(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機および吸収式冷凍機の制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 15/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F25B15/00 306N
(21)【出願番号】P 2023000563
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2018082785の分割
【原出願日】2018-04-24
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石崎 修司
(72)【発明者】
【氏名】邊 美廷
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-065258(JP,A)
【文献】特開2000-074521(JP,A)
【文献】特開平02-082063(JP,A)
【文献】特開2015-121336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機であって、
制御装置を備え、
前記制御装置は、COPを算出し、算出されたCOPが想定COPの許容範囲より低い場合に、稀吸収液ポンプのインバータ周波数を
所定値低下させ
、更に、前記稀吸収液ポンプのインバータ周波数を前記所定値低下させても算出されたCOPが想定COPの許容範囲にならない場合に、COPが低下したことを発報することを特徴とする吸収式冷凍機。
【請求項2】
前記制御装置は、ガス流量および冷凍能力に基づいてCOPを算出することを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷凍機。
【請求項3】
高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機の制御方法であって、
COPを算出する工程と、
算出されたCOPが想定COPの許容範囲より低い場合に、稀吸収液ポンプのインバータ周波数を所定値低下させる工程と、
前記稀吸収液ポンプのインバータ周波数を前記所定値低下させても算出されたCOPが想定COPの許容範囲にならない場合に、COPが低下したことを発報する工程とを有することを特徴とする吸収式冷凍機の制御方法。
【請求項4】
ガス流量及び冷凍能力に基づいてCOPが算出されることを特徴とする請求項3に記載の吸収式冷凍機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍機に係り、特に、IPLVを許容誤差の範囲内に保持した状態で運転することを可能とした吸収式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成した吸収式冷凍機が知られている。吸収式冷凍機は、例えば、オフィスビルのセントラル空調などに用いられている。
このような吸収式冷凍機として、従来、例えば、高温再生器と低温再生器とを連通する吸収溶液ライン又は低温再生器と吸収器とを連通する吸収溶液ラインに圧力調整手段及び中間再生器を介装し、該中間再生器は外部温熱源から供給される流体と吸収溶液ラインを流れる吸収溶液との間で顕熱・潜熱交換を行い、冷温水出口温度及び高温再生器の温度を測定する温度測定手段と、冷温水出口温度及び高温再生器の温度に基づいて高質燃料燃焼用バーナへの高質燃料供給量を調節する燃料供給量制御機構、とを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合に、COPを許容範囲内に調整することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機において、制御装置を備え、前記制御装置は、複数の冷房負荷の近傍で、安定条件である冷水設定温度と冷水出口温度との差が所定範囲内にあるか、および冷却水出口温度が所定範囲内にあるかをそれぞれ判断し、安定条件が所定時間継続し、かつ、所定条件を満たした場合、稀吸収液ポンプのインバータ周波数を低下させるように制御する補正処理を行うことを特徴とする。
【0007】
