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特許7573234液体吐出ヘッドおよびインクジェット装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよびインクジェット装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241018BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/16 201
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020122932
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2021070313
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019196069
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】入江 一伸
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132651(JP,A)
【文献】特開2010-030142(JP,A)
【文献】特開2019-006053(JP,A)
【文献】特開2011-068095(JP,A)
【文献】特開2006-312146(JP,A)
【文献】特開2010-264625(JP,A)
【文献】特開2007-253616(JP,A)
【文献】特開2003-266703(JP,A)
【文献】特開2006-212477(JP,A)
【文献】特開2006-143524(JP,A)
【文献】特開2010-277944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルと連通する圧力室と、
前記圧力室と絞り部を介して連通する個別流路と、
前記個別流路と連通する共通流路と、
エネルギーを発生させるエネルギー発生素子と、
前記エネルギーを前記圧力室に伝える振動板と、を備え、
前記ノズル、前記圧力室、前記絞り部、前記振動板、および前記個別流路それぞれの内壁には、前記液体に対して親液性を有する単分子膜が形成されており、
前記単分子膜は、金属酸化物の膜を被覆するように設けられる、
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記単分子膜は、自己組織化単分子膜である、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記単分子膜の厚みは、50nm以下である、
請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズル、前記圧力室、前記絞り部、および前記個別流路それぞれの内壁の前記液体に対する静止接触角は、後退接触角より大きい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズルの外側の表面は、前記液体に対して撥液性を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズルの外側の表面の前記液体に対する後退接触角は30度以上である、
請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルと連通する圧力室と、
前記圧力室と絞り部を介して連通する個別流路と、
前記個別流路と連通する共通流路と、
エネルギーを発生させるエネルギー発生素子と、
前記エネルギーを前記圧力室に伝える振動板と、を備え、
前記ノズル、前記圧力室、前記絞り部、および前記個別流路それぞれの内壁には、シリコン酸化物が成膜されており、前記液体に対して親液性を有する単分子膜は、前記シリコン酸化物および前記振動板を被覆するように設けられる、
液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記エネルギー発生素子に印加される駆動電圧信号を生成し、前記液体吐出ヘッドのインク吐出動作を制御する駆動制御部と、
前記液体吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させる搬送部と、を備える、
インクジェット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッドおよびインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出ヘッドの一例として、入力信号に応じて必要なときに必要な量のインクを塗布することができるドロップオンデマンド型インクジェットヘッドが知られている。例えば、圧電方式のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドは、一般的に、インク供給流路と、そのインク供給流路に接続され、ノズルを有する複数の圧力室と、その圧力室内に充填されたインクに圧力を加える圧電素子と、を有する。
