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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】輸液バッグ口部カバー
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61J1/10 335B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021180861
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2021098822の分割
【原出願日】2021-06-14
(65)【公開番号】P2022190650
(43)【公開日】2022-12-26
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591037476
【氏名又は名称】株式会社ILファーマパッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】三輪田 徹
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111938(WO,A1)
【文献】特開2018-047940(JP,A)
【文献】米国特許第04005739(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0084804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液バッグの口部に設けられたゴム栓を覆うように前記口部に装着するためのカバーであって、
前記口部に装着された場合に前記口部からの抜けを阻止する抜け阻止部を含んだ第1部分と、
前記第1部分に対して開閉可能に設けられる第2部分とを備え、
前記第2部分が閉じた状態は、前記カバーが前記口部に装着されたときの前記ゴム栓を外部に露出させない状態であり、
前記第2部分が開いた状態は、前記カバーが前記口部に装着されたときの前記ゴム栓を外部に露出させる状態であり、
前記第1部分は、筒状に形成されて、一方の開口である第1開口から前記口部を挿入するための筒部であり、
前記第2部分は、前記筒部の他方の開口である第2開口を閉塞する蓋部であり、
前記蓋部は、前記第2開口を閉塞する閉状態から前記第2開口を露出させる開状態へと変化が可能に設けられ、
前記抜け阻止部は、前記筒部の内側の空間において、前記第1開口から前記第2開口に向かう方向に延びて、前記方向に進むにしたがって次第に径方向内側に変位し、前記方向に前記口部を挿入したときに径方向外側に弾性変形する、前記筒部の周方向に沿って設けられる複数の弾性変形部であり、
前記弾性変形部の、前記筒部の軸線回りの周方向の両端に位置する端部間の幅は、前記方向に進むにしたがって次第に小さくなる、
輸液バッグ口部カバー。
【請求項2】
前記弾性変形部の先端部は、前記筒部の径方向内側を向いた内側面を有し、
前記内側面は前記軸線に平行な面に形成される請求項1に記載の輸液バッグ口部カバー。
【請求項3】
前記筒部の、前記軸線の方向における、前記蓋部が設けられる反対側の端部には、前記筒部の周方向の全周に亘って径方向内側にはみ出た出っ張り部が形成されており、
前記出っ張り部の内周線が前記第1開口を形成しており、
前記弾性変形部は、前記出っ張り部の内周縁に接続される請求項1又は2に記載の輸液バッグ口部カバー。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記口部に装着された前記輸液バッグ口部カバーを前記口部から取り外すと破損するように構成される請求項1~3のいずれか1項に記載の輸液バッグ口部カバー。
【請求項5】
前記蓋部が閉じた状態で前記筒部の外周面と前記蓋部の外周面とは連続した円筒側面を形成する請求項1~4のいずれか1項に記載の輸液バッグ口部カバー。
【請求項6】
前記筒部と前記蓋部とを連結する連結部を備え、
前記筒部及び前記蓋部の周方向における一部に前記連結部が接続されており、
前記蓋部は、前記連結部に設定された、前記筒部及び前記蓋部の外周面に対する接線方向を向いた仮想回転軸線を中心にして回動可能に設けられる請求項1~5のいずれか1項に記載の輸液バッグ口部カバー。
【請求項7】
前記第1部分と前記第2部分とをまたぐように貼付されたラベルを備える請求項1~6のいずれか1項に記載の輸液バッグ口部カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輸液バッグの口部に装着するためのカバー、輸液を管理するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液(医薬品溶液)を入れる輸液バッグには、輸液を排出するための口部(ポート)が設けられる。その口部にはゴム栓が設けられ、ゴム栓に注射針を貫通させることで、内部の輸液を注射針を通して外部に排出できる。また、ゴム栓に注射針を貫通させて、その注射針を通して薬剤を注入することで、患者(換言すれば処方箋)に応じた輸液が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-146739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
言うまでもなく、輸液が入った輸液バッグ内に意図的に異物が混入されることはあってはならない。また、仮に異物が混入された場合に、その異物が混入された輸液が患者に投与されることはあってはならない。また、別の患者の輸液又は別の処方箋に基づく輸液が誤って投与されることもあってはならない。
【0005】
そこで、本開示は、上記事情に鑑み、輸液バッグ内に異物が混入され難くでき、又は輸液が入った輸液バッグが未だ開けられていないことを容易に判断でき、又は投与されるべきではない輸液が患者に誤って投与されてしまうのを抑制できる発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、
輸液バッグの口部に設けられたゴム栓を覆うように前記口部に装着するためのカバーであって、
前記口部に装着された場合に前記口部からの抜けを阻止する抜け阻止部を含んだ第1部分と、
前記第1部分に対して開閉可能に設けられる第2部分とを備え、
前記第2部分が閉じた状態は、前記カバーが前記口部に装着されたときの前記ゴム栓を外部に露出させない状態であり、
前記第2部分が開いた状態は、前記カバーが前記口部に装着されたときの前記ゴム栓を外部に露出させる状態であり、
前記第1部分は、筒状に形成されて、一方の開口である第1開口から前記口部を挿入するための筒部であり、
前記第2部分は、前記筒部の他方の開口である第2開口を閉塞する蓋部であり、
前記蓋部は、前記第2開口を閉塞する閉状態から前記第2開口を露出させる開状態へと変化が可能に設けられ、
前記抜け阻止部は、前記筒部の内側の空間において、前記第1開口から前記第2開口に向かう方向に延びて、前記方向に進むにしたがって次第に径方向内側に変位し、前記方向に前記口部を挿入したときに径方向外側に弾性変形する、前記筒部の周方向に沿って設けられる複数の弾性変形部であり、
前記弾性変形部の、前記筒部の軸線回りの周方向の両端に位置する端部間の幅は、前記方向に進むにしたがって次第に小さくなる、
輸液バッグ口部カバーを提供する。
【0007】
これによれば、輸液バッグに輸液用薬剤を注入して輸液を生成した後に、輸液バッグの口部に本開示のカバーを装着させることで、輸液バッグのゴム栓を露出させないようにできる。これにより、輸液バッグ内の輸液に異物が混入され難くできる。
【0008】
本開示の輸液バッグ口部カバーにおいて、
前記第1部分は、筒状に形成されて、一方の開口である第1開口から前記口部を挿入するための筒部であり、
前記第2部分は、前記筒部の他方の開口である第2開口を閉塞する蓋部であり、
前記蓋部は、前記第2開口を閉塞する閉状態から前記第2開口を露出させる開状態へと変化が可能に設けられ、
前記抜け阻止部は、前記筒部の内側の空間において、前記第1開口から前記第2開口に向かう方向に延びて、前記方向に進むにしたがって次第に径方向内側に変位し、前記方向に前記口部を挿入したときに径方向外側に弾性変形する、前記筒部の周方向に沿って設けられる複数の弾性変形部である。
【0009】
これによれば、輸液バッグの口部にカバーを容易に装着できるとともに、装着したカバーが口部から外れてしまうのを抑制できる。
【0010】
また、輸液バッグ口部カバーは前記第1部分と前記第2部分とをまたぐように貼付されたラベルを備えてもよい。これによれば、カバー(第2部分)が開くとラベルが切断され、又は剥がされることになるので、ラベルの状態を確認することで輸液バッグが未だ開けられていないことを容易に判断できる。
【0011】
