(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】フィロシクロビルによる眼感染症を治療または予防するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/522 20060101AFI20241018BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241018BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K31/522
A61P27/02
A61P31/12
(21)【出願番号】P 2021576483
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 US2020039258
(87)【国際公開番号】W WO2020263904
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512007155
【氏名又は名称】マイクロバイオティックス, インク.
【氏名又は名称原語表記】MICROBIOTIX, INC.
【住所又は居所原語表記】One Innovation Drive,Worcester, MA 01605 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フセイン,イスラム
(72)【発明者】
【氏名】ボーリン,テリー,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゴティエ,リシャール
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0346287(US,A1)
【文献】Antiviral Research,2018年,Vol.159,p.104-112
【文献】Antiviral Research,2018年,Vol.159,p.122-129
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2004年,Vol.48, No.12,p.4745-4753
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のフィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物を含む、哺乳動物におけるアデノウイルスによって引き起こされる眼のウイルス感染症の局所治療または予防のための医薬組成物。
【請求項2】
前記アデノウイルスが、アデノウイルス1,2、3、4、5、6、7、7a、8、9、10、11、13、14、15、16、17、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、53、54、56および64からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アデノウイルスが、アデノウイルス3、4、5、6、7、7a、8、37、54および64からなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アデノウイルスがアデノウイルス3である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アデノウイルスがアデノウイルス4である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アデノウイルスがアデノウイルス5である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記アデノウイルスがアデノウイルス6である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記アデノウイルスがアデノウイルス7である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アデノウイルスがアデノウイルス7aである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記アデノウイルスがアデノウイルス8である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記アデノウイルスがアデノウイルス37である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記アデノウイルスがアデノウイルス54である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記アデノウイルスがアデノウイルス64である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が、前記眼の角膜および/または結膜に局所投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
アデノウイルスによって引き起こされる哺乳動物の眼のウイルス感染症を治療または予防する方法で使用するための局所投与用医薬品の製造における、フィロシクロビルの使用。
【請求項17】
前記アデノウイルスが、アデノウイルス1,2、3、4、5、6、7、7a、8、9、10、11、13、14、15、16、17、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、53、54、56および64からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記アデノウイルスが、アデノウイルス3、4、5、6、7、7a、8、37、54および64からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物が、前記眼の角膜および/または結膜に局所投与される、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
眼科的に許容され得る担体および
アデノウイルスによって引き起こされる眼のウイルス感染症を治療するのに有効な量のフィロシクロビルを含む
、アデノウイルスによって引き起こされる眼のウイルス感染症を治療するための眼科用組成物。
【請求項22】
前記組成物が、前記眼への投与のための局所用の眼科的に許容され得る担体を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記局所用の眼科的に許容され得る担体が、水溶液、非水溶液、油、ワックス、グリース、ワセリン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記眼科用組成物が、水溶液、非水溶液、懸濁液、溶液/懸濁液、ゲル、クリーム、軟膏、およびエマルジョンからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
安定剤、浸透促進剤、pH調整剤、抗菌性防腐剤、潤滑剤、増粘剤、および湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
カルボマー、トリエタノールアミン、パラベン、プロピレングリコールおよび/またはグリセリンをさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記化合物の量が、約0.001重量%~30重量%の範囲である、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、前記眼の角膜および/または結膜に局所投与される、請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願の相互参照
本出願は、2019年6月25日に出願された米国仮出願第62/866,006号の優先権を主張し、その内容全体は本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の資金提供を受けた研究に関する記述
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金R44 AI054135の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に関する一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、眼感染症および眼の疾患を治療または予防するための治療薬の分野に関する。特に、本発明は、哺乳動物における眼感染症の治療または予防、特にヒトにおけるアデノウイルス眼感染症の治療または予防におけるフィロシクロビル(FCV)の使用に関する。フィロシクロビルは、それ単独で、あるいは、抗炎症剤、および/または抗菌剤、および/または免疫調節剤、および/または抗ウイルス剤との組み合わせで、有利に使用され得る。
【背景技術】
【0004】
50を超える既知の血清型を有するアデノウイルス(AdV)は、眼の粘膜を含む身体の様々な粘膜上皮細胞に感染する遍在性ウイルスである。AdVの他の主な標的としては、尿生殖路、気道および胃腸管が挙げられる(非特許文献1)。急性結膜炎は一般的な症状であり、米国では毎年600万人が罹患すると推定されている(非特許文献2)。AdVは、あらゆる年齢および人口統計の人々に影響を及ぼす感染性結膜炎の最も一般的な原因であり、すべての結膜炎症例の最大75%を占める(非特許文献3)。アデノウイルス結膜炎は、著しい不快感および生産性の喪失を引き起こし得る。ほとんどが自己限定的であるが、場合によっては、長期の免疫介在性続発症からの合併症をもたらし得る(非特許文献4)。
【0005】
流行性角結膜炎の流行は、通常、AdV8型、19型、37型および54型によって引き起こされるのに対して、咽頭結膜熱の流行は、主にAdV3型、4型および7型によるものである(非特許文献5)。
【0006】
眼のAdV感染の臨床管理は現在、症状の緩和をもたらすことを目的とした緩和的なものである。現在、アデノウイルス眼感染症に対する承認された治療法は存在しない。ガンシクロビルおよびシドホビルなどの抗ウイルス薬は、眼のAdV感染に対して試験されているが、あまり成功していない。シドホビルの試験は、疾患の症状または経過に対して統計学的に有意な改善を示さず、低用量であっても実質的な眼毒性を引き起こすことが示され、臨床的価値がほとんどない(非特許文献6~9)。局所用ガンシクロビルは、実験的にはAdV負荷を減少させるが、臨床試験におけるAdV結膜炎の処置における有効性を欠くものである(非特許文献10)。
【0007】
眼のAdV感染の治療のための承認された抗ウイルス薬がないこと、世界的に大きな経済的負担(非特許文献11)、および眼のAdV感染後の視力に影響を与える合併症の存在から、眼の感染症に対する安全かつ効果的な抗AdV薬に対する緊急かつ切実な医学的ニーズが存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Goncalves et al.,“Adenovirus:from foe to friend”,Rev.Med.Virol..16(3):167-186(2006)
【文献】Udeh et al.,“Cost effectiveness of a point-of-care test for adenoviral conjunctivitis”,Am.J.Med.Sci.,336(3):254-264(2008)
【文献】Jhanji et al.,“Adenoviral keratoconjunctivitis”,Surv.Ophthalmol.,60(5):435-443(2015)
【文献】Ford et al.,“Epidemiology of epidemic keratoconjunctivitis”,Epidemiol.Rev.,9:244-261(1987)
【文献】Chigbu et al.,“Pathogenesis and management of adenoviral keratoconjunctivitis”,Infection and Drug Resistance,11:981-993(2018)
【文献】Jhanji et al.,supra(2015);
