(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】種結晶接着層、それを適用した積層体の製造方法及びウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20241018BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020080840
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2020-05-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0131542
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521492724
【氏名又は名称】セニック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SENIC Inc.
【住所又は居所原語表記】17-15,4sandan 7-ro,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do, 31040, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョンフィ
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ウンス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビョンキュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】コ、サンキ
(72)【発明者】
【氏名】ク、カプレル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュンギュ
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】相澤 啓祐
【審判官】土屋 知久
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vrは、下記式1で表され、28%/mm
3~154.5%/mm
3のVr値を有する、種結晶接着層
であって、
[式1]
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、炭化前の種結晶接着層の体積(mm
3)であり、V2は、黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm
3)を25℃で測定した値であり、
[式2]
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm
2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm
2)を25℃で測定した値であり、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記炭化前の種結晶接着層が不活性雰囲気、10torr~50torrの圧力で、5℃/min~10℃/minの昇温速度、2400℃~2600℃の温度で1時間~100時間熱処理されたものであり、
前記黒鉛化された種結晶接着層の面積、体積は、冷却過程を経た後に25℃の温度で測定されたものを基準とし、前記冷却過程は、黒鉛化された種結晶接着層に5℃/min~10℃/minの冷却速度で5~750torrのアルゴン又は窒素雰囲気の条件で行われ、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、1.97g/cm
2以上の重量を支え、
前記種結晶接着層と接着される被接着物の一面は、表面粗さ(Ra)が5μm以下で、0.01nm以上であり、
前記被接着物の熱膨張係数(×10
-6/℃)は、293.15K~473.15Kで6以下であ
る、種結晶接着層。
【請求項2】
前記Sg値は8.5%以上である、請求項1に記載の種結晶接着層。
【請求項3】
前記炭化前の種結晶接着層は1.69g/cm
2以上の重量を支える、請求項1に記載の種結晶接着層。
【請求項4】
Vgは、下記式3で表され、56%以上のVg値を有する、請求項1に記載の種結晶接着層
であって、
[式3]
前記式3において、V1は、前記炭化前の種結晶接着層の体積(mm
3)であり、V2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm
3)を25℃で測定した値であり、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記炭化前の種結晶接着層が不活性雰囲気、10torr~50torrの圧力で、5℃/min~10℃/minの昇温速度、2400℃~2600℃の温度で1時間~100時間熱処理されたものであり、
前記黒鉛化された種結晶接着層の体積は、冷却過程を経た後に25℃の温度で測定されたものを基準とし、前記冷却過程は、黒鉛化された種結晶接着層に5℃/min~10℃/minの冷却速度で5~750torrのアルゴン又は窒素雰囲気の条件で行われ、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、1.97g/cm
2以上の重量を支え、
前記種結晶接着層と接着される被接着物の一面は、表面粗さ(Ra)が5μm以下で、0.01nm以上であり、
前記被接着物の熱膨張係数(×10
-6/℃)は、293.15K~473.15Kで6以下である
、種結晶接着層。
【請求項5】
i)接着性樹脂を含むか、またはii)接着性樹脂及びフィラーを含む、請求項1に記載の種結晶接着層。
【請求項6】
前記接着性樹脂は、残炭量が5~50重量%である、請求項5に記載の種結晶接着層。
【請求項7】
前記炭化前の種結晶接着層は、一面の面積が7.85×10
3mm
2以上である、請求項1に記載の種結晶接着層。
【請求項8】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、一面の面積が5.50×10
3mm
2以上である、請求項1に記載の種結晶接着層。
【請求項9】
支持体の一面又は種結晶の一面上に炭化前の種結晶接着層を設け、前記支持体と前記種結晶との間に介在した前記種結晶接着層を含む積層体を設ける積層ステップと、
前記炭化前の種結晶接着層を炭化熱処理し、前記積層体が、炭化した種結晶接着層を含むようにする炭化ステップとを含み、
前記種結晶接着層は、下記式1で表されるVr値が28%/mm
3
~154.5%/mm
3
である、積層体の製造方法
であって、
[式1]
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、炭化前の種結晶接着層の体積(mm
3)であり、V2は、黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm
3)を25℃で測定した値であり、
[式2]
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm
2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm
2)を25℃で測定した値であり、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記炭化前の種結晶接着層が不活性雰囲気、10torr~50torrの圧力で、5℃/min~10℃/minの昇温速度、2400℃~2600℃の温度で1時間~100時間熱処理されたものであり、
前記黒鉛化された種結晶接着層の面積、体積は、冷却過程を経た後に25℃の温度で測定されたものを基準とし、前記冷却過程は、黒鉛化された種結晶接着層に5℃/min~10℃/minの冷却速度で5~750torrのアルゴン又は窒素雰囲気の条件で行われ、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、1.97g/cm
2以上の重量を支え、
前記種結晶接着層と接着される被接着物の一面は、表面粗さ(Ra)が5μm以下で、0.01nm以上であり、
前記被接着物の熱膨張係数(×10
-6/℃)は、293.15K~473.15Kで6以下である
、積層体の製造方法。
【請求項10】
前記炭化熱処理は、500℃~900℃の温度で行われる、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記炭化ステップの後に熱処理ステップをさらに含み、
前記熱処理ステップは、前記積層体を2400℃~2600℃の温度で黒鉛化熱処理を行い、前記積層体が、黒鉛化された種結晶接着層を含むようにするステップである、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記熱処理ステップは、前記種結晶の一面上にインゴットを成長させる過程を含む、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、互いに対向する第1面及び第2面を含み、
前記黒鉛化された種結晶接着層は、相対する面と接着された第1接合面及び第2接合面を有し、
前記第1接合面は、前記第1面が前記第1面と相対する面と接する接合面であり、
前記第2接合面は、前記第2面が前記第2面と相対する面と接する接合面であり、
前記第2面と相対する面は、前記種結晶の一面であり、
前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和は、前記第1面の面積と第2面の面積との和の0.95倍以下である、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
内部空間を有する反応容器に、原料物質と請求項9によって製造された積層体とを互いに対向するように配置する準備ステップと、
前記内部空間の温度、圧力及び気体雰囲気を調節して前記原料物質を昇華させ、前記積層体から成長したインゴットを設ける成長ステップと、
前記反応容器を冷却して前記インゴット又は前記インゴットが含まれた積層体を回収する冷却ステップと、
前記回収されたインゴットの縁部を研削する研削ステップと、
前記研削されたインゴットを切断してウエハを設ける切断ステップとを含む、ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種結晶接着層、種結晶接着層を適用した積層体の製造方法及びウエハの製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、2.2eV~3.3eVの広いバンドギャップを有する半導体であり、その優れた物理的化学的特性により、半導体材料として研究開発が進められている。
【0003】
