(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】増毛方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20241018BHJP
A41G 5/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A41G3/00 J
A41G5/00
(21)【出願番号】P 2020043516
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519120352
【氏名又は名称】合同会社VIRISE
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 直子
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023444(JP,A)
【文献】特開2018-076626(JP,A)
【文献】特開2010-053489(JP,A)
【文献】特開2008-208508(JP,A)
【文献】特開平10-010638(JP,A)
【文献】特開2005-076128(JP,A)
【文献】特表2015-500404(JP,A)
【文献】特開平02-221217(JP,A)
【文献】特開平02-019314(JP,A)
【文献】特開昭61-097409(JP,A)
【文献】特開平02-264007(JP,A)
【文献】特開平02-264005(JP,A)
【文献】特開2020-007663(JP,A)
【文献】登録実用新案第3158779(JP,U)
【文献】特開2015-001035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
A41G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を用いて、
1本の地毛に対して
1つの人工毛を接着する接着ステップと、
前記接着ステップの前に行われ、仮止め剤を用いて、前記
1本の地毛に対して前記
1つの人工毛を仮止めする仮止めステップと、を備え、
前記
1つの人工毛は、複数の線条体を備え、前記線条体の基端部分同士が一体となっており、
前記仮止めステップは、
前記地毛の根元側と前記人工毛の基端部分との少なくとも一方に対し前記仮止め剤を塗布する仮止め剤塗布ステップと、
前記仮止め剤塗布ステップの後に行われ、起立状態の前記地毛の根元側と前記人工毛の基端部分とを接触させる接触ステップと、を備え
、
前記地毛は、頭髪であること
を特徴とする増毛方法。
【請求項2】
前記接着ステップでは、前記地毛及び前記人工毛のうち前記仮止め剤が塗布された部分を覆うように前記接着剤を塗布することを特徴とする請求項
1記載の増毛方法。
【請求項3】
前記仮止めステップの前に行われ、前記地毛を起立させる起立ステップ
を備え、
前記起立ステップでは、
頭部に載置された増毛作業支援具を用いて前記地毛を起立させることを特徴とする請求項
1または2記載の増毛方法。
【請求項4】
前記起立ステップの前に行われ、前記増毛作業支援具を頭部に設置する載置ステップを備え、
前記載置ステップでは、
前記増毛作業支援具を用いて、ターゲットとなる前記地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かすことを特徴とする請求項
3記載の増毛方法。
【請求項5】
前記接着剤は、光硬化性を有するものであり、
前記接着ステップは、
前記地毛と前記人工毛とに対し前記接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、
前記接着剤塗布ステップにより塗布された前記接着剤に対して光を当て、前記接着剤の硬化を行う接着剤硬化ステップと、を備えることを特徴とする請求項
1ないし4のうちいずれか1項記載の増毛方法。
【請求項6】
前記接着剤は、光硬化性を有するものであり、
前記接着ステップは、
前記地毛と前記人工毛とに対し前記接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、
前記接着剤塗布ステップにより塗布された前記接着剤に対して光を当て、前記接着剤の硬化を行う接着剤硬化ステップと、を備え、
前記起立ステップの前に行われ、前記増毛作業支援具を頭部に設置する載置ステップをさらに備え、
前記増毛作業支援具は、
ターゲットとなる前記地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、
前記周囲地毛寝かせ部材の上部から上方へ向かって突出する係合部材と、を備え、
前記周囲地毛寝かせ部材は、遮光性を有し、
前記載置ステップでは、前記周囲地毛寝かせ部材を用いて、ターゲットとなる前記地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かし、
