(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F15B15/10 H
(21)【出願番号】P 2020032738
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】厨 義典
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥井 学
(72)【発明者】
【氏名】小島 明寛
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2008/140032(JP,A1)
【文献】特開2004-076763(JP,A)
【文献】特開2018-140475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00-15/28
B25J 1/00-21/02
F16L 9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなる筒状体と、
前記筒状体の端部における開口を封止する封止機構と、を備え、
前記筒状体は、一端から他端にかけて配向した複数の撚糸を含み、
前記複数の撚糸に含まれる撚糸の径が0.2mm以上0.8mm以下であり、
前記複数の撚糸は、前記筒状体の径方向において互いにずれた複数の径方向位置に配置され、
前記複数の撚糸は、前記複数の径方向位置における各径方向位置で、前記筒状体の周方向に等間隔に配置され、
前記複数の撚糸が配置される前記複数の径方向位置が、少なくとも、第一径方向位置と、前記第一径方向位置に配置された撚糸に前記筒状体の径方向で隣接する撚糸が配置される第二径方向位置と、を含み、
前記第一径方向位置に配置された各撚糸は、前記第二径方向位置に配置された撚糸から前記筒状体の周方向にずれて配置される流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記複数の径方向位置における各径方向位置に配置された前記撚糸の本数の差は1本以下である請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記撚糸が前記第一径方向位置と前記第二径方向位置とにのみ配置されている請求項1または2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記撚糸は、有機繊維が撚られてなる撚糸である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性体がゴムである請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記撚糸と前記弾性体が少なくとも撚糸断面の周上1ヶ所で接着している請求項1~5のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記筒状体の径方向において隣接した撚糸間の間隔が、前記撚糸の直径の2倍以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体または液体を用いて弾性体からなる筒状体を膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向に沿って内挿された繊維を含む弾性体チューブと、該弾性体チューブの長手方向における両端を封止する蓋部材とを含み、弾性体チューブ内に内挿された繊維が弾性体チューブの長手方向への膨張を制限することによって該弾性体チューブ内に流体が注入された際に弾性体チューブの長手方向に収縮力を発生させることができる流体圧アクチュエータが知られている(非特許文献1、非特許文献2、特許文献1参照)。
【0003】
このような流体圧アクチュエータでは、弾性体チューブ内に流体を注入した際に、弾性体チューブの径方向への膨張を弾性体チューブの長手方向における収縮力に効率よく変換することが重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】松下:ゴム人工筋製作法ノート; 「計測と制御」第7 巻第12号(昭和43年12月):pp110-116
【文献】軸方向繊維強化型空気ゴム人工筋肉の開発;日本機械学会誌 2007.5 vol. 110 No.1062:p73
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1、非特許文献2に記載の流体圧アクチュエータの構造では、周上に繊維束がある場所とない場所があった。このため、弾性体チューブが膨張した状態において、繊維束がない周上の場所の弾性体に半径方向への膨張が集中してしまい、半径方向の膨張を軸方向の収縮へ十分に伝達することができないといった問題点があった。またその問題点の解決手法として提案された、特許文献1の流体圧アクチュエータでは、半径方向の膨張を軸方向の収縮へ十分に伝達可能であるが、同軸上に配置された、外側筒状部材、繊維層、内側筒状部材の少なくとも3層を均一な厚さで配置することが難しく、収縮を繰返し行った際に特に筒状部材の厚さが薄い部分に負荷が集中し、筒状部材の破損が発生する恐れがあった。
