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特許7573226励起応答測定方法、電気インピーダンストモグラフィ方法および保存媒体
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  • 特許-励起応答測定方法、電気インピーダンストモグラフィ方法および保存媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】励起応答測定方法、電気インピーダンストモグラフィ方法および保存媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0536 20210101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B5/0536
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023512478
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2021113157
(87)【国際公開番号】W WO2022037598
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】202010850613.X
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521441032
【氏名又は名称】北京華睿博視医学影像技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HUARUI BOSHI MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 10, 2nd Floor, Room 213 No.9 Tianfu Street, Daxing District Beijing 102609 China
(73)【特許権者】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1 Qinghuayuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】管 明涛
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲キン▼
(72)【発明者】
【氏名】林 智超
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-503989(JP,A)
【文献】国際公開第2010/126827(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0255795(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111343918(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの電極ストリップを含み且つ各電極ストリップが複数の電極を含む電気インピーダンストモグラフィ装置に適用される、励起応答測定方法であって、
前記少なくとも二つの電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間の各電極ストリップの測定電極対の電圧差を測定し、ここで、前記励起電極対は、同じ電極ストリップの複数の電極から選択され、前記測定電極対は、同じ電極ストリップ中の励起電極対以外の電極から選択される段階と、
測定電極対上の電圧差に対して離散フーリエ変換を実行して、前記電圧差に対応する周波数領域シグナルを取得する段階と、
異なる電極ストリップの励起周波数に応じて、隣接する二つの励起周波数の中間値を順次に選択して周波数領域シグナルの境界周波数として使用する段階と、
境界周波数に従って、前記電圧差に対応する周波数領域シグナルを分離する段階と、
分離後の周波数領域シグナルに対して逆離散フーリエ変換を実行して、異なる周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差を取得する段階と、
前記異なる周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差を電気インピーダンストモグラフィデータとして使用する段階とを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記指定された周波数範囲の上限値と下限値との間の差値を下限値で割って、得られた商値は、20%を超えないことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも二つの電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間の各電極ストリップの測定電極対の電圧差を測定する前記段階は、