【文献】Martinez-Aguado et al.,“Antiadenovirus drug discovery:potential targets and evaluation methodologies”,Drug Discov.Today,20(10):1235-1242(2015)
【文献】Clement et al.,“Clinical and antiviral efficacy of an ophthalmic formulation of dexamethasone povidone-iodine in a rabbit model of adenoviral keratoconjunctivitis”,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,52(1):339-344(2011)
【文献】Hillenkamp et al.,“The effects of cidofovir 1% with and without cyclosporin A 1% as a topical treatment of acute adenoviral keratoconjunctivitis:a controlled clinical pilot study”,Ophthalmology,109(5):845-850(2002)
【文献】Yabiku et al.,“Ganciclovir 0.15% ophthalmic gel in the treatment of adenovirus keratoconjunctivitis”,Arq.Bras.OftalmolI.,74:417e21(2011)
【文献】Stenson et al.,“Laboratory studies in acute conjunctivitis”,Arch.Ophthalmol.,100(8):1275-1277(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩を含む有効量の組成物を眼に局所投与することを含む、哺乳動物における眼ウイルス感染症を治療または予防するための新規な方法に関する。本発明の組成物および方法は、眼のウイルス感染症、例えば、眼の疾患に関連するアデノウイルス(AdV)の複数の株によって引き起こされる結膜炎を治療または予防するのに有効である。好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0011】
さらに、本発明の組成物および方法はまた、医薬的に許容され得る担体およびフィロシクロビルまたはその医薬的に許容され得る塩を含む組成物の眼への局所投与による、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルス、BKウイルスおよびそれらの組み合わせによって引き起こされるウイルス眼感染症などの、多数の他のウイルス株によって引き起こされるウイルス眼感染症を治療または予防するのにも有効である。
【0012】
好ましい実施形態では、本発明は、眼科的に許容され得る組成物中に製剤化されたフィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物を眼に局所投与することを含む、アデノウイルス株によって引き起こされる眼ウイルス感染症を治療または予防する方法における、フィロシクロビルの使用に関する。本発明の方法は、アデノウイルス1、2、3、4、5、6、7、7a、8、9、10、11、13、14、15、16、17、19/64(以下、アデノウイルス64)、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、53、54、56および64を含む、眼の感染症を引き起こすことが知られている任意の数のアデノウイルス株による眼のアデノウイルス感染症の治療に適する。特に好ましい実施形態では、本発明は、アデノウイルス株3、4、5、6、7、7a、8、37、54、および/または64によって引き起こされる眼のアデノウイルス感染症を治療するのに有効である。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、アデノウイルス(AdV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルス、BKウイルスおよびそれらの組み合わせによって引き起こされるウイルス眼感染症などの、眼の疾患に関連する複数のウイルス株によって引き起こされる眼のウイルス感染症を治療または予防する方法におけるフィロシクロビルの使用に関する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、アデノウイルスによって引き起こされる哺乳動物における眼のウイルス感染症を治療または予防するための局所投与用の医薬の製造におけるフィロシクロビルの使用に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、アデノウイルス(AdV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルスおよびBKウイルスによって引き起こされる哺乳動物における眼のウイルス感染症を治療または予防するための局所投与用医薬品の製造におけるフィロシクロビルの使用に関する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、有効量のフィロシクロビルを眼に局所投与することを含む、アデノウイルスによって引き起こされる眼感染症を治療または予防するためのフィロシクロビルの使用に関する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、アデノウイルス(AdV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルス、およびBKウイルスによって引き起こされる眼感染症を治療または予防するためのフィロシクロビルの使用であって、有効量のフィロシクロビルを眼に局所投与することを含む使用に関する。
【0018】
眼感染症を治療または予防するための局所適用に適した眼科用医薬組成物も開示され、該組成物は、治療有効量のフィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩と、眼投与に適した薬学的に許容され得る担体とを含む。医薬組成物は、哺乳動物、特にヒトにおける眼のアデノウイルス感染症および他の眼ウイルス感染症を治療または予防するための開示された方法における使用に適している。
【0019】
本明細書に記載の方法においては、眼のウイルス感染症を治療または予防するための複数の局所投与様式が企図される。医薬組成物は、それを必要とする対象または患者への眼投与、例えば、眼軟膏、眼用ゲル、眼用溶液、眼用懸濁液などのために製剤化される。
【0020】
別の実施形態では、フィロシクロビルを含む組成物は、任意に1つ以上の公知の抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤および/または抗菌剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与され得る。これらの追加の薬剤(複数可)は、フィロシクロビルの投与前、投与と同時に、または投与後に投与され得る。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明のフィロシクロビル組成物は、アデノウイルスによって引き起こされる眼の感染症に対して10μM以下の阻害濃度および100μM以上の細胞傷害性(CC50)を示す。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明のフィロシクロビル組成物は、CMV、HHV-6A、HHV-6B、EBV、HHV-8、VZVによる眼の感染に対して10μM以下の阻害濃度および100μM以上の細胞傷害性(CC50)、ならびにBKウイルスおよびJCウイルスによって引き起こされる眼の感染に対して50μM以下の阻害濃度および100μM以上の細胞傷害性(CC50)を示す。
【0023】
定義
【0024】
本明細書で使用される場合、「眼」および「眼科」という用語は、眼または眼科的な関連事項に対する参照として当技術分野で標準的な用語を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「眼科的に許容可能」という用語は、治療される眼、またはその機能、または治療される対象の全般的な健康に持続的な有害な影響を及ぼさない、本明細書の製剤、組成物または成分を指す。軽微な刺激または「刺痛」感覚などの一過性の効果は、薬物の局所的眼投与で一般的であり、そのような一過性の効果の存在は、本明細書で定義される「眼科的に許容可能」である問題の製剤、組成物または成分と矛盾しないことが認識されるであろう。
【0026】
本明細書で使用される場合、「局所投与」という用語は、薬物、化合物、組成物などの物質を、そのような処置に適した任意の形態、例えばゲル、液体、またはペーストの形態で、哺乳動物の皮膚または粘膜に適用することを指す。本文脈において、局所投与は、眼のウイルス感染を治療または予防するのに適した任意の様式での、眼の表面への薬物、化合物、組成物などの適用を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語およびその活用形、例えば「治療すること」、「治療」は、症状の重症度および/または頻度の減少をもたらし、症状および/またはそれらの根本原因を排除し、および/または損傷の改善または修復を促進するために、有害な症状、障害または疾患に罹患している臨床的徴候性の個体に、薬剤または製剤を投与することを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、症状または障害に関する「予防」という用語は、例えば、その症状を有するリスクを有する対象において、本明細書に記載のそのような眼障害または症状の発症を遅延または予防することを指す。またいくつかの実施形態では、症状を「予防すること」は、例えば、症状について診断を受けている対象における、該症状の進行または重症化を阻害すること、減少させること、または遅らせることを包含し得る。そのような障害または症状の発症、進行、または重症度は、その症状に関連する少なくとも1つの徴候の増加、またはその症状によって影響を受ける器官(単数または複数)の機能の低下を検出することによって判定することができる。
【0029】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という語句は、任意の医学的治療に適用可能な、合理的な利益/リスク比で、対象の細胞の少なくとも亜集団において何らかの所望の治療効果をもたらすのに有効な、本明細書に記載の化合物または化合物を含む組成物の量を指す。例えば、治療有効量の化合物または該化合物を含む組成物は、本明細書中に記載の結膜炎の少なくとも1つの症状において統計学的に有意な測定可能な変化をもたらすのに十分な量であり得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る塩」という用語は、薬学的に許容され得る非毒性の塩基または酸から調製される塩を指す。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む薬学的に許容され得る非毒性塩基から好適に調製することができる。このような無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第一および第二)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第一および第二)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が挙げられる。薬学的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、ならびに環状アミンおよび置換アミン、例えば天然に存在するおよび合成された置換アミン、の塩が挙げられる。塩を形成できる他の薬学的に許容され得る有機非毒性塩基としては、イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N´-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る非毒性酸」という用語は、無機酸、有機酸、およびそれらから調製される塩、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などを含む。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が好ましい。
