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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】管理装置、及び電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241018BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241018BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241018BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20241018BHJP
   B60L 58/12 20190101ALN20241018BHJP
   B60L 58/16 20190101ALN20241018BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 302C
H02J7/00 B
H02J7/04 L
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021532747
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024754
(87)【国際公開番号】W WO2021010113
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019132527
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】石井 洋平
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049571(WO,A1)
【文献】特開2004-215459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 58/12
B60L 58/16
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、
前記並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部と、
前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、前記並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または前記並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流偏差の導出時の条件に応じて係数α(0≦α≦1)を算出し前記上限値に前記係数αを掛けた値を、調整後の上限値とすることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記導出した電流偏差の信頼度が低いほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記並列システム全体に流れる電流の計測値の絶対値が設定値より大きいとき、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の計測値から導出し、
前記並列システム全体に流れる電流の計測値の絶対値が前記設定値以下の場合、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群の内部状態からの予測に基づき導出し、
前記制御部は、前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の計測値から導出する場合より、前記複数の直列セル群の内部状態からの予測に基づき導出する場合の前記係数αを低く設定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、
前記並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部と、
前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、前記並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または前記並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流偏差の導出時の条件に応じて、前記上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、前記上限値を調整し、
前記制御部は、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の計測値から導出し、
前記制御部は、計測される電流の変化値が大きいほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の計測値から導出し、
前記制御部は、計測される電流の絶対値が小さいほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、
前記並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部と、