炭化珪素単結晶を製造する方法として、液相蒸着法(Liquid Phase Epitaxy;LPE)、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition;CVD)、物理的気相輸送法(Physical Vapor Transport;PVT)などがある。その中で物理的気相輸送法は、坩堝内に炭化珪素原料を装入し、坩堝の上端には、炭化珪素単結晶からなる種結晶を配置した後、坩堝を誘導加熱方式で加熱して原料を昇華させ、種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる方法である。物理的気相輸送法は、高い成長率を有することによってインゴットの形態の炭化珪素を作製することができるので、最も広く用いられている。
【0004】
一方、従来、炭化珪素単結晶を成長させるために種結晶と種結晶ホルダとの間に接着層を形成して使用してきたが、炭化珪素単結晶インゴットの成長時に、種結晶ホルダと接着層との間の熱膨張係数の差などにより、インゴットに応力が加えられ得、ウエハへの加工時に反り値が増加したり、結晶質が低下したりする問題が発生することがある。
【0005】
このような炭化珪素の製造方法として、韓国公開特許公報第10-2015-0075220号に開示された"単結晶炭化珪素の成長方法"、韓国登録特許公報第10-1392639号に開示された"炭化珪素単結晶の製造方法"などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
具現例の目的は、支持体と接着層との間の熱膨張係数の差により発生する応力の発生を最小化し、優れた品質のインゴットを製造することができる種結晶接着層、それを適用した積層体の製造方法などを提供することにある。
【0007】
具現例の目的は、支持体と接着層との間の熱膨張係数の差により発生する応力の発生を最小化し、優れた品質のインゴット及びウエハなどを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、一実施例に係る種結晶接着層は、Vrは、下記式1で表され、28%/mm3以上のVr値を有する。
【0009】
【0010】
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値であり、
【0011】
【0012】
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm2)を常温で測定した値である。
【0013】
前記Sg値は8.5%以上であってもよい。
【0014】
前記炭化前の種結晶接着層は1.69g/cm2以上の重量を支えることができる。
【0015】
前記黒鉛化された種結晶接着層は1.97g/cm2以上の重量を支えることができる。
【0016】
前記炭化前の種結晶接着層は、コーティング層の形態またはフィルム層の形態であってもよい。
【0017】
前記種結晶接着層は、56%以上のVg値を有することができ、Vgは、下記式3で表される。
【0018】
【0019】
前記式3において、V1は、前記炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値である。
【0020】
前記種結晶接着層は、3μm以上の厚さを有することができる。
【0021】
前記種結晶接着層の一面の一部又は全部は、293.15~473.15Kで6以下の熱膨張係数を有する面と接着されてもよい。
【0022】
前記種結晶接着層は、i)接着性樹脂を含むか、またはii)接着性樹脂及びフィラーを含むことができる。
【0023】
前記接着性樹脂は、残炭量が5~50重量%であってもよい。
【0024】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記炭化前の種結晶接着層が2000℃以上の温度で熱処理されたものであってもよい。
【0025】
前記炭化前の種結晶接着層は、一面の面積が7.85×103mm2以上であってもよい。
【0026】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、一面の面積が5.50×103mm2以上であってもよい。
【0027】
上記目的を達成するために、一実施例に係る積層体の製造方法は、
【0028】
支持体の一面又は種結晶の一面上に炭化前の種結晶接着層を設け、前記支持体と前記種結晶との間に介在した前記種結晶接着層を含む積層体を設ける積層ステップと;
【0029】
前記炭化前の種結晶接着層を炭化熱処理し、前記積層体が、炭化した種結晶接着層を含むようにする炭化ステップと;を含み、
【0030】
前記種結晶接着層は、下記式1で表されるVr値が28%/mm3以上であってもよい。
【0031】
【0032】
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値であり、
【0033】
【0034】
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm2)を常温で測定した値である。
【0035】
前記炭化熱処理は、500℃~900℃の温度で行われてもよい。
【0036】
前記積層体の製造方法は、前記炭化ステップの後に黒鉛化熱処理ステップをさらに含むことができる。
【0037】
前記黒鉛化熱処理ステップは、前記積層体を2000℃以上の温度で黒鉛化熱処理を行い、前記積層体が、黒鉛化された種結晶接着層を含むようにするステップである。
【0038】
前記黒鉛化熱処理ステップは、前記種結晶の一面上にインゴットを成長させる過程を含むことができる。
【0039】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、互いに対向する第1面及び第2面を含む。
【0040】
前記第1面及び前記第2面はそれぞれ、相対する面と接着された接合面を有する。
【0041】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、相対する面と接着された第1接合面及び第2接合面を有することができる。
【0042】
前記第1接合面は、前記第1面が前記第1面と相対する面と直接接する接合面であり、前記第2接合面は、前記第2面が前記第2面と相対する面と直接接する接合面である。
【0043】
前記第2面と相対する面は、前記種結晶の一面であり、前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和は、前記第1面の面積と第2面の面積との和の0.95倍以下であってもよい。
【0044】
上記目的を達成するために、一実施例に係るウエハの製造方法は、前記種結晶の一面上に成長したインゴットの縁部を研削する研削ステップと;
【0045】
前記研削されたインゴットを切断してウエハを設ける切断ステップと;を含む。
【0046】
上記目的を達成するために、一実施例に係る積層体は、
【0047】
第1面及び第2面を有する種結晶接着層と;前記第1面の上に位置する支持体と;前記第2面の下に位置する種結晶と;を含み、
【0048】
前記第1面と前記支持体の一面とは互いに対向し、前記第2面と前記種結晶の一面とは互いに接し、
【0049】
前記種結晶接着層は、炭化した種結晶接着層であり、
【0050】
前記炭化した種結晶接着層は、炭化前の種結晶接着層を炭化させたものであり、
【0051】
前記炭化前の種結晶接着層は、コーティング層またはフィルム層である種結晶接着層であり、
【0052】
前記炭化した種結晶接着層は、2000℃以上の温度で熱処理により黒鉛化され、黒鉛化された種結晶接着層を形成し、
【0053】
種結晶接着層の面積の変化は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積と、前記炭化前の種結晶接着層の面積との差であり、
【0054】
種結晶の面積の変化は、前記熱処理前と前記熱処理後の前記種結晶の一面が有する面積の変化であり、
【0055】
支持体の面積の変化は、前記熱処理前と前記熱処理後の前記支持体の一面が有する面積の変化であり、
【0056】
前記種結晶接着層の面積の変化は、前記種結晶の面積の変化または前記支持体の面積の変化よりも大きく、
【0057】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記第1面の一部または前記第2面の一部が、隣り合う面と分離されてもよい。
【0058】
前記積層体は、支持体の一面が、293.15~473.15Kで6以下の熱膨張係数を有することができる。
【0059】
前記積層体は、種結晶の一面が、293.15~473.15Kで4以下の熱膨張係数を有することができる。
【0060】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記熱処理及び前記熱処理後の冷却過程でその面積が減少することができる。
【0061】
前記炭化前の種結晶接着層は、1.69g/cm2以上の重量を支えることができる。
【0062】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、1.97g/cm2以上の重量を支えることができる。
【0063】
前記積層体は、前記種結晶の他面から成長したインゴットを含むことができる。
【0064】
前記積層体の種結晶接着層は、相対する面と接着された接合面を有し、第1接合面は、前記第1面と相対する面が接する接合面であり、第2接合面は、前記第2面が相対する前記種結晶の一面と接する接合面であり、前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和は、前記第1面の面積と第2面の面積との和の0.95倍以下であってもよい。
【0065】
前記積層体の種結晶接着層は、相対する直接接する面と接着された接合面を有し、第1接合面は、前記第1面と相対する面が接する面であり、第2接合面は、前記第2面が前記種結晶の一面と接する面である。
【0066】
前記第1接合面の面積は、前記第1面の面積の0.3倍以上であってもよい。
【0067】
前記第2接合面の面積は、前記第2面の面積の0.3倍以上であってもよい。
【0068】
前記積層体の種結晶接着層は、28%/mm3以上のVr値を有することができ、前記Vrは、下記式1で表すことができる。
【0069】
【0070】
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、前記炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値であり、
【0071】
【0072】
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm2)を常温で測定した値である。
【0073】
前記積層体の種結晶は、面積が7.85×103mm2以上であってもよい。
【0074】
前記積層体の種結晶の一面は、表面粗さ(Ra)が5μm以下であってもよい。
