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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】締結体
(51)【国際特許分類】
   F16B 23/00 20060101AFI20241018BHJP
   B25B 13/50 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16B23/00 F
B25B13/50 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023209671
(22)【出願日】2023-12-12
(65)【公開番号】P2024094272
(43)【公開日】2024-07-09
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522295276
【氏名又は名称】木村 久道
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】木村 久道
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0019259(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0069317(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00
B25B 13/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周形状が円形の頭部と該頭部の一方側に設けられた雄ネジ部とを有する丸ボルト本体と、外周形状が円形で前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が貫通して設けられた丸ナット本体と、前記丸ボルト本体の頭部及び前記丸ナット本体の少なくとも一方に連結可能な六角形のアダプタと、を備え、
前記丸ボルト本体の前記頭部の端面及び前記丸ナット本体の端面にはそれぞれ係止凹部が設けられるとともに、前記アダプタには前記丸ボルト本体及び前記丸ナット本体の少なくとも一方の前記係止凹部と係脱可能な係止突起が設けられ、
前記係止凹部に前記係止突起を係止して連結した状態で前記アダプタを回転させることで、該アダプタと連結した前記丸ボルト本体及び丸ナット本体の少なくとも一方が前記アダプタと同時に回転するように構成した締結具セットを用いて複数の部材を締結した締結体であって、
前記丸ボルト本体が、前記複数の部材を貫通する貫通孔に一端部から貫通して配置されるとともに、他端部に配置された前記丸ナット本体と螺合し、
前記貫通孔の前記一端部には前記丸ボルト本体の頭部の厚さ以上の深さを有する頭部収容部が開口して設けられるとともに、前記他端部には前記丸ナット本体の厚さ以上の深さを有する丸ナット収容部が開口して設けられ、
前記頭部収容部には前記丸ボルト本体の前記頭部が収容されるとともに、前記丸ナット収容部には前記丸ナット本体が収容され、且つ、前記丸ボルト本体を前記複数の部材に埋め込んで前記丸ボルト本体及び前記丸ナット本体を表面に突起物として配置しないで締結した、締結体。
【請求項2】
前記締結具セットは、前記頭部及び前記丸ナット本体のそれぞれに連結可能な前記アダプタを備え、前記アダプタを前記丸ボルト本体と前記丸ナット本体とのそれぞれに連結した状態で支持及び回転可能である、請求項1に記載の締結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省資源化を図り、引張強度などの機械的性質の低下を抑えて部材と部材を締結できる締結具セットを用いて締結した締結体に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじは、電化製品、パソコン、携帯電話、自動車、鉄道、航空機、船舶、建築物、橋などのあらゆる身の回りで沢山使用されており重要な部品である。2020年の一般社団法人日本ねじ工業協会推計、輸出入:財務省貿易統計によると、国内のねじ生産実績は2,825,464トンである。
【0003】