【0032】
1つ以上の指定された要素またはステップを「含むこと」(または「含む」)として本明細書に記載される組成物または方法は、オープンエンドであり、指定された要素またはステップは必須であるが、該組成物または方法の範囲内で、他の要素またはステップを追加することができることを意味する。また冗長さを回避するために、1つ以上の指定された要素または工程を「含むこと」として記載される任意の組成物または方法は、対応する、より限定された、同じ指定された要素または工程「から本質的になること」(または「から本質的になる」組成物または方法)も意味し、それはすなわち、組成物または方法が、指定された必須要素を含み、かつ、組成物または方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素または工程も含み得ることを意味すると理解される。また、1つ以上の指定された要素またはステップを「含む」または「から本質的になる」として本明細書に記載される任意の組成物または方法は、対応する、任意の他の要素またはステップを除外して、指定された要素またはステップ「からなること」(または「からなる」)、より限定された、クローズドエンドの組成物または方法を意味することも理解される。本明細書に開示される任意の組成物または方法では、任意の指定された必須要素または工程の既知のまたは開示された均等物が、それぞれその要素または工程の代わりに使用され得る。
【0033】
フィロシクロビル(シクロプロパビル、2-アミノ-9-{(Z)-[2,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロプロピリデン]メチル}-3、9-ジヒドロ-6H-プリン-6-オンとも呼ばれる)およびその塩は、以下の構造を有する:
【化1】
【0034】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であり得る。「患者」または「それを必要とする対象」は、疾患または障害に罹患している哺乳動物を指す。「患者」という用語は、ヒトのおよび獣医学的な対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】アデノウイルス5(AdV5)に対するフィロシクロビルの抗ウイルス活性(閉じた記号)および細胞傷害性(開いた記号)を示す用量反応曲線である。
【
図2】アデノウイルス6(AdV6)に対するフィロシクロビルの抗ウイルス活性及び細胞毒性を示す用量反応曲線である。
【
図3】アデノウイルス5に感染し、フィロシクロビルで処理したA549細胞の免疫蛍光アッセイである。
【
図4】アデノウイルス6に感染し、フィロシクロビルで処理したA549細胞の免疫蛍光アッセイである。
【
図5】ハムスターに経口(PO)または静脈内(IV)投与したフィロシクロビルのバイオアベイラビリティを示す図である。
【
図6A-6B】AdV6に感染し、10mg/kg、30mg/kg、60mg/kgまたは100mg/kgのフィロシクロビルで処理したシリアンハムスターの生存率(6A)および平均体重変化(6B)を示す。6A:生存。AdV6+ビヒクル 対 AdV6+フィロシクロビル10mg/kgまたは30mg/kg p=0.0124(ログランク)。6B:平均体重変化。群平均および平均の標準誤差を示す。瀕死の動物を群から屠殺した後、その群について計算された平均値はなかった。AdV6+ビヒクル 対 AdV6+フィロシクロビル10mg/kgまたは30mg/kg p<0.0001(二元配置ANOVA);10mg/kgのAdV6+フィロシクロビル 対 ビヒクル+ビヒクルまたはAdV6+フィロシクロビル30mg/kg p=0.0286。
【
図7】感作の5日後におけるシリアンハムスターのトランスアミナーゼ(ALT)レベルを示す。フィロシクロビルによる処理は肝臓の病態を軽減する。記号は個々の動物からの値を示す。水平バーは幾何平均を表す。AdV6+ビヒクル群の空の記号は、瀕死の動物から採取したサンプルを示す。
【
図8】感作の5日後のシリアンハムスターの肝臓におけるAdV負荷のレベルを示す。フィロシクロビルによる処理は、肝臓におけるAdV6複製を阻害する。記号は個々の動物からの値を示す。水平バーは幾何平均を表す。NQ:定量不能、ND:検出不能。
【
図9】1%のフィロシクロビル(1A)、0.5%のフィロシクロビル(1B)、0.5%のシドホビル(1C)およびビヒクル(対照)(1D)で14日間処理したウサギからのアデノウイルス陽性培養物における比較を示す。
【
図10】1%のフィロシクロビル(1A)、0.5%のフィロシクロビル(1B)、0.5%シドホビル(1C)およびビヒクル(対照)(1D)で14日間処理したウサギからのアデノウイルス排出の持続時間を示す。
【
図11】1%のフィロシクロビル(1A)、0.5%のフィロシクロビル(1B)、0.5%シドホビル(1C)およびビヒクル(対照)(1D)で14日間処理したウサギからのアデノウイルスの眼における力価の中央値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ヒトアデノウイルスは、ヘルペスウイルス科とは異なるアデノウイルス科に属する。例えば、アデノウイルスは二本鎖DNAウイルスであるが、ヘルペスウイルスとは異なり、正二十面体ヌクレオカプシドでエンベロープされておらず、その外面に細長い繊維タンパク質を担持する。アデノウイルスは、ヒトアデノウイルスA~Gと呼ばれる7つの種に分類される。これらのウイルスは、主に結膜、すなわち、眼の前面を覆い、眼瞼の内側、上下気道、または消化管を裏打ちする粘膜に感染し、ヘルペスウイルスによって引き起こされるものとは異なる一連の臨床症状を引き起こす。アデノウイルスは、ウイルスがコードするキナーゼをコードするとは報告されておらず、これは、フィロシクロビル活性化のための新規な機構を暗示している。
【0037】
急性結膜炎は一般的な症状であり、米国では毎年600万人が罹患すると推定されており(Udeh他、2008、前出)、アデノウイルスが最も一般的な原因である。アデノウイルス結膜炎は、著しい不快感および生産性の喪失を引き起こし得る。ほとんどが自己限定的であるが、場合によっては、長期の免疫介在性続発症からの合併症をもたらし得る(Ford他、1987、前出)。アデノウイルス関連結膜炎を治療するために承認されている抗ウイルス薬は存在しない。
【0038】
アデノウイルス科に加えて、結膜炎の原因となることが知られている他のウイルス株としては、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルスおよびBKウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。個体はまた、これらのウイルスの組み合わせへの曝露から結膜炎を発症し得る。
【0039】
したがって、現在において、結膜炎、特に複数のアデノウイルスの株によって引き起こされることが知られている結膜炎のための安全かつ効果的な治療が必要とされている。
【0040】
本明細書中に記載されるデータは、当技術分野で公知の結膜炎のインビトロアッセイおよびインビボウサギモデルの両方を利用して、フィロシクロビルが、患部に局所投与されたときに、すなわち眼に適用されたときに、眼のウイルス関連疾患を治療および予防するための安全かつ効果的な治療薬を提供することを実証している。好ましい実施形態では、ウイルス感染はアデノウイルス株によって引き起こされる。
【0041】
本明細書に記載されるように、フィロシクロビルは、5μM以下のIC50値および好ましくは100μM以上の最小哺乳動物細胞毒性(CC50)で、アデノウイルス感染の用量依存的阻害を示すことが実証されている。
【0042】
したがって、一態様では、本発明は、眼投与に適した薬学的に許容され得る担体または賦形剤中に製剤化された小分子阻害剤フィロシクロビル(FCV)の局所投与を含む、哺乳動物における眼のアデノウイルス感染症を治療および/または予防するための新規な方法の発見に関する。本明細書に記載のデータは、フィロシクロビルが、アデノウイルス3、4、5、6、7、7a、8、37、54および64を含む結膜炎に関連する多種多様なアデノウイルス株に対する、安全かつ有効な阻害剤であることを実証している。
【0043】
有利なことに、アデノウイルス科ファミリーのウイルスは非常に密接に関連しており、これらの多くの株に対するフィロシクロビルの実証された抗ウイルス活性は、フィロシクロビルが眼の疾患に関連するアデノウイルス科ファミリー内のすべてのウイルスに対して同様の阻害効果を有することの有力な証拠である。したがって、別の実施形態では、本発明は、アデノウイルス株1、2、3、4、5、6、7、7a、8、9、10、11、13、14、15、16、17、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、53、54、56および/または64による哺乳動物の眼への感染を治療または予防する方法におけるフィロシクロビルの使用に関する。特に好ましい実施形態では、本発明は、アデノウイルス株3、4、5、6、7、7a、8、37、54、および/または64によって引き起こされる眼のアデノウイルス感染症を治療するのに有効である。本明細書中に記載される方法は、眼科用の薬学的に許容され得る担体または賦形剤において製剤化される、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物の局所投与を含む。
【0044】
したがって、1つの実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス3によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0045】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス4によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0046】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス5によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0047】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス6によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0048】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス7によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0049】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス7aによって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0050】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス8によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0051】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス37によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0052】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス54によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0053】