【0075】
上記目的を達成するために、一実施例に係るインゴットの製造方法は、
【0076】
内部空間を有する反応容器に、原料物質と積層体を互いに対向するように配置する準備ステップと;
【0077】
前記内部空間の温度、圧力及び気体雰囲気を調節して前記原料物質を昇華させ、前記積層体から成長したインゴットを設ける成長ステップと;
【0078】
前記反応容器を冷却して前記インゴット又は前記インゴットがさらに含まれた積層体を回収する冷却ステップと;を含み、
【0079】
前記積層体は、第1面及び第2面を有する種結晶接着層と;前記第1面の上に位置する支持体と;前記第2面の下に位置する種結晶と;を含み、
【0080】
前記第1面と前記支持体の一面とは互いに対向し、
【0081】
前記第2面と前記種結晶の一面とは互いに接し、
【0082】
前記準備ステップにおいて、前記種結晶接着層は、炭化した種結晶接着層であり、
【0083】
前記炭化した種結晶接着層は、炭化前の種結晶接着層を炭化させたものであり、
【0084】
前記炭化前の種結晶接着層は、コーティング層またはフィルム層である種結晶接着層であり、
【0085】
前記成長ステップにおいて、前記種結晶接着層は、黒鉛化された種結晶接着層であり、
【0086】
種結晶接着層の面積の変化は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積と、前記炭化前の種結晶接着層の面積との差であり、
【0087】
種結晶の面積の変化は、前記熱処理前と前記熱処理後の前記種結晶の一面が有する面積の変化であり、
【0088】
支持体の面積の変化は、前記熱処理前と前記熱処理後の前記支持体の一面が有する面積の変化であり、
【0089】
前記種結晶接着層の面積の変化は、前記種結晶の面積の変化または前記支持体の面積の変化よりも大きく、
【0090】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記第1面の一部または前記第2面の一部が、隣り合う面との接着が分離されてもよい。
【0091】
前記インゴットの製造方法において、炭化前の種結晶接着層の面積を基準として、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積は8.5%以上減少したものであってもよい。
【0092】
前記インゴットの製造方法において、前記種結晶接着層は、相対する面と接着された接合面を有し、第1接合面は、前記第1面の相対する面が接する接合面であり、
【0093】
第2接合面は、前記第2面が相対する前記種結晶の一面と直接接する接合面であり、前記冷却ステップの後の前記第1接合面の面積は、前記第1面の面積の0.3倍以上であり、前記第2接合面の面積は、前記第2面の面積の0.3倍以上であってもよい。
【0094】
前記インゴットの製造方法において、前記インゴットから製造されたウエハは、55μm以下の反り値を有することができる。
【0095】
前記インゴットの製造方法において、前記インゴットはSiC単結晶インゴットであってもよい。
【0096】
上記目的を達成するために、一実施例に係るウエハの製造方法は、
【0097】
内部空間を有する反応容器に、原料物質と前記積層体の製造方法によって製造された積層体とを互いに対向するように配置する準備ステップと;
【0098】
前記内部空間の温度、圧力及び気体雰囲気を調節して前記原料物質を昇華させ、前記積層体から成長したインゴットを設ける成長ステップと;
【0099】
前記反応容器を冷却して前記インゴット又は前記インゴットが含まれた積層体を回収する冷却ステップと;
【0100】
前記回収されたインゴットの縁部を研削する研削ステップと;
【0101】
前記研削されたインゴットを切断してウエハを設ける切断ステップと;を含む。
【0102】
上記目的を達成するために、一実施例に係るウエハの製造方法は、
【0103】
前記インゴットの製造方法により製造されたインゴットの縁部を研削する研削ステップと;
【0104】
前記研削されたインゴットを切断してウエハを設ける切断ステップと;を含む。
【発明の効果】
【0105】
一実施例に係る種結晶接着層は、インゴットに加えられる応力を最小化し、成長したインゴットが、種結晶接着層から一部のみが分離されるようにするものの、完全に分離されないようにすることができる。また、一実施例に係る種結晶接着層を適用して製造された炭化珪素インゴット、及びこれを加工したウエハが良好な反り値を示すことができる。
【0106】
一実施例に係る積層体は、インゴットに加えられる応力を最小化し、成長したインゴットが、種結晶接着層から一部のみが着脱されるようにし、完全に分離されないようにすることができる。
【0107】
一実施例に係るインゴットの製造方法は、製造された炭化珪素インゴット及びこれを加工したウエハが、良好な反り値を示すことができる。
【0108】
一実施例に係るウエハの製造方法は、炭化珪素インゴットから優れた品質のウエハを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図1】従来、炭化珪素インゴットの成長後、反応容器の内部を概略的に示す概念図である。
【
図2】一実施例に係る種結晶接着層を適用して、インゴットの成長後、反応容器の内部の一例(a)及び他の一例(b)を概略的に示す概念図である。
【
図3】一実施例に係る種結晶接着層が適用された積層体を概略的に示す概念図である。
【
図4】一実施例に係る種結晶接着層が適用された炭化珪素単結晶の成長装置の一例を概略的に示す概念図である。
【
図5】樹脂組成物の(a)塗布、(b)接着層の形成、(c)炭化、(d)黒鉛化を順に示す写真である。
【
図6】比較例(a)及び実施例(b)において、インゴットの切断位置によるウエハの反り値を示すグラフである。
【
図7】比較例(a)及び実施例(b)において、ウエハのXRDマッピングの結果を示す写真である。
【
図8】一実施例に係る種結晶接着層(a)の熱処理後、収縮(b)によって種結晶及び支持体と分離された形態(c1)、(c2)を概略的に示す概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0110】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0111】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0112】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0113】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に別の層が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0114】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0115】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、又は、A及びB」を意味する。
【0116】
本明細書において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0117】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0118】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0119】
本発明の発明者らは、より欠陥が少なく、高品質のインゴットを製造する方法を研究する中で、昇華法である物理的気相輸送法(PVT)を適用して単結晶を成長させる過程において、所定の黒鉛化収縮率を満たす種結晶接着層を適用することで優れた品質のインゴットを製造できるという点を確認し、本発明を完成した。
【0120】
種結晶接着層
上記の目的を達成するために、一実施例に係る種結晶接着層100は、
Vrは、下記式1で表され、28%/mm3以上のVr値を有することができる。
【0121】
【0122】
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値であり、
【0123】
【0124】
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm2)を常温で測定した値である。
【0125】
前記炭化前の種結晶接着層は、種結晶接着層が2000℃以上の温度で黒鉛化される前の種結晶接着層である。前記種結晶接着層の組成及び製造方法については後述する。
【0126】
前記炭化前の種結晶接着層は、コーティング層である種結晶接着層、またはフィルム層である種結晶接着層であってもよい。コーティング層である種結晶接着層及びフィルム層である種結晶接着層については後述する。
【0127】
前記炭化前の種結晶接着層は、接着性樹脂が高分子化(polymerized)された状態の半透明なものである。前記炭化前の種結晶接着層は無定形の炭素(amorphous carbon)であって、不透明な炭化後の種結晶接着層と区分される。前記接着性樹脂については後述する。
【0128】
前記黒鉛化された種結晶接着層は、前記温度で黒鉛化された種結晶接着層である。前記炭化前の種結晶接着層は、黒鉛化された種結晶接着層になるに伴って、その体積が減少する。
【0129】
前記Sg値は、炭化前の種結晶接着層100の面積において黒鉛化により変化した面積の百分率である。前記変化は、減少として示され得る。
【0130】
前記炭化前の種結晶接着層の面積は、被接着物(支持体、種結晶など)に付着される接合面に対する面積であり得る。前記黒鉛化された種結晶接着層の面積は、前記炭化前の種結晶接着層の面積において黒鉛化により収縮した面積を除いた種結晶接着層の面積を示す。
【0131】
前記黒鉛化された種結晶接着層の面積、厚さ及び体積の測定は常温で行われ得、前記常温は20℃~30℃であってもよく、具体的には25℃であってもよい。
【0132】
前記Sg値は、8.5%以上であってもよく、または9%以上であってもよい。前記Sg値は、11%以上であってもよく、または16%以上であってもよい。前記Sg値は30%以下であってもよい。前記Sg値は、27%以下であってもよく、または21%以下であってもよい。
【0133】
前記Sg値が30%を超えると、前記種結晶接着層100を適用して成長及び冷却されたインゴットを含む種結晶が、前記種結晶接着層から完全に分離されてしまい、インゴットが損傷する恐れがあり、種結晶又は支持体から分離された種結晶接着層の面積が過度となり、インゴットの品質が低下する恐れがある。
【0134】
前記Sg値が8.5%未満であると、成長したインゴットを含む種結晶と種結晶接着層との間または前記種結晶と支持体との間の応力により、インゴットの反り(warp)値が良好でない恐れがある。
【0135】