各電極ストリップから励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択する第1の段階と、
すべての電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間のすべての測定電極対の電圧差を測定して、すべての測定電極対の電圧差を取得する第2の段階と、
第1の段階に従って、各電極ストリップの複数の電極から励起電極対およびそれに対応する測定電極対を複数回選択し、各電極ストリップ上の励起電極対が当該電極ストリップ上の電極を巡回するまで、第2の段階に従って、毎回選択された励起電極対およびそれに対応する測定電極対を測定し、ここで、毎回選択された励起電極対は、互いに異なる第3の段階と、を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記各電極ストリップから励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択する段階は、
各電極ストリップから励起電極対のグループをそれぞれ選択する段階と、
選択された励起電極対のグループごとに対して、それが属する電極ストリップの複数の電極において、当該励起電極対のグループ以外の電極を複数の測定電極対に分けて、当該励起電極対のグループに対応する測定電極対として使用する段階と、を含むことを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
隣接電極法、対向電極法および交差電極法のいずれかの方法に従って、各電極ストリップから励起電極対のグループをそれぞれ選択することを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
隣接電極法、対向電極法および交差電極法のいずれかの方法に従って、当該励起電極対のグループが属する電極ストリップの複数の電極において、当該励起電極対のグループ以外の電極を複数の測定電極対に分けることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
異なる電極ストリップで同じ瞬間に励起された励起電極対は、測定対象領域の周囲の空間位置に対して上下に対応して分布される段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項8】
電気インピーダンストモグラフィ方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の励起応答測定方法に基づいて、電気インピーダンストモグラフィデータを取得する段階と、
電気インピーダンストモグラフィデータに基づいて、測定対象領域内の電気インピーダンスイメージングを再構成する段階と、を含むことを特徴とする、
電気インピーダンストモグラフィ方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の励起応答測定方法、または請求項に記載の電気インピーダンストモグラフィ方法を実現するためのコンピュータープログラムを保存する、
保存媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2020年8月21日に出願された「励起応答測定方法、電気インピーダンストモグラフィ方法および保存媒体」という名称の中国特許出願CN202010850613.Xの優先権を主張し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、生物医学的電気インピーダンストモグラフィの技術分野に属し、具体的には、励起応答測定方法、電気インピーダンストモグラフィ方法および保存媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
電気インピーダンストモグラフィ(Electrical Impedance Tomography、EIT)は、測定対象生体の電気インピーダンス特性を使用してイメージングを行う非侵襲的な生物医学的イメージング技術であり、それは、生体の表面に安全な電流を印加して表面電圧を測定し、生体内の電気インピーダンス分布図を再構成する。人体の各組織や臓器間の電気インピーダンス特性は、大きく異なり、且つ同じ組織電気インピーダンス特性も異なる条件下で変化するため、電気インピーダンストモグラフィ技術を使用して、再構成された画像は、より高いコントラストを有し、対測定対象生体を長時間モニタリングすることができる。生物医学的電気インピーダンストモグラフィは、高解像度、低コスト、ポータブルデバイス、無放射線およびリアルタイムモニタリング等の利点を有し、幅広い適用の可能性がある。
