(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】仮復旧方法、仮復旧構造、本設工法、ケーブル溝工法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20241018BHJP
E01C 9/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E02D29/05 F
E01C9/08 Z
(21)【出願番号】P 2021007193
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521030641
【氏名又は名称】北野電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230836
【氏名又は名称】日本興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】伊田 隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】坪内 孝政
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉隆
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036720(JP,A)
【文献】特開2006-274583(JP,A)
【文献】特開2008-190182(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217909(JP,U)
【文献】特開2005-120590(JP,A)
【文献】特開2001-311109(JP,A)
【文献】実開昭62-135525(JP,U)
【文献】特開2004-068539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
E02D 29/00-29/05
E03F 1/00-11/00
F16L 1/028
E04C 1/39
H02G 9/00-9/12
E01C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に管路を施工した後に開放穴を一時的に埋戻して仮復旧状態としケーブル類の敷設時に再掘削する必要があるケーブル類の施工に適用される、仮復旧方法であって、
以下の工程(1)~(6)をこの順で行う、仮復旧方法。
・工程(1)
:上記管路において床堀りまたは掘削を行って、基面と1対の壁面とで囲まれた管路部を開放し、上記基面上に基礎を敷設する工程。
・工程(2)
:プレキャストコンクリートブロック
として開口部と側面と底面を有するコンクリート製U字型トラフを、上記基礎の上に
上記管路に沿って整列・連結・密着するように設置
して、上記ケーブル類の敷設路を形成する工程。
・工程(3)
:上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記
U字型トラフの外面とで囲まれた空間に、コンクリート台座を施工
し、その結果、上記管路部において、上記U字型トラフの外側で上記開口部以下の空間に上記コンクリート台座が設置され、上記コンクリート台座は上記壁面に沿って上記管路の長手方向に延長するコンクリート壁を形成し、上記コンクリート台座の最高部は上記U字型トラフの上記開口部の上端に一致する、工程。
・工程(4)
:上記コンクリート台座に土留め部材を固定する工程。
ただし上記土留め部材は複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、上記土留め部材のうち対向する1対の上記土留め板とその間の上記切梁からなる部分は上記切梁の両端にそれぞれ1つの土留め板がT字状に連結したものである。本工程を経て上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されており、その結果、上記管路部を上から見た場合には、上記土留め部材は、全体として梯子状をなし、上記管路部に整列する上記U字型トラフの開口部を挟み、上記管路の長手方向に延長して配置され(ただし、上記土留め板が整列してなる部分が梯の2本の支柱に、上記切梁が梯の桟に当たる)、またその結果、上記管路部を横から見た場合には、上記土留め部材は2つのT字構造が連結された形状を示す。
・工程(5)
:上記土留め部材
の上部に仮復旧用蓋を取付ける工程。
・工程(6)
:上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた空間
である背面部を埋め戻す工程。