前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、前記並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または前記並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流偏差の導出時の条件に応じて、前記上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、前記上限値を調整し、
前記制御部は、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群の内部状態からの予測に基づき導出し、
前記制御部は、前記複数の直列セル群のSOC(State Of Charge)が所定の範囲を逸脱しているとき、前記係数αを低く設定することを特徴とする管理装置。
【請求項7】
複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、
前記並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部と、
前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、前記並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または前記並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流偏差の導出時の条件に応じて、前記上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、前記上限値を調整し、
前記制御部は、前記複数の直列セル群のSOH(State Of Health)が低いほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする管理装置。
【請求項8】
複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、
前記並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部と、
前記複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、前記並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または前記並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流偏差の導出時の条件に応じて、前記上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、前記上限値を調整し、
前記制御部は、前記複数の直列セル群の温度が低いほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする管理装置。
【請求項9】
複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムと、
前記並列システムを管理する請求項1から8のいずれか1項に記載の管理装置と、
を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項10】
前記電源システムは、電動車両に搭載され、
前記管理装置は、前記上限値を前記電動車両内の車両制御部に通知することを特徴とする請求項9に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置、及び電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの電動車両にはキーデバイスとして、二次電池が搭載される。
【0003】
電池の容量を増加させるために、複数の電池モジュールを並列接続した並列システムが構築されることがある。各電池モジュールは、直列接続された複数のセルを含む。並列接続された電池モジュール間において、各電池モジュールに含まれるセルの種類・数が同じであっても、セルの電圧差、容量差、温度差などにより、セルの内部抵抗が異なることがある。この場合、電池モジュール間に抵抗差が発生し、電池モジュール間に電流ばらつきが発生する。電池モジュール間に電流ばらつきが発生すると、特定の電池モジュールに電流が集中し、当該電池モジュールの最大許容電流を超過する可能性がある。
【0004】
これに対して、並列接続された電池システムにて、充放電開始前は内部抵抗を用い、充放電開始後は電流の計測値を用いて電流偏差を算出し、各電池モジュールの上限電流を超過しないように電池システム全体の上限電力を設定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、並列接続された二次電池にて、二次電池間の抵抗ばらつきやOCV(Open Circuit Voltage)差を考慮して、並列接続された二次電池に分散して流れる電流のうちの最大電流を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/049571号
【文献】特開2018-129190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内部抵抗やOCVを用いて電池の内部状態を常時、高精度に推定することは難しい。また電流の計測値を用いる場合においても、並列接続されたシステム全体に流れる電流が小さい場合、電流センサの計測誤差の影響が大きくなる。また、電流の変動が激しい場合、計測系の応答時間の遅延の影響を受ける。特に車載用途では、電流が短時間に大きく変動することがある。
【0007】
