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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】イヤホンおよび装着感調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20241018BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H04R1/10 104E
H04R1/10 104Z
H04R3/00 310
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020202151
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089615
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅巳
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0181325(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0150269(US,A1)
【文献】米国特許第9516442(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0279724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 3/00- 3/14
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着されるイヤホンであって、
前記ユーザの耳介に挿入されて複数種類のサイズを有する交換可能なイヤーピースと接続され、端末により再生されたスイープ信号を前記イヤーピースを介して放音する放音部と、
前記スイープ信号に基づいて、前記ユーザの上下方向、前後方向、左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得するセンサと、
前記3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、前記イヤーピースのサイズの交換もしくは前記イヤーピースの前記耳介内での挿入位置の調整の有無を判定する判定部と、
前記交換もしくは前記調整の有無の判定結果を前記端末に出力する提示部と、を備える、
イヤホン。
【請求項2】
前記放音部は、低域の周波数帯を有する前記スイープ信号を放音する、
請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも第1所定値より大きいと判定した場合、前記イヤーピースが前記耳介内の奥側に押し込まれている旨の警告を前記判定結果として生成する、
請求項1に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも前記第1所定値より小さくかつ前記第1所定値より小さい第2所定値より大きいと判定した場合、前記イヤーピースが前記耳介内の手前側に位置している旨の警告を前記判定結果として生成する、
請求項3に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも前記第1所定値より小さくかつ前記第2所定値より小さいと判定した場合、前記イヤーピースのサイズが適していない旨の警告を前記判定結果として生成する、
請求項4に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記センサは、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性を取得し、
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性の取得結果に基づいて、前記イヤーピースの前記耳介内での挿入位置の調整もしくは前記スイープ信号の音量レベルの増減の有無を判定する、
請求項1に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記放音部は、高域の周波数帯を有する前記スイープ信号を放音する、
請求項6に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つと残り2つのパラメータの信号の周波数特性との差が第3所定値より大きくかつ第4所定値未満であると判定した場合、前記スイープ信号の音量レベルが所望値よりも大きい旨の警告を前記判定結果として生成する、
請求項6に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つと残り2つのパラメータの信号の周波数特性との差が前記第3所定値と異なるが等しい絶対値を有する第5所定値より小さくかつ前記第4所定値と異なるが等しい絶対値を有する第6所定値より大きいと判定した場合、前記スイープ信号の音量レベルが前記所望値よりも小さい旨の警告を前記判定結果として生成する、
請求項8に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記判定部は、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つと残り2つのパラメータの信号の周波数特性との差が前記第6所定値より小さいと判定した場合、前記イヤーピースの前記耳介内での挿入位置がずれている旨の警告を前記判定結果として生成する、
請求項9に記載のイヤホン。
【請求項11】
ユーザに装着されるイヤホンにより実行される装着感調整方法であって、
