(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】AD変換器、及びそれを備えるセンサシステム
(51)【国際特許分類】
H03M 1/46 20060101AFI20241018BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H03M1/46
H03M1/12 B
H03M1/12 C
(21)【出願番号】P 2020162652
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中 順一
(72)【発明者】
【氏名】小畑 幸嗣
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170617(WO,A1)
【文献】特開2018-152839(JP,A)
【文献】特開2019-121851(JP,A)
【文献】特開2017-147712(JP,A)
【文献】特開2019-106706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0072515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号が入力される第1入力端子と、
第2信号が入力される第2入力端子と、
前記第1入力端子に入力される前記第1信号、及び、前記第2入力端子に入力される前記第2信号から選択した一の出力信号を出力する入力切替部と、
前記入力切替部の前記出力信号を複数ビットのデジタル信号に変換するAD変換を行う逐次比較型のAD変換部と、を備え、
前記AD変換部は、
最上位ビットから最下位ビットまでの対象ビットに対応する比較電圧を発生するDA変換部と、
前記入力切替部の前記出力信号と前記比較電圧との差電圧と基準電圧とを比較することで、前記対象ビットの値を決定する比較器と、
前記最下位ビットまで前記比較器が逐次比較動作を行った後の変換誤差を積分する積分器と、
制御部と、を有し、
前記第2信号は、電圧値が一定の直流信号であり、
前記制御部は、
前記第1信号のAD変換を行う第1変換動作では、前記積分器の積分結果に基づいて、次に前記第1信号のAD変換を行う場合の前記基準電圧を設定し、
前記第2信号のAD変換を行う第2変換動作では、前記基準電圧を一定の電圧レベルとする、
AD変換器。
【請求項2】
前記第1変換動作では、前記AD変換部が前記出力信号のAD変換を行う変換期間の後に、前記積分器が積分動作を行う積分期間が設定され、
前記第2変換動作では、前記変換期間の後に、前記積分器が積分動作を行わない、
請求項1に記載のAD変換器。
【請求項3】
前記第2変換動作では、前記
AD変換部が前記出力信号のAD変換を行う変換期間が終了すると、前記AD変換部が次の前記出力信号のAD変換を開始する、
請求項1又は2に記載のAD変換器。
【請求項4】
前記AD変換部が前記第1信号のAD変換を行う頻度と、前記AD変換部が前記第2信号のAD変換を行う頻度とが異なる、
請求項1~3のいずれか1項に記載のAD変換器。
【請求項5】
複数の前記第1信号がそれぞれ入力される複数の前記第1入力端子を備え、
前記入力切替部は、前記複数の第1信号、及び、前記第2信号から選択した一の前記出力信号を前記AD変換部に出力する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のAD変換器。
【請求項6】
前記積分器は、複数の前記第1信号にそれぞれ対応して前記積分
器の積分動作による積分値を保持する複数の容量素子を備える、
請求項1~
5のいずれか1項に記載のAD変換器。
【請求項7】
検知対象の事象の検知結果を出力するセンサと、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のAD変換器と、を備え、
前記センサから出力されるセンサ信号が前記第1信号として前記第1入力端子に入力される、
センサシステム。
【請求項8】
前記AD変換部による前記第2信号の変換結果を平均化する平均化フィルタを更に備える、
請求項
7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記AD変換部による前記第1信号の変換結果と、前記平均化フィルタから出力される平均値との差分を出力する出力部を更に備える、
請求項
8に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、AD(Analog-to-Digital)変換器、及びそれを備えるセンサシステムに関する。より詳細には、本開示は、逐次比較型のAD変換器、及びそれを備えるセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノイズシェーピング逐次比較型AD変換器を開示する。ノイズシェーピング逐次比較型AD変換器は、通常の逐次比較型AD変換器に、積分回路を追加した構成をとる。ノイズシェーピング逐次比較型AD変換器では、逐次比較動作を最下位ビットまで行った後のDA(Digital-to-Analog)変換器の残差電圧を積分し、次のサンプリングにフィードバックすることで、低周波帯域の雑音を高周波帯域に移動させるノイズシェーピング特性を得ている。そして、特許文献1では、高周波帯域に移動させた雑音をローパスフィルタで減衰させることで、AD変換器の高分解能化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AD変換器が複数の信号のAD変換を行う場合、複数の信号のそれぞれに対応して複数の積分回路(積分器)及びローパスフィルタが必要になるため、AD変換器が大型化するという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、小型化が可能なAD変換器、及びそれを備えるセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のAD変換器は、第1入力端子と、第2入力端子と、入力切替部と、逐次比較型のAD変換部と、を備える。前記第1入力端子には第1信号が入力され、前記第2入力端子には第2信号が入力される。前記入力切替部は、前記第1入力端子に入力される前記第1信号、及び、前記第2入力端子に入力される前記第2信号から選択した一の出力信号を出力する。前記AD変換部は、前記入力切替部の前記出力信号を複数ビットのデジタル信号に変換するAD変換を行う。前記AD変換部は、DA変換部と、比較器と、積分器と、制御部と、を有する。前記DA変換部は、最上位ビットから最下位ビットまでの対象ビットに対応する比較電圧を発生する。前記比較器は、前記入力切替部の前記出力信号と前記比較電圧との差電圧と基準電圧とを比較することで、前記対象ビットの値を決定する。前記積分器は、前記最下位ビットまで前記比較器が逐次比較動作を行った後の変換誤差を積分する。前記第2信号は、電圧値が一定の直流信号である。前記制御部は、前記第1信号のAD変換を行う第1変換動作では、前記積分器の積分結果に基づいて、次に前記第1信号のAD変換を行う場合の前記基準電圧を設定し、前記第2信号のAD変換を行う第2変換動作では、前記基準電圧を一定の電圧レベルとする。
