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特許7573235鉄筋ユニット搬送装置、及び、鉄筋ユニットの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】鉄筋ユニット搬送装置、及び、鉄筋ユニットの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 13/04 20060101AFI20241018BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E21D13/04
E21D11/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020153702
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047753
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-05-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596069911
【氏名又は名称】盟和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】板橋 信男
(72)【発明者】
【氏名】居川 圭太
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真康
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202217(JP,A)
【文献】特開2013-104196(JP,A)
【文献】特開2000-045275(JP,A)
【文献】特開2017-172192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 13/04
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄筋を組み合わせて形成された鉄筋ユニットであって、上面視で、トンネル軸方向を長辺とし、かつ、トンネル幅方向を短辺とする矩形状をなす前記鉄筋ユニットを、トンネル内の設置予定場所まで搬送する、鉄筋ユニット搬送装置であって、
前記鉄筋ユニットは、前記設置予定場所にて上面視で略90度回転させられて前記設置予定場所に設置され、かつ、鉄筋コンクリート製のトンネル構造物の隅角部を構成し、
鉄筋ユニット搬送装置は、
トンネルの床面上をトンネル軸方向に走行可能であり、かつ、前記鉄筋ユニットを載置可能な走行体と、
前記走行体に支持されて前記鉄筋ユニットを揚重可能な揚重装置と、
を備え、
前記揚重装置は、
トンネル軸方向に互いに間隔を空けて前記走行体に立設された複数の門型フレームと、
前記門型フレームの上部同士に跨るように前記門型フレームの上部下面に設けられてトンネル軸方向に延在するレール部材と、
前記レール部材に設けられて前記レール部材の延在方向に移動可能な移動体と、
前記移動体に取り付けられて前記鉄筋ユニットを吊り下げて昇降可能な吊下装置と、
を備え、
前記レール部材は、上面視で、前記走行体よりトンネル軸方向両側に突出しており、
前記鉄筋ユニットには、前記鉄筋ユニットを補強する補強部材が取り付けられており、それにより、前記鉄筋ユニットが前記吊下装置によって吊り下げられても前記鉄筋ユニットの形状を保持可能である、鉄筋ユニット搬送装置。
【請求項2】
前記走行体に載置された前記鉄筋ユニットを前記走行体に固定する固定手段を更に備える、請求項1に記載の鉄筋ユニット搬送装置。
【請求項3】
前記走行体は前記床面上をトンネル幅方向に移動可能である、請求項1又は請求項2に記載の鉄筋ユニット搬送装置。
【請求項4】
前記走行体は、上面視で、トンネル軸方向を長辺とし、かつ、トンネル幅方向を短辺とする矩形状をなす走行体本体部と、前記走行体本体部の四隅の下側に設けられた車輪と、を備え、
前記車輪の全てが駆動輪である、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の鉄筋ユニット搬送装置。
【請求項5】
前記走行体本体部の上面には、前記鉄筋ユニットを載置するための台座部が設けられており、該台座部は、トンネル幅方向に延びる複数のH形鋼材をトンネル軸方向に間隔を空けて前記走行体本体部の上面に配置することによって形成されている、請求項4に記載の鉄筋ユニット搬送装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の鉄筋ユニット搬送装置を用いて前記鉄筋ユニットを前記設置予定場所に設置する方法であって、
前記トンネル外で形成され、かつ、運搬車両で運搬されてきた前記鉄筋ユニットを、前記鉄筋ユニット搬送装置のトンネル軸方向一側から、前記揚重装置を用いて、前記鉄筋ユニット搬送装置に搭載し、
前記鉄筋ユニットを搭載した前記鉄筋ユニット搬送装置を前記トンネル内にてトンネル軸方向一側からトンネル軸方向他側に向けて走行させることで、前記鉄筋ユニットを前記設置予定場所まで搬入し、