並列間の電流偏差の予測に誤差が含まれる場合、並列システム全体の上限値の範囲内で充放電していても、並列システムを構成する特定の直列モジュールに最大許容電流を超過する電流が流れる可能性がある。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、並列システムを構成する各直列モジュールに最大許容電流を超過する電流が流れることを防止しつつ、並列システム全体の電流または電力の上限値をできるだけ高く維持することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の管理装置は、複数の直列セル群が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部と、複数の直列セル群にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部と、を備える。制御部は、電流偏差の導出時の条件に応じて、上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、上限値を調整する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、並列システムを構成する各直列モジュールに最大許容電流を超過する電流が流れることを防止しつつ、並列システム全体の電流または電力の上限値をできるだけ高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る電源システムを搭載した電動車両を説明するための図である。
図2】上限電流値の設定処理の流れを示すフローチャートである。
図3】電流偏差をセルの内部状態から推定する場合において、係数αの算出に使用するテーブルの一例を示す図である。
図4】電流偏差を電流計測値から導出する場合において、係数αの算出に使用するテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係る電源システム10を搭載した電動車両1を説明するための図である。電動車両1は、外部に設置された充電器3から充電が可能なEVを想定する。
【0014】
電源システム10は、第1リレーRY1及びインバータ40を介してモータ50に接続される。インバータ40は力行時、電源システム10から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ50に供給する。回生時、モータ50から供給される交流電力を直流電力に変換して電源システム10に供給する。モータ50は三相交流モータであり、力行時、インバータ40から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ40に供給する。
【0015】
車両ECU30は電動車両1全体を制御する。車両ECU30は例えば、統合型のVCM(Vehicle Control Module)で構成されていてもよい。第1リレーRY1は、電源システム10とインバータ40を繋ぐ配線間に挿入されるコンタクタである。車両ECU(Electronic Control Unit)30は、走行時、第1リレーRY1をオン状態(閉状態)に制御し、電源システム10と電動車両1の動力系を電気的に接続する。車両ECU30は非走行時、原則として第1リレーRY1をオフ状態(開状態)に制御し、電源システム10と電動車両1の動力系を電気的に遮断する。なおリレーの代わりに、半導体スイッチなどの他の種類のスイッチを用いてもよい。
【0016】
電源システム10は、電動車両1の外に設置された充電器3と充電ケーブル4で接続することにより商用電力系統2から充電することができる。充電器3は、家庭、カーディーラ、サービスエリア、商業施設、公共施設などに設置される。充電器3は商用電力系統2に接続され、充電ケーブル4を介して電動車両1内の電源システム10を充電する。電動車両1において、電源システム10と充電器3を繋ぐ配線間に第2リレーRY2が挿入される。なおリレーの代わりに、半導体スイッチなどの他の種類のスイッチを用いてもよい。車両ECU30は充電開始前に、第2リレーRY2をオン状態(閉状態)に制御し、充電終了後にオフ状態(開状態)に制御する。
【0017】
一般的に、普通充電の場合は交流で、急速充電の場合は直流で充電される。交流で充電される場合、第2リレーRY2と電源システム10との間に挿入されるAC/DCコンバータ(不図示)により、交流電力が直流電力に変換される。
【0018】
電源システム10は、並列接続された複数の直列モジュールM1-M3と、複数の直列モジュールM1-M3を管理する管理装置を備える。管理装置は、複数の直列モジュールM1-M3を管理する制御系の構成要素の総称であり、本実施の形態では、電圧計測部13a-13c、温度計測部14a-14c、電流計測部15a-15c及び制御部16を含む。
【0019】
各直列モジュールM1、M2、M3は、直列接続された複数のE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nを含む。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
【0020】
各直列モジュールのセルの直列数は、モータ50の駆動電圧に応じて決定される。例えば、400V以上の高圧の電源システム10が構築される場合もあれば、60V未満の低圧の電源システム10が構築される場合もある。また直列モジュールの並列数は、電動車両1の必要容量に応じて決定される。図1では3つの直列モジュールM1、M2、M3が並列接続される例を示しているが、3並列に限るものではない。航続距離を伸ばすために、より多くの直列モジュールが並列接続されてもよい。
【0021】
