(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】超音波送受波器並びに超音波流量計、超音波流速計、超音波濃度計、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20241018BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20241018BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20241018BHJP
G01N 29/28 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
G01F1/66 101
G01N29/024
G01N29/28
(21)【出願番号】P 2020067176
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎
(72)【発明者】
【氏名】橋田 昌道
(72)【発明者】
【氏名】桝田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】永原 英知
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-105709(JP,A)
【文献】特開2003-078996(JP,A)
【文献】特開2005-037219(JP,A)
【文献】特開2016-153750(JP,A)
【文献】特開2004-343263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00 - 31/00
G01F 1/66
G01N 29/024
G01N 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、前記圧電体の一つの面に配置した音響整合体と、を備える超音波送受波器であって、
前記音響整合体は、
天板と底板と側壁によって形成された密閉空間と、
前記密閉空間を分割するように、前記天板と底板とに密着して前記底板に対して略垂直方向に形成された垂直隔壁と、
を備える超音波送受波器。
【請求項2】
圧電体と、前記圧電体の一つの面に配置した音響整合体と、を備える超音波送受波器であって、
前記音響整合体は、
天板と底板と側壁によって形成された密閉空間と、
前記密閉空間を分割するように、前記天板と底板とに密着して前記底板に対して略垂直方向に形成された垂直隔壁と、
前記密閉空間を分割するように、前記側壁と密着して前記底板に略水平方向に形成された水平隔壁と、
を備える超音波送受波器。
【請求項3】
有天筒状金属ケースと、前記有天筒状金属ケースの天部内壁面に配置した圧電体と、前記有天筒状金属ケースの天部外壁面に配置した音響整合体と、を備える超音波送受波器であって、
前記音響整合体は、
天板と底板と側壁によって形成された密閉空間と、
前記密閉空間を分割するように、前記天板と底板とに密着して前記底板に対して略垂直方向に形成された垂直隔壁と、
を備える超音波送受波器。
【請求項4】
有天筒状金属ケースと、前記有天筒状金属ケースの天部内壁面に配置した圧電体と、前記有天筒状金属ケースの天部外壁面に配置した音響整合体と、を備える超音波送受波器であって、
前記音響整合体は、
天板と底板と側壁によって形成された密閉空間と、
前記密閉空間を分割するように、前記天板と底板とに密着して前記底板に対して略垂直方向に形成された垂直隔壁と、
前記密閉空間を分割するように、前記側壁と密着して前記底板に略水平方向に形成された水平隔壁と、
を備える超音波送受波器。
【請求項5】
圧電体と、前記圧電体の一つの面に配置した有天筒状金属ケースと、前記有天筒状金属ケースの天部外壁面に配置した音響整合体と、を備える超音波送受波器であって、
前記音響整合体は、
天板と側壁とで形成された内部空間と、
前記内部空間を前記有天筒状金属ケースの天部外壁面に密着することによって形成された密閉空間を分割するように、前記天板と前記有天筒状金属ケースの天部外壁面とに密着して形成された垂直隔壁と、
を備える超音波送受波器。
【請求項6】
前記圧電体の接合投影面は、前記音響整合体の側壁部の接合投影面に内包されることを
特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波送受波器。
【請求項7】
前記垂直隔壁は、前記音響整合体の側壁よりも薄くなるように形成した請求項1から6のいずれかに1項に記載の超音波送受波器。
【請求項8】
前記垂直隔壁で分割された各領域の面積は2mm
2以下とし、前記垂直隔壁の投影面積は前記側壁を除く投影面積の15%以下とする請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波送受波器。
【請求項9】
前記垂直隔壁は、前記音響整合体の底板側よりも天板側の方が薄くなるように形成した請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波送受波器。
【請求項10】
前記音響整合体の前記側壁及び前記垂直隔壁は、パターンを形成した金属板を複数重ね合わせてなる請求項1から9のいずれか1項に記載の超音波送受波器。
【請求項11】
前記音響整合体の前記天板厚みは、前記パターンを形成した金属板1層あたりの厚みよりも薄いことを特徴とする請求項10に記載の超音波送受波器。
【請求項12】
金属板にパターンを形成する工程と、
複数の前記金属板及び天板と底板を積層する工程と、
前記積層した金属板及び天板と底板を高温で荷重を加え接合する工程と、が順に施されることを特徴とする請求項10または11に記載の超音波送受波器に用いる音響整合体の製造方法。
【請求項13】