前記Sg値が前記範囲を満たす時、2000℃以上の温度で昇華を通じたインゴットの成長及び冷却過程において、前記種結晶接着層と被接着物(支持体、種結晶など)との間に効果的に部分分離が行われ得、製造されるインゴットに加えられる応力を最小化することができる。前記Sg値が16%~21%である場合、製造されるインゴットの品質をさらに向上させることができる。
【0136】
前記Sg値の測定は、下記の実験例の項目に記載されたような方法が適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0137】
前記式1のVr値は、以下で説明する範囲であるとき、前記種結晶接着層100を適用してインゴットを製造する時、応力の発生をさらに減少させ、高品質のインゴットが成長し、回収されるようにすることができる。
【0138】
前記Vr値は、28%/mm
3
以上であってもよく、または28.7%/mm
3
以上であってもよい。前記Vr値は、38.3%/mm
3
以上であってもよく、または52.3%/mm
3
以上であってもよい。前記Vr値は154.5%/mm
3
以下であってもよい。前記Vr値は、77.8%/mm
3
以下であってもよく、または63.8%/mm
3
以下であってもよい。
【0139】
前記Vr値が154.5%/mm
3
を超えると、前記種結晶接着層100を適用して成長したインゴットの欠陥密度が高くなることがあり、製造されるインゴットが前記種結晶接着層から完全に分離されてしまい、インゴット自体が損傷する可能性がある。
【0140】
前記Vr値が28%/mm
3
未満であると、前記種結晶接着層を適用して成長したインゴットが、種結晶接着層と接着された被接着物(支持体、種結晶など)との熱膨張係数の差による応力を受けやすくなるので、製造されるインゴットの品質が良好でない恐れがある。
【0141】
前記Vr値が前記範囲を満たす時、製造されるインゴットに加えられる応力、これにより発生する欠陥を最小化することができ、インゴットの製造過程で種結晶接着層から種結晶を効果的に部分分離することができる。
【0142】
前記Vr値が53.7%/mm
3
~64.1%/mm
3
である場合、製造されるインゴットの品質をさらに向上させることができる。
【0143】
前記Vr値の測定は、下記の実験例の項目に記載されたような方法が適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0144】
前記種結晶接着層100が炭化前の種結晶接着層である場合、コーティング層である種結晶接着層であってもよく、またはフィルム層である種結晶接着層であってもよい。前記コーティング層である種結晶接着層は、液状の接着性樹脂組成物が塗布された形態の種結晶接着層であり得、前記フィルム層である種結晶接着層は、前記接着性樹脂組成物が塗布された後、硬化した形態の種結晶接着層であり得る。
【0145】
前記炭化前の種結晶接着層100は、1.69g/cm2以上の重量を支えることができる。前記炭化前の種結晶接着層100は、10.7g/cm2以上の重量を支えることができ、または15.4g/cm2の重量を支えることができる。前記範囲の重量を支えるようにして、インゴットの成長前、反応容器の内部の上端に、種結晶と支持体との間に介在した前記種結晶接着層100を含む積層体を安定的に配置することができる。
【0146】
前記コーティング層である種結晶接着層100は、接着性樹脂を含むことができ、または接着性樹脂とフィラーを含むことができる。前記コーティング層である種結晶接着層100は溶媒をさらに含むことができる。
【0147】
前記コーティング層である種結晶接着層は、所定の固形分を有する接着性樹脂を含む液状の接着性樹脂組成物を塗布し、乾燥したものであってもよい。
【0148】
前記固形分は、前記接着性樹脂組成物全体を基準として、16重量%~27重量%であってもよく、または18重量%~25重量%であってもよい。前記固形分は、前記接着性樹脂組成物全体を基準として18重量%~22重量%であってもよい。
【0149】
前記固形分の含量を満たす接着性樹脂組成物を通じて、前記種結晶接着層を被接着物上に容易に形成しながら、前記Sg値及びVr値を満たす種結晶接着層を設けることができる。
【0150】
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、メタノール、アセトン及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含むことができるが、前記接着性樹脂組成物及び前記種結晶接着層の製造に適用可能なものであれば、制限なしに適用することができ、前記に例示されたものに限定されない。
【0151】
前記フィルム層である種結晶接着層100は、接着性樹脂を含むことができ、または接着性樹脂とフィラーを含むことができる。
【0152】
前記フィルム層である種結晶接着層100は、前記液状の接着性樹脂組成物を塗布し、硬化熱処理して設けることができる。
【0153】
原料物質の昇華を含むインゴットの成長が行われる成長温度雰囲気で、前記インゴットの成長と共に、前記接着性樹脂の黒鉛化が行われ得る。前記接着性樹脂は、インゴットの成長温度で種結晶及び支持体との接着を少なくとも一部分維持できるものが使用され得る。
【0154】
前記接着性樹脂の残炭量は、5重量%~50重量%であってもよく、または10重量%~30重量%であってもよい。前記残炭量の範囲を有する接着性樹脂を使用した種結晶接着層は、インゴット成長ステップで効果的に黒鉛化され得、インゴットが成長した後、回収するステップで種結晶接着層が部分分離されるように助けることができる。
【0155】
前記接着性樹脂は、具体的には、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種を含むことができる。
【0156】
前記フィラーは、黒鉛、コークス、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、グラフェン及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種であってもよい。前記フィラーは、前記種結晶接着層100の黒鉛化時に収縮する程度を制御することができる。
【0157】
前記フィラーの平均粒径(D50)は1μm以下であってもよい。前記フィラーの平均粒径(D50)は200nm~600nmであってもよい。前記フィラーの平均粒径(D50)は、250nm~550nmであってもよく、または280nm~520nmであってもよい。
【0158】
前記フィラーがこのような粒子サイズを有する場合、前記種結晶接着層100の接着特性を同等レベル以上に維持しながら、インゴットに加えられる応力の影響を最小化すると共に、温度による種結晶接着層の体積及び面積の変化特性をより容易に制御することができる。
【0159】
前記フィラーの添加量は、前記接着性樹脂を含有する溶液全体を基準として、0.5重量%以上であってもよく、または1重量%以上であってもよい。前記フィラーの添加量は、前記接着性樹脂を含有する溶液全体を基準として、10重量%以下であってもよく、または6重量%以下であってもよい。前記フィラーの添加量の範囲で、前記種結晶接着層100の接着特性及び面積変化特性をより容易に制御することができる。
【0160】
前記フィラーが添加される時、前記接着性樹脂は、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フェノール樹脂及びクレゾールノボラック(cresol novolac)型樹脂からなる群から選択された1種であってもよい。また、前記フィラーが添加される時、前記接着性樹脂は、ポリアクリル酸樹脂またはポリアクリロニトリル樹脂であってもよい。
【0161】
このとき、前記樹脂を種結晶接着層100に適用してインゴットの成長及び冷却時に、被接着物である種結晶110及び支持体120が、黒鉛化された種結晶接着層と最適の接合面積を維持するものの、一部が分離されるようにして、インゴットに加えられる応力を効率的に減少させ、より高品質のインゴットを製造することができる。
【0162】
前記種結晶接着層100は、被接着物(支持体、種結晶など)と対向する面が接着される接合面を含むことができ、前記接合面は、前記種結晶接着層100の一面である第1面と、他面である第2面とを含む。
【0163】
具体的には、支持体120が前記種結晶接着層の上に位置することができ、前記支持体の一面が前記種結晶接着層の第1面と対向することができ、互いに接合され得る。種結晶110は、前記種結晶接着層の下に位置することができ、前記種結晶の一面が前記種結晶接着層の第2面と対向して接することができる。
【0164】
前記種結晶接着層100と被接着物(支持体、種結晶など)とは接着される。
【0165】
前記被接着物の熱膨張係数(×10-6/℃)は、293.15K~473.15Kで6以下であってもよい。前記被接着物の熱膨張係数(×10-6/℃)は、293.15K~473.15Kで5以下であってもよく、または4.5以下であってもよい。前記被接着物の熱膨張係数(×10-6/℃)は、293.15K~473.15Kで1以上であってもよく、2以上であってもよく、または3以上であってもよい。前記被接着物の熱膨張係数(×10-6/℃)は、293.15K~473.15Kで3.7~4.2であってもよい。
【0166】
前記熱膨張係数の範囲を満たす被接着物(種結晶、支持体など)に、前記種結晶接着層を適用すると、インゴットの成長のための昇温及び冷却過程においてより適切に種結晶接着層と被接着物との部分分離を誘導することができる。
【0167】
前記種結晶接着層100と接着される被接着物の一面は、表面粗さ(Ra)が5μm以下であってもよく、0.01nm以上であってもよい。
【0168】
前記種結晶110は、成長させようとするインゴットの特性に応じて異なって適用することができる。
【0169】
前記インゴットが炭化珪素インゴットである場合、炭化珪素種結晶が適用され得る。例えば、4H-SiCウエハ、6H-SiCウエハ、3C-SiCウエハ、15R-SiCウエハなどが適用されてもよく、2000℃以上の温度で昇華法を通じてインゴットが成長し得るものであれば適用可能である。
【0170】
前記種結晶110は、成長させようとするインゴットのサイズに応じて異なって適用することができる。前記インゴットの直径は、4インチ以上であってもよく、5インチ以上であってもよく、または6インチ以上であってもよい。前記インゴットの直径は、4インチ~12インチ、4インチ~10インチ、または6インチ~8インチであってもよい。前記種結晶は、このようなインゴットの特性に応じて適切なものを適用することができる。
【0171】
前記種結晶110は、4H-SiC単結晶を成長させ得るものを適用することができ、例えば、インゴットが成長する前面がC面(000-1)である4H-SiC結晶の種結晶が適用されてもよい。
【0172】