管理装置を構成する電圧計測部13a-13c、温度計測部14a-14c、電流計測部15a-15c及び制御部16は、1つの制御基板に実装されてもよいし、複数の制御基板に実装されてもよい。例えば、直列モジュールごとに制御基板が設けられ、それぞれの制御基板に電圧計測部13、温度計測部14及び電流計測部15がそれぞれ設けられてもよい。制御部16は、それらの制御基板と別の制御基板に実装されてもよいし、それらの制御基板のいずれか1つに実装されてもよい。なお、各直列モジュールの制御基板にそれぞれ制御部が実装されていてもよい。例えば、直列モジュールと制御基板が着脱可能な可搬式の電池パック内に収納されている場合、各電池パックの制御基板には制御部が実装される。この場合には、並列接続された電池パック全体を制御する制御部が実装され、各電池パックからの情報を集めて全体の制御を行う。
【0022】
第1直列モジュールM1を構成する複数のセルE11-E1nと直列にシャント抵抗Rs1が接続される。シャント抵抗Rs1は電流検出素子として機能する。なおシャント抵抗Rs1の代わりにホール素子を用いてもよい。また複数のセルE11-E1nの温度を検出するための複数の温度センサT11、T12が設置される。温度センサは第1直列モジュールM1に1つ設置されてもよいし、複数設置されてもよい。温度センサT11、T12には例えば、サーミスタを使用することができる。
【0023】
直列接続された複数のセルE11-E1nの各ノードと、電圧計測部13aとの間は複数の電圧線で接続される。電圧計測部13aは、隣接する2本の電圧線間の電圧をそれぞれ計測することにより、各セルE11-E1nの電圧を計測する。電圧計測部13aは、計測した各セルE11-E1nの電圧を、通信線を介して制御部16に送信する。
【0024】
電圧計測部13aは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)または汎用のアナログフロントエンドICで構成することができる。電圧計測部13aはマルチプレクサ、A/D変換器、及び通信回路を含む。マルチプレクサは、隣接する2本の電圧線間の電圧を上から順番にA/D変換器に出力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。通信回路は、変換されたデジタル値を、通信線を介して制御部16に送信する。
【0025】
温度計測部14aは分圧抵抗、A/D変換器、及び通信回路を含む。A/D変換器は、複数の温度センサT1、T2と複数の分圧抵抗によりそれぞれ分圧された複数のアナログ電圧を順次、デジタル値に変換する。通信回路は、変換されたデジタル値を、通信線を介して制御部16に送信する。制御部16は当該デジタル値をもとに複数のセルE11-E1nの温度を推定する。例えば制御部16は、各セルE11-E1nの温度を、各セルE11-E1nに最も隣接する温度センサT11、T12で計測された値をもとに推定する。
【0026】
電流計測部15は差動アンプ、A/D変換器、及び通信回路を含む。差動アンプはシャント抵抗Rs1の両端電圧を増幅してA/D変換器に出力する。A/D変換器は、差動アンプから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。通信回路は、変換されたデジタル値を、通信線を介して制御部16に送信する。制御部16は当該デジタル値をもとに第1直列モジュールM1に流れる電流を推定する。
【0027】
第2直列モジュールM2のセルE21-E2nの電圧、温度、及び電流、並びに第3直列モジュールM3のセルE31-E3nの電圧、温度、及び電流も、第1直列モジュールM1のセルE11-E1nの電圧、温度、及び電流と同様に計測され、制御部16に送信される。
【0028】
制御部16はマイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ)により構成することができる。制御部16と車両ECU30間は、車載ネットワークにより接続される。車載ネットワークとして例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)を使用することができる。
【0029】
制御部16は、電圧計測部13a-13c、温度計測部14a-14c及び電流計測部15a-15cにより計測された複数のセルE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nの電圧、温度、及び電流をもとに、複数のセルE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nの状態を管理する。
【0030】
制御部16は、複数のE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nのそれぞれのSOC(State Of Charge)及びSOH(State Of Health)を推定する。制御部16は、OCV(Open Circuit Voltage)法と電流積算法を組み合わせて、SOCを推定する。OCV法は、電圧計測部13a-13cにより計測される各セルE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nのOCVと、SOC-OCVカーブをもとにSOCを推定する方法である。電流積算法は、各セルE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nの充放電開始時のOCVと、電流計測部15a-15cにより計測される電流の積算値をもとにSOCを推定する方法である。電流積算法は、充放電時間が長くなるにつれて、電流計測部15a-15cの計測誤差が累積していく。従って、OCV法により推定されたSOCを用いて、電流積算法により推定されたSOCを補正する必要がある。