【0007】
本開示の一態様のセンサシステムは、検知対象の事象の検知結果を出力するセンサと、前記AD変換器と、を備える。前記センサから出力されるセンサ信号が前記第1信号として前記第1入力端子に入力される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型化が可能なAD変換器、及びそれを備えるセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るAD変換器の概略的な回路図である。
【
図2】
図2は、同上のAD変換器が備える積分器の一例を示す概略的な回路図である。
【
図3】
図3は、同上のAD変換器の動作を説明するタイムチャートである。
【
図4】
図4は、同上のAD変換器がAD変換を行う信号の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態の変形例1に係るAD変換器の動作を説明するタイムチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態の変形例2に係るAD変換器がAD変換を行う信号の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態の変形例3に係るAD変換器の概略的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態のAD変換器1は、
図1に示すように、第1入力端子TAと、第2入力端子TBと、入力切替部2と、逐次比較型のAD変換部3と、を備える。
【0011】
第1入力端子TAには第1信号VAが入力される。
【0012】
第2入力端子TBには第2信号VBが入力される。
【0013】
入力切替部2は、第1入力端子TAに入力される第1信号VA、及び、第2入力端子TBに入力される第2信号VBから選択した一の出力信号V3を出力する。
【0014】
AD変換部3は、入力切替部2の出力信号V3を複数ビットのデジタル信号に変換するAD変換を行う。
【0015】
AD変換部3は、DA変換部5と、比較器7と、積分器61と、制御部4と、を備える。
【0016】
DA変換部5は、最上位ビットから最下位ビットまでの対象ビットに対応する比較電圧を発生する。
【0017】
比較器7は、入力切替部2の出力信号V3と比較電圧との差電圧V4と、基準電圧V5とを比較することで、対象ビットの値を決定する。
【0018】
積分器61は、最下位ビットまで比較器7が逐次比較動作を行った後の変換誤差を積分する。
【0019】
制御部4は、第1信号VAのAD変換を行う第1変換動作では、積分器61の積分結果に基づいて、次に第1信号VAのAD変換を行う場合の基準電圧V5を設定する。制御部4は、第2信号VBのAD変換を行う第2変換動作では、基準電圧V5を一定の電圧レベルとする。
本実施形態のAD変換器1は、逐次比較型のAD変換部3に積分器61を付加した、ノイズシェーピング型の逐次比較型AD変換器である。
【0020】
ここでいう、第1入力端子TA及び第2入力端子TBは、例えばパッケージ部品であるAD変換器1のリード又は電極であるが、電線などを接続するための部品(端子)でもよいし、回路基板に配線として形成された導電体の一部でもよい。
【0021】
入力切替部2には、複数のアナログ入力電圧として第1信号VAと第2信号VBが入力され、第1信号VA及び第2信号VBから選択した一の出力信号V3をAD変換部3に出力する。AD変換部3は、入力切替部2の出力信号V3を複数ビットのデジタル信号D1に変換するAD変換を行う。入力切替部2は、AD変換部3による出力信号V3の変換動作が終了すると、複数のアナログ入力電圧(第1信号VA及び第2信号VB)から新たに選択した出力信号V3をAD変換部3に出力してAD変換を実行させる。したがって、AD変換器1は、複数のアナログ入力電圧である第1信号VA及び第2信号VBのAD変換を時分割で行うことができる。
【0022】
また、本実施形態のAD変換器1では、第1信号VAのAD変換を行う第1変換動作では、積分器61がAD変換部3の変換誤差を積分した積分結果に基づいて、次に第1信号VAのAD変換を行う場合の基準電圧V5を設定しているので、変換精度が向上するという利点がある。また、第2信号VBのAD変換を行う第2変換動作では基準電圧V5を一定の電圧レベルとしているので、AD変換部3の変換誤差を積分する積分器61が不要である。そのため、第1信号VA及び第2信号VBの数だけ積分器61を設ける必要がなく、AD変換器1の小型化を図ることができる、という利点がある。
【0023】
また、本実施形態のセンサシステム100は、検知対象の事象の検知結果を出力するセンサ200と、AD変換器1と、を備える。センサ200から出力されるセンサ信号が第1信号VAとして第1入力端子TAに入力される。
【0024】
センサシステム100は、上記のAD変換器1を備えているので、全体として小型化を図ることができる。
【0025】
以下の実施形態では、入力切替部2に2つの第1信号VAと第2信号VBが入力され、AD変換器1が、第1信号VA及び第2信号VBから選択した一の出力信号(変換対象信号)V3を時分割でAD変換する場合について説明する。なお、入力切替部2に入力されるアナログ入力電圧(第1信号VA及び第2信号VB)の数は2つに限定されず、3つ以上のアナログ入力電圧が入力切替部2に入力され、AD変換器1が、3つ以上のアナログ入力電圧を時分割でAD変換してもよい。
【0026】
(2)詳細
(2.1)構成
以下、本実施形態に係るAD変換器1及びセンサシステム100の構成を
図1及び
図2に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本実施形態のAD変換器1はノイズシェーピング逐次比較型AD変換器である。AD変換器1は、上述のように、第1入力端子TAと、第2入力端子TBと、入力切替部2と、AD変換部3と、を備える。また、本実施形態のAD変換器1は、フィルタ回路9と、出力部10と、を更に備えている。
【0028】
