(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】液体改質装置
(51)【国際特許分類】
B01F 25/431 20220101AFI20241018BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20241018BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20241018BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20241018BHJP
【FI】
B01F25/431
B01F23/2375
B01F25/452
B01F25/10
(21)【出願番号】P 2021527724
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020024981
(87)【国際公開番号】W WO2020262523
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019130607
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596107040
【氏名又は名称】株式会社ナノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【氏名又は名称】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆夫
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04872833(US,A)
【文献】特開平06-218258(JP,A)
【文献】特開平07-284642(JP,A)
【文献】特開2007-144394(JP,A)
【文献】実開昭53-093704(JP,U)
【文献】米国特許第05969207(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1006058(KR,B1)
【文献】特開2019-162605(JP,A)
【文献】特開2003-094066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00 - 25/90
E03C 1/02 - 1/042
F16L 9/00 - 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径が相対的に大きい上流部及び下流部と、これらの間に位置しており内径が相対的に小さくて翼部を備える中流部とによって、改質対象の液体が通る円筒流路が形成されていて、
前記翼部は
、前縁が前記上流部側に位置し、かつ、後縁が前記下流部側に位置し、
最大翼厚を通る線をZ軸、軸心をY軸、前記Z軸及び前記Y軸に対する直交軸をX軸とした場合、前記Z軸方向から見て4象限で捉えられる、第1象限及び第3象限が第1方向に向けて傾斜し、
第2象限及び第4象限が前記第1方向とは異なる第2方向に向けて傾斜する態様の捻じり形状である、液体改質装置。
【請求項2】
前記翼部は、最大翼厚と翼弦長との比が1:10~2:10である、
請求項1記載の液体改質装置。
【請求項3】
前記上流部は、前記下流部に向けて内径が一定である平行部と、前記下流部に向けて内径が先細となる傾斜部とを有する、
請求項1記載の液体改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体改質装置に関し、特に、液体をウルトラファインバブルよりも微細なサイズのバブルを含むものに改質する液体改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、小型のポンプで、かつ少量の気体供給量でありながら、安定してマイクロバブルを発生すると同時に、発生したマイクロバブルの一部を同一動作の中で効率的にナノバブル化するマイクロナノバブルの生成方法について開示されている。
【0003】
具体的には、このマイクロナノバブルの生成方法は、二相流旋回方式のマイクロナノバブル生成器内で気液二相旋回流を発生させる工程と、前記マイクロナノバブル生成器の放出孔より前記気液二相旋回流を外部の液体中に放出させる工程と、放出された前記気液二相旋回流中のマイクロバブルを前記マイクロナノバブル生成器の外壁面に沿って移動させる工程とを含む、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている生成方法は、その名のとおりナノサイズのバブル、すなわち、ウルトラファインバブルを生成することができるが、このサイズの泡で発揮できる効能はそれほど多くはなく、更なるサイズの微細化が要請されている。
【0006】
また、特許文献1に開示されている生成方法は、例えば、生成装置に流入させる液体が大きな抵抗を受けることになり、ナノバブルの生成に必要な真空キャビテーションを十分に得ることができず、ウルトラファインバブルの生成量は、相対的に少量でしかなかった。
【0007】
そこで、本発明は、ウルトラファインバブルより微細なサイズのバブルを生成することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、ウルトラファインバブルより微細なサイズのバブルを含む液体を大量生産できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の液体改質装置は、
内径が相対的に大きい上流部及び下流部と、これらの間に位置しており内径が相対的に小さくて翼部を備える中流部とによって、改質対象の液体が通る円筒流路が形成されていて、
前記翼部は、
前縁が前記上流部側に位置し、かつ、後縁が前記下流部側に位置し、