【0031】
SOHは、初期のFCC(Full Charge Capacity)に対する現在のFCCの比率で規定され、数値が低いほど(0%に近いほど)劣化が進行していることを示す。SOHは、完全充放電による容量計測により求めてもよいし、保存劣化とサイクル劣化を合算することにより求めてもよい。保存劣化はSOC、温度、及び保存劣化速度をもとに推定することができる。サイクル劣化は、使用するSOC範囲、温度、電流レート、及びサイクル劣化速度をもとに推定することができる。保存劣化速度およびサイクル劣化速度は、予め実験やシミュレーションにより導出することができる。SOC、温度、SOC範囲、及び電流レートは計測により求めることができる。
【0032】
またSOHは、セルの内部抵抗との相関関係をもとに推定することもできる。セルの内部抵抗は、セルに所定の電流を所定時間流した際に発生する電圧降下を、当該電流値で割ることにより算出することができる。またセルの内部抵抗は、予め実験やシミュレーションにより得られた当該セルの内部抵抗と、SOC、温度、SOHの組み合わせとの関係が記述されたマップを参照して推定することもできる。セルの内部抵抗は基本的に、温度が上がるほど低下し、SOHが低下するほど増加する関係にある。
【0033】
制御部16は、複数の直列モジュールM1-M3で構成される並列システム全体に流れる電流を計測する。各直列モジュールM1-M3に流れる電流の計測値を合算して求めてよいし、放電電流の合流後(充電電流の分岐前)の電流経路に電流センサを設けて、当該電流センサにより計測される値を使用してもよい。
【0034】
制御部16は、複数の直列モジュールM1-M3にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、並列システム全体の充電電流及び放電電流の上限値を算出する。なお、充電電流及び放電電流の上限値の代わりに、充電電力及び放電電力の上限値を算出してもよい。制御部16は、当該電流偏差を、複数の直列モジュールM1-M3の内部状態からの予測に基づき、または、複数の直列モジュールM1-M3に流れる電流の計測値から導出する。以下、具体的に説明する。
【0035】
制御部16は、直列モジュールの放電用SOP(State Of Power)および充電用SOPを決定する。直列モジュールの放電用SOPは、直列モジュールから放電可能な最大電力を示し、直列モジュールの充電用SOPは、直列モジュールに対して充電可能な最大電力を示す。放電用SOPは、直列モジュールが下限電圧に到達するとゼロになり、充電用SOPは、直列モジュールが上限電圧に到達するとゼロになる。
【0036】
SOPは、予め実験やシミュレーションにより得られたSOCとSOPの関係が記述されたテーブルを参照して推定することができる。SOPは、SOHの低下に従い減少する。従って、テーブル参照により特定した初期のSOPに現在のSOHを掛けることにより現在のSOPを推定することができる。
【0037】
直列モジュールのSOPは、簡易的に直列モジュールM1の最大定格電力と等しいものと扱ってもよい。その場合、直列モジュール単体において放電終止時(SOC=0%)の直列モジュールの放電用SOPを0に設定し、例えばSOC=2%となった時点で、放電用SOPを直列モジュールの最大定格電力と等しい値に復帰させる。また、満充電時(SOC=100%)の直列モジュールの充電用SOPを0に設定し、例えばSOC=98%となった時点で、直列モジュールの充電用SOPを直列モジュールの最大定格電力と等しい値に復帰させる。また、充電方式が疑似CC/CVの場合、充電用SOPを直列モジュールの最大定格電力から小さい値に絞っていく場合もある。
【0038】
制御部16は、並列接続された複数の直列モジュールM1-M3全体の放電用SOP(以下、放電用システムSOPという)、及び複数の直列モジュールM1-M3全体の充電用SOP(以下、充電用システムSOPという)を算出する。複数の直列モジュールM1-M3間のSOPと電流値が理想的に同じであれば、システムSOPはモジュールSOPに並列接続数(図1の例では3)を掛けた値になる。これに対して、複数の直列モジュールM1-M3間の電流偏差が大きくなるほど、システムSOPは低下する。
【0039】
そのため、システムSOPは下記(式1)-(式4)により算出することができる。
放電用システムSOP=min(放電用システムSOPn) ・・・(式1)
放電用システムSOPn=放電用モジュールSOPn×I/In ・・・(式2)
充電用システムSOP=min(充電用システムSOPn) ・・・(式3)
充電用システムSOPn=充電用モジュールSOPn×I/In ・・・(式4)
Inは、第n直列モジュールに流れる電流、
Iは、並列接続された複数の直列モジュールに流れる電流の合計(システム電流)。
【0040】
放電用システムSOP及び充電用システムSOPを算出するには、各直列モジュールM1-M3に流れる電流の値が必要である。電源システム10が充放電していない状態では、各直列モジュールM1-M3に流れる電流の値を計測することができない。その場合、各直列モジュールM1-M3の内部状態から電流偏差を予測する必要がある。
【0041】
制御部16は、直列モジュールごとに、直列モジュールに含まれる複数のセルの内部抵抗を合成して直列モジュールの内部抵抗を推定し、直列モジュールに含まれる複数のセルのOCVを合成して直列モジュールのOCVを推定する。制御部16は、各直列モジュールM1-M3の内部抵抗およびOCVから各直列モジュールに流れる電流を予測する。
【0042】