圧電体と前記圧電体の一つの面に配置した有天筒状金属ケースと、前記有天筒状金属ケースの天面外壁面に配置した音響整合体とを備える超音波送受波器の製造方法であって、
金属板に
垂直隔壁が構成されるようにパターンを形成する工程と、
複数の前記金属板及び天板と底板を積層する工程と、
前記積層した金属板及び天板と底板を高温で荷重を加えて接合する工程と、
前記底板をプレス加工し有天筒状ケースとする工程と、
前記有天筒状ケースの天部内壁面に圧電体を配置する工程と、
が順に施されることを特徴とする、超音波送受波器の製造方法。
【請求項14】
被計測流体を通じる流路と、
超音波を送受信する前記流路の上流と下流に取り付けられた請求項1から10のいずれか1つの一対の超音波送受波器と、
前記超音波送受波器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、
前記計時装置により求めた到達時間より、流速、流量を演算する演算手段と、
を備える超音波流量計または超音波流速計。
【請求項15】
被計測流体を通じる通気口を備える筐体と、
前記筐体内部に所定の距離を離し対向して配置した請求項1から10のいずれか1つの一対の超音波送受波器と、
前記筐体内部に配置した温度センサと、
前記超音波送受波器により送信された信号の到達時間を計時する計時装置と、
前記計時装置により求めた到達時間より、伝搬速度、混合ガスの平均分子量、ガス濃度を演算する演算手段と、
を備える超音波濃度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波送受波器、及び、超音波送受波器を用いて気体の流量、流速及び濃度等を計測する計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、超音波の送受信の感度と、機械的強度、耐熱性が高い音響整合体を備える超音波送受波器51を開示する。この超音波送受波器51は、超音波発生源54に接合される接合面55と音波を放出する振動面56が所定厚みの両面に形成された板状の基材と、少なくとも振動面56に接合面55に向けて部分的に設けられた密な部分52と凹部53と、からなる音響整合層を備える(
図15参照)。
【0003】
特許文献2は、音響整合層60の一方主面61は、縁部62が筒状のケース63の上端面に固着され、音響整合層60の他方主面64は、第一の防水材65に覆われ、音響整合層60の側面66は、第二の防水材67に覆われ、第二の防水材67は、音響整合層60の他方主面64の縁部付近68において、第一の防水材65に隙間なく接合されるとともに、ケース63の側面69において、ケース63に隙間なく接合されていることを特徴とすることを開示する(
図16参照)。
【0004】
特許文献3は、多孔質体70における表面に積層され、熱硬化性樹脂および流動抑制粒子からなる緻密層72を有する整合部材と、音波放射面73および多孔質体70の外周壁面に密着された側壁部材75と、を有し、緻密層72および側壁部材75により多孔質体74が封止されるとともに、側壁部材75は音波放射方向に向かって径方向の厚みをほぼ均一設定したものであることを開示する(
図17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-12921号公報
【文献】特開2002-135894号公報
【文献】特開2010-268262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、被計測流体が高温高湿流体であっても長期間、安定して、高精度に計測することができる超音波送受波器、及び、この超音波送受波器を用いた超音波流量計、超音波流速計、超音波濃度計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における超音波送受波器は、圧電体と前記圧電体の一つの面に配置した音響整合体とを備える超音波送受波器であって、前記音響整合体は、天板と底板と側壁によって形成された密閉空間と、前記密閉空間を分割するように、前記天板と底板とに密着して前記底板に対して略垂直方向に形成された垂直隔壁と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示における超音波送受波器は、圧電体と前記圧電体の一つの面に配置した音響整合体とを備え、音響整合体が密閉空間を備え、かつ密閉空間が分割するように形成されているため、外周より腐食劣化が発生し、湿度が音響整合体内部に浸入しても、隔壁が複数あ
るため、すぐには計測性能が低下することが無い。そのため、この超音波送受波器を用いた超音波流量計、流速計、濃度計は、高温高湿流体を長期間、安定して、高精度に流量計測、流速計測、濃度計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における超音波送受波器の断面図
【
図2】(a)実施の形態1における音響整合体の断面図、(b)(a)の線分X断面図
【
図3】実施の形態1における音響整合体の製造手順を示す斜視図
【
図4】実施の形態2における超音波流速流量計の構成を示すブロック図
【
図5】実施の形態3における超音波濃度計の構成を示すブロック図
【
図6】(a)実施の形態4における音響整合体の断面図、(b)(a)の線分X断面図
【
図7】実施の形態4における音響整合体の製造手順を示す斜視図
【
図8】実施の形態5における音響整合体の厚み方向断面図
【
図9】実施の形態5における他の音響整合体の厚み方向断面図
【
図10】実施の形態6における超音波送受波器の断面図
【
図11】実施の形態6における超音波送受波器の製造手順を示す断面図
【
図12】(a)実施の形態6における超音波送受波器の断面図、(b)実施の形態6における圧電体の接合投影面と側壁部接合投影面との関係を示す概略図
【
図13A】実施の形態7における超音波送受波器の断面図
【
図13B】実施の形態7における他の超音波送受波器の断面図
【