前記ラベルには、前記輸液バッグ口部カバーを識別するための識別情報が書き込まれていてもよい。これによれば、カバーの識別情報が、輸液バッグ(輸液)を特定する情報として用いられることで、投与されるべきではない輸液が患者に誤って投与されてしまうのを抑制できる。例えば、輸液バッグ中の輸液を患者に投与する際にラベルの識別情報が読み取り可能であれば、その投与のタイミングまで輸液バッグ口部カバー(輸液バッグ)が開けられていなかったことを証明でき、記録することができる。
【0012】
前記ラベルの、前記識別情報が書き込まれた領域は、前記第2部分が閉状態から開状態に変化したときに切断される前記ラベルの切断予定部をまたぐように配置されてよい。これによれば、第2部分が開けられると、識別情報が書き込まれた領域が切断されるので、識別情報が確認され難くできる。例えば識別情報に基づいて輸液を患者に投与するか否かを判断する場合には、識別情報が確認できないときには投与しないと判断することで、既に開けられた輸液バッグの輸液が患者に誤って投与されてしまうのを抑制できる。
【0013】
本開示は、
輸液が入った輸液バッグであって、前記輸液に関する輸液情報が書き込まれた輸液ラベルが貼付された輸液バッグと、
前記輸液バッグの口部に装着されるカバーであり、前記カバーの識別情報が書き込まれたカバーラベルが貼付された輸液バッグ口部カバーと、
前記輸液バッグ口部カバーの前記識別情報と、前記輸液バッグの前記輸液情報とが関連付けて記憶された記憶装置と、
を備える輸液管理システムを提供する。
【0014】
また、本開示は、
輸液が入った輸液バッグに貼付された輸液ラベルから、前記輸液に関する輸液情報を取得する輸液情報取得部と、
前記輸液バッグの口部に装着されたカバーに貼付されたカバーラベルから、前記カバーの識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記識別情報取得部が取得した前記識別情報が、前記輸液情報取得部が取得した前記輸液情報に関連付けて記憶装置に記憶された情報であるかを照合する照合部と、
を備える照合装置を提供する。
【0015】
また、本開示は、
輸液が入った輸液バッグの口部に装着させるカバーに貼付されたカバーラベルから、前記カバーの識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記輸液バッグに貼付される輸液ラベルに書き込まれる前記輸液に関する輸液情報を取得する輸液情報取得部と、
前記識別情報取得部が取得した前記識別情報と、前記輸液情報取得部が取得した前記輸液情報とを関連付けて記憶装置に記憶させる記憶制御部と、
を備える情報関連付装置を提供する。
【0016】
また、本開示は、
輸液が入った輸液バッグに貼付された輸液ラベルから、前記輸液に関する輸液情報を取得する輸液情報取得部と、
前記輸液バッグの口部に装着されたカバーに貼付されたカバーラベルから、前記カバーの識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記識別情報取得部が取得した前記識別情報が、前記輸液情報取得部が取得した前記輸液情報に関連付けて記憶装置に記憶された情報であるかを照合する照合部と、
してコンピュータを機能させるプログラムを提供する。
【0017】
また、本開示は、
輸液が入った輸液バッグの口部に装着させるカバーに貼付されたカバーラベルから、前記カバーの識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記輸液バッグに貼付される輸液ラベルに書き込まれる前記輸液に関する輸液情報を取得する輸液情報取得部と、
前記識別情報取得部が取得した前記識別情報と、前記輸液情報取得部が取得した前記輸液情報とを関連付けて記憶装置に記憶させる記憶制御部と、
してコンピュータを機能させるプログラムを提供する。
【0018】
また、本開示は、
輸液バッグの口部に設けられたゴム栓を覆うように前記口部に装着させるカバーに貼付されたカバーラベルから、前記カバーの識別情報を読み取る関連付前読み取りステップと、
前記関連付前読み取りステップで読み取った前記識別情報を、前記輸液バッグに貼付される輸液ラベルに書き込まれる輸液に関する輸液情報に関連付けて記憶装置に記憶させる記憶ステップと、
前記記憶ステップ後に、前記カバーラベルから前記識別情報を読み取り、前記輸液ラベルから前記輸液情報を読み取る関連付後読み取りステップと、
前記関連付後読み取りステップで読み取った前記識別情報と前記輸液情報とが、前記記憶装置に関連付けて記憶されているかを照合する照合ステッと、
を備える輸液管理方法を提供する。
【0019】
本開示によれば、例えば患者に投与する際に、カバーラベルの識別情報と、輸液ラベルの輸液情報とを読み取って、それらが記憶装置に関連付けられて記憶されているかを確認することで、投与されるべきではない輸液が患者に誤って投与されてしまうのを抑制できる。また、輸液バッグにカバーが装着されることで、輸液バッグ内に異物が混入され難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】輸液バッグ口部カバーの側面図である。
図2】輸液バッグ口部カバーの上面図である。
図3】輸液バッグ口部カバーの、図2のIII-III線での断面図である。
図4図3のA部の拡大図である。
図5】開いた状態の輸液バッグ口部カバーの側面図である。
図6】カバーラベルの平面図において接着領域及び切断予定部を示す図である。
図7】輸液バッグ口部カバーのラベルが無い又は切断された場合に、カバーの蓋部が自重で開いた状態を示す側面図である。
図8】輸液バッグの正面図である。
図9】輸液バッグの口部の断面図である。
図10】輸液バッグの口部にカバーが装着された状態の、口部及びカバーの断面図である。
図11】輸液管理システムの構成図である。
図12】輸液管理システムの、輸液生成を依頼し、かつ輸液を使用する側の施設に構築されたシステムの構成図である。
図13】輸液管理システムの、輸液生成の依頼を受けて輸液を生成する側の施設に構築されたシステムの構成図である。
図14図13のシステムが実行する処理のフローチャートである。
図15図12のシステムが実行する照合処理のフローチャートである。
図16】変形例に係る輸液バッグ口部カバーが輸液バッグの口部に装着された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1図3に、輸液バッグの口部に装着するためのカバー1(輸液バッグ口部カバー)を示している。カバー1は、輸液バッグ内に薬剤が注入(混注)された後の輸液バッグの口部に装着するためのカバーであって、一旦装着された以降は口部から取り外しが不能なカバーである。
【0022】
先ず、カバー1の構成を説明する。カバー1は、円筒状に形成された筒部2と、筒部2の一方の開口25を閉塞する蓋部3と、筒部2と蓋部3とを連結する連結部4と、筒部2の側面と蓋部3の側面とをまたぐように両側面に貼付されたラベル5とを備えている。筒部2、蓋部3及び連結部4は例えば互いに同一の樹脂材料にて一体的に形成されているが、異なる材料で形成されてもよい。なお、筒部2が本開示の第1部分に相当する。蓋部3が第2部分に相当する。
【0023】
筒部2は、円筒状の本体21と、本体21の内側に設けられる抜け阻止部22とを備える。本体21は円筒状に形成されるが、円筒以外の筒状(断面形状が四角形、楕円などの筒状)に形成されてもよい。本体21の内径は、図8に示す装着対象の輸液バッグ100の口部102の外径Dよりも大きい。本体21の軸線L1の方向における幅は、蓋部3の軸線L2の方向における幅よりも大きい。
【0024】
本体21の、軸線L1の方向における、蓋部3が設けられる反対側の端部には、径方向内側にはみ出た出っ張り部23が形成されている。出っ張り部23は、筒部2の周方向(軸線L1回りの方向)の全周に亘って形成されており(図2参照)、図2の方向から見て環状に形成されている。出っ張り部23の内周線24が、筒部2の一方の開口を形成している。開口24は、図2の方向(軸線L1が直交する平面視で見た方向)から見て円形に形成されている。開口24は、輸液バッグの口部を筒部2に挿入する際の入口となる部分である。
【0025】
筒部2の他方の開口25は、蓋部3が閉じているときには蓋部3に覆われて外部に露出していない。開口25は、蓋部3が開いたときには外部に露出する。また、開口25は、図4に示すように、本体21の外周面に繋がる外側端部25aから本体21の内周面に繋がる内側端部25bに近づくにしたがって次第に反対の開口24側に変位する傾斜形状(テーパ形状)に形成されている。以下、開口24を第1開口という場合があり、開口25を第2開口という場合がある。また、軸線L1の方向のうち第1開口24から第2開口25に向かう方向を挿入方向という場合がある。
【0026】
抜け阻止部22は、カバー1が輸液バッグの口部に装着された場合に、その装着状態を保持して、口部からカバー1が抜けて(外れて)しまうのを阻止する部分であり、言い換えれば、装着保持部として機能する。具体的には、抜け阻止部22は、カバー1を口部に装着させる操作は許容する一方で、口部に装着されたカバー1を口部から取り外す操作は阻止する形状に形成されている。つまり、カバー1は、一旦口部に装着された場合には、取り外しが不可能に構成されている。また、抜け阻止部22(後述の弾性変形部26)は、口部に装着されたカバー1を無理に取り外そうとした場合には破損するように構成されてもよい。
