金を実施する自動化された方法の第二の方法では、自分で自分に送金するために受領者銀行を特定する目的で、受領者の社会的識別記号を入力することは必須ではなく、従い、より迅速かつ便利である。
【0093】
しかしながら、第一および第二の自動化された方法の実現は、プログラム機器およびそれにインストールされたアプリまたはシステムプログラムを利用するものであり、ゆえに、情報メッセージの確認プロセス作成、交換、実施は高速で行われる。同時に、申請する送金方法においては、当該分野での安全確認要求に適合した確認が実施され、それ以外にも、銀行が顧客口座に「隠れた」融資を行う可能性を完全に排除する。銀行間の精算が、以前のような送金側からの申請書を溜めて、それらを精算システムに送り、同時に送金者が作成し、システムが個々の送金申請を処理するということがないためである。