第1入力端子TAには第1信号VAが入力され、第2入力端子TBには第2信号VBが入力される。第1信号VAは、検知対象の事象(例えば加速度又は角速度など)を検知するセンサ200の出力信号である。第1信号VAの周波数は検知対象の事象に応じて変わり得るが、数十Hz~数kHz程度の周波数成分を含む信号である。なお、センサ200は、加速度又は角速度を検知するセンサに限定されず、ジャイロセンサ、温度センサ、圧力センサなどのセンサでもよい。第2信号VBは、第1信号VAに比べて周波数が低い信号である。本実施形態では、第2信号VBは、センサ200の基準電位となる電圧信号であり、電圧値がほぼ一定の直流信号である。なお、基準電位は比較的周波数が高いノイズを含んでもよい。ここにおいて、センサ200の基準電位にオフセット電圧が重畳している場合、センサ200の出力信号である第1信号V1はセンサ200の検知結果にオフセット電圧が重畳した電圧となる。また、第2信号VBは、センサ200の基準電位となる電圧信号であるから、第2信号VBはオフセット電圧に相当する電圧となる。この場合、第1信号VAをAD変換した値から、オフセット電圧に相当する第2信号VBをAD変換した値を引いた値を求めることで、センサ200の検知結果をAD変換した値を求めることができる。
【0029】
入力切替部2の出力端子TCは、比較器7の一方の入力端子に接続されている。入力切替部2は、第1入力端子TAと出力端子TCとの間に接続されるスイッチ21と、第2入力端子TBと出力端子TCとの間に接続されるスイッチ22と、を備える。スイッチ21,22は、例えばCMOSトランジスタのような半導体スイッチであり、制御部4から入力される制御信号φA,φBによってオン/オフが切り替えられる。スイッチ21がオン、スイッチ22がオフになると、入力切替部2から第1信号VAが出力信号V3としてAD変換部3に出力される。スイッチ21がオフ、スイッチ22がオンになると、入力切替部2から第2信号VBが出力信号V3としてAD変換部3に出力される。
【0030】
AD変換部3は、DA変換部5と、比較器7と、上記した積分器61を含む基準電圧生成部6と、制御部4と、を備えている。また、AD変換部3は、基準電圧切替部8を更に備えている。
【0031】
制御部4は、例えば、ワイヤードロジックにて実現されている。制御部4は、入力切替部2、DA変換部5、基準電圧生成部6、基準電圧切替部8、及びフィルタ回路9の動作を制御することによって、AD変換器1にて第1信号VA及び第2信号VBのAD変換を時分割で行う。なお、制御部4は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されてもよい。
【0032】
DA変換部5は、例えば、12ビットのDA変換部であり、下位4ビットの下位DA変換部51と、上位8ビットの上位DA変換部52とを組み合わせて構成されている。
【0033】
下位DA変換部51は、複数の容量素子C1と、複数の容量素子C1にそれぞれ対応して設けられた複数のスイッチQ1と、を備えている。複数の容量素子C1の一端は、入力切替部2の出力端子TCにそれぞれ接続されている。複数のスイッチQ1は、例えばCMOSトランジスタのような半導体スイッチを用いて実現される。複数のスイッチQ1は、制御部4からの制御信号S1に応じて、複数の容量素子C1の各々を第1電圧VH及び第2電圧VLのいずれかに選択的に接続する。
【0034】
また、上位DA変換部52は、複数の容量素子C2と、DEM(Dynamic Element Matching)53,54と、を備える。複数の容量素子C2の一端は、入力切替部2の出力端子TCにそれぞれ接続されている。DEM53,54は、制御部4からの制御信号S1に応じて、複数の容量素子C2の各々を第1電圧VH及び第2電圧VLのいずれかに選択的に接続する。
【0035】
本実施形態では、複数のスイッチQ1とDEM53,54とで電圧切替回路55が構成されている。複数のスイッチQ1及びDEM53,54が、制御部4から入力される制御信号S1に応じて複数の容量素子C1,C2の各々を第1電圧VH及び第2電圧VLのいずれかに接続することで、DA変換部5が所望の電圧値の比較電圧を生成する。ここで、DA変換部5の出力端子は、入力切替部2の出力端子TCと共に、比較器7の一方の入力端子に接続されているため、入力切替部2の出力信号V3と、DA変換部5が発生する比較電圧との差電圧V4が比較器7の一方の入力端子に入力される。
【0036】
基準電圧生成部6は、積分器61と、容量素子C11と、を備える。
【0037】
図2は積分器61の具体回路の一例を示している。本実施形態の積分器61は、積分動作を順次行う複数段の積分回路61A,61B,61Cを含む。複数段の積分回路61A~61Cの各々は、オペアンプOP1~OP3を用いて積分動作を行う。
【0038】
積分回路61Aは、一段目の積分回路である。積分回路61Aは、オペアンプOP1と、容量素子C21と、スイッチQ21と、を備える。オペアンプOP1の反転入力端子は、スイッチQ21を介して積分器61の入力端子TA4に接続されている。容量素子C21は、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子との間に接続されている。オペアンプOP1の非反転入力端子はAD変換器1の基準電位に接続されている。ここにおいて、オペアンプOP1と、入力端子TA4に接続されるDA変換部5の容量素子と、容量素子C21とで積分回路61Aが構成されている。オペアンプOP1の出力端子(積分回路61Aの出力端子)は、積分回路61Bの入力端子に接続されている。
【0039】
積分回路61Bは、二段目の積分回路であり、オペアンプOP2と、容量素子C22~C24と、スイッチQ22~Q25と、を備える。オペアンプOP2の反転入力端子は、スイッチQ22,Q23を介して積分器61の入力端子TA4に接続されている。また、オペアンプOP2の反転入力端子は、スイッチQ24,Q25を介して積分回路61Aの出力端子に接続されている。ここで、スイッチQ22,Q23の接続点は、容量素子C22を介してAD変換器1の基準電位に接続されている。スイッチQ24,Q25の接続点は、容量素子C23を介してAD変換器1の基準電位に接続されている。容量素子C24は、オペアンプOP2の反転入力端子と出力端子との間に接続されている。そして、オペアンプOP2の出力端子(積分回路61Bの出力端子)は、積分回路61Cの入力端子に接続されている。
【0040】
ここで、積分器61の入力端子TA4と2段目の積分回路61Bが備えるオペアンプOP2の入力端子との間にはフィードフォワードパスFF1が形成されている。積分器61の入力端子TA4から入力される差電圧V4は容量素子C22でサンプリングされ、サンプリングされた差電圧V4が2段目の積分回路61BのオペアンプOP2に入力される。
【0041】
積分回路61Cは、三段目の積分回路であり、オペアンプOP3と、容量素子C25~C27と、スイッチQ26~Q29と、を備える。オペアンプOP3の反転入力端子は、スイッチQ26,Q27を介して積分器61の入力端子TA4に接続されている。また、オペアンプOP3の反転入力端子は、スイッチQ28,Q29を介して積分回路61Bの出力端子(つまり、オペアンプOP2の出力端子)に接続されている。ここで、スイッチQ26,Q27の接続点は、容量素子C25を介してAD変換器1の基準電位に接続されている。スイッチQ28,Q29の接続点は、容量素子C26を介してAD変換器1の基準電位に接続されている。容量素子C27は、オペアンプOP3の反転入力端子と出力端子との間に接続されている。