前記揚重装置を用いて、前記鉄筋ユニットを、前記鉄筋ユニット搬送装置のトンネル軸方向他側から、前記設置予定場所に設置する、
鉄筋ユニットの設置方法において、
前記設置予定場所に前記鉄筋ユニットを設置するに先立って、前記設置予定場所にて、前記吊下装置によって吊り下げられた状態の前記鉄筋ユニットを上面視で略90度回転させる、鉄筋ユニットの設置方法
【請求項7】
前記トンネルがNATM工法によって形成されている、請求項6に記載の鉄筋ユニットの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉄筋を組み合わせて形成された鉄筋ユニットを搬送する装置と、この装置を用いて鉄筋ユニットをトンネル内の設置予定場所に設置する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、地中に複数の矩形推進管を並設して複数の小断面トンネルを一体化することによって覆工体を構築した後に、この覆工体から大断面トンネルの構造に係わらない部分を撤去して大断面トンネルを施工する方法を開示している。この施工方法では、当該覆工体のうち大断面トンネルの構造に係わらない部分を撤去した後に、本設の大断面トンネル用の鉄筋を組み立て、コンクリートを打設して、大断面トンネル(ボックストンネル)を構築している(特許文献1の段落0002及び0024参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-94697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の鉄筋の組み立て作業は現場で行われるので、当該作業に手間と時間を要していた。
本発明は、このような実状に鑑み、現場での鉄筋組立作業の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため本発明に係る鉄筋ユニット搬送装置は、複数の鉄筋を組み合わせて形成された鉄筋ユニットであって、上面視で、トンネル軸方向を長辺とし、かつ、トンネル幅方向を短辺とする矩形状をなす鉄筋ユニットを、トンネル内の設置予定場所まで搬送する、鉄筋ユニット搬送装置である。鉄筋ユニットは、トンネル内の設置予定場所にて上面視で略90度回転させられて設置予定場所に設置され、かつ、鉄筋コンクリート製のトンネル構造物の隅角部を構成する。鉄筋ユニット搬送装置は、トンネルの床面上をトンネル軸方向に走行可能であり、かつ、鉄筋ユニットを載置可能な走行体と、走行体に支持されて鉄筋ユニットを揚重可能な揚重装置と、を備える。揚重装置は、トンネル軸方向に互いに間隔を空けて走行体に立設された複数の門型フレームと、門型フレームの上部同士に跨るように門型フレームの上部下面に設けられてトンネル軸方向に延在するレール部材と、レール部材に設けられてレール部材の延在方向に移動可能な移動体と、移動体に取り付けられて鉄筋ユニットを吊り下げて昇降可能な吊下装置と、を備える。レール部材は、上面視で、走行体よりトンネル軸方向両側に突出している。鉄筋ユニットには、鉄筋ユニットを補強する補強部材が取り付けられており、それにより、鉄筋ユニットが吊下装置によって吊り下げられても鉄筋ユニットの形状を保持可能である。
【0006】
本発明に係る鉄筋ユニットの設置方法は、前述の鉄筋ユニット搬送装置を用いて鉄筋ユニットをトンネル内の設置予定場所に設置する方法である。この方法では、トンネル外で形成され、かつ、運搬車両で運搬されてきた鉄筋ユニットを、鉄筋ユニット搬送装置のトンネル軸方向一側から、揚重装置を用いて、鉄筋ユニット搬送装置に搭載し、鉄筋ユニットを搭載した鉄筋ユニット搬送装置をトンネル内にてトンネル軸方向一側からトンネル軸方向他側に向けて走行させることで、鉄筋ユニットを設置予定場所まで搬入し、揚重装置を用いて、鉄筋ユニットを、鉄筋ユニット搬送装置のトンネル軸方向他側から、設置予定場所に設置する。この方法では、設置予定場所に鉄筋ユニットを設置するに先立って、設置予定場所にて、吊下装置によって吊り下げられた状態の鉄筋ユニットを上面視で略90度回転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えばトンネル外のヤードなどで鉄筋ユニットを予め組み立てておき、その鉄筋ユニットを前述の鉄筋ユニット搬送装置を用いてトンネル内の設置予定場所まで搬入することができるので、トンネル内の現場での鉄筋組立作業を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態におけるトンネル構造物の正面図である。
図2】同上実施形態におけるトンネル構造物の構築位置と導坑の形成位置との関係を示す図である。
図3】同上実施形態におけるトンネル構造物の鉄筋ユニット適用部位の一例を示す図である。
図4】同上実施形態における鉄筋ユニット搬送装置の側面図及び正面図である。
図5】同上実施形態における鉄筋ユニットの一例の斜視図である。
図6】同上実施形態における鉄筋ユニットの設置方法を示す図である。
図7】同上実施形態における鉄筋ユニットの設置方法を示す図である。
図8】同上実施形態における鉄筋ユニットの設置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態におけるトンネル構造物1の正面図である。