前記ユーザの耳介に挿入されて複数種類のサイズを有する交換可能なイヤーピースを介して、端末により再生されたスイープ信号を放音し、
前記スイープ信号に基づいて、前記ユーザの上下方向、前後方向、左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得し、
前記3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、前記イヤーピースのサイズの交換もしくは前記イヤーピースの前記耳介内での挿入位置の調整の有無を判定し、
前記交換もしくは前記調整の有無の判定結果を前記端末に出力する、
装着感調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イヤホンおよび装着感調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンの普及に伴い、小型のインナーイヤホンの使用が主流になりつつある。インナーイヤホンにはより快適な音聴環境を実現することが求められている。
【0003】
そのような従来のイヤホンに関連して、特許文献1には、スピーカと、イヤークッションアダプタと、マイクロプロセッサと、ドライバと、ヘッドセットイヤーピースに取り外し可能な交換イヤーカップと、を備えるオーディオヘッドセットが開示されている。マイクロプロセッサは、取り外し可能な交換イヤーカップを認識し、取り外し可能な交換イヤーカップに関するパラメータに基づいて、スピーカを介してオーディオ出力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-531544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、選択された交換用イヤーカップのそれぞれごとに決められた固定のパラメータに基づくオーディオ出力の調整しか行うことができない。しかしながら、耳、頭の大きさはインナーイヤホンの装着者であるユーザにおいて個人差があるため、特許文献1のような画一的なオーディオ出力の調整では不十分となる可能性があった。したがって、特許文献1の構成は、ユーザへのより快適な音聴環境を実現するために、改善の余地があった。
【0006】
本開示は、適切なイヤーピースへの交換もしくは位置調整を提示したり、または装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正したりして、ユーザの装着感の向上を支援することができるイヤホンおよび装着感調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ユーザに装着されるイヤホンであって、前記ユーザの耳介に挿入されて複数種類のサイズを有する交換可能なイヤーピースと接続され、端末により再生されたスイープ信号を前記イヤーピースを介して放音する放音部と、前記スイープ信号に基づいて、前記ユーザの上下方向、前後方向、左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得するセンサと、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、前記イヤーピースのサイズの交換もしくは前記イヤーピースの前記耳介内での挿入位置の調整の有無を判定する判定部と、前記交換もしくは前記調整の有無の判定結果を前記端末に出力する提示部と、を備える、イヤホンを提供する。
【0008】
また、本開示は、ユーザに装着されるイヤホンにより実行される装着感調整方法であって、前記ユーザの耳介に挿入されて複数種類のサイズを有する交換可能なイヤーピースを介して、端末により再生されたスイープ信号を放音し、前記スイープ信号に基づいて、前記ユーザの上下方向、前後方向、左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得し、前記3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、前記イヤーピースのサイズの交換もしくは前記イヤーピースの前記耳介内での挿入位置の調整の有無を判定し、前記交換もしくは前記調整の有無の判定結果を前記端末に出力する、装着感調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、適切なイヤーピースへの交換もしくは位置調整を提示したり、または装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正したりして、ユーザの装着感の向上を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1の概要を説明する概要図
図2】実施の形態1のイヤホンのハードウェア構成を例示する斜視図
図3図2に示す駆動制御回路を例示する機能ブロック図
図4図3に示す駆動制御回路での第1処理ルーチンを例示するフローチャート
図5図3に示す駆動制御回路での第2処理ルーチンを例示するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るイヤホンおよび装着感調整方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、添付図面のそれぞれは符号の向きに従って参照するものとする。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