前記起立ステップでは、
前記係合部材を用いて前記地毛を起立させることを特徴とする請求項3記載の増毛方法。
【請求項7】
前記仮止め剤は、下記式1で表される成分を含むことを特徴とする請求項
5または6記載の増毛方法。
式1 CH
2=C(CN)COOR
(式中、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基及びアリール基から選択される)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自毛に対して増毛や美粧のための毛材の接着が行われているが、この接着作業においては、多数の自毛のできるだけ根部に近い位置に逐次手作業で毛材の接着を行う必要があり、しかも、接着する毛材自体が非常に細いものであって、接着作業に困難性を伴うため、多数本の接着には長時間を必要とした。そこで、地毛に対し増毛用の毛髪を結びつける方法が開発された(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地毛が伸びると、結び目が先端側に移動する結果、結び目が目立つようになってしまう。これを回避するためには、増毛のやり直しが必要となる。結果、特許文献1の方法もまた、手軽な方法とは言えない。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、より手軽に行うことができる増毛方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の増毛方法は、接着剤を用いて、1本の地毛に対して1つの人工毛を接着する接着ステップと、前記接着ステップの前に行われ、仮止め剤を用いて、前記1本の地毛に対して前記1つの人工毛を仮止めする仮止めステップと、を備え、前記1つの人工毛は、複数の線条体を備え、前記線条体の基端部分同士が一体となっており、前記仮止めステップは、前記地毛の根元側と前記人工毛の基端部分との少なくとも一方に対し前記仮止め剤を塗布する仮止め剤塗布ステップと、前記仮止め剤塗布ステップの後に行われ、起立状態の前記地毛の根元側と前記人工毛の基端部分とを接触させる接触ステップと、を備え、前記地毛は、頭髪であることを特徴とする。
【0007】
前記接着ステップでは、前記地毛及び前記人工毛のうち前記仮止め剤が塗布された部分を覆うように前記接着剤を塗布することが好ましい。前記仮止めステップの前に行われ、前記地毛を起立させる起立ステップを備え、前記起立ステップでは、頭部に載置された増毛作業支援具を用いて前記地毛を起立させることが好ましい。前記起立ステップの前に行われ、前記増毛作業支援具を頭部に設置する載置ステップを備え、前記載置ステップでは、前記増毛作業支援具を用いて、ターゲットとなる前記地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かすことが好ましい。前記接着剤は、光硬化性を有するものであり、前記接着ステップは、前記地毛と前記人工毛とに対し前記接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、前記接着剤塗布ステップにより塗布された前記接着剤に対して光を当て、前記接着剤の硬化を行う接着剤硬化ステップと、を備えることが好ましい。前記接着剤は、光硬化性を有するものであり、前記接着ステップは、前記地毛と前記人工毛とに対し前記接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、前記接着剤塗布ステップにより塗布された前記接着剤に対して光を当て、前記接着剤の硬化を行う接着剤硬化ステップと、を備え、前記起立ステップの前に行われ、前記増毛作業支援具を頭部に設置する載置ステップをさらに備え、前記増毛作業支援具は、ターゲットとなる前記地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、前記周囲地毛寝かせ部材の上部から上方へ向かって突出する係合部材と、を備え、前記周囲地毛寝かせ部材は、遮光性を有し、前記起立ステップでは、前記係合部材を用いて前記地毛を起立させて、前記載置ステップでは、前記周囲地毛寝かせ部材を用いて、ターゲットとなる前記地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かすことが好ましい。前記仮止め剤は、下記式1で表される成分を含むことが好ましい。
式1 CH
2
=C(CN)COOR
(式中、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基及びアリール基から選択される)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より手軽に行うことができる増毛方法及び増毛作業支援冶具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の増毛作業支援冶具の概要を示す斜視図である。
