(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ヒトによる経口摂取のためのカルシウム組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/16 20160101AFI20241018BHJP
A23L 33/125 20160101ALN20241018BHJP
A23L 33/115 20160101ALN20241018BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20241018BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L33/125
A23L33/115
A23L5/00 K
A23L5/00 D
(21)【出願番号】P 2023028710
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022030293
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本循環器病予防学会誌 第56巻2号第166頁 公開日:令和3年5月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第57回日本循環器病予防学会学術集会の発表スライド 公開日:令和3年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】515242928
【氏名又は名称】一般社団法人 UNICAL
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正登
(72)【発明者】
【氏名】今本 美幸
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500333(JP,A)
【文献】特開2017-048154(JP,A)
【文献】骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版,pp.40-41,45-46,78,84-85,155
【文献】ホタテ貝殻を原料とする高吸収型カルシウム食品の人工胃液試験法による溶解性評価,近畿大学生物理工学部紀要,No. 43,2020年,pp.1-20,
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含む、約17.6μg/L以上の血清骨型アルカリフォスファターゼを有するヒトによる経口摂取のための組成物であって、
前記組成物がコンドロイチン硫酸を含
み、
前記カルシウムが、pHが4の水溶液中で炭酸カルシウムよりも高い溶解性を示す形態で形成されている、
組成物。
【請求項2】
前記ヒトが約53歳
以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒトが約23以上のボディマスインデックス(BMI)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒトが女性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
クエン酸を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
粒子状である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトによるカルシウムの経口摂取に関する。より特定すると、本開示は、ヒトによる摂取のためのカルシウムを含む組成物、およびヒトによるカルシウムの経口摂取の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは乳製品をはじめ、海藻や小魚、ゴマなどに含まれており、人はこれらの食物からカルシウムを摂取する。カルシウムは骨強度を高めるなどの効果を有することが知られているが(特許文献1)、摂取したカルシウムの吸収メカニズムおよびそのほかの効果は十分に解明されておらず、カルシウムを適切に利用する方法も十分に知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者は、ヒトによるカルシウム組成物経口摂取の試験の結果、特定のヒトにおいて、特定のカルシウム組成物が良好にヒトに吸収されることを見出した。本開示は、このような知見に基づき、この効果を有効に活用する手段を提供する。例えば、本開示のカルシウム含有組成物は、経口摂取された場合、特定の群のヒトにおいて高いカルシウム吸収率を達成し得る。
【0005】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
カルシウムを含む、ヒトによる経口摂取のための組成物。
(項目2)
前記ヒトが約53歳以上である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記ヒトが約17.6μg/L以上の血清骨型アルカリフォスファターゼを有する、項目1または2に記載の組成物。
(項目4)
前記ヒトが約23以上のボディマスインデックス(BMI)を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記ヒトが女性である、項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
クエン酸を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
コンドロイチン硫酸を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
粒子状である、項目1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【0006】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、特に高い効果が得られるヒト集団および/または組成物の条件を提供することで、効率的なカルシウム吸収を提供する。