トンネル構造物1は、地盤G中(地中)に構築されるものであり、鉄筋コンクリート製(RC製)である。トンネル構造物1は、矩形断面を有する函体である。
【0011】
トンネル構造物1は、底版部2と、左右一対の側壁部3L,3Rと、中壁部4と、頂版部5とを備える。側壁部3L,3Rは、底版部2の左右端からそれぞれ立ち上がっている。中壁部4は、底版部2の左右方向中央部から立ち上がっている。頂版部5は、側壁部3L,3Rの上端及び中壁部4の上端に跨るように形成されている。
【0012】
トンネル構造物1は、例えば、中壁部4の左方と右方とにそれぞれ複数の車線を有する道路トンネルとして使用され得るものである。従って、トンネル構造物1は、いわゆる大断面トンネルである。
【0013】
図2は、トンネル構造物1の構築位置と導坑10の形成位置との関係を示す図である。
トンネル構造物1は、その長手方向に直交する横断面視で、複数の躯体に分割されており、これら躯体を順に構築することでトンネル構造物1が構築される。この点、図2には、前記複数の躯体のうちの1つの躯体11が図示されている。
【0014】
トンネル構造物1の構築方法の一例は、導坑10を地中に貫通形成すること、及び、貫通形成された導坑10内にて躯体11を構築することを含む。ここで、導坑10は、例えばNATM工法を用いて形成される。
【0015】
本実施形態では、躯体11は、底版部2の一部と右側の側壁部3Rの一部とを構成する。また、躯体11は、函体であるトンネル構造物1の隅角部を構成する。
【0016】
図3は、トンネル構造物1における鉄筋ユニット適用部位の一例を示す図である。
鉄筋コンクリート製の躯体11の構築に際しては、通常、現場にて鉄筋が組み立てられる。この点、本実施形態では、現場での鉄筋組立作業の低減を目的として、図3に示す部位P1にて鉄筋ユニットを適用する。ここで、鉄筋ユニットとは、複数の鉄筋を組み立てて形成されるものである。この鉄筋ユニットの一例が、後述する図5に示されている。部位P1は、躯体11において底版部2に対応する部位である。尚、鉄筋ユニットが適用される部位は部位P1に限らない。
【0017】
鉄筋ユニットは、例えば、トンネル構造物1の施工場所から離れたサイトで製作されて、トラック等の運搬車両で当該施工場所まで運搬されてくる。この運搬のために、鉄筋ユニットは、運搬車両の荷台に積載可能な大きさで製作されている。
【0018】
この運搬車両で運ばれてきた鉄筋ユニットは、後述する鉄筋ユニット搬送装置20(図4及び図6図8参照)で、導坑10内の設置予定場所(据え付け予定場所)まで搬送される。この鉄筋ユニット搬送装置20は、導坑10内を走行可能である。ここで、導坑10が本発明の「トンネル」に相当し得る。導坑10は、いわゆる小断面トンネルである。
【0019】
図4(ア)は鉄筋ユニット搬送装置20の側面図である。図4(イ)は鉄筋ユニット搬送装置20の正面図である。
鉄筋ユニット搬送装置20は、導坑10の床面上を走行可能な走行体21と、走行体21に支持される揚重装置22とを備える。
【0020】
走行体21は、上面視で矩形状をなす走行体本体部23と、走行体本体部23の四隅の下側に設けられて導坑10の床面上を転動可能な車輪24とを備える。本実施形態では、走行体21は、4輪駆動であり、すなわち、全ての車輪24が駆動輪である。従って、鉄筋ユニット搬送装置20は、自走式である。尚、走行体21には、各車輪24の駆動源として、モータ25が各別に設けられている。また、車輪24は例えばエアレスタイヤで構成され得る。
【0021】
各車輪24は、水平旋回可能に、走行体本体部23の下側に取り付けられている。ゆえに、走行体21は導坑10の床面上を導坑10の軸方向(前後方向)及び幅方向(左右方向)に走行可能(移動可能)である。
【0022】
走行体本体部23の上面には、鉄筋ユニットを載置するための台座部26が設けられている。台座部26は、左右方向に延びる複数のH形鋼材を前後方向に間隔を空けて走行体本体部23の上面に配置することで形成されている。従って、走行体21は、台座部26に鉄筋ユニットを載置可能である。
【0023】
揚重装置22は、複数(本実施形態では2つ)の門型フレーム27a,27bと、レール部材28と、移動体29と、吊下装置30とを備える。門型フレーム27a,27bは、前後方向に互いに間隔を空けて走行体本体部23に立設されている。レール部材28は前後方向に延びており、門型フレーム27a,27bの上部同士に跨るように門型フレーム27a,27bの上部下面27cに設けられている。レール部材28は、上面視で、走行体本体部23より前後方向に突出している。レール部材28の両端部には、移動体29の移動を規制するストッパ(図示せず)が設けられている。移動体29は、レール部材28に設けられてレール部材28の延在方向に移動可能であり、例えばプレーントロリである。吊下装置30は、移動体29に取り付けられており、鉄筋ユニットを吊り下げて昇降可能である。吊下装置30は例えばチェーンブロックである。
【0024】
図示は省略するが、鉄筋ユニット搬送装置20は、走行体21の台座部26に載置された鉄筋ユニットを走行体21に固定する固定手段を備える。この固定手段として例えばチェーンブロックが用いられる。