【0003】
ここで、従来のバルク型インクジェットヘッドの一例について、図1A図1Bを用いて説明する。図1Aおよび図1Bは、従来のバルク型インクジェットヘッドの断面構造を示す模式図である。図1Aは、電圧印加前の状態を示しており、図1Bは、電圧印加時の状態を示している。
【0004】
図1Aおよび図1Bに示すように、従来のバルク型インクジェットヘッドは、インクの液滴を吐出する複数のノズル100と、ノズル100に連通し、インクが充填される圧力室110と、隣り合うノズル100に対応する圧力室110を隔てる隔壁111と、圧力室110の一部をなす振動板112と、振動板112を振動させる圧電素子130と、圧電素子130および隔壁111を支える圧電部材140と、を有する。また、図示は省略するが、従来のバルク型インクジェットヘッドは、圧電素子130に電圧を印加する共通電極、および、インクの導入口を有する。
【0005】
圧電部材140は、1つの圧電部材をダイシングによって分離したものである。ノズル100の直径は、10μm~50μmである。ノズル100は、100μm~500μmの間隔で並んでいる。ノズル100の数は、例えば、100~400である。
【0006】
このように構成された従来のバルク型インクジェットヘッドは、次のように動作する。
【0007】
圧電素子130の裏側の共通電極(図示略)と、圧電素子130との間に電圧を印加すると、圧電素子130は、図1Aに示す状態から図1Bに示す状態に変形する。具体的には、図1Bにおいて、左側から2番目の圧電素子130の下部が変形する。これにより、圧力室110の容積が小さくなり、圧力室110内のインクに圧力が加えられ、ノズル100からインクの液滴(図示略)が吐出される。
【0008】
以上、従来のバルク型インクジェットヘッドの一例について説明した。
【0009】
また、インクの注入口および排出口を有し、インクを循環させながらインクを吐出するインクジェットヘッドが知られている。インクを循環させることにより得られる効果について、以下に説明する。
【0010】
ノズル近傍のインクは、常に大気に触れている状態にある。インクと大気との接触面積は非常に微小であるため、インクの溶媒の蒸発も無視できない状態にある。インクの溶媒が蒸発すると、インクの固形分濃度が上がる。その結果、インクの粘度が上昇し、正常なインクの吐出が困難になりうる。
【0011】
そこで、インクを循環させることにより、ノズル近傍のインクを常に入れ替えることができ、ノズル近傍のインクを常に正常な粘度に保つことができる。その結果、ノズル詰まりを抑制し、正常な吐出を定常的に行うことが可能となる。
【0012】
また、薄膜の圧電素子を用いた薄膜型インクジェットヘッドが知られている。この薄膜型インクジェットヘッドの一例について、図2A図2Bを用いて、以下に説明する。図2Aおよび図2Bは、従来の薄膜型インクジェットヘッドの断面構造を示す模式図である。図2Aは、電圧印加前の状態を示しており、図2Bは、電圧印加時の状態を示している。
【0013】
図2Aおよび図2Bに示すように、従来の薄膜型インクジェットヘッドは、インクの液滴を吐出するノズル200と、ノズル200に連通し、インクが充填される圧力室210と、圧力室210の一部をなす振動板212と、振動板212の上部に設けられ、振動板212を振動させる薄膜圧電素子220と、圧電素子130および隔壁111を支える圧電部材140と、圧力室210にインクを供給する共通圧力室230と、を有する。
【0014】
このように構成された従来の薄膜型インクジェットヘッドは、次のように動作する。
【0015】
薄膜圧電素子220に電圧を印加すると、薄膜圧電素子220は、図2Aに示す状態から図2Bに示す状態に変形する。この薄膜圧電素子220の変形により、圧力室210の容積が小さくなり、圧力室210内の液体に圧力が加えられ、ノズル200からインクの液滴(図示略)が吐出される。
【0016】
以上、従来の薄膜型インクジェットヘッドの一例について説明した。
【0017】
また、例えば特許文献1には、ノズルの表面が、吐出されるインクの付着を抑制するために、インクを撥く性質(撥液性)を有しており、ノズルの内壁が、インク中の気泡の滞留を抑制するために、インクに馴染んで濡れる性質(親液性)を有しているインクジェットヘッドが開示されている。
【0018】
ここで、特許文献1に開示されている、ノズルを撥液化および親液化させる加工工程について、図3を用いて説明する。図3は、特許文献1に開示されたインクジェットヘッドのノズルプレートの加工工程を示す断面模式図である。
【0019】
まず、図3の上図に示すように、ノズルプレート60の表面およびノズル孔51の内壁のそれぞれに水素終端化処理(X)を施す。
【0020】