図13C】実施の形態7における他の超音波送受波器の製造手順を示す断面図
【
図14A】(a)実施の形態8における音響整合体の断面図、(b)(a)の線分X断面図
【
図14B】(a)実施の形態8における他の音響整合体の断面図、(b)(a)の線分X断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、被計測流体として、可燃性ガス、空気等の乾燥空気の流速、流量、濃度を計測するため、被計測流体に効率よく超音波を伝搬させる必要がある。そのためには、被計測流体と圧電体との間に介在させる音響整合体の物性をコントロールする必要がある。
【0011】
上記の音響整合体に関する物理的解釈を以下に示す。
【0012】
まず、音響インピーダンスの定義である密度と音速の積は、その物質の微小単位要素を構成する物質の運動量を示す。すなわち、微小単位要素を構成する物質の運動量をΔP、質量をΔM、速度をVとすると、運動量の定義より、
ΔP(運動量)=ΔM×V(音響インピーダンス) (1)
となり、音響インピーダンスは微小単位要素を構成する物質の運動量であることが判る。
【0013】
従って、ある物質(超音波発生源)から隣接する物質への効率的なエネルギー伝播は、音響インピーダンスが近いことが望ましいことが判る。
【0014】
これらを踏まえて、上記音響整合体にて起こる現象を記述する。
【0015】
一般に物質の音速は、
V=(κ/ρ)1/2 (2)
と表される。ここでκは体積弾性率、ρは密度である。即ち、物質の音速は体積弾性率と密度により一意的に決まることから、音速を意図的に制御することは困難であることが判る。
【0016】
従って、音響インピーダンスを低減するためには密度を低減することが有効である。
【0017】
本開示の音響整合体では、天板、底板、側壁によって密閉空間が形成され、前記密閉空間内部に、天板、底板に対して概垂直に形成された垂直隔壁と、を備え、前記垂直隔壁は、前記密閉空間を分割するように、前記天板、底板とに密着して形成し、見かけの密度を低減する方法を採用している。
【0018】
また、従来構成では、被計測流体に、高温高湿の気体を計測する場合、貫通部に水分が混入し、音響整合体の密度が、見かけ上大きくなるため、音響整合体の音響インピーダンスが大きくなってしまい、被計測流体への超音波の伝搬効率が低下し、結果として、流量計測性能が低下する、或いは、最悪の場合は計測不能となってしまう課題がある。
【0019】
その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0020】
そこで本開示は、被計測流体が高温高湿流体であっても長期間、安定して、高精度に計測することができる流量計、流速計、濃度計を提供する。
【0021】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0022】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0023】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図3を用いて、実施の形態1の超音波送受波器を説明する。
【0024】
[1-1.構成]
図1において、超音波送受波器1は、音響整合体2と、圧電体3と、圧電体の電極4、5に接続されたリード線6、7とを備える。圧電体3の電極4と音響整合体2とは接合体で接合され、例えばエポキシ接着剤、フェノール接着剤、シアノアクリレート接着剤等の一般的な接着剤で接合することができる。
【0025】
次に、
図2を用いて音響整合体2の内部構造を説明する。
図2(a)は、音響整合体の断面図、
図2(b)は、
図2(a)の線分X断面図である。
【0026】
音響整合体2は、天板8と底板9とが側壁10で接合されて密閉空間11が形成され、かつ、密閉空間11を分割するように、垂直隔壁12が形成され、垂直隔壁12は、天板8、底板9と概垂直に一体的に接合されている。
【0027】
[1-2.音響整合体の製造手順]
次に、
図3を用いて、音響整合体2の製造手順を説明する。
【0028】
図3の(a)から(d)は、実施の形態1における音響整合体2の製造手順の斜視図を示している。
【0029】
図3(a)は、金属板13を準備し、
図3(b)は、金属板13を円形状にパターニングした金属板14aと、音響整合体2の側壁10と垂直隔壁12とをパターニングした金属板14bを示している。パターニングは、例えば、金属板13のプレスによる打ち抜き加工、フォトリソグラフィによるエッチング加工、レーザー加工、或いは、放電ワイヤーを利用した加工等を用いることができる。
【0030】
図3(c)は、金属板14a,14bを複数枚、位置決めを実施しつつ積層する状態を示しており、金属板14bを所定枚数積層し、最上面に天板8として金属板14aを、最底面に底板9として金属板14aを積層する。パターニングした金属板同士の接合は、拡散接合によって一体的な材料となるように加熱加圧環境で接合する。加熱温度は、例えばステンレスの場合、融点約1500℃に対し、拡散接合時の温度はおよそ1000℃程度に加熱し行う。拡散接合には、平面性が要求され、
図3(c)の加工方法によっては、バリや変形を解消する後加工が必要となる。
【0031】
以上の製造手順によって、
図3(d)に示すように、各金属パターニングを拡散接合によって接合した本実施の形態1における超音波送受波器1の音響整合体2を作ることができる。
【0032】
[1-3.効果]
以上のように、本実施の形態において、超音波送受波器1は、圧電体3と圧電体3の一つの面に配置した音響整合体2とを備える超音波送受波器1であって、音響整合体2は、天板8、底板9、側壁10によって密閉空間11を形成され、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概垂直に形成された垂直隔壁12とを備え、垂直隔壁12は、密閉空間11を分割するように、天板8、底板9とに密着して形成された音響整合体2を備える。