【0027】
抜け阻止部22は、本体21の内側の空間において、本体21の周方向に沿って等間隔に設けられる複数の弾性変形部26から構成されている。複数の弾性変形部26は、周方向における配置位置が互いに異なっている点を除いて、互いに同一の形状に形成されている。各弾性変形部26は、一端27が出っ張り部23の内周縁に接続されており、その一端27(出っ張り部23)から上記挿入方向に延びるとともに、該挿入方向に進むにしたがって次第に径方向内側に変位する形状に形成されている。言い換えれば、弾性変形部26は、出っ張り部23から径方向内側に延びるとともに、径方向内側に進むにしたがって次第に挿入方向に変位する形状に形成されている。また、弾性変形部26は、一端27が本体21に支持され、他端262(先端部)が自由端とされた片持ち梁の形態に設けられている。
【0028】
図3に示すように、弾性変形部26の、軸線L1の方向(具体的には挿入方向)における先端部262は、軸線L1に平行な内側面262a及び外側面262bと、軸線L1に直角な先端面262cとを有した形状に形成されている。内側面262aは軸線L1の側(径方向内側)を向いている。換言すれば、内側面262aの法線は、径方向内側の方向、かつ、軸線L1に直角な方向を向いている。外側面262bは、軸線L1側の反対側(径方向外側)を向いている。換言すれば、外側面262bの法線は、径方向外側の方向、かつ、軸線L1に直角な方向を向いている。内側面262a及び外側面262bはそれぞれ平面として形成されているが、軸線L1回りの円周に沿った円弧面として形成されてもよい。先端面262cの法線は挿入方向を向いている。
【0029】
複数の弾性変形部26の先端内側面262aは、軸線L1から等距離の位置に形成されている。複数の弾性変形部26の先端外側面262bは、軸線L1から等距離の位置に形成されている。また、複数の弾性変形部26の先端面262cは、軸線L1の方向における同じ位置(換言すれば、第1開口24から軸線L1の方向に等距離となる位置)に形成されている。
【0030】
先端部262は、自由端に設定されており、本体21の内側(第1開口24と第2開口25の間の位置)に設けられる。
【0031】
弾性変形部26の、先端部262以外の部分261は、出っ張り部23から挿入方向に延びるとともに、該挿入方向に進むにしたがって次第に径方向内側に変位する形状に形成されている。換言すれば、上記部分261は、軸線L1に対して傾斜した方向(つまり軸線L1に平行な方向以外の方向かつ軸線L1に直角な方向以外の方向)に延びている。以下、部分261を傾斜部という。傾斜部261は、軸線L1の側を向いた内側面261aと、その反対側(軸線L1側と反対側を向いた)外側面261bとを有する。これら内側面261a及び外側面261bは平面に形成されているが、軸線L1回りの円周に沿った円弧面に形成されてもよい。また、内側面261a及び外側面261bは互いに平行な面に形成されている。内側面261a及び外側面261bの各法線は、軸線L1に対して傾斜した方向(軸線L1に平行な方向以外の方向かつ軸線L1に直角な方向以外の方向)を向いている。
【0032】
また、内側面261a及び外側面261bの、軸線L1回りの周方向の両端に位置する端部261c、261d(図2図3参照)は、上記傾斜した方向に直線状に延びるとともに、挿入方向に進むにしたがって又は径方向内側に進むにしたがって次第に端部261cと端部261dとの間の幅d(図2図3参照)が小さくなるように設けられる。
【0033】
また、弾性変形部26は、傾斜部261の内側面261aと外側面261bとの間の厚みが、上記端部261cと端部261dとの間の幅dよりも小さい板状に形成されている。
【0034】
さらに、弾性変形部26は、出っ張り部23との接続部27(図3参照)を支点として径方向外側routに弾性変形(言い換えればたわみ変形)が可能に形成されている。つまり、弾性変形部26は、弾性変形が可能な材料により形成され、かつ、弾性変形が可能な形状に形成されている。
【0035】
弾性変形部26は、径方向外側routにたわみ変形(弾性変形)した後、弾性変形部26に作用する径方向外側routへの力が弱められたときには、弾性復元力により、径方向内側に変位する。弾性変形部26は、径方向への力が作用していないときには図2図3に示す無負荷状態に戻る。
【0036】
複数の弾性変形部26の先端部262で囲まれた空間11(図2参照)は図2の方向から見て円形である。無負荷状態における空間11の径E(図2参照)は、図8に示す装着対象の輸液バッグ100の口部102の外径Dよりも小さい。
【0037】
蓋部3は、筒部2の第2開口25を閉塞する閉状態(図1図2の状態)から第2開口25を露出させる開状態(図5の状態)へと変化が可能に設けられる。具体的には、筒部2(本体部21)及び蓋部3(後述の側面部31)の周方向における一部には連結部4が接続されている。蓋部3は、その連結部4に設定された、筒部2及び蓋部3の外周面に対する接線方向を向いた仮想回転軸線を中心にして、閉状態から開状態へと回動可能に設けられる。上記仮想回転軸線は図1図5の紙面に直交する軸線である。
【0038】
図3に示すように、蓋部3は、円筒状の側面部31と、その側面部31の軸線方向の一端を閉塞する閉塞部32とを有した有底筒状に形成されている。側面部31は、蓋部3が閉じている状態(図3の状態)で、筒部2の軸線L1と一致した軸線L2を有する。側面部31の外径は筒部2(本体21)の外径と同じである。また、側面部31の外周面の、軸線L2に直角な断面形状は、本体21の外周面の、軸線L1に直角な断面形状(円形)と同じである。また、側面部31の内径は、本体21の内径と同等であるが、厳密には本体21の内径より若干小さい。側面部31の内周面の、軸線L2に直角な断面形状は、本体21の内周面の、軸線L1に直角な断面形状と相似する形状(円形)である。
【0039】
側面部31の、軸線L2の方向における閉塞部32が接続される側の反対側の端部33は開口として形成されている。その端部33は、図4に示すように、筒部2の第2開口25の傾斜形状と同様の傾斜形状に形成された傾斜部33aと、傾斜部33aの内側の端部から、軸線L2に平行な方向かつ閉塞部32から離れる方向に突き出た突出部33bとを有する。傾斜部33aは、側面部31の外周面に繋がる外側端部から突出部33bに繋がる内側端部に近づくにしたがって次第に閉塞部32から離れる方向に変位する。傾斜部33aは、蓋部3が閉じた状態(図1図3の状態)で、筒部2の傾斜形状の第2開口25に対向する位置に配置されるとともに、その第2開口25に接触する(図4参照)。
【0040】
突出部33bは、筒部2の本体21の内径と同等の外径を有し、蓋部3が閉じた状態で本体21の内側に嵌る(図4参照)。
【0041】
また、側面部31の外周面の周方向に沿った一部には径方向外側に突き出た径方向突出部34が形成されている(図1参照)。なお、図2図3では、径方向突出部34の図示を省略している。径方向突出部34は、蓋部3を開くための取っ手として機能する部分であり、換言すれば、蓋部3を開く際にユーザによって操作が行われる操作部として機能する部分である。径方向突出部34は、側面部31の外周面の、連結部4が接続された側の反対側(軸線L2回りの円周における180°反対側)に形成されている。また、径方向突出部34は、側面部31の外周面の、軸線L2に平行な方向における、閉塞部32が接続される側の反対側の端部35(図1参照)に隣接した位置に形成されている。
【0042】
蓋部3が閉じた状態では、筒部2の外周面と蓋部3の外周面との間には軸線L1、L2の方向に隙間が形成されず、かつ、径方向への段差も形成されない。つまり、蓋部3が閉じた状態では、筒部2の外周面と蓋部3の外周面とは連続した円筒側面を形成する。
【0043】
図3に示すように、蓋部3が閉じた状態では、カバー1内における、蓋部3の閉塞部32と、弾性変形部26の先端部262との間には空間12が形成される。この空間12は、輸液バッグの口部を装着したときにその口部を配置するための空間である。
【0044】
さらに、蓋部3は、仮にラベル5が無い場合又はラベル5が切断された場合において、蓋部3が筒部2よりも鉛直方向の下側に配置されたときには、図7に示すように、ユーザによって蓋部3に対する開操作が行われなくても、蓋部3の自重によって蓋部3と筒部2の間に隙間13が形成されるように設けられてよい。つまり、蓋部3は、ラベル5が無い又は切断された状態では、蓋部3が完全に閉じていないこと(蓋部3が開けられていること)を目視で確認できるように構成されてよい。この場合、ラベル5が無い又は切断された状態での蓋部3の自重によって形成される隙間13の大きさはどのような大きさでもよく、自重によって蓋部3が完全に開いた状態(筒部2の第2開口25の全部が露出した状態、図5の状態)となるように蓋部3が構成されてもよい。また、ラベル5が無い又は切断された状態において、蓋部3の自重によらなくても隙間13が形成されるように、連結部4が蓋部3を開く方向に弾性復元力を持った状態に設けられてもよい。また、ラベル5が無い又は切断された状態において、蓋部3の自重だけでは隙間13が形成されないように、つまりユーザによる開操作が行われない限りは蓋部3が閉じた状態に保持されるように構成されてもよい。