次に、図3の中図に示すように、ノズルプレート60の表面に光エネルギー61を付与し、ノズルプレート60の表面を反応活性化させる。そして、ノズルプレート60の表面に撥液膜原料を接触させることにより、ノズルプレート60の表面を撥液化(Y)させる。
【0021】
次に、図3の下図に示すように、ノズル孔51の内壁に対して熱エネルギー62を付与し、ノズル孔51の内壁に親液膜原料を接触させることにより、ノズル孔51の内壁を親液化(Z)させる。
【0022】
以上の加工工程により、ノズルプレート60の表面は撥液性を備えるため、インクの付着を抑制することができる。また、ノズル孔50の内壁は親液性を備えるため、気泡溜まりを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特開2011-68095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、特許文献1のインクジェットヘッドでは、ノズル以外のインク接液部(例えば、流路や圧力室の内壁面)の親液性は保証されていない。そのため、特許文献1のインクジェットヘッドにおいて、無機化合物からなる粒子またはバインダー成分など(以下、粒子等という)を含むインクを用いた場合、粒子やバインダー成分がノズル以外のインク接液部に付着して堆積することにより、目詰まりが発生するおそれがある。特にバインダー成分は有機化合物から成る材料であり、ステンレスなどの金属から成るインク接液部に付着しやすい。
【0025】
例えば、インクジェットヘッドの流路のうち、個別流路と圧力室とが連通する部分では、圧力室内の圧力波を逃げにくくするために、個別流路よりも幅を狭くした流路である絞り部が設けられる。この絞り部には、インクが流れる過程で大きなせん断応力がかかる。そのため、インク中の粒子等が凝集しやすくなり、粒子等が流路の壁面に付着して目詰まりを起こしやすい。
【0026】
また、振動板は、吐出の周波数に応じて高速に振動している。例えば、振動板は、1~50kHz程度の周波数に応じて、1秒間に1000~50000回程度の振動をしている。この振動は、インクに対して高速でせん断力を与える原因となる。よって、インク中の粒子の分散状態が崩れて凝集し、振動板の表面に付着するおそれがある。
【0027】
本開示の一態様の目的は、液体に含まれる粒子等によるノズルの目詰まりや、流路および振動板表面における粒子の付着を抑制し、経時的に安定した吐出を実現することができる液体吐出ヘッドおよびインクジェット装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本開示の一態様に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室と絞り部を介して連通する個別流路と、前記個別流路と連通する共通流路と、エネルギーを発生させるエネルギー発生素子と、前記エネルギーを前記圧力室に伝える振動板と、を備え、前記ノズル、前記圧力室、前記絞り部、前記振動板、および前記個別流路それぞれの内壁には、前記液体に対して親液性を有する単分子膜が形成されており、前記単分子膜は、金属酸化物の膜を被覆するように設けられる
た、本開示の一態様に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通する圧力室と、前記圧力室と絞り部を介して連通する個別流路と、前記個別流路と連通する共通流路と、エネルギーを発生させるエネルギー発生素子と、前記エネルギーを前記圧力室に伝える振動板と、を備え、前記ノズル、前記圧力室、前記絞り部、および前記個別流路それぞれの内壁には、シリコン酸化物が成膜されており、前記液体に対して親液性を有する単分子膜は、前記シリコン酸化物および前記振動板を被覆するように設けられる。
【0029】
本開示の一態様に係るインクジェット装置は、本開示の一態様に係る液体吐出ヘッドと、前記エネルギー発生素子に印加される駆動電圧信号を生成し、前記液体吐出ヘッドのインク吐出動作を制御する駆動制御部と、前記液体吐出ヘッドと被描画媒体とを相対移動させる搬送部と、を備える。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、液体に含まれる粒子等による目詰まりを抑制し、経時的に安定した吐出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】従来のバルク型インクジェットヘッドにおける電圧印加前の状態を示す断面模式図
図1B】従来のバルク型インクジェットヘッドにおける電圧印加時の状態を示す断面模式図
図2A】従来の薄膜型インクジェットヘッドにおける電圧印加前の状態を示す断面模式図
図2B】従来の薄膜型インクジェットヘッドにおける電圧印加時の状態を示す断面模式図
図3】特許文献1のインクジェットヘッドのノズルプレートの加工工程を示す断面模式図
図4A】本開示の実施の形態に係るインクジェットヘッドの構成を示す断面模式図