【0033】
これにより、本開示の超音波送受波器1を、高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合、音響整合体が外周より腐食劣化し、音響整合体2の外周部より密閉空間11内部に水分が浸入しても、垂直隔壁12により密閉空間11が複数に区画されているため、すぐには計測性能が低下することが無い。そのため、高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合でも、長期間、安定して動作する。
【0034】
また、本実施の形態において、音響整合体2の製造方法は、金属板13にパターンを形成する工程と、パターン形成した金属板14a、14bを積層する工程と、積層した金属板14a、14bを高温で荷重を加え複数の金属板を接合する工程とが順に施されるようにしたものである。
【0035】
これにより、音響整合体2を精度よくパターニングでき、かつ、金属板同士を強固に、隙間なく接合することができ、音響整合体2を安定して精度よく作ることができる。結果として、ばらつきが少ない超音波送受波器1とすることができる。
【0036】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態の超音波流量計(または、超音波流速計)に関して、
図4を用いて説明する。
【0037】
[2-1.構成]
図4に示す様に、本実施の形態の超音波流量計は、流体の流れる流路15の上流と下流に実施の形態1の超音波送受波器1の構成を用いた超音波送受波器16、17が一対、対向配置された構成となっている。L1は、上流側に配置された超音波送受波器16から伝搬する超音波の伝搬経路を示しており、L2は下流側に配置された超音波送受波器17の超音波の伝搬経路を示している。また、超音波送受波器16,17間の超音波の到達時間を計時する計時装置18と、計時装置18により求めた到達時間より、流速または流量を演算する演算手段19とを備えている。
【0038】
[2-2.流速、流量計の計測動作]
流路15の中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC(図示せず)、流体の流れる方向と超音波の伝搬方向の角度をθとする。超音波送受波器16を超音波送波器、超音波送受波器17を超音波受波器として用いたときに、超音波送受波器16から出た超音波が超音波送受波器17に到達する伝搬時間t1は、
t1=L/(C+Vcosθ) (3)
で示される。
【0039】
次に、超音波送受波器17から出た超音波パルスが超音波送受波器16に到達する伝搬時間t2は、
t2=L/(C-Vcosθ) (4)
で示される。
【0040】
そして、(3)と(4)の式から流体の音速Cを消去すると、
V=L/2cosθ(1/t1-1/t2) (5)
の式が得られる。
【0041】
Lとθが既知なら、計時装置18にてt1とt2を測定すれば流速Vを求めることができる。加えて、演算手段19によって、この流速Vに断面積Sと補正係数Kを乗じれば、流量Qを求めることができる。演算手段19は、上記Q=KSVを演算するものである。
【0042】
[2-3.効果]
以上に様に、本実施の形態において、超音波流量計、または、超音波流速計は、被計測流体を通じる流路15と、流路15の上流と下流に対向配置された一対の超音波送受波器16,17と、超音波送受波器16,17間の超音波信号の到達時間を計時する計時装置18と、計時装置18により求めた超音波の到達時間より、流速、流量を演算する演算手段19とを備える。
【0043】
これにより、本開示の超音波流量計、または、超音波流速計は、高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合、外周より腐食劣化が発生し、音響整合体の外周部より密閉空間内部に水分が浸入しても、垂直隔壁により密閉空間が複数に分割されているため、すぐには計測性能が低下することが無い。そのため、高温高湿流体を長期間使用しても、安定して、高精度に流量、流速、気体濃度を計測することができる。
【0044】
(実施の形態3)
次に、本実施の形態の超音波を用いた気体の濃度計について
図5を用いて説明する。
【0045】
[3-1.構成]
図5は、本実施の形態における気体濃度計の断面模式図を示している。本開示の気体濃度計は、気体濃度を測定するための濃度測定空間37を有する筐体30を備えており、筐体30には、被計測流体を通気するための通気孔31が設けられている。筐体30におけ
る濃度測定空間37の形状は、例えば、直方体形状、円筒形状等とする。濃度測定空間37は、必ずしも筐体30の壁によって全方向が囲まれていなくてもよく、少なくとも超音波を送受信できる空間であればよい。例えば、筐体30の一部を欠損させ、その欠損部において濃度測定空間37が外部に開放されていてもよい。
【0046】
濃度測定空間37内に、実施の形態1で説明した超音波送受波器1の構成を用いた一対の超音波送受波器32、33を対向するように配置し、さらに、温度センサ34を収容し、計時装置35および演算手段36に接続されている。
【0047】
[3-2.濃度計測の動作]
超音波送受波器32を超音波送波器として用いる場合、計時装置35の動作に基づいて超音波を送信する。超音波送受波器33は、超音波受波器として機能し、超音波送受波器32から送信された超音波は、濃度測定空間37に満たされた被計測流体中を伝搬し、超音波受波器として用いた超音波送受波器33は、超音波を受信する。計時装置35は、超音波が送信されてから受信されるまでの伝搬時間と、予め定められた超音波の伝搬距離Lに基づいて、超音波の伝搬速度Vsを求める。
【0048】