前記支持体120は、前記種結晶110を種結晶接着層100と共にインゴットの成長のための反応容器の内部空間の上部に配置する目的で適用することができる。
【0173】
前記支持体120は黒鉛材質であってもよく、インゴットの成長に使用される反応容器の坩堝の材質と同一であってもよい。また、前記支持体120は、前記反応容器の蓋と一体または別途に形成されてもよい。
【0174】
前記黒鉛化された種結晶接着層100は、前記種結晶接着層を窒素又はアルゴン気体などの不活性雰囲気、10torr~50torrの圧力で、5℃/min~10℃/minの昇温速度、2000℃~2600℃の温度で1時間~100時間熱処理して設けることができる。具体的には、前記黒鉛化された種結晶接着層100は、30torrのアルゴン雰囲気で10℃/minの昇温速度、2600℃の温度で10時間熱処理して設けることができる。
【0175】
前記黒鉛化された種結晶接着層の面積、体積などは、25℃の温度で測定されたものを基準とする。
【0176】
通常、インゴットの成長及び/又は種結晶接着層の黒鉛化は、高温での熱処理過程により行われるので、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積、体積などは、冷却過程を経た後に測定される。前記冷却過程は、黒鉛化された種結晶接着層に5℃/min~10℃/minの冷却速度が適用され得る。また、前記冷却は、5~750torrのアルゴン又は窒素雰囲気の条件で行われ得る。
【0177】
前記黒鉛化された種結晶接着層100は、1.97g/cm2以上の重量を支えることができ、または12.5g/cm2以上の重量を支えることができる。前記黒鉛化された種結晶接着層は、51.3g/cm2以下の重量を支えることができ、または35.9g/cm2以下の重量を支えることができる。前記範囲の重量を支えるようにして、インゴットの成長及び冷却後、黒鉛化された種結晶接着層が被接着物と一部分分離されても、インゴットが完全に分離されないようにすることができる。
【0178】
前記種結晶接着層100は、下記式3で表されるVg値が56%以上であってもよく、71%以下であってもよい。
【0179】
【0180】
前記式3において、V1は、前記炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値である。
【0181】
前記式3のV1及びV2は、前記式1の値と同一であり得、前記式3の黒鉛化の条件、体積測定の条件も、上述した説明と同一である。
【0182】
前記種結晶接着層100が前記Sg及びVr値の範囲と、Vg値の範囲を満たす時、インゴットの成長及び冷却ステップにおいて、被接着物と十分な接着力は維持しながら、目的とする部分的な分離を容易に誘導することができ、応力による欠陥がさらに減少したインゴットを製造することができる。
【0183】
前記種結晶接着層100の厚さは3μm以上であってもよい。前記種結晶接着層100の厚さは、5μm以上であってもよく、または10μm以上であってもよい。前記厚さは100μm以下であってもよい。前記厚さは、80μm以下であってもよく、または70μm以下であってもよい。前記厚さ範囲で、全体的に一定の厚さの種結晶接着層を安定的に形成することができ、種結晶110及び支持体120などの被接着物をより安定的に接着させることができる。
【0184】
前記炭化前の種結晶接着層100(コーティング層又はフィルム層の形態)は、面積が7.85×103mm2以上であってもよく、または17.6×103mm2以上であってもよい。前記炭化前の種結晶接着層は、面積が70.6×104mm2以下であってもよく、または40.9×104mm2以下であってもよい。前記面積範囲及び前記厚さ範囲で、接着が安定的に行われ得、インゴットの成長及び冷却時に、前記種結晶接着層の被接着物との部分分離が効果的に行われ得る。
【0185】
前記黒鉛化された種結晶接着層100の面積は、5.50×103mm2以上であってもよく、または12.3×103mm2以上であってもよく、49.4×103mm2以下であってもよく、または28.6×103mm2以下であってもよい。このような面積範囲を有するとき、前記黒鉛化された種結晶接着層は、より容易に被接着物と部分分離され得る。
【0186】
前記種結晶接着層は、昇温及び冷却過程でその体積が変化し、このとき、前記種結晶接着層と前記被接着物との界面で互いに反対方向の張力が一時的に作用するようになり、これは、種結晶接着層が前記被接着物を接着する接着力を一時的に弱め、前記種結晶接着層の部分分離が生じるものと考えられる。このとき、前記種結晶の他面にインゴットが位置してその重量が増加した場合、前記一部の分離がさらに有利に行われ得る。
【0187】
前記種結晶接着層の部分分離は、昇温及び冷却過程で発生する熱膨張率(又は熱収縮率)の差によって発生する応力を実質的に除去することができ、応力によりインゴットに発生する欠陥を著しく減少させることができる。
【0188】
このような種結晶接着層の体積変化の特性は、少なくとも2つの理由であると考えられる。その一つは、炭化前の種結晶接着層に含まれた接着性樹脂などが炭化及び黒鉛化過程を経ながら体積が減少するためであると考えられる。そして、他の一つは、黒鉛化された種結晶接着層が冷却される過程で熱収縮して体積が減少するためであると考えられる。
【0189】
このような前記種結晶接着層の特徴は、前記被接着物と適切な範囲の熱膨張(又は熱収縮)特性を有するとき、さらに優れた効果を有する。
【0190】
但し、2000℃以上の温度で熱膨張率(又は熱膨張係数)を測定することが実質的に難しいので、前記では、測定可能な温度範囲での被接着物(支持体、種結晶など)の熱膨張係数を提示する。
【0191】
図1及び
図2を参照すると、従来、接着層10が適用されて成長した炭化珪素インゴット(
図1)、及び一実施例に係る種結晶接着層100が適用されたインゴット130(
図2(a)及び(b))を確認することができる。
【0192】
図1に示されたように、従来、炭化珪素インゴットの成長過程で支持体120と種結晶110との間の熱膨張係数の差により、炭化珪素インゴットの成長過程である昇温、冷却過程で炭化珪素インゴットに応力が加えられ得る。
【0193】
図2(a)及び(b)では、前記種結晶接着層100の収縮に伴い、支持体120と種結晶110との間に一部分離が起こる形状を示した。これによって、前記支持体の上部に位置する反応容器の蓋140の反りを抑制し、前記支持体との熱膨張係数の差によってインゴットに加えられる応力を最小化することができる。
【0194】
インゴットの成長過程において、前記種結晶、種結晶接着層及び支持体の外周面を取り囲む多結晶131が形成され得、以後、前記種結晶接着層が収縮しながら前記多結晶の一部が破断し得る。
【0195】
インゴットの成長及び冷却により、
図8に示したように、前記黒鉛化された種結晶接着層100が収縮し(
図8(b)、黒色の矢印は、接着層の収縮を表す)、被接着物と前記種結晶接着層との間の一部分離が発生し得る(
図8(c1)、(c2))。
【0196】
黒鉛化された種結晶接着層と被接着物との間の分離されずに残っている接着面積が、黒鉛化された種結晶接着層の面積に対し95%以下である場合(即ち、分離された面積が5%を超える場合)、目的とする一部分離が起こったと見なすことができる。
【0197】
前記分離されずに残っている接着面積は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積に対し90%以下であってもよく、または77%以下であってもよい。前記分離されずに残っている接着面積は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積に対し30%以上であってもよく、または45%以上であってもよい。前記黒鉛化された種結晶接着層が、前記分離されずに残っている接着面積の範囲を有する場合に、インゴットの成長及び冷却時に前記種結晶接着層と被接着物との一部分離が効果的に行われ得、分離されていない接着面である種結晶接着層によって、前記種結晶と前記種結晶の他面上に位置するインゴットが完全に分離されないように支えることができる。
【0198】
積層体の製造方法
他の一実施例に係る積層体の製造方法は、
【0199】
支持体120の一面または種結晶110の一面上に炭化前の種結晶接着層100を設け、前記支持体と前記種結晶との間に介在した前記種結晶接着層を含む積層体を設ける積層ステップと;
前記炭化前の種結晶接着層を炭化熱処理し、炭化した種結晶接着層を含む積層体を設ける炭化ステップと;を含む。
【0200】
前記炭化ステップの後に熱処理ステップをさらに含むことができる。
【0201】
前記熱処理ステップは、前記積層体を2000℃以上の温度で黒鉛化熱処理を行うことで、黒鉛化された種結晶接着層を含む積層体を製造するステップである。
【0202】
前記種結晶接着層は、下記式1で表されるVr値が28%/mm3以上であってもよい。
【0203】
【0204】
前記式1において、Sg(%)は、下記式2の値であり、V1は、炭化前の種結晶接着層の体積(mm3)であり、V2は、黒鉛化された種結晶接着層の体積(mm3)を常温で測定した値であり、
【0205】
【0206】
前記式2において、A1は、前記炭化前の種結晶接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積(mm2)を常温で測定した値である。
【0207】
前記種結晶接着層は、第1面及び第2面を含む。
【0208】
前記炭化前の種結晶接着層は、コーティング層である種結晶接着層、またはフィルム層である種結晶接着層を含む。
【0209】
前記炭化した種結晶接着層は、前記コーティング層である種結晶接着層またはフィルム層である種結晶接着層が炭化熱処理されたものであってもよい。
【0210】
前記積層ステップは、支持体120の一面または種結晶110の一面上に炭化前の種結晶接着層を設け、前記支持体と前記種結晶との間に介在した前記種結晶接着層を含む積層体を設けるステップである。
【0211】
前記積層体は、前記種結晶接着層、前記種結晶接着層の第1面の上に位置する前記支持体、そして、前記種結晶接着層の第2面の下に位置する前記種結晶を含むことができる。
【0212】
前記積層ステップの種結晶110及び支持体120はそれぞれ、前記種結晶接着層の説明において被接着物として記述した種結晶及び支持体と同一である。
【0213】
前記積層ステップの種結晶接着層100は、炭化前の種結晶接着層であって、コーティング層の形態またはフィルム層の形態であってもよく、前記種結晶接着層の説明で記述した通りである。
【0214】
前記積層ステップの種結晶接着層100が、コーティング層である種結晶接着層である場合、前記コーティング層である種結晶接着層は、前記接着性樹脂と前記溶媒が混合されて、所定の重量%の固形分を有する液状であってもよい。
【0215】