図4B図4AのXY断面図
図4C】本開示の実施の形態に係るインクジェットヘッド全体の共通流路の配置を示す平面図
図5A】実施例1に係る親水性化処理後の接触角の経時変化を示す図
図5B】比較例1に係る親水性化処理後の接触角の経時変化を示す図
図6A】実施例2に係るインクの液滴の飛翔過程を示す図
図6B】実施例2に係るインクの液滴の飛翔角度を示す図
図7A】比較例2に係るインクの液滴の飛翔過程を示す図
図7B】比較例2に係るインクの液滴の飛翔角度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0033】
<インクジェットヘッド300>
本開示の実施の形態に係るインクジェットヘッド300の構成について、図4A図4B図4Cを用いて説明する。
【0034】
図4Aは、本実施の形態のインクジェットヘッド300の構成を示す断面模式図である。また、図4Aは、図4CにおけるAA’断面を示している。図4Bは、図4AのXY断面図である。図4Cは、インクジェットヘッド300全体の共通流路351の配置を示す平面図である。
【0035】
なお、本実施の形態では、液体吐出ヘッドが、インクを吐出するインクジェットヘッド300である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。液体吐出ヘッドは、インク以外の液体を吐出するものであってもよい。
【0036】
インクジェットヘッド300は、ノズル312、圧力室314、ピエゾ素子330、振動板317、絞り部320、個別流路315、共通流路351、単分子膜340、撥液膜350を有する。
【0037】
ノズル312は、インクを吐出するための貫通孔であり、圧力室314と連通している。ノズル312の直径は、例えば、5~50μm程度である。ノズル312は、例えば、レーザ加工やエッチングまたはパンチングなどの方法により形成される。
【0038】
ノズル312の表面には、インクを撥く性質(撥液性)を有する撥液膜350が設けられている。撥液膜350は、撥液性の原材料の液体をスピンコートすることにより形成される。撥液膜350が形成されることで、ノズル312の表面は、撥液性を備える。撥液膜350のインクに対する後退接触角は、例えば、30度以上である。撥液膜350のインクに対する静止接触角は、例えば、50度以上である。
【0039】
ピエゾ素子330(エネルギー発生素子の一例)は、圧力室314に対応して設けられており、電圧の印加により変位する。ピエゾ素子330としては、例えば、d33モードまたはd31モードの積層型ピエゾ素子、あるいは、せん断モードを利用するピエゾ素子を用いることができる。または、それらピエゾ素子の代わりのエネルギー発生素子として、静電アクチュータまたは発熱素子などを用いてもよい。
【0040】
振動板317は、ピエゾ素子330に接するように配置されており、ピエゾ素子330の変位により変形する。振動板317は、例えば、ニッケルなどの金属やポリイミドなどの樹脂により構成されるが、これらに限定されない。振動板317の厚みは、例えば、5~50μmであることが好ましい。
【0041】
ピエゾ素子330の変位が振動板317に伝達されると、振動板317が変形する。これにより、圧力室314の容積が変わり、ノズル312からインクの液滴が吐出される。よって、振動板317の変形量は非常に重要であり、それに関係する振動板317の剛性のばらつきは吐出特性に影響するため、振動板317の剛性を均一化することが求められる。
【0042】
圧力室314は、ノズル312と連通している。また、圧力室314は、絞り部320を介して個別流路315と連通している。圧力室314の容積は、振動板317の変形により変化する。この容積の変化によってノズル312からインクが吐出される。圧力室314の容積や絞り部320の流路抵抗によってインクの共振周期が変わり、吐出されるインクの体積や速度が変わる。よって、必要に応じて圧力室314の容積などを最適に調整する必要がある。
【0043】
個別流路315、共通流路351、および絞り部320は、インクの流路である。共通流路351は、個別流路315と連通している。個別流路315は、絞り部320を介して圧力室314と連通している。絞り部320は、個別流路315の幅よりも狭い幅を有する。これにより、圧力室314内の圧力波が個別流路315へ逃げにくくなる。
【0044】
ノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの内壁には、親液性の単分子膜340が形成されている。この単分子膜340の詳細については、後述する。また、共通流路351の内壁に、単分子膜340が形成されていても良い。
【0045】
上述したノズル312、圧力室314、個別流路315、振動板317、共通流路351、および絞り部320は、例えば、エッチングなどにより加工された複数の金属板の熱拡散接合や、シリコン材のエッチングなどにより作製される。