【0007】
本発明は、流体圧アクチュエータ本体の径方向への膨張を長手方向における収縮力へ効率よく変換可能であり、さらに収縮を繰返し行った際のアクチュエータ本体の耐久性を高め得る流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータは、弾性体からなる筒状体と、前記筒状体の端部における開口を封止する封止機構と、を備える。前記筒状体は、一端から他端にかけて配向した複数の撚糸を含む。前記複数の撚糸に含まれる撚糸の径が0.2mm以上0.8mm以下である。前記複数の撚糸は、前記筒状体の径方向において互いにずれた複数の径方向位置に配置される。前記複数の撚糸は、前記複数の径方向位置における各径方向位置で、前記筒状体の周方向に等間隔に配置される。前記複数の撚糸が配置される前記複数の径方向位置が、少なくとも、第一径方向位置と、前記第一径方向位置に配置された撚糸に前記筒状体の径方向で隣接する撚糸が配置される第二径方向位置と、を含む。前記第一径方向位置に配置された各撚糸は、前記第二径方向位置に配置された撚糸から前記筒状体の周方向にずれて配置される。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、流体圧アクチュエータ本体の径方向への膨張を長手方向における収縮力へ効率よく変換可能であり、さらに収縮を繰返し行った際のアクチュエータ本体耐久性を高め得る流体圧アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一部を断面で示した本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の側面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のII-II断面における端面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の一部を拡大した図である。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)は、それぞれ変更例に係る筒状体100A,100Bの断面の端面図を一部拡大した図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の動作を示す説明図であり、アクチュエータ本体10が動作を開始する前の状態を示す図であり、
図4(b)は、アクチュエータ本体10に流体ARが注入され、アクチュエータ本体10が収縮した状態を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、他の変更例に係る筒状体100Cの端面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の一部を拡大した図である。
【
図6】
図6は、さらに他の変更例に係るアクチュエータ本体10Dの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(1)流体圧アクチュエータの全体概略構成
図1は、一部を断面で示した本実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の側面図である。
【0013】
図1に示すように、流体圧アクチュエータ1は、アクチュエータ本体10と、アクチュエータ本体10へ流体を供給する流体供給・排出機構500とを備える。
【0014】
本実施形態において、アクチュエータ本体10は、弾性体からなる筒状体100と、筒状体100の端部における開口を封止する封止機構200,300とを備える。
【0015】
封止機構200,300は、筒状体100に内挿されて筒状体100の端部の開口を封止する封止部材210,310と、筒状体100を封止部材210,310に拘束する締め付けバンド230,330と、を含む。
【0016】
具体的に、封止部材210,310は、筒状体100に挿通される胴体部分(不図示)と、胴体部分の筒状体100への挿通方向で胴体部分と連なり封止部材210,310が過度に筒状体100に挿入されることを制限するフランジ部分211,311とを含む。また、少なくとも一方の封止部材210には、胴体部分の反対側でフランジ部分211と連なり、筒状体100に内挿された胴体部分およびフランジ部分211を介して流体ARを筒状体100に注入・排出可能に設けられた連結口213が、形成されている。
【0017】