【0004】
人体に三次元電気インピーダンストモグラフィを実行する場合、励起電流は、測定面だけでなく、立体空間にも伝道する。従って、イメージング部位(例えば、胸腔)の周囲に等間隔でいくつかの電極ストリップを配置する必要があり、各電極ストリップに均等または不均一に同じ数の電極を分布する。三次元電気インピーダンスイメージング再構成に必要な測定データを取得するために、現在、順次励起-測定法が一般的に使用される。二つの電極ストリップを例として(例えば、1に示されるように)、異なる着用位置に応じて、上部電極ストリップ1および下部電極ストリップ2に分けられ、各電極ストリップには、16個の電極がある。励起電極対および測定電極対の選択は、隣接電極法を例に挙げる。具体的には、まず、上部電極ストリップ1の電極11および電極12に励起電流を印加して準定常状態の電流場を確立し、次いで電極ストリップ1上の電極13と電極14との間および電極ストリップ2上の電極23と電極24との間の電圧差を同時に測定する。励起を変えずに、測定電極対が電極ストリップ1上の電極116および電極115ならびに電極ストリップ2上の電極216および電極215になるまで、同じ方法で上部および下部の電極ストリップの対応する測定電極対を時計回りに順次に測定して、電極11および電極12によって励起された時の一連の測定データを取得する。次に、電極ストリップ1上の隣接する電極対を励起電極として時計回りに順次に選択し、励起電極対が電極11および電極116になるまで、上記の操作を繰り返して、上部電極ストリップによって励起された時の上部および下部の電極ストリップの測定データを取得する。同じ方法で下部電極ストリップ2上の電極対を励起し、最終的に、上部電極ストリップ励起時の上部電極ストリップの測定データ、上部電極ストリップ励起時の下部電極ストリップの測定データ、下部電極ストリップ励起時の上部電極ストリップの測定データおよび下部電極ストリップ励起時の下部電極ストリップの測定データ等の四つのグループのデータを取得する。当該方法における励起電極対および測定電極対の選択は、隣接電極法に限定されず、複数の電極ストリップの場合に容易に拡張することができる。
【0005】
しかしながら、上記の従来の順次励起-測定方法は、測定プロセス中に単一の励起を使用し、時間がかかり、三次元電気インピーダンストモグラフィのリアルタイム測定要件を満たすことができない。
【発明の概要】
【0006】
本開示で解決しようとする技術的問題は、従来の順次励起-測定方法が測定プロセス中に単一の励起を使用し、時間がかかり、三次元電気インピーダンストモグラフィのリアルタイム測定要件を満たすことができないことである。
【0007】
上記の問題に対して、本開示は、励起応答測定方法、電気インピーダンストモグラフィ方法および保存媒体を提供する。
【0008】
第1の態様において、本開示は、少なくとも二つの電極ストリップを含み且つ各電極ストリップが複数の電極を含む電気インピーダンストモグラフィ装置に適用される、励起応答測定方法を提供する。
【0009】
前記励起応答測定方法において、少なくとも二つの電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間の各電極ストリップの測定電極対の電圧差を測定する。励起電極対は、同じ電極ストリップの複数の電極から選択され、測定電極対は、同じ電極ストリップ中の励起電極対以外の電極から選択される。測定された測定電極対の電圧差を異なる励起電流周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差に分離し、電気インピーダンストモグラフィデータとして使用する。
【0010】
好ましくは、指定された周波数範囲の上限値と下限値との的差値を下限値に割って、得られた商値は、20%を超えない。
【0011】
好ましくは、前記少なくとも二つの電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間の各電極ストリップの測定電極対の電圧差を測定する段階は、次のような三つの段階をさらに含む。
【0012】
第1の段階において、各電極ストリップから励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択する。
【0013】
第2の段階において、すべての電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間のすべての測定電極対の電圧差を測定して、すべての測定電極対の電圧差を取得する。
【0014】
第3の段階において、上記の第1の段階に従って、各電極ストリップの複数の電極から励起電極対およびそれに対応する測定電極対を複数回選択し、各電極ストリップ上の励起電極対が当該電極ストリップ上の電極を横切るまで、上記の第2の段階に従って、毎回選択された励起電極対およびそれに対応する測定電極対を測定し、毎回選択された励起電極対は、互いに異なる。