前記積層ステップの種結晶接着層100が、コーティング層である種結晶接着層である場合、前記液状の種結晶接着層から溶媒が一部除去されて乾燥されたコーティング層であってもよい。
【0216】
前記接着性樹脂がポリアクリル酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂またはクレゾールノボラック(cresol novolac)型樹脂である場合、溶媒と混合されて固形分が16重量%~27重量%であってもよい。前記固形分は、18重量%~25重量%であってもよく、または18重量%~22重量%であってもよい。
【0217】
前記固形分を有する接着性樹脂組成物を通じて、安定した作業性を有しながら、前記Sg及び前記Vr値を満たす種結晶接着層100を製造することができる。
【0218】
前記積層ステップの種結晶接着層100(炭化前の種結晶接着層)がコーティング層の形態である場合、前記コーティング層の形態の種結晶接着層は、前記支持体120又は種結晶110の一面上に接着性樹脂組成物を塗布して形成され得る。具体的には、前記塗布は、通常の液状物質を塗布する方法が適用され得、スピンコーティングを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0219】
前記塗布における塗布厚さは、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、または10μm以上であってもよい。前記塗布厚さは、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよく、または70μm以下であってもよい。前記塗布厚さの範囲で、種結晶110及び支持体120などの被接着物を安定的に接着させることができ、後続ステップにおいて種結晶と支持体が一部分のみが適切に分離されるように誘導することができる。
【0220】
前記積層ステップの種結晶接着層100(炭化前の種結晶接着層)がフィルム層の形態である場合、前記フィルム層である種結晶接着層は、前記コーティング層である種結晶接着層を硬化熱処理して設けることができる。
【0221】
前記硬化熱処理温度は、100℃~450℃であってもよく、120℃~420℃であってもよく、または150℃~420℃であってもよい。前記熱処理時間は1時間~10時間であってもよい。
【0222】
前記熱処理温度が100℃未満であると、製造されたフィルム層の形態の種結晶接着層の架橋の程度が十分でないことがある。前記熱処理温度が450℃を超えると、後の過程で前記フィルム層の形態の種結晶接着層が体積変化の程度が減少する可能性がある。
【0223】
図3に示したように、支持体120上に前記種結晶接着層100を形成することができ、前記種結晶接着層上に種結晶110を位置させて積層体を設けることもできる。
【0224】
前記支持体120は、種結晶ホルダであってもよく、または前記反応容器の蓋140であってもよい。
【0225】
前記支持体120は、反応容器の蓋140と別途に形成されてもよく、または一体に形成されてもよい。
【0226】
従来の方法では、種結晶と支持体との間に介在した接着層を含む積層体を製造する際、加圧するステップが適用されることもあるが、一実施例に係る積層体の製造方法は、加圧する過程を省略することができる。
【0227】
前記炭化ステップは、前記炭化前の種結晶接着層100を炭化熱処理し、炭化した種結晶接着層を含む積層体を設けるステップである。
【0228】
前記炭化ステップの炭化熱処理温度は、500℃以上であってもよく、または600℃以上であってもよい。前記炭化熱処理温度は、900℃以下であってもよく、または800℃以下であってもよい。前記炭化熱処理温度の範囲で、前記種結晶接着層100の炭化が容易に行われ得、エネルギーの浪費を最小化することができる。
【0229】
前記炭化ステップは、アルゴン又は窒素などの不活性気体雰囲気で行うことができ、1torr~750torrの圧力で1時間~10時間行うことができる。
【0230】
前記炭化ステップが行われた積層体を冷却する冷却ステップをさらに含むことができ、20℃~30℃の常温に冷却することができる。
【0231】
前記炭化ステップの後に熱処理ステップをさらに含むことができる。
【0232】
前記熱処理ステップは、前記積層体を2000℃以上の温度で黒鉛化熱処理を行うことで、黒鉛化された種結晶接着層を含む積層体を製造するステップである。
【0233】
前記熱処理ステップの温度は、2000℃以上であってもよく、2200℃以上であってもよく、または2300℃以上であってもよい。前記温度は、2600℃以下であってもよく、または2500℃以下であってもよい。前記温度範囲で、前記種結晶接着層の黒鉛化が効果的に行われ得る。
【0234】
前記熱処理ステップは、1torr~200torrの圧力の不活性雰囲気、1℃/min~10℃/minの昇温速度の条件で1時間~100時間行われてもよい。前記熱処理ステップは、10torr~50torr、5℃/min~10℃/minの昇温速度の条件で5時間~48時間行われてもよい。前記温度、圧力及び昇温速度の範囲で、より効率的に前記種結晶接着層100の黒鉛化処理を行うことができる。
【0235】
前記熱処理ステップで黒鉛化された種結晶接着層100は、第1面及び第2面を有することができ、被接着物と接着された接合面を有することができる。前記第1面は、前記黒鉛化された種結晶接着層の一面であり、前記第2面は、前記黒鉛化された種結晶接着層の他面である。
【0236】
前記熱処理ステップで黒鉛化された種結晶接着層は、相対する面と接着された接合面を有することができる。前記接合面は、第1接合面及び第2接合面を含むことができる。
【0237】
前記第1接合面は、前記第1面と相対する面と接する接合面である。前記第1接合面は、前記第1面と前記支持体の一面とが直接接する接合面であり得る。
【0238】
前記第2接合面は、前記第2面が相対する前記種結晶の一面と直接接する面である。
【0239】
前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和が、前記第1面の面積と第2面の面積との和より所定の倍数以下である場合、一部分離が行われたと見なすことができる。
【0240】
前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和が、前記第1面の面積と第2面の面積との和の0.95倍以下であってもよく、または0.90倍以下であってもよい。前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和が、前記第1面の面積と第2面の面積との和の0.77倍以下であってもよい。
【0241】
前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和が、前記第1面の面積と第2面の面積との和の0.30倍以上であってもよく、または0.45倍以上であってもよい。
【0242】
前記第1接合面の面積と第2接合面の面積との和が前記の範囲を有する場合、前記種結晶接着層を適用してインゴットを成長させるとき、インゴットの成長及び冷却過程で熱膨張率(熱収縮率)によって発生し得るインゴットと支持体との間の応力を最小化することができ、より優れた品質のインゴットを提供することができる。
【0243】
前記熱処理ステップの後、
図8に示したように、種結晶接着層100の黒鉛化による収縮によって(
図8(b))、支持体120と種結晶接着層との間及び種結晶110と種結晶接着層との間に一部分離(
図8(c1)、(c2))が起こり得る。これによって、前記支持体と種結晶の熱膨張係数の差により種結晶及びインゴットに加えられる応力を最小化することができる。
【0244】
前記熱処理ステップは、前記種結晶の一面上にインゴットを成長させる成長ステップと同時に行われてもよい。または、前記熱処理ステップは、前記種結晶接着層の黒鉛化と前記インゴットの成長が順次行われてもよい。
【0245】
前記成長ステップは、反応容器の内部空間の下部に原料300、上部に前記積層体を配置し、前記積層体の種結晶の他面が前記原料300と対向するように配置することができる。
【0246】
図4にインゴットの製造装置の一例を概略的に示した。
図4を参照すると、前記反応容器は、断熱材400によって取り囲まれて固定され得、石英管のような反応チャンバ420内に、前記反応容器を取り囲んだ断熱材が位置するようにすることができる。前記断熱材及び反応チャンバの外部に備えられた加熱手段500により、前記反応容器の内部空間の温度を制御することができる。
【0247】
前記反応容器は、炭化珪素インゴット130の成長に適切なものであれば適用可能であり、具体的にはグラファイト坩堝が適用され得る。
【0248】
前記反応容器は、内部空間及び開口部を含む本体と、前記開口部と対応して前記内部空間を密閉する蓋とを含むことができる。前記蓋は、前記反応容器の内部空間に対向する面に前記積層体が配置されるようにすることができ、前記蓋上に前記積層体の支持体120の一面が接することができる。
【0249】
前記熱処理ステップの成長ステップは、前記加熱手段500によって反応容器及び反応容器の内部空間を加熱して行うことができ、前記加熱と同時又は別途に内部空間を減圧し、不活性気体を所定量注入してインゴットの成長を誘導することができる。
【0250】
前記熱処理ステップの成長ステップの温度、圧力、雰囲気及び昇温速度は、前記熱処理ステップで記述したものと同じであり得る。
【0251】
前記熱処理ステップの成長ステップを通じて製造されるインゴット130は、インゴットを積層体から分離する切断過程を簡素化することができる。分離されたインゴットは、外径研削装備を適用してインゴットの外縁部分を削り(external grinding)、一定の厚さに切削(slicing)した後、縁部の研削及び表面研磨、ポリッシングなどの加工を通じてウエハに加工することができる。
【0252】
前記インゴットから製造されたウエハは、55μm以下の反り値(warp)を有することができ、または前記インゴットから製造されたウエハの平均30μm以下の反り値を有することができる。このような特徴を有するインゴットは、優れた物性を有するウエハを製造することができる。前記反り値(warp)の測定は、下記実験例に記載されたような方法を適用することができる。
【0253】
前記積層体の製造方法は、前記熱処理ステップで製造された積層体を冷却する冷却ステップをさらに含むことができる。
【0254】
前記冷却ステップは、1℃/min~10℃/minの冷却速度で24時間~48時間行うことができる。前記冷却ステップは、前記内部空間の圧力を700torr~800torrに上昇させた状態で行うことができる。
【0255】
前記積層体の製造方法の式2のSg値及び前記式1のVr値は、前記種結晶接着層100の説明で記述した通りであり、その測定過程は、下記実験例の項目で記載した通りであるが、これに限定されるものではない。
【0256】