例えば、本開示では、一対のイヤホン筐体を有し、このイヤホン筐体同士が無線接続される完全なワイヤレス・イヤホンを本開示の一例として説明するが、これに限定されず、イヤホン筐体同士が有線接続され、また外部機器とも有線接続されるものであってもよい。すなわち、通信が無線または有線かを問わず、イヤホン筐体に取り付けられるイヤーピースを複数種類のサイズで有し、ユーザの装着感に応じて交換可能に構成されるものであれば本開示の内容を適宜採用することが可能である。
【0013】
また、実施の形態でいう「部」または「装置」とは単にハードウェアによって機械的に実現される物理的構成に限らず、その構成が有する機能をプログラムなどのソフトウェアにより実現されるものも含む。また、1つの構成が有する機能が2つ以上の物理的構成により実現されても、または2つ以上の構成の機能が例えば1つの物理的構成によって実現されていてもかまわない。
【0014】
まず、実施の形態を具体的に説明する前に、図1を参照して、本開示に至る経緯およびその概要について説明する。
【0015】
[本開示に至る経緯について]
図1を参照して、本開示に至る経緯について説明する。図1は、実施の形態1の概要を説明する概要図である。近年、スマートフォンの普及によって小型のインナーイヤホンが広く普及されるようになったが、音楽に対する趣味嗜好が多様化しており、インナーイヤホンにもそれぞれの個人に合う音聴環境の実現が求められる。このような個人的な音聴環境は、例えば「パーソナルサウンド」とも呼ばれる。
【0016】
このパーソナルサウンドの実現には種々の問題があることが知られる。例えば、そのパーソナルサウンドの定義が不明確である点、その計測の精度が出ない点、または調整後のユーザの納得性が低い点などがその問題として挙げられる。
【0017】
その具体例としてパーソナルサウンドを実現しようとする既存の製品の1つについては、ユーザのそれぞれが聴覚の差を認識できるのはまれであり、また、出力される音声に対しその計測ポイントが少ないとその計測結果がばらつく可能性があった。さらに、ユーザは音の好みで優先判断して納得できる場合が少ないことがあった。
【0018】
このように、パーソナルサウンドを実現しようとする製品が登場している状況ではあるが、合理的で納得性のあるパーソナルサウンドが実現できているとはいえず、改良の余地があった。
【0019】
本発明者らは、パーソナルサウンドのさらなる改良に向けて鋭意検討した結果、本開示に係る実施の形態1の目標を次の3つに設定した。
(1) イヤホンのイヤーピースのサイズや装着位置に関し、ユーザの耳への装着感を向上させる。
(2) 漏れ補償(Leakage Compensation)では検出不能な耳への接触影響(例えば装着位置など)を検出する。
(3) 音の中高域はユーザの音の好みに左右される傾向が高いため、耳への接触影響のある低域を主に調整する。
【0020】
そのため、本発明者らはユーザの上下方向、前後方向および左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得可能なセンサ(例えば加速度センサなど)に着目した。そして、この着目によって本発明者らは、後述するようにこのセンサを含めた、パーソナルサウンドが実現可能な構成を見出したのである。なお、本開示ではこのセンサの一例として加速度センサを取り上げるが、これに限定されない。
【0021】
図1に示すように、本開示では、このような構成を用いて2つのステップ(後述する第1処理ルーチンおよび第2処理ルーチン)でパーソナルサウンドの調整が実施される。
【0022】
ステップ1では、漏れ補償として装着時と常時の音圧の変化がセンサにより取得され、この取得によりイヤーピースのサイズ選択または装着位置のずれが検知される。例えば、イヤホンはスマートフォンなどの外部装置に無線通信可能に接続されており、この外部装置にはアプリケーション(App)がインストールされる。イヤホンの初期設定時、この外部装置のアプリケーションからの音声再生に従ってイヤホンで漏れ補償が実施されて最適なサイズのイヤーピースが決定される。
【0023】
具体的には、ユーザは自由に選択したイヤーピースを装着し、その装着状態で、外部装置のアプリケーションおよびイヤホンは音圧検出用の音(例えば音楽またはスイープ信号など)を、外耳道を含む音響空間にイヤホンのドライバを通じて再生する。イヤホンのセンサがこのレベル変化を取得する。その取得結果に基づいて、最適なイヤーピースのサイズが決定される。アプリケーションおよびイヤホンはこの決定されたサイズを例えば外部装置の表示部に表示し、ユーザにそのイヤーピースのサイズの選択およびその取り付けを促す。
【0024】
ステップ2はステップ1の後に実施される。ステップ2では、イヤーピースのサイズ確定後、センサによって装着状態での検出および補正が行われる。例えば、外部装置のアプリケーション(App)から出力される音声信号に対し周波数特定が補正される。具体的には、ユーザがステップ1で選択されたイヤホンを装着した状態で、外部装置のアプリケーションは外耳道を含む音響空間に周波数特性検出用の音(例えばスイープ信号またはインパルス信号など)を再生し、イヤホンのセンサがこのレベル変化を取得する。その取得結果に基づいて、アプリケーションおよびイヤホンは適切な周波数特性となるように補正する(例えばイコライザー補正)。
【0025】
このようにして、本開示では適切なイヤーピースへの交換もしくは位置調整を提示したり、または装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正したりして、ユーザの装着感の向上を支援することが可能となる。
【0026】
(実施の形態1)
図2図5に基づいて、本開示に係る実施の形態1について説明する。
【0027】
[イヤホンのハードウェア構成について]
図2を参照しながら、本実施の形態に係るイヤホン1のハードウェア構成について説明する。図2は、実施の形態1のイヤホン1のハードウェア構成を例示する斜視図である。