【0045】
連結部4は、筒部2と蓋部3とを連結するとともに、蓋部3が開いたときには、ユーザによって蓋部3を閉じる操作が行われない限りは、開いた状態に保持するように構成される。具体的には、連結部4は、例えば弾性変形可能なヒンジ構造に形成される。そして、連結部4は、蓋部3の開き度が一定以上となるまでは、蓋部3を閉じる方向に弾性復元力を生じさせるとともに、開き度が一定以上になったときには連結部4が反り返ってその一定以上の開き度を保持する。また、連結部4は、上述のように、ラベル5が無い又は切断された状態では、蓋部3の自重又は連結部4の弾性復元力によって蓋部3と筒部2との間に隙間13(図7参照)が形成されるように構成されてよい。
【0046】
ラベル5は、プラスティック、紙などでシート状に形成されている。ラベル5は、筒部2の本体21の側面(外周面)と蓋部3の側面部31の側面(外周面)とをまたぐように両側面に貼付されている。
【0047】
また、ラベル5は、2分割可能に構成されている。具体的には、図6に示すように、ラベル5は、2つの部分に分割する際のそれら2つの部分の境界となる位置に切断可能な切断予定部53を有する。切断予定部53は、他の部位に比して低強度の形状に形成されており、具体的には例えばミシン目として構成されている。切断予定部53は、ラベル5の幅方向(図6の左右方向)における一端から他端までを一直線に横断するように設けられる。切断予定部53は、蓋部3が閉じた状態における筒部2と蓋部3との境界線(図1の符号「35」で示される線)付近においてその境界線に平行に延びるように設けられる。
【0048】
ラベル5の裏面には、筒部2及び蓋部3の両側面に接着された接着領域54、55を有する。接着領域54、55は、切断予定部53の周辺領域52を外した領域に設定されている。つまり。周辺領域52の裏面には接着領域は設定されていない。接着領域54、55は、周辺領域52を間に挟んで、切断予定部53が延びた方向に直角な方向(図6の上下方向)の両側に設定されている。一方の接着領域54は筒部2の側面に接着されている。他方の接着領域55は蓋部3の側面に接着されている。
【0049】
さらに、ラベル5の表面にはラベル5(換言すればカバー1)を識別するための識別情報51(識別番号)が書き込まれている。識別情報51は例えば数字、アルファベット等から構成された番号である。識別情報51は、QRコード(登録商標)、バーコード等の暗号化された情報としてよい。また、識別情報51は、ラベル5の表面に目視可能に表示されてもよいし、ラベル5内に埋め込まれたICタグに書き込まれてもよい。識別情報51が書き込まれた領域は、周辺領域52(図6参照)において切断予定部53をまたぐように配置されている。したがって、切断予定部53が切断したときには、識別情報51の読み取りが不能となる。周辺領域52には接着領域が設定されていないので、切断予定部53が切断されたときには、例えば周辺領域52がカールしたり、しわが生じたりすることで、その周辺領域52に書き込まれた識別情報51の読み取りが不能となる。
【0050】
なお、蓋部3が、図7のように、ラベル5が無い又は切断された状態で蓋部2との間で隙間13が生じるように構成される場合には、隙間13が生じないように蓋部3の閉じ状態がラベル5により保持されることとなる。
【0051】
次に、図8図9を参照して、カバー1の装着対象となる輸液バッグの構成を説明する。図8の輸液バッグ100は、バッグ100内に薬剤を注入する作業(混注作業)が行われて、患者に応じた輸液が入った状態の輸液バッグを示している。輸液バッグ100は、輸液を入れる本体101と、本体101の端部に設けられる口部102とを備える。本体101は、プラスティック等の透明かつ柔軟性を有した素材で袋状に形成されている。
【0052】
口部102は、本体101内の輸液を排出させるための流路を形成する部分であり、また混注作業の際には本体101内に薬剤を流入するための流路を形成する部分である。口部102は、図9に示すように、本体101の内側と外側とを導通させる管状に形成された管部103と、管部103の内側に配置されたゴム栓104と、管部103及びゴム栓104の先端面を覆うシート部105とを備える。管部103は、本体101側に設けられる小径部103aと、小径部103aより先端側に設けられ、小径部103aよりも大きい外径を有した大径部103bとを有する。
【0053】
大径部103bの外径Dは、筒部2の抜け阻止部22(弾性変形部26)が変形していない無負荷状態における抜け阻止部22で囲まれた空間11(図2参照)の径Eよりも大きい。小径部103aの外径は、空間11の径Eよりも小さくてもよいし、径Eと同じでもよいし、径Eより大きくてもよい。小径部103aの外径が空間11の径Eより小さい場合には、カバー1が口部102に装着されたときに、小径部103aと弾性変形部26の先端内側面262a(図3参照)との間に隙間が生じる。他方、小径部103aの外径が空間11の径E以上の場合には、カバー1が口部102に装着されたときに、小径部103aと弾性変形部26の先端内側面262a(図3参照)とが接触する。また、小径部103aの外径が空間11の径Eより大きい場合には、カバー1が口部102に装着されたときに、弾性変形部26の径方向内側への弾性復元力が小径部103aに作用した状態で、小径部103aと弾性変形部26の先端内側面262aとが接触する。
【0054】
ゴム栓104は管部103内の空間を封止するように設けられる。ゴム栓104によって、本体101の内側と外側とは遮断されており、本体101内の輸液が排出されないようになっている。輸液を使用するときには、ゴム栓104に注射針を貫通させて、その注射針を通して輸液が外部に排出される。また、混注作業の際には、ゴム栓104に注射針を貫通させて、その注射針を通して薬剤が本体101内に注入される。
【0055】
シート部105は、管部103及びゴム栓104の先端面を露出させるよう剥離可能に設けられる。輸液使用時又は混注作業時にはシート部105は剥離される。
【0056】
さらに、輸液バッグ100は、本体101の外面に貼付されたラベル110を備える。ラベル110は、輸液バッグ100に患者(処方箋)に応じた薬剤が注入される際に貼付される。ラベル110の表面には、輸液バッグ100に入った輸液に関する情報が表示されており、具体的には、輸液に含まれた薬剤の名称又は量が表示されている。また、ラベル110の表面には、輸液に関する情報の一つとして、QRコード(登録商標)、バーコード等の暗号化された情報111(以下、輸液情報という)が書き込まれている。なお、輸液情報111は、ラベル510の表面に目視可能に表示されてもよいし、ラベル510内に埋め込まれたICタグに書き込まれてもよい。輸液情報111は、輸液バッグ100又はそれに入った輸液を識別するための情報であり、例えば医療機関から発行される処方箋ごとに個別に付与された番号(処方箋番号)としてよい。なお、輸液情報111と、カバー1のラベル5に書き込まれた識別情報51とは異なる情報である。
【0057】
輸液バッグ100の口部102にカバー1を装着する場合には、口部102を、筒部2の第1開口24から筒部2内に挿入させる。このとき、口部102の大径部103bがカバー1の各弾性変形部26を径方向外側に押し退けながら(弾性変形させながら)、口部102が筒部2内を挿入方向に進行する。そして、大径部103bの側面と、弾性変形部26の先端部262の内側面262a(図3参照)とが接触した状態で、さらに筒部2を押し込むと、内側面262aが大径部103bの側面上を摺動しながら、口部102はさらに挿入方向に進行する。そして、最終的に、図10に示すように、大径部103bの全部が、複数の弾性変形部26間で囲まれた空間を通過すると、各弾性変形部26は、弾性復元力により、径方向内側に戻される。以上により、口部102へのカバー1の装着が完了する。なお、カバー1を装着する際の口部102に対するカバー1の相対移動方向は、カバー1の第2開口25から第1開口24に向かう方向(図1図3の上方向)である。反対に、カバー1を装着する際のカバー1に対する口部102の相対移動方向は、カバー1の第1開口24から第2開口25に向かう方向(図1図3の下方向)である。
【0058】
図10の装着状態では、口部102はカバー1内の空間12に配置された状態となる。また図10の装着状態では、弾性変形部26の先端内側面262aが、口部102の小径部103aの側面に接触した状態でもよいし、接触していない状態(先端内側面262aと小径部103aの側面との間に隙間がある状態)でもよい。弾性変形部26の先端内側面262aが小径部103aの側面に接触した状態となる場合には、弾性変形部26を弾性変形させた状態で小径部103aと先端内側面262aとが接触してもよい。
【0059】