これによれば、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合に、COPを許容範囲内に調整することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合に、COPを許容範囲内に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る吸収式冷凍機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、高温再生器、低温再生器、蒸発器、凝縮器および吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液および冷媒の循環経路をそれぞれ形成してなる吸収式冷凍機において、制御装置を備え、前記制御装置は、複数の冷房負荷の近傍で、安定条件である冷水設定温度と冷水出口温度との差が所定範囲内にあるか、および冷却水出口温度が所定範囲内にあるかをそれぞれ判断し、安定条件が所定時間継続し、かつ、所定条件を満たした場合、稀吸収液ポンプのインバータ周波数を低下させるように制御する補正処理を行う。
これによれば、制御装置により所定条件に応じて補正処理を行うことにより、IPLVを許容誤差の範囲内に保持した状態で運転することができる。
【0011】
第2の発明は、前記所定条件は、あらかじめ設定される設定濃液濃度が所定値以上低い場合である。
これによれば、制御装置により濃液濃度に応じて補正処理を行うことにより、IPLVを許容誤差の範囲内に保持した状態で運転することができる。
【0012】
第3の発明は、前記所定条件は、高温再生器温度があらかじめ設定される設定高温再生器温度より所定温度以上低い場合である。
これによれば、制御装置により高温再生器の温度に応じて補正処理を行うことにより、IPLVを許容誤差の範囲内に保持した状態で運転することができる。
【0013】
第4の発明は、前記制御装置は、前記高温再生器の温度が所定温度以上、あるいは、濃液濃度が所定値以上になった場合、前記補正処理を解除する。
これによれば、必要以上に、高温再生器温度および濃液濃度の上昇が発生しないように制御することができる。
【0014】
第5の発明は、前記制御装置は、ガス流量および冷凍能力を計測してCOPを算出し、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合、稀吸収液ポンプのインバータ周波数を低下させるように制御し、COPが許容範囲外の場合、前記稀吸収液ポンプのインバータ周波数をさらに低下させるように制御する。
これによれば、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合に、COPを許容範囲内に調整することができる。
【0015】
第6の発明は、前記制御装置は、前記稀吸収液ポンプのインバータ周波数をさらに低下させるように制御してもCOPが許容範囲にならない場合、COP低下の予報発報を行う。
これによれば、COPが許容範囲にならない場合に、予報発報を行うことで、COPが低下したことを、メンテナンス作業者が認識することができる。
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係る吸収式冷凍機の概略構成図である。吸収式冷凍機100は、冷媒に水を、吸収液に臭化リチウム(LiBr)水溶液を使用し、この吸収液を、ガス燃料で加熱する吸収冷温水機である。
【0017】
吸収式冷凍機100は、
図1に示すように、蒸発器1と、この蒸発器1に並設された吸収器2と、これら蒸発器1および吸収器2を収納した蒸発器吸収器胴3と、ガスバーナ4を備えた高温再生器5と、低温再生器6と、この低温再生器6に並設された凝縮器7と、これら低温再生器6および凝縮器7を収納した低温再生器凝縮器胴8とを備える。
また、吸収式冷凍機100は、低温熱交換器12と、高温熱交換器13と、冷媒ドレン熱回収器17と、稀吸収液ポンプ45と、濃吸収液ポンプ47と、冷媒ポンプ48とを備え、これらの各機器が吸収液管21,23,24,25および冷媒管31,32,34,35などを介して配管接続されて循環経路が構成されている。
【0018】
蒸発器1には、蒸発器1内で冷媒と熱交換したブラインを、図示しない熱負荷(例えば、空気調和装置)に循環供給するための冷水管14が設けられており、この冷水管14の一部に形成された伝熱管14Aが蒸発器1内に配置されている。
吸収器2および凝縮器7には、吸収器2および凝縮器7に順次冷却水を流通させるための冷却水管15が設けられており、この冷却水管15の一部に形成された各伝熱管15A、15Bがそれぞれ吸収器2および凝縮器7内に配置されている。
【0019】