【0015】
好ましくは、各電極ストリップから励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択する段階は、各電極ストリップから励起電極対のグループをそれぞれ選択する段階と、および選択された励起電極対のグループごとに対して、それが属する電極ストリップの複数の電極において、当該励起電極対のグループ以外の電極を複数の測定電極対に分けて、当該励起電極対のグループに対応する測定電極対として使用する段階とをさらに含む。
【0016】
好ましくは、隣接電極法、対向電極法および交差電極法のいずれかの方法に従って、各電極ストリップから励起電極対のグループをそれぞれ選択する。
【0017】
好ましくは、隣接電極法、対向電極法および交差電極法のいずれかの方法に従って、当該励起電極対のグループ属する電極ストリップの複数の電極において、当該励起電極対のグループ以外の電極を複数の測定電極対に分ける。
【0018】
好ましくは、異なる電極ストリップで同じ瞬間に励起された励起電極対は、測定対象領域の周囲の空間位置に対して上下に対応して分布される。
【0019】
好ましくは、測定された測定電極対の電圧差を異なる励起電流周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差に分離する段階は、測定電極対上の電圧差に対して離散フーリエ変換を実行して、電圧差に対応する周波数領域シグナルを取得する段階と、異なる電極ストリップの励起周波数に応じて、隣接する二つの励起周波数の中間値を順次に選択して周波数領域シグナルの境界周波数として使用する段階と、境界周波数に従って、電圧差に対応する周波数領域シグナルを分離する段階と、ならびに分離後の周波数領域シグナルに対して逆離散フーリエ変換を実行して、異なる周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差を取得する段階とをさらに含む。
【0020】
第2の態様において、本開示は、上記の的励起応答測定方法に基づいて、電気インピーダンストモグラフィデータを取得する段階と、ならびに電気インピーダンストモグラフィデータに基づいて、測定対象領域内の電気インピーダンスイメージングを再構成する段階とを含む、電気インピーダンストモグラフィ方法を提供する。
【0021】
第三態様において、本開示は、上記の励起応答測定方法の段階、または上記の電気インピーダンストモグラフィ方法の段階を実現するためのコンピュータープログラムを保存する、保存媒体を提供する。
【0022】
本開示の励起応答測定方法を適用し、少なくとも二つの電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間の各電極ストリップの測定電極対の電圧差を測定し、励起電極対は、同じ電極ストリップの複数の電極から選択され、測定電極対は、同じ電極ストリップ中の励起電極対以外の電極から選択される。測定された測定電極対の電圧差を異なる励起電流周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差に分離し、電気インピーダンストモグラフィデータとして使用して、三次元電気インピーダンストモグラフィリアルタイム測定を満たすという前提の下で、データを取得する速度は、従来の順次励起-測定方法によりもはるかに高速である。
【0023】
本開示の他の特徴および利点は、以下の明細書で説明され、一部は明細書から明らかになるか、または本開示を実施することにより理解することができる。本開示の目的および他の利点は、明細書、特許請求の範囲および添付の図面で指摘された構造によって実現および達成される。
【0024】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために使用され、明細書の一部を構成し、本開示の実施例と共に本開示を説明するために使用され、本開示を限定するために使用されない。添付の図面において、
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】三次元電気インピーダンストモグラフィ時の電極ストリップの配置状況の概略図である。
図2】本開示の実施例1による励起応答測定方法のフローチャートを示す。
図3】本開示の実施例2による励起応答測定方法のフローチャートを示す。
図4】本開示の実施例3による電極ストリップ1の隣接電極法の選択方法の概略図を示す。
図5】本開示の実施例3による周波数領域分離プロセスの概略図を示す。
図6】本開示の実施例3による電極ストリップの第1の種類の対向電極法の選択方法の概略図を示す。