また、図10の装着状態では、弾性変形部26の先端面262cが大径部103bの上面(小径部103a側の端面)に接触した状態でもよいし、接触していない状態(弾性変形部26の先端面262cと大径部103bの上面との間に隙間がある状態)でもよい。また、図10の装着状態では、大径部103bの先端面106(図9のシート部105の表面)が筒部2内の空間に位置してもよいし、蓋部3内の空間に位置してもよい。
【0060】
図10の状態から、カバー1を装着方向と反対方向(筒部2の第1開口24から第2開口25に向かう方向)に移動させようとしても、弾性変形部26がストッパとなってその移動が阻止される。すなわち、カバー1を取り外そうとしても、弾性変形部26が径方向内側に撓むことで、口部102の大径部103bが弾性変形部26間の空間を通過できない。
【0061】
上述のカバー1は、例えば、図11に示す輸液管理システムに用いられる。以下では、輸液管理システムについて説明する。図11の輸液管理システム200は、輸液の生成を依頼するとともに、生成された輸液を受け取る施設201と、施設201から輸液生成の依頼を受けて、輸液を生成するとともに、生成した輸液を施設201に送る施設202とを含む。なお、輸液管理システム200が扱う輸液は例えば抗がん剤等の高額医薬でもよいし、高カロリー輸液等、低薬価の製剤でもよい。
【0062】
施設201は、具体的には各患者を診察する医療機関(病院)であり、例えば複数の医療機関201A、201B・・・を含む。各施設201には、医師及び看護師等の医療従事者が所属している。各施設201は、輸液生成の発注情報として、医師による処方箋を示す情報(処方箋情報)を施設202に送る。処方箋情報は電子化された情報(つまり電子処方箋)でもよいし、紙媒体の処方箋でもよい。処方箋情報は、無線又は有線の通信手段(インターネット、メール、FAXなど)により施設201から施設202に送られてもよいし、郵便等の配送によって施設201から施設202に送られてもよい。処方箋情報は、処方内容を示す情報(輸液に含ませる薬剤の名称及び量など)と、処方箋を識別するための情報(処方箋識別情報)と、発行元の施設201を特定する情報とを含む。
【0063】
施設202は、施設201とは別の施設であり、複数の施設201からの発注を一括で受けて、各発注情報(処方箋情報)に基づいて輸液バッグへの薬剤の注入作業(混注作業)を専門に行う施設である。施設202には薬剤師が所属している。
【0064】
施設202は、生成した輸液が入った輸液バッグ100(図8参照)の口部102に上述のカバー1を装着したうえで、配送業者に、該輸液バッグ100を施設201に配送させる。また、施設202は、輸液バッグ100に貼付させるラベル110に書き込まれる輸液情報111と、装着したカバー1のラベル5の識別情報51との関連付けを行い、それにより得られた関連付情報(輸液情報111と識別情報51とが関連付けられた情報)も発注元の施設201に送る。関連付情報は、電子情報として送られてもよいし、紙媒体として送られてもよいし、電子情報を記憶した可搬型記憶媒体(USBメモリ等)として送られてもよい。また、関連付情報は、無線又は有線の通信手段(インターネット、メール、FAXなど)により、輸液の配送とは別に送られてもよいし、関連付情報が書き込まれた媒体(紙媒体、記憶媒体など)を輸液配送に同封する形で送られてもよい。
【0065】
施設201は、施設202から受け取った輸液を患者に投与する際に、輸液バッグ100のラベル110に書き込まれた輸液情報111と、カバー1のラベル5に書き込まれた識別情報51とをそれぞれ読み取って、読み取った輸液情報111及び識別情報51と、関連付情報との照合を行い、照合可の場合に輸液の投与を許可する一方で、照合不可の場合には投与を禁止する。
【0066】
以下、輸液管理システム200についてより詳しく説明する。図12は、施設201内に構築されたシステムの構成を例示している。図12のシステム300は、通信装置304、第1読取装置305、第2読取装置306、第3読取装置307、記憶装置308、表示装置313、及びこれらが接続された制御装置301を備えている。
【0067】
通信装置304は、輸液生成の発注先施設202との間で通信を行う装置である。通信装置304は、例えば、発注先施設202に発注情報として処方箋情報を送信したり、発注先施設202から上記関連付情報を受信したりする。
【0068】
第1読取装置305はカバーラベル5(図1参照)から識別情報51を読み取る装置である。第1読取装置305は、識別情報51の暗号化方式に則って構成されており、例えば、識別情報51がQRコード(登録商標)として構成されている場合には、周知のQRコード(登録商標)リーダとして構成されている。この場合には、第1読取装置305はQRコード(登録商標)を撮像するためのカメラ等から構成される。また、第1読取装置305は、例えば識別情報51が白と黒のバーで構成されたバーコードとして構成されている場合には、周知のバーコードリーダとして構成されている。また、第1読取装置305は、例えば識別情報51がICタグとして構成されている場合には、周知のICタグリーダとして構成されている。なお、第1読取装置305が本開示の関連付後第1読取部に相当する。
【0069】
第2読取装置306は輸液ラベル110(図8参照)から輸液情報111を読み取る装置である。第2読取装置306は、輸液情報111の暗号化方式に則って構成された、QRコード(登録商標)リーダ、バーコードリーダ、ICタグリーダなどである。なお、第2読取装置306が本開示の関連付後第2読取部に相当する。
【0070】
第3読取装置307は、患者ごとに割り当てられた、患者を識別するための情報(患者識別情報)を読み取る装置である。患者識別情報は、例えば、施設201に入院している患者の身体又は患者のベッド等に暗号化され又はICタグ化された情報(例えばバーコード)として取り付けられる。第3読取装置307は、患者識別情報の暗号化方式に則って構成された、QRコード(登録商標)リーダ、バーコードリーダ、ICタグリーダなどである。
【0071】
なお、識別情報51と輸液情報111とが同一の方式の情報の場合には、第1読取装置305と第2読取装置306とは共通の装置として構成されてよい。同様に、識別情報51と患者識別情報とが同一の方式の情報の場合には、第1読取装置305と第3読取装置307とは共通の装置として構成されてよい。また、輸液情報111と患者識別情報とが同一の方式の情報の場合には、第2読取装置306と第3読取装置307とは共通の装置として構成されてよい。また、識別情報51と輸液情報111と患者識別情報とが同一の方式の情報の場合には、第1、第2、第3読取装置305、306、307は共通の装置として構成されてよい。
【0072】
記憶装置308は、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。記憶装置308には、カルテ情報309、処方箋情報310及びカバー識別情報312が記憶される。カルテ情報309は、患者ごとの診療内容を示した電子化された情報(電子カルテ)である。カルテ情報309は、患者を識別するための情報(患者識別情報)を含み、患者識別情報ごとに区分されている。患者識別情報は、第3読取装置307の読み取り対象となる情報であり、例えば患者ごとに付けられた、数字、アルファベット等から構成された番号である。
【0073】
処方箋情報310は、医師による処方内容を示す情報と、処方箋を識別するための情報311(処方箋識別情報)とを含む。処方箋識別情報311は例えば数字、アルファベット等から構成された番号であり、カルテ情報309の患者識別情報に関連付けられている。また処方箋識別情報311は図8の輸液ラベル110に書き込まれる輸液情報111と同じ情報としてよい。なお、同一の患者識別情報(患者)に対して複数の処方箋情報310が関連付けられる場合がある。この場合であっても。同一の患者に対する複数の処方箋情報310の各処方箋識別情報311は互いに異なる情報が割り当てられる。
【0074】
カバー識別情報312は、施設202から送られる関連付情報を構成する、輸液情報111と関連付けられたカバーラベル5の識別情報51(図1参照)と同じ情報である。カバー識別情報312は、カバー1が装着された輸液バッグ100を施設201で保有するときに記憶装置308に記憶される情報であり、輸液バッグ100を保有していないときにはカバー識別情報312は存在しない。カバー識別情報312は、処方箋識別情報311に関連付けられている。
【0075】
このように、各患者を特定する患者識別情報と、各処方箋(言い換えれば輸液)を特定する処方箋識別情報311(言い換えれば輸液情報111)と、各カバー1を特定するカバー識別情報312(ラベル5の識別情報51)とは相互に関連付けられて記憶装置308に記憶されている。したがって、各処方箋(輸液)はどの患者に対するものであるのか、及び各カバー1はどの輸液に対するものなのかが特定可能となっている。
【0076】
なお、処方箋情報310及びカバー識別情報312は、カルテ情報309の一部を構成する情報であると言ってもよい。
【0077】