吸収器2は、蒸発器1で蒸発した冷媒蒸気を吸収液に吸収させ、蒸発器吸収器胴3内の圧力を高真空状態に保つ機能を有する。この吸収器2の下部には、冷媒蒸気を吸収して稀釈された稀吸収液が溜る稀吸収液溜り2Aが形成され、この稀吸収液溜り2Aには、稀吸収液ポンプ45を有する稀吸収液管21の一端が接続されている。稀吸収液管21は、稀吸収液ポンプ45の下流側で分岐する分岐稀吸収液管21Aを備える。稀吸収液ポンプ45は、インバータ制御可能なポンプとされており、インバータ周波数を制御することにより、稀吸収液ポンプ45の駆動量を可変することができるように構成されている。
この分岐稀吸収液管21Aは冷媒ドレン熱回収器17を経由した後に、稀吸収液管21の低温熱交換器12の下流側で再び稀吸収液管21に合流する。この稀吸収液管21の他端は、高温熱交換器13を経由した後、高温再生器5内に形成された熱交換部5Aの上方に位置する気層部5Bに開口している。
稀吸収液管21は、低温熱交換器12の下流側で第2分岐管21Bに分岐され、第2分岐管21Bは低温再生器6内に開口している。
【0020】
高温再生器5は、シェル60内にガスバーナ4を収容して構成され、このガスバーナ4の上方に当該ガスバーナ4の火炎を熱源として吸収液を加熱再生する熱交換部5Aが形成されている。この熱交換部5Aには、ガスバーナ4で燃焼された排気ガスが流通する排気経路40が接続され、この排気経路40には、排ガス熱交換器41が設けられている。また、ガスバーナ4には、燃料ガスが供給されるガス管61と、ブロワ62からの空気が供給される吸気管63とが接続され、これらガス管61および吸気管63には、燃料ガスおよび空気の量を制御する制御弁64が設けられている。ガス管61には、ガス流量計65が設けられている。
【0021】
熱交換部5Aの側方には、この熱交換部5Aで加熱再生された後に当該熱交換部5Aから流出した中間吸収液が溜る中間吸収液溜り5Cが形成されている。この中間吸収液溜り5Cの下端には第2中間吸収液管23の一端が接続され、この第2中間吸収液管23には高温熱交換器13が設けられている。この高温熱交換器13は、中間吸収液溜り5Cから流出した高温の中間吸収液の温熱で稀吸収液管21を流れる吸収液を加熱するものであり、高温再生器5におけるガスバーナ4の燃料消費量の低減を図っている。
第2中間吸収液管23の他端は、低温再生器6と吸収器2とを繋ぐ濃吸収液管25に接続されている。また、第2中間吸収液管23の高温熱交換器13上流側と吸収器2とは開閉弁V1が介在する吸収液管24により接続されている。
【0022】
低温再生器6は、高温再生器5で分離された冷媒蒸気を熱源として、低温再生器6内に形成された吸収液溜り6Aに溜った吸収液を加熱再生するものであり、吸収液溜り6Aには、高温再生器5の上端部から低温再生器6の底部に延びる冷媒管31の一部に形成される伝熱管31Aが配置されている。この冷媒管31に冷媒蒸気を流通させることにより、伝熱管31Aを介して、冷媒蒸気の温熱が吸収液溜り6Aに溜った吸収液に伝達され、この吸収液が更に濃縮される。
低温再生器6の吸収液溜り6Aには、濃吸収液管25の一端が接続され、この濃吸収液管25の他端は、吸収器2の気層部2B上部に設けられる濃液散布器2Cに接続されている。濃吸収液管25には濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12が設けられている。この低温熱交換器12は、低温再生器6の吸収液溜り6Aから流出した濃吸収液の温熱で稀吸収液管21を流れる稀吸収液を加熱するものである。
【0023】
また、濃吸収液管25には、濃吸収液ポンプ47および低温熱交換器12をバイパスするバイパス管27が設けられている。
濃吸収液ポンプ47の運転が停止した場合には、低温再生器6の吸収液溜り6Aに溜った吸収液は、濃吸収液管25およびバイパス管27を通じて吸収器2内に供給される。
【0024】
前述のように、高温再生器5の気層部5Bと凝縮器7の底部に形成された冷媒液溜り7Aとは、冷媒管31により接続される。この冷媒管31は、低温再生器6の吸収液溜り6Aに配管された伝熱管31Aおよび冷媒ドレン熱回収器17を備えている。この冷媒管31の伝熱管31Aの上流側と吸収器2の気層部2Bとは開閉弁V2が介在する冷媒管32により接続されている。
また、凝縮器7の冷媒液溜り7Aには、この冷媒液溜り7Aから流出した冷媒が流れる冷媒管34の一端が接続され、この冷媒管34の他端は、下方に湾曲したUシール部34Aを介して蒸発器1の気層部1Aに接続されている。
蒸発器1の下方には、液化した冷媒が溜る冷媒液溜り1Bが形成され、この冷媒液溜り1Bと蒸発器1の気層部1Aの上部に配置される散布器1Cとは冷媒ポンプ48が介在するに冷媒管35により接続されている。
【0025】