【0025】
図5は、本実施形態における鉄筋ユニットの一例(鉄筋ユニット40)の斜視図である。この鉄筋ユニット40は、前述の図3における部位P1にて適用され得るものである。
【0026】
鉄筋ユニット40は、水平方向に延びる複数の上筋(上側鉄筋)41と、水平方向に延びる複数の下筋(下側鉄筋)42と、鉄筋架台43とを含む。鉄筋架台43は、上下方向に延びる柱部材43aと、柱部材43aの下端部に設けられて下筋42に固定される下固定部43bと、柱部材43aの上端部に設けられて上筋41に固定される上固定部(図示せず)とを有する。従って、鉄筋ユニット40では、上筋41と下筋42とが鉄筋架台43を介して一体化されている。ここで、鉄筋架台43が、本発明の「鉄筋ユニットを補強する補強部材」として機能し得る。尚、鉄筋ユニット40は、配力筋やせん断補強筋を含んでもよい。
【0027】
本実施形態では、柱部材43aの長さ(高さ)が一定であるが、柱部材43aについては、上下方向に伸縮可能に構成されてもよい。これにより、例えば、鉄筋ユニット40の柱部材43aを、導坑10内の設置予定場所までの搬送時に短縮させておくことで、鉄筋ユニット40をコンパクトな状態とすることができ、また、当該設置予定場所にて柱部材43aを伸長させることで、上筋41をリフトアップすることができる。
【0028】
尚、鉄筋ユニット40に関して、主筋ピッチや主筋方向は特に精度を要するため、テンプレートなどを使用して主筋(鉄筋)を組み立てることが好ましい。この点、前述のテンプレートなどの、複数の鉄筋の相互間の位置(位置関係)を規定する鉄筋位置規定手段が鉄筋架台43に設けられていることが好ましい。
【0029】
鉄筋ユニット40は、複数の鉄筋が直方体状に組み立てられており、それゆえ、上面視で矩形状をなしている。鉄筋ユニット40については、トラック等の運搬車両の荷台寸法や鉄筋重量を考慮して設計されて製作される。
【0030】
図6(ア)~図8(オ)は、鉄筋ユニット40の設置方法を示す図である。
ここでは、鉄筋ユニット搬送装置20を用いて鉄筋ユニット40を導坑10内の設置予定場所Qに設置する方法について説明する。
【0031】
トンネル構造物1の施工場所から離れたサイトで製作された鉄筋ユニット40は、トラック等の運搬車両50で導坑10の坑口近傍まで運搬されてくる。そして、図6(ア)に示すように、導坑10の坑口近傍にて、鉄筋ユニット40を、運搬車両50から鉄筋ユニット搬送装置20に移し替える。この際には、レール部材28の後端部に移動体29及び吊下装置30が位置している状態で、鉄筋ユニット40が吊下装置30によって吊り下げられる。
【0032】
尚、図6(ア)~図8(オ)では、鉄筋ユニット40が、矩形状の吊り治具31を介して、吊下装置30によって吊り下げられているが、吊り治具31が不要であれば吊り治具31を省略してもよい。
【0033】
次に、図6(ア)及び(イ)に示すように、吊下装置30によって吊り下げられた鉄筋ユニット40を移動体29により前方にスライド移動させて、鉄筋ユニット40を走行体21の台座部26に載置する。すなわち、導坑10外で形成された鉄筋ユニット40を鉄筋ユニット搬送装置20に搭載する。そして、前述の固定手段を用いて、鉄筋ユニット40を走行体21に固定する。
【0034】
次に、図6(イ)及び図7(ウ)に示すように、鉄筋ユニット40を搭載した鉄筋ユニット搬送装置20を導坑10内にて走行させることで、鉄筋ユニット40を設置予定場所Qまで搬送する。そして、前述の固定手段による鉄筋ユニット40の走行体21への固定を解除して、図7(ウ)及び(エ)に示すように、吊下装置30によって吊り下げられた鉄筋ユニット40を移動体29により前方にスライド移動させて、鉄筋ユニット40をレール部材28の前端部の直下に位置させる。
【0035】
次に、図7(エ)及び図8(オ)に示すように、鉄筋ユニット40の設置予定場所Qにて、鉄筋ユニット40を上面視で略90度回転させて、設置する。ここで、上面視で矩形状をなす鉄筋ユニット40の当該矩形状の長辺については、図6(ア)~図7(エ)に示す状態において導坑10の軸方向に略平行である一方、図8(オ)に示す状態において導坑10の軸方向に略直交する。
【0036】
このようにして、鉄筋ユニット40が導坑10内の設置予定場所Qに設置される。
【0037】
本実施形態によれば、鉄筋ユニット搬送装置20は、複数の鉄筋を組み合わせて形成された鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を搬送する装置である。鉄筋ユニット搬送装置20は、トンネル(例えば導坑10)の床面上をトンネル軸方向(例えば導坑10の軸方向)に走行可能であり、かつ、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を載置可能な走行体21と、走行体21に支持されて鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を揚重可能な揚重装置22と、を備える。これにより、例えばトンネル外(例えば導坑10外)のヤードなどで鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を予め組み立てておき、その鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を鉄筋ユニット搬送装置20を用いてトンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)まで搬入することができるので、トンネル内(例えば導坑10内)の現場での鉄筋組立作業を低減することができる。