図7】本開示の実施例3による電極ストリップの第2の種類の対向電極法の選択方法の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面および実施例と併せて本開示の実施形態を詳細に説明し、このようにして、本開示が技術的手段を適用して技術的問題を解決し、技術的効果を達成する実現プロセスを完全に理解し、且つそれに応じて実施することができる。矛盾がない借り着、本開示の各実施例および各実施例における各特徴は、互いに組み合わせることができ、形成された技術的解決策は、すべて本開示の保護範囲内にあることに留意されたい。
【0027】
実施例1
【0028】
従来技術に存在する上記の技術的問題を解決するために、本開示の実施例は、励起応答測定方法を提供する。
【0029】
図2を参照すると、本実施例の励起応答測定方法は、電気インピーダンストモグラフィ装置に適用されることができ、当該電気インピーダンストモグラフィ装置は、少なくとも二つの電極ストリップを含み、かつ各電極ストリップは、複数の電極を含む。前記方法は、次のような段階S110~S170を含む。
【0030】
S110:各電極ストリップの複数の電極から、励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択する。
【0031】
S120:すべての電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間のすべての測定電極対の電圧差を測定して、すべての測定電極対の電圧差を取得する。
【0032】
S130:各電極ストリップ上の励起電極対が当該電極ストリップ上の電極を横切るかどうかを判断し、そうである場合、段階S140を実行し、そうでない場合、各電極ストリップの複数の電極から、新しい励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択し、段階S120に戻る。
【0033】
S140:異なる瞬間のすべての測定電極対上の電圧差に対して離散フーリエ変換を実行して、当該電圧差に対応する周波数領域シグナルを取得する。
【0034】
S150:異なる電極ストリップの励起周波数に応じて、隣接する二つの励起周波数の中間値を順次に選択して周波数領域シグナルの境界周波数として使用する。
【0035】
S160:境界周波数に従って、電圧差に対応する周波数領域シグナルを分離する。
【0036】
S170:分離後の周波数領域シグナルに対して逆離散フーリエ変換を実行して、異なる周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差を取得し、電気インピーダンストモグラフィデータとして使用する。
【0037】
段階S110において、指定された周波数範囲の上限値と下限値との間の差値を下限値に割って、得られた商値は、20%を超えない。
【0038】
段階S110において、異なる電極ストリップで同じ瞬間に励起された励起電極対は、測定対象領域の周囲の空間位置に対して上下に対応して分布される。
【0039】
本実施例の励起応答測定方法において、すべての電極ストリップの励起電極対に対して、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加する。つまり、周波数が似ているが互いに異なるいくつかの種類の励起電流を用いて各電極ストリップを同時に励起し、各電極ストリップは、周波数の励起電流に対応する。従来の順次励起測定方法に比較して、従来の順次励起測定方法が一つの電極ストリップを励起する場合、本実施例の方法は、すべての電極ストリップを同時に励起することにより、励起効率を向上させる。励起された同じ瞬間に当該瞬間のすべての測定電極対の電圧差を測定し、つまり、毎回の測定において、複数の電極ストリップが同時に励起されるだけでなく、複数の電極ストリップ上の電極が同時に測定されるため、測定効率を向上させる。
【0040】
本実施例の励起応答測定方法において、離散フーリエ変換を使用して測定データを周波数領域に変換し、異なる励起周波数に応じて、周波数領域シグナルを分離し、逆離散フーリエ変換を実行して、従来の順次励起測定方法における単一の周波数励起時の各電極ストリップの測定データを取得できるため、本実施例の励起応答測定方法は、従来の順次励起測定方法と同じ測定データを確保し、測定データの効率を大幅に向上させることができる。
【0041】
実施例2
【0042】
従来技術に存在する上記の技術的問題を解決するために、本開示の実施例は、実施例1に基づく励起応答測定方法を提供し、実施例1における段階S110を改善する。
【0043】
図3を参照すると、本実施例の励起応答測定方法は、次のような段階S211~S270を含む。
【0044】
S211:各電極ストリップから励起電極対のグループをそれぞれ選択する。
【0045】
S212:選択された励起電極対のグループごとに対して、それが属する電極ストリップの複数の電極において、当該励起電極対のグループ以外の電極を複数の測定電極対に分けて、当該励起電極対のグループに対応する測定電極対として使用する。