この被計測流体である混合ガス中を伝搬する超音波の伝搬速度Vsは、式(6)で表されるように、混合ガスの平均分子量M、比熱比γ、気体定数R及びガス温度T(K)によって決まる。音速及び温度を測定すれば平均分子量が求まる。
【0049】
Vs=γ・R・T/M (6)
混合ガス中のガス成分が既知のときは、ガス温度T及び伝搬速度Vsを測定して平均分子量Mを求め、平均分子量Mから求めるガス濃度を演算できる。濃度演算式はa,bからなる2種混合理想気体の場合、式(7)のごとくなる。
【0050】
aガスの濃度(%)=M-mb / ma-mb×100 (7)
ここで、ma及びmbはそれぞれaガス及びbガスの分子量を表す。
【0051】
[3-3.効果等]
以上の様に、本実施の形態において、超音波濃度計は、被計測流体を通じる通気口を備える筐体30と、筐体30内部に所定の距離をはなし対向して配置した1対の超音波送受波器32,33と、筐体30内部に配置した温度センサ34と、超音波送受波器32,33間の超音波信号の到達時間を計時する計時装置35と、計時装置35により求めた到達時間より、伝搬速度、混合ガスの平均分子量、ガス濃度を演算する演算手段36とを備える。
【0052】
これにより、本開示の超音波送受波器を搭載した超音波濃度計は高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合、外周より腐食劣化が発生し、音響整合体の外周部より密閉空間内部に水分が浸入しても、垂直隔壁により密閉空間が複数に分割されているため、すぐには計測性能が低下することが無い。そのため、高温高湿流体を長期間使用しても、安定して、高精度に流量、流速、気体濃度を計測することができる。
【0053】
(実施の形態4)
以下、
図6~9を用いて、実施の形態4の超音波送受波器を説明する。
【0054】
[4-1.構成]
本実施の形態において、実施の形態1と異なるのは音響整合体の内部構造のみであり、超音波送受波器としての構成は、実施の形態1と同様のため説明を省略し、
図6を用いて音響整合体の内部構造を説明する。
図6(a)は、本実施の形態における音響整合体の断
面図、
図6(b)は、
図6(a)の線分X断面図を示している。
【0055】
図6において、本開示の音響整合体20は、天板8、底板9、側壁10によって密閉空間11が形成され、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12と、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概水平方向に形成された水平隔壁39とを備え、垂直隔壁は、密閉空間11を分割するように、天板8、底板9とに密着して形成され、水平隔壁39は、密閉空間11を分割するように、側壁10と密着して形成されている。
【0056】
[4-2.音響整合体の製造手順]
次に、
図7を用いて、音響整合体20の製造手順を説明する。
図7の(a)から(d)は、本実施の形態2における音響整合体20の製造手順斜視図を示している。
【0057】
図7(a)は金属板13を準備し、
図7(b)は、金属板13を円形状にパターニングした金属板14aと、音響整合体20の天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12と側壁とをパターニングした金属板14bを示しており、ここでは、
図2(b)と同じとしている。パターニングは、例えば、金属板のプレスによる打ち抜き加工、フォトリソグラフィによるエッチング加工、レーザー加工、或いは、放電ワイヤーを利用した加工等を用いることができる。
【0058】
図7(c)は、金属板14a,14bを複数枚、位置決めを実施しつつ、交互に積層する状態を示しており、水平隔壁39として金属板14a、垂直隔壁12として金属板14bを積層し、最上面に天板8として金属板14aを、最底面に底板9として金属板14aを積層する。パターニングした金属板同士の接合は、拡散接合によって一体的な材料となるように加熱加圧環境で接合する。加熱温度は、例えばステンレスの場合、融点約1500℃に対し、拡散接合時の温度はおよそ1000℃程度に加熱し行う。拡散接合には、平面性が要求され、
図7(c)の加工方法によっては、バリや変形を解消する後加工が必要となる。
【0059】
以上の製造手順によって、
図7(d)に示すように、各金属パターニングを拡散接合によって接合した本実施の形態2における音響整合体20を作ることができる。
【0060】
[4-3.効果]
以上のように、本実施の形態の超音波送受波器の音響整合体20は、天板8、底板9、側壁10によって密閉空間11を形成され、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12と、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概水平方向に形成された水平隔壁39とを備え、垂直隔壁12は、密閉空間11を分割するように、天板8、底板9とに密着して形成され、水平隔壁39は、密閉空間11を分割するように、側壁10と密着して形成されたものである。
【0061】
これにより、本開示の超音波送受波器を、高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合、音響整合体が外周より腐食劣化し、音響整合体の外周部より密閉空間11内部に水分が浸入しても、垂直隔壁12と水平隔壁39により密閉空間11が複数に分割されているため、すぐには計測性能が低下することが無い。また、本開示の超音波送受波器に用いる音響整合体20は、密閉空間11を垂直隔壁12と水平隔壁39で区画している為、実施の形態1の音響整合体2よりも、更に、長期間、安定して動作する。
【0062】
また、本実施の形態において、音響整合体20の製造方法は、金属板13にパターンを形成する工程と、パターン形成した金属板14a、14bを積層する工程と、積層した金属板14a、14bを高温で荷重を加え接合する工程とが順に施されるようにしたもので