表示装置313は、各種情報を表示可能な装置であり、例えば記憶装置308に記憶されたカルテ情報309を表示したり、処方箋情報310を表示したりする。
【0078】
制御装置301は、CPU、ROM、RAM等から構成されたコンピュータであり、CPUがROMに記憶されたプログラムにしたがって各種処理を実行する装置である。制御装置301は、具体的には例えば輸液バッグ100の輸液情報111とカバー1の識別情報51とが、記憶装置308に関連付けて記憶された処方箋識別情報311及びカバー識別情報312に一致するかの照合処理を行う。照合処理の詳細は後述する。
【0079】
また、制御装置301は、不揮発性のメモリ302を備えている。そのメモリ302は、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。メモリ302には、制御装置301が実行する処理(例えば上記照合処理)のプログラム303が記憶されている。なお、制御装置301が本開示の照合部及び照合装置に相当する。
【0080】
図13は、図11の施設202内に構築されたシステムの構成を例示している。図13のシステム400は、通信装置404、第1読取装置405、第2読取装置406、記憶装置407、ラベル発行装置411、表示装置412、及びこれらが接続された制御装置401を備えている。
【0081】
通信装置404は、輸液生成の発注元施設201との間で通信を行う装置である。通信装置404は、例えば、発注元施設201からの発注情報(処方箋情報)を受信したり、発注元施設201へ上記関連付情報を送信したりする。
【0082】
第1読取装置405は、カバーラベル5(図1参照)から識別情報51を読み取る装置である。第1読取装置405は、図12の第1読取装置305と同様に構成される。なお、第1読取装置405が本開示の関連付前読取部に相当する。
【0083】
第2読取装置406は輸液ラベル110(図8参照)から輸液情報111を読み取る装置である。第2読取装置406は、図12の第2読取装置306と同様に構成される。
【0084】
記憶装置407は、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。記憶装置407には、例えば発注元施設201から受けた受注情報408が記憶される。受注情報408は、具体的には、図12の記憶装置308に記憶される処方箋情報310に相当する情報であり、処方内容を示す情報(輸液に含ませる薬剤の名称及び量など)と、処方箋を識別するための情報409(処方箋識別情報)と、発注元施設201を特定する情報とを含む。処方箋識別情報409は、図12の記憶装置308に記憶される処方箋識別情報311と同じ情報である。また、記憶装置407には、輸液情報111(図8参照)とカバー1の識別情報51(図1参照)とが関連付けられた情報(関連付情報)410が記憶される。
【0085】
ラベル発行装置411は、輸液ラベル110(図8参照)を発行する装置である。ラベル発行装置411は、ラベル素材の表面に、輸液情報111を含む輸液に関する情報を印刷する装置として構成されている。
【0086】
表示装置412は、各種情報を表示可能な装置であり、例えば記憶装置407に記憶された受注情報408を表示する。
【0087】
制御装置401は、CPU、ROM、RAM等から構成されたコンピュータであり、CPUがROMに記憶されたプログラムにしたがって各種処理を実行する装置である。制御装置401は、例えば輸液バッグ100の輸液情報111とカバー1の識別情報51とを関連付ける関連付処理を実行する。関連付処理の詳細は後述する。
【0088】
また、制御装置401は、不揮発性のメモリ402を備えている。そのメモリ402は、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。メモリ402には、制御装置401が実行する処理(例えば上記関連付処理)のプログラム403が記憶されている。なお、制御装置401が本開示の記憶制御部及び情報関連付装置に相当する。
【0089】
次に、図11の輸液管理システム200による輸液管理の手順を説明する。先ず、施設201は、施設202に対して、患者に応じた輸液の生成を依頼(発注)する(輸液生成依頼ステップ)。具体的には、例えば、図12の制御装置301は、記憶装置308から、対象の処方箋情報310を読み出す。そして、制御装置301は、通信装置304に、読み出した処方箋情報310を依頼先のシステム400(図13参照)に向けて送信させる。図12のシステム300はキーボード等の操作部(図示外)を備えており、施設201の担当者は、その操作部を操作することで、システム300に送信させる処方箋情報310を指定可能となっている。なお、処方箋情報310が通信装置304から電子情報として送信されるのに代えて、処方箋情報310が書き込まれた有体物(紙媒体、記憶媒体)が施設201から施設202に配送されてもよい。
【0090】
上述の輸液生成依頼ステップの後、図13のシステム400は、例えば図14に示す処理を行う。具体的には、図13の制御装置401は、施設201からの輸液生成の依頼を受け付ける(S1)。具体的には、制御装置401は、施設201のシステム300から送られてきた処方箋情報310を通信装置404に受信させて、受信した処方箋情報310を、受注情報408として記憶装置407に記憶させる。なお、処方箋情報310が有体物として送られてきた場合には、施設202の担当者は、その有体物に書き込まれた処方箋情報310を受注情報408として記憶装置407に記憶させればよいし、有体物自体を受注情報408として保管してもよい。
【0091】
次に、施設202の担当者(薬剤師)は、ステップS1で受け付けた依頼に基づいて、輸液バッグに薬剤を注入する(S2)。具体的には、例えば、制御装置401は、記憶装置407に記憶された受注情報408を読み出して、その受注情報408を表示装置412に表示させる。なお、システム400はキーボード等の操作部(図示外)を備えており、担当者はその操作部を操作することでどの受注情報408を表示装置412に表示させるかを指定可能となっている。
【0092】
施設202は、薬剤注入前の輸液バッグを保有している。その輸液バッグには、薬剤注入前の液体(例えば生理食塩水など)が入っている。なお、薬剤注入前の輸液バッグには上述のカバー1は装着されていない。施設202の担当者は、薬剤注入前の輸液バッグを準備して、その輸液バッグに、表示装置412に表示された受注情報408(処方箋情報)で示される1種類又は複数種類の薬剤を、受注情報408で示される量だけ注入する。このとき、担当者は、輸液バッグのゴム栓に注射針を貫通させて、その注射針を通して薬剤を注入する。これにより、受注情報408で示される輸液が得られる。担当者は、薬剤注入後、輸液バッグの口部の先端をシート部(図9のシート部105に対応)で覆う。
【0093】
制御装置401は、受注情報408に基づいて、ラベル発行装置411に、生成した輸液に関する情報が表面に印字されたラベル110(図8参照)を発行させる(S3)。担当者は、発行されたラベル110を輸液バッグに貼付して、図8で示される薬剤注入後の輸液バッグ100にする。
【0094】
さらに、担当者は、輸液バッグ100の口部102に上述のカバー1を装着させる(S4)。なお、施設202は、予めラベル5が貼付された複数のカバー1を保有している。各カバー1のラベル識別情報51は互いに異なる情報が割り当てられている。担当者は、保有しているカバー1の中から任意の1つを選択して、選択したカバー1を口部102に装着すればよい。
【0095】
制御装置401は、輸液ラベル110に書き込まれた輸液情報111(図8参照)を取得する(S5)。具体的には、例えば、制御装置401は、表示装置412、スピーカ(図示外)等の報知部に、輸液ラベル110から輸液情報111を読み取るよう促す報知を行わせる。この報知を受けた担当者は、第2読取装置406に、輸液ラベル110の輸液情報111を読み取らせる。制御装置401は、第2読取装置406が読み取った輸液情報111を取得する。なお、輸液情報111としての処方箋識別情報409は受注情報408に含まれた情報であるので、制御装置401は、受注情報408から処方箋識別情報409を輸液情報111として抽出してもよい。この場合には、第2読取装置406による輸液情報111の読み取りを省略できる。なお、ステップS5を実行する制御装置401が本開示の輸液情報取得部に相当する。
【0096】
また、制御装置401は、カバーラベル5に書き込まれた識別情報51(図1参照)を取得する(S6)。具体的には、例えば、制御装置401は、表示装置412、スピーカ(図示外)等の報知部に、カバーラベル5から識別情報51を読み取るよう促す報知を行わせる。この報知を受けた担当者は、第1読取装置405に、カバーラベル5の識別情報51を読み取らせる。制御装置401は、第1読取装置405が読み取った識別情報51を取得する。なお、ステップS6を実行する制御装置401が本開示の識別情報取得部に相当する。また、ステップS6が本開示の関連付前読み取りステップに相当する。
【0097】