また、冷水管14には、冷水管14を流れる冷水の入口側の温度を検出する冷水入口温度センサ80および冷水の出口側の温度を検出する冷水出口温度センサ81が設けられている。
さらに、冷却水管15の入口側には、冷却水の入口側の温度を検出する冷却水入口温度センサ83が設けられている。
また、濃吸収液管25には、吸収液の濃度を検出する濃液濃度センサ84が設けられている。濃吸収液管25には、低温再生器6の出口側の吸収液の濃度を検出する低温再生器出口濃度センサ85が設けられている。
第2中間吸収液管23には、高温再生器5の出口側の吸収液の濃度を検出する高温再生器出口濃度センサ86が設けられている。
高温再生器5の内部には、高温再生器5の温度を検出する高温再生器温度センサ87が設けられている。
【0026】
また、本実施の形態の吸収式冷凍機100は、抽気装置70を備えており、抽気装置70は、タンク71を備えている。タンク71の上部には、吸収器2の気層部2Bに連通する抽気管72が接続されている。タンク71の底部には、吸収器2の下方に連通する戻り管73が接続されている。さらに、タンク71の上部には、エジェクタポンプ74を介して稀吸収液管21に接続される吸収液管75が接続されている。
そして、エジェクタポンプ74を駆動することにより、吸収液管75を介して稀吸収液管21の稀吸収液をタンク71に取り込む。吸収液管75により流れ込んだ稀吸収液により、タンク71の内部が負圧となり、これにより、吸収器2の上部に貯留されている不凝縮ガスのみならず冷媒蒸気、気化した吸収液などが抽気管72を通ってタンク71の上方に導かれる。
【0027】
タンク71に導かれたガスのうち、冷媒蒸気と気化した吸収液は、タンク71の下方に溜まっている吸収液に溶け込んで吸収されるが、不凝縮ガスは吸収液に溶け込むことができないので、タンク71の上方に溜められる。そして、タンク71の下方に溜まった吸収液は、戻り管73を通って吸収器3に戻される。
【0028】
次に、本実施の形態の制御構成について説明する。
図2は、本実施の形態の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態の吸収式冷凍機100は、コントローラ50を備えており、コントローラ50は、制御装置51を備えている。制御装置51は、吸収式冷凍機100の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を不揮発的に記憶するROM、所定のデータ等を揮発的に記憶するRAMなどのメモリ52、その他の周辺回路などを備えている。
【0029】
また、制御装置51には、冷水入口温度センサ80、冷水出口温度センサ81、冷水差圧センサ82およびガス流量計65の検出信号がそれぞれ入力されるように構成されている。
また、制御装置51には、濃液濃度センサ84、低温再生器出口濃度センサ85、高温再生器出口濃度センサ86および高温再生器温度センサ87の検出信号がそれぞれ入力されるように構成されている。
また、コントローラ50は、タイマ53と、操作部54と、報知部55とをそれぞれ備えている。
【0030】
コントローラ50の制御装置51は、吸収式冷凍機100のガスバーナ4の燃料制御弁64を制御することで、ガスバーナ4による燃焼制御を行うとともに、稀吸収液ポンプ45、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48の駆動制御を行うように構成されている。さらに、コントローラ50の制御装置51は、稀吸収液ポンプ45、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48のインバータ制御を行うことで、稀吸収液ポンプ45、濃吸収液ポンプ47および冷媒ポンプ48による流量制御を行うように構成されている。また、制御装置51は、各弁V1,V2の開閉制御を行うように構成されている。
【0031】
本実施の形態においては、制御装置51は、冷房運転が開始された場合、冷水入口温度センサ80により、冷水の入口温度を検出するとともに、冷水出口温度センサ81により、冷水の出口温度を検出する。また、制御装置51は、冷水差圧センサ82により、冷水差圧値を検出するとともに、ガスバーナ4におけるガス流量およびガス発熱量を検出する。なお、ガス流量は、ガス流量計65により検出される。
制御装置51は、濃液濃度センサ84により吸収液の濃度を検出するとともに、低温再生器出口濃度センサ85により低温再生器6の出口側の吸収液の濃度を検出する。また、制御装置51は、高温再生器出口濃度センサ86により高温再生器5の出口側の吸収液の濃度を検出するとともに、高温再生器温度センサ87により高温再生器5の温度を検出する。