ただし本工程では、上記管路部のうち上記コンクリート台座の上方で上記壁面に沿った空間である上記背面部だけが埋め戻され、その結果、上記管路部は、上記U字型トラフの上記底面から上記蓋との間に空間を残したまま、上記仮復旧状態となる。
【請求項2】
地下に管路を施工した後に開放穴を一時的に埋戻して仮復旧状態としケーブル類の敷設時に再掘削する必要があるケーブル類の施工に利用される、仮復旧構造であって、
・上記管路における、基面と1対の壁面とで囲まれた管路部、
・上記基面に敷設された基礎、
・上記基礎の上に
上記管路に沿って整列・連結・密着するように設置され
て、上記ケーブル類の敷設路を形成する
、開口部と側面と底面を有するコンクリート製U字型トラフ、
・上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記
U字型トラフの外面とに接するコンクリート台座
であって、上記管路部において、上記U字型トラフの外側で上記開口部以下の空間に上記コンクリート台座が設置され、上記コンクリート台座は上記壁面に沿って上記管路の長手方向に延長するコンクリート壁を形成し、上記コンクリート台座の最高部は上記U字型トラフの上記開口部の上端に一致する、コンクリート台座、
・上記コンクリート台座の上に固定された土留め部材、
ただし上記土留め部材は複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、上記土留め部材のうち対向する1対の上記土留め板とその間の上記切梁からなる部分は上記切梁の両端にそれぞれ1つの土留め板がT字状に連結したものである土留め部材であって、上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されており、その結果、上記管路部を上から見た場合には、上記土留め部材は、全体として梯子状をなし、上記管路部に整列する上記U字型トラフの開口部を挟み、上記管路の長手方向に延長して配置され(ただし、上記土留め板が整列してなる部分が梯の2本の支柱に、上記切梁が梯の桟に当たる)、またその結果、上記管路部を横から見た場合には、上記土留め部材は2つのT字構造が連結された形状を示す、土留め部材、
・上記土留め部材
の上部に取り付けられた仮復旧用蓋、
・上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた部分に充填された埋め戻し土砂、
・上記管路部における、上記U字型トラフの上記底面から上記蓋との間に存在する空間、
を有する、仮復旧構造。
【請求項3】
地下に管路を施工した後に開放穴を一時的に埋戻して仮復旧状態としケーブル類の敷設時に再掘削する必要があるケーブル類の施工に適用される、
請求項2に記載の仮復旧構造
を再掘削して上記管路部にケーブルを敷設するための工法であって、
上記仮復旧構造に対し、以下の工程(7)~(10)をこの順で行ってケーブル類を敷設する、本設工法。
・工程(7)
:上記仮復旧用蓋を撤去し、上記U字型トラフの内部でケーブル類を配置し接続する工程。
・工程(8)
:上記
U字型トラフの内部を充填する工程。
・工程(9)
:上記土留め部材と上記背面部の土砂を撤去する工程。
・工程(10)
:上記
U字型トラフにコンクリート製蓋を取付け、上記管路部を埋め戻して舗装する工程。
【請求項4】
地下に管路を施工した後に開放穴を一時的に埋戻して仮復旧状態としケーブル類の敷設時に再掘削する必要があるケーブル類の施工に利用される、ケーブル溝工法であって、
以下の工程(1)~(6)をこの順で行って上記管路を仮復旧状態とし、
その後に以下の工程(7)~(10)をこの順で行ってケーブル類を敷設する、
ケーブル溝工法。
・工程(1)
:上記管路において床堀りまたは掘削を行って、基面と1対の壁面とで囲まれた管路部を開放し、上記基面上に基礎を敷設する工程。
・工程(2)
:プレキャストコンクリートブロック
として開口部と側面と底面を有するコンクリート製U字型トラフを、上記基礎の上に
上記管路に沿って整列・連結・密着するように設置
して、上記ケーブル類の敷設路を形成する工程。
・工程(3)
:上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記
U字型トラフの外面とで囲まれた空間に、コンクリート台座を施工
し、その結果、上記管路部において、上記U字型トラフの外側で上記開口部以下の空間に上記コンクリート台座が設置され、上記コンクリート台座は上記壁面に沿って上記管路の長手方向に延長するコンクリート壁を形成し、上記コンクリート台座の最高部は上記U字型トラフの上記開口部の上端に一致する、工程。
・工程(4)
:上記コンクリート台座に土留め部材を固定する工程。