別の実施形態では、本方法は、眼科的に許容され得る組成物もしくは担体中に製剤化された、薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤中に製剤化された、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、アデノウイルス64によって引き起こされる結膜炎の治療および予防に関する。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、眼投与に適した薬学的に許容される担体または賦形剤に製剤化されたフィロシクロビルの局所投与を含む、哺乳動物における、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルスおよびBKウイルスによって引き起こされる眼感染症を治療および/または予防するための新規な方法の発見に関する。以下の表に示されるように、フィロシクロビルは、CMV、HHV-6A、HHV-6B、EBV、HHV-8、VZVによる感染に対して≦10μMのEC50値、およびBKウイルスおよびJCウイルスによる感染に対して≦50μMのEC50値を有する眼の疾患に関連するいくつかのアデノウイルスおよび他のウイルス株に対する有効な阻害剤であることが示されている。
【0055】
【0056】
別の実施形態では、本発明は、アデノウイルスによって引き起こされる眼感染症を治療または予防する方法で使用するための医薬の製造におけるフィロシクロビルの使用であって、該方法が、眼科用の薬学的に許容され得る担体または賦形剤中に製剤化されたフィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物の眼への局所投与を含む、使用に関する。好ましい実施形態では、本方法は、アデノウイルス株1、2、3、4、5、6、7、7a、8、9、10、11、13、14、15、16、17、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、53、54、56および/または64によって引き起こされる眼感染症を治療するのに有効である。
【0057】
特に好ましい実施形態では、本方法は、アデノウイルス株3、4、5、6、7、7a、8、37、54、および/または64によって引き起こされる眼のアデノウイルス感染症を治療するのに有効である。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、眼投与に適した薬学的に許容され得る担体または賦形剤中に製剤化されたフィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩の局所投与を含む、哺乳動物における、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、HHV-6Aウイルス、HHV-6Bウイルス、HHV-8ウイルス、JCウイルスおよびBKウイルスによって引き起こされる眼感染症を治療または予防する方法に使用するための医薬の製造におけるフィロシクロビルの使用に関する。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、眼投与に適した薬学的に許容され得る担体または賦形剤中に製剤化されたフィロシクロビルまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物の局所投与を含む、哺乳動物におけるアデノウイルス関連眼感染症を治療するためのフィロシクロビルの使用に関する。
【0060】
感染した個体への本発明の眼科用組成物の送達のために、眼への適用に適した複数の投与様式が企図される。有効成分は、有効成分の適切な製剤を調製し、当業者に周知の手順を利用することによって、点眼剤、軟膏、クリーム、ゲル、徐放性担体、結膜嚢に移植する緩速溶解カプセルとして結膜嚢に、コンタクトレンズからの投与もしくは放出を介して、注射によって結膜下に、または注射によって硝子体内に、投与することができる。一実施形態では、製剤は、適切な非毒性の薬学的に許容される成分を用いて調製される。これらの成分は、点眼剤、眼軟膏、結膜下注射剤および硝子体内注射剤の調製において当業者に公知である。これらの成分のいくつかは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,1985(当分野の標準的な参考文献)に見出すことができる。適切な担体の選択は、所望の点眼剤、眼軟膏、結膜下、硝子体内の剤形、例えば溶液、スプレー、ドロップ、ゲル、ペースト、パッチの実際の性質に依存し得る。
【0061】
「眼への適用に適する」とは、製剤の任意の成分が、眼または治療される対象において、長期にわたる有害作用を引き起こさないことを意味する。投与時の軽微な刺激または「刺痛」などの一過性の影響は、長期にわたる有害な影響なしに起こり得る。ウイルス性結膜炎に罹患する対象の眼への本発明のフィロシクロビル組成物の投与様式としては、以下のものが挙げられる:
【0062】
A.局所眼科薬物形態:
・ 液体眼科薬物形態:
・ 点眼剤
・ 眼科用溶液
・ 懸濁液/ナノ懸濁液
・ エマルジョン/マイクロエマルジョン
・ 半固体眼科薬物形態
・ in situゲル
・ 眼軟膏
・ 固体眼科薬物形態
・ 薬物でコーティングされたコンタクトレンズ
・ 眼インサート
・ 可溶性眼科薬物インサート(アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、およびエチルアクリレートから製造された小さな楕円形ウエハの形態の可溶性眼内インサート。)
・ ミニディスク/眼治療システム(プロファイル加工された、外形が凸状であり、眼表面と接触する側から凹状である、直径4~5mmのコンタクトレンズと同様の剤形。)
・ 人工涙液インサート
・ コラーゲンシールド
・ ミニタブレット(結膜嚢への適用後にゲルに移行し、有効成分と眼球表面との間の接触期間を延長する、生分解性の固体薬物形態)
・ マルチコンポーネント薬物送達システム
・ ナノ粒子および微粒子
・ ミセル/ナノミセル
・ リポソーム
・ ニオソーム(化学的に安定であり、生分解性であり、生体適合性であり、非免疫原性であり、非イオン性界面活性剤で構築され、親水性粒子および疎水性粒子の両方に使用される2層担体)、およびディスコソーム(ニオソームの修飾形態)
・ デンドリマー
・ 他の眼科薬物形態
・ フィルターペーパーストリップ
・ スプレー
・ 眼イオン導入
【0063】
B.注入(硝子体内、結膜下、眼球後、眼球周囲、テノン嚢下、前房内)
【0064】
C.インプラント
【0065】
D.マイクロニードル
【0066】
本明細書に記載の医薬組成物中のフィロシクロビルの濃度は、全組成物の約0.001%~30%、または約0.001%~20%、または約0.001~10%重量の範囲である。別の実施形態では、フィロシクロビルの量は、全医薬組成物の約0.001~5重量%の範囲である。
【0067】
本明細書中に記載されるフィロシクロビル製剤のための薬学的に許容され得る塩としては、グルコン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、硫酸塩および塩酸塩が挙げられる。本明細書に記載される化合物の塩は、例えば、塩基化合物を溶液中の所望の酸と反応させることによって調製することができる。反応が完了した後、適切な量の、塩が溶解できない溶媒を添加することによって、塩を溶液から結晶化させる。いくつかの実施形態では、塩酸塩は、遊離塩基のエタノール溶液に塩化水素ガスを通すことによって作製される。
【0068】
眼投与用の本発明の水性懸濁液または溶液/懸濁液は、懸濁化剤として1つ以上のポリマーを含むことができる。例示的なポリマーとしては、水溶性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、および架橋カルボキシル含有ポリマーなどの水不溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム、カルボキシビニルポリマー(アクリル酸ポリマー)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、ポリエチレンオキシド、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウムおよびデキストランが挙げられ得る。
【0069】
当業者に公知の任意の賦形剤を本発明の眼科用製剤に含めることにより、組成物の眼における保持性を増強できる。好ましくは、フィロシクロビルを含む組成物は、眼への局所適用時に、適用された表面上に一定時間保持されつつ化合物の眼環境への拡散を行うことにより、フィロシクロビルの抗ウイルス活性を効果的にし、眼液によって迅速に洗い流されることを防止できる。例示的な賦形剤としては、モノマー性のポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール)、ポリマー性のポリオール(例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、デキストラン(例えばデキストラン70))、ゼラチンなどの水溶性タンパク質、およびビニルポリマー(例えばポリビニルアルコール、ポリビニルポビドン/ピロリドンポビドン)およびカルボマー(例えばカルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸およびその塩などの多糖類、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々なポリマー、ビニルポリマー、およびアクリル酸ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
眼科用組成物は、ゲル化剤または粘度制御剤を含むことができ、ゲル化剤または粘度制御剤は、それらが涙液と接触するとき(例えば、まばたき等による流涙のとき)に粘度を増加させるゲル化剤を含む。かかるゲル化剤は、涙液排出による組成物の損失を減少させ、組成物による保持時間を増加させ、それにより眼または眼瞼の上皮層への吸着を増加させるために使用され得る。適切なゲル化剤としては、ジェランガム、特に低アセチル化ジェランガム、アルギネートガム、またはキトサンが挙げられる。粘度制御剤としては、粘度を増加させることができ、眼科的に許容され得る天然多糖類、天然ガム、修飾天然ポリマー、合成ポリマー、タンパク質および合成ポリペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの粘度制御剤は、粘膜模倣剤である。別の実施形態では、少なくとも1つの粘度制御剤は、カルボキシビニルポリマーである。
【0071】
フィロシクロビル組成物は、単純な水溶液もしくは担体中に製剤化されてもよく、あるいは、例えば、眼科的に許容され得る塩および緩衝剤、ならびに保存剤、ゲル化剤、粘度制御剤、眼科用潤滑剤、粘膜付着性ポリマー、界面活性剤、抗酸化剤などの他の成分を、眼への局所投与に適する溶液、ゲル、ローション、または軟膏に含めることによって、生理学的に適合する浸透圧およびpHを有するよう製剤化されてもよい。
【0072】
眼科的に許容され得る組成物または担体は、水溶液、非水溶液、またはエマルジョンなど(例えば、水、油、ワックス、グリースもしくはペトロラタム、またはそれらの組み合わせ)を含む。例示的な水性担体としては、限定されないが、水、緩衝水、0.8%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸、リン脂質担体もしくは人工涙液担体、またはそのような担体の混合物などが挙げられる。本明細書で使用される場合、「リン脂質」という用語は、リン脂質担体のリン脂質を指す。例示的なリン脂質担体および人工涙液担体としては、限定されないが、米国特許第6,645,978号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、眼科用担体は、膏薬または軟膏担体であり得る。かかる膏薬または軟膏は、典型的には、1つ以上の4-アミノキノリン化合物を無菌の薬学的に許容され得る膏薬または軟膏の基剤、例えば鉱油-白色ワセリン基剤に溶解または懸濁されたものを含む。膏薬または軟膏組成物では、無水ラノリンも製剤中に含まれ得る。チメロサールまたはクロロブタノールも、抗菌剤として、かかる軟膏組成物に添加され得る。