ある。
【0063】
これにより、音響整合体を精度よくパターニングでき、かつ、金属板同士を強固に、隙間なく接合することができ、音響整合体を安定して精度よく作ることができる。結果として、ばらつきが少ない超音波送受波器とすることができる。
【0064】
また、本実施の形態による超音波送受波器は、実施の形態2で説明した超音波流量計、流速計、或いは、実施の形態3で説明した超音波濃度計の超音波送受波器として用いることができる。
【0065】
(実施の形態5)
次に、超音波送受波器に用いる音響整合体の垂直隔壁の形状について、実施の形態5として説明する。
【0066】
[5-1.垂直隔壁のパターン]
実施の形態5における垂直隔壁のパターンに関して、
図7と異なるパターンを例示する。なお、本実施の形態における、垂直隔壁のパターンを限定することを意図していない。
【0067】
図8、9は、実施の形態5における音響整合体の厚み方向断面図を示している。
【0068】
図8、9はそれぞれ、側壁10と音響整合体2の天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12が示されている。この垂直隔壁12のパターンは、格子形状およびハニカム形状など、使用する環境、求められる強度に応じて選択することができる。その他にも、円形を敷き詰めた形状も選択可能である。
【0069】
[5-2.隔壁の厚み]
音響整合体の密閉空間内部に形成した、垂直隔壁は、側壁よりも薄くなるように形成するのが好ましい。音響整合体は、より軽量とすることで被計測流体へ超音波を効率よく伝達するとが可能となるため、天板、底板に対して垂直隔壁はより薄く、隔壁が少ないほうが好ましい。しかしながら、高温高湿環境で使用する場合、劣化は側壁から腐食が進行するため、側壁の厚みはより厚くすることで腐食耐性は向上する。
【0070】
以上を鑑み、音響整合体の密閉空間内部に形成した垂直隔壁は、側壁よりも薄くなるように形成することで、超音波の伝搬効率を下げることなく、高温高湿の腐食環境に対する耐性を向上することができる。
【0071】
[5-3.隔壁による超音波伝搬効率]
また、垂直隔壁は密閉空間を区切る機能と、圧電体で発生した超音波振動に対して共振する骨格としても機能する。垂直隔壁と天板8とは拡散接合によって強固に接合されているが、垂直隔壁12で区切られた領域の面積が大きくなると、天板8にたわみが発生するため、目的と異なる振動が発生し、結果として被計測流体への超音波の伝搬効率が低下する。
【0072】
表1は、音響整合体の垂直隔壁で区切られた領域および垂直隔壁の投影面積比と超音波伝搬効率との関係を示している。表1より、垂直隔壁で区切られた領域は0.2mm2以上で好ましく、より好ましくは、0.30mm2から1.0mm2の範囲でより好ましい。垂直隔壁の投影面積比は15%以下で、超音波伝搬効率が高く、より好ましくは、8~13%の範囲内でより好ましいことが分かる。
【0073】
【0074】
また、音響整合体の天板8の厚みは、パターンを形成した金属板1枚あたりの厚みよりも薄くすることで被計測流体への超音波伝搬効率をより高くすることができる。
【0075】
[5-4.効果等]
また、本実施の形態において、音響整合体の密閉空間内部に形成した垂直隔壁は、側壁よりも薄くなるように形成したものである。
【0076】
これにより、被計測流体への超音波の伝搬効率を下げることなく、高温高湿の腐食環境に対する耐性を向上することができる。
【0077】
また、本実施の形態において、垂直隔壁で区切られた領域の面積が1mm2以下とし、垂直隔壁の投影面積が音響整合体の側壁を除く投影面積の10%以下としたものである。
【0078】
これにより、被計測流体への超音波の伝搬効率をより向上することができる。
【0079】
また、本実施の形態において、音響整合体は、パターンを計測した金属板を複数重ね合わせて形成したものである。
【0080】
これにより、より複雑な形状を、高精細に作ることができ、結果として、音響整合体のバラツキを低減することができ、結果として、流量計、流速計、濃度計としたときに、高精度な計測が可能となる。
【0081】
また、本実施の形態において、音響整合体の天面の厚みは、パターンを形成した金属板1枚あたりの厚みよりも薄いとしたものである。
【0082】
これにより、被計測流体への超音波伝搬効率をより高くすることができる。
【0083】
また、本実施の形態による超音波送受波器は、実施の形態2で説明した超音波流量計、超音波流速計、或いは、実施の形態3で説明した超音波濃度計の超音波送受波器として用いることができる。
【0084】
(実施の形態6)
以下、
図10~12を用いて、実施の形態6を説明する。
【0085】
[6-1.構成]
図10において、超音波送受波器21は、有天筒状金属ケース42と有天筒状金属ケース42の天部内壁面42aに配置した圧電体3と、有天筒状金属ケース42の天部外壁面42bに配置した、実施の形態1で述べた音響整合体2、或いは、実施の形態4で述べた音響整合体20を備える。なお、以降の説明では、音響整合体2を用いて説明するが音響整合体20でも同様である。有天筒状金属ケース42と音響整合体2と圧電体3とは例えば、有機接着剤、低融点ガラス、半田、ロウ付け等が想定される。
【0086】
[6-2.超音波送受波器の製造手順]
次に、
図11を用いて、超音波送受波器21の製造手順を説明する。
【0087】
図11の(a)から(e)は、実施の形態6における超音波送受波器21の製造手順断面図を示している。
【0088】
図11(a)は、音響整合体2を示しており、
図11(b)は、圧電体3に接合体40として用いる熱硬化性接着剤を塗布形成し、有天筒状金属ケース42においても同様に接合体41を塗布形成する。