ただし上記土留め部材は複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、上記土留め部材のうち対向する1対の上記土留め板とその間の上記切梁からなる部分は上記切梁の両端にそれぞれ1つの土留め板がT字状に連結したものである。本工程を経て上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されており、その結果、上記管路部を上から見た場合には、上記土留め部材は、全体として梯子状をなし、上記管路部に整列する上記U字型トラフの開口部を挟み、上記管路の長手方向に延長して配置され(ただし、上記土留め板が整列してなる部分が梯の2本の支柱に、上記切梁が梯の桟に当たる)、またその結果、上記管路部を横から見た場合には、上記土留め部材は2つのT字構造が連結された形状を示す。
・工程(5)
:上記土留め部材
の上部に仮復旧用蓋を取付ける工程。
・工程(6)
:上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた空間
である背面部を埋め戻す工程。
ただし本工程では、上記管路部のうち上記コンクリート台座の上方で上記壁面に沿った空間である上記背面部だけが埋め戻され、その結果、上記管路部は、上記U字型トラフの上記底面から上記蓋との間に空間を残したまま、上記仮復旧状態となる。
・工程(7)
:上記仮復旧用蓋を撤去し、上記U字型トラフの内部でケーブル類を配置し接続する工程。
・工程(8)
:上記
U字型トラフの内部を充填する工程。
・工程(9)
:上記土留め部材と上記背面部の土砂を撤去する工程。
・工程(10)
:上記
U字型トラフにコンクリート製蓋を取付け、上記管路部を埋め戻して舗装する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮復旧方法、仮復旧構造、本設工法、ケーブル溝工法に関する。本発明は特に、発電所と変電所との間に電線を敷設する際に用いられる、仮復旧方法、仮復旧構造、本設工法、ケーブル溝工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル類を施工する際には、道路などの地下に管路を施工した後に開放穴を一時的に埋戻して仮復旧状態とし、ケーブル類の敷設時に再掘削する必要がある。このような施工法では、埋戻しと再掘削の際に多量の土砂や舗装物を移動させるため、作業が複雑になり、大型クレーンを必要とするために高度かつ多大な労力を必要とする。
【0003】
そこで、施工の簡略化や省力化のために、土砂の代わりにブロック状の埋戻し材を用いる方法が提案されている(特許文献1,特許文献2)。しかしながら、これらの例でも全体では高重量かつ大容量の埋戻し材を搬入・搬出する必要があり、さらなる施工の簡略化や省力化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000- 64315号公報
【文献】特開平7-293748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、本発明者は、さらに簡略化または省力化した工程でケーブル類の敷設を行う工法を求めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その結果、本発明者は、管路にプレキャストコンクリートブロックと土留め部材を設置した仮復旧構造を採用することを見出した。すなわち本発明は以下のものである。
【0007】
(発明1)以下の工程(1)~(6)をこの順で行う、仮復旧方法。
(1)基面と1対の壁面とで囲まれた管路部を開放し、上記基面上に基礎を敷設する工程。
(2)プレキャストコンクリートブロックを上記基礎の上に設置する工程。
(3)上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記プレキャストコンクリートブロックの外面とで囲まれた空間に、コンクリート台座を施工する工程。
(4)上記コンクリート台座に土留め部材を固定する工程。
(5)上記土留め部材に仮復旧用蓋を取付ける工程。
(6)上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた空間(背面部)を埋め戻す工程。
【0008】
(発明2)上記プレキャストコンクリートブロックがコンクリート製U字型トラフであり、
上記土留め部材が、複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、