【0032】
ところで、近年、吸収式冷凍機運転の冷房期間成績係数は、JIS B8622にIPLV(標準期間成績係数)で示すことが規定されている。IPLVは冷房負荷100%、75%、50%、25%時のCOP(Coefficient Of Performance:「成績係数」)を用いて、下記式で算出する。
IPLV=COP(100%負荷)×0.01+COP(75%負荷)×0.47+COP(50%負荷)×0.37+COP(25%負荷)×0.15。
ここで、冷却水温度条件は、冷房負荷100%時で32℃、75%時で27.5℃、50%時で23℃、25%時で18.5℃となっている。
【0033】
本実施の形態においては、制御装置51は、100%、75%、50%、25%の各冷房負荷時の運転状態が想定からずれた場合に、補正処理を行い、可能な限りCOPを許容誤差範囲に保つように制御する。
なお、IPLVの許容誤差(%)は、6.5+19.4÷(定格冷水温度差)となり、定格冷水温度が12℃から7℃となる仕様で約10%となる。
【0034】
制御装置51は、次の安定条件が一定期間継続したと判断した場合に、濃液濃度を濃液濃度センサ84により検出し、濃液濃度が所定値以上低い場合に、補正処理を行うように構成されている。
安定条件は、次の2つの式を満足する場合である。
-0.5℃≦冷水設定温度-冷水出口温度≦+0.5℃(安定条件1)
-1.0℃≦冷却水入口温度(JIS条件)≦+1.0℃(安定条件2)
【0035】
制御装置51は、冷水出口温度センサ81により検出される冷水出口温度および冷水設定温度に基づいて、冷水出口温度-冷水設定温度により冷水温度差を算出する。そして、制御装置51は、制御装置51は、冷水温度差が、所定範囲にあるか否かを判断する。制御装置51は、冷水温度差が、±0.5℃以内の場合は、安定条件1を満足すると判断し、±0.5℃を超えた場合には、安定条件1を満足しないと判断する。なお、冷水温度差の所定範囲として、本実施の形態においては、±0.5℃の範囲に設定しているが、これに限定されるものではなく、所定範囲を任意に設定することが可能である。
【0036】
また、制御装置51は、冷却水入口温度センサにより、冷却水の入口温度を検出する。そして、制御装置51は、冷却水の入口温度が±1.0℃以内の場合は、安定条件2を満足すると判断し、冷却水の入口温度が±1.0℃を超えた場合には、安定条件2を満足しないと判断する。なお、冷却水の入口温度の所定範囲として、本実施の形態においては、±1.0℃の範囲に設定しているが、これに限定されるものではなく、所定範囲を任意に設定することが可能である。
【0037】
JIS B8622によれば、冷水出力時の試験条件として、冷却水の入口温度は、冷凍能力が25%の場合は18.5℃、冷凍能力が50%の場合は23.0℃、冷凍能力が75%の場合は27.5℃とされている。
そして、本実施の形態においては、冷凍能力が25%±5%の場合、冷却水の入口温度が18.5℃±1.0℃で濃液濃度は50wt%で設定される。冷凍能力が50%±5%の場合、冷却水の入口温度が23.0℃±1.0℃で濃液濃度は55wt%で設定される。冷凍能力が75%±5%の場合、冷却水の入口温度が27.5℃±1.0℃で濃液濃度は60wt%で設定される。
【0038】
制御装置51は、前述の安定条件1および安定条件2を満足していると判断した場合、この安定条件を満足している状態が所定時間継続しているか否かを判断する。所定時間は、具体的には、例えば、300秒とされる。
制御装置51は、安定条件を満足している状態が所定時間経過したと判断した場合は、濃液濃度センサ84により濃吸収液管25における吸収液の濃度を検出する。制御装置51は、吸収液の濃度が所定値以上低いと判断した場合には、補正処理を実行するように構成されている。ここで、吸収液の濃度の所定値は、例えば、1wt%に設定される。
【0039】
補正処理は、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を低減させるように制御するものであり、具体的には、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を5Hz低下させるように制御する。
このように制御することにより、濃吸収液管25における吸収液の濃度を上昇させることができ、COP値を可能な限り許容範囲(想定値の10%以内)に保つことが可能となる。
【0040】