図6(c)において、圧電体3と有天筒状金属ケース42、音響整合体2を貼り合わせる。このとき、圧電体3、有天筒状金属ケース42、および音響整合体2に、約2から10kg/cm
2の加圧を加えた状態で、熱硬化性接着剤を硬化させる目的で、加熱を行う。
【0089】
図6(d)は、以上の工程によって加熱硬化し接合された音響整合体2と有天筒状金属ケース42と圧電体3とを接合した状態を図示しており、導電ゴム47を挿入した端子板43をフランジで溶接する。この溶接時に、密閉空間にアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを封入し、圧電体3の電極の劣化、圧電体3と有天筒状金属ケース42との接合部分の劣化を軽減する役割を果たす。
【0090】
有天筒状金属ケース42は、鉄、真鍮、銅、アルミ、ステンレスあるいは、これらの合金、あるいはこれらの金属の表面にめっきを施した金属など導電性を有す材料であれば良い。
【0091】
接合体40、41として用いた熱硬化性接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂など熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。場合によっては、熱可塑性樹脂であっても、ガラス点移転が高温使用温である70℃以下であれば接着剤として使用できる。
【0092】
図6(e)は、超音波送受波器21の完成状態である。
【0093】
[6-3.圧電体の接合投影面と側壁部接合投影面との関係]
図12を用いて、音響整合体2と圧電体3との接合面積に関して関係性を説明する。
【0094】
図12(a)は、本実施の形態における超音波送受波器21の断面図、
図12(b)実施の形態3における圧電体の接合投影面と側壁部接合投影面との関係概略図を示している。
【0095】
圧電体3は、超音波信号によって所定の周波数に振動し、この振動に音響整合体2が共振し、大きな振幅を発生させ、被計測流体に超音波が伝搬する。本開示においては、被計測流体が高温高湿の流体であることを想定しており音響整合体2は、天板8、底板9、側壁10によって密閉空間11を形成され、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12とを備え、この垂直隔壁12と、側壁10とで密閉空間11を分割するように、天板、底板とに密着して形成されている。側壁10は、耐湿性をより向上するため、0.3mm以上の厚みとすることが好ましく、結果として、音響整合体2をより重くすることになり、被計測流体への超音波の伝搬効率が低下することになる。
【0096】
そこで、
図12(b)に示すように、圧電体3の有天筒状金属ケース42への接合投影面(以降、圧電体接合投影面48と称す。)は、音響整合体2の側壁部接合投影面49に内包されるように形成することで、被計測流体への超音波伝搬効率を低減させることなく
、耐湿性をより向上することが可能となる。
【0097】
なお、本実施の形態における超音波送受波器21を用いた、超音波流量計、超音波流速計の動作、超音波濃度計の動作は実施の形態2,3と同様のため説明を省略する。
【0098】
[6-4.効果等]
以上のように、本実施の形態において、超音波送受波器21は、有天筒状金属ケース42と有天筒状金属ケース42天部内壁面42aに配置した圧電体3と、有天筒状金属ケース42の天部外壁面42bに配置し、実施の形態1で述べた音響整合体2、或いは、実施の形態4で述べた音響整合体20を備える構成としたものである。
【0099】
これにより、本開示の超音波送受波器21を、高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合、音響整合体が外周より腐食劣化し、音響整合体の外周部より密閉空間内部に水分が浸入しても、垂直隔壁或いは水平隔壁で密閉空間11が複数に区画されているため、すぐには計測性能が低下することが無い。そのため、高温高湿流体、或いは高温高湿環境で使用した場合でも、長期間、安定して動作する。さらに、有天筒状金属ケース42と端子板43とで密閉されているため、圧電体3の電極の腐食、接合体40の劣化が阻害されるため長期信頼性が確保される。
【0100】
また、本実施の形態において、圧電体接合投影面48は、音響整合体2、或いは、音響整合体20の側壁部接合投影面49に内包されるように形成するとしたものである。これにより、被計測流体への超音波伝搬効率を低減させることなく、耐湿性をより向上することが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態による超音波送受波器は、実施の形態2で説明した超音波流量計、超音波流速計、或いは、実施の形態3で説明した超音波濃度計の超音波送受波器として用いることができる。
【0102】
(実施の形態7)
以下、
図13Aを用いて、実施の形態7を説明する。
【0103】
[7-1.構成]
図13Aにおいて、超音波送受波器23は、圧電体3と圧電体3の一つの面に配置した有天筒状金属ケース42と、有天筒状金属ケース42の天部外壁面42bに配置した音響整合体22とを備え、音響整合体22は、天板8、側壁10と、有天筒状金属ケース42の天部外壁面42bとによって密閉空間11を形成され、密閉空間11内部に、音響整合体22の天板8、有天筒状金属ケース42の天面に対して概垂直に形成された垂直隔壁12とを備え、垂直隔壁12は、密閉空間11を分割するように、音響整合体22の天板8と有天筒状金属ケース42に密着して形成されている。
【0104】
これによって、実施の形態6の音響整合体2に比べて、底板9を排除する構成となっており、音響整合体2をより軽量化することが可能となり、より超音波伝搬効率を向上することができる。
【0105】
本実施の形態における、超音波送受波器23の製造手順は実施の形態6と同様のため省略する。また、本実施の形態の超音波送受波器23を搭載した超音波流量計、超音波流速計の動作、超音波濃度計の動作は実施の形態2,3と同様のため省略する。