上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記コンクリート製U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記コンクリート製U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されている、
発明1の仮復旧方法。
【0009】
(発明3)基面と1対の壁面とで囲まれた管路部、
上記基面に敷設された基礎、
上記基礎の上に設置されたプレキャストコンクリートブロック、
上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記プレキャストコンクリートブロックの外面とに接するコンクリート台座、
上記コンクリート台座の上に固定された土留め部材、
上記土留め部材に取り付けられた仮復旧用蓋、
上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた部分に充填された埋め戻し土砂、
を有する、仮復旧構造。
【0010】
(発明4)上記プレキャストコンクリートブロックがコンクリート製U字型トラフであり、
上記土留め部材が、複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、
上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記コンクリート製U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記コンクリート製U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されている、
発明3の仮復旧構造。
【0011】
(発明5)基面と1対の壁面とで囲まれた管路部、
上記基面に敷設された基礎、
上記基礎の上に設置されたプレキャストコンクリートブロック、
上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記プレキャストコンクリートブロックの外面とに接するコンクリート台座、
上記コンクリート台座の上に固定された土留め部材、
上記土留め部材に取り付けられた仮復旧用蓋、
上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた部分に充填された埋め戻し土砂、
を有する仮復旧構造に対し、以下の工程(7)~(10)をこの順で行ってケーブル類を敷設する、本設工法。
(7)上記仮復旧用蓋を撤去し、上記プレキャストコンクリートブロックの内部でケーブル類を配置し接続する工程。
(8)上記プレキャストコンクリートブロックの内部を充填する工程。
(9)上記土留め部材と上記背面部の土砂を撤去する工程。
(10)上記プレキャストコンクリートブロックにコンクリート製蓋を取付け、上記管路部を埋め戻して舗装する工程。
【0012】
(発明6)上記プレキャストコンクリートブロックがコンクリート製U字型トラフであり、
上記土留め部材が、複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、
上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記コンクリート製U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記コンクリート製U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されている、
発明5の本設工法。
【0013】
(発明7)以下の工程(1)~(6)をこの順で行って管路を仮復旧状態とし、
(1)基面と1対の壁面とで囲まれた管路部を開放し、上記基面上に基礎を敷設する工程、
(2)プレキャストコンクリートブロックを上記基礎の上に設置する工程。
(3)上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記プレキャストコンクリートブロックの外面とで囲まれた空間に、コンクリート台座を施工する工程。
(4)上記コンクリート台座に土留め部材を固定する工程。
(5)上記土留め部材に仮復旧用蓋を取付ける工程。
(6)上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた空間(背面部)を埋め戻す工程。
その後に以下の工程(7)~(10)をこの順で行ってケーブル類を敷設する、ケーブル溝工法。
(7)上記仮復旧用蓋を撤去し、上記プレキャストコンクリートブロックの内部でケーブル類を配置し接続する工程。
(8)上記プレキャストコンクリートブロックの内部を充填する工程。
(9)上記土留め部材と上記背面部の土砂を撤去する工程。