【0028】
図2に示すように、イヤホン1は、ユーザの耳に装着して使用されるインナー型の音響装置であり、一対のイヤホン筐体2と、イヤホン筐体2のそれぞれに取り付けられるイヤーピース7と、を有して構成される。イヤホン筐体2は、ユーザの耳に対しイヤーピース7により外耳道内に挿入された状態で保持され、この保持された状態がイヤホン1の使用状態とされる。
【0029】
また、本実施の形態では、イヤホン1はBluetooth(登録商標)の通信規格によって通信可能な無線通信部13を有する。イヤホン1は、無線通信部13を介して音楽再生用途としてはラジオ装置や音楽再生装置などの音源装置、または電話用途としてはスマートフォンPなどの電話装置などに無線接続される音響装置の一例である。そして、イヤホン1は、これら装置から送信される音声信号および音楽信号などを受け取り、その音声信号を音波として出力したり、あるいはユーザの発話を収音してその収音結果をこれら装置に送信したりする。
【0030】
なお、本実施の形態では、イヤホン1が無線通信する装置の一例としてスマートフォンPを示して説明するが、これに限定されず無線通信可能であれば種々の装置と接続可能である。また、図1には説明の便宜上一対のイヤホン筐体2のうちその一方のみが図示されている。
【0031】
イヤホン筐体2のそれぞれは構造部材としてハウジング3を有し、その外観が丸みを帯びた箱状に形成される。ハウジング3は、合成樹脂、金属、セラミックなどの材料の複合体で設けられ、その内部に収納空間が形成される。また、ハウジング3にはその収納空間に連通する取付円筒部(不図示)が設けられる。
【0032】
イヤーピース7は、シリコンなどの柔軟性のある部材からなり、内筒部(不図示)および外筒部(不図示)を有して射出成型される。イヤーピース7は、その内筒部でハウジング3の取付円筒部に挿嵌固定され、またこのハウジング3の取付円筒部に対し交換可能(着脱自在)に設けられる。イヤーピース7は、その外筒部でユーザの外耳道に装着され、装着する外耳道の形状に応じて弾性変形する。この弾性変形により、イヤーピース7はユーザの外耳道に保持される。また、イヤーピース7は複数種類のサイズが用意されており、ユーザの外耳道の形状などに合わせてそのサイズが適宜交換される。
【0033】
また、イヤホン筐体2のそれぞれは、電気電子部材として、ドライバ4(放音部の一例)と、複数のマイクロホン5と、加速度センサ6(センサの一例)と、駆動制御回路10と、を含んで構成され、これら電気電子部材はハウジング3の収納空間に収納される。
【0034】
ドライバ4は、いわゆるスピーカなどと称される電子部品であり、音声信号を音波(空気の振動)に変換して出力する。具体的には、ドライバ4は、振動板(不図示)を有し、ドライバ4に入力される音声信号に基づいてその振動板を振動させることでその音声信号を音波に変換する。ドライバ4から出力される音波はイヤーピース7の空洞を通じてユーザの耳の鼓膜に伝播する。本実施の形態では、ドライバ4は、ユーザのスマートフォンPにより再生された音声信号(例えばスイープ信号)を、イヤーピース7を介して放音する。
【0035】
複数のマイクロホン5は、イヤホン1が耳介に装着された状態でのユーザの周囲、ユーザの発話および外耳道を含む音響空間のそれぞれでの音声を収音可能にイヤホン筐体2に配設される。
【0036】
加速度センサ6は、イヤホン1の装着状態で、ユーザの上下方向(重力に従った鉛直方向。以下「Z軸方向」ともいう。)、前後方向(以下「X軸方向」ともいう。)および左右方向(以下「Y軸方向」ともいう。)からなる3軸方向のそれぞれのパラメータ、およびそのパラメータの信号の周波数特性をその成分のそれぞれで検出する。その検出結果は、駆動制御回路10に送信される。
【0037】
駆動制御回路10は、複数の駆動回路および制御回路を有し、信号処理および駆動制御を適宜行うイヤホン1のミニコンピュータとして動作する。
【0038】
[駆動制御回路の構成について]
次に図3を参照して、駆動制御回路10の構成について説明する。図3は、図2に示す駆動制御回路10を例示する機能ブロック図である。
【0039】
なお、駆動制御回路10は、前述したように汎用のコンピュータとして構成されており、記憶装置(不図示)および演算装置(不図示)などをさらに有する。駆動制御回路10では、記憶装置に記憶保持されるソフトウェアとしてのプログラム(不図示)が演算装置演(不図示)によって実行される。また、本実施の形態では、駆動制御回路10には、その基板上に専門装置(専用回路)が実装される。つまり、図3に示す駆動制御回路10の内部に図示されるブロックそれぞれは、プログラムなどのソフトウェアにより実現される機能、または専用装置などのハードウェアにより実現される機能を表している。
【0040】
また、本実施の形態では、駆動制御回路10で実現される機能はソフトウェアおよびハードウェアの両方により実現されるとしたが、これに限定されない。例えば、その機能全部が「装置」のハードウェアによって構成されてもよい。
【0041】
また、後述するように、駆動制御回路10には無線通信部13が搭載されており、本実施の形態では、駆動制御回路10はユーザが有するスマートフォンPにその無線通信部13を介して無線接続される。ユーザのスマートフォンPはディスプレイ表示部を有し、またスマートフォンPにはアプリケーションがインストールされる。このアプリケーションは、イヤホン1を初期設定したり、無線通信部13に送信するための音声信号の音量レベルおよび周波数特性を補正したりする(例えばイコライザー補正など)。
【0042】
駆動制御回路10は、アナログ・デジタル変換部11と、レベル・周波数特性検出部12と、無線通信部13と、音量調整部14と、デジタル・アナログ変換部15と、アンプ部16と、を含んで構成される。