【0106】
[7-2.効果等]
以上のように、本実施の形態において、超音波送受波器23は、圧電体3と圧電体3の
一つの面に配置した有天筒状金属ケース42と、有天筒状金属ケース42の天部外壁面42bに配置した音響整合体2とを備え、音響整合体2は、天板8、側壁10と、有天筒状金属ケース42の天部外壁面42bとによって密閉空間11を形成され、密閉空間11内部に、音響整合体22の天板8、有天筒状金属ケース42の天板8に対して概垂直に形成された垂直隔壁12とを備え、垂直隔壁12は、密閉空間11を分割するように、音響整合体22の天板8、有天筒状金属ケース42とに密着して形成したものである。
【0107】
これにより、実施の形態6に比べて、底板9を排除する構成となっており、音響整合体をより軽量化することが可能となり、より超音波伝搬効率を向上することができる。
【0108】
なお、本実施の形態では、音響整合体22を接合体41で有天筒状金属ケース42に接合しているが、接合体41を用いず、
図13Bに示す様に、有天筒状金属ケース42を音響整合体24の底板9と一体に構成した超音波送受波器25としても良い。
【0109】
図13Cは、この超音波送受波器25の製造手順を示しており、
図3を用いて説明した音響整合体2の底板9を有天筒状金属ケース42の形状に合わせた大きさで作成し(
図13C(a))、その後、プレス加工により、底板9を有天筒状金属ケース42の形状に成形している(
図13C(a’))。
図13C(b)は、圧電体3である。
図13C(c)から
図13C(e)は、
図11(c)から
図11(e)と同様であり、説明は省略する。
【0110】
【0111】
[8-1.構成]
本実施の形態において、実施の形態1と異なるのは音響整合体の内部構造のみであり、超音波送受波器としての構成は、実施の形態1,6,7と同様のため説明を省略する。
【0112】
次に、
図14Aを用いて音響整合体の内部構造を説明する。
【0113】
図14A(a)は、本実施の形態8における音響整合体26の断面図、
図14A(b)は、
図14A(a)の線分X断面図を示している。
【0114】
図14Aにおいて、本開示の音響整合体26は、天板8、底板9、側壁10によって密閉空間11が形成され、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12と、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概水平方向に形成された水平隔壁39とを備え、垂直隔壁12は、密閉空間11を分割するように、天板8、底板9とに密着して形成され、水平隔壁39は、密閉空間11を分割するように、側壁10と密着して形成されている。加えて、垂直隔壁12は、音響整合体の底面部29よりも天面部28が薄くなるように形成した構成となっている。
【0115】
本実施の形態における音響整合体の製造手順は、実施の形態4と同様のため省略する。また、本実施の形態における超音波送受波器の製造手順は、実施の形態4と同様のため省略する。また、本実施の形態における、超音波流量計、超音波流速計の動作、超音波濃度計の動作は実施の形態2,3と同様のため省略する。
【0116】
[8-2.効果等]
以上のように、本実施の形態において、音響整合体26は、天板8、底板9、側壁10によって密閉空間11が形成され、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概垂直方向に形成された垂直隔壁12と、密閉空間11内部に、天板8、底板9に対して概水平方向に形成された水平隔壁39とを備え、垂直隔壁12は、密閉空間11を分割するよう
に、天板8、底板9とに密着して形成され、水平隔壁39は、密閉空間11を分割するように、側壁10と密着して形成されている。加えて、垂直隔壁12は、音響整合体2の底面部29よりも天面部28の隔壁が薄くなるように形成した構成としたものである。
【0117】
これにより、本開示の基礎となった知見等で述べたとおり、被計測流体に超音波を効率よく伝搬させるには、音響整合体2の音響インピーダンス(密度×音速)を音波伝搬方向に向かって連続的に小さくするのが最も効率がよい。本実施の形態5においては、金属板を自由にパターニングし、積層する製造方法を選択することで、垂直方向に向かって形成された垂直隔壁12の厚みをコントロールすることが可能となり、狙った音響インピーダンスを、理論値により近づけることが可能となるため、結果として、超音波伝搬効率を向上することができる。これにより、被計測流体への超音波の伝搬効率を下げることなく、高温高湿の腐食環境に対する耐性を向上することができる。
【0118】
また、
図14Bに示す様に水平隔壁39を削除し、垂直隔壁12のみとした音響整合体としても同様の効果を得ることができる。
【0119】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本開示は、気体の流量、流速及び濃度を計測する超音波流量計、流速計、濃度計に適用可能である。具体的には、家庭用流量計、医療用麻酔ガス濃度計、燃料電池用水素濃度計などに本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1、16、17、21、23、25、32、33 超音波送受波器
2、20、22、24、26 音響整合体
3 圧電体
8 天板
9 底板
10 側壁
11 密閉空間
12 垂直隔壁
13、14a、14b 金属板
15 流路
18 計時装置
19 演算手段
39 水平隔壁
30 筐体
31 通気孔
34 温度センサ
35 計時装置
36 演算手段
42 有天筒状金属ケース
48 圧電体接合投影面(圧電体の接合投影面)
49 側壁部接合投影面(側壁部の接合投影面)