前記積層体の製造方法を通じて製造された積層体は、特有の前記Vr値及びSg値を有する種結晶接着層100を通じて、種結晶接着層の収縮による被接着物間の部分分離が発生し、前記積層体の製造方法の熱処理ステップでインゴットの成長ステップを含む時、優れた品質のインゴットを製造することができる。
【0257】
積層体
他の一実施例に係る積層体は、
第1面及び第2面を有する種結晶接着層100と;一面が前記第1面の上に位置する支持体120と;前記第2面の下に位置する種結晶110と;を含む。
【0258】
前記第1面と前記支持体の一面は互いに対向することができる。
【0259】
前記第2面と前記種結晶110の一面とは互いに接することができる。
【0260】
前記炭化した種結晶接着層は、炭化前の種結晶接着層を炭化させたものである。
【0261】
前記炭化前の種結晶接着層は、コーティング層またはフィルム層である種結晶接着層であってもよい。
【0262】
前記炭化した種結晶接着層は、2000℃以上の温度で熱処理により黒鉛化され、黒鉛化された種結晶接着層を形成する。
【0263】
種結晶接着層の面積の変化は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積と、前記炭化前の種結晶接着層の面積との差である。
【0264】
前記種結晶110の面積の変化は、前記熱処理前と熱処理後の前記種結晶の一面が有する面積の変化である。
【0265】
前記支持体120の面積の変化は、前記熱処理前と熱処理後の前記支持体の一面が有する面積の変化である。
【0266】
前記種結晶接着層100の面積の変化は、前記種結晶の面積の変化又は前記支持体の面積の変化よりも大きくなり得る。
【0267】
前記黒鉛化された種結晶接着層100は、前記第1面の一部又は前記第2面の一部が、隣り合う面と分離される。
【0268】
2000℃以上で熱処理した後、常温で測定した前記種結晶接着層100の面積を、前記熱処理前の前記種結晶接着層の面積と比較した面積の変化が、前記支持体120の面積の変化又は前記種結晶110の面積の変化よりも大きくなり得る。
【0269】
2000℃以上で熱処理した後の前記種結晶接着層100は、前記第1面の一部又は前記第2面の一部が、隣り合う面と直接接着されずに分離される。
【0270】
具体的には、2000℃以上で熱処理する前の前記種結晶接着層100は、炭化前の種結晶接着層であり得、前記熱処理後の前記種結晶接着層は、黒鉛化された種結晶接着層である。
【0271】
前記種結晶接着層100の面積の変化は、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積と、前記炭化前の種結晶接着層の面積との差である。
【0272】
前記種結晶接着層100の面積の変化は、前記炭化前の種結晶接着層の面積から前記黒鉛化された種結晶接着層の面積を引いた値であり得る。
【0273】
前記炭化前の種結晶接着層100は、コーティング層である種結晶接着層、またはフィルム層である種結晶接着層であってもよい。
【0274】
前記種結晶接着層100は、2000℃以上で熱処理した後、常温に冷却され、黒鉛化されて面積が減少し得る。
【0275】
前記種結晶110、前記支持体120及びこれらが有する特徴についての具体的な説明は、それぞれ前記種結晶接着層及びその製造方法の説明において被接着物として記述した種結晶及び支持体についての説明と同じである。
【0276】
前記支持体120の前記第1面と接する面は、293.15~473.15Kで6以下の熱膨張係数を有することができ、前記支持体又は前記第1面と接する面の熱膨張係数に関連する説明は、上述した被接着物についての説明と同じである。
【0277】
前記種結晶110の前記第2面と直接接する面は、293.15~473.15Kで4以下の熱膨張係数を有することができる。前記種結晶又は前記第2面と接する面の熱膨張係数に関連するより詳細な説明は、上述した被接着物についての説明と同じである。
【0278】
前記積層体は、前記種結晶110の他面から成長したインゴット130を含むことができる。
【0279】
前記種結晶接着層100は、炭化前の種結晶接着層であってもよい。
【0280】
前記炭化前の種結晶接着層100についての説明、前記炭化前の種結晶接着層が支える重量についての説明などの具体的な説明は、上述した説明と同じである。
【0281】
前記炭化した種結晶接着層100は、前記炭化前の種結晶接着層を炭化熱処理したもので、実質的にその表面に気泡が形成されていないものであり得る。
【0282】
前記種結晶接着層100は、前記黒鉛化熱処理後のもので、前記黒鉛化された種結晶接着層であり得る。
【0283】
前記黒鉛化及び前記黒鉛化された種結晶接着層100についての具体的な説明は、上述した通りである。
【0284】
前記黒鉛化された種結晶接着層100は、前記熱処理及び前記熱処理後の冷却過程でその面積が減少し得るという点は、記述した通りである。
【0285】
前記種結晶接着層100は、相対する直接接する面と接着された接合面を有することができる。第1接合面は、前記第1面が前記支持体120の一面と直接接する面であり、第2接合面は、前記第2面が前記種結晶110の一面と直接接する面である。前記第1接合面と第2接合面との和は、前記第1面と第2面との和の0.95倍以下であるというなどの特徴は、上述した通りである。
【0286】
前記種結晶接着層100は、上述したVr値、Sg値、そして、Vg値の特徴を有することができ、その具体的な説明は、上述した通りである。
【0287】
前記種結晶接着層100は、3μm以上の厚さを有することができ、種結晶接着層の厚さなどについての説明は、上述した通りである。
【0288】
前記種結晶110の面積、支持体120の面積、種結晶接着層100の面積などについての具体的な説明は、上述した通りである。
【0289】
前記種結晶110の粗さ、前記支持体120の粗さなどについての具体的な説明は、上述した通りである。
【0290】
インゴットの製造方法
他の一実施例に係るインゴットの製造方法は、
内部空間を有する反応容器に、原料物質と積層体を互いに対向するように配置する準備ステップと;
前記内部空間の温度、圧力及び気体雰囲気を調節して前記原料物質を昇華させ、前記積層体から成長したインゴットを設ける成長ステップと;
前記反応容器を冷却して前記インゴット又は前記インゴットが含まれた積層体を回収する冷却ステップと;を含む。
【0291】
前記インゴットが炭化珪素インゴットである場合、前記原料物質は、炭素、珪素、炭化珪素及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つを含むことができる。
【0292】
前記インゴットは、原料物質にドーパントをさらに含むことができる。前記ドーパントは、ドーパントとして適用可能な物質であれば、制限なしに適用可能である。
【0293】
前記積層体の構成及び各構成の特徴についての具体的な説明は、上述した通りである。
【0294】
前記準備ステップにおいて積層体の用意は、上述した積層体の製造方法の積層ステップ、または前記積層ステップ、炭化ステップのような方法によりなされ得る。
【0295】
前記成長ステップにおいて前記内部空間の温度、圧力及び気体雰囲気についての説明は、上述した通りである。
【0296】
前記冷却ステップにおいて前記インゴットがさらに含まれた積層体などについての説明、冷却速度についての説明などは、上述した通りである。
【0297】
前記積層体の炭化前の種結晶接着層の面積を基準として、前記黒鉛化された種結晶接着層の面積は8.5%以上減少したものであってもよい。このように面積が減少する場合、前記種結晶接着層は、インゴットまたはインゴットを含む種結晶と一部分離されることで、熱膨張及び熱収縮の過程で発生し得る応力の影響を最小化することができ、より優れた物性を有するインゴットを製造することができる。
【0298】
前記インゴットについての具体的な説明は、上述した通りである。
【0299】
前記インゴットは炭化珪素インゴットであってもよい。
【0300】
前記インゴットは炭化珪素単結晶インゴットであってもよい。
【0301】
前記種結晶接着層、前記積層体などを適用することによって、より高品質の炭化珪素インゴットを提供することができる。
【0302】
ウエハ及びウエハの製造方法
他の一実施例に係るウエハの製造方法は、
前記インゴットの製造方法により製造されたインゴット130の縁部を研削する研削ステップと;
前記研削されたインゴットを切断してウエハを設ける切断ステップと;を含む。
【0303】
前記研削ステップは、前記インゴット130の縁部から内部方向に、その断面の面積の5%以上が研削されてもよい。
【0304】
前記研削ステップは、前記種結晶と前記インゴット130とが接する前記炭化珪素インゴットの底面から、成長終結部分の表面である他面の方向、中心軸の方向に均一な断面を有するように研削することができる。
【0305】
前記切断ステップは、前記インゴットの底面又は(0001)面と所定のオフ角を有するように切断することができる。
【0306】
前記切断ステップのオフ角は、0°~10°であってもよい。
【0307】
前記切断ステップは、前記ウエハの厚さが300μm~600μmになるように行われてもよい。
【0308】
前記ウエハの製造方法は、前記切断ステップの後に設けられたウエハの厚さを平坦化する平坦化ステップ;をさらに含むことができる。
【0309】
前記ウエハの製造方法は、前記切断ステップの後に設けられたウエハの縁部を研削する研削ステップ;をさらに含むことができる。
【0310】
前記ウエハの製造方法は、前記切断ステップの後に設けられたウエハの表面をエッチングし、研磨する表面処理ステップ;をさらに含むことができる。
【0311】
前記平坦化ステップ、研削ステップ及び表面処理ステップは、通常の方法によって適切な順序で行われてもよく、平坦化ステップ-研削ステップ-表面処理ステップの順に行われてもよい。
【0312】
前記ウエハの製造方法は、炭化珪素ウエハの製造方法であってもよい。
【0313】
前記インゴットは炭化珪素インゴットであってもよく、実質的に単結晶である炭化珪素インゴットであってもよい。
【0314】
前記ウエハは炭化珪素ウエハであってもよい。
【0315】
前記炭化珪素ウエハは、後述する特徴を有する。
【0316】
前記炭化珪素ウエハは、(0001)面に対して0~10°から選択されたいずれか一つの角度をオフ角として適用したウエハを基準として、そのロッキング角度が、基準角度に対し-1.5°~+1.5°であるものであってもよく、基準角度に対し-1.0°~+1.0°であるものであってもよく、基準角度に対し-0.1°~+0.1°であるものであってもよく、または基準角度に対し-0.05°~+0.05°であるものであってもよい。
【0317】