【0043】
アナログ・デジタル変換部11は、加速度センサ6に電気的に接続されており、加速度センサ6から出力される電気信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号を、アナログ・デジタル変換部11は、レベル・周波数特性検出部12に送信する。
【0044】
レベル・周波数特性検出部12は、加速度センサ6の検出結果に基づいて、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの成分についてその音量(音圧)レベルおよび周波数特性をその成分ごとのパラメータとして検出する。さらに、後述する第1処理ルーチンでは、このパラメータの検出結果に基づいて、レベル・周波数特性検出部12はイヤーピース7のサイズの交換もしくはイヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整の有無を判定する。また、後述する第2処理ルーチンでは、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性の取得結果に基づいて、イヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整もしくはスイープ信号の音量レベルの増減の有無を判定する。レベル・周波数特性検出部12は、その判定結果を無線通信部13に送信する。
【0045】
無線通信部13は、ユーザのスマートフォンPと無線通信するための装置である。無線通信部13はレベル・周波数特性検出部12での判定結果をユーザのスマートフォンPに出力する。また、無線通信部13にはスマートフォンPで再生されたスイープ信号などの音声信号がデジタル信号として送信され、無線通信部13はその送信された音声信号を音量調整部14に送信する。
【0046】
なお、本実施の形態では、イヤホン1の無線通信部13はBluetooth(登録商標)の通信規格に従った通信を行うが、これに限定されず、Wi-Fi(登録商標)などの通信回線または移動体通信回線などに接続可能に設けられてもよい。また、通信は無線通信に限らず有線通信であってもよい。
【0047】
音量調整部14は、スマートフォンPで再生されたスイープ信号などの音声信号を無線通信部13を介して受信し、その音声信号の音量レベルを調整してデジタル・アナログ変換部15に送信する。
【0048】
デジタル・アナログ変換部15は、音量調整部14から送信された音声信号をアナログ信号に変換し、その変換したアナログ信号をアンプ部16に出力する。
【0049】
アンプ部16は、ドライバ4に電気的に接続されており、デジタル・アナログ変換部15から出力されるアナログ信号を増幅してドライバ4に出力する。ドライバ4は、その入力に基づいて、音声信号を物理的な空気振動(音波)として出力する。
【0050】
[駆動制御回路での第1処理ルーチンについて]
次に図4を参照しながら、本実施の形態に係る駆動制御回路10での第1処理ルーチンについて説明する。図4は、図3に示す駆動制御回路10での第1処理ルーチンを例示するフローチャートである。
【0051】
なお、第1処理ルーチンと後述する第2処理ルーチンはイヤホン1が実際に使用開始される前の初期設定として実行されるルーチンである。第1処理ルーチンおよび第2処理ルーチンは初期設定のときに一組(1セット)のルーチンとして実行され、第1処理ルーチンは第2処理ルーチンの前に実行される(図1参照)。つまり、本実施の形態では、第1処理ルーチンおよび第2処理ルーチンの2段階で初期設定が行われる。
【0052】
図4に示すように、第1処理ルーチンでは、ドライバ4は、イヤホン1がユーザに装着された状態で、ユーザのスマートフォンPで再生されたスイープ信号を音波として出力する(S101)。このときのスイープ信号の周波数帯は、例えば20~500Hz(低域の周波数帯の一例)に設定されるが、この範囲内の周波数に限定されなくてもよい。このスイープ信号の出力により、音波がユーザの外耳道を含む音響空間に伝播する。この伝播した状態で、加速度センサ6は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれのパラメータを各方向の成分として検出する(S102)。
【0053】
レベル・周波数特性検出部12は、加速度センサ6での検出結果を取得し、検出された3軸のパラメータについてそれぞれのパラメータがいずれも同一であるか否かを判定する(S103)。その判定結果でいずれも同一であると判定する場合、第1処理ルーチンは調整が不要であるとして終了する(END)。
【0054】
同一ではないと判定する場合(S103のNO)、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向、すなわちX軸方向の成分、Y軸方向の成分およびZ軸方向の成分のそれぞれのパラメータのうち、いずれか1つが残り2つのパラメータよりも+6dB(第1所定値の一例)より大きいか否かを判定する(S104、(X or Y or Z>+6dB))。
【0055】
その判定結果で大きいと判定した場合(S104のYES)、レベル・周波数特性検出部12は、イヤーピース7が耳介内の奥側に押し込まれている旨の警告を判定結果として生成する。レベル・周波数特性検出部12は、この生成した判定結果を無線通信部13に送信する(S105)。無線通信部13は、その判定結果をユーザのスマートフォンPに送信し、スマートフォンPはその判定結果をそのディスプレイ表示部に表示させて、ユーザにその位置調整を促す(S109)。
【0056】