本実施形態において、アクチュエータ本体10は、筒状体100の端部の開口に封止部材210,310の胴体部分(不図示)が挿入され、封止部材210,310の胴体部分が挿入されている筒状体100の部位に、締め付けバンド230,330で筒状体100の外周から筒状体100を封止部材210,310に締め付けて接続することで得られる。
【0018】
さらに、
図1に示すように、筒状体100の外周には、締め付けバンド230,330近傍における筒状体100の膨張を制限するリング250,350が配置されている。本実施形態において、リング250,350は、アルミニウム等の金属で構成されている。
【0019】
本実施形態において、リング250,350は、筒状体100の長手方向DAX中央側において、締め付けバンド230,330と隣接して配置されている。
【0020】
この構成によれば、流体が注入されて筒状体100が膨張した際に、締め付けバンド230,330に隣接する筒状体100の部位がリング250,350によって保護され、締め付けバンド230,330の縁等で筒状体100の弾性体に過度な応力がかかることを抑制し得る。
【0021】
図1に示すように、本実施形態において、流体供給・排出機構500は、流体を供給する流体供給装置510、流体注入用の電磁弁521と流体排出用の電磁弁523が取り付けられて、流体供給装置510からアクチュエータ本体10内への流体供給路とアクチュエータ本体10から流体圧アクチュエータ1外への流体排出路を形成する流体の注入・排出管530、および電磁弁521,523に制御信号を送信してアクチュエータ本体10への流体の注入・排出を制御する制御装置540で構成されている。
【0022】
アクチュエータ本体10における封止部材210の連結口213には、流体の注入・排出管530が連結されている。流体の注入・排出管530には、流体注入用の電磁弁521と、流体排出用の電磁弁523とが連結されている。
【0023】
流体注入用の電磁弁521は、流体の注入・排出管530における、流体供給装置510と連結される部位と、アクチュエータ本体10の連結口213に連結される部位との間に連結されている。つまり、流体注入用の電磁弁521は、流体供給装置510からアクチュエータ本体10への流体供給路を開閉可能に連結されている。
【0024】
流体排出用の電磁弁523は、流体の注入・排出管530における、アクチュエータ本体10の連結口213に連結される部位と、流体注入用の電磁弁521よりアクチュエータ本体10側で分岐した流体圧アクチュエータ1外への流体排出路(流体排出口)との間に、連結されている。つまり、流体排出用の電磁弁523は、アクチュエータ本体10から流体圧アクチュエータ1外への流体排出路を開閉可能に連結されている。
【0025】
制御装置540は、流体注入用の電磁弁521および流体排出用の電磁弁523の開閉を制御可能に設けられており、アクチュエータ本体10への流体の注入・排出を制御する。
【0026】
なお、流体圧アクチュエータ1の流体供給・排出機構500は、本実施形態の構成に限定されるものでない。
【0027】
即ち、アクチュエータ本体10で収縮力を発生させる際に流体をアクチュエータ本体10に注入してアクチュエータ本体内の圧力を増加させ、アクチュエータ本体で発生させた収縮力を維持する場合にアクチュエータ本体内の圧力を維持し、アクチュエータ本体が発生させる収縮力を低減する場合にアクチュエータ本体内の流体を排出することで圧力を減少させ得る構成であれば、本実施形態の構成に限定されるものでない。
【0028】
例えば、本実施形態では、アクチュエータ本体10への流体の注入・排出の両方を封止部材210の連結口213と注入・排出管530とを介して行っていた。しかし、アクチュエータ本体10の封止部材210に設けられる連結口213を注入口と排出口とに分けて設け、注入口に流体注入用の電磁弁が取り付けられた流体注入管を連結し、排出口に流体排出用の電磁弁が取り付けられた流体排出管を連結することで、流体注入経路と流体排出経路を独立に設けてもよい。
【0029】
(2)弾性体からなる筒状体100の構成
本実施形態において、アクチュエータ本体10は、両端部の開口が一対の封止機構200,300によって封止された弾性体からなる筒状体100を含む。筒状体100は、
図1に示すように、その一端から他端にかけて配向した複数の撚糸130を含む。
【0030】
具体的に、本実施形態における筒状体100は、筒状体100を構成する弾性体としてゴムが用いられている。ただし、筒状体100に用いられる弾性体は、ゴムに限定されるものでない。例えば、シリコン、ウレタン、エラストマ等の弾性体であってよい。
【0031】
また、本実施形態において、筒状体100は円筒状である。ただし、筒状体100の形状は、筒状であれば円筒状に限定されるものでない。例えば、角筒状、楕円筒状等であってよい。
【0032】