【0042】
ここで、積分器61の入力端子TA4と3段目の積分回路61Cが備えるオペアンプOP3の入力端子との間にはフィードフォワードパスFF2が形成されている。積分器61の入力端子TA4から入力される差電圧V4は容量素子C25でサンプリングされ、サンプリングされた差電圧V4が3段目の積分回路61CのオペアンプOP3に入力される。
【0043】
そして、積分回路61Cの出力端子(つまり、オペアンプOP3の出力端子)は、スイッチQ30を介して積分器61の出力端子TA5に電気的に接続されている。つまり、積分回路61Cの出力端子は、スイッチQ30を介して容量素子C11に接続されている。
【0044】
複数のスイッチQ21~Q30は例えばCMOSトランジスタなどの半導体スイッチで実現される。スイッチQ22,Q26は制御部4から入力される制御信号φ0に応じてオン又はオフに切り替わる。スイッチQ21,Q24は制御部4から入力される制御信号φ1に応じてオン又はオフに切り替わる。スイッチQ23,Q25,Q28は制御部4から入力される制御信号φ2に応じてオン又はオフに切り替わる。スイッチQ27,Q29,Q30は制御部4から入力される制御信号φ3に応じてオン又はオフに切り替わる。
【0045】
このように、
図2の例では、積分器61は3つの積分回路61A,61B,61Cが縦続接続されており、3段の積分回路61A~61Cが順次積分動作を行うことで、低周波帯域の雑音を高周波帯域に移動させるノイズシェーピング特性を実現している。ここで、積分器61の積分結果、つまり3段の積分回路61A~61Cが順次積分動作を行った結果は容量素子C11に蓄積され、容量素子C11の両端電圧を基準電圧V11として出力する。なお、本実施形態の積分器61では、3つの積分回路61A,61B,61Cが縦続接続されているが、これは一例に過ぎず、積分回路の段数は1段以上であれば、適宜変更が可能である。また、積分回路の段数が2段以上の場合に、積分器61の入力端子TA4と2段目以降に接続される1又は複数の積分回路との間にフィードフォワードパスが形成されることは必須ではなく、フィードフォワードパスは適宜省略が可能である。
【0046】
基準電圧切替部8は、制御部4からの制御信号に応じて、基準電圧生成部6が生成した基準電圧V11(つまり容量素子C11の両端電圧)、及び、AD変換部3の基準電位Vrefのいずれかを基準電圧V5として比較器7に出力する。第1信号VAのAD変換を行う第1状態では、基準電圧切替部8は、基準電圧生成部6が生成した基準電圧V11を基準電圧V5として比較器7に出力する。第2信号VBのAD変換を行う第2状態では、基準電圧切替部8は、AD変換部3の基準電位Vrefを基準電圧V5として比較器7に出力する。
【0047】
比較器7は、対象ビットごとに、入力切替部2の出力信号V3とDA変換部5が発生する比較電圧との差電圧V4と、基準電圧切替部8を介して入力される基準電圧V5との高低を比較する。比較器7は、対象ビットごとに差電圧V4と基準電圧との高低を比較することによって、対象ビットの値(0又は1)を判定する。
【0048】
制御部4は、第1信号VAのAD変換を行う第1変換動作では、基準電圧切替部8を制御して、基準電圧生成部6が生成した基準電圧V11を基準電圧V5として比較器7の他方の入力端子に入力させる。これにより、第1変換動作では、前回の第1信号VAのAD変換において最下位ビットの変換後に残った変換誤差を積分器61で積分した積分結果が基準電圧として用いられ、低周波領域の雑音を高周波領域に移動させるノイズシェーピング特性を実現できる。
【0049】
また、制御部4は、第2信号VBのAD変換を行う第2変換動作では、基準電圧切替部8を制御して、AD変換部3の基準電位Vrefを基準電圧V5として比較器7の他方の入力端子に入力させる。第2信号VBは第1信号VAよりも周波数が低い信号であり、本実施形態では第2信号VBがほぼ一定の電圧レベルであるAD変換器1の基準電位(基準信号)であるので、積分器61を用いて変換誤差を積分しなくても十分高い精度で変換結果を得ることができる。よって、第1信号VAのAD変換を行うための積分器61、容量素子C11、及び後述の低域通過フィルタ91とは別に、第2信号VBのAD変換を行うための積分器、容量素子、及び低域通過フィルタを備える必要がない。よって、第1信号VA及び第2信号VBの数だけ積分器、容量素子、及び低域通過フィルタを備える場合に比べてAD変換器1の小型化を図ることができる。
【0050】
また、制御部4は、比較器7による対象ビットの比較結果に基づき、対象ビットの次ビットの比較電圧をDA変換部5に生成させるための制御信号S1を生成し、次ビットの比較動作を行う場合にこの制御信号S1をDA変換部5に出力する。
【0051】
フィルタ回路9は、低域通過フィルタ91と、平均化フィルタ92と、フィルタ切替回路93とを備える。
【0052】
フィルタ切替回路93は、第1信号VAのAD変換を行う第1状態では、AD変換部3が出力するデジタル信号D1を低域通過フィルタ(LPF)91に入力させる。フィルタ切替回路93は、第2信号VBのAD変換を行う第2状態では、AD変換部3が出力するデジタル信号D1を平均化フィルタ(AF)92に入力させる。なお、AD変換器1は、AD変換部3から出力されるシリアルのデジタル信号をパラレルのデジタル信号に変換するシリアル-パラレル変換回路を備えてもよく、フィルタ回路9にはパラレルのデジタル信号に変換された後のデジタル信号が入力されてもよい。
【0053】
低域通過フィルタ91は、AD変換部3から出力されるデジタル信号D1、つまり第1信号VAをAD変換したデジタル信号D1の高周波成分を減衰させる。低域通過フィルタ91は低域通過特性を有するデジタルフィルタであり、第1信号VAをAD変換したデジタル信号の高周波成分を減衰させたデジタル信号D11を出力する。低域通過フィルタ91は、例えばワイヤードロジックにて実現されるデジタルフィルタであるが、プロセッサにて実現されてもよい。
【0054】
平均化フィルタ92は、AD変換部3から出力されるデジタル信号D1、つまり第2信号VBをAD変換したデジタル信号D1の平均化処理を行う。つまり、本実施形態のセンサシステム100は、AD変換部3による第2信号VBの変換結果を平均化する平均化フィルタ92を更に備えている。平均化フィルタ92は、AD変換部3が第2信号VBのAD変換を複数回行った結果をもとに、複数回のAD変換での変換結果の平均値であるデジタル信号D2を出力する。平均化フィルタ92は例えば加算積分及びビットシフトを行うことで平均化処理を行っており、低域通過フィルタ91に比べて簡単な回路で実現できる。平均化フィルタ92は、例えばワイヤードロジックにて実現可能であるが、プロセッサにて実現されてもよい。
【0055】