【0038】
また本実施形態によれば、鉄筋ユニット搬送装置20は、走行体21に載置された鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を走行体21に固定する固定手段(図示せず)を更に備える。これにより、走行体21に載置された鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)が走行体21の走行途中で走行体21に対して変位することを抑制することができる。
【0039】
また本実施形態によれば、走行体21は、トンネル(例えば導坑10)の床面上をトンネル幅方向(例えば導坑10の幅方向)に移動可能である。ゆえに、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)をトンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)に設置する際に、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)のトンネル幅方向(例えば導坑10の幅方向)での位置ずれを、走行体21のトンネル幅方向(例えば導坑10の幅方向)の移動で修正することができる。
【0040】
また本実施形態によれば、揚重装置22は、トンネル軸方向(例えば導坑10の軸方向)に互いに間隔を空けて走行体21に立設された複数の門型フレーム27a,27bと、門型フレーム27a,27bの上部同士に跨るように門型フレーム27a,27bの上部下面27cに設けられてトンネル軸方向(例えば導坑10の軸方向)に延在するレール部材28と、レール部材28に設けられてレール部材28の延在方向に移動可能な移動体29と、移動体29に取り付けられて鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を吊り下げて昇降可能な吊下装置30と、を備える。これにより、揚重装置22を簡素な構成とすることができる。
【0041】
また本実施形態によれば、レール部材28は、上面視で、走行体21よりトンネル軸方向(例えば導坑10の軸方向)に突出している。これにより、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)の運搬車両50から鉄筋ユニット搬送装置20への移し替えを容易に行うことができ、また、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)をその設置予定場所(例えば設置予定場所Q)に容易に設置することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、走行体21は、上面視で矩形状をなす走行体本体部23と、走行体本体部23の四隅の下側に設けられた車輪24と、を備え、車輪24の全てが駆動輪である。ゆえに、トンネル(例えば導坑10)の床面が傾斜していても走行体21は安定して走行することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)には、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を補強する補強部材(例えば鉄筋架台43)が取り付けられている。ゆえに、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)が吊下装置30によって吊り下げられても鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)の形状を良好に保持することができる。
【0044】
また本実施形態によれば、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)の設置方法は、鉄筋ユニット搬送装置20を用いて鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)をトンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)に設置する方法である。この方法では、トンネル外(例えば導坑10外)で形成された鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を鉄筋ユニット搬送装置20に搭載し、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を搭載した鉄筋ユニット搬送装置20をトンネル内(例えば導坑10内)にて走行させることで、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)をトンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)まで搬入する(図6(ア)~図8(オ)参照)。