各直列モジュールに流れると予測される電流は、下記(式5)-(式7)に記載の連立方程式を解くことにより算出することができる。下記(式5)-(式7)では、並列接続される直列モジュールの数をm個としている。電流が流れていないときは、各直列モジュールのOCV1、OCV2、OCV3、・・・、OCVmと、各直列モジュールの内部抵抗R1、R2、R3、・・・、Rmが既知であり、各直列モジュールの電圧V1、V2、V3、・・・、Vmと、各直列モジュールに流れる電流I1、I2、I3、・・・、Imが未知である。
【0043】
V1=OCV1+I1×R1、V2=OCV2+I2×R2、V3=OCV3+I3×R3、・・・、Vm=OCVm+Im×Rm ・・・(式5)
V1=V2=V3・・・=Vm ・・・(式6)
I=I1+I2+I3・・・+Im ・・・(式7)
【0044】
上記(式5)-(式7)に記載の連立方程式を解くことにより、各直列モジュールに流れると予測される電流I1、I2、I3、・・・、Imを算出することができる。下記(式8)、(式9)では、電流I1、Imの算出式を示しているが、電流I2、I3、・・・、I(m-1)も同様に算出可能である。
【0045】
I1=(I-((OCV1-OCV2)/R2)-((OCV1-OCV3)/R3)-・・・-((OCV1-OCVm)/Rm))/(1+R1/R2+R1/R3+・・・+R1/Rm) ・・・(式8)
Im=I1*R1/Rm+((OCV1-OCVm)/Rm) ・・・(式9)
【0046】
制御部16は、算出した放電用システムSOP及び充電用システムSOPを、並列システム全体の放電電力及び充電電力の上限値に設定する。なお制御部16は、算出した放電用システムSOP及び充電用システムSOPを、並列システム全体の端子間電圧で割って、並列システム全体の放電電流及び充電電流の上限値を導出してもよい。並列システム全体の端子間電圧は、直列接続された複数のセルの電圧を加算して求めてもよいし、並列システムの両端に電圧センサを接続して、当該電圧センサにより計測される値を使用してもよい。
【0047】
制御部16は、当該電流偏差の導出時の条件に応じて、当該上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、当該上限値を調整する。その際、制御部16は、当該電流偏差の信頼度が低いほど、係数αを低く設定する。
【0048】
図2は、上限電流値の設定処理の流れを示すフローチャートである。制御部16は、並列システム全体に流れる電流を計測する(S10)。なお、充放電中でない場合は、計測値は0である。制御部16は、並列システムの全体電流の計測値の絶対値と、所定の設定値を比較する(S11)。所定の設定値は0Aに設定されてもよいし、低電流の値(例えば、0.5A)に設定されてもよい。上述したように全体電流が低い場合、電流センサの計測誤差の影響が大きくなり、導出する電流偏差の信頼度が低くなる。
【0049】
全体電流の計測値の絶対値が設定値以下のとき(S11のN)、制御部16は、複数の直列モジュールM1-M3の電流偏差を、複数の直列モジュールM1-M3内のセルE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nの内部状態からの予測に基づき導出する(S12a)。制御部16は、複数の直列モジュールM1-M3内のセルE11-E1n、E21-E2n、E31-E3nの内部状態から、係数αを算出する(S13a)。
【0050】
全体電流の計測値の絶対値が設定値を超えるとき(S11のY)、制御部16は、複数の直列モジュールM1-M3の電流偏差を、複数の直列モジュールM1-M3の電流計測値に基づき導出する(S12b)。制御部16は、複数の直列モジュールM1-M3の電流計測値に基づき、係数αを算出する(S13b)。電流計測値には、直近の瞬時値を使用してもよいし、直近所定時間の平均値を使用してもよい。なお、並列システム全体の電流計測値には、複数の直列モジュールM1-M3の直近所定時間の重み付け和を使用してもよい。
【0051】
図3は、電流偏差をセルの内部状態から推定する場合において、係数αの算出に使用するテーブルの一例を示す図である。図4は、電流偏差を電流計測値から導出する場合において、係数αの算出に使用するテーブルの一例を示す図である。図3図4に示すテーブルでは、セルの内部状態から推定する場合(予測手法が内部状態推定)の電流偏差の信頼度は0.95になり、電流計測値から導出する場合(予測手法が電流計測値)の電流偏差の信頼度は1.00になる。即ち、電流偏差の信頼度は、電流計測値から導出する場合より、セルの内部状態から推定する場合の方が低くなる。
【0052】
どちらの予測手法でも、SOHが低いほど電流偏差の信頼度が低くなる。制御部16は例えば、並列システムのSOHを、全セルのSOHの平均値または最低値に決定してもよい。また、直列モジュールごとのSOHを決定し、全直列モジュールのSOHの平均値または最低値に決定してもよい。図3図4に示す例では、SOHが90%を超える範囲では信頼度が1.00になり、80-90%の範囲では0.95になり、80%未満の範囲では0.90になる。
【0053】
どちらの予測手法でも、最低温度が低いほど電流偏差の信頼度が低くなる。制御部16は例えば、並列システムの最低温度を、全セルの温度の内、最低の温度に決定してもよい。また、直列モジュールごとの平均温度を決定して、全直列モジュールの平均温度の内、最低の温度に決定してもよい。図3図4に示す例では、最低温度が5℃を超える範囲では信頼度が1.00になり、0-5℃の範囲では0.90になり、0℃未満の範囲では0.80になる。
【0054】