ねじとして六角ボルト・六角ナットが多用されている。近年では丸ボルトや丸ナットなども使用されている。例えば特許文献1には、既存のスパナ等の工具を利用して、種々の外形の丸ナットの脱着を行なえるようにした丸ナット用工具のアダプタが記載されている。また非特許文献1には、二穴の丸ねじがいたずら防止ねじとして記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-224232号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】門田和雄著、トコトンやさしい「ねじの本」、日刊工業社(2010年6月初版発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
六角ボルト・ナットでは、大量の金属材料が使用されており省資源化を図られなければならない課題があった。また六角ボルト・ナットを用いて作製した締結体は、締結体の表面にボルトの頭、ナットの突起物が顕れ、製品の組み立て時に邪魔になること、製品が大きくなることなどの課題があった。突起物を無くすために、六角ボルト・ナットを部材の内部に収めようとすると、これらを締め付けるためのソケットレンチなどの工具が別途必要となり、またそのための大きな穴を開けなければならなくなって、締結体の引張強度などの機械的性質が大きく低下するという課題もあった。
【0007】
そこで本発明では、六角ボルト・ナットに代えて使用できると共に、省資源化を図ることができ、しかも締結体の表面に配置される突起物を無くして、引張強度などの機械的性質を確保し易くできる締結具セットを用いて締結した締結体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
記課題を解決する本発明の締結体は、外周形状が円形の頭部と頭部の一方側に設けられた雄ネジ部とを有する丸ボルト本体と、外周形状が円形で雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が貫通して設けられた丸ナット本体と、丸ボルト本体の頭部及び丸ナット本体の少なくとも一方に連結可能な六角形のアダプタと、を備え、丸ボルト本体の頭部の端面及び丸ナット本体の端面にはそれぞれ係止凹部が設けられるとともに、アダプタには丸ボルト本体及び丸ナット本体の少なくとも一方の係止凹部と係脱可能な係止突起が設けられ、係止凹部に係止突起を係止して連結した状態でアダプタを回転させることで、アダプタと連結した丸ボルト本体及び丸ナット本体の少なくとも一方がアダプタと同時に回転するように構成した締結具セットを用いて複数の部材を締結した締結体において、丸ボルト本体が、複数の部材を貫通する貫通孔に一端部から貫通して配置されるとともに、他端部に配置された丸ナット本体と螺合し、貫通孔の一端部には丸ボルト本体の頭部の厚さ以上の深さを有する頭部収容部が開口して設けられるとともに、他端部には丸ナット本体の厚さ以上の深さを有する丸ナット収容部が開口して設けられ、頭部収容部には丸ボルト本体の頭部が収容されるとともに、丸ナット収容部には丸ナット本体が収容され、且つ、丸ボルト本体が複数の部材に埋め込んだ状態で締結されることで、丸ボルト本体及び丸ナットが表面に突起物として配置されないように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易に六角ボルト・ナットに代えて使用できると共に、省資源化を図ることができ、締結体の表面に配置される突起物を無くして、引張強度などの機械的性質を確保し易くした締結具セットを用いて締結した締結体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による丸ボルトセット及び丸ナットセットからなる締結具セットを用いた締結体の断面図であり、アダプタを取り付けた状態を示す。
図2】本実施形態による丸ボルトセットの丸ボルト本体を示し、(a)は断面図、(b)は端面を示す平面図である。
図3】本実施形態による丸ボルトセットのアダプタを示し、(a)は断面図、(b)は端面を示す平面図である。
図4】本実施形態による丸ナットの丸ナット本体を示し、(a)は断面図、(b)は端面を示す平面図である。
図5】本実施形態による丸ボルトセットのアダプタを示し、(a)は断面図、(b)は端面を示す平面図である。
図6】本実施形態による締結体の断面図であり、アダプタを取り外した後の状態を示す。
図7】本実施形態による締結体を丸ボルト本体の頭部側から見た平面図である。
図8】本実施形態による締結体を丸ナット本体の頭部側から見た平面図である。
図9】(a),(b)は市販のM12×長さ50mmの六角ボルトの平面図と正面図、(c),(d)はM12の六角ナットの平面図と正面図、(e)は比較例1の締結体を作製するための部材の図、(f)は比較例1の締結体の外観写真である。
図10】(a),(b)は市販のM12×長さ30mmの六角ボルトの平面図と正面図、(c),(d)は六角ナットの平面図と正面図、(e)は比較例2の締結体を作製するための部材の正面図である。