(10)上記プレキャストコンクリートブロックにコンクリート製蓋を取付け、上記管路部を埋め戻して舗装する工程。
【0014】
(発明8)上記プレキャストコンクリートブロックがコンクリート製U字型トラフであり、
上記土留め部材が、複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれ、
上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記コンクリート製U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記コンクリート製U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されている、
発明7のケーブル溝工法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、仮復旧の際に多量の土砂を埋め戻す必要がなく、ケーブル類を敷設する本設工程で土砂撤去の労力が低減されている。また、本発明で用いるプレキャストコンクリートブロックと土留め部材は比較的軽量であるため、これらの設置には大型クレーンを必要としない。さらに、上記土留め部材を設置した状態でも、作業スペースを確保したまま、ケーブル類を敷設し上記プレキャストコンクリートブロックを土砂で充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の工程(1),(2),(3)を行った様子を模式的に示す。
【
図2】本発明の工程(4)を行った様子を模式的に示す。
【
図3】本発明の工程(5),(6)を行った様子を模式的に示す。
【
図4】本発明の工程(7)を行った様子を模式的に示す。
【
図5】本発明の工程(8)を行った様子を模式的に示す。
【
図6】本発明の工程(9)を行った様子を模式的に示す。
【
図7】本発明の工程(10)を行った様子を模式的に示す。
【
図8】本発明の工程(4)で土留め部材を上記コンクリート台座に固定された状態を上から見た様子を、模式的に示す。点線は、個々のコンクリート製U字型トラフ間の境目を示す。
【
図9】従来の一般的な工法による仮復旧構造の様子を模式的に示す。
【
図10】従来の一般的な工法によってケーブル敷設を行う様子を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[仮復旧方法]
本発明の仮復旧方法では、以下の工程(1)~(6)をこの順で行う。
【0018】
本発明の仮復旧方法では、工程(1)で、基面と1対の壁面とで囲まれた管路部を開放し、上記基面上に基礎を敷設する。この工程では、一般的な土工、仮設工、基礎工を採用することができる。典型的には、床堀りまたは掘削を行って管路部を開口し、基礎工を施工する。ここで、必要に応じて矢板工法によって管路部を土留めする。基礎工としては、直接基礎が好ましく、一般的には砕石基礎を施工し、この上に均しコンクリートを打設してコンクリート基礎を施工する。
【0019】
本発明の仮復旧方法では、次の工程(2)で、プレキャストコンクリートブロックを上記基礎の上に設置する。好ましくは、モルタルを介して上記プレキャストコンクリートブロックと上記基礎とを強固に固定する。上記プレキャストコンクリートブロックは、典型的には、開口部、側面、底面を有している。上記プレキャストコンクリートブロックは個々の重量が比較的軽いものが施工の省力化のために好適である。このようなプレキャストコンクリートブロックとしてコンクリート製U字型トラフが特に好ましい。上記管路部の形状や傾斜に応じて、上記コンクリート製U字型トラフには、適宜他の形状のプレキャストコンクリートブロックを付属させることができる。上記プレキャストコンクリートブロックは、上記管路部に沿って整列・連結して、ケーブルなどの敷設路を形成する。
【0020】
本発明の仮復旧方法では、次の工程(3)で、上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記プレキャストコンクリートブロックの外面とで囲まれた空間に、コンクリート台座を施工する。ここでは好ましくは、上記プレキャストコンクリートブロックの開口部に切梁部材を設置した状態で現場打ち施工を行う。上記コンクリート台座は、上記管路部の上記プレキャストコンクリートブロックの外側で上記プレキャストコンクリートブロックの開口部以下を占める部分に設けられる。
【0021】
本発明の仮復旧方法では、次の工程(4)で、上記コンクリート台座に土留め部材を固定する。上記土留め部材は、典型的には、複数の土留め板と少なくとも1つの切梁とを含み、上記切梁のそれぞれは対向する1対の上記土留め板に挟まれる。したがって、上記土留め部材のうち、対向する1対の上記土留め板とその間の上記切梁からなる部分は、上記切梁の両端にそれぞれ1つの土留め板がT字状に連結したものである。