【0046】
<単分子膜340>
図4Aに示すように、ズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの内壁には、インクに対して良く濡れる性質(親液性。以下、濡れ性ともいう)を有する有機化合物からなる単分子膜340が形成されている。
【0047】
単分子膜340の厚みは、例えば、5~50nm程度である。
【0048】
単分子膜340の材料としては、例えば、分子末端にシラノール基を持ち、主骨格から親水基を持つ分子鎖が複数伸びている材料が挙げられる。このような材料としては、例えば、純正化学株式会社製の超親水性コーティング材料(具体的には、LAMBIC-771W)を用いることができる。よって、単分子膜340は、分子末端にシラノール基を持ち、主骨格から親水基を持つ分子鎖が複数伸びている分子を材料とする膜であると言える。
【0049】
ここで、単分子膜とは、厚さがちょうど1分子に相当するだけの薄い膜となって分子が整列したときの膜をいう。なお、単分子膜は、単分子層ともいう。
【0050】
高級脂肪酸や高級アルコールを、ベンゼンなどの易揮発性の溶媒に溶かして水面に落とすと、溶媒が揮発した後に、単分子膜を作成することができる。このとき、アルコールのヒドロキシ基やカルボキシ基(カルボキシル基)は、親水基であるので、水の方を向き、疎水基の長鎖のアルキル基は、水から遠い方(空気中)に並ぶ。すきまなく分子が配列すると、厚さがちょうど長鎖のアルキル基(プラス親水基)の長さに相当した単分子の膜が得られる。
【0051】
単分子膜340の材料は、自己組織化的に分子が配列する特徴を有し、基材表面に活性なシラノール基が化学反応して吸着する。基材表面にはシラノール基を活性化させる官能基が存在する必要がある。
【0052】
例えば、基材表面において、シリコン酸化物の膜が形成され、水酸基が出ている状態が望ましい。なお、基材表面に水酸基が出ていればよいため、基材表面に形成される膜は、シリコン酸化物に限定されない。例えば、シリコン酸化物の代わりとして、アルミナ(Al)またはチタニア(TiO)などの金属酸化物を用いてもよい。単分子膜340は、基材表面に形成されたシリコン酸化物の膜または金属酸化物の膜を被覆して設けられる。
【0053】
単分子膜材料は、化学吸着できる表面が決まっているため、一度吸着するとその上に三次元的に吸着していくことはない。この原理によって単分子オーダーの膜が自己組織化的に形成される。厚みは5~30nmと非常に薄く制御されるが、ノズル312や圧力室314の内壁に成膜する際には、この厚みが非常に重要である。親液性を示すコーティング剤などを使用すると、厚みの制御が困難であり、数μmから数十μmオーダーの厚みになってしまう。厚みが厚くなると、絞り部320やノズル312が親液性の膜で埋まってしまい、目詰まりしてしまう。また、振動板317の表面に成膜する膜についても、厚みが非常に重要である。振動板317の厚みは10μm程度であるため、振動板317の表面に厚みが厚い膜が付くと、振動板317の剛性が大きく変わり、ピエゾ素子330から伝えられる振動特性が大きく変わってしまうからである。なお、単分子膜340の材料は、自己組織化的に単分子オーダーの膜厚で反応が終わる材料であればよく、上述した材料に限定されない。
【0054】
以上のことから、単分子膜340は、自己組織化単分子膜であると言える。自己組織化単分子膜は、有機分子の溶液や蒸気中に適当な材料を置いておき、有機分子を材料表面に化学吸着させ、その過程で厚さ1~2nmの有機分子の配向性がそろった単分子膜が形成されることによって形成することができる。自己組織化単分子膜は、基板をそれと結合する官能基を持つ分子の溶液中に浸漬するだけで容易に作成でき、なおかつ、高い配向性と安定性をもち、末端官能基によって様々な機能を導入できる。なお、自己組織化単分子膜は、自己集合単分子膜ともいう。
【0055】
このような自己組織化材料により生成された膜の後退接触角は、20度以下であることが好ましく、15度以下であることがより好ましい。また、静止接触角は、25度以上であることが好ましく、30度以上であることがより好ましい。
【0056】
ここで、後退接触角および静止接触角について説明する。
【0057】
液体を固体表面に滴下すると、液体は自らの持つ表面張力で丸くなり、下記式(1)に示す関係が成り立つ。式(1)は、Youngの式と呼ばれる。
γs=γL×cosθ+γSL・・・(1)
γs:固体の表面張力
γL:液体の表面張力
γSL:固体と液体の界面張力
【0058】
このときの液滴の接線と固体表面とのなす角度θを、接触角と呼ぶ。中でも液体が固体表面上で静止しており、平衡状態に達しているときの接触角を、静止接触角と呼ぶ。
【0059】
一方、液体と固体の界面が動いている状態、すなわち液滴の界面が動く、動的な状況の接触角を、前進接触角および後退接触角と呼ぶ。ここでは、一度固体表面が液体で濡れた後の動的な接触角である後退接触角に注目する。