図11】(a)は比較例2の締結体の外観写真、(b)はその上面の外観写真、(c)はその下面の外観写真である。
図12】(a),(b)は実施例の丸ボルト本体の平面図と正面図、(c),(d)は実施例の丸ナット本体の正面図と平面図である。
図13】(a)はM12×長さ30mmの実施例の丸ボルト本体及び丸ナット本体を組み合わせた状態を示す外観写真、(b)は二穴丸ボルト本体の頭部の上面の外観写真、(c)は二穴丸ナット本体の下面の外観写真である。
図14】(a),(b)は実施例に使用する市販のM16×長さ30mmの六角ボルトの平面図と正面図、(c),(d)は(a),(b)に示す六角ボルトから作製した六角板の平面図と正面図である。
図15】(a),(b)は実施例の二穴丸ボルト用六角締め付けアダプタを作製するための丸棒の平面図と正面図、(c),(d)は実施例の二穴丸ナット用六角締め付けアダプタを作製するための丸棒の平面図と正面図である。
図16】実施例の二穴丸ボルト用六角締め付けアダプタの外観写真、(b)は二穴丸ナット用六角締め付けアダプタの外観写真である。
図17】実施例の締結体を作製するための部材の正面図である。
図18】実施例の締結体の外観写真で、(b)はその上面の外観写真、(c)はその下面の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。本発明の範囲は実施形態に限定されることなく適宜変更することができる。特に、図面に記載した各部品の形状、寸法、位置関係などについては概念的な事項又は一例を示すに過ぎず、その適用場面に応じて任意に変更することができる。各図において、同一の又は対応する部品などには同一の符号を付している。
【0015】
図1は、本実施形態の締結具セットを用いて構成された締結体を示している。締結体10は、締め付け対象の複数の部材12,13を締結具セット11により締結した構造を有する。締結具セット11は、丸ボルトセット20と丸ナットセット30とを備える。
【0016】
本実施形態の丸ボルトセット20は、図2(a),(b)に示す丸ボルト本体21と、図3(a),(b)に示す六角形のボルトアダプタ22と、を備える。丸ボルト本体21は、厚みの薄い円柱形状を有する頭部23と、頭部23の一方側から軸L方向に突出して設けられた雄ネジ部24と、を有する。
【0017】
丸ボルト本体21の頭部23は、必要な強度を確保可能な厚さで円柱形状に形成されている。頭部23の雄ネジ部24とは他方側の端面は軸Lに対して直交する平面に形成されている。この端面には、ボルトアダプタ22と連結するための係止凹部として、複数の穴23aが設けられている。本実施形態では、軸Lに沿う断面円形の2つの穴23aが軸Lを介して対称となる位置に設けられている。
【0018】
ボルトアダプタ22は、締め付け時の強度を確保できる厚さの6角柱形状のボルト駒部25と、ボルト駒部25の一端面から軸方向に突出して設けられて、頭部23の穴23aと係脱可能な複数の突起25aと、を有している。ボルトアダプタ22の六角形の外形形状は丸ボルト本体21の円形の頭部23より大きくても小さくてもよく、用途に応じて適宜設定できる。
【0019】
ボルト駒部25の一端面は軸Lに対して直交する平面に形成され、この平面と直交するように複数の突起25aが軸Lに沿って設けられる。本実施形態では、2つの突起25aが軸Lを介して対称となる位置に、軸Lと平行に設けられている。この2つの突起25aは頭部23の2つの穴23aと同一ピッチで設けられ、それぞれ穴23aと係脱可能に形成される。
【0020】
ボルトアダプタ22は丸ボルト本体21の頭部23と連結及び離脱可能である。ボルトアダプタ22を丸ボルト本体21の頭部23に対して軸L方向に重ね合わせることで、ボルトアダプタ22の2つの突起25aが頭部23の二つの穴23aに係止し、ボルトアダプタ22の一端面を頭部23の端面に当接させて連結することができる。頭部23の穴23aに突起25aを係止して連結した状態でボルトアダプタ22を回転させることで、丸ボルト本体21をボルトアダプタ22と同時に回転させることができる。一方、ボルトアダプタ22を把持して丸ボルト本体21の頭部23に対して離間するように軸L方向に移動させることで容易に離脱することができる。
【0021】
本実施形態の丸ナットセット30は、図4(a),(b)に示す丸ナット本体31と、図5(a),(b)に示すナットアダプタ32と、を備える。丸ナット本体31は、厚みの薄い円柱形状の外形を有し、中心部に雄ネジ部24と螺合可能な貫通した雌ネジ部34が設けられる。