具体的に、本実施形態において、筒状体100の寸法は、長手方向DAXの長さが50mm~200mm、流体注入前の内径が15mm~30mm、長手方向DAXに垂直な断面における断面ゴム層の流体注入前の肉厚が1.5mm~2.5mmである。ただし、筒状体100の形状は、所望の出力、使用条件等に応じて適宜選択されてよい。
【0033】
本実施形態において、撚糸130は、有機繊維が撚られてなる撚糸である。なお、撚糸130に用いられる有機繊維の一例として、ポリエステルコード、ナイロンコード、PETコード、芳香族ポリアミドコード等を挙げることができる。
【0034】
具体的に、本実施形態において、撚糸130の径は、0.2~0.8mm程度の太さである。ただし、撚糸130の径は、所望の出力、使用条件等に応じて適宜選択されてよい。
【0035】
本実施形態において、撚糸130と筒状体100を構成する弾性体は、撚糸130の断面において、少なくとも周上の1ヶ所で接着している。このため、筒状体100において、撚糸130の弾性体からの剥離が抑制される構成になっている。
【0036】
図2(a)は、
図1のII-II断面における端面図である。
図2(b)は、
図2(a)の一部を拡大した図である。
図2(a)および
図2(b)は、筒状体100の長手方向D
AX、つまり本実施形態における筒状体100の円筒軸方向に対して垂直な断面内における複数の撚糸130の配置を示している。
【0037】
図2(a),2(b)に示すように、複数の撚糸130は、筒状体100の径方向において互いにずれた複数の径方向位置R1,R3に配置されている。複数の撚糸130は、複数の径方向位置R1,R3における各径方向位置で、筒状体100の周方向に等間隔に配置されている。
【0038】
具体的に、撚糸130は、筒状体100の周方向において、0.8mm~2.5mm程度の等間隔に配置されている。ここで、「各径方向位置で、筒状体100の周方向に等間隔」とは、
図2(b)に示すように、例えば所定の径方向位置R1(R3)に配置された撚糸131(133)同士の距離を、各撚糸131(133)の断面中心を基準とした場合の間隔が等間隔であることを規定するものである。
【0039】
なお、筒状体100の「径方向」とは円筒軸方向を中心としたときの動径方向、筒状体100の「周方向」とは円筒軸方向を中心とした回転方向を意味する。
【0040】
複数の撚糸130が配置される複数の径方向位置R1、R3が、少なくとも第一径方向位置R1と、第一径方向位置R1に配置された撚糸131に筒状体100の径方向で隣接する撚糸133が配置される第二径方向位置R3と、を含む。
【0041】
本実施形態では、
図2(a),2(b)に示すように、撚糸130は、第一径方向位置R1と第二径方向位置R3とにのみ配置されている。
【0042】
図2(b)に示すように、第一径方向位置R1に配置された各撚糸131は、第二径方向位置R3に配置された撚糸133から筒状体100の周方向にずれて配置されている。
【0043】
撚糸131と撚糸133との筒状体100の周方向におけるずれは、撚糸131と撚糸133とのそれぞれの断面中心を基準とした場合のずれを意味する。このため、撚糸131と撚糸133とは、互いに当接しない範囲で、筒状体100の周方向において重なる部分があってよい。
【0044】
なお、撚糸130が配置される第一径方向位置R1と第二径方向位置R3との筒状体100の径方向における距離は、撚糸130同士が接触しない配置の範囲において、使用される撚糸130の半径以上離れていればよい。また、撚糸130が配置される第一径方向位置R1と第二径方向位置R3との筒状体100の径方向における距離が使用される撚糸130の直径の2倍以下であれば、アクチュエータ本体10の径方向への膨張を長手方向DAXにおける収縮力に変換する効率を維持し得る。
【0045】
図3(a)、
図3(b)には、それぞれ本実施形態のアクチュエータ本体10の変更例が記載されている。具体的に、
図3(a)、
図3(b)には、それぞれアクチュエータ本体における筒状体100A,100Bの断面の端面図を一部拡大した図が記載されている。
【0046】
例えば、
図3(a)、
図3(b)に示したように、第一径方向位置R1A,R1Bに配置された各撚糸131A,131Bは、第二径方向位置R3A,R3Bに配置された撚糸133A,133Bから筒状体100A,100Bの周方向にずれて配置されていれば、筒状体100A,100Bの径方向における、第一径方向位置R1A、R1Bと第二径方向位置R3A,R3Bとの距離は、変更可能である。
【0047】
具体的に、
図3(a)では、筒状体100Aにおける第一径方向位置R1Aと第二径方向位置R3Aとの距離が
図2(b)に示される実施形態の筒状体100における第一径方向位置R1と第二径方向位置R3との距離よりも長く設定されている。
【0048】
そして、
図3(b)では、筒状体100Bにおける第一径方向位置R1Bと第二径方向位置R3Bとの距離が