制御装置51は、高温再生器温度センサ87により検出された高温再生器5の温度が所定温度以上になったと判断した場合、または、濃液濃度センサ84により検出された濃液濃度が所定値以上になったと判断した場合には、前述の補正処理を解除しするように制御する。これにより、必要以上に、高温再生器5温度および濃液濃度の上昇が発生しないように制御することができる。
ここで、高温再生器5の所定温度は、例えば、150℃に設定される。また、濃液濃度の所定値は、例えば、60wt%に設定される。
【0041】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
冷房運転時においては、冷水管14を介して図示しない熱負荷にブライン(例えば、冷水)が循環供給される。制御装置51は、ブラインの蒸発器1の出口側温度(冷水出口温度センサ81にて検出される温度)が所定の設定温度、例えば7℃になるように吸収式冷凍機100に投入される熱量が制御される。
具体的には、制御装置51は、全てのポンプ45,47,48を起動し、かつ、ガスバーナ4におけるガスの燃焼制御を行うことで、冷水出口温度センサ81が計測するブラインの温度が所定の7℃となるようにガスバーナ4の火力を制御する。
【0042】
この場合、吸収器2からの稀吸収液は、稀吸収液管21を介して稀吸収液ポンプ45により低温熱交換器12および高温熱交換器13または排ガス熱交換器41を経由して加熱され高温再生器5に送られる。
高温再生器5に送られた吸収液は、この高温再生器5でガスバーナ4による火炎および高温の燃焼ガスにより加熱されるため、この吸収液中の冷媒が蒸発分離する。高温再生器5で冷媒を蒸発分離して濃度が上昇した中間吸収液は、高温熱交換器13を経由して濃吸収液管25に送られ、低温再生器6を経由した吸収液と合流する。
【0043】
一方、低温再生器6に送られた吸収液は、高温再生器5から冷媒管31を介して供給されて伝熱管31Aに流入する高温の冷媒蒸気により加熱され、さらに冷媒が分離して濃度が一段と高くなり、この濃吸収液が高温再生器5を経由した上記吸収液と合流し、濃吸収液ポンプ47により低温熱交換器12を経由して吸収器2に送られ、濃液散布器2Cから散布される。
【0044】
低温再生器6で分離生成した冷媒は、凝縮器7に入って凝縮して冷媒液溜り7Aに溜る。そして、冷媒液溜り7Aに冷媒液が多く溜まると、この冷媒液は冷媒液溜り7Aから流出し、冷媒管34を経由して蒸発器1に入り、冷媒ポンプ48の運転により揚液されて散布器1Cから冷水管14の伝熱管14Aの上に散布される。
伝熱管14Aの上に散布された冷媒液は、伝熱管14Aの内部を通るブラインから気化熱を奪って蒸発するため、伝熱管14Aの内部を通るブラインは冷却され、こうして温度を下げたブラインが冷水管14から熱負荷に供給されて冷房などの冷却運転が行われる。
そして、蒸発器1で蒸発した冷媒は吸収器2に入り、低温再生器6より供給されて上方から散布される濃吸収液に吸収されて、吸収器2の稀吸収液溜り2Aに溜り、稀吸収液ポンプ45によって高温再生器5に搬送される循環を繰り返す。
【0045】
次に、本実施の形態による制御動作について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施の形態においては、冷房運転を開始すると(ST1)、制御装置51は、冷水出口温度センサによる冷水出口温度および冷却水入口温度センサによる冷却水の入口温度に基づいて、安定条件1および安定条件2を算出する(ST2)。そして、制御装置51は、安定条件1および安定条件2を満足しているか否かを判断する(ST3)。
【0046】
制御装置51は、安定条件1および安定条件2を満足していると判断した場合(ST3:YES)、この安定条件を満足している状態が所定時間継続しているか否かを判断する(ST4)。
制御装置51は、安定条件を満足している状態が所定時間経過したと判断した場合は(ST4:YES)、濃液濃度センサ84により濃吸収液管25における吸収液の濃度を検出する(ST6)。制御装置51は、吸収液の濃度が所定値以上低いと判断した場合には(ST7:YES)、補正処理を実行し、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を低減させるように制御する(ST7)。
このように制御することにより、濃吸収液管25における吸収液の濃度を上昇させることができ、COP値を可能な限り許容範囲(想定値の10%以内)に保つことが可能となる。
【0047】
続いて、制御装置51は、高温再生器温度センサ87により検出された高温再生器5の温度が所定温度以上になったか否か判断するとともに、濃液濃度センサ84により検出された濃液濃度が所定値以上になったか否かを判断する(ST8)。