【0022】
丸ナット本体31は、締結時の強度を確保可能な厚さに形成され、一端面が軸Lに対して直交する平面に形成される。この一端面には、ナットアダプタ32と連結するための係止凹部としての複数の穴31aが設けられる。本実施形態では、2つの穴31aが軸Lを介して対称となる位置に、軸Lに沿って設けられている。
【0023】
ナットアダプタ32は、締め付け時の強度を確保できる厚さの薄肉の六角柱形状を有するナット駒部33と、ナット駒部33の一端面から軸L方向に突出して設けられ丸ナット本体31の穴23aと係脱可能な複数の突起33aと、を有する。ナットアダプタ32の外形形状は丸ナット本体31の円形より大きくても小さくてもよく、用途に応じて適宜設定できる。
【0024】
ナット駒部33の一端面は軸Lに対して直交する平面に形成され、複数の突起33aはこの平面と直交するように軸Lに沿って設けられる。本実施形態では、2つの突起33aが軸Lを介して対称となる位置に、軸Lに沿って設けられる。この2つの突起33aは丸ナット本体31の2つの穴31aと同一ピッチで設けられ、それぞれ穴31aと係脱可能に形成されている。
【0025】
ナットアダプタ32は丸ナット本体31と連結及び離脱可能である。ナットアダプタ32を丸ナット本体31に対して軸L方向に重ね合わせることで、ナットアダプタ32の2つの突起33aが丸ナット本体31の2つの穴31aに係止し、ナットアダプタ32の一端面を丸ナット本体31の端面に当接させて連結することができる。このように丸ナット本体31の穴31aに突起33aを係止して連結した状態でナットアダプタ32を回転させることで、丸ナット本体31を同時に回転することができ、一方、ナットアダプタ32を把持して丸ナット本体31に対して離間するように軸L方向に移動させることで容易に離脱することができる。
【0026】
このような締結具セット11を用いて締結体10を作製するには、予め締め付け対象となる複数の部材12,13を貫通するよう貫通孔14を設けておき、図1に示すように、この貫通孔14を利用して締結具セット11を装着して締結する。貫通孔14の一端部には、貫通孔14の中間部及び頭部23より大径で、頭部23の厚さ以上の深さを有する頭部収容部14aを開口して設けるとともに、貫通孔14の他端部には、貫通孔14の中間部及び丸ナット本体31より大径で、丸ナット本体31の厚さ以上の深さを有する丸ナット収容部14bを開口して設けておく。
特に限定されるものではないが、頭部収容部14aと頭部23との間のクリアランス及び丸ナット収容部14bと丸ナット本体31との間のクリアランスを、頭部収容部14a及び丸ナット収容部14bの穴の直径の10%以内の範囲としてもよい。
【0027】
丸ボルト本体21をこの貫通孔14に一端部から貫通して配置し、雄ネジ部24を他端部の丸ナット収容部14bに到達させて、他端部に配置された丸ナット本体31と螺合させる。丸ボルト本体21の頭部23にボルトアダプタ22を装着するとともに、丸ナット本体31にナットアダプタ32を装着する。各アダプタ22,32は予め装着しておいてもよい。
【0028】
そして、頭部23の各穴23aに各突起25aを係止して連結した状態で、一般的な六角レンチやスパナによりボルトアダプタ22を支持して回転させる。これによりボルトアダプタ22を連結した丸ボルト本体21が同時に回転する。また、丸ナット本体31の穴31aに突起33aを係止して連結した状態で、一般的な六角レンチやスパナによりナットアダプタ32を支持して回転させる。これによりナットアダプタ32を連結した丸ナット本体31が同時に回転する。
このようにして丸ボルト本体21の雄ネジ部24と丸ナット本体31の雌ネジ部34とを強く螺合させて締め込むことで、複数の部材12,13を容易に締結することができ、締結体10を作製することができる。
【0029】
締結後は、ボルトアダプタ22を把持し、丸ボルト本体21の頭部23に対して軸L方向に移動させることで離脱させるとともに、ナットアダプタ32を把持し、丸ナット本体31に対して軸L方向に移動させることで離脱させる。図6乃至図8に示すように、頭部収容部14aに頭部23が完全に収容され、且つ、丸ナット収容部14bに丸ナット本体31が完全に収容されることで、表面に配置される突起物が無い締結体10を作製することができる。
【0030】
上記した本実施形態の締結具セットによれば、丸ボルトセット20において、丸ボルト本体21の円形の頭部23に設けられた複数の穴23aに六角形のボルトアダプタ22の複数の突起25aを係止して連結でき、連結した状態でボルトアダプタ22を回転させれば丸ボルト本体21を同時に回転させることができる。従って、市販されている六角レンチやスパナによりボルトアダプタ22を支持して回転させることで、丸ボルト本体21を回転させることができ、六角ボルトと同様に使用できる。