【0008】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
以下に本開示を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0010】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】各試験期間のカルシウム摂取と排泄を示す。図中の数値はカルシウム蓄積量の値である。誤差バーはカルシウム蓄積量の標準偏差を表す
【
図3】ユニカル摂取期間中に蓄積されたカルシウム量(縦軸)と、被験者の年齢およびBAP(横軸)との間の関係を示す。
【
図4】実施例の試験におけるカルシウム蓄積率と、年齢、血清カルシウムおよびリン濃度との相関係数を示す。縦軸は相関係数を示し、横軸は、左から年齢、血清カルシウム濃度、血清リン濃度を示す。
【
図5】実施例の試験におけるカルシウム蓄積率と、ボディマスインデックス(BMI)、オステオカルシン(OC)、I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)および骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)との相関係数を示す。縦軸は相関係数を示し、横軸は、左からBMI、OC、NTX、BAPの血清濃度を示す。
【
図6】Ca吸収>0に対する年齢およびBAPのROCを示す。縦軸は感度を、横軸は特異度を示す。
【
図7】Ca吸収>0に対するPのROCを示す。縦軸は感度を、横軸は特異度を示す。
【
図8】水で希釈した人工胃液濃度とpHの関係を示す。縦軸はpHを、横軸は人口胃液の希釈%を示す。
【
図9】人工胃液濃度に対するCa製剤の溶解度を示す。縦軸は溶解度を、横軸は人口胃液の希釈%を示す。
【
図10】人工胃液希釈液の初期pHに対するCa製剤の溶解度を示す。縦軸は溶解度を、横軸は人工胃液希の初期pHを示す。
【
図11】Ca製剤の走査型電子顕微鏡観察画像を示す(拡大倍率:10000倍)。
【
図12】蒸留水に分散したCa製剤の粒度分布を示す。縦軸は頻度(%)を、横軸は粒子径(μm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(定義等)
本明細書において、任意の化合物および成分は、特段記載しなくとも、塩の形態で提供されてもよい。特に、任意の化合物および成分は、食品において通常使用される塩基および酸、例えば、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、塩酸、硫酸、炭酸、アルドン酸、ウロン酸、アルダン酸、アルギン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルカン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、ヒドロキシ酸、シクロヘキシルカルボン酸、タンニン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アジピン酸、ヒドロキシクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クロロゲン酸、サリチル酸、クレアチン、塩酸グルコサミン、グルコノ-δ-ラクトン、カフェ酸、胆汁酸、酢酸、アスコルビン酸、アルギン酸、エリソルビン酸、ポリグルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、テアニン、システイン、シスチン、アラニン、バリン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、セリン、リシン、ヒスチジン、オルニチン、メチオニン、カルニチン、アミノ酪酸、グルタミン、ヒドロキシプロリン、タウリン、ノルバリン、グルタチオン、サルコシン、ポリ-L-アスパラギン酸、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、グアニジン、グルコサミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-オルニチン、またはポリ-L-アルギニンと共に形成される塩の形態で提供され得る。
【0013】
本明細書において、用語「約」は、特に別の定義が示されない限り、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。比率について使用する「約」は、示された比(X:Yなどと記載される)の左の値(X)のプラスまたはマイナス10%の比を指す。
【0014】
(好ましい実施形態)
一つの局面において、本開示は、ヒトによるカルシウムの摂取を提供する。これを達成するための任意の手段が本開示の範囲であると企図される。例えば、明示的な記載がなくとも、ある成分を使用する方法の記載は、同成分を含む組成物、同成分の使用および同方法に使用するための同成分など、他の手段を反映した実施形態も同時に企図するものである。本明細書では、主に組成物の実施形態において本開示を説明するが、ある成分を含むある使用のための組成物についての記載は、同成分を同使用のための方法、および同成分の同使用など、他の手段を反映した実施形態も同時に企図するものである。
【0015】
一つの局面において、本開示は、カルシウムを含む、ヒトによる経口摂取のための組成物を提供する。