出力部10は、低域通過フィルタ91が出力するデジタル信号D11(第1信号VAをAD変換したデジタル信号)と、平均化フィルタ92が出力するデジタル信号D2(第22信号VBをAD変換したデジタル信号)との差分に相当するデジタル信号を出力する。つまり、本実施形態のセンサシステム100は、AD変換器3による第1信号VAの変換結果と、平均化フィルタ92から出力される平均値との差分を出力する出力部10を更に備えている。本実施形態では、第1信号VAがセンサ200の出力信号、第2信号VBが、センサ200の基準電位となる電圧信号であるので、出力部10は、センサ200の出力信号からオフセット成分を除いた信号に相当するデジタル信号を出力する。
【0056】
(2.2)動作説明
本実施形態のAD変換器1の動作を
図1~
図4等に基づいて説明する。
【0057】
図3は、
図1及び
図2に示すAD変換器1の動作を説明するタイミングチャートの一例である。なお、
図3はAD変換器1の一部の動作を示したタイムチャートである。
図4はAD変換部3に入力される信号を説明するグラフである。
【0058】
制御信号φAはスイッチ21の制御信号であり、制御信号φBはスイッチ22の制御信号である。また、制御信号φ0,φ1,φ2,φ3は積分器61が備えるスイッチQ21~Q30の制御信号である。制御信号φA,φB及びφ0~φ3は制御部4から出力される。
【0059】
制御部4は、第1信号VAのAD変換(第1変換動作)を行う第1変換期間ST1と、第2信号VBのAD変換(第2変換動作)を行う第2変換期間ST2と、を交互に設定することで、第1信号VA及び第2信号VBのAD変換を時分割で行う。
図3の動作例では、第1信号VAのAD変換を行う頻度と、第2信号VBのAD変換を行う頻度とは同じになる。
【0060】
まず、第1変換期間ST1でのAD変換器1の動作を説明する。第1変換期間ST1のリセット期間T1では、制御部4は、スイッチQ1及びDEM53,54を制御して、DA変換部5が備える容量素子C1,C2のリセット動作を行う。また、第1変換期間ST1では、制御部4は、基準電圧切替部8を制御して基準電圧生成部6が生成する基準電圧V11を基準電圧V5として比較器7に入力させる。また、第1変換期間ST1では、AD変換部3から出力されるデジタル信号が低域通過フィルタ91に入力されるようにフィルタ切替回路93を切り替える。なお、AD変換器1がAD変換を開始する初期状態では容量素子C11の両端電圧V11は基準電位Vrefに近い値となっている。
【0061】
容量素子C1,C2のリセット動作が終了すると、サンプリング期間T2において、制御部4は、スイッチ21をオンにして、第1入力端子TAに入力される第1信号VAをサンプリングし、第1信号VAを出力信号V3としてDA変換部5に入力する。
【0062】
その後の変換期間T3では、制御部4は、スイッチ21,22をオフにした状態で、AD変換部3にAD変換を行わせる。
【0063】
制御部4は、まず、最上位ビットのみ例えば「1」となる12ビットのデジタル値「100000000000」に対応した比較電圧((VH-VL)/2)を発生させる制御信号S1をDA変換部5に出力する。このとき、比較器7は、出力信号V3(第1信号VA)と比較電圧との差電圧V4と、基準電圧V5との高低を比較することによって、対象ビットである最上位ビットの値を求める。
【0064】
ここで、差電圧V4が基準電圧V5以上であれば、比較器7は最上位ビット(対象ビット)の値を例えば「1」とし、差電圧V4が基準電圧V5未満であれば、比較器7は最上位ビット(対象ビット)の値を例えば「0」とする。ここで、制御部4は、比較器7の比較結果に基づいて、対象ビットの次ビットの値を求める場合に、DA変換部5により発生させる比較電圧の値を決定する制御信号S1を生成し、この制御信号S1をDA変換部5に出力する。
【0065】
例えば、最上位ビットの値が「1」であれば、制御部4は、最上位ビットの次ビットの値を求める場合に、デジタル値「110000000000」に対応した比較電圧(3(VH-VL)/4)を発生させる制御信号S1をDA変換部5に出力する。このとき、比較器7は、出力信号V3(第1信号VA)と比較電圧との差電圧V4と、基準電圧V5との高低を比較することによって、対象ビットの値を求める。差電圧V4が基準電圧V5以上であれば、比較器7は(最上位-1)ビット(対象ビット)の値を「1」とし、差電圧V4が基準電圧V5未満であれば、比較器7は(最上位-1)ビット(対象ビット)の値を「0」とする。
【0066】
一方、最上位ビットの値が「0」であれば、制御部4は、最上位ビットの次ビットの値を求める場合に、デジタル値「010000000000」に対応した比較電圧((VH-VL)/4)を発生させる制御信号S1をDA変換部5に出力する。このとき、比較器7は、出力信号V3(第1信号VA)と比較電圧との差電圧V4と、基準電圧V5との高低を比較することによって、対象ビットの値を求める。差電圧V4が基準電圧V5以上であれば、比較器7は(最上位-1)ビット(対象ビット)の値を「1」とし、差電圧V4が基準電圧V5未満であれば、比較器7は(最上位-1)ビット(対象ビット)の値を「0」とする。
【0067】
AD変換部3が、このような動作を最上位ビットから最下位ビットまで繰り返すことで各ビットの値が決定される。各ビットの比較結果である複数ビットのデジタル信号D1はフィルタ回路9に出力される。ここで、AD変換部3から出力されるデジタル信号D1はフィルタ切替回路93によって低域通過フィルタ91に入力され、低域通過フィルタ91から高周波帯域の雑音を低減したデジタル信号D11が出力される。
【0068】
また、制御部4は、AD変換部3による対象ビットの比較動作が最下位ビットまで終了すると、積分期間T4の動作を開始する。積分期間T4では、制御部4は、積分器61に積分動作を行わせ、次に第1信号VAのAD変換を行う場合に用いる基準電圧V11を生成する動作を行う。
【0069】
積分期間T4では、制御部4は、まず積分器61に制御信号φ0を出力して、スイッチQ22及びQ26をオフにする。ここで、スイッチQ22及びQ26は、変換期間T3ではオンになっている。したがって、積分期間T4が開始するタイミングでは、容量素子C22及びC25は、最下位ビットまでの逐次比較処理が終了した時点での出力信号V3(第1信号VA)と比較電圧との差電圧V4(つまり変換誤差の電圧)が充電されている。
【0070】
積分期間T4において、制御部4は、スイッチQ22及びQ26をオフにするのと略同時に、スイッチQ21及びQ24をオンにする。これにより、最下位ビットまでの逐次比較処理が終了した時点での出力信号V3(第1信号VA)と比較電圧との差電圧V4が積分回路61Aで積分され、その積分値が容量素子C23に蓄積される。
【0071】
次に、制御部4は、スイッチQ21及びQ24をオフにして、積分回路61Aの積分値を容量素子C23にサンプルホールドした後、スイッチQ23,Q25及びQ28をオンする。これにより、容量素子C23でサンプルホールドされた積分値が2段目の積分回路61Bで積分される。また、容量素子C22でサンプルホールドされていた最下位ビットでの差電圧がフィードフォワードパスFF1を介して積分回路61Bに入力され、積分回路61Bで積分される。このとき、積分回路61Bの積分値は容量素子C26に蓄積される。