【0060】
図4Aに示した単分子膜340のインクに対する静止接触角は、30度以上である。図4Aに示した単分子膜340のインクに対する後退接触角は、20度以下である。これは、以下のことを意味する。
【0061】
ノズル312や個別流路315などが乾いた状態であって、それらの内壁に形成された単分子膜340に対して最初にインクが接触するときの静止接触角は50度以上であり、比較的高い状態である。
【0062】
図4Aに示したように、共通流路351の内壁には、単分子膜340が形成されていない。そのため、共通流路351では、その素材が従来持つ濡れ性を示す。共通流路351の素材として、例えばステンレスが用いられる場合、その静止接触角は、50度以上になる。
【0063】
このような場合では、共通流路351と個別流路315との間でインクに対する濡れ性の差がほぼ発生しない。そのため、インクが流れる過程において気泡が噛み込むなどの濡れの不良が起こることなく、各流路内にインクが充填される。
【0064】
インクが流れる過程において、共通流路351と個別流路315との間で濡れ性に大きな差が存在すると、その部分で流れが変則的に変わってしまい、気泡を噛み込んでしまうことがある。インク中の気泡の存在は、吐出不良を起こす原因となることがしばしばあり、インク中の気泡を如何に除去するかが重要である。
共通流路351にも単分子膜340が形成されている場合は、静止接触角は上記の限りではなく、30度以下で低くても良い。
【0065】
一方、単分子膜340の後退接触角は、20度以下と低い状態である。単分子膜340がインクで一度濡れると、単分子膜340中の親水基が広がり、高い親液性を示す。このとき、インク中の溶媒成分が、ノズル312、圧力室314、絞り部320、個別流路315それぞれの内壁表面を覆っている状態になる。この状態では、インク中の粒子やバインダーは各内壁に付着しようとしても溶媒で覆われているため、付着することなく流れる。
【0066】
なお、図4Aでは、1つのノズル312とそれに対応する構成要素(例えば、圧力室314、絞り部320、個別流路315、ピエゾ素子330等)のみを示したが、これらは、図4Bに示すように、Y方向に沿って複数設けられている。
【0067】
図4Bに示すように、共通流路351は、各個別流路315および各絞り部320を介して各複数の圧力室314と接続されている。
【0068】
共通流路351は、インクリザーバ(図示略)に接続されている。インクリザーバは、インクの供給源であるインク供給タンク(図示略)に接続されている。インクリザーバは、共通流路351とインク供給タンクとの間に存在する第2のインク供給タンクと言える。このインクリザーバを加圧もしくは減圧することで、ノズル312にかかる圧力を制御し、適切な状態でインクを吐出させることができる。
【0069】
図4Cに示すように、共通流路351は、供給口353および排出口354と連通している。インクは、インクリザーバから供給口353を介して一方の共通流路351に流入し、共通流路351から各個別流路315および各絞り部320を介して各圧力室314に流入する。各圧力室314から他方の共通流路351に流れ込んだインクは、排出口354から排出される。排出されたインクは、インク供給タンクと接続されたインク回収タンクで回収され、再びインク供給タンクへ流入する。
【0070】
インク供給タンクとインク回収タンクとの間に圧力差が設けられることにより、インク回収タンクからインク供給タンクへとインクが流動する。このようなインク循環系を採用することにより、各圧力室314に対して常にフレッシュなインクを供給でき、ノズル312近傍の大気に接する箇所において、インクの溶媒が蒸発することによる粘度の上昇を防止できる。これにより、長時間にわたり安定したインクの吐出を実現することができる。
【0071】
<インクジェット装置>
上述したインクジェットヘッド300は、インクジェット装置に備えられてもよい。インクジェット装置は、インクジェットヘッド300のほかに、例えば、駆動制御部および搬送部を備える。駆動制御部は、ピエゾ素子330に印加される駆動電圧信号を生成し、インクジェットヘッド300のインク吐出動作を制御する。搬送部は、インクジェットヘッド300と、インクの液滴が着弾する被描画媒体(被印刷対象物と言ってもよい)とを相対移動させる。
【0072】
<実施例と比較例の評価>
以下、実施例および比較例それぞれの評価について説明する。
【0073】
単分子膜340をステンレス板上に形成した場合と、単分子膜340をステンレス板上に形成していない場合とにおいて、接触角の比較評価を行った(後述する実施例1、比較例1)。接触角は、接触角計DSA100(KRUSS製)を使用して測定した。
【0074】