【0074】
本発明のさらに別の実施形態では、眼科用担体は、米国特許第6,254,860号に記載されるように、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、ポリオキシエチル化ヒマシ油、鉱油、ワセリン、ジメチルスルホキシド、アルコール、リポソーム、シリコーン流体、およびそれらの混合物であり得る。
【0075】
一実施形態では、眼科用担体は、米国特許第6,217,896号に記載されるような結膜インサートである。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,559,343号明細書に記載されるように、カフェイン、テオブロミン、またはテオフィリンなどの眼科的に許容され得るキサンチン誘導体を含み得る。
【0077】
本明細書に記載の組成物は、任意に、塩化ナトリウムおよび濃グリセロールなどの張性付与剤、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの粘度付与剤を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、界面活性剤、胆汁酸などの適切な吸収促進剤、安定剤(例えば亜硫酸水素塩およびアスコルビン酸塩などの酸化防止剤)および/またはエデト酸ナトリウムなどの金属キレート剤、薬物の溶解性増強剤(例えばポリエチレングリコール)を含み得る。
【0079】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の眼科用組成物は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、植物油(例えばポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油)などの界面活性剤、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアリルフェニルエーテル(例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル、またはそれらの混合物)、または米国特許第5,951,971号に記載されるようなカルボキシビニルポリマー、ポリビニルポリマー、ならびにポリビニルピロリドンなどの増粘剤を含み得る。
【0080】
本明細書に記載の組成物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第95/03784号に開示されるように、ポリマーの浸食を阻害するこのより薬物の放出を遅延させる相互作用剤としてポリマー含有組成物に含まれ得る、少なくとも2つの解離性水素基を有する少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含み得る。他の例示的な相互作用剤としては、ホウ酸、乳酸、オルトリン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸およびギ酸グリセロリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
眼科用溶液は、蒸留水、塩基水溶液、または任意の他の許容され得る塩基、等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝液、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ステアリン酸ポリオキシル40、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウムおよびエデト酸ナトリウム等の安定剤、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、塩化ナトリウム、ホウ酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル(ソルビン酸エステル、安息香酸エステル、プロピオン酸エステル)、クロロブタノール、ベンジルアルコール、水銀剤、パラベン(例えば4-ヒドロキシ安息香酸プロピル(またはプロピルパラベン)、メチル-P-ヒドロキシ安息香酸(またはメチルパラベン)、およびそれらの混合物を使用して調製することができる。いくつかの実施形態では、保存剤としては、塩化ベンザルコニウムまたはチメロサールが挙げられる。
【0082】
浸透圧調節剤として有用な、適切な眼科的に許容され得る塩としては、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムのカチオンと、塩化物、シトレート、アスコルベート、ボレート、ホスフェート、重炭酸、硫酸、チオ硫酸または重亜硫酸イオンと、を有する塩が挙げられる。適切な塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。浸透圧を調節するのに適する賦形剤としては、糖、例えばデキストロース、ラクトース、キシリトール、マンニトールおよびグリセリンが挙げられる。
【0083】
適切な眼科的に許容され得るpH調整剤および/または緩衝剤としては、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基、ならびにクエン酸-デキストロース、重炭酸ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝液、またはアミノ酸が挙げられる。かかる酸、塩基および/または緩衝剤は、組成物のpHを眼科的に許容され得る範囲に維持するのに必要な量で含まれ得る。
【0084】
適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルピリジニウムなどの安定化アンモニウム化合物、酢酸フェニル水銀、イミダゾリジニル尿素などの水銀化合物、メチルパラベンエチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンなどのパラベン、フェノキシエタノール、クロロフェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、クロロブタノール、クロロクレゾール、フェニルエチルアルコール、エチレンジアミン四酢酸、ソルビン酸、およびそれらの塩が挙げられる。
【0085】
流涙を促進するのに適する潤滑剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。適切な粘膜付着性ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、ポリエチルオキシド、アルギン酸ナトリウムおよびデキストリンが挙げられる。適切な眼科的に許容され得る界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油(例えばポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチルアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル(例えばオクトキシノール10およびオクトキシノール40)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、眼科用組成物は、好ましくは約0.001重量%~約5重量%の範囲の量で存在する浸透促進剤をさらに含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、化学的安定性を高めるために少なくとも1つの酸化防止剤を含み得る。例示的な酸化防止剤としては、限定されないが、アスコルビン酸およびその誘導体、メタ重亜硫酸ナトリウム、ビタミンEおよびその類似体、ならびにブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、血管収縮剤をさらに含む。例示的な血管収縮薬としては、テトラヒドロゾリン、エフェドリン、ナファゾリン、フェニレフリン、および/またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の眼科用組成物は、眼科用湿潤剤および/または眼科用希釈剤を含む。眼科溶液に一般的に使用される湿潤剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、マンニトール、ポリビニルアルコールまたはヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。希釈剤としては、水、蒸留水、生理食塩水、滅菌水、人工涙液などが挙げられ、湿潤剤は約0.001%~約30%の量で存在する。
【0090】
別の実施形態では、眼科用医薬組成物は、眼の疾患の治療に使用される抗炎症剤、抗生物質、抗ウイルス剤、眼降圧剤、局所麻酔剤、毛様体筋麻痺剤、または瞳孔拡張剤などの、1つ以上の追加の活性眼科用医薬剤をさらに含む。
【0091】
フィロシクロビルを含む本明細書に記載される本発明の組成物はまた、フィロシクロビルを含む眼科的に適切な製剤を、直接コンタクトレンズに、またはコンタクトレンズ用の洗浄、すすぎ、保存、消毒、再湿潤および潤滑溶液などのコンタクトレンズ用溶液に、添加することによって、コンタクトレンズを介して投与され得る。これにより、コンタクトレンズから直接眼にフィロシクロビル組成物を拡散させて眼環境に放出することができ、コンタクトレンズなしよりも長期間にわたって組成物を送達することができる。したがって、別の態様において、本発明は、フィロシクロビルまたはその薬学的に許容され得る塩を含むコンタクトレンズ溶液を提供する。溶液のpHは、眼およびコンタクトレンズに適合するように調整されるべきであり、例えば、溶液のpHは、6.0~8.0の間、好ましくは6.8~7.9の間、最も好ましくは7.0~7.6の間とすべきである。
【0092】
本明細書に記載される組成物はまた、米国特許第6,331,313号明細書に教示されるような生体適合性かつ移植可能な制御放出薬物送達デバイスを介して投与され得る。
【0093】
本明細書中に記載される組成物はまた、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17 th edition,1985,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,およびInternational Program on Chemical Safety(IPCS)に記載されている、持続放出形態で、または持続放出薬物送達システムから投与それてもよい。
【0094】
フィロシクロビル組成物の眼科投与は、症状の重症度に依存する。例えば、製剤は、1~6回/日、1~4回/日、1~3回/日、または少なくとも1回/日、眼に投与され得る。予防的投与は、結膜炎に罹患する危険性が持続する限り、1~30日間、1~20日間、1~10日間などの経過にわたって1回以上/日で行われ得る。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、結膜炎の治療または予防のための、1つ以上の公知の抗ウイルス剤と組み合わせたフィロシクロビルの使用に関する。追加の抗ウイルス剤(複数可)は、フィロシクロビルの投与前、投与と同時に、または投与後に投与され得る。本方法での使用に適した抗ウイルス剤としては、シドホビル、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、ザルシタビン、アロブジン、スタンピジン、リバビリンシクロスポリン2’,3’-ジデオキシシチジン(ddC)、6-アザシチジン、(S)-HPMPC、(S)-HPMPAおよび2-nor-サイクリックGMPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