次に、制御装置401は、ステップS5、S6で取得した輸液情報111及び識別情報51を関連付けて、関連付情報410として記憶装置410に記憶させる(S7)。なお、ステップS7を実行する制御装置401が本開示の記憶制御部に相当する。また、ステップS7が本開示の記憶ステップに相当する。
【0098】
次に、ステップS7で得た関連付情報410を施設201に送信する(S8)。具体的には、例えば、制御装置401は、記憶装置410から関連付情報410を読み出して、その関連付情報410を、施設201のシステム300に向けて、通信装置404に送信させる。なお、関連付情報410は、関連付情報410が書き込まれた有体物(紙媒体、記憶媒体)として施設201に配送されてもよい。
【0099】
また、施設202の担当者は、ステップS2~S4で得られた、カバー1が装着された輸液バッグを、施設201に発送する(S9)。
【0100】
施設201は、施設202から送られた関連付情報410及び輸液バッグを受け取る。具体的には、図12の制御装置301は、通信装置304に、ステップS8で送信された関連付情報410を受信させる。制御装置301は、受信した関連付情報410を記憶装置308に記憶させる。具体的には、制御装置301は、関連付情報410に含まれるカバー識別情報51を、カバー識別情報312として記憶装置308に記憶させる。このとき、制御装置301は、関連付情報410においてカバー識別情報51に関連付けられた輸液情報111(処方箋識別情報)に相当する処方箋識別情報311を記憶装置308から検索して、検索した処方箋識別情報311に関連付けてカバー識別情報312を記憶装置308に記憶させる。
【0101】
なお、施設202から、関連付情報410が有体物(紙媒体、記憶媒体など)で送られる場合には、施設201の担当者は、その有体物に書き込まれた関連付情報410を読み取って、読み取った情報410を操作部により入力することで記憶装置308に記憶させてもよい。
【0102】
施設201のシステム300は、患者に輸液を投与する際に、図15に示す照合処理を実行する。具体的には、患者に輸液を投与する担当者(看護師等)は、図12のプログラム303(照合処理)を起動させて、制御装置301に図15の処理を実行させる。制御装置301は、輸液を投与する対象の患者の識別情報(患者識別情報)を取得する(S10)。具体的には、例えば、制御装置301は、表示装置313、スピーカ(図示外)等の報知部に患者識別情報を読み取るよう促す報知を行わせる。この報知を受けた担当者は、第3読取装置307に、患者の身体又は患者のベッド等に取り付けられた患者識別情報を読み取らせる。制御装置301は、第3読取装置307が読み取った患者識別情報を取得する。
【0103】
また、制御装置301は、投与しようとする輸液バッグの輸液ラベル110の輸液情報111(図8参照)を取得する(S11)。具体的には、例えば、制御装置301は、表示装置313、スピーカ(図示外)等の報知部に、輸液ラベル110から輸液情報111を読み取るよう促す報知を行わせる。この報知を受けた担当者は、第2読取装置306に、輸液ラベル110の輸液情報111を読み取らせる。制御装置301は、第2読取装置306が読み取った輸液情報111を取得する。なお、ステップS11を実行する制御装置301が本開示の輸液情報取得部に相当する。
【0104】
また、制御装置301は、投与しようとする輸液バッグの口部に装着されたカバー1のラベル5から識別情報51を取得する(S12)。具体的には、例えば、制御装置301は、表示装置313、スピーカ(図示外)等の報知部に、カバーラベル5から識別情報51を読み取るよう促す報知を行わせる。この報知を受けた担当者は、第1読取装置305に、カバーラベル5の識別情報51を読み取らせる。制御装置301は、第1読取装置305が読み取った識別情報51を取得する。なお、ステップS12を実行する制御装置301が本開示の識別情報取得部に相当する。また、ステップS11、S12が本開示の関連付後読み取りステップに相当する。
【0105】
制御装置301は、ステップS10~S12で取得した患者識別情報、輸液情報111及び識別情報51が、記憶装置308において相互に関連付けられて記憶された情報であるかの照合を行う(S13)。具体的には、制御装置301は、ステップS10で取得した患者識別情報に関連付けて記憶装置308に記憶された処方箋識別情報311及びカバー識別情報312(図12参照)を読み出す。そして、制御装置301は、ステップS11で取得した輸液情報111が読み出した処方箋識別情報311に一致するかの照合と、ステップS12で取得した識別情報51が読み出したカバー識別情報312に一致するかの照合とを行う。なお、ステップS13を実行する制御装置301が本開示の照合部に相当する。ステップS13が本開示の照合ステップに相当する。
【0106】
そして、制御装置301は、輸液情報111と処方箋識別情報311との照合、及び識別情報51とカバー識別情報312との照合が共に「可」の場合には(S14:Yes)、表示装置313、スピーカ(図示外)等の報知部に、照合できたことを示す報知を行わせる(S15)。担当者は、この報知に基づいて、輸液バッグに装着されたカバー1の蓋部3を開いて、口部のゴム栓を露出させる。その後、ゴム栓に注射針を貫通させて、その注射針を通して排出される輸液を点滴により患者に投与する。
【0107】
これに対して、制御装置301は、輸液情報111と処方箋識別情報311との照合、及び識別情報51とカバー識別情報312との照合の少なくとも一方が「不可」の場合には(S14:No)、表示装置313、スピーカ(図示外)等の報知部に、照合できなかったことを示す報知を行わせる(S16)。担当者は、この報知に基づいて、輸液の投与を中止する。なお、ステップS12より前に、カバー1が既に開けられた場合には、カバーラベル5がカバー1から剥がされ又は切断されることから、ステップS12ではカバーラベル5の識別情報51を読み取ることはできない。この場合には、ステップS13の照合ができないので、ステップS16で照合不可の報知が行われる。
【0108】
例えば、輸液ラベル110の輸液情報111と、記憶装置308において患者識別情報に関連付けて記憶された処方箋識別情報311とが一致しない場合には、別の患者に対する輸液の可能性があるとして、この輸液の投与を行わない。また例えば、カバーラベル5の識別情報51と、記憶装置308において処方箋識別情報311に関連付けて記憶されたカバー識別情報312との照合ができない場合には、カバー1が開けられた可能性があり、この輸液の信頼性が低いとして、この輸液の投与を行わない。
【0109】
さらに、制御装置301は図15の処理に関わる各種の記録を行う(S17)。具体的には、例えば、ステップS13の照合の結果を記憶措置308に記録する。例えば、ステップS13の照合ができた場合(照合可の場合)には、記憶装置308に記憶された、今回の患者(患者識別情報)に対応するカルテ情報309、処方箋情報310又はカバー識別情報312に関連付けて、「照合可」であることを示す情報や照合日時などを記録する。また、例えば、カバーラベル5の識別情報51の読み取り(ステップS12の処理)が行われたことを示す情報やその読み取りが行われた日時などを記憶装置308に記録してもよい。
【0110】
以下、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、輸液バッグ100への薬剤注入後に、輸液バッグ100の口部102にカバー1が装着されるので、輸液バッグ100内に異物が混入され難くできる。また、輸液バッグ100内の輸液が無断で使用されてしまうのを抑制できる。このカバー1は一旦輸液バッグ100の口部102に装着された場合には以降取り外しが不能なので、輸液バッグ100内に異物が混入されること、及び輸液バッグ100内の輸液が無断で使用されることをより一層抑制できる。
【0111】
また、カバー1の筒部2に輸液バッグ100の口部102を挿入させるに伴い自動的に取り外し不能にカバー1を口部102に装着させることができる。口部102にカバー1を装着させる場合には、カバー1の筒部2に口部102を挿入させるだけでよいので、その装着操作が容易である。
【0112】
また、カバー1の抜け阻止部22(弾性変形部26)は、カバー1の装着操作に伴い、口部102の径に応じて弾性変形するので、口部102の径が異なる複数種類の輸液バッグ100のそれぞれに同一形状のカバー1を装着させることができる。
【0113】
また弾性変形部26の幅d(図2図3参照)は、筒部2の第1開口24から第2開口25の方向に進むにしたがって次第に小さくなるので、より多くの弾性変形部26を筒部2内に配置でき、口部102からのカバー1の抜け阻止機能を強化できる。また、弾性変形部26の先端側の幅dが、基端側の幅dに比べて小さいことで、複数の弾性変形部26が互いに干渉してしまうのを回避できる。また、弾性変形部26の基端側の幅dが先端側の幅dに比べて大きいことで、弾性変形部26の基端(支点)の剛性を強くでき、カバー1を口部102に装着させる際に弾性変形部26が破断してしまうのを抑制できる。