図2(b)の第一径方向位置R1と第二径方向位置R3との距離よりも短く設定されている。
【0049】
即ち、
図2(b)、
図3(a)、
図3(b)に示したように、第二径方向位置R3に配置された2本の撚糸133と、第一径方向位置R1に配置された撚糸131とは、
図3(a)、
図3(b)に破線で図示したように、2本の撚糸133を底辺とする略二等辺三角形を描くように配置されてよい。この場合、第二径方向位置R3、R3A,R3Bに配置された各撚糸133,133A,133Bと第一径方向位置R1、R1A,R1Bに配置された撚糸131,131A,131Bとの間に位置するゴムの厚さが同程度になるため、筒状体100,100A,100Bが径方向に膨張する際、筒状体100,100A,100Bを全周にわたって均一に膨張させ得る。
【0050】
また、
図2(a)に示したように、本実施形態において、複数の径方向位置R1,R3における各径方向位置に配置された撚糸131,133の本数の差は1本以下である。具体的に、本実施形態において、筒状体100の径方向位置R1に配置された撚糸131と、径方向位置R3に配置された撚糸133は、
図2(a)、2(b)に示したように、筒状体100の周方向において交互に配置されている。
【0051】
(3)作用・効果
次に流体型アクチュエータの動作について、
図4(a)、
図4(b)に基づいて説明する。
【0052】
図4(a)は、実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の動作を示す説明図であり、アクチュエータ本体10が動作を開始する前の状態を示す図であり、
図4(b)は、アクチュエータ本体10に流体ARが注入され、アクチュエータ本体10が収縮した状態を示す図である。
【0053】
図4(b)に示すように、流体ARを流体の注入・排出管530から封止部材210の連結口213を介して筒状体100に注入すると、筒状体100内部の圧力が高くなり、弾性体からなる筒状体100は膨張する。ただし、筒状体100は、筒状体100に含まれた撚糸130の作用によって、筒状体100の長手方向D
AXへの膨張が制限される。このため、筒状体100は、
図4(b)に示すように、径方向に膨張しつつ長手方向D
AXに収縮する。
【0054】
従来の流体圧アクチュエータでは、繊維がゴムチューブ内に非常に密な状態で内挿されていたため、密な状態にある繊維の周方向における不均一性が、ゴムチューブの径方向への膨張の周方向における均等性を低減する恐れがあった。
【0055】
これに対して、本実施形態の流体圧アクチュエータ1は、
図2(a),2(b)に示すように、アクチュエータ本体10の筒状体100において、複数の撚糸130が筒状体100の径方向において互いにずれた複数の径方向位置R1,R3に配置され、複数の撚糸130が複数の径方向位置R1,R3における各径方向位置で筒状体100の周方向に等間隔に配置され、複数の撚糸130が配置される複数の径方向位置R1、R3が、少なくとも第一径方向位置R1と第一径方向位置R1に配置された撚糸131に筒状体100の径方向で隣接する撚糸133が配置される第二径方向位置R3とを含み、第一径方向位置R1に配置された各撚糸131が第二径方向位置R3に配置された撚糸133から筒状体100の周方向にずれて配置される構成を備える。
【0056】
本実施形態の構成によれば、筒状体100の径方向への膨張の周方向における均一性を確保しつつ、弾性体による伸縮性を確保可能であるため、アクチュエータ本体10の径方向への膨張を長手方向DAXにおける収縮力へ効率よく変換可能であり、さらに収縮を繰返し行った際のアクチュエータ本体10の耐久性を高め得る流体圧アクチュエータ1を提供することができる。
【0057】
本実施形態において、複数の撚糸130は、その一端から他端にかけて配向した状態で、筒状体100に含まれている。この構成によれば、外部にスリーブに弾性体のチューブを内挿した場合と異なり、膨張収縮を繰り返した場合でも撚糸130同士が擦れることによる摩耗劣化を防止し得る。
【0058】
本実施形態において、筒状体100は円筒状である。弾性体からなる筒状体100を円筒状とした場合、膨張時に弾性体が均等に伸び、局所的な負荷が弾性体に掛かることがないため、角筒状、楕円筒状等の他の形状と比較して、アクチュエータ本体10の耐久性が向上し得る。
【0059】
本実施形態において、筒状体100を構成する弾性体にはゴムが用いられ、撚糸130には有機繊維が撚られてなる撚糸が用いられる。筒状体100を構成する弾性体にはゴムを使用した場合、撚糸130との接着性が高くなるため、筒状体100内に配置された撚糸130との剥離を抑制し得る。この結果として、アクチュエータ本体10の耐久性を高め得る。
【0060】