【0046】
S220:すべての電極ストリップの励起電極対に、周波数が異なる指定された周波数範囲内の励起電流を同じ瞬間にそれぞれ印加し、当該瞬間のすべての測定電極対の電圧差を測定して、すべての測定電極対の電圧差を取得する。
【0047】
S230:各電極ストリップ上の励起電極対が当該電極ストリップ上の電極を横切るかどうかを判断し、そうである場合、段階S240を実行し、そうでない場合、各電極ストリップの複数の電極から、新しい励起電極対のグループおよびそれに対応する測定電極対をそれぞれ選択し、段階S220に戻る。
【0048】
S240:異なる瞬間のすべての測定電極対上の電圧差に対して離散フーリエ変換を実行して、当該電圧差に対応する周波数領域シグナルを取得する。
【0049】
S250:異なる電極ストリップの励起周波数に応じて、隣接する二つの励起周波数の中間値を順次に選択して周波数領域シグナルの境界周波数として使用する。
【0050】
S260:境界周波数に従って、電圧差に対応する周波数領域シグナルを分離する。
【0051】
S270:分離後の周波数領域シグナルに対して逆離散フーリエ変換を実行して、異なる周波数にそれぞれ対応する複数のグループの電圧差を取得し、電気インピーダンストモグラフィデータとして使用する。
【0052】
段階S211において、隣接電極法、対向電極法および交差電極法のいずれかの方法に従って、各電極ストリップから励起電極対のグループをそれぞれ選択する。
【0053】
段階S212において、隣接電極法、対向電極法および交差電極法のいずれかの方法に従って、当該励起電極対のグループ属する電極ストリップの複数の電極において、当該励起電極対のグループ以外の電極を複数の測定電極対に分ける。
【0054】
実施例3
【0055】
従来技術に存在する上記の技術的問題を解決するために、本開示の実施例は、実施例2で提供された励起応答測定方法を人体の三次元電気インピーダンストモグラフィのシーンに適用する。
【0056】
本実施例の励起応答測定方法は、データ収集および周波数領域分離の二つの段階を含む。
【0057】
具体的には、人体の三次元電気インピーダンストモグラフィを行う場合、いくつかの電極ストリップ(例えば、二つ)は、測定部位(例えば、胸腔)の周囲に等間隔で配置され、各電極ストリップ上には、同じ数の電極(例えば、16個)が均等または不均一に配置される。データ収集段階において、電極ストリップと同じ数を有するいくつかの周波数が似ているが異なる励起電流は、各電極ストリップの一対の励起電極にそれぞれ作用され、各電極ストリップ上の励起電極対の空間位置は、上下に対応する。次いで、一定の規則的に同時に時計回りまたは反時計回りに各電極ストリップ上の励起電極対以外の他の電極対上の電圧差を測定して、電極対のグループによって励起された時の各電極ストリップの測定データを取得する。次に、一定の規則に従って、時計回りまたは反時計回りに電極ストリップ上の他の電極対を励起電極として順次に選択する。規則を満たすすべての電極対が過剰励起電極対として使用されるまで、上記の段階を繰り返すことにより、同時多周波励起下の各電極ストリップの測定データを取得する。上記の段階において、励起電極対および測定電極対の選択規則は、隣接電極法、対向電極法および交差電極法等を含むが、これらに限定されない。
【0058】
人体の関連部分で三次元電気インピーダンストモグラフィを実行する場合、人体を線形システムと見なすことができ、励起に対する応答は、均一性を満たす。従って、上記のデータ収集段階で各電極ストリップ上で測定されたデータは、すべての励起電流の共同作用の結果であり、即ち、各電極ストリップの測定データは、すべていくつかの種類の周波数の測定シグナルの合計である。従って、周波数領域分離段階において、まず各電極ストリップの測定データに対して離散フーリエ変換を実行して、それに対応する周波数スペクトルを取得する。次いで,事前に設定された励起周波数に従って、隣接する二つの周波数の中間値を順次に選択して周波数領域シグナルの境界周波数として使用する。次に、異なる境界周波数に従って、異なる周波数の周波数領域シグナルを分離する。最後に、分離後の周波数領域シグナルに対して逆離散フーリエ変換を実行して、単一の周波数励起時の各電極ストリップの測定データを取得する。上記の段階により、n個の電極ストリップによって測定されたnグループのデータをn^2グループのデータに分離し、そのデータ量は、単励起された順次励起-測定法と同じである。当該方法で使用される各励起電流周波数と似ているため、測定部位の電気インピーダンスが周波数によって変化しないと判断されると判断され、当該方法で得られたデータは、単一に励起された順次励起-測定法によって得られた測定データと同等である。
【0059】