【
図2】増毛作業支援冶具の概要を示す断面図である。
【
図6】第2の増毛作業支援冶具の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、説明の便宜上、水平面内における任意の方向をX方向とし、水平面内における任意の方向のうちX方向と直交する方向をY方向とし、水平面に直交する方向をZ方向とする。また、地毛GMのうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分GM1と、被塗布部分GM1よりも先端側に位置する先端側部分GM2と定義する。地毛GMの長さは、適宜設定されるが、例えば、10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましい。
【0011】
図1~2に示すように、増毛作業支援冶具2は、ターゲットとなる地毛GMの周りに生えている周囲地毛を寝かせるための抑え部材10と、地毛GMの先端側部分GM2に対して係合する係合部材20と、地毛GMに対して係合するフック部材30と、を備える。
【0012】
抑え部材10は、頭部に載置するためのものであり、板状に形成される。抑え部材10は、X方向及びY方向に延びる長方形状に形成される。抑え部材10には、地毛GMを挿通するための開口10Xが形成される。開口10Xの形成位置は、ターゲットとなる地毛GMの先端側部分GM2が係合部材20に係合できるようになっていればよい。これにより、ターゲットとなる地毛GMとそれ以外の地毛との分離が確実に行えるため、増毛作業の効率が向上する。
【0013】
また、開口10Xの縁部のうち、作業者側の端面FMが垂直になっていると、作業者の目線ML上において、開口10Xの縁部が毛根MKを遮ることとなってしまう。そこで、毛根MKを通る作業者の目線MLから退避するように、端面FMは、下方から上方になるにしたがって作業者側へ向かうように斜めになっていることが好ましい。これにより、作業者は、地毛GMの毛根MKが視認しやすくなるため、増毛作業の効率が向上する。
【0014】
係合部材20は、板状に形成されるものであり、抑え部材10のX方向端部からZ方向に向かって突出するように伸びる。係合部材20は、Z方向及びY方向に延びる長方形状に形成される。Z方向における係合部材20の高さH20は、先端側部分GM2が係合した際、被塗布部分GM1が起立する程度であればよい。被塗布部分GM1は、目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、毛根MKから5mm以下であることが好ましい。また、開口10Xは、X方向よりもY方向へ長くのびていることが好ましい。例えば、開口10Xの長さは、X方向において1mm~2mm、Y方向において3cm~6cmであることが好ましく、4cm~4.5cmであることがより好ましい。これにより、開口10Xを通った地毛GMが、係合部材20の上端部において互いに重ならなりにくくなるため、増毛作業の効率が向上する。このため、開口10Xは、Y方向に細長くのびることが好ましい。
【0015】
また、抑え部材10は、被塗布部分GM1の識別子を有することが好ましい。本実施形態では、開口10Xの縁部のうち作業者と反対側の稜線10XSが被塗布部分GM1の識別子となる。なお、
図2では、上側の稜線10XSを被塗布部分GM1の識別子としたが、本発明はこれに限られず、下側の稜線を被塗布部分GM1の識別子としてもよいし、開口10Xの縁部に識別子となるような目盛りや印などを適宜設けてもよい。
【0016】
フック部材30は、係合部材20の上部に設けられることが好ましい。フック部材30は、係合部材20に係合した地毛GMが係合できるものであればよい。フック部材30として、例えば、フック部Fを有する面ファスナーを用いることが好ましい(
図3)。
【0017】
図1に示すように、抑え部材10と係合部材20の連結部分において、Y方向両端側に横スリットSLが形成されていることが好ましい。また、横スリットSLからヘアピンHPを挿入して、抑え部材10及び周囲地毛を挟み込むことができる。
【0018】
増毛作業支援冶具2の形成材料としては、硬質なものであってもよいし、軟質のものでもよい。抑え部材10の形成材料としては、頭部の形状にフィットするように変形できる程度に軟質のものであることが好ましい。係合部材20の形成材料としては、所定の姿勢を維持する程度の剛性を持っていることが好ましい。例えば、増毛作業支援冶具2の形状材料としては、金属、木、竹やプラスチック(例えば、シリコーン樹脂)等がありいずれも使用できる。
【0019】
次に、増毛作業支援冶具2を用いた増毛方法100について説明する。
【0020】
(増毛方法)