しかも丸ボルト本体21を部材12,13に埋め込んで締結する場合でも、頭部23に係脱可能なボルトアダプタ22だけを外側に突出させれば、ソケットレンチやボックスレンチ等を用いることなく、六角レンチやスパナにより回転させることができる。
【0031】
また丸ボルト本体21を締め込むときや緩めるときにボルトアダプタ22を頭部23に連結できればよく、締結状態などではボルトアダプタ22を丸ボルト本体21から取り外しておくことができる。そのため同じボルトアダプタ22を多数の丸ボルト本体21に共通に使用でき、六角形でしかも厚肉の頭部23をそれぞれのボルトに設ける必要がない。しかもボルトアダプタ22は消耗品では無く、壊れるまで繰り返し使用できるので、各種の締結体に使用される丸ボルト本体の数に比べてボルトアダプタ22の数を大幅に少なくできるため、省資源化を図ることができる。
【0032】
一方、丸ナットセット30においても同様に、丸ナット本体31に設けられた複数の穴31aに六角形のナットアダプタ32の複数の突起33aを係止して連結でき、連結した状態でナットアダプタ32を回転させれば、丸ナット本体31を同時に回転させることができる。そのため一般的に使用されている六角レンチやスパナによりナットアダプタ32を支持して回転させることで、丸ナット本体31を回転させることができ、六角ナットと同様に使用できる。しかも丸ナット本体31を部材12,13に埋め込んで締結する場合でも、ナットアダプタ32だけを外側に突出させれば、ソケットレンチやボックスレンチ等を用いることなく、六角レンチやスパナにより回転させることができる。
【0033】
また丸ナット本体31を締め込むときや緩めるときにナットアダプタ32を連結できればよく、締結状態などではナットアダプタ32を丸ナット本体31から取り外しておくことができる。従って同じナットアダプタ32を多数の丸ナット本体31に共通に使用でき、ナット全体を六角形でしかも厚肉に形成する必要がない。しかもナットアダプタ32は消耗品では無く壊れるまで繰り返し使用できる。これにより各種の締結体に使用される丸ナットの数に比べてナットアダプタ32の数を大幅に少なくできるため、省資源化を図ることができる。
【0034】
さらにこれらの丸ボルトセット20と丸ナットセットからなる締結具セットを用いた締結体によれば、丸ボルト本体21を部材12,13に埋め込んで締結する場合には、頭部23の厚さ以上の深さで頭部23とボルトアダプタ22とを連結した状態の厚さより浅い頭部収容部14aを設けておけば、頭部23に係止したボルトアダプタ22を頭部収容部14aの外側に突出させた状態で配置できる。ボルトアダプタ22を回転させて締め付けた後には、ボルトアダプタ22を頭部23から離脱させれば、容易に丸ボルト本体21を埋め込んだ締結体10を形成でき、締結体10の表面に配置される突起物を容易に無くすことができる。
【0035】
しかも頭部23が円形のため、頭部収容部14aを円形の頭部23に対応した大きさの丸穴23aとして形成でき、六角ボルトの頭部23にソケットレンチやボックスレンチ等を連結した状態で回転できるような大きな丸穴23aを設ける必要がない。従って六角ボルトを用いる場合に比べて丸穴23aの直径を格段に小さくできるとともに深さも浅くでき、締結体10の引張強度などの機械的性質を確保することが可能である。
【0036】
一方、丸ナットセット30においても同様に、丸ナット本体31を部材12,13に埋め込んで締結する場合、丸ナット本体31の厚さ以上の深さで丸ナット本体31とナットアダプタ32とを連結した状態の厚さより浅い丸ナット収容部14bを設けておけば、丸ナット本体31に係止したナットアダプタ32を丸ナット収容部14bの外側に突出させた状態で配置できる。ナットアダプタ32を回転させて締め付けた後は、ナットアダプタ32を丸ナット本体31から離脱させれば、容易に丸ナット本体31を埋め込んだ締結体10を形成でき、締結体10の表面に配置される突起物を容易に無くすことができる。
【0037】
しかも丸ナット本体31が円形のため、丸ナット収容部14bを円形の丸ナット本体31に対応した大きさの丸穴31aとして形成でき、六角ナットにソケットレンチやボックスレンチ等を連結した状態で回転できるような大きな丸穴31aを設ける必要がない。よって六角ナットによる場合に比べて丸穴31aの直径を格段に小さくできるとともに深さも浅くでき、締結体10の引張強度などの機械的性質を確保することが可能である。