【0016】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、カルシウムによって特徴づけられる。カルシウム(Ca)は、大部分が生体中でリン酸と結合してリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として沈着しており、血液中のカルシウム濃度は、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、ビタミンDなどのホルモンによる、腸からの吸収、腎からの排泄、骨吸収、骨形成の調整により調節されている。高レベルのカルシウムは、原発性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒などの指標となり得る。低レベルのカルシウムは、原発性副甲状腺機能低下症、全身性エリテマトーデス(SLE)、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、ビタミンD欠乏、リウマチ熱、急性感染症、慢性感染症などの指標となり得る。血清カルシウムの基準値は、およそ8.6~10.2mg/dLと考えられている。
【0017】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約6.0mg/dL以上、約6.2mg/dL以上、約6.4mg/dL以上、約6.6mg/dL以上、約6.8mg/dL以上、約7.0mg/dL以上、約7.2mg/dL以上、約7.4mg/dL以上、約7.6mg/dL以上、約7.8mg/dL以上、約8.0mg/dL以上、約8.2mg/dL以上、約8.4mg/dL以上、約8.6mg/dL以上、約8.8mg/dL以上、約9.0mg/dL以上、約9.2mg/dL以上、約9.4mg/dL以上、約9.6mg/dL以上、約9.8mg/dL以上または約10.0mg/dL以上、あるいは約15.0mg/dL以下、約14.5mg/dL以下、約14.0mg/dL以下、約13.5mg/dL以下、約13.0mg/dL以下、約12.5mg/dL以下、約12.0mg/dL以下、約11.5mg/dL以下、約11.0mg/dL以下、約10.5mg/dL以下、約10.0mg/dL以下、約9.5mg/dL以下、約9.0mg/dL以下、約8.5mg/dL以下、約8.0mg/dL以下、約7.5mg/dL以下、約7.0mg/dL以下、約6.5mg/dL以下、約6.0mg/dL以下、約5.5mg/dL以下、または約5.0mg/dL以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清カルシウムを有する。
【0018】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、無機リンによって特徴づけられる。無機リン(P)は、大部分が生体中でカルシウムと結合してリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として沈着しており、血液中の無機リン濃度は、1,25-ジヒドロキシビタミンD(活性型ビタミンD3)による腸管における吸収促進、副甲状腺ホルモンによる尿細管における再吸収抑制、骨からの血液中への移行などにより調整される。高レベルの無機リンは、腎不全、副甲状腺機能低下症、サルコイドーシス、悪性腫瘍の骨転移、ビタミンD過剰、先端巨大症などの指標となり得る。低レベルの無機リンは、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺ホルモン産生腫瘍、ビタミンD欠乏症、尿細管性アシドーシスなどの指標となり得る。血清無機リンの基準値は、およそ2.7~4.6mg/dLと考えられている。
【0019】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約1.0mg/dL以上、約1.5mg/dL以上、約2.0mg/dL以上、約2.5mg/dL以上、約3.0mg/dL以上または約3.5mg/dL以上、あるいは約7.0mg/dL以下、約6.5mg/dL以下、約6.0mg/dL以下、約5.5mg/dL以下、約5.0mg/dL以下、約4.5mg/dL以下、約4.0mg/dL以下、約3.5mg/dL以下または約3.0mg/dL以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清無機リンを有する。好ましい実施形態において、本開示の組成物は、約4.0mg/dL以下の血清無機リンを有するヒトに摂取され得、高いカルシウム吸収量が達成され得る。
【0020】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、エストラジオールによって特徴づけられる。エストラジオール(E2)は、主に卵巣から産生されるホルモンである。高レベルのエストラジオールは、肝疾患、エストロゲン産生腫瘍、先天性副腎皮質過形成、多胎妊娠、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、肝疾患(男性)などの指標となり得る。低レベルのエストラジオールは、Sheehan症候群、Chiari-Frommel症候群、Simmonds症候群、早発卵巣不全(POF)、胎盤サルファターゼ欠損症、胎盤機能不全、低ゴナドトロピン症、不振症、閉経、卵巣機能不全、卵巣低形成、神経性食欲不振症、胎盤サルファターゼ欠損症、胎盤機能不全などの指標となり得る。エストラジオールの基準値は、およそ15~35pg/ml(男性)、25~85pg/ml(非妊娠女性:卵胞期前期)、25~350pg/ml(非妊娠女性:卵胞期後期)、50~550pg/ml(非妊娠女性:排卵期)、45~300pg/ml(非妊娠女性:黄体期)、21以下pg/ml(非妊娠女性:閉経後)、600~3,600pg/ml(妊婦:10週未満)、800~5,500pg/ml(妊婦:10~15週)、3,200~20,000pg/ml(妊婦:16~20週)、8,900~27,000pg/ml(妊婦:21~25週)と考えられている。