【0072】
次に、制御部4は、スイッチQ23,Q25及びQ28をオフにして、積分回路61Bの積分値を容量素子C26にサンプルホールドした後、スイッチQ27,Q29及びQ30をオンする。これにより、容量素子C26でサンプルホールドされた積分値が3段目の積分回路61Cで積分される。また、容量素子C25でサンプルホールドされていた最下位ビットでの差電圧がフィードフォワードパスFF2を介して積分回路61Cに入力され、積分回路61Cで積分される。このとき、積分回路61Cの積分値はスイッチQ30を介して容量素子C11に蓄積される。
【0073】
そして、制御部4は、スイッチQ27,Q29及びQ30をオフにして、3段目の積分回路61Cの積分値を容量素子C11にサンプルホールドする。以上により、基準電圧生成部6では3次積分が実現され、容量素子C11にサンプルホールドされた3次積分の積分値は、第1信号VAの次回のAD変換時の基準電圧V5として比較器7にフィードバックされる。これにより、3次のノイズシェーピング特性を有する逐次比較型AD変換器1が実現される。
【0074】
次に、第2変換期間ST2でのAD変換器1の動作を説明する。第2変換期間ST2でのAD変換器1の動作は、積分器61が変換誤差の積分動作を行わない点で、第1変換期間ST1での動作と相違する。第2変換期間ST2のサンプリング期間T2ではスイッチ22をオンにして第2信号VBをサンプリングし、この第2信号VBをDA変換部5に出力する。第2変換期間ST2では、制御部4は、基準電圧切替部8を制御して基準電位Vrefを基準電圧V5として比較器7に入力させており、第2信号VBのAD変換が行われる。第2変換期間ST2では、AD変換部3から出力されるデジタル信号D1が平均化フィルタ92に入力されるようにフィルタ切替回路93が切り替えられている。第2信号VBのAD変換が終了すると、第2信号VBをAD変換したデジタル信号D1が平均化フィルタ92によって平均化され、デジタル信号D1の平均値が平均化フィルタ92から出力される。
【0075】
そして、第1信号VA及び第2信号VBのAD変換が終了すると、出力部10は、低域通過フィルタ91から出力される第1信号VAのデジタル信号D11と、平均化フィルタ92から出力される第2信号VBのデジタル信号D2との差分を求め、差分に応じたデジタル信号を出力する。
【0076】
本実施形態のAD変換器1では、
図4に示すように、第1信号VAのAD変換を行う第1変換期間ST1と、第2信号VBのAD変換を行う第2変換期間ST2と、を交互に設けており、第1信号VA及び第2信号VBのAD変換が時分割で交互に行われる。
【0077】
第2信号VBをAD変換する第2変換期間ST2では、基準電位Vrefが基準電圧V5として比較器7に入力されるので、第2信号VBのAD変換を行った後に積分器61による積分動作は行われない。つまり、第1変換動作では、AD変換部3が出力信号V3(第1信号VA)のAD変換を行う変換期間T3の後に、積分器61が積分動作を行う積分期間T4が設定されるのに対して、第2変換動作では、変換期間T3の後に、積分器61が積分動作を行わない。これにより、AD変換器1の消費電力を抑制することができる。
【0078】
(3)変形例
なお、上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0079】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0080】
(3.1)変形例1
変形例1のAD変換器1は、第2変換期間ST2において積分期間T4を省いている点で上記の実施形態と相違する。なお、変形例1のAD変換器1の構成は上記実施形態のAD変換器1と同様であるので、共通の構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0081】
図5は、変形例1のAD変換器1の動作を説明するタイミングチャートの一例である。なお、
図5はAD変換器1の一部の動作を示したタイムチャートである。
【0082】
変形例1のAD変換器1では、
図5に示すように、第2変換期間ST2において変換期間T3が終了すると、AD変換部3が次の出力信号V3のAD変換を開始するように、制御部4がAD変換部3の変換動作を制御する。つまり、第2変換期間ST2において変換期間T3が終了したタイミングで、AD変換部3が次の出力信号V3のAD変換を開始するように、制御部4がAD変換部3の変換動作を制御する。これにより、第1信号VA及び第2信号VBの変換に要する時間(第1変換期間ST1と第2変換期間ST2との合計時間)を、省略した積分期間T4の時間だけ短縮できる。
【0083】
(3.2)変形例2
変形例2のAD変換器1は、AD変換部3が第1信号VAのAD変換を行う頻度と、AD変換部3が第2信号VBのAD変換を行う頻度とが異なる点で、上記実施形態のAD変換器1と相違する。なお、変形例2のAD変換器1の構成は上記実施形態のAD変換器1と同様であるので、共通の構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0084】
変形例2のAD変換器1では、例えば
図6に示すように、制御部4は、第1信号VAをAD変換する第1変換動作を行った後に、第2信号VBをAD変換する第2変換動作を3回繰り返した後に、第1信号VAをAD変換する第1変換動作を行うように、AD変換部3等を制御する。これにより、第1信号VAをAD変換する1回分の第1変換期間ST1と、第2信号VBをAD変換する3回分の第2変換期間ST2とで、1回の変換周期が構成され、制御部4は、この変換周期を繰り返すようにAD変換部3を制御する。
【0085】
図6の例では、第1信号VAのAD変換が1回行われる間に、第2信号VBのAD変換が3回行われることになる。上記の実施形態では、第2信号VBをAD変換したデジタル信号を平均化フィルタ92で平均化するのであるが、平均化フィルタ92が例えば12回分のデジタル信号を平均化して出力する場合、第1信号VAのAD変換を行う頻度よりも、第2信号VBのAD変換を行う頻度を増やすことで、12回分の平均値が得られるまでの時間を短縮できる。
【0086】
なお、
図6の例では、第1信号VAのAD変換が1回行われる間に、第2信号VBのAD変換が3回行われるのであるが、第2信号VBのAD変換が行われる回数は3回に限定されず、2回でもよいし4回以上でもよい。また、
図6の例とは逆に、第2信号VBのAD変換を行う頻度よりも、第1信号VAのAD変換を行う頻度を増やしてもよい。
【0087】
(3.3)変形例3
変形例3のAD変換器1は、