前記前縁の一方側と前記の後縁他方側とが第1方向に向けて傾斜し、前記前縁の他方側と前記後縁の一方側とが前記第1方向とは異なる第2方向に向けて傾斜する態様の捻じり形状である。
【0010】
なお、前記翼部は、前記円筒流路の軸心に沿った翼型がNACA翼型に準拠した形状とすることができる。また、前記翼部は、最大翼厚と翼弦長との比が1:10~2:10であるとよい。
【0011】
さらに、前記上流部は、前記下流部に向けて内径が一定である平行部と、前記下流部に向けて内径が先細となる傾斜部とを有することもできる。
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の液体改質装置100の模式的な説明図である。
図2は、
図1の軸心に沿った断面図である。
図3は、
図1の軸心に沿った側面図である。
図4は、
図2のA-A線での断面図である。なお、A-A線は、以下説明する翼部14の最大翼厚を通る線である。
【0014】
図1等に示す液体改質装置100は、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、金、銀、鉄、アルミニウムなどの金属、ガラスによって製造することができる。したがって、液体改質装置100の素材の自由度は高い。液体改質装置100のサイズについては、部位毎に後述することとする。
【0015】
つぎに、
図2~
図4を参照されたい。
図2等に示すように、本実施形態の液体改質装置100には、円筒流路30が形成されている。円筒流路30は、以下説明する、上流端2と、上流部4と、傾斜部6と、中流部8と、下流部10と、下流端12と、によって構成されている。
【0016】
上流端2は、改質対象の液体の流入口である。上流端2は、その大きさ(直径)を、例えば9.0mm~180.0mm、好ましくは6.0mm~150.0mm、より好ましくは4.0mm~130.0mmの開口とすることができる。このような寸法は、液体改質装置100の取付先である液体流路が例えば4.0mm~180.0mmであることを前提としており、したがって、液体改質装置100は、当該液体流路の大きさに応じて、例えば相似形に変更した寸法とすることができる。
【0017】
上流部4は、上流端2に続く部位であり、ここでは、上流から下流に向けて内径が一定の形状のものを示している。したがって、この例では、上流部4は、上流端2のサイズと同じく、その内径を、例えば9.0mm~180.0mm、好ましくは6.0mm~150.0mm、より好ましくは4.0mm~130.0mmとすることができる。また、上流部4は、その長さを、例えば1.0mm~13.0mm、好ましくは3.0mm~10.0mm、より好ましくは4.5mm~7.0mmとすることができる。
【0018】
なお、上流部4の形状は、上流から下流に向けて内径が一定でることが必須ではなく、上流部4に続く傾斜部6と区別することなく一体として、例えば、線形的或いは2次曲線的に上流から下流に向けて内径が先細となるようにしてもよい。
【0019】
傾斜部6は、上流部4に続く部位であって、上流部4と連通形成されている。傾斜部6は、上流から下流に向けて例えば線型的に先細となる形状である。傾斜部6は、その長さを例えば1.0mm~13.0mm、好ましくは3.0mm~10.0mm、より好ましくは4.5mm~7.0mmとすることができ、その傾斜と軸心22とのなす角度を、例えば5°~60°、好ましくは10°~45°、より好ましくは15°~30°とすることができる。
【0020】
ここで、上記のように、上流部4と傾斜部6とを例えば線形的に先細となるようにしてもよいことを説明したが、この場合には、その先端(上流)のサイズは上流端2のサイズと同じとし、終端(下流)を上記の傾斜部6における条件での下流側の直径サイズに合わせるようにするとよい。
【0021】
中流部8は、傾斜部6に続く部位であって、傾斜部6と連通形成されている。中流部8は、上流から下流に向けて内径が一定の形状のものを示している。中流部8は、その内径を、例えば3.0mm~120.0mm、好ましくは3.5mm~100.0mm、より好ましくは4.0mm~80.0mmとすることができる。また、中流部8は、その長さを、例えば10.0mm~40.0mm、好ましくは20.0mm~30.0mm、より好ましくは25.0mm~30.0mmとすることができる。
【0022】
下流部10は、中流部8に続く部位であって、中流部8と連通形成されている。下流部10は、上流から下流に向けて例えば線形的に先太となる形状である。下流部10は、その長さを例えば20.0mm~26.0mm、好ましくは12.0mm~20.0mm、より好ましくは10.0mm~14.0mmとすることができ、その傾斜と軸心22とのなす角度を、例えば1°~60°、好ましくは10°~45°、より好ましくは15°~60°とすることができる。
【0023】
下流端12は、改質対象の液体が流出口である。下流端12は、その大きさ(直径)を、例えば4.0mm~180.0mm、好ましくは5.0mm~150.0mm、より好ましくは6.0mm~140.0mmの開口とすることができる。
【0024】
上流部4及び下流部10は相対的に内径が大きく、中流部8は相対的に内径が小さい。また、繰り返しになるが、傾斜部6及び下流部10の内径は、直線形的に変化していく例を
図2に示しているが、例えば、曲線形的又は段階的に変化していくようにしてもよい。
【0025】
中流部8内には、以下説明するように、特徴的な形状の翼部14が形成されている。特徴的な形状の翼部14を設けることが、本実施形態の液体改質装置100においては重要である。
【0026】
図5は、
図2に示す翼部14の断面の拡大図である。
図6は、
図5に示す翼部14の全体図である。なお、理解容易のため、
図5,
図6には
図2に示した翼部14よりやや反時計回りに回転させたものを示している。
【0027】
翼部14は、最大翼厚を通る線A-A(