【0038】
その結果、本実施形態の丸ボルトセット20及び丸ナットセット30の少なくとも一方を用いた締結具セット11によれば、容易に六角ボルトや六角ナットに代えて使用できるとともに省資源化を図ることができる。しかもこのような締結具セット11を用いた締結体10によれば、表面に配置される突起物を無くすことができ、引張強度などの機械的性質を確保し易くすることが可能である。
【0039】
なお上記実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば上記実施形態では、丸ボルトセット20と丸ナットセット30とを用いて締結体10を構成した例について説明したが、特に限定されるものではない。例えば丸ボルトセット20と丸ナット本体31と同様の構成の丸ナットを用いて締結体10を構成してもよく、逆に丸ナットセット30と丸ボルト本体21と同様の構成の丸ボルトを用いて締結体10を構成してもよい。
【0040】
これらを用いて部材12,13を締結する際は、アダプタ22,32が連結された丸ボルト本体21又は丸ナット本体31には、六角レンチやスパナをアダプタ22,32に係止して回転方向の力を与えることができる。一方、アダプタ22,32が連結されない丸ボルト又は丸ナットは、複数の穴23aと係止可能な工具により直接丸ボルト又は丸ナットに回転方向の力を与えることができる。いずれにおいても、締め付け対象の部材12,13を締結した後、アダプタ22,32を取り外すことで、図6乃至図8に示す締結体10を得ることができる。
【0041】
上記実施形態では丸ボルト本体21と丸ナット本体31とを螺合して締結する構造について説明したが、丸ボルト本体21を雌ネジ部が設けられた部材に螺合させる場合に上述の丸ボルトセット20を用いてもよい。また六角ボルトを用いて締め付け対象の部材を締結する際に丸ナットセット30を用いることも可能である。これらの場合でも本発明を適用することは可能である。
【0042】
さらに上記実施形態では、丸ボルト本体21及びボルトアダプタ22とには互いに対応した断面円形の突起25a及び穴23aを設け、また丸ナット本体31及びナットアダプタ32とには互いに対応した断面円形の突起33a及び穴31aを設けた例について説明したが、それぞれ互いに係脱可能であって係止状態で回転力が伝達可能であれば、これらの形状は特に限定されない。例えば係止凹部として、すりわり、十字穴及び六角穴等の穴と、これらに対応した形状の突起とにより構成することも可能である。
上記実施形態では、丸ボルト本体21の頭部23の直径と丸ナット本体31の直径とを略同等に形成し、ボルトアダプタ22の六角形の大きさとナットアダプタ32の六角形との大きさを略同等に形成したもので説明したが、これらの大きさは特に限定されるものではなく、互いに異なっていてもよい。
さらに上記では、丸ボルト本体21の穴23a及びボルトアダプタ22の突起25aと、丸ナット本体31の穴31a及びナットアダプタ32の突起33aとの軸Lに対する位置及び大きさが互いに異なるものを例に説明したが、互いに同じにすることも可能である。これらの位置や大きさは、丸ボルト本体21の穴23aとボルトアダプタ22の突起25aとの位置及び大きさが対応するとともに、丸ナット本体31の穴31aとナットアダプタ32の突起33aとの位置及び大きさが対応すれば、任意に設定可能である。
【実施例
【0043】
次に本発明の実施例及び比較例を用いて説明する。
[比較例1]
図9(a),(b)に示す市販のM12(ねじ山の外径12mm)×長さ50mmの六角ボルト1と図9(c),(d)に示す六角ナットを使用した。図9(e)に示す40mm×40mm×40mmのアルミニウムブロック(部材12)及び40mm×40mm×40mmの銅ブロック(部材13)に、六角ボルト1を通す貫通孔8を設けた。部材12と部材13をM12×長さ50mmの六角ボルト1及びナット5を使用して、図9(f)の写真に示すような締結体を作製した。六角ボルト1を通す貫通孔8の外径が12mmよりも0.2mm大きくなっているのは、六角ボルト1が通り易くするためである。締結体の上面には六角ボルト1の頭部2、下面には六角ナット5の突起物が明瞭に観察された。これらは他の部品との組み立て時に邪魔になること、製品を大きくなることなどの課題があった。今回使用した市販のM12×長さ50mmの六角ボルト1及びナット5の重量は70gであった。
【0044】
[比較例2]
次に、比較例1に示す課題を解決するために、比較例1の六角ボルトの長さよりも20mm短い市販のM12×長さ30mmの六角ボルト1を使用し、これらを部材12及び13の内部に収めて締結体を作製した。