図4に示すように、増毛方法100は、増毛作業支援冶具2の位置合わせを行う位置合わせステップS110と、地毛GMを開口10Xに通す通しステップS120と、地毛GMの周りに生えている周囲地毛を抑えるように、頭部に増毛作業支援冶具2を載置する載置ステップS130と、地毛GMの被塗布部分GM1を起立させる起立ステップS140と、地毛GMの被塗布部分GM1に対して人工毛EXの仮止めを行う仮止めステップS150と、被塗布部分GM1に対して人工毛EXの接着を行う接着ステップS160と、を備える。
【0021】
ここで、仮止めステップS150は、人工毛EXの基端部分に仮止め剤を塗布する仮止め剤塗布ステップS152と、前記仮止め剤を介して地毛GMと人工毛EXとを接触させる接触ステップS154と、を備える。
【0022】
接着ステップS160は、接着剤を塗布する接着剤塗布ステップS162と、被塗布部分GM1に塗布された接着剤を硬化させる接着剤硬化ステップS164と、を備える。
【0023】
(仮止め剤)
仮止め剤としては、シアノアクリレート系仮止め剤が利用できる。シアノアクリレート系仮止め剤とは、下記式で表される成分を含む。
CH2=C(CN)COOR
(式中、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基及びアリール基から選択される)
【0024】
シアノアクリレート系仮止め剤は、メチル系(メチルシアノアクリレート)、エチル系(エチルシアノアクリレート)、ブチル系(ブチルシアノアクリレート)、オクチル系(オクチルシアノアクリレート)、メトキシ系(メトキシエチルシアノアクリレート)、エトキシ系(エトキシエチルシアノアクリレート)などの種類があり、いずれも使用できる。また、これらを所定割合でブレンドしたものも使用可能である。
【0025】
次に、シアノアクリレート系仮止め剤以外の仮止め剤について説明する。
【0026】
仮止め剤の接着性成分として、化粧品基準を満たすポリマーを含むことが好ましい。「化粧品基準」とは、薬事法に基づき、化粧品に保健衛生上の危険が生じる恐れが無いように、配合成分に対する具体的な規制である。本発明において、「化粧品基準を満たすポリマー」とは、上記化粧品基準の規定に違反しないポリマーであり、例えば、平成12年厚生労働省告示第331号において定められた「化粧品基準」において配合が禁止されていないポリマーを指す。
【0027】
化粧品基準を満たすポリマーとして、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。かかる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、高重合ポリエチレングリコール、セルロースガム、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、アラビアゴム、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、セルロースガム、コメデンプン、タピオカデンプン、カンテン、アルギン酸、及びカラギーナンが挙げられる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン及び/又はセルロースガムを用いることが好ましく、ポリビニルピロリドンを用いることが特に好ましい。なお、これらの水溶性ポリマーは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
化粧品基準を満たすポリマーの含有量は、仮止め剤に対して、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが特に好ましい。例えば、化粧品基準を満たすポリマーとして、ポリビニルピロリドン及びセルロースガムを用いる場合には、ポリビニルピロリドンの含有量は、仮止め剤に対して、20~40質量%であることが好ましい。
【0029】
(接着剤)
接着剤としては、光硬化性成分と光重合開始剤とを含む。
【0030】
光硬化性成分としては、特に限定されず、各種用いることができる。一般的な光硬化性成分としては、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体及びそのオリゴマーやポリマー等が挙げられる。(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カルドエポキシジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、tert-ブチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル誘導体;2-クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパン等のアセトフェノン誘導体;ミヒラーズケトン、2,4,6-(トリハロメチル)トリアジン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス(9-アクリジニル)プロノパン、ジメチルベンジルケタール、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、トリブロモメチルフェニルスルホン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0032】