本実施例で提供される励起応答測定方法が、単一に励起された順次励起-測定法と同じデータ量を取得する前提下で、n個の電極ストリップを使用する場合、単一に励起された順次励起-測定法と比較して、測定速度は、n倍の速度が向上させる。
【0060】
以下、例を挙げて、本実施例の励起応答測定方法をより詳細に説明する。当該例において、電気インピーダンストモグラフィ装置は、二つの電極ストリップを含み、且つ各電極ストリップは、16個の電極を含み、異なる空間位置に従って、二つの電極ストリップは、上部電極ストリップ1および下部電極ストリップ2に分けられることができる(例えば、図1に示されるように)。励起期間中、10kHzおよび12kHzの励起電流を使用して、二つの電極ストリップをそれぞれ励起および測定し、励起電極対および測定電極対の選択は、隣接電極法を使用し、図4に示されたとおりである。
【0061】
データ収集段階において、電極ストリップ1の電極11および電極12二10kHzの励起電流を印加し、同時に電極ストリップ2の電極21および電極22に12kHzの励起電流を印加して、準定常状態の電流場を確立する。次いで、電極ストリップ1の電極13と電極14との間および電極ストリップ2の電極23と電極24との間の電圧差を同時に測定する。測定電極対が電極ストリップ1の電極115および電極116ならびに電極ストリップ2の電極215および電極216になるまで、二つの電極ストリップ上の励起電極対以外の相隣電極対間の電圧差を時計回りに順次に測定して、電極対のグループによって励起された時の測定データを取得する。次に、次のグループの隣接する電極対を励起電極として時計回りに選択し、即ち、電極12および電極13ならびに電極22および電極23を選択し、他の電極対上の電圧差を測定する。すべての隣接する電極対がすべて過剰励起電極として測定されるまで、上記の操作を繰り返する。最終的に、各電極ストリップは、同時二周波励起下での測定データをそれぞれ取得することができる。
【0062】
周波数領域分離段階において、二つのグループの測定データに対して離散フーリエ変換をそれぞれ実行して、対応する周波数領域シグナルを取得する。分離周波数として11kHzを使用して、二つの周波数シグナルを周波数領域で分離する。最後に、分離後の周波数領域シグナルに対して逆離散フーリエ変換を実行して、単一の周波数励起時の測定データを取得する。図5は、周波数領域分離プロセスの概略図を示す。これから分かるように、各電極ストリップの測定データは、二つのグループの単一の周波数励起時の測定データに分離されることができ、即ち、最終的に四つのグループの測定データを取得し、それぞれ、上部電極ストリップ励起時の上部電極ストリップの測定データ、下部電極ストリップ励起時の上部電極ストリップの測定データ、下部電極ストリップ励起時の下部電極ストリップの測定データおよび上部電極ストリップ励起時の下部電極ストリップの測定データである。
【0063】
本実施例の励起応答測定方法は、従来の順次励起-測定方法の時間がかかるという欠点を克服し、測定対象を迅速に励起および測定できる方法を提供し、当該方法は、従来の順次励起-測定方法のデータ量と同じ量の測定データを取得することができ、測定速度は、大幅に向上され、リアルタイムイメージングの要求を満たすことができる。
【0064】
実際の適用において、隣接電極法に加えて、対向電極法または交差電極法を介して励起電極対および測定電極対を選択することもできる。
【0065】
具体的には、隣接電極法では、イメージング面内の各芳香のインピーダンス差が小さいことを高書すると、計算を簡単にするために、インピーダンスは、等方的であると仮定すると、相互励起-測定電極対時によって反映された内部情報は同じであり、例えば、電極1および電極2の励起下で電極3と電極4との間の電圧を測定することによって得られる情報は、電極3および電極4の励起下で電極1と電極2との間の電圧を測定することによって得られる情報と同等であるため、測定を繰り返さない。N電極EITシステムの場合、合計「N×(N-3)」個の境界電圧を収集することができる。相互主義の原理によれば、独立した実際の測定数は、「M=N×(N-3)/2」である。
【0066】
対向電極法は、一般に2種類がる。第1の種類:半径方法に対向する二つの電極を介して励起電流を注入して、高感度電界を確立し、他の隣接する電極対の電圧を順番に測定する。次いで次の反対側の電極対に切り替えて行励起し、他の隣接する非励起電極対で電圧を測定する。すべての隣接する電極対が1サイクル回転するまで、上記のプロセスを繰り返し、図6に示されたとおりである。隣接データ収集モードを採用し、独立した実際の測定数は、「M=N×(3N/2-1)/4」である。第2の種類:励起電流は、任意の二つの半径方向に対向する電極を介して注入され、隣接する励起電極対の一つの電極を電圧参照として使用し、励起電極を除く他の電極の電圧を測定し、図7に示されたとおりである。N電極システムの場合、当該モードは、独立した測定数は、「M=N×(N-3)/2」である。