【0022】
上記土留め部材が上記コンクリート台座に固定された状態では、上記土留め板が上記コンクリート製U字型トラフの対向する側面に沿って上記管路の長さ方向に整列し、上記切梁が上記コンクリート製U字型トラフの開口部の上方に上記管路の幅方向に差し渡されている。すなわち、上記管路部を上から見た場合には、上記土留め部材は全体として梯子状をなして、上記管路部に整列する上記プレキャストコンクリートブロックの開口部を挟んで、上記管路の長手方向に延長して配置される。この場合、上記土留め板が整列してなる部分が梯の2本の支柱に、上記切梁が梯の桟に当たる。上記切梁の間隔と分布は、上記切梁が固定された上記対向する1対の土留め板の間隔と分布で決定される。上記間隔と分布は、施工現場の状況に応じて適宜調節される。上記土留め部材は比較的小型で軽量の部材から構成されるため、上記工程(4)で大型クレーンを用いる必要がない。このことは、施工の省力化をもたらす。
【0023】
本発明の仮復旧方法では、次の工程(5)で、上記土留め部材に仮復旧用蓋を取り付ける。上記仮復旧用蓋は、現場の状況に応じて適宜選択され、構造や材質に特別な制限はない。好ましくは、鋼鉄製の蓋材が用いられる。上記仮復旧用蓋の側面に舗装留め金具を付属させることができる。
【0024】
本発明の仮復旧方法では、次の工程(6)で、上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた空間(背面部)を埋め戻す。すなわち、上記管路部のうち、上記コンクリート台座の上方で上記壁面に沿った僅かな空間(背面部)だけが埋め戻される。その結果、上記管路部は、上記プレキャストコンクリートブロックの底面から上記仮復旧用蓋との間に空間を残したまま、仮復旧状態となる。
【0025】
[仮復旧構造]
本発明の仮復旧構造は、上記仮復旧方法で完成した施工状態である。すなわち本発明の仮復旧構造は、基面と1対の壁面とで囲まれた管路部、上記基面に敷設された、モルタル、コンクリート、砕石から選ばれる1以上の材料を含む基礎、上記基礎の上に設置されたプレキャストコンクリートブロック、上記基面と、上記壁面と、上記基礎と、上記プレキャストコンクリートブロックの外面とに接するコンクリート台座、上記コンクリート台座の上に固定された土留め部材、上記土留め部材に取り付けられた仮復旧用蓋、上記壁面と、上記コンクリート台座と、上記土留め部材と、上記仮復旧用蓋とで挟まれた部分に充填された埋戻し土砂、を有する。
【0026】
本発明の仮復旧構造では、管路部には比較的少量の埋戻し土砂しか存在しない。このような仮復旧構造は、ケーブル類を敷設する本設工程の省力化をもたらす。
【0027】
[本設工法]
本発明の本設工法は、上記仮復旧構造を再掘削して上記管路部にケーブルを敷設する工法である。上記本設工法は、上記仮復旧構造に対し、以下の工程(7)~(10)をこの順で行ってケーブルを敷設する工法である。
【0028】
本発明の本設工法では、工程(7)で、上記仮復旧用蓋を撤去し、上記プレキャストコンクリートブロックの内部でケーブル類を配置し接続する。ここで「ケーブル類」は、ケーブル本体だけでなく、ケーブル本体に付属するすべての部品や部材を指す。例えば、ケーブルの結束、固定、連結に用いられる部材が上記ケーブル類に含まれる。また「ケーブル」は典型的には電線ケーブルを指すが、電線ケーブルと同じ管路に敷設可能なケーブル状、管状、線状製品も含む。この工程(7)は間欠的に複数回行うことができる。この場合、上記プレキャストコンクリートブロックの内部でケーブル類を配置および/または接続した後、上記仮復旧用蓋を再び元の位置に取り付けて、施工を中断し、上記工程(7)を再び行う。このように、本発明の工程(7)を繰り返し行うことができる。
【0029】
このような工程(7)は、上記仮復旧用蓋の下に上記土留め部材を残したままで行われる。上記土留め部材における切梁の配置を調節することによって、工程(7)でより大きい作業スペースを確保することができる。適当な作業スペースは、予め仮復旧状態で確保することもでき、工程(7)で一部の切梁を除去することによって確保することもできる。
【0030】
本発明の本設工法では、次の工程(8)で、上記プレキャストコンクリートブロックの内部を充填する。上記充填に用いる材料は一般的には土砂、好ましくは砂である。このとき上記砂などの充填材料は、上記管路の上から上記土留め部材の上記切梁の間隙を通って、上記プレキャストコンクリートブロックの内部に到達する。
【0031】
本発明の本設工法では、次の工程(9)で、上記土留め部材と上記背面部の土砂を撤去する。撤去すべき土砂は比較的少量である点が、施工の省力化に貢献する。