その一方で小さいと判定した場合(S104のNO)、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向のそれぞれのパラメータのうち、いずれか1つが残り2つのパラメータよりも-6dB(第2所定値の一例)よりマイナス方向に大きいか否かを判定する(S106、(X or Y or Z<-6dB))。
【0057】
その判定結果でマイナス方向に大きいと判定した場合(S106のYES)、つまり、レベル・周波数特性検出部12がステップS104およびS106を通じて3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも+6dBより小さくかつ-6dBよりマイナス方向に小さい(言い換えると、-6dBより大きい)と判定する場合、イヤーピース7が耳介内の手前側に位置している旨の警告を判定結果として生成する。レベル・周波数特性検出部12は、この生成した判定結果を無線通信部13に送信する(S107)。無線通信部13は、その判定結果をユーザのスマートフォンPに送信し、スマートフォンPはその判定結果をそのディスプレイ表示部に表示させて、ユーザにその位置調整を促す(S109)。
【0058】
その一方でマイナス方向に小さいと判定した場合(S106のNO)、つまり、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも+6dB小さくかつ-6dBよりマイナス方向に大きい(言い換えると、-6dBより小さい)と判定した場合、イヤーピース7のサイズが適していない旨の警告を判定結果として生成する。レベル・周波数特性検出部12は、この生成した判定結果を無線通信部13に送信する(S108)。無線通信部13は、その判定結果をユーザのスマートフォンPに送信し、スマートフォンPはその判定結果をそのディスプレイ表示部に表示させて、イヤーピース7のサイズの交換を促す(S110)。
【0059】
このようにして、第1処理ルーチンでは、レベル・周波数特性検出部12が3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、イヤーピース7のサイズの交換もしくはイヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整の有無を判定する。そのため、イヤーピース7の初期設定の際、適切なイヤーピース7への交換もしくは位置調整を提示して、ユーザの装着感の向上を支援することが可能となる。
【0060】
[駆動制御回路での第2処理ルーチンについて]
次に図5を参照しながら、本実施の形態に係る駆動制御回路10での第2処理ルーチンについて説明する。図5は、図3に示す駆動制御回路10での第2処理ルーチンを例示するフローチャートである。なお、前述したように、第2処理ルーチンは第1処理ルーチンが完了した後に実行される(図1参照)。
【0061】
図5に示すように、第2処理ルーチンでは、ドライバ4は、イヤホン1がユーザに装着された状態で、ユーザのスマートフォンPで再生されたスイープ信号を音波として出力する(S201)。このときのスイープ信号の周波数帯は、例えば20~2kHz(高域の周波数帯の一例)に設定されるが、この範囲内の周波数に限定されなくてもよい。このスイープ信号の出力により、音波がユーザの外耳道を含む音響空間に伝播する。この伝播した状態で、加速度センサ6は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性を各方向の成分として検出する(S202)。
【0062】
レベル・周波数特性検出部12は、加速度センサ6での検出結果を取得し、検出された3軸方向、すなわちX軸方向の成分、Y軸方向の成分およびZ軸方向の成分のそれぞれのパラメータについてそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のいずれか1つが所定の範囲、例えば±3dB以内であるか否かを判定する(S203)。その判定結果で所定の範囲内であると判定した場合、第2処理ルーチンは調整が不要であるとして終了する(END)。
【0063】
所定の範囲内ではないと判定した場合(S203のNO)、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つが残り2つのパラメータの信号の周波数特性より+3dBから+6dBの範囲内であるか否かを判定する(S204)。
【0064】
その判定結果で+3dBから+6dBの範囲内であると判定した場合(S204のYES)、レベル・周波数特性検出部12は、ドライバ4から出力されたスイープ信号の音量レベルが所望値よりも大きい旨の警告を判定結果として生成する。レベル・周波数特性検出部12は、この生成した判定結果を無線通信部13に送信する(S205)。無線通信部13は、その判定結果をユーザのスマートフォンPに送信し、スマートフォンPはその判定結果に従ってスイープ信号などの音声信号の音量レベルおよび周波数特性をスイープ信号が現状より小さくなるように補正する。スマートフォンPは、補正した音声信号を、無線通信部13を通じて音量調整部14に送信する(S209)。
【0065】
その一方で+3dBから+6dBの範囲内ではないと判定した場合(S204のNO)、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つが-3dBから-6dBの範囲内であるか否かを判定する(S206)。
【0066】