図7に示すように、複数(例えば2つ)の第1信号VA1,VA2のAD変換を行う点で上記の実施形態と相違する。なお、変形例3のAD変換器1において上記実施形態のAD変換器1と共通の構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0088】
変形例3のAD変換器1は、複数(例えば2つ)の第1信号VA1,VA2がそれぞれ入力される複数(例えば2つ)の第1入力端子TA1,TA2を備える。第1入力端子TA1にはセンサ201の出力信号が第1信号VA1として入力され、第1入力端子TA2にはセンサ202の出力信号が第1信号VA2として入力される。入力切替部2は、第1入力端子TA1と出力端子TCとの間に接続されるスイッチ211と、第1入力端子TA2と出力端子TCとの間に接続されるスイッチ212と、第2入力端子TBと出力端子TCとの間に接続されるスイッチ22と、を備える。スイッチ211,212,22は、制御部4から入力される制御信号φA1,φA2,φBによってオン/オフが切り替えられる。入力切替部2は、制御部4から入力される制御信号φA1,φA2,φBに応じて、複数(例えば2つ)の第1信号VA1,VA2、及び、第2信号VBから選択した一の信号を出力信号V3としてAD変換部3に出力する。これにより、変形例3のAD変換器1では複数の第1信号VA1,VA2のAD変換を行うことができる。
【0089】
変形例3のAD変換器1では、基準電圧生成部6が、複数(例えば2つ)の第1信号VA1,VA2にそれぞれ対応して積分値を保持する複数(例えば2つ)の容量素子C11,C12を備えている。容量素子C11は、スイッチQ11を介して積分器61の出力端子及び基準電圧切替部8の入力端子にそれぞれ接続されている。容量素子C12は、スイッチQ12を介して積分器61の出力端子及び基準電圧切替部8の入力端子にそれぞれ接続されている。スイッチQ11,Q12は制御部4からの制御信号に応じてオン/オフが切り替えられる。
【0090】
また、センサシステム100は、2つの第1信号VA1,VA2にそれぞれ対応する2つの低域通過フィルタ(LPF)911,912を備えている。
【0091】
制御部4は、第1信号VA1のAD変換を行う第1変換状態では、スイッチ211をオン、スイッチ212,22をオフにして、第1信号VA1を出力信号V3としてAD変換部3に出力する。また、制御部4は、スイッチQ11をオン、スイッチQ12をオフにして、積分期間T4においてAD変換部3での変換誤差を積分した積分値を容量素子C11に蓄積させる。これにより、第1信号VA1をAD変換する場合の変換誤差の積分値が容量素子C11に蓄積され、基準電圧生成部6は容量素子C11の両端電圧を基準電圧V11として出力する。そして、この基準電圧V11が第1信号VA1を次回AD変換する場合の基準電圧V5として使用されるので、第1信号VA1の変換精度が向上するという利点がある。そして、制御部4は、フィルタ切替回路93を制御してAD変換部3によってAD変換されたデジタル信号D1を、第1信号VA1に対応する低域通過フィルタ911に入力させており、高周波成分を除去したデジタル信号D11が出力部10に入力される。このとき、出力部10は、第1信号VA1をAD変換したデジタル信号D11と、平均化フィルタ92から入力される第2信号VBの平均値との差分をとって出力するので、第1信号VA1からオフセット成分を除去した信号を出力することができる。
【0092】
また、制御部4は、第1信号VA2のAD変換を行う第1変換状態では、スイッチ212をオン、スイッチ211,22をオフにして、第1信号VA2を出力信号V3としてAD変換部3に出力する。また、制御部4は、スイッチQ12をオン、スイッチQ11をオフにして、積分期間T4においてAD変換部3での変換誤差を積分した積分値を容量素子C12に蓄積させる。これにより、第1信号VA2をAD変換する場合の変換誤差の積分値が容量素子C12に蓄積され、基準電圧生成部6は容量素子C12の両端電圧を基準電圧V12として出力する。そして、この基準電圧V12が第1信号VA2を次回AD変換する場合の基準電圧V5として使用されるので、第1信号VA2の変換精度が向上するという利点がある。そして、制御部4は、フィルタ切替回路93を制御してAD変換部3によってAD変換されたデジタル信号D1を、第1信号VA2に対応する低域通過フィルタ912に入力させており、高周波成分を除去したデジタル信号D12が出力部10に入力される。このとき、出力部10は、第1信号VA2をAD変換したデジタル信号D12と、平均化フィルタ92から入力される第2信号V2の平均値との差分をとって出力するので、第1信号VA2からオフセット成分を除去した信号を出力することができる。
【0093】
なお、本変形例では、AD変換器1は2つの第1信号VA1,VA2のAD変換を行うのであるが、AD変換器1は3つ以上の第1信号VAのAD変換を行うものでもよい。この場合、AD変換器1は、3つ以上の第1信号VAのそれぞれに対応して、積分器61の積分結果をそれぞれ保持する3つ以上の容量素子を備えていればよい。
【0094】
また、本変形例では、2つの第1信号VA1,VA2にそれぞれ対応する2つの低域通過フィルタ911,912を設けている。そして、フィルタ切替回路93が、変換対象の第1信号VA1,VA2に対応する低域通過フィルタ911又は912にAD変換部3の変換結果を入力して高周波帯域の雑音を低減している。このように、複数の第1信号VA1,VA2に対応した複数の低域通過フィルタ911,912を用意しているので、複数の第1信号VA1,VA2の周波数に応じて、対応する低域通過フィルタ911,912を設計できる、という利点がある。これにより、複数の第1信号VA1,VA2の周波数が異なる場合でも、複数の第1信号VA1,VA2をそれぞれデジタル値に変換したデジタル信号D11,D12を出力することができる。
【0095】
(3.4)その他の変形例
上記実施形態において、DA変換部5、積分器61などの回路構成は一例であり適宜変更が可能である。
【0096】
上記実施形態において、第1入力端子TA,TA1,TA2に入力される第1信号VA,VA1,VA2は、例えば加速度センサ、角速度センサ、ジャイロセンサ、又は圧力センサ等の各種のセンサ200の出力信号であるが、センサ200の出力信号以外の電圧信号でもよい。また、第2入力端子TBに入力される第2信号VBは、センサ200の基準電位である基準信号に限定されず、基準信号以外の電圧信号でもよい。
【0097】
上記実施形態において、入力切替部2はマルチプレクサなどで実現されてもよい。
【0098】
上記実施形態において、
図1、
図2及び
図7の回路例では信号処理回路をシングルエンド構成としているが、全てあるいはその一部が差動構成であってもよい。
【0099】
上記の実施形態において、差電圧と比較基準電圧との比較などの2値の比較において、「以上」としているところは「より大きい」であってもよい。つまり、2値の比較において、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」としているところは「以下」であってもよい。