そして、制御装置51は、高温再生器温度センサ87により検出された高温再生器5の温度が所定温度以上になったと判断した場合、または、濃液濃度センサ84により検出された濃液濃度が所定値以上になったと判断した場合は(ST8:YES)、前述の補正処理を解除するように制御する(ST9)。
これにより、必要以上に、高温再生器温度および濃液濃度の上昇が発生しないように制御することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態においては、制御装置51は、複数の冷房負荷の近傍で、安定条件である冷水設定温度と冷水出口温度との差が所定範囲内にあるか、および冷却水出口温度が所定範囲内にあるかをそれぞれ判断し、安定条件が所定時間継続した場合に、想定濃液濃度が所定値以上低い場合、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を低下させるように制御する補正処理を行う。
これによれば、制御装置51により補正処理を行うことにより、IPLVを許容誤差の範囲内に保持した状態で運転することができる。
【0049】
また、本実施の形態においては、制御装置51は、高温再生器5の温度が所定温度以上、あるいは、濃液濃度が所定値以上になった場合、補正処理を解除する。
これによれば、必要以上に、高温再生器5温度および濃液濃度の上昇が発生しないように制御することができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施の形態について説明する。
第2実施の形態においては、補正処理を行う条件を変更したものであり、制御構成に変更はない。
本実施の形態においては、高温再生器温度センサ87により高温再生器5の温度を検出し、制御装置51は、高温再生器5の温度が設定される高温再生器5の温度より所定温度以上低いか否かを判断する。ここで、所定温度は、例えば、5℃に設定される。
そして、制御装置51は、高温再生器5の温度が想定される高温再生器5の温度より所定温度以上低いと判断した場合には、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を5Hz低下させるように補正処理を行うものである。
【0051】
なお、本実施の形態においては、高温再生器5の温度が想定される高温再生器5の温度より5℃以上低いと判断した場合に補正処理を行うようにしているが、高温再生器5の温度と想定される高温再生器5の温度との差は、5℃に限定されるものではなく、任意に設定することができるものである。
その他の部分は、第1実施の形態と同様である。
【0052】
次に、本実施の形態による制御動作について、
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施の形態においては、冷房運転を開始すると(ST11)、制御装置51は、冷水出口温度センサ81による冷水出口温度および冷却水入口温度センサ83による冷却水の入口温度に基づいて、安定条件1および安定条件2を算出する(ST12)。そして、制御装置51は、安定条件1および安定条件2を満足しているか否かを判断する(ST13)。
【0053】
制御装置51は、安定条件1および安定条件2を満足していると判断した場合(ST13:YES)、この安定条件を満足している状態が所定時間継続しているか否かを判断する(ST14)。
制御装置51は、安定条件を満足している状態が所定時間経過したと判断した場合は(ST14:YES)、高温再生器温度センサ87により、高温再生器5の温度を検出する(ST15)。
制御装置51は、高温再生器5の温度が設定温度より所定温度以上低い場合は(ST16:YES)、補正処理を実行し、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を低減させるように制御する(ST17)。
このように制御することにより、濃吸収液管25における吸収液の濃度を上昇させることができ、COP値を可能な限り許容範囲(想定値の10%以内)に保つことが可能となる。
【0054】
続いて、第1実施の形態と同様に、制御装置51は、高温再生器温度センサ87により検出された高温再生器5の温度が所定温度以上になったか否か判断するとともに、濃液濃度センサ84により検出された濃液濃度が所定値以上になったか否かを判断する(ST18)。
そして、制御装置51は、高温再生器温度センサ87により検出された高温再生器5の温度が所定温度以上になったと判断した場合、または、濃液濃度センサ84により検出された濃液濃度が所定値以上になったと判断した場合は(ST18:YES)、前述の補正処理を解除するように制御する(ST19)。