電流偏差をセルの内部状態から推定する場合、SOCが所定の範囲を逸脱しているとき、電流偏差の信頼度が低くなる。制御部16は例えば、並列システムのSOCを、並列システム全体の満充電容量と、各セルのSOCをもとに決定する。図3に示す例では、SOCが95%を超える範囲および10%未満の範囲では信頼度が0.95になり、10-95%の範囲では1.00になる。
【0055】
電流偏差を電流計測値から導出する場合、電流計測値の絶対値が低いほど電流偏差の信頼度が低くなる。図4に示す例では、並列システム全体に流れる電流の計測値が50Aを超える範囲では信頼度が1.00になり、5-50Aの範囲では0.95になり、5A未満の範囲では0.90になる。
【0056】
電流偏差を電流計測値から導出する場合、電流計測値の変化が大きいほど電流偏差の信頼度が低くなる。図4に示す例では、電流計測値の変化が0.8を超える範囲では信頼度が1.00になり、0.5-0.8の範囲では0.90になり、0.5未満の範囲では0.80になる。当該電流変化を示す指標は、過去2秒の電流計測値の最小値/最大値で算出している。従って、この指標では過去2秒の電流変化が小さいほど1.0に近づき、大きいほど0.0に近づく。
【0057】
以下、電流偏差をセルの内部状態から推定する場合の係数αの算出例を示す。並列システムの電流計測値が0A(予測手法が内部状態推定)、SOHが93%、最低温度が3℃、SOCが50%の場合、図3を参照すると各信頼度が0.95、0.95、0.90、1.00になる。係数αを各信頼度の最低値とした場合、係数αは0.90となる。係数αを各信頼度の乗算値とした場合、係数αは0.81となる。係数αを各信頼度の平均値とした場合、係数αは0.95となる。なお係数αを、各信頼度の重み付け平均値としてもよい。
【0058】
次に、電流偏差を電流計測値から導出する場合の係数αの算出例を示す。並列システムの電流計測値が80A、電流変化が0.78、SOHが93%、最低温度が28℃の場合、図4を参照すると各信頼度が1.00、0.90、0.95、1.00になる。係数αを各信頼度の最低値とした場合、係数αは0.90となる。係数αを各信頼度の乗算値とした場合、係数αは0.86となる。係数αを各信頼度の平均値とした場合、係数αは0.96となる。なお、係数αを各信頼度の重み付け平均値としてもよい。なお、信頼度の最低値と乗算値を比較し、大きいほうを選択する実装でもよい。
【0059】
図3図4に示したパラメータは一例であり、用途やシステム系によって適宜変更することができる。例えば、直列モジュール間の温度差をパラメータとして使用してもよい。直列モジュール間の温度差が大きいほど電流偏差の信頼度を低く設定する。
【0060】
また図3図4では、テーブルに予め定義された条件によって信頼度を設定したが、重回帰分析により生成された信頼度導出関数(モデル)に基づき信頼度を設定してもよい。この信頼度導出関数(モデル)は、実際に計測された電流偏差を教師データとして、機械学習により更新されていってもよい。
【0061】
図2に戻る。制御部16は、導出した電流偏差をもとに、並列システム全体の上限電流値を算出する(S14)。制御部16は算出した上限電流値に、算出した係数αを掛けて、上限電流値を調整する(S15)。電流偏差の信頼度が高い場合は上限電流値の低下が小さくなり、信頼度が低いほど上限電流値の低下が大きくなる。
【0062】
制御部16は、調整後の上限電流値を、車載ネットワーク20を介して車両ECU30に通知する(S16)。車両ECU30は、制御部16から受信した上限電流値をインバータ40に設定する。なおインバータ40と第1リレーRY1との間にDC/DCコンバータが設置され、当該DC/DCコンバータにより電流が制御されている場合は、車両ECU30は受信した上限電流値を当該DC/DCコンバータに設定する。インバータ40又は当該DC/DCコンバータは、設定された上限電流値の範囲内で電流を制御する。
【0063】
以上に説明したステップS10-ステップS16の処理は、電源システム10の稼働中(S17のN)、繰り返し実行される。
【0064】
以上説明したように本実施の形態によれば、電流偏差の導出時の信頼度が低いほど、並列システム全体の上限電流値を抑制する。これにより、各直列モジュールに最大許容電流を超過する電流が流れることを防止しつつ、並列システム全体の上限電流値をできるだけ高く維持することができる。従って、利便性と電池保護を両立することができる。電流が急変しやすい車載用途においても、電流変化が大きいほど上限電流値が抑制される仕組みになっているため、1つの直列モジュールに最大許容電流を超過する電流が流れることを防止することができる。
【0065】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0066】
上述の実施の形態では、電源システム10を電動車両1に搭載して使用する例を説明した。この点、電源システム10は車載用途以外の用途にも適用できる。例えば、定置型蓄電システムにも適用可能である。この場合、パワーコンディショナが上限電流値の範囲内で並列システムを運転する。また、サーバ、PC、スマートフォン等の情報機器の電源にも適用可能である。
【0067】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0068】
[項目1]
複数の直列セル群(M1-M3)が並列接続された蓄電用の並列システムを管理する管理装置であって、
前記並列システム内のセルの電圧、電流、温度を計測する計測部(13-15)と、
前記複数の直列セル群(M1-M3)にそれぞれ流れる電流の偏差を導出し、導出した電流偏差をもとに、前記並列システム全体の充電電流もしくは充電電力の上限値、または前記並列システム全体の放電電流もしくは放電電力の上限値を算出する制御部(16)と、を備え、