別の実施形態では、本発明は、結膜炎の治療または予防のための、1つ以上の公知の抗炎症剤と組み合わせたフィロシクロビルの使用に関する。追加の抗炎症剤(複数可)は、フィロシクロビルの投与前、同投与と同時、または同投与後に投与され得る。本方法での使用に適した適切な抗炎症剤としては、アスピリン、ジフルニシルおよびサルサラートなどのサリチレート、イブプロフェンデキシブプロフェン、フェノプロフェン、ケタプロフェン、デクスケトプロフェン、フルビプロフェン、オキサプロジン及びラキソプロフェンなどのプロピオン酸誘導体、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケオロラック、ジクロフェナクおよびナブメトンなどの酢酸誘導体、ピロキシカム、マロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロモキシカンおよびイソキシカムなどのエノール酸誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸およびトルフェナム酸などのフェナム酸誘導体、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびフィロキシブなどのCOX-2阻害剤、が挙げられる。
【0097】
別の実施形態では、本発明は、1つ以上の公知の免疫調節剤とのフィロシクロビルの使用に関する。追加の免疫調節剤(複数可)は、フィロシクロビルの投与前、投与と同時に、または投与後に投与され得る。本方法での使用に適した免疫調節剤としては、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、ラパマイシン、およびレフルノミドが挙げられる。
【0098】
別の実施形態では、本発明は、1つ以上の公知の抗菌剤と組み合わせた、結膜炎の治療または予防のための方法におけるフィロシクロビルの使用に関する。追加の抗菌剤(複数可)は、フィロシクロビルの投与前、同投与と同時、または同投与後に投与され得る。本方法での使用に適した抗菌剤としては、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、トリメトプリム-ポリミキシンB、レボフロキサシン、ナタマイシン、トブラマイシン、バシトラシン、トリフルリジン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、ベシフロキサシン、アジスロマイシン、クロラムフェニコール、バシトラシン-ポリミキシンB、ポビドンヨード、スルファセタミドナトリウム、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン-ネオマイシン-ポリミキシンB、グラミシジン-ネオマイシン-ポリミキシンB、オフロキサシン、およびオキシテトラサイクリン-ポリミキシンBが挙げられる。
【0099】
本明細書に記載される化合物は、その濃度が異なっても、本明細書に記載される化合物による同様の結果を得ることができ、典型的には、限定されないが、2、3、4、5、6、7、8、9および10回/日を含む1~10回/日で投与される。患者に投与される製剤の量(例えば、製剤の滴数)(典型的には、スポイトが使用される場合、用量単位あたり1または2滴)もまた、製剤を投与するために使用される眼ディスペンサ、および結合試薬の濃度、および、適切な場合には、製剤中の抗炎症剤に応じて変化し得る。医薬および医療分野の平均的な当業者であれば所与の眼感染症の治療または眼感染症の予防のための適切な投与レジメンを特定することが、単にデザイン選択および最適化の問題であることを理解するであろう。
【0100】
一態様では、本発明は、少なくとも本発明によるフィロシクロビル、またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくは多形と、
a)任意の、抗ウイルス活性、抗炎症活性、免疫調節活性、抗菌活性のうちの1つ以上を有することが知られている少なくとも1つの追加の薬剤、
b)アデノウイルス関連疾患を治療するための説明書、
c)アデノウイルス感染の治療に関連して該化合物を投与するための説明書、または
d)アデノウイルス関連疾患を治療することが知られている少なくとも1つの薬剤と共に化合物を投与するための説明書、
のうちの1つ以上と、
を含むキットに関する。
【0101】
キットはまた、他のコンポーネントと一緒に包装され、一緒に製剤化され、および/または一緒に送達される、化合物および/または製品を含むこともできる。例えば、薬品製造業者、薬品再販売業者、医師、配合業者、または薬剤師は、開示された本発明の化合物および/または製品と、患者に送達するための別のコンポーネントとを含むキットを提供することができる。
【0102】
さらなる態様では、キットは複数の剤形をさらに含み、該複数の剤形は1つ以上の用量単位を含み、各用量単位は、抗ウイルス活性を有することが知られている化合物および薬剤を所定量で含む。別の態様では、キットは複数の剤形をさらに含み、複数の剤形は1つ以上の用量単位を含み、各用量単位は、化合物および抗ウイルス活性を有することが知られている薬剤を有効量で含む。
【0103】
さらなる態様では、有効量は治療有効量である。なおさらなる態様では、有効量は予防有効量である。
【0104】
結膜炎についてのインビトロモデルおよびインビボモデルの両方を使用して下記に記載されるデータは、フィロシクロビルが結膜炎に伴うアデノウイルス感染症の治療または予防のために効果的であることを明らかにする。
【0105】
本明細書中に記載されるデータはまた、フィロシクロビルが、ヘルペスウイルスならびにポリオーマウイルスに対する広い活性スペクトル活性を付与された汎アデノウイルス治療薬であることを示し、したがって、フィロシクロビルの治療的投与は、アデノウイルスの複数の株ならびにいくつかの他のウイルスによる感染を治療または予防するのに有効である。以下に記載されるように、フィロシクロビルは、細胞変性効果(CPE)減少アッセイ、ニュートラルレッド生存アッセイ、および免疫蛍光アッセイなどのいくつかのアッセイを使用して、アデノウイルスの複数の株ならびに他のウイルスによる感染を予防するのに有効であることが実証されている。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は、本開示の主題の態様を例示するために含めたものである。本開示および当業者の一般的な技術的レベルに鑑み、当業者であれば、以下の実施例が例示のみを意図しており、本明細書で開示される本発明から逸脱することなく多数の変更、修正、および改良を行うことができることを理解するであろう。
【0107】
実施例1 フィロシクロビルによるアデノウイルス5(AdV5)の阻害を測定するための、細胞変性効果(CPE)減少アッセイ
【0108】
ヒト包皮線維芽細胞(HFF)の調製および培養
ヒト包皮組織は、施設内審査委員会の承認を得て、アラバマ大学バーミンガム組織調達施設から入手した。組織を、10%ウシ胎児血清(FBS、HyClone,Inc.,Logan,UT)および標準濃度のL-グルタミン、アンホテリシンB(ファンギゾン)およびバンコマイシンと共に補充されたEarle’s塩を含む最小必須培地(MEM)からなる細胞培養培地中、4℃で保存した。次いで、組織をリン酸緩衝生理食塩水に入れ、細かく刻み、リンスして赤血球を除去した。次いで、組織断片をトリプシン-EDTA溶液に再懸濁し、37℃でインキュベートして細胞を分散させ、次いで遠心分離によって回収した。次いで、細胞ペレットを4mlの培養培地に再懸濁し、25cm2組織培養フラスコに入れ、37℃で24時間インキュベートした。次いで、培養培地を新鮮な培地と交換し、コンフルエントな細胞単層が形成されるまで細胞の状態を毎日モニターした。次いで、HFF細胞を、10%FBS、L-グルタミン、ペニシリンおよびゲンタマイシンを補充したEarle’s塩を含むMEM標準増殖培地中で連続継代によって増殖させた。細胞のロット毎に、マイコプラズマ感染がないことを確認し、10継代時前のものを日常的に継代し、またはアッセイに使用した。
【0109】
抗ウイルスアッセイ
抗ウイルス性および細胞傷害性のデータは、抗ウイルス活性および統計データの正確な推定値を得るために、各ウイルスについて一連の3~5回の別々の実験により得た。各アッセイは、実験の完全性を期すために、陽性対照化合物および陰性対照化合物、ならびに感染対照および非感染対照を含めた。正確な選択指数(SI)値を得ることができるように、同じ数の細胞および同等の濃度の化合物への曝露を採用して、各アッセイプレートで細胞傷害性の同時評価を行った。すべての液体処理工程をBioMek4000で行いることで、アッセイの効率を顕著アップさせ、分析者の手動操作時間を短縮した。
【0110】
CPE減少アッセイを、Earle’s塩、2%FBS、ならびに標準濃度のL-グルタミン、ペニシリンおよびゲンタマイシンを含むMEMからなるアッセイ培地で、384ウェルプレート中のヒト包皮線維芽細胞(HFF)の単層(5000個/ウェル)において行った。5000個の細胞を384ウェルマイクロタイタープレートに播種し、加湿された5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間インキュベートし、コンフルエントな単層を形成させた。フィロシクロビルを含む抗ウイルス試験化合物の希釈物を、プレート内で直接、複製したウェルで、一連の5倍希釈で調製し、300~0.1μMまたは10~0.003μMの範囲の最終濃度とし、これにより、弱い抗ウイルス活性または強力な抗ウイルス活性を有する未知化合物の抗ウイルス活性の検出を容易にするための、広いダイナミックレンジの化合物濃度が得られる。
【0111】
細胞単層を、約0.005PFU/細胞の感染多重度(MOI)で、AdV5を含むウイルス株に感染させた。感染細胞を、ウイルス対照ウェルにおいて100%CPEが観察されるまで37℃でインキュベートした。細胞病理を、CellTiter-Glo(登録商標)試薬(Promega,Madison,WI)の添加によって判定した。CPEを50%低下させるのに十分な抗ウイルス試験化合物の濃度(EC
50)を、Microsoft(登録商標)Excelの標準的な方法を用いて実験データから補間した。また、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて細胞毒性を判定し、細胞生存率を50%低下させた試験化合物の濃度(CC50)をデータから計算し、選択指数(SI)値を抗ウイルス活性の尺度としてCC50/EC50として計算した。結果を以下の表1および
図1に示す。
【0112】
【0113】
表1に示される結果は、フィロシクロビル(FCV)が、他のすべての試験化合物よりも有意に改善されたアデノウイルス5に対する阻害活性(SI=43)を示し、次に有効な抗ウイルス剤であるシドホビル(CDV)(SI=24)よりも少なくとも2倍強力であり、ガンシクロビル(GCV)(SI≧1.5)よりも有意に良好であったことを実証している。
【0114】
0.01μM~100μMの範囲のフィロシクロビル濃度の関数としての、AdV5複製の減少パーセントを
図1に示す。
図1の結果は、0.2μMという低い濃度のフィロシクロビルがAdV複製を減少させるのに有効であることを実証している。
【0115】
アデノウイルス6、アデノウイルス7およびアデノウイルス8に対してフィロシクロビルを用いて同様の実験を行った。結果を以下の表2に示す。フィロシクロビルは、アデノウイルス8に対する強力な阻害を示した(SI≧61)。
【0116】
【0117】
実施例2 フィロシクロビルによるアデノウイルス6(AdV6)の阻害を測定するためのニュートラルレッド生存アッセイ
【0118】
中性赤血球細胞傷害性アッセイは、細胞生存率または薬物の細胞傷害性を検出するために使用される。このアッセイの原理は、色素ニュートラルレッドの取り込みによる生細胞の検出に基づく。ニュートラルレッドは、生存細胞中のリソソームを染色するユーロージン色素である。生細胞は能動輸送を介してニュートラルレッドを取り込み、そのリソソームに色素を取り込むことができるが、非生細胞はこの発色団を取り込むことができない。その結果、洗浄後、生細胞は、酸性抽出条件下で組み込まれた色素を放出することができる。放出された色素の量を使用して、生細胞の総数または薬物細胞傷害性を判定することができる。したがって、細胞傷害性は、試験される化合物への曝露後のニュートラルレッドの取り込みの濃度依存的減少として表される。
【0119】