これにより、必要以上に、高温再生器5温度および濃液濃度の上昇が発生しないように制御することができる。
【0055】
以上述べたように、本実施の形態においては、制御装置51は、複数の冷房負荷の近傍で、安定条件である冷水設定温度と冷水出口温度との差が所定範囲内にあるか、および冷却水出口温度が所定範囲内にあるかをそれぞれ判断し、安定条件が所定時間継続した場合に、高温再生器5の温度が想定される高温再生器5の温度より所定温度以上低い場合、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を低下させるように制御する補正処理を行う。
これによれば、制御装置51により補正処理を行うことにより、IPLVを許容誤差の範囲内に保持した状態で運転することができる。
【0056】
次に、本発明の第3実施の形態について説明する。
第3実施の形態においては、COPの値に応じて補正処理を行うようにしたものであり、制御構成に変更はない。
第3実施の形態においては、ガス流量計65によりガス流量を検出し、制御装置51は、このガス流量および冷凍能力に基づいて、COP(冷凍能力÷ガス入熱量)を算出する。
そして、制御装置51は、算出したCOPが想定されるCOPに対する許容範囲より低いか否かを判断し、算出したCOPが想定COPの許容範囲より低いと判断した場合、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を、例えば、5Hz低下させるように制御する。ここで、想定COPに対する許容範囲は、想定COPに対して10%とされる。
【0057】
その後、制御装置51は、算出したCOPが想定COPに対する所定の許容範囲(想定COPの10%以内)にあるか否かを判断する。そして、算出したCOPが想定COPに対する所定の許容範囲にないと判断した場合、制御装置51は、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数をさらに例えば5Hz低下させるように制御する。
制御装置51は、これらの制御を行った場合でも、算出したCOPが想定COPに対する所定の許容範囲にならないと判断した場合には、COPが低下したことを予報発報する。
【0058】
以上述べたように、本実施の形態においては、制御装置51は、ガス流量および冷凍能力を計測してCOPを算出し、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数を低下させるように制御し、COPが許容範囲外の場合、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数をさらに低下させるように制御する。
これによれば、算出したCOPが想定COPに対する許容範囲より低い場合に、COPを許容範囲内に調整することができる。
【0059】
また、本実施の形態においては、制御装置51は、稀吸収液ポンプ45のインバータ周波数をさらに低下させるように制御してもCOPが許容範囲にならない場合、COP低下の予報発報を行う。
これによれば、COPが許容範囲にならない場合に、予報発報を行うことで、COPが低下したことを、メンテナンス作業者が認識することができる。
【0060】
なお、本実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は前記実施の形態に限定されない。
例えば、本実施の形態では、冷房運転時における制御について説明したが、暖房運転時にも、同様に適用することができる。
【0061】
また、高温再生器5にて吸収液を加熱する加熱手段として燃料ガスを燃焼させて加熱を行うガスバーナ4を備える構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、灯油やA重油を燃焼させるガスバーナを備える構成や、蒸気や排気ガスなどの温熱を用いて加熱する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 蒸発器
2 吸収器
4 ガスバーナ
5 高温再生器
6 低温再生器
7 凝縮器
45 稀吸収液ポンプ
47 濃吸収液ポンプ
48 冷媒ポンプ
50 コントローラ
51 制御装置
52 メモリ
55 報知部
64 燃料制御弁
65 ガス流量計
70 抽気装置
80 冷水入口温度センサ
81 冷水出口温度センサ
83 冷却水入口温度センサ
84 濃液濃度センサ
85 低温再生器出口濃度センサ
86 高温再生器出口濃度センサ
87 高温再生器温度センサ
100 吸収式冷凍機