【0100】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様のAD変換器(1)は、第1入力端子(TA)と、第2入力端子(TB)と、入力切替部(2)と、逐次比較型のAD変換部(3)と、を備える。第1入力端子(TA)には第1信号(VA)が入力され、第2入力端子(TB)には第2信号(VB)が入力される。入力切替部(2)は、第1入力端子(TA)に入力される第1信号(VA)、及び、第2入力端子(TB)に入力される第2信号(VB)から選択した一の出力信号(V3)を出力する。AD変換部(3)は、入力切替部(2)の出力信号(V3)を複数ビットのデジタル信号に変換するAD変換を行う。AD変換部(3)は、DA変換部(5)と、比較器(7)と、積分器(61)と、制御部(4)と、を有する。DA変換部(5)は、最上位ビットから最下位ビットまでの対象ビットに対応する比較電圧を発生する。比較器(7)は、入力切替部(2)の出力信号(V3)と比較電圧との差電圧(V4)と、基準電圧(V5)とを比較することで、対象ビットの値を決定する。積分器(61)は、最下位ビットまで比較器(7)が逐次比較動作を行った後の変換誤差を積分する。制御部(4)は、第1信号(VA)のAD変換を行う第1変換動作では、積分器(61)の積分結果に基づいて、次に第1信号(VA)のAD変換を行う場合の基準電圧(V5)を設定し、第2信号(VB)のAD変換を行う第2変換動作では、基準電圧(V5)を一定の電圧レベルとする。
【0101】
この態様によれば、第1変換動作では、積分器(61)がAD変換部(3)の変換誤差を積分した積分結果に基づいて、次に第1信号(VA)のAD変換を行う場合の基準電圧(V5)を設定しているので、変換精度が向上するという利点がある。また、第2変換動作では基準電圧(V5)を一定の電圧レベルとしているので、AD変換部(3)の変換誤差を積分する積分器(61)が不要である。そのため、第1信号(VA)及び第2信号(VB)の数だけ積分器(61)を設ける必要がなく、AD変換器(1)の小型化を図ることができる、という利点がある。
【0102】
第2の態様のAD変換器(1)では、第1の態様において、第1変換動作では、AD変換部(3)が出力信号(V3)のAD変換を行う変換期間(T3)の後に、積分器(61)が積分動作を行う積分期間(T4)が設定される。第2変換動作では、変換期間(T3)の後に、積分器(61)が積分動作を行わない。
【0103】
この態様によれば、第2変換動作では、変換期間(T3)の後に、積分器(61)が積分動作を行わないので、消費電力を低減できる。
【0104】
第3の態様のAD変換器(1)では、第1又は2の態様において、第2変換動作では、変換期間(T3)が終了すると、AD変換部(3)が次の出力信号(V3)のAD変換を開始する。
【0105】
この態様によれば、第2変換動作では、変換期間(T3)の後に、積分器(61)が積分動作を行う期間がないので、第1変換動作及び第2変換動作にかかる時間を短縮できる。
【0106】
第4の態様のAD変換器(1)では、第1~3のいずれかの態様において、AD変換部(3)が第1信号(VA)のAD変換を行う頻度と、AD変換部(3)が第2信号(VB)のAD変換を行う頻度とが異なる。
【0107】
この態様によれば、第1信号(VA)のAD変換を行う頻度と、第2信号(VB)のAD変換を行う頻度とを異ならせることができる。
【0108】
第5の態様のAD変換器(1)では、第1~4のいずれかの態様において、第2信号(VB)は、第1信号(VA)に比べて周波数が低い信号である。
【0109】
この態様によれば、第1信号(VA)に比べて周波数が低い第2信号(VB)については積分器(61)による積分動作を省略できる。
【0110】
第6の態様のAD変換器(1)では、第1~5のいずれかの態様において、複数の第1信号(VA1,VA2)がそれぞれ入力される複数の第1入力端子(TA1,TA2)を備える。入力切替部(2)は、複数の第1信号(VA1,VA2)、及び、第2信号(VB)から選択した一の出力信号(V3)をAD変換部(3)に出力する。
【0111】
この態様によれば、複数の第1信号(VA1,VA2)のAD変換を行うことができる。
【0112】
第7の態様のAD変換器(1)では、第1~6のいずれかの態様において、積分器(61)は、複数の第1信号(VA1,VA2)にそれぞれ対応して積分値を保持する複数の容量素子(C11,C12)を備える。
【0113】
この態様によれば、複数の第1信号(VA1,VA2)にそれぞれ対応して積分値を保持する複数の容量素子(C11,C12)を備えているので、複数の第1信号(VA1,VA2)のAD変換の精度が向上するという利点がある。
【0114】
第8の態様のセンサシステム(100)は、検知対象の事象の検知結果を出力するセンサと、AD変換器(1)と、を備える。センサから出力されるセンサ信号が第1信号(VA)として第1入力端子(TA)に入力される。
【0115】
この態様によれば、小型化を図ることが可能なAD変換器(1)を備えるセンサシステム(100)を提供することができる。
【0116】
第9の態様のセンサシステム(100)では、第8の態様において、AD変換部(3)による第2信号(VB)の変換結果を平均化する平均化フィルタ(92)を更に備える。
【0117】
この態様によれば、平均化フィルタ(92)が第2信号(VB)の変換結果を平均化することで、第2信号(VB)の変換誤差を低減できる。
【0118】
第10の態様のセンサシステム(100)では、第9の態様において、AD変換部(3)による第1信号(VA)の変換結果と、平均化フィルタ(92)から出力される平均値との差分を出力する出力部(10)を更に備える。
【0119】
この態様によれば、第1信号(VA)の変換結果と、平均化フィルタ(92)から出力される平均値との差分を出力することができる。
【0120】
第2~第7の態様に係る構成については、AD変換器(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0121】
上記態様に限らず、上記実施形態に係るAD変換器(1)の種々の構成(変形例を含む)は、AD変換器(1)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0122】
第9~第10の態様に係る構成については、センサシステム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 AD変換器
2 入力切替部
3 AD変換部
5 DA変換部
7 比較器
10 出力部
61 積分器
92 平均化フィルタ
100 センサシステム
T3 変換期間
T4 積分期間
TA,TA1,TA2 第1入力端子
TB 第2入力端子
V3 出力信号
V4 差電圧
V5 基準電圧
VA,VA1,VA2 第1信号
VB 第2信号