【0045】
図10(a),(b)及び図10(c),(d)は、図9(f)に示す突起物を無くすために使用した市販のM12×長さ30mmの六角ボルト1及びナット5の図面である。この六角ボルト1の長さは30mmであり、図9(a),(b)に示す六角ボルトの長さよりも20mm短くなっている。これは、重量が減少していることも示しており省資源化が図られたことになる。図10(e)は、部材12及び13の内部にM12×長さ30mmの六角ボルト1及びナット5を収めるための部材12及び部材13の図面である。
【0046】
部材12には、六角ボルト1の頭の対角距離22mmと、六角ボルト1を締め付けるために使用する市販のソケットレンチが挿入される幅4mmと、これらを収め易くするための隙間0.2mmを足した直径26.2mmで、六角ボルトの頭の厚さ8mmが収まる穴8aを設けてある。
【0047】
部材13には、六角ナット5の対角距離22mmと、ナット5を締め付けるために使用する市販のソケットレンチが挿入される幅4mmと、これらを収め易くするための隙間0.2mmを足した直径26.2mで、六角ナット1の厚さ10mmが収まる穴8bを設けてある。また部材12及び13の中央部には六角ボルトを通す直径12.2mmの貫通孔を設けてある。穴8a及び穴8bと貫通孔8の体積は12.269mmである。
【0048】
図11(a)は、図10(a),(b)に示す市販のM12×長さ30mmの六角ボルト1及び図10(c),(d)に示すナット5を使用して、部材12及び13を市販のソケットレンチで締め付け作製した締結体の外観写真であり、図11(b)はその上面、図11(c)はその下面の外観写真である。
【0049】
締結体には突起物が観察されないが、上面及び下面の内部には外径26.2mmの大きな穴8a、8bが観察される。これらは締結体の引張強度などの機械的性質を悪くする課題がある。なお、図10(a),(b)に示すM12×長さ30mmの六角ボルト1及び図10(c),(d)に示すナット5の重量は55gであり、図9(a),(b)に示すM12×長さ50mmの六角ボルト1及びナット5の重量70gよりも15g軽くなっている。これはM12×長さ30mmの六角ボルト1及びナット5を使用して作製した締結体が、比較例1に比べて省資源化できていることを示している。
【0050】
[本発明による実施例]
図12(a),(b)及び図12(c),(d)は、比較例1、2の課題を解決するために、図10(a),(b)に示すM12×長さ30mmの六角ボルト1及びナット5の六角形の部分を切削加工して作製したM12×30mmの丸ボルト本体21及び丸ナット本体31の図である。これらの外径は、それぞれ18mmであり、M12×長さ30mmの六角ボルト1及びナット5の対角距離22mmよりも、それぞれ4mm短くなっている。これは、六角ボルトの六角の部分を切削加工することによって、重量が軽くなり省資源化できていることを示している。
【0051】
図13(a)は、図12(a),(b)及び図12(c),(d)に示すM12×30mmの丸ボルト本体21及び丸ナット本体31に、二穴を設けることで作製したM12×30mmの二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体31の外観写真である。図13(b)は二穴丸ボルト本体21の頭部23の外観写真であり、図13(c)は二穴丸ナット本体31の外観写真である。これらの二穴を使用して、部材12及び13の締結体10が作製できるようになっている。
【0052】
なお、M12×30mmの二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体31の重量は48gで、M12×長さ30mmの六角ボルト1及びナット5の重量55gよりも7g軽くなっている。これはM12×30mmの二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体31を使用して作製した締結体が、比較例1,2に比べて省資源化できていることを示している。
【0053】
次に、部材12及び13の内部に収めたM12×30mmの二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体31を締め付けるために必要なボルトアダプタ22及びナットアダプタ32を作製した。
【0054】
図14(a),(b)は、ボルトアダプタ22及びナットアダプタ32を作製するために使用した市販のM16×30mmの六角ボルト、図14(c),(d)、図14(a),(b)に示す長さ30mmの部分を全て切断して残った頭部23を、平面加工で作製した高さ9mmの六角板の図である。