これにより、例えばトンネル外(例えば導坑10外)のヤードなどで鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を予め組み立てておき、その鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を鉄筋ユニット搬送装置20を用いてトンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)まで搬入することができるので、トンネル内(例えば導坑10内)の現場での鉄筋組立作業を低減することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、トンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)にて、鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を上面視で略90度回転させる(図7(エ)及び図8(オ)参照)。ゆえに、運搬車両50で運搬されてきた鉄筋ユニット(例えば鉄筋ユニット40)を、その向き(姿勢)を変更することなく鉄筋ユニット搬送装置20に移し替えてトンネル内(例えば導坑10内)の設置予定場所(例えば設置予定場所Q)まで搬入することができる。
【0046】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
複数の鉄筋を組み合わせて形成された鉄筋ユニットを搬送する装置であって、
トンネルの床面上をトンネル軸方向に走行可能であり、かつ、前記鉄筋ユニットを載置可能な走行体と、
前記走行体に支持されて前記鉄筋ユニットを揚重可能な揚重装置と、
を備える、鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項2]
前記走行体に載置された前記鉄筋ユニットを前記走行体に固定する固定手段を更に備える、請求項1に記載の鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項3]
前記走行体は前記床面上をトンネル幅方向に移動可能である、請求項1又は請求項2に記載の鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項4]
前記揚重装置は、
トンネル軸方向に互いに間隔を空けて前記走行体に立設された複数の門型フレームと、
前記門型フレームの上部同士に跨るように前記門型フレームの上部下面に設けられてトンネル軸方向に延在するレール部材と、
前記レール部材に設けられて前記レール部材の延在方向に移動可能な移動体と、
前記移動体に取り付けられて前記鉄筋ユニットを吊り下げて昇降可能な吊下装置と、
を備える、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項5]
前記レール部材は、上面視で、前記走行体よりトンネル軸方向に突出している、請求項4に記載の鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項6]
前記走行体は、上面視で矩形状をなす走行体本体部と、前記走行体本体部の四隅の下側に設けられた車輪と、を備え、
前記車輪の全てが駆動輪である、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項7]
前記鉄筋ユニットには、前記鉄筋ユニットを補強する補強部材が取り付けられている、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の鉄筋ユニット搬送装置。
[請求項8]
請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の鉄筋ユニット搬送装置を用いて前記鉄筋ユニットを前記トンネル内の設置予定場所に設置する方法であって、
前記トンネル外で形成された前記鉄筋ユニットを前記鉄筋ユニット搬送装置に搭載し、
前記鉄筋ユニットを搭載した前記鉄筋ユニット搬送装置を前記トンネル内にて走行させることで、前記鉄筋ユニットを前記設置予定場所まで搬入する、
鉄筋ユニットの設置方法。
[請求項9]
前記設置予定場所にて、前記鉄筋ユニットを上面視で略90度回転させる、請求項8に記載の鉄筋ユニットの設置方法。
【符号の説明】
【0047】
1…トンネル構造物、2…底版部、3L,3R…側壁部、4…中壁部、5…頂版部、10…導坑、11…躯体、20…鉄筋ユニット搬送装置、21…走行体、22…揚重装置、23…走行体本体部、24…車輪、25…モータ、26…台座部、27a,27b…門型フレーム、27c…上部下面、28…レール部材、29…移動体、30…吊下装置、31…吊り治具、40…鉄筋ユニット、41…上筋、42…下筋、43…鉄筋架台、43a…柱部材、43b…下固定部、50…運搬車両、G…地盤、P1…部位、Q…設置予定場所
図1
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図8