撚糸130と筒状体100を構成する弾性体は、撚糸130の断面において、少なくとも周上の1ヶ所で接着している。この構成によれば、筒状体100が膨張・収縮を繰り返した場合でも、撚糸130が弾性体から剥離することを抑制し得る。この結果として、アクチュエータ本体10の繰り返し耐久性を高め得る。
【0061】
図2(a),2(b)に示すように、筒状体100には、筒状体100の長手方向D
AXに垂直な断面において、撚糸130が第一径方向位置R1と第二径方向位置R3とにのみ配置されている。この構成によれば、材料コストを削減しつつ、アクチュエータ本体10の耐久性を高め得る。
【0062】
本実施形態において、筒状体100における複数の径方向位置R1,R3の各径方向位置に配置された撚糸131,133の本数の差は1本以下であり、筒状体100の径方向位置R1に配置された撚糸131と、径方向位置R3に配置された撚糸133は、筒状体100の周方向において交互に配置されている。この構成によれば、弾性体からなる筒状体100の径方向への膨張の周方向における均一性を安定的に確保することがさらに容易になる。
【0063】
(4)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0064】
図5(a),5(b)は、実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の変更例を示す図である。具体的に、
図5(a)は、筒状体100Cの長手方向D
AXに垂直な断面における端面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の一部を拡大した図である。
【0065】
図5(a),5(b)は、第二径方向位置R3に配置された撚糸133Cに筒状体100Cの径方向における第一径方向位置R1の反対側で隣接する撚糸135Cが配置された第三径方向位置R5にも、筒状体100Cの周方向に撚糸135Cが等間隔に配置されている点が
図2(a),2(b)に示されている実施形態と異なる。
【0066】
図5(a),5(b)に示す変更例の構成でも、筒状体100Cの第三径方向位置R5に配置された撚糸135Cと、径方向位置R3に配置された撚糸133Cは、筒状体100Cの周方向において交互に配置されている。このため、複数の径方向位置R1,R3、R5における各径方向位置に配置された撚糸131C,133C,135Cの本数の差は1本以下である。
【0067】
図5(a),5(b)に示す変更例の構成によれば、第三径方向位置R5にも撚糸135Cが等間隔に配置されることによって、膨張時における筒状体100Cの周方向への歪みが筒状体100Cの弾性体のみに集中することをさらに抑制し得る構成とすることができる。この結果、流体圧アクチュエータに使用される筒状体100Cの耐久性を向上させることができる。
【0068】
図6は、他の変更例に係るアクチュエータ本体10Dの側面図である。
【0069】
図6に示す変更例では、リング150Dが筒状体100Dの外周に配置されて、流体が注入された際の筒状体100Dの膨張を制限している点が、
図1に示されている実施形態におけるアクチュエータ本体10の構成と異なる。
【0070】
図6に示す変更例において、リング150Dは、アルミニウム等の金属で構成されている。ただし、リング150Dは、例えば熱収縮チューブを収縮させて筒状体100D外周に接着剤等で固定したものであってもよい。
【0071】
図6に示す変更例において、リング150Dは、筒状体100Dの一端から筒状体100Dの全長の1/3及び2/3の位置にそれぞれ設けられている。
【0072】
この変更例の構成によれば、リング150Dが筒状体100Dの径方向への膨張を制限するため、筒状体を構成する弾性体が過度に膨張して劣化することを防止することができる。
【0073】
なお、この変更例において、リング150Dは筒状体100Dの外周に2つ設けられている。しかし、筒状体100Dの外周に配置されるリング150Dの個数はこれに限定されるものでない。リング150Dは、筒状体100Dが径方向に膨張する際に径方向への膨張を制限する部材であるため、膨張量を小さくしたい場合、筒状体100Dに配置するリング150Dの数を増加させることで、筒状体100Dの膨張量を低減してよい。
【0074】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0075】
1 流体圧アクチュエータ
10,10D アクチュエータ本体
100,100A,100B,100C,100D 筒状体
130 撚糸
131,131A,131B,131C 第一径方向位置に配置された撚糸
133,133A,133B,133C 第二径方向位置に配置された撚糸
135C 第三径方向位置に配置された撚糸
200,300 封止機構
R1,R1A,R1B 第一径方向位置
R3,R3A,R3B 第二径方向位置
R5 第三径方向位置