【0032】
本発明の本設工法では、次の工程(10)で、上記プレキャストコンクリートブロックにコンクリート製蓋を取付け、上記管路部を埋戻して舗装する。上記コンクリート製蓋は、上記プレキャストコンクリートブロックに応じて適宜選択される。上記埋戻しと上記舗装は、常法に従い特に制限されない。上記埋戻しの後に適宜締固めを行う。こうしてケーブル類の敷設が完了する。
【0033】
[ケーブル溝工法]
本発明のケーブル溝工法は、上述の仮復旧を行った後に上述の本設工法を行う工法である。すなわち本発明のケーブル溝工法は、上述の工程(1)~(6)をこの順で行って管路を仮復旧状態とし、その後に上述の工程(7)~(10)をこの順で行ってケーブル溝を完成させる工法である。本発明のケーブル溝工法は、大型クレーンの使用頻度が従来よりも少なく、大掛かりな埋戻しと再掘削を必要としない。
【実施例】
【0034】
[実施例]
本発明の工程(1)~(10)を行う様子を
図1~8を参照させて説明する。
図1~7は管路部を基面に垂直な面で切った断面を模式的に示す。
図8は管路を上から見た様子を模式的に示す。
図1~8では施工の様子を理解しやすいように各部位の大きさ、形状、細部が誇張あるいは省略されている。
【0035】
図1は、本発明の工程(1),(2),(3)を行った様子を模式的に示す。工程(1)で、床堀りによって基面(1)と1対の壁面(2)とで囲まれた管路部(3)を開放し、基礎(4)を敷設する。基礎(4)は砕石基礎とコンクリート基礎との積層構造を有する。壁面(2)は矢板(21)で土留めされている。次の工程(2)で、モルタル(5)を介して基礎(4)の上にコンクリート製U字型トラフ(以下U字型トラフ)(6)を設置する。U字型トラフ(6)はは、開口部(601),側面(602),底面(603)を有する。U字型トラフ(6)は管路(3)に沿って(紙面では手前と奥を結ぶ線上に)整列・密着して配置される。次の工程(3)で、コンクリート台座(7)が現場打ち施工される。コンクリート打ち際にU字型トラフの開口部(601)を支持する切梁部材が取付けられるが、各図面ではこの切梁部材が省略されている。こうして、管路部(3)において、U字型トラフ(6)の外側は、開口部(601)以下の空間にコンクリート台座(7)が設置される。コンクリート台座(7)は、壁面(2)および矢板(21)に沿って管路(3)の長手方向に延長するコンクリート壁である。コンクリート台座(7)の最高部はU字型トラフの開口部(601)の上端に一致する。
【0036】
図2と
図8は、続いて工程(4)を行った様子を模式的に示す。工程(4)では、コンクリート台座(7)に土留め部材(8)を固定する。土留め部材(8)は、土留め板(801)と切梁(802)とを含み、1つの切梁(802)は対向する1対の土留め板(801)に挟まれる状態で、1対の土留め板(801)のそれぞれに固定部材(803)で固定されている。
図2、
図8に示されるように、土留め部材(8)は2つのT字構造が連結された形状を示す。
図8に示すように、土留め部材(8)がコンクリート台座(7)に固定された状態では、複数の土留め板(801)がU字型トラフ(6)の対向する側面(602)に沿って管路(3)の長さ方向に2列に並び、切梁(802)がU字型トラフの開口部(801)の上方に、底面(603)と側面(602)をまたぐように管路(3)の幅方向に配置される。なお、
図8では、複数の土留め板(801)が整列する様子を誇張するために個々の各土留め板(801)の一部を離して図示している。実際には複数の土留め板(801)はほぼ密着して固定される。
【0037】
図3は、続いて工程(5),(6)を行った様子を模式的に示す。工程(5)で、土留め部材(8)の上部に鋼鉄製の仮復旧用蓋(9)が取付けられる。土留め部材(8)と仮復旧用蓋(9)との連結部材は図面では省略されている。次の工程(6)で、壁面及び矢板(2,21)、コンクリート台座(7)、土留め部材(8)、仮復旧用蓋(9)とで挟まれた空間(背面部)(10)を砂で埋め戻す。背面部の埋戻し土砂(10)を均し締固めて、
図3に示される仮復旧構造が完成する。仮復旧構造は、本設工程の開始まで維持される。
【0038】
図4は、上記仮復旧構造に対して本発明の工程(7)を行った様子を模式的に示す。工程(7)では、仮復旧用蓋(9)を撤去し、U字型トラフ(6)の内部でケーブル(11)を配置し接続する。仮復旧用蓋(9)を撤去した状態で、U字型トラフ(6)、コンクリート台座(7)、土留め部材(8)は相互に強固に接続しているため、U字型トラフ(6)の内壁に支持用切梁部材を取り付ける必要はない。ケーブル(11)を搬入するとき、土留め部材(8)はコンクリート台座(7)に固定されたままであり、埋め戻した背面の土砂(10)を搬出する必要がない。ケーブル(11)は土留め部材(8)の切梁(802)の隙間からU字型トラフ(6)の内部似搬入される。作業スペースを確保するために、土留め部材(8)の切梁(802)の一部を撤去して切梁(802)の間隔を広くすることができる。本発明では切梁(802)の間隔を自在に変更できるため、状況に応じた作業スペースを確保することができる。