接着剤は、更に、顔料や染料等の着色剤を含んでよい。着色剤は、使用者の好みに応じて適宜選択され得る。
【0033】
接着剤は、更に、溶剤、充填剤、消泡剤、緩衝剤、キレート剤、分散剤、防腐剤、樹脂粉末、増粘剤、湿潤剤、及び可塑剤等を含んでよい。
【0034】
(位置合わせステップ)
位置合わせステップS110では、ターゲットとなる地毛GMに開口10Xが重なるように、頭部における増毛作業支援冶具2の位置合わせを行う。
【0035】
(通しステップ)
通しステップS120では、ターゲットとなる地毛GMを開口10Xに通す。なお、通しステップS120は、載置ステップS130よりも後に行ってもよいが、作業的には、載置ステップS130より前に行うことが好ましい。
【0036】
(載置ステップ)
載置ステップS130では、位置合わせステップS110において設定した位置に、増毛作業支援冶具2を載置する。これにより、ターゲットとなる地毛GMが開口10Xに通った状態で、地毛GMの周りに生えている周囲地毛を寝かすことができる。また、横スリットSLからヘアピンを挿入して、抑え部材10及び周囲地毛を挟み込む。これにより、頭部から増毛作業支援冶具2が固定されるため、作業効率の向上とともに、増毛作業支援冶具2の脱落防止を実現できる。
【0037】
(起立ステップ)
起立ステップS140では、係合部材20の上端に地毛GMの先端側部分GM2を載せる。これにより、先端側部分GM2が係合部材20と係合するため、根元側の被塗布部分GM1が起立する。このとき、先端側部分GM2がフック部材30と係合することで、Y方向における先端側部分GM2の位置決めが可能となる。これにより、先端側部分GM2の不用意な移動がなくなるため、根元側の被塗布部分GM1の姿勢が安定する結果、仮止め剤塗布ステップS152以降の作業効率が向上する。
【0038】
(仮止め剤塗布ステップ)
仮止め剤塗布ステップS152では、人工毛EXの基端部分に仮止め剤を塗布する。まず、シート上に仮止め剤を載置する。つぎに、人工毛EXの基端部分をシート上の仮止め剤に接触させる。これにより、人工毛EXの基端部分EX1には、仮止め剤KSが塗布される(
図5(A))。なお、仮止め剤を塗布する方法としては、上述したものに限定されず、刷毛等、公知の道具を用いてもよい。
【0039】
(接触ステップ)
接触ステップS154では、仮止め剤KSが塗布された人工毛EXの基端部分EX1を、被塗布部分GM1に接触させる(
図5(B))。これにより、被塗布部分GM1に対し、人工毛EX(
図1)が仮止めされる。人工毛EXは、複数の線条体を備え、それぞれの線条体の基端部分同士が一体となっている。線条体の径は、特に限定されないが、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1mm以下であることがより好ましい。い。また、線条体の長さは、特に限定されないが、10mm以上30mm以下であることが好ましい。線条体の材料としては、特に限定されず、プラスチック等、公知の材料を用いることができる。なお、人工毛EXは、1本の線条体でもよい。
【0040】
なお、人工毛EXの代わりに人毛を用いてもよい。
【0041】
(接着剤塗布ステップ)
接着剤塗布ステップS162では、人工毛EX及び地毛GMに対し接着剤を塗布する。接着剤を塗布する部分としては、人工毛EX及び被塗布部分GM1のうち仮止め剤が塗布された部分を覆うように塗布することが好ましい。また、接着剤を塗布する部分としては、
図5(C)における破線部分SSのように、仮止め剤によって仮止めされた部分のみならず、人工毛EXの基端部分EX1及び被塗布部分GM1の全周囲に渡って接着剤を塗布してもよい。特に、地毛GMに対する人工毛EXの基端部分EX1の段差部分が滑らかになるように接着剤を塗布することが好ましい。接着剤を塗布する道具としては、刷毛等、公知の道具を使用できる。
【0042】
被塗布部分GM1に仮止め剤や接着剤を塗布する際、開口10Xの稜線10XSを被塗布部分GM1の識別子として利用することが好ましい。すなわち、作業者から見て、毛根MKと開口10Xの稜線10XSの間を塗布領域として設定し、当該領域に仮止め剤や接着剤を塗布することが好ましい。これにより、各地毛の塗布位置を揃えることができる。
【0043】
(接着剤硬化ステップ)
接着剤硬化ステップS164では、光源を用いて、塗布された接着剤に対し所定の光を当てる。光源としては、例えばUV(紫外線)ランプ、UV-LED、可視光LEDまたは赤外線ランプ等を備えている。
【0044】
好ましい光源の波長としては、接着剤が硬化するものであれば特に限定されず、紫外線、可視光線、赤外線等があり、いずれも適用できる。なお、取り扱いの上から、可視光線(波長域:360nm以上830nm以下)であることが好ましい。