また、単分子膜340をノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの内壁に形成した場合と、単分子膜340をノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの内壁に形成していない場合において、インクの吐出特性の比較評価を行った(後述する実施例2、比較例2)。
【0075】
評価方法は、次の通りである。
【0076】
ノズル312からインクを吐出させ、駆動波形の印加タイミングと同期させてストロボ発光を行い、インクの液滴(以下、単に液滴という)を照射し、それをカメラで観察して、液滴の飛翔過程の観察を行った。また、ストロボ発光のタイミングを遅延させることで、異なる時刻2点の液滴を観察し、2点の液滴の位置座標を計測して、液滴の飛翔方向の角度の評価を行った。
【0077】
評価に使用したインクは、粘度が8mPa・sであり、表面張力が33mN/mであるインクである。粘度は、粘度計AR-G2(TA Insruments製)を使用して測定した。表面張力は、表面張力計DSA100(KRUSS製)を使用して測定した。また、評価に使用したインクには、粒子径が1μmである酸化チタンと、有機化合物からなるバインダー材料とが添加されている。
【0078】
(実施例1)
実施例1では、まず、ステンレス板の表面に酸化シリコンの膜を20nm程度成膜した。この成膜には、原子層蒸着という方法を用いた。
【0079】
次に、酸化シリコンが成膜されたステンレス板を、単分子膜340の原料となる液体材料(例えば、純正化学株式会社製の超親水性コーティング材料。より具体的には、LAMBIC-771W)に約10秒間浸漬させた。その後、加熱炉を用いて、浸漬後のステンレス板を80℃で15分間乾燥させることにより、単分子膜340を成膜した。
【0080】
そして、単分子膜340が形成されたステンレス板のインクに対する接触角の経時変化を評価した。その評価結果を図5Aに示す。
【0081】
図5Aに示すように、初期(最初にインクが接触したとき)の静止接触角は95度であり、20日間インクに浸漬させた後の静止接触角は90度であった。よって、静止接触角には、経時変化がほとんどないことが分かった。
【0082】
また、図5Aに示すように、初期の後退接触角は10度であり、20日間インクに浸漬させた後の後退接触角は12度であった。よって、後退接触角にも、経時変化がほとんどないことが分かった。
【0083】
実施例1では、単分子膜340がステンレス板上に形成されていることにより、インク中の粒子やバインダーの付着が抑制され、ステンレス板の表面の安定化が図れていると考えられる。
【0084】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様に、まず、原子層蒸着により、ステンレス板の表面に酸化シリコンの膜を20nm程度成膜した。
【0085】
そして、酸化シリコンの膜のみが形成されたステンレス板のインクに対する接触角の経時変化を評価した。その評価結果を図5Bに示す。
【0086】
図5Bに示すように、初期の静止接触角が25度であるのに対して、20日間インクに浸漬させた後の静止接触角は70度であり、経時変化が大きいことが分かった。
【0087】
また、図5Bに示すように、初期の後退接触角が16度であるのに対して、20日間インクに浸漬させた後の後退接触角は12度であった。
【0088】
実施例2では、単分子膜340がステンレス板上に形成されていないことにより、インク浸漬中に、インク中の粒子やバインダーがステンレス板の表面に付着し、接触角が大きく変化してしまったと考えられる。
【0089】
(実施例2)
実施例2では、まず、原子層蒸着により、ノズル312、圧力室314、絞り部320、および個別流路315それぞれの内壁に酸化シリコンの膜を成膜した。ここで、ノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの材料は、ステンレスである。
【0090】
次に、実施例1と同様の方法により、ノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの内壁に単分子膜340を成膜した。
【0091】
そして、上述したように、ノズル312から吐出された液滴について、飛翔過程の観察およびの飛翔方向の角度の評価を行った。
【0092】
図6Aに液滴の飛翔過程を示す。図6Aに示すように、ノズル312から飛び出した液滴は、円柱状に伸びて、尻尾が細くなり、飛翔していく様子が観察された。また、尻尾が真っ直ぐに伸びて飛翔していることが分かった。なお、尻尾が曲がると、それに続く液滴も真っ直ぐには飛翔せず、曲がって飛翔して液滴の着弾位置の精度が低下する。着弾位置の精度が低下すると、狙った位置に液滴を塗布することができず、印刷品質の低下を招いてしまう。
【0093】
図6Bに複数のノズル312から吐出された液滴の飛翔角度を示す。図6Bにおいて、横軸は各ノズルを示し、縦軸は液滴の飛翔角度を示している。図6Bでは、液滴がノズル312の鉛直方向に対して真っ直ぐ飛翔すると、飛翔角度は0度であり、飛翔角度の数値が大きいほど液滴が曲がって飛翔していることを示す。