【0039】
図5は、次の工程(8)を行った様子を模式的に示す。工程(8)では、所定の位置に敷設されたケーブル(10)とU字型トラフ(6)の隙間に砂(12)を充填する。
【0040】
図6は次の工程(9)を行った様子を模式的に示す。工程(9)では。土留め部材(8)と背面部の土砂(10)を撤去する。砂(12)の表面を均す。
【0041】
図7は、次の工程(10)を行った様子を模式的に示す。工程(10)では、U字型トラフ(6)にコンクリート製蓋(14)を取付ける。U字型トラフ(6)とコンクリート製蓋(14)との連結部材は図面では省略されている。次にコンクリート台座(7)とコンクリート製蓋(14)を覆うように土砂(12)を埋戻し、埋戻し土砂(12)を均し締め固め、埋戻し土砂(12)上に舗装(15)を施工する。舗装(15)の工法は常法に従う。
図7は、舗装(15)として下から順に下層路盤(1501),上層路盤(1502),基層(1503),表層(1504)を施工した様子を示す。こうして管路部(3)にケーブル溝(30)が完成する。
【0042】
[比較例]
図9と
図10に、比較例として、従来の一般的な工法を模式的に示す。
図9と
図10でも、各部位の大きさ、形状、細部が誇張あるいは省略されている。
【0043】
図9は、従来の一般的な工法による仮復旧構造の様子を模式的に示す。この例では、ケーブル桝(610)を管路部の基面(1)に固定し、ケーブル桝(610)にコンクリート製の蓋(620)を取付ける。次にケーブル桝(610)と蓋(620)の外部全体(100)を埋戻す。埋戻し土砂(100)を均して締固め、仮舗装(200)を施工する。この場合、多量の土砂を埋戻し部(100)に投入する必要がある。
【0044】
図10は、従来の一般的な工法によってケーブル敷設を行う様子を模式的に示す。この場合、
図9に示す仮復旧構造に対して本設を開始する。まず、仮舗装(200)の一部と埋戻し土砂(100)の一部を撤去し、さらに蓋(620)を撤去する。こうして、ケーブル桝(610)が管路部(3)に開口する。次に、ケーブル桝(610)の開口部に支持用切梁(700)を取り付ける。支持用切梁(700)は、一定の間隔で管路(3)の幅方向に、ケーブル桝(610)の対向する内壁に差し渡されている。この例では、支持用切梁(700)の間隔を利用して、ケーブル桝(610)内にケーブル(10)を配置し接続する。しかしながら、一般的に支持用切梁(700)には一定の間隔が求められるため、支持用切梁(700)の間隔を自在に大きくすることはできず、作業スペースは比較的小さくならざるを得ない。ケーブル(10)の配置や接続を中断する際には仮舗装(200)、埋戻し土砂(100)、蓋(620)を復元し、その後ケーブル(10)の配置や接続を再開する際には仮舗装(200)、埋戻し土砂(100)、蓋(620)を再撤去する必要がある。このため、ケーブル敷設の工期が長期化するという問題がある。さらに、撤去と搬入を繰り返すためにコンクリート製の蓋(620)が破損しやすいという問題点もある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の仮復旧方法、仮復旧構造、本設工法、ケーブル溝工法は、大型クレーンの使用頻度を減らし、埋戻しと再掘削の省力化を実現し、大きな作業スペースを確保し、個々の工程をスピーディーに完了することができる。本発明によって、電線などのケーブル類を従来よりも短い工期で、かつ低コストで敷設することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基面
2 壁面
21 矢板
3 管路部
4 基礎
5 敷モルタル
6 U字トラフ
601 U字トラフの開口部
602 U字トラフの側面
603 U字トラフの底面
7 コンクリート台座
8 土留め部材
801 土留め板
802 切梁
803 固定部材
9 仮復旧用蓋
10 背面部,埋戻し土砂
11 ケーブル
12 砂
13 埋戻し土砂
14 コンクリート製蓋
15 舗装
1501 下層路盤
1502 上層路盤
1503 基層
1504 表層
100 埋戻し土砂(従来法)
200 仮舗装(従来法)
610 ケーブル桝(従来法)
620 コンクリート製の蓋(従来法)
700 支持用切梁(従来法)