ニュートラルレッド生存アッセイを96ウェルフォーマットで行った。簡潔には、A549腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞を、感染の1日前にウェルあたり6×103細胞の濃度で播種した。5×103PFU/ウェル(感染時の推定0.5PFU/細胞)でAdV6への感染を実施した。対照として薬物なしの最終列を有する、別個の96ウェルプレート上で、フィロシクロビルを1:3で連続希釈した。AdV6感染は、各薬物濃度について9つの複製ウェルとして実施し、各薬物濃度について3つの非感染薬物対照ウェルを設けた。AdV6による感染の直前に、フィロシクロビル希釈物を細胞プレートに添加した。
感染後6日目(薬物なしのウェルにおいて、ウイルス感染に対してウイルス細胞変性効果が70~90%に達したとき)に、ニュートラルレッドを1時間添加し、次いで、プレートをPBSで3回洗浄して未結合の細胞を除去し、50%エタノール/1%氷酢酸を使用して残りの細胞からニュートラルレッドを抽出した。フィロシクロビルプレートを読み取り、結果を、GraphPad Prismグラフ作成および統計処理ソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、CA)を使用してグラフ作成した。
【0120】
結果を
図2および表2に示す。
図2に見られるように、10
-1μMという低いフィロシクロビル濃度であっても、AdV6感染細胞の生存率を改善するのに有効であった。
【0121】
実施例3 フィロシクロビル処理した、AdV5またはAdV6感染ヒトA549細胞の免疫蛍光アッセイ
【0122】
6ウェルプレート中のカバーガラス上のヒトA549細胞を、5PFU/細胞のMOIで、AdV5またはAdV6のいずれかに感染させるか、または偽感染させた。1時間後、フィロシクロビルを40、10、4または0μMの最終濃度で添加した。感染後27時間で、A549細胞をパラホルムアルデヒド(PBS中3.7%)中で固定し、メタノールで透過処理した。アデノウイルスのDNA結合タンパク質(DBP、イメージ中、緑色の染色)およびアデノウイルスのヘキソン(イメージ中、赤色の染色)について細胞を染色した。DBP染色は、AdV感染の初期の間(AdV DNA複製前)は、抗核的であり、均一であると考えられる。DBPは、感染が進行するにつれて複製中心と会合する。複製中心は、最初は小さい「ドット」(各ドットは、1つの入ってくるAdVゲノムから生じる)。DNA複製が起こると複製中心は拡大し、「ネズミ算的に増加」する。核は、感染が進行するにつれて拡大し、変形する。AdVウイルスカプシドの最も豊富な成分であるAdVヘキソンは、DNA複製が起こるまで発現されず、したがって「遅出の」AdVタンパク質であると考えられる。結果を
図3および
図4に示す。
【0123】
図3および
図4に見られるように、フィロシクロビル処理の結果は、AdV5およびAdV 6感染で同じであった。フィロシクロビルは、(ヘキソン染色によって示されるように)後期感染の予防に非常に有効であった。40μMのフィロシクロビルウェルではヘキソン陽性細胞は見られず、10μMのフィロシクロビルウェルではヘキソン陽性細胞は極めて少なかった。4μMのフィロシクロビルウェルでは、いくつかのヘキソン陽性細胞が見られるが、4μMのウェルは、対照(薬物なし)ウェルと比較し、実質的に感染が進行していない(DBP染色パターンおよび核のサイズ/形状によって示される)。
【0124】
結果は、フィロシクロビルがヒトアデノウイルス5(AdV5)、AdV6およびAdV 8の強力な阻害剤であることを示している。この活性レベルは、シドホビル(CDV)の活性レベルと類似しており、AdV5に対して66μMのIC50値を有するガンシクロビル(GCV)の活性レベルよりもはるかに優れている(表1参照)。これまでに試験されたAdV血清型の範囲では、FCVが潜在的に汎アデノウイルス阻害剤として開発され得ることを示唆している。
【0125】
実施例4 フィロシクロビルの薬物動態
【0126】
フィロシクロビルの薬物動態を試験するために、シリアンハムスターに経口(p.o.50mg/kg)または静脈内(i.v.10mg/kg)投与でフィロシクロビルを投与した。
図5に示す結果は、フィロシクロビルがPOまたはIV投与の6時間後でも依然として検出可能であったことを実証する。
【0127】
シリアンハムスターAdVモデル
該ハムスターモデルは、ヒト患者で見られる病理を再現するため、特に有利であり、抗ウイルス化合物の有効性を試験するために使用することができる(Wold,W.S.M.and Toth,K.,Advances in Cancer Research,115:69-92(2012)にレビューされている)。シリアンハムスターは、AdV種C(タイプ1、2、5、6)に対する感染感受性を有する2つのげっ歯類種のうちの1つである(もう一方は、コットンラット)。このモデルを使用して、抗アデノウイルス化合物の有効性を試験するための制御されたインビボ実験を行うことができる(Ying et al.,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,58(12):7171-7181(2014)、Toth et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,105(20):7293-7297(2008)、Tollefson et al.2014、Toth et al.,Viruses,7(3):1409-1428(2015))。これらの実験では、ヒト移植レシピエントのための前処置レジメンの一部としてしばしば使用される薬剤であるシクロホスファミド(CP)で、若齢ハムスターを免疫抑制した。所望の程度の免疫抑制がなされた後、ハムスターにAdV5を静脈内(iv)感染させ、ほとんどの器官において、最も顕著には肝臓においてAdV5の複製をもたらした(Tothら、前出の2008)。
【0128】
薬物の製剤化
経口用フィロシクロビルを0.4%カルボキシメチルセルロース(Sigma C5678)に5mg/mlで懸濁し、視覚的に均一になるまで超音波処理した。静脈内投与の場合、フィロシクロビルをDMSO(Sigma D2650)に溶解させ、次いで、5mg/mlの最終濃度のフィロシクロビルおよび75%のDMSOとなるよう水で希釈した。投与溶液は、使用の1日前に調製し、4℃で保存した。
【0129】
実験デザイン
約100gの体重の雄ハムスターをEnvigo(Harlan)から購入した。シクロホスファミド(CP)を、140mg/kgの用量で腹腔内投与し、次いで100mg/kgの用量で週2回投与し、全てのハムスターを免疫抑制した。動物は、フィロシクロビルの投与前に3回のCPの注射を受けた。2つの投与経路のために、2つの動物群(12匹のハムスター/群)を使用した。さらに、3匹の未処理動物(両方の経路について同じく3匹のハムスター)を模擬対照とした。p.o.およびi.v.実験を2日間連続して行った。ハムスターの体重が約100g(+/-10%)であるため、p.o.およびi.v.経路のために1mlおよび0.2mlをそれぞれ投与し、所望の用量とした。両方の経路について、3匹のハムスターを投与の0.5、1、3、および6時間後に屠殺した。
【0130】
血漿および肝臓サンプルをすべての動物から採取し、以下のようにLC MSによって分析するまで-80℃で保存した:
・ すべてのサンプルおよび標準物質を氷上で処理した
・ 標準曲線は、真正化合物(「ブランク」のハムスター血漿に新鮮な粉末DMSOをスパイクして再構成)および500ng/mLカルバメザピンをスパイクした全てのサンプル(内部標準)で構築する
・ 初期の時点で、サンプルを(標準曲線上の濃度とするよう)「ブランク」ハムスター血漿で希釈する
・ 2倍のサンプル体積のメタノール中0.1%ギ酸アンモニウムを用いてサンプルを抽出した(すなわち、30μLのサンプル+60μLのメタノール中0.1%ギ酸アンモニウム)、
・ 微量遠心機を用い、最大設定で抽出したサンプルを遠心分離した
・ 上清を、慣用される方法を利用してLC/MS/MS動的多重反応モニタリング(DMRM)によって分析する。
【0131】
実施例5 免疫抑制された雄のシリアンハムスターにおける、静脈内投与されたヒトAdV6に対するフィロシクロビルの治療効力の測定
【0132】
上記のように、フィロシクロビルは、いくつかのアデノウイルス複製の株に対するインビトロでの有効な阻害剤であり、ハムスターにおける良好な経口バイオアベイラビリティを示すことが確立されている。
【0133】
次に、本発明者らは、静脈内(i.v.)投与でAdV6に感染させた免疫抑制シリアンハムスターにおいて、フィロシクロビルが抗アデノウイルス効力を示すか否かを評価した。4つの用量レベル:10、30、60および100mg/kgを1日1回を経口投与して試験した。最大用量は、ラットの毒物学的データに基づき決定した。
【0134】
実験デザイン
全てのハムスターを、シクロホスファミド(CP)を使用して免疫抑制した。CPを140mg/kgの用量で腹腔内投与し、次いで100mg/kgの用量で週に2回投与した。
【0135】
粉末形態のフィロシクロビルを、0.4%カルボキシメチルセルロース(Sigma C5678,Lot#SLBS7273)に1、3、6、および10mg/mlで懸濁し、視覚的に均一になるまで超音波処理し、アリコートを4℃で保存した。アリコートを投与前に室温に平衡化させた。約100gの体重のハムスターに、10、30、60および100mg/kg用量レベルの、1ml体積の適切な懸濁液を投与した。
【0136】
ハムスターを8つの群、15匹のハムスター/群(5匹のハムスターしか有さなかった群2を除く、表3を参照)に分け、免疫抑制し、次いで、ビヒクル(群1~2)または2×1010PFU/kgのAdV6(群5~9)を静脈内注射した。群1および3は薬物ビヒクル(経口、1日1回)を受け、群4は10mg/kgのフィロシクロビル(経口、1日1回)を受け、群5は30mg/kgのフィロシクロビル(経口、1日1回)を受け、群6は60mg/kgのフィロシクロビル(経口、1日1回)を受け、群2および群7は100mg/kgのフィロシクロビル(経口、1日1回)を受け、群8はシドホビル(20mg/kg、週3回)を受けた。全ての群について、薬物投与を感作の1日前に開始し、試験期間中上記のスケジュールに従って継続した。
【0137】
動物の体重および罹患の徴候を毎日記録した。感作の5日後、各群(2群を除く)から5匹のハムスター(実験開始時に指定)を屠殺し、肉眼により病理観察を行った。血清および肝臓サンプルを収集し、肝臓におけるウイルス負荷をTCID50アッセイによって判定し、血清をトランスアミナーゼレベルについて解析した。残りの10匹のハムスターを、感作の14日後に屠殺した。14日目の前に視覚的に瀕死とみなされたハムスターを必要に応じて屠殺した。瀕死状態であると観察されたハムスターに加えて、元の体重から20%超の低下を示した全てのハムスターもまた屠殺した。実験の終了時に屠殺したハムスターおよび瀕死の状態で屠殺したハムスターについて、血清および肝臓組織を収集し、肝臓における血清トランスアミナーゼレベルおよびウイルス負荷を判定するために保存した。組織病理学的検査を行うことに備えて、肝臓の組織をホルマリン中に保存した。
【0138】
すなわち、この試験では2つのエンドポイントを有する:1つ目は、10匹の動物から収集する、生存および体重増加/減少(肝臓におけるウイルス量および血清トランスアミナーゼレベルのアッセイに回す可能性も有り)。もう1つは、5日目の時点で5匹の動物から収集する、肝臓におけるウイルス量および血清トランスアミナーゼレベル。
【0139】
【0140】
結果
【0141】
寿命観察
実験では5匹の治療関連死が見られ、全てAdV6+ビヒクル群であった(
図6A)。10または30mg/kgのフィロシクロビルは死亡を予防した(
図6A)。最初に、AdV6感染群の全ての動物は体重を減少させ、これは、10mg/kgまたは30mg/kgのフィロシクロビルによる処理によって逆転した(
図6B)。AdV6+10mg/kgのフィロシクロビル、における動物の体重増加は、非感染動物およびAdV6+30mg/kgのフィロシクロビル群における動物の体重増加よりもわずかに低かった。より高用量のフィロシクロビル、特に100mg/kg用量は、AdV6感染動物に対して毒性となり(図示せず)、これらの群を試験から除外した。
【0142】