その判定結果で-3dBから-6dBの範囲内であると判定した場合(S206のYES)、つまり、レベル・周波数特性検出部12がステップS204およびS206を通じて3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つが残り2つのパラメータの信号の周波数特性よりも-3dBよりマイナス方向に大きくかつマイナス方向に-6dBより小さいと判定した場合、スイープ信号の音量レベルが所望値よりも小さい旨の警告を判定結果として生成する。レベル・周波数特性検出部12は、この生成した判定結果を無線通信部13に送信する(S207)。無線通信部13は、その判定結果をユーザのスマートフォンPに送信し、スマートフォンPはその判定結果に従ってスイープ信号などの音声信号の音量レベルおよび周波数特性をスイープ信号が現状より大きくなるように補正する(S209)。
【0067】
その一方で-3dBから-6dBの範囲内ではないと判定した場合(S206のNO)、つまり、レベル・周波数特性検出部12は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つが残り2つのパラメータの信号の周波数特性よりもマイナス方向に-6dBより大きいと判定した場合、イヤーピース7の耳介内での挿入位置がずれている旨の警告を判定結果として生成する。レベル・周波数特性検出部12は、この生成した判定結果を無線通信部13に送信する。無線通信部13は、その判定結果をユーザのスマートフォンPに送信する(S208)。スマートフォンPはその判定結果をそのディスプレイ表示部に表示させて、ユーザにその位置調整を促す(S210)。
【0068】
このようにして、第2処理ルーチンでは、レベル・周波数特性検出部12が3軸方向のそれぞれのパラメータの勇者数特性の取得結果に基づいて、イヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整もしくはスイープ信号の音量レベルの増減の有無を判定する。そのため、イヤーピース7の初期設定の際、適切なイヤーピース7の位置調整をしたり、または装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正したりして、ユーザの装着感の向上を支援することが可能となる。
【0069】
以上により、実施の形態1のイヤホン1によれば、ユーザに装着されるイヤホン1であって、ユーザの耳介に挿入されて複数種類のサイズを有する交換可能なイヤーピース7と接続され、ユーザのスマートフォンP(端末の一例)により再生されたスイープ信号をイヤーピース7を介して放音するドライバ4(放音部の一例)と、スイープ信号に基づいて、ユーザの上下方向、前後方向、左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得する加速度センサ6(センサの一例)と、3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、イヤーピース7のサイズの交換もしくはイヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整の有無を判定するレベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)と、交換もしくは調整の有無の判定結果をユーザのスマートフォンPに出力する無線通信部13(提示部の一例)と、を備える。
【0070】
また、実施の形態1の装着感調整方法によれば、ユーザに装着される装置で用いられる装着感調整方法であって、ユーザの耳介に挿入されて複数種類のサイズを有する交換可能なイヤーピース7を介して、ユーザのスマートフォンP(端末の一例)により再生されたスイープ信号を放音し、スイープ信号に基づいて、ユーザの上下方向、前後方向、左右方向からなる3軸方向のそれぞれのパラメータを取得し、3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、イヤーピース7のサイズの交換もしくはイヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整の有無を判定し、交換もしくは調整の有無の判定結果を端末に出力する。
【0071】
これにより、イヤホン1は、3軸方向のそれぞれのパラメータの取得結果に基づいて、イヤーピース7のサイズの交換もしくはイヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整の有無が判定されるので、イヤーピース7の初期設定の際、適切なイヤーピース7への交換もしくは位置調整を提示して、ユーザの装着感の向上を支援することができる。
【0072】
また、実施の形態1のイヤホン1では、ドライバ4(放音部の一例)は、低域(例えば20~500Hz)の周波数帯を有するスイープ信号を放音する。これにより、イヤホン1は、イヤーピース7のサイズの交換もしくはイヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整の有無をより精度良く判定することができる。
【0073】
また、実施の形態1のイヤホン1では、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも+6dB(第1所定値)より大きいと判定した場合、イヤーピース7が耳介内の奥側に押し込まれている旨の警告を判定結果として生成する。これにより、イヤホン1は、イヤーピース7の装着位置が奥側に行き過ぎる場合でも、3軸方向のそれぞれのパラメータの大小関係によりその状況を検知することができるので、適切なイヤーピース7の位置調整をユーザに提示することができる。
【0074】
また、実施の形態1のイヤホン1では、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも+6dB(第1所定値の一例)より小さくかつこの値より小さい-6dB(第2所定値の一例)より大きいと判定した場合、イヤーピース7が耳介内の手前側に位置している旨の警告を判定結果として生成する。これにより、イヤホン1は、イヤーピース7の装着位置が手前側に行き過ぎる場合でも、3軸方向のそれぞれのパラメータの大小関係によりその状況を検知することができるので、適切なイヤーピース7の位置調整をユーザに提示することができる。