【0045】
塗布された接着剤に対し所定の光を当てる際、頭皮へ向かう光を遮るべく、抑え部材10は当該光の波長に対する遮光性を有していることが好ましい。例えば、当該光の波長に対する遮光性を有する材料から抑え部材10を形成してもよいし、当該光の波長に対する遮光性を有する材料からなるシートを、抑え部材10の上目に形成してもよい。遮光性を有する材料としては、特に限定されない。例えば、光源が可視光線の場合は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、黒鉛、アニリンブラック、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛及び亜鉛華等が挙げられる。また、光源が紫外線の場合は、公知の紫外線吸収剤を用いればよいし、光源が赤外線の場合は、公知の赤外線吸収剤を用いればよい。
【0046】
接着剤塗布ステップS162が終わったら、新たなターゲットとなる地毛GMに対し、位置合わせステップS110から接着剤塗布ステップS162を行う。これを繰り返すことにより、所望の地毛に対し、人工毛を接着する接着作業を行うことができる。
【0047】
本発明によれば、仮止めステップと接着ステップとをこの順に行うため、仮止めステップのみを行った場合に比べ、地毛GMと人工毛EXとの接着期間が延びる。ここで、仮止めステップと接着ステップを行った場合には、接着力が約6週間持続するが、仮止めステップのみを行った場合には、接着力は約3週間しか持続しない。もちろん、接着ステップのみを行う場合には、接着力は約6週間持続するが、接着ステップでは、接着剤塗布ステップと接着剤硬化ステップの2段階が必要となる。このため、接着剤が硬化するまでに地毛GMと人工毛EXとが位置ずれを起こす可能性がある。かかる事態を避けるためには、接着剤が硬化するまでの間、地毛GMと人工毛EXとの相対的位置関係を維持すべく両者を固定しておく必要がある。本発明のように、接着ステップに先立って仮止めステップを行うため、仮止めステップでは、仮止め剤の塗布後、すぐに地毛GMと人工毛EXとが仮止めされる。このため、接着ステップにおいて、地毛GMと人工毛EXとが接着するまでの間、地毛GMと人工毛EXとを固定する必要がなくなる。このように、本発明によれば、増毛作業を手軽に行えるとともに、長期間にわたって接着力を持続することができる。
【0048】
上記実施形態では、抑え部材10と、係合部材20及びフック部材30が一体化した増毛作業支援冶具2を用いたが、本発明はこれに限られず、各部材が別体となってもよい。
【0049】
上記実施形態では、フック部材30として、例えば、フック部Fを有する面ファスナーを用いたが、本発明はこれに限られず、地毛に対して粘着性を有する材料からフック部材30を形成してもよい。地毛に対して粘着性を有する材料としては、シリコーン樹脂等がある。
【0050】
上記実施形態では、抑え部材10に開口10Xを形成したが、本発明はこれに限られない。例えば、
図6に示す増毛作業支援冶具2は、抑え部材10において開口10Xが形成されていない。この場合において、抑え部材10の端面の稜線10XSが、被塗布部分GM1の識別子となる。
【0051】
なお、仮止めステップS150では、地毛GM(例えば、被塗布部分GM)に仮止め剤を塗布した後、仮止め剤が塗布された被塗布部分GM1に人工毛EXの基端部分を接触させてもよい。
【0052】
上記実施形態では、増毛方法100として、地毛GMの被塗布部分GM1に対して人工毛EXの仮止めを行う仮止めステップS150を行ったが、本発明はこれに限られない。接着剤の中に、仮止め成分が含まれている場合には、仮止めステップS150を省略してもよい。かかる場合において、接着剤塗布ステップS162では、人工毛EX及び地毛GMに対する接着剤の塗布の手順は、前述の仮止めステップS150のように、人工毛EXの基端部分をシート上の接着剤に接触させた後、人工毛EXの基端部分を、被塗布部分GM1に接触させてもよいし、被塗布部分GM1に対して接着剤を塗布した後に、人工毛EXの基端部分を接触させればよい。
【0053】
上記実施形態では、増毛方法100において、増毛作業支援冶具2を用いたが、本発明の増毛方法は、これに限られず、増毛作業支援冶具2を用いず行ってもよい。
【0054】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
2 増毛作業支援冶具
10 抑え部材
10X 開口
10XS 稜線
20 係合部材
30 フック部材
GM1 被塗布部分
F フック部
FM 端面
GM 地毛
GM1 被塗布部分
GM2 先端側部分
MK 毛根
ML 目線
100 増毛方法
S110 位置決めステップ
S120 通しステップ
S130 載置ステップ
S140 起立ステップ
S150 接着剤塗布ステップ
S160 接着ステップ