前記制御部(16)は、前記電流偏差の導出時の条件に応じて、前記上限値に係数α(0≦α≦1)を掛けて、前記上限値を調整することを特徴とする管理装置。
これによれば、並列システム全体の上限値を、電流偏差の導出時の条件に応じて、適切に設定することができる。
[項目2]
前記制御部(16)は、前記導出した電流偏差の信頼度が低いほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1に記載の管理装置。
これによれば、電流偏差の信頼度が低いほど上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目3]
前記制御部(16)は、
前記並列システム全体に流れる電流の計測値の絶対値が設定値より大きいとき、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群(M1-M3)にそれぞれ流れる電流の計測値から導出し、
前記並列システム全体に流れる電流の計測値の絶対値が前記設定値以下の場合、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群(M1-M3)の内部状態からの予測に基づき導出し、
前記制御部(16)は、前記複数の直列セル群(M1-M3)にそれぞれ流れる電流の計測値から導出する場合より、前記複数の直列セル群(M1-M3)の内部状態からの予測に基づき導出する場合の前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1に記載の管理装置。
これによれば、電流偏差を内部状態からの予測に基づき導出している場合は、上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目4]
前記制御部(16)は、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群(M1-M3)にそれぞれ流れる電流の計測値から導出し、
前記制御部(16)は、計測される電流の変化値が大きいほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
これによれば、電流の変化値が大きいほど上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目5]
前記制御部(16)は、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群(M1-M3)にそれぞれ流れる電流の計測値から導出し、
前記制御部(16)は、計測される電流の絶対値が小さいほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1から4のいずれか1項に記載の管理装置。
これによれば、電流計測値の絶対値が大きいほど上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目6]
前記制御部(16)は、前記電流偏差を、前記複数の直列セル群(M1-M3)の内部状態からの予測に基づき導出し、
前記制御部(16)は、前記複数の直列セル群(M1-M3)のSOCが所定の範囲を逸脱しているとき、前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
これによれば、SOC範囲が所定の範囲を逸脱している場合は、上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目7]
前記制御部(16)は、前記複数の直列セル群(M1-M3)のSOHが低いほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1から6のいずれか1項に記載の管理装置。
これによれば、SOHが低いほど上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目8]
前記制御部(16)は、前記複数の直列セル群(M1-M3)の温度が低いほど、前記係数αを低く設定することを特徴とする項目1から7のいずれか1項に記載の管理装置。
これによれば、温度が低いほど上限値を抑制し、並列システムを構成する直列セル群を保護することができる。
[項目9]
複数の直列セル群(M1-M3)が並列接続された蓄電用の並列システムと、
前記並列システムを管理する項目1から8のいずれか1項に記載の管理装置と、
を備えることを特徴とする電源システム(10)。
これによれば、並列システム全体の上限値が、電流偏差の導出時の条件に応じて、適切に設定された電源システム(10)を構築することができる。
[項目10]
前記電源システム(10)は、電動車両(1)に搭載され、
前記管理装置は、前記上限値を前記電動車両内の車両制御部(16)に通知することを特徴とする項目9に記載の電源システム(10)。
これによれば、並列システム全体の上限値が、電流偏差の導出時の条件に応じて、適切に設定された車載用の電源システム(10)を構築することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 電動車両、 2 商用電力系統、 3 充電器、 4 充電ケーブル、 10 電源システム、 M1-M3 直列モジュール、 12 管理部、 13a,13b,13c 電圧計測部、 14a,14b,14c 温度計測部、 15a,15b,15c 電流測定部、 16 制御部、 E11-E1n,E21-E2n,E31-E3n セル、 Rs1-Rs3 シャント抵抗、 T11,T12,T21,T22,T31,T32 温度センサ、 30 車両ECU、 40 インバータ、 50 モータ、 RY1 第1リレー、 RY2 第2リレー。
図1
図2
図3
図4