【0114】
また、弾性変形部26の先端部262(図3参照)は、軸線L1に平行な内側面262aを有しているので、カバー1を口部102に装着する際に、その内側面262aで、口部102の大径部103bを挿入方向に案内できる。また、装着後は、内側面262aで口部102の小径部103aを当てる(接触させる)ことができ、カバー1が径方向にぐらついてしまうのを抑制できる。
【0115】
また、カバー1の筒部2と蓋部3とをまたぐようにラベル5が貼付されているので、蓋部3が無断で開けられてしまうのを抑制できる。また、ラベル5の状態を確認することで、蓋部3が開けられたか否かを容易に判断できる。すなわち、蓋部3が開けられた場合には、ラベル5が切断されることから、その切断に基づいて蓋部3が開けられたことを容易に判断できる。また、ラベル5が切断されていないことを確認することで、蓋部3が未だ開けられていないことを容易に判断できる。
【0116】
さらに、蓋部3が、ラベル5が剥がされ又は切断された状態で、筒部2との間で自動的に(ユーザが開操作を行わなくても)隙間13が形成されるように設けられる場合には(図7参照)、蓋部3が以前に開けられたことを容易に判断できる。
【0117】
また、輸液を患者に投与する際には、患者の識別情報と、カバーラベル5の識別情報51と、輸液ラベル110の輸液情報111との組み合わせが、予め記憶装置308に記憶された組み合わせに一致するかの照合が行われ、照合可の場合に投与が許可されるので、投与されるべきではない輸液が患者に誤って投与されてしまうのを抑制できる。例えば、カバー1が無断で開けられた場合にはカバーラベル5の識別情報51が読み取り不能となることで、上記照合が不可となる。これにより、無断でカバー1が開けられた輸液が患者に投与されてしまうのを抑制できる。
【0118】
また、図15のステップS17では、カバーラベル5の識別情報51の読み取り日時などが記録されるので、その日時(輸液の投与が行われた日時)まで輸液バッグが開けられていなかったことを証明できる。
【0119】
カバーラベル5の識別情報51は、カバーラベル5の切断予定部53(図6参照)をまたぐように書き込まれるので、切断予定部53が切断されるのに伴い、識別情報51を切断させることができる。これにより、蓋部3が開けられるに伴い、識別情報51の読み取りを不能にできる。
【0120】
また、カバーラベル5の、切断予定部53が設けられる領域52(図6参照)は接着領域に設定されていないので、切断予定部53が切断されたときに、その領域52を平面状態とは異なる状態(カールした状態、しわが生じた状態など)にできる。これにより、カバーラベル5が切断されたことを容易に判断できる。また、その領域52に書き込まれた識別情報51を、切断予定部53の切断に伴い読み取り不能にできる。
【0121】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、輸液生成を依頼しかつ輸液を使用する施設201と、輸液生成を行う施設202とが別施設の例を示したが、輸液生成を依頼する部門と輸液を使用する部門と輸液を生成する部門とが同一施設内に設けられてもよい。この場合、図12図13のシステム300、400は同一施設内に構築される。また、図12のシステム300は、在宅医療を行う担当者(医師、看護師等)が患者の自宅で輸液を投与する場合に、その担当者が患者宅に持っていく医療機器の一つとして構成されてもよい。
【0122】
また、図14のステップS5~S7で示される輸液情報111と識別情報51との関連付けは、図11の施設201で行われてもよい。この場合、施設202では、ステップS4のカバー装着後、ステップS5~S8を省略して、ステップS9の処理が行われる。また、図14のステップS5~S7は、ステップS2の薬剤注入の前に予め行われてもよいし、ステップS3で輸液バッグに輸液ラベルが貼付される前に行われてもよいし、ステップS4で輸液バッグ口部にカバーが装着される前に行われてもよい。
【0123】
また、図15の処理(照合処理)は、輸液を患者に投与する場面以外の場面に実行されてもよい。これによれば、輸液バッグが薬剤混注後に開けられたか否かを容易かつ正確に判断できる。また、輸液の管理を厳格に行うことができる。また、施設201内の場面以外の場面(例えば、施設202から施設201に輸液を配送する配送業者による配送場面)に図15の処理が行われてもよい。これによって、信頼性の低い輸液が施設201に送られてしまうのを抑制できる。なお、患者が目の前にいない場面で図15の処理が行われる場合には、ステップS10は省略されてもよい。
【0124】
また、輸液生成のための処方箋情報、及び、関連付情報(輸液ラベルの輸液情報とカバーラベルの識別情報とが関連付けられた情報)を記憶する記憶装置を、複数の施設201、202間で共用の記憶装置(つまり共用サーバの記憶装置)として構成してもよい。この場合、施設202のシステム400は、共用記憶装置にインターネットでアクセスして、共用記憶装置から処方箋情報を読み出し、その処方箋情報に基づいて、図14のステップS2~S7の処理を実行し、ステップS7で得た関連付情報を共用記憶装置に記憶させてよい。そして、施設201のシステム300は、共用記憶装置にインターネットでアクセスして、その共用記憶装置から関連付情報を読み出し、その関連付情報に基づいて、図15の処理を実行してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、図15の処理は、システム300の制御装置301により実行される例を示したが、輸液を管理又は使用する担当者が図15の処理に相当する照合を行ってもよい。この場合、担当者は、例えば、表示装置313に、第1読取装置305で読み取らせた識別情報51、第2読取装置で読み取らせた輸液情報111を表示させるとともに、患者(患者識別情報)に関連付けて記憶装置308に記憶された処方箋識別情報311及びカバー識別情報312も表示させる。そして、担当者は、表示装置313に表示された輸液ラベル110の輸液情報111及びカバーラベル5の識別情報51が、同じく表示装置313に表示された処方箋識別情報311及びカバー識別情報312に一致するかを確認する。
【0126】
また、カバーラベルは、輸液バッグの口部にカバーを装着する際にそのカバーに貼付されてもよい。
【0127】
また、輸液バッグ口部カバーは、口部のゴム栓を覆う状態から露出させる状態へと変化が可能な開閉部と、口部への装着状態を保持する装着保持部(言い換えれば、口部からカバーが外れるのを阻止する抜け阻止部)とを備えるのであれば、どのような構造でもよい。具体的には例えば図16のように口部カバーが構成されてもよい。なお、図16では、輸液バッグの口部102にカバー6が装着された状態を示している。
【0128】
図16のカバー6は、第1部分61と、第1部分61に対して開閉可能に設けられる第2部分62とを備える。第1部分61及び第2部分62はそれぞれ可撓性を有する板状素材が略90°に屈曲した形状に形成される。そして、第1部分61と第2部分62とは互いに係合可能な係合部65、66を有する。係合部65、66は、結束バンドの係合部と同様に構成されており、締め付け方向への操作は許容される一方で、緩める方向への操作はできないように構成されている。なお、第1部分61の係合部65が本開示の抜け阻止部に相当する。
【0129】
また、カバー6が閉じた状態では、第1部分61の端部61aと、第2部分62の端部62aとは合わさっており、その合わせ部61a、62aをまたぐようにラベル63が貼付されている。このラベル63は、図1図6のラベル5と同様に構成される。また、カバー6は、合わせ部61a、62aの位置に、第2部分62を開くための取手64を有している。
【0130】
カバー6は、輸液バッグの口部102に装着される前では、係合部65、66が係合していない状態にある。カバー6を口部102の装着する場合には、第1部分61と第2部分62とで囲まれる空間に口部102を配置させた状態にして、係合部65、66を係合させる。カバー6を開ける場合には、取手64を持って、合わせ部61a、62aが離れる方向に第2部分62を開く。第2部分62が開くことで、口部102に設けられるゴム栓が露出する。また、合わせ部61a、62aが離れるに伴い、ラベル63が切断される。図16のカバー6によっても、輸液バッグ内の輸液に異物が混入され難くできる。
【符号の説明】
【0131】
1、6 輸液バッグ口部カバー
2 筒部(輸液バッグ口部カバーの第1部分)
22 抜け阻止部
26 弾性変形部
3 蓋部(輸液バッグ口部カバーの第2部分)
5、63 カバーラベル
51 カバーラベルの識別情報
61 輸液バッグ口部カバーの第1部分
62 輸液バッグ口部カバーの第2部分
100 輸液バッグ
102 輸液バッグの口部
104 ゴム栓
110 輸液ラベル
111 輸液情報
200 輸液管理システム
301、401 制御装置
303、403 プログラム
308、407 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16