【0075】
また、実施の形態1のイヤホン1では、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータのうちいずれか1つが残り2つのパラメータよりも+6dB(第1所定値の一例)より小さくかつ-6dB(第2所定値の一例)より小さいと判定した場合、イヤーピース7のサイズが適していない旨の警告を判定結果として生成する。これにより、イヤホン1は、イヤーピース7のサイズがユーザの耳の形状に合わない場合でも、3軸方向のそれぞれのパラメータの大小関係によりその状況を検知することができるので、適切なイヤーピース7への交換をユーザに提示することができる。
【0076】
また、実施の形態1のイヤホン1では、加速度センサ6(センサの一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性を取得し、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性の取得結果に基づいて、イヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整もしくはスイープ信号の音量レベルの増減の有無を判定する。これにより、イヤホン1は、イヤホン1装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正して、ユーザの装着感の向上を支援することできる。
【0077】
また、実施の形態1のイヤホン1では、ドライバ4(放音部の一例)は、高域(例えば20~2kHz)の周波数帯を有するスイープ信号を放音する。これにより、イヤホン1は、イヤーピース7の耳介内での挿入位置の調整もしくはスイープ信号の音量レベルの増減の有無をより精度良く判定することができる。
【0078】
また、実施の形態1のイヤホン1では、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つと残り2つのパラメータの信号の周波数特性との差が+3dB(第3所定値の一例)より大きくかつ+6dB未満である(第4所定値の一例)と判定した場合、スイープ信号の音量レベルが所望値よりも大きい旨の警告を判定結果として生成する。これにより、イヤホン1は、スイープ信号の音量レベルが所望値よりも大きい場合でも、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性の大小関係によりその状況を検知することができるので、イヤホン1装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正することができる。
【0079】
また、実施の形態1のイヤホン1では、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つと残り2つのパラメータの信号の周波数特性との差が-3dB(第3所定値と異なるが等しい絶対値を有する第5所定値の一例)より小さくかつ-6dB(第4所定値と異なるが等しい絶対値を有する第6所定値の一例)より大きいと判定した場合、スイープ信号の音量レベルが所望値よりも小さい旨の警告を判定結果として生成する。これにより、イヤホン1は、スイープ信号の音量レベルが所望値よりも小さい場合でも、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性の大小関係によりその状況を検知することができるので、イヤホン1装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正することができる。
【0080】
また、実施の形態1のイヤホン1では、レベル・周波数特性検出部12(判定部の一例)は、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性のうちいずれか1つと残り2つのパラメータの信号の周波数特性との差が-6dB(第6所定値の一例)より小さいと判定した場合、イヤーピース7の耳介内での挿入位置がずれている旨の警告を判定結果として生成する。これにより、イヤホン1は、イヤーピース7の耳介内での挿入位置がずれている場合でも、3軸方向のそれぞれのパラメータの信号の周波数特性の大小関係によりその状況を検知することができるので、適切なイヤーピース7の位置調整をユーザに提示することができる。
【0081】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことはいうまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、適切なイヤーピースへの交換もしくは位置調整を提示したり、または装着時の音声出力を適切な周波数特性に補正したりして、ユーザの装着感の向上を支援することができるイヤホンおよび装着感調整方法として有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 イヤホン
2 イヤホン筐体
3 ハウジング
4 ドライバ(放音部の一例)
5 マイクロホン
6 加速度センサ(センサの一例)
7 イヤーピース
10 駆動制御回路
11 アナログ・デジタル変換部
12 レベル・周波数特性検出部(判定部の一例)
13 無線通信部(提示部の一例)
14 音量調整部
15 デジタル・アナログ変換部
16 アンプ部
P スマートフォン
図1
図2
図3
図4
図5