図2)をZ軸、軸心22をY軸、Z軸及びY軸に直交するX軸とした場合に、Z軸方向から見て4象限で捉えると、
図6に示すように、第1象限14aと第3象限14cとがZ方向負側に傾斜し、第2象限14bと第4象限14dとがZ方向正側に傾斜する態様でX軸を中心に捩じられた形状としている。
【0028】
なお、本実施形態の液体改質装置100を地球の南半球で使用する場合には、液体の渦の回転方向が逆になるので、
図6等に示す例とは反対に、第1象限14aと第3象限14cとがZ方向正側に傾斜し、第2象限14bと第4象限14dとがZ方向負側に傾斜する態様でX軸を中心に捩じったものを用いるとよい。なお、
図6に示す領域14eは中流部8の内壁と同一面となる領域である。
【0029】
このように、翼部14は、上流部4側を前縁14Aとし、かつ、下流部3側を後縁14Bとした場合に、前縁14Aの一方側(例えば、第1象限14a)と後縁14Bの他方側(例えば、第3象限14c)とが第1方向(例えば、
図2下側)に向けて傾斜し、前縁14Aの他方側(例えば、第2象限14b)と後縁14Bの一方側(例えば、第4象限14d)とが第1方向とは異なる第2方向(例えば、
図2上側)に向けて傾斜する態様の捻じり形状である。
【0030】
このような形状の翼部14を用いると、中流部8を通る流体の速度が、翼部14によって増大され、翼部14の周辺で真空キャビテーションが連続的に発生する。真空キャビテーションが潰れるときに、流体に溶解している空気等が析出し、これがバブル発生のメカニズムであるが、この真空キャビテーションは、翼部14の捩じり形状によって相対的に大きなものであるため、これが潰れる際には非常に大きなエネルギーが必要であり、バブルは相対的に小さなものが多く発生する。
【0031】
なお、翼部14の原形、すなわち翼部14を捩じっていない状態の形状は、例えば、円筒流路30の軸心22に沿った翼型がNACA翼型に準拠した形状のものとすることができる。なお、これに限定されるものではないが、翼部14は、最大キャンバー位置を翼弦長の40%程度に設定したものとするとよい。
【0032】
また、翼部14の原形は、揚力係数は中以下、抗力係数は中以上、失速特性が穏やかなもの、系列でいうと、NACA4桁系列の翼型を採用するとよい。一例としては、NACA0015を採用することができる。また、翼部14は、最大翼厚と翼弦長との比が1:10~2:10であるとよい。
【0033】
この場合には、翼部14の原形は、その弦長を、例えば4.0mm~11.0mm、好ましくは3.0mm~9.0mm、より好ましくは3.0mm~7.0mmとすることができる。また、その翼幅を、例えば8.0mm~15.0mm、好ましくは9.0mm~12.0mm、より好ましくは8.0mm~11.0mmとすることができる。
【0034】
翼部14は、このような原形に対して、第1象限14a及び第4象限14dの翼弦線と
図2に示していない第2象限及び第3象限の翼弦線との為す角度を、例えば30°~200°、好ましくは40°~180°、より好ましくは35°~170°とすることができる。
【0035】
このような翼部14を備えた液体改質装置100と、翼部14の原形のものを備えた液体改質装置とを対比したところ、バブルの発生量は約4倍になった。また、バブルの大きさは大半が10nm以下となった。これは、翼部14が捻じり形状をしているため、翼部14の周辺を通る流体に渦運動を付与することが可能となり、流体速度が増大するためである。
【0036】
流体を渦運動させると、流体には流れの中で真空圧力差が生じることになるため、物理現象として、液体にバブルが発生する。このバブルは、真空圧力差が大きいほど、多量に発生し、また、バブルのサイズが微細となり、この結果、バブルの消失までの時間が長くなる。本実施形態の液体改質装置100は、このような作用によって微細なバブルを発生させ、その消滅までの時間を長くしている。
【0037】
なお、翼部14を設けた場合には、翼部14を設けない場合に比して、円筒流路30の中流部8付近の管路抵抗を1/10以下にまで低下させることができ、また、バブルの消滅までの時間を40倍以上まで長くすることができた。
【0038】
さらに、液体改質装置100における上流部4の上流から傾斜部6を経て中流部8の上流までに対応する外壁と、液体改質装置100における中流部8の中流から下流部10の下流までに対応する外壁とには、それぞれ、選択的に、ネジ切り部16が形成されており、図示しないナット部等に容易に連結できるようにしている。
【0039】
また、各ネジ切り部16間には本体20が位置しており、その表面部18にはネジきり加工はされていない。もっとも、液体改質装置100の外壁は、このようなレイアウトとすることは必須ではなく、例えば、全てをネジ切り部16としてもよいし、或いは、全てを本体20のようにして断面がフラットな表面部18としてもよい。
【0040】
本実施形態の液体改質装置100の製造については、
図2に示すパーツと、
図2に示していないパーツとを位置合わせして接着等することによって製造することができる。また、コンピューター流体解析に基づく設計を行い、この設計データを3Dプリンターに入力することで、最初から
図1に示す形態のものを製造することもできる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の液体改質装置100によれば、消失までの時間の長い、多くの微細なバブルを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施形態の液体改質装置100の模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0043】
2 上流端
4 上流部
6 傾斜部
8 中流部
10 下流部
12 下流端
14 翼部
14A 前縁
14B 後縁
14a 第1象限
14b 第2象限
14c 第3象限
14d 第4象限
30 円筒流路
100 液体改質装置