【0094】
数百個のノズル312から吐出された各液滴の飛翔角度のばらつきを標準偏差の3倍の値(3σ)で表すと、17mradとなった。この値は、仮にノズル312と被印刷対象物との間の距離を1mmとした場合、液滴の着弾位置のばらつきが17μmになることを意味する。
【0095】
着弾した液滴の直径は60μm程度であり、液滴の半円同士が重なるようにインクを塗布していくとする。その場合、着弾位置が30μm以上離れると、液滴が重なり合わずに塗布されない領域が発生してしまう。よって、着弾位置の精度の目標値は、30μm以内とした。そして、実施例2では、着弾位置の目標値が達成されることが分かった。
【0096】
(比較例2)
比較例2では、実施例2と同様に、まず、原子層蒸着により、ノズル312、圧力室314、絞り部320、および個別流路315それぞれの内壁に酸化シリコンの膜を成膜した。ここで、ノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの材料は、ステンレスである。
【0097】
そして、上述したように、ノズル312から吐出された液滴について、飛翔過程の観察およびの飛翔方向の角度の評価を行った。
【0098】
図7Aに液滴の飛翔過程を示す。図7Aに示すように、ノズル312から飛び出した液滴は、円柱状に伸びて、尻尾が細くなり、飛翔していく様子が観察された。また、尻尾が曲がって飛翔していることが分かった。ノズル312の内壁にインク中の粒子やバインダーが付着することにより、尻尾が曲がってしまったと考えられる。上述したとおり、尻尾が曲がると、それに続く液滴も真っ直ぐには飛翔せず、曲がって飛翔して液滴の着弾位置の精度が低下する。その結果、狙った位置に液滴を塗布することができず、印刷品質の低下を招いてしまう。
【0099】
図7Bに複数のノズル312から吐出された液滴の飛翔角度を示す。図7Bの横軸および縦軸は、図6Bと同様である。また、図7Bでは、図6Bと同様に、液滴がノズル312の鉛直方向に対して真っ直ぐ飛翔すると、飛翔角度は0度であり、飛翔角度の数値が大きいほど液滴が曲がって飛翔していることを示す。
【0100】
数百個のノズル312から吐出された各液滴の飛翔角度のばらつきを3σで表すと、86mradとなった。よって、各液滴の飛翔角度のばらつきが非常に大きくなっていることが分かった。この値は、仮にノズル312と被印刷対象物との間の距離を1mmとした場合、液滴の着弾位置ばらつきが86μmとなることを意味する。すなわち、液滴同士が意図せず重なり合ったり、全く重ならず印刷されない部分が発生したりして、印刷品質が低下してしまうことになる。
【0101】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェットヘッド300は、液体を吐出するノズル312と、ノズル312と連通する圧力室314と、圧力室314と絞り部320を介して連通する個別流路315と、個別流路315と連通する共通流路351と、エネルギーを発生させるエネルギー発生素子(例えば、ピエゾ素子330)と、エネルギーを圧力室314に伝える振動板317と、を備え、ノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315それぞれの内壁には、前記液体に対して親液性を有する単分子膜340が形成されていることを特徴とする。
【0102】
この特徴により、ノズル312、圧力室314、絞り部320、振動板317、および個別流路315において、インクに含まれる粒子やバインダーなどの付着を抑制することできる。よって、粒子やバインダーなどによる目詰まりを抑制し、経時的に安定した吐出を実現することができる。その結果、印刷品質の高品質化を実現できる。
【0103】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示の液体吐出ヘッドおよびインクジェット装置は、例えば、酸化チタンを含有する白色インク、金属ナノ粒子を含有する導電性インク、量子ドット半導体粒子を含有する量子ドット発光インク、細胞などを含有する生体インクなどの吐出にも有用である。
【符号の説明】
【0105】
51 ノズル孔
60 ノズルプレート
61 光エネルギー
62 熱エネルギー
100 ノズル
110 圧力室
111 隔壁
112 振動板
130 圧電素子
140 圧電部材
200 ノズル
210 圧力室
212 振動板
220 薄膜圧電素子
230 共通圧力室
300 インクジェットヘッド
312 ノズル
314 圧力室
315 個別流路
317 振動板
320 絞り部
330 ピエゾ素子
340 単分子膜
350 撥液膜
351 共通流路
353 供給口
354 排出口
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B