【0067】
交差電極法:励起電流は、二つのより遠い電極を介して注入され、より均一な電流分布を取得することができる。隣接する励起電極対の一つの電極を電圧参照として使用し、励起電極を除く他の電極の電圧を測定する。16電極システムを例として、まず、励起電流および測定電圧の参照として1および2を選択し、3を励起として、電極2に対する他の電極の電圧を測定して、13個の測定値を取得する。5、7、9、11、13、15をそれぞれ励起として使用し、電極2に対する他の電極の電圧をそれぞれ測定し、合計「13×7=91」個の測定値を取得する。次いでそれぞれ励起電流および測定電圧の参照として4および3を選択し、電極3に対する他の電極の電圧を測定して、13個の測定値を取得する。次いで、電極8、10、12、14、16、2をそれぞれ励起として使用し、電極3に対する他の電極の電圧をそれぞれ測定して、「13×7=91」個の測定値を取得する。この182個の測定値の井内、104だけが互いに独立している。
【0068】
ハードウェアシステムおよび測定方法が比較的に簡単であるため、隣接電極励起および対向電極励起モードは、最も一般的な方法になる。隣接電極法は、より多くの測定データを取得できるが、電流は、主に電極付近に集中し、電流分布は、励起電極の片側に集中するため、電極の数が多いほど、このような状況は顕著になる。対向電極励起を使用する場合、等電位線分布から、モデルの幾何学的対称性により、等電位線が重なり合い、隣接電極励起の半分のみが使用され、イメージング解像度が大幅に低下する。交差電極法は、イメージング対象のエッジに隣接する電極ほど敏感でないが、領域全体でより敏感であるが、電極の切り替えは、すくし複雑である。
【0069】
実際に、励起測定方法は、隣接電極励起、対向電極励起および交叉電極励起モードに加えて、適応法、二電極法、対角線モード、導電性境界モード、マルチリファレンスモード、線形アレイモード等の多くの励起測定方法がさらにある。
【0070】
実施例4
【0071】
従来技術に存在する上記の技術的問題を解決するために、本開示の実施例は、電気インピーダンストモグラフィ方法をさらに提供する。
【0072】
本実施例の電気インピーダンストモグラフィ方法において、上記の的励起応答測定方法に従って電気インピーダンストモグラフィデータを取得し、電気インピーダンストモグラフィデータに従って測定対象領域内の電気インピーダンスイメージングを再構成する。
【0073】
本実施例の電気インピーダンストモグラフィデータは、電気インピーダンストモグラフィ装置の複数の電極ストリップを介して、測定対象の異なる端面に対してそれぞれ励起および測定によって取得される。励起および測定は、データ収集およびデータ処理の二つの段階を含む。データ収集段階において、電気インピーダンストモグラフィ装置は、各電極ストリップの対応する位置の電極対で励起電流を同時に印加して、準定常状態の電流場を確立し、異なる電極ストリップに印加された励起電流周波数は、似ているが互いに異なり、同時に各電極ストリップ上の他の電極対の電圧差が順次に測定され、且つ記録される。データ処理段階において、各電極ストリップに収集されたデータに対してそれぞれ離散フーリエ変換を実行し、周波数領域でシグナルを分離することにより、従来の単一の励起された順次励起-測定法のデータ量と同じ量の測定データを取得することができる。従来の励起-測定法と比較して、当該方法は、従来の励起-測定方法を使用して一つの電極ストリップを励起してデータを収集し、複数の電極ストリップの励起および測定を実現し、データ収集速度は、何倍も向上され、三次元電気インピーダンストモグラフィのリアルタイム測定の要求を満たすことができる。
【0074】
実施例5
【0075】
従来技術に存在する上記の技術的問題を解決するために、本開示の実施例は、保存媒体をさらに提供する。
【0076】
本実施例の保存媒体には、上記の励起応答測定方法の段階、または上記の電気インピーダンストモグラフィ方法の段階を実現するためのコンピュータープログラムが保存される。
【0077】
本開示で開示された実施形態は、上記のようであるが、その内容は、本開示の理解を容易にするために採用した実施形態にすぎず、本開示を限定するものではない。本開示が属する当業者であれば、本開示で開示された精神および範囲から逸脱することなく、実施形態および詳細においてあらゆる修正および変化を行うことができるが、本開示の保護範囲は、依然として添付の特許請求の範囲によって定義されなければならない。
【符号の説明】
【0078】
1:上部電極ストリップ
2:下部電極ストリップ
11-116:上部電極ストリップ電極
21-216:下部電極ストリップ電極
3:電流ワイヤ
4:等電位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7