剖検
屠殺を行った5日目(D5)に、AdV6+60mg/kgおよび100mg/kgのフィロシクロビル群の動物について、広範な腎臓病理について観察を行った。
【0143】
血清トランスアミナーゼレベル
感作の5日後、血清を各群の5匹の動物から採取し、トランスアミナーゼレベルについて解析した。AdV6+ビヒクル群の2匹のハムスターは、高いトランスアミナーゼレベルを有したが、フィロシクロビルまたはCDV処理動物のいずれも、血清トランスアミナーゼレベルは上昇しなかった(
図7は、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]を示す。)。
【0144】
肝臓におけるウイルス負荷
感作の5日後、未処理のAdV6感染ハムスターは、肝臓におけるウイルス負荷が高かった(
図8)。30mg/kgのフィロシクロビルによる処理は、AdV6複製を検出不能なレベルまで抑制した(
図8)。AdV6+10mg/kgのフィロシクロビル群には、非常に低い肝臓ウイルス量を有する動物が一匹存在したが、本発明者らは、この群の他の動物のいずれの肝臓においてもAdV6を検出することができなかった(
図8)。CDV処理は、ウイルス複製を非常に低いレベル~定量不可能なレベルに低下させた(
図8)。
【0145】
結論
フィロシクロビルの2つの低用量(10mg/kgおよび30mg/kg)のデータは有望である。これらの2つの用量のいずれかでの処理は、ウイルス複製を阻害し(
図8)、肝損傷を軽減し(
図7)、罹患率および死亡率を抑制した(
図6)。10mg/kgのフィロシクロビル用量は、30mg/kgの用量よりもわずかに効力が低い(
図6における、わずかに低い体重増加、および
図8における肝臓でのわずかに高いウイルス負荷、を参照)。60mg/kgおよび100mg/kgのフィロシクロビル用量は、AdV6感染ハムスターにとって毒性であり、これらの2つの群およびビヒクル+100mg/kg群を試験から除外した。
【0146】
実施例6 フィロシクロビルによる眼関連アデノウイルス株のインビトロ阻害
【0147】
結膜炎に関連するいくつかのアデノウイルス株を阻害するフィロシクロビルの効力をインビトロアッセイで試験した。インビトロIC50濃度、すなわち、アデノウイルスのプラーク形成を50%阻害するフィロシクロビルの濃度、を決定するため、フィロシクロビルおよびシドホビル(CDV)を、眼関連のアデノウイルスの7タイプのパネルに対して試験した。
【0148】
プラーク減少抗ウイルスIC50アッセイ
A549細胞を含む42枚の24ウェルマルチプレート(各薬物および各ウイルス株あたり1つ)を調製した。7種のアデノウイルス血清型を一度に試験した。既知の力価(約100PFU/0.1ml)のストックウイルスからのウイルス希釈物を、AdV3L、AdV4H、AdV5M、AdV7a J、AdV8E、AdV19/64KおよびAdV37ATCCを用いて調製した。7種のウイルスのそれぞれ0.1ml(約100PFUを有する)を、A549マルチプレートの24個すべてのウェルに播種し、5%CO2、水蒸気雰囲気下、37℃で3時間インキュベートした。
【0149】
以下の希釈プロトコルに従い、2×栄養組織培養培地中、400、40、4.0、0.4、0.04および0.004μMで、フィロシクロビルおよびシドホビルの希釈液を調製した:フィロシクロビル希釈物およびシドホビル希釈物のそれぞれ7.5mlを試験管に添加し、次いで、増殖培地(OG)中のメチルセルロース22.5mlを各試験管に添加した。各フィロシクロビルおよびシドホビルの希釈液1mlを、さらなる15ml試験管に添加し、3mlのOGを各試験管に添加した。これは、Adv8プレートの重層の場合である。いかなる薬物も含まない通常のメチルセルロース重層培地を、各プレートの対照ウェルに使用した。
【0150】
各ウイルスプレートについて、3つのウェルに、6つの最終フィロシクロビル濃度およびシドホビル濃度(100、10、1.0、0.1、0.01および0.001μM)のそれぞれを重層し、また6つのウェルに対照培地を重層した。プレートを、プラークが見えるまで、5%CO2、水蒸気雰囲気において37℃でインキュベートした。プラークが見えるようになったとき、プレートをゲンチアナバイオレットで染色し、解剖顕微鏡を使用して25Xの倍率でプラークをカウントした。Minitabを使用して、フィットラインプロット回帰分析からIC50濃度を決定した。全てのアッセイを3連で行った。
【0151】
結果
フィロシクロビルは、アデノウイルス種B、C、DおよびEのウイルス型を代表する眼アデノウイルス型(Ad3、Ad4、Ad5、Ad7a、Ad8、Ad19/64、Ad37)のパネル全体にわたって、<5μMの平均IC50濃度(0.496~4.684μMの範囲)を示した。シドホビルは、同じ眼アデノウイルス型および種のパネルにわたって、<31μMの平均IC50濃度(0.487~30.304μMの範囲)を示した。フィロシクロビルおよびシドホビルのIC50の平均値および中央値(μM)をそれぞれ表4および表5に示す。
【0152】
【0153】
【0154】
結論
フィロシクロビルは、試験したすべての眼関連アデノウイルス株の有効な阻害剤であることが証明された。多くの場合、フィロシクロビルは、シドホビルよりも有意に強力なアデノウイルス阻害剤であることが証明された。これは、フィロシクロビルがアデノウイルス関連結膜炎のための安全かつ効果的な治療剤であることを強く示している。
【0155】
実施例7 ウサギ眼アデノウイルスモデルにおけるフィロシクロビルのインビボ解析
【0156】
アデノウイルス関連結膜炎を阻害するフィロシクロビルの効力を、ニュージーランド・ホワイト(NZW)ウサギ眼モデルにおいて試験した。
【0157】
20匹のNZWウサギ(1.1kg~1.4kg)に、ケタミン&キシラジンを用いた全身麻酔、プロパラカインを用いた局所麻酔、および角膜乱切(#25針の12回のクロスハッチストローク)を行った後、両眼に50μlの3.0×107PFU/mlのAdV5M(6.0×108PFU/ml)を接種した。眼を閉じ、5秒間穏やかに擦り、全ての眼表面でのウイルスの接触を確実にした。全てのウサギを、ケトプロフェン(1.5mg/kg)の筋肉内注射の形態での痛覚消失で処置した。
【0158】
接種後の最初の2時間、全ての眼においてウイルスを培養した。プロパラカインによる局所麻酔後、綿棒1本を各眼の下円蓋に入れ、角膜を覆って上円蓋に巻き込み、涙膜、ならびに角膜および結膜の表面からアデノウイルスを採取した。各眼からのスワブを、1mlの増殖培地を含む試験管に個別に入れ、プラークアッセイを行うまでのペンディングの間、-80℃凍結させた。
【0159】
1日目に、ウサギを以下の表に示す薬物投与のために4つの処置群に分けた。4つの処置群は、0.5%のフィロシクロビル、0.1%のフィロシクロビル、0.5%のシドホビル、および陰性ビヒクル対照(10%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、0.2%のクレモフォア)とした。
【0160】
【0161】
処置を1日目に開始し、少なくとも2時間の点眼間隔を置いて、液滴を投与した。接種後(PI)1、3、4、5、7、9、11および14日目に、最後の点眼から少なくとも1時間後の各ウサギの眼においてウイルスを培養した。実験の過程の様々な時点において、標準的なプラークアッセイを使用してA549細胞単層上のAdV5力価を測定した。滴定する眼培養物を解凍し、希釈し(1:10)、A549単層に接種した。ウイルスを3時間吸着させた。吸着後、1mlの培地+0.5%メチルセルロースを各ウェルに添加し、プレートを5%CO
2-水蒸気雰囲気中、37℃でインキュベートした。7日間のインキュベート後、細胞を0.5%ゲンチアナバイオレットで染色し、プラーク数を解剖顕微鏡(25X)下でカウントした。次いで、ウイルス力価を計算し、プラーク形成単位/ミリリットル(PFU/ml)として表した。True Epistatおよび/またはMinitab統計処理ソフトウェアを用いてデータを統計学的に分析した。転帰測定には、総培養物あたりの1日のAdV5陽性培養物(
図9)、排出期間(
図10)および1日のウイルス力価(
図11)を含めた。有意性は、p≦0.05の信頼水準で確立された。
【0162】
結果
0.5%のフィロシクロビルによる処置は、ビヒクル対照と比較して有意に良好な抗ウイルス効果を示した。具体的には、フィロシクロビルでは、4、5、7、9、および11日目に総培養物あたりのアデノウイルス陽性培養物が少なく(
図9を参照されたい)、アデノウイルス排出期間が短く(
図10を参照されたい)、1、3、4、5、7、9、および11日目にアデノウイルス力価が有意に低いことが示された(
図11を参照されたい)。0.5%のフィロシクロビルによる処置はまた、陽性の抗ウイルス対照である0.5%のシドホビルと比較して有意に良好な抗ウイルス有効性を示し、フィロシクロビルは、1、3、4および5日目に有意に低いアデノウイルス力価を示し、4日目には総培養物あたりの少ない数のアデノウイルス陽性培養物を示した。
【0163】
0.5%のフィロシクロビルによる処置はまた、0.1%のフィロシクロビル群と比較して有意に良好な抗ウイルス有効性を示し、0.5%のフィロシクロビルは、3、4、および5日目に有意に低いアデノウイルス力価を示し(
図11を参照されたい)、4日目に総培養物あたりの少ない数のアデノウイルス陽性培養物を示した(
図9を参照されたい)。
【0164】
0.1%のフィロシクロビルによる処置は、ビヒクル対照と比較し、かなり良好な抗ウイルス効果を示し、1、3、4、5、7、9、および11日目のアデノウイルス力価は有意に低く(
図11を参照されたい)、7、9、および11日目の総培養物あたりのアデノウイルス陽性培養数は少なく(
図9を参照されたい)、排出期間はより短かった(
図10を参照されたい)。
【0165】
0.1%フィロシクロビルによる処置はまた、0.1%フィロシクロビル力価が低い1日目を除いて、陽性抗ウイルス対照である0.5%シドホビルと比較して同等の抗ウイルス効果を示した。
【0166】
0.5%シドホビルによる処置は、ビヒクル対照よりも有意に良好な抗ウイルス効果を示し、具体的には、0.5%シドホビルは、3、4、5、7、9および11日目に有意に低いアデノウイルス力価(
図11を参照されたい)、7、9および11日目に総培養物あたりの少ない数のアデノウイルス陽性培養物(
図9を参照されたい)、および短い排出期間(
図10を参照されたい)を示した。
【0167】
結論
0.5%および0.1%のフィロシクロビルは、アデノウイルス/NZWウサギ眼モデルにおいてビヒクル対照と比較し有意な抗ウイルス効果を示した。0.5%フィロシクロビルは、感染の初期段階(1~5日目)の間、陽性抗ウイルス対照、すなわち0.5%シドホビルよりも有効であった。0.1%フィロシクロビルは、アデノウイルス/NZWウサギ眼モデルにおいて、陽性抗ウイルス対照、0.5%シドホビルと同等の抗ウイルス効果を示した。
【0168】
0.5%シドホビルは、アデノウイルス/NZWウサギ眼モデルにおいて有意な抗ウイルス効果を示し、したがって、本試験を確証するものであった。
【0169】
したがって、標準的なアデノウイルス/NZWウサギのインビボ眼モデルから得た上記のデータは、フィロシクロビルが眼のアデノウイルス感染症に関連する眼疾患の治療および予防のための安全かつ効果的な方法を提供することを実証している。
【0170】
上記のデータを考慮すると、フィロシクロビルが結膜炎のための安全かつ効果的な治療であること、同様に、フィロシクロビルが一連のアデノウイルスのタイプを阻害するための効果的な抗ウイルス剤であることを明らかにし、フィロシクロビルが眼のウイルス感染のための汎アデノウイルス治療薬として有用であるという結論に至らしめるものである。
【0171】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、その全体が参照により組み込まれる。上記の例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本発明の開示された方法、および代替的な実施形態に対する自明な変形は、上記の開示を考慮することで当業者に明らかとなるであろう。かかる自明な変形および代替はすべて、本明細書に記載の本発明の範囲内にあると考えられる。