(0001)面に対してオフ角が0°である炭化珪素ウエハは、そのロッキング角度が、基準角度に対し-1.0°~+1.0°であってもよく、基準角度に対し-0.5°~+0.5°であってもよく、基準角度に対し-0.1°~+0.1°であってもよく、または基準角度に対し-0.05°~+0.05°であってもよい。このような特徴を有するインゴットは、優れた結晶質特性を有する。
【0318】
(0001)面に対してオフ角が4°である炭化珪素ウエハは、そのロッキング角度が、基準角度に対し-1.0°~+1.0°であってもよく、基準角度に対し-0.5°~+0.5°であってもよく、基準角度に対し-0.1°~+0.1°であってもよく、または基準角度に対し-0.05°~+0.05°であってもよい。このような特徴を有するインゴットは、優れた結晶質特性を有する。
【0319】
(0001)面に対してオフ角が8°である炭化珪素ウエハは、そのロッキング角度が、基準角度に対し-1.0°~+1.0°であってもよく、基準角度に対し-0.5°~+0.5°であってもよく、基準角度に対し-0.1°~+0.1°であってもよく、または基準角度に対し-0.05°~+0.05°であってもよい。このような特徴を有するインゴットは、優れた結晶質特性を有する。
【0320】
前記ロッキング角度、オフ角がX°である意味、ロッキング角度が「基準角度に対し-1~+1°」である意味、オメガ角度及びその取り扱いは、上述したものと同じであり得る。
【0321】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0322】
種結晶接着層及び黒鉛化された種結晶接着層の製造
接着性樹脂:ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、フェノール樹脂、下記化学式1のようなトリメチルシリルエーテル基含有クレゾールノボラック樹脂を備えた。
【0323】
【0324】
(前記化学式1において、nは、1~1000の整数である。)
【0325】
フィラー:平均粒度(D50)が400nmである鱗状黒鉛粉末を備えた。
【0326】
溶媒:ジメチルホルムアミド及びエタノールを備えた。
【0327】
液状接着性組成物の製造:それぞれの接着性樹脂を表1の比率、固形分含量を有するように混合して接着性樹脂組成物を製造した。フェノール樹脂の場合、液状フェノール樹脂が適用された。
【0328】
種結晶接着層の製造:
図3に示したように、前記液状組成物を支持体120上又は種結晶110上に表1の厚さ及び面積でスピンコーティングして塗布し、マッフル炉にて表1の温度で熱処理した。支持体120は、表面粗さ(Ra)が0.1~5μmであるものを適用し、種結晶110は、表面粗さ(Ra)が0.01~5nmであるものを適用した。
【0329】
黒鉛化された種結晶接着層の製造:前記製造された種結晶接着層を、表1の条件に該当する温度で誘導加熱炉にて黒鉛化処理した。
【0330】
炭化珪素インゴットの成長
図4に炭化珪素インゴットの製造装置の一例を示したように、反応容器の内部空間の下部に炭化珪素原料300を装入した。前記種結晶接着層100の製造に適用された液状組成物を、支持体120と6インチの4Hの炭化珪素種結晶110との間に10μmの厚さで介在されるようにし、前記液状組成物をマッフル炉にて250℃の温度でフィルム化させた積層体を備えた。これを600℃の温度で熱処理して、前記種結晶接着層が炭化した積層体を設けた。
【0331】
前記設けられた積層体を反応容器の内部空間の上部に配置した。このとき、積層体の炭化珪素種結晶は、C面((000-1)面)が内部空間の下部の炭化珪素原料に向かうようにした。
【0332】
反応容器を密閉し、その外部を断熱材400で取り囲んだ後、加熱手段500である加熱コイルが備えられた反応チャンバ420内に反応容器を配置した。
【0333】
前記反応容器の内部空間を減圧して真空雰囲気に調節し、アルゴンガスを注入して前記内部空間が大気圧に到達するようにした後、再び内部空間を減圧させた。同時に、内部空間の温度を5~10℃/minの昇温速度で2200~2600℃の温度まで昇温させた。
【0334】
5torrの圧力条件下で100時間、炭化珪素原料と対向する炭化珪素種結晶面に炭化珪素インゴットを成長させた。その後、5~760torrのアルゴン気体雰囲気、25℃の温度になるように、10℃/minの冷却速度で冷却処理した。
【0335】
種結晶接着層及び積層体の測定、評価方法
1)Sg:表1の条件で種結晶接着層の元の面積A1を測定し、前記炭化珪素インゴットの製造条件が適用されて黒鉛化熱処理後、常温冷却された面積A2を測定し、これを前記式2に適用して計算した。
【0336】
2)厚さの変化:表1の条件で種結晶接着層の厚さを測定し、前記炭化珪素インゴットの製造条件が適用されて黒鉛化熱処理後、常温冷却された厚さを測定して、厚さの変化を計算した。前記厚さ測定は、ダイヤルゲージを通じて測定した。
【0337】
3)Vr:前記1)の面積値と2)の厚さを通じて、種結晶接着層の元の体積V1、及び前記炭化珪素インゴットの製造条件が適用されて黒鉛化熱処理後、常温冷却された体積V2を計算し、前記式1に適用して計算した。
【0338】
4)Vg:前記3)のV1及びV2値を前記式3に適用して計算した。
【0339】
5)黒鉛化後の接合面積:前記炭化珪素インゴットの製造条件が適用されて黒鉛化熱処理後に冷却された種結晶接着層と、被接着物(支持体、種結晶)との間の離れたギャップの程度を0.02mmのギャップゲージを通じて測定した。
【0340】
炭化珪素インゴットから製造されたウエハの物性評価
1)反り値(warp)の評価:MTI Instruments,IncのAutoScan 200で、インゴットの部位(種結晶面をNo.0と見たときの距離)別に切削して、4°のオフ角が適用されたウエハの反り値を測定した。
【0341】
2)ウエハ表面の評価:高分解能X線回折分析システム(HR-XRD system、Rigaku社のSmartLab High Resolution X-ray Diffraction System)を適用して、前記インゴットの(0001)面を基準として、4°のオフ角が適用されたウエハを準備し、ウエハの[11-20]方向をX線経路に合わせ、X-ray source opticとX-ray detector optic角度を2θ(35~36°)に設定した後、ウエハのオフ角に合わせてオメガ(ω、又はシータθ、X-ray detector optic)角度を調節して測定した。具体的には、0°オフを基準として、オメガ角度は17.8111°であり、4°オフを基準として、オメガ角度は13.811°、そして、8°オフを基準として、オメガ角度は9.8111°を適用した。X-ray powerは9kW、そして、X-ray targetはCuを適用し、Goniometer resolutionは0.0001°であるものが適用された。Max Intensityでの角度を基準としてロッキングカーブ(rocking curve)の半値全幅(FWHM)を測定して、それぞれarcsecで評価し、ウエハの表面において10mmの間隔で167pointを測定し、その結果を
図7に示した。
【0342】
【表1】
(PAA:ポリアクリル酸、PAN:ポリアクリロニトリル、TMSCN:トリメチルシリルエーテル基を含むクレゾールノボラック、フィラーの添加量は、接着性樹脂を含む液状組成物全体を100重量%と見た値である)
【0343】
【表2】
(一部分離:熱処理(成長ステップ)の後、黒鉛化された種結晶接着層と被接着物との間の接合面が、黒鉛化された種結晶接着層の断面積に対し95%以下、ウエハの平均反り値(μm):30以下は良い、31~59は普通、60以上は悪い、"-"表示は、測定していないことを意味する。)
【0344】
表1及び表2を参照すると、アクリル系樹脂、フィラーが添加されたアクリル系樹脂、フィラーが添加されていないフェノール樹脂、及びクレゾールノボラック樹脂を適用したサンプルは、Sg値が9.12%~27.2%、Vr値が28.1%/mm
3
~152.7%/mm
3
を示した。フィラーが、液状組成物全体を100重量%と見たときに2重量%添加されたフェノール樹脂及びクレゾールノボラック樹脂を適用したサンプルは、Sg値が8.42%以下、Vr値が27.8%/mm
3
以下を示した。
【0345】
フィラーが添加された18~22重量%の固形分を有するアクリル系樹脂を用いたサンプルの場合、Sg値が16.42%~21.08%、Vr値が53.7%/mm
3
~64.1%/mm
3
を示し、当該条件を通じて設けられたインゴットから製造されたウエハの平均反り値が良好であった。
【0346】
また、Sg値が8.42%以下であり、Vr値が27.8%/mm
3
以下である種結晶接着層を適用した場合、インゴット(種結晶)が被接着物(種結晶、支持体)から一部分離されなかったが、実施例は、黒鉛化された種結晶接着層と被接着物との間の接合面積が、黒鉛化熱処理前の接合面積に対し95%以下を示すことから、一部分離されることが確認できた。
【0347】
図6は、製造されたインゴットからウエハの切断時、種結晶から相対距離(Wafer No.)によるウエハの反り値を示したグラフである。
図6を参照すると、比較例3(a)の条件を通じて成長したインゴットから製造されたウエハは、平均反り値(warp)が98μm以上であり、種結晶付近のインゴット部位(Wafer No.2)から製造されたウエハの反り値は140μm以上であった。実施例10(b)の条件を通じて成長したインゴットから製造されたウエハは、種結晶付近のインゴット部位(Wafer No.2)から製造されたウエハの反り値が45μm以下、平均反り値が30μm以下を示した。
【0348】
図7は、比較例3(a)及び実施例10(b)において、ウエハのXRDマッピングの結果を示した写真である。
図7のx軸及びy軸の四角形の間隔は、それぞれ10mmである。
図7を参照すると、比較例3(a)の条件で製造されたインゴットから、種結晶面から5mmの距離の部分が切削されたウエハ(Wafer No.8)は、最大153.7arcsec、最小42.9arcsec、平均63.5arcsecの値を示し、curvatureが14.3mであった。実施例10(b)の条件で製造されたインゴットから、種結晶面から5mmの距離の部分が切削されたウエハ(Wafer No.8)は、最大106.9arcsec、最小19.7arcsec、平均27.1arcsecの値を示し、curvatureが-19.1mで、実施例10から製造されたウエハは品質が良好であることがわかる。
【0349】
すなわち、特定のVr値を満たす種結晶接着層が適用されて製造されたインゴット及びウエハは、品質に優れることを確認した。
【0350】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0351】
10 従来の種結晶接着層
100 種結晶接着層
110 種結晶
120 支持体
130 インゴット、炭化珪素インゴット
131 多結晶、炭化珪素多結晶
140 蓋
300 原料、炭化珪素原料
400 断熱材
420 反応チャンバ
500 加熱手段