図15(a),(b)は、図13(b)に示すM12×30mmの二穴丸ボルト本体21の穴23aに適合する丸棒の図面であり、図15(c),(d)は、図13(c)に示すM12二穴丸ナット本体31の穴31aに適合する丸棒の図である。
【0055】
図16(a)は、二穴丸ボルト用六角締め付けアダプタ(ボルトアダプタ22)である。これは、図14(c),(d)に示す六角板に、図15(a),(b)に示す外径7mmの丸棒が貫通する穴を設けてから、これに丸棒をかしめて作製した。図16(b)は、二穴丸ナット用六角締め付けアダプタ(ナットアダプタ32)である。これは、図14(c),(d)に示す六角板に、図15(c),(d)に示す外径2mmの丸棒が貫通する穴を設けてから、これに丸棒をかしめて作製した。
【0056】
次に、図13(a)-(c)に示すM12×30mmの二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体31と図16(a),(b)に示すボルトアダプタ22及びナットアダプタ32の各セットで、部材12及び13の締結体10を作製する。
【0057】
図17は、図13(a)-(c)に示すM12×長さ30mmの二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体31を部材12及び13の内部に収めるための貫通孔14の図である。二穴丸ボルト本体21及び二穴丸ナット本体を収める貫通孔14の頭部収容部14a及び丸ナット収容部14bの外径はそれぞれ18.2mmであり、図10(e)に示す外径26.2mmの穴8a,8bよりも、それぞれ8mm小さくなっている。これは、締結体の引張強度などの機械的性質が良くなることを示している。
【0058】
図17は、二穴丸ボルト本体21及び丸ナット本体31とボルトアダプタ22及びナットアダプタ32とのセットを用いて作製した締結体10である。締結体10は、図13(a)-(c)に示すM12×長さ30mmの二穴丸ボルト本体21及び丸ナット本体31を、部材12及び部材13の貫通孔14及び頭部収容部14a及び丸ナット収容部14bに収めてから、二穴丸ボルト本体21の頭部23と丸ナット本体31とに設けた穴23a,31aに、図16(a),(b)に示す丸ボルト・ナット用六角締め付けアダプタ(ボルトアダプタ22、ナットアダプタ32)を差し込み、これらを市販のスパナで締め付けることによって作製した。図18(b)は、締結体10の上面であり、二穴丸ボルト本体21の頭部23は部材12と隙間なく配置されて締め付けられていた。図18(c)は、締結体10の下面であり、二穴丸ナット本体31は部材13と隙間なく配置されて締め付けられていた。
【0059】
なお、図18(c)に示す締結体10の頭部収容部14aと丸ナット収容部14bと貫通孔14を足した体積は7,250mmであり、比較例2の図10(e)に示す締結体の穴8aと穴8bと貫通孔8を足した体積の12,269mmよりも5,019mm小さくなっている。これは、実施例のM12×長さ30mmの二穴丸ボルト本体21及び丸ナット本体31と二穴丸ボルト・ナット用六角締め付けアダプタ(ボルトアダプタ22及びナットアダプタ32)とのセットで作製した締結体10の引張強度などの機械的性質が、六角ボルト1及びナット5と市販のソケットレンチで作製した締結材よりも良くなっていることを示している。
【0060】
実施例のM12×長さ30mmの二穴丸ボルト本体21及び丸ナット本体31及び二穴丸ボルト・ナット六角締め付けアダプタ(ボルトアダプタ22及びナットアダプタ32)は、市販のM12×50mmのボルト及びナット、M12×30mmのボルト及びナット及びM16×30mmボルトを使用して作製しているが、一般的な金属材料の塑性加工や切削加工の技術によっても作製してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 締結体
11 締結具セット
12,13 部材
14 貫通孔
14a 頭部収容部
14b 丸ナット収容部
20 丸ボルトセット
21 丸ボルト本体
22 ボルトアダプタ
23 頭部
23a 穴
24 雄ネジ部
25 ボルト駒部
25a 突起
30 丸ナットセット
31 丸ナット本体
31a 穴
32 ナットアダプタ
33 ナット駒部
33a 突起
34 雌ネジ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
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