【0021】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約1pg/ml以上、約5pg/ml以上、約10pg/ml以上、約50pg/ml以上、約100pg/ml以上、約500pg/ml以上、約1000pg/ml以上、約5,000pg/ml以上、約10,000pg/ml以上または約50,000pg/ml以上、あるいは約100,000pg/ml以下、約50,000pg/ml以下、約10,000pg/ml以下、約5,000pg/ml以下、約1,000pg/ml以下、約500pg/ml以下、約100pg/ml以下、約50pg/ml以下、約25pg/ml以下、約20pg/ml以下、または約10pg/ml以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清エストラジオールを有する。
【0022】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、オステオカルシンによって特徴づけられる。オステオカルシンは、骨芽細胞によって生成される骨基タンパク質である。高レベルのオステオカルシンは、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、骨折、Paget病、高回転型骨粗鬆症、悪性腫瘍の骨転移、成長期などの指標となり得る。低レベルのオステオカルシンは、副甲状腺機能低下症、甲状腺機能低下症、Cushing症候群、低回転型骨粗鬆症などの指標となり得る。血清オステオカルシンの基準値は、およそ8.4~33.1ng/mL(男性)、7.8~30.8ng/mL(閉経前女性)、14.2~54.8ng/mL(閉経後女性)と考えられている。
【0023】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約8.0ng/mL以上、約9.0ng/mL以上、約10.0ng/mL以上、約11.0ng/mL以上、約12.0ng/mL以上、約13.0ng/mL以上、約14.0ng/mL以上、約15.0ng/mL以上、約16.0ng/mL以上、約17.0ng/mL以上、約18.0ng/mL以上、約19.0ng/mL以上、約20.0ng/mL以上、約25.0ng/mL以上、約30.0ng/mL以上、約35.0ng/mL以上、約40.0ng/mL以上、約45.0ng/mL以上または約50.0ng/mL以上、あるいは約70.0ng/mL以下、約65.0ng/mL以下、約60.0ng/mL以下、約55.0ng/mL以下、約50.0ng/mL以下、約45.0ng/mL以下、約40.0ng/mL以下、約35.0ng/mL以下、約30.0ng/mL以下、約25.0ng/mL以下、約20.0ng/mL以下、約19.0ng/mL以下、約18.0ng/mL以下、約17.0ng/mL以下、約16.0ng/mL以下、約15.0ng/mL以下、約14.0ng/mL以下、約13.0ng/mL以下、約12.0ng/mL以下、約11.0ng/mL以下または約10.0ng/mL以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清オステオカルシンを有する。
【0024】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、1,25-ジヒドロキシビタミンDによって特徴づけられる。1,25-ジヒドロキシビタミンD(1.25-(OH)2VD)は、ビタミンDの代謝物であり活性型ビタミンDとも呼ばれ、小腸でのカルシウムの吸収を高め、骨からのカルシウムの溶出を促進する。高レベルの1,25-ジヒドロキシビタミンDは、ビタミンD過剰症、原発性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD依存症II型などの指標となり得る。低レベルの1,25-ジヒドロキシビタミンDは、くる病、骨軟化症、ビタミンD代謝異常疾患、腎性骨異栄養症、原発性低リン血症性くる病、肝性くる病、副甲状腺機能障害などの指標となり得る。血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの基準値は、およそ20~60pg/mLと考えられている。
【0025】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約10pg/mL以上、約15pg/mL以上、約20pg/mL以上、約25pg/mL以上、約30pg/mL以上、約35pg/mL以上、約40pg/mL以上、約45pg/mL以上、約50pg/mL以上、約55pg/mL以上、約60pg/mL以上、約65pg/mL以上、約70pg/mL以上または約75pg/mL以上、あるいは約100pg/mL以下、約95pg/mL以下、約90pg/mL以下、約85pg/mL以下、約80pg/mL以下、約75pg/mL以下、約70pg/mL以下、約65pg/mL以下、約60pg/mL以下、約55pg/mL以下、約50pg/mL以下、約45pg/mL以下、約40pg/mL以下、約35pg/mL以下または約30pg/mL以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDを有する。
【0026】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、I型コラーゲン架橋N-テロペプチドによって特徴づけられる。I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)は、I型コラーゲンの分解産物であり、骨吸収マーカーとして知られ、破骨細胞が骨吸収する際に骨表面で産生され、骨吸収面積と相関すると考えられている。高レベルのI型コラーゲン架橋N-テロペプチドは、骨粗鬆症、原発性副甲状腺機能亢進症、多発性骨髄腫、転移性骨腫瘍などの指標となり得る。血清I型コラーゲン架橋N-テロペプチドの基準値は、9.5~17.7nmol BCE*/L(男性)、7.5~16.5nmol BCE/L(閉経前女性)、10.7~24.0nmol BCE/L(閉経後女性)と考えられている。
*BCE:骨コラーゲン相当量(1モルのI型コラーゲンの分解産物のうち、モノクローナル抗体と結合するNTXの量が1モルBCEとして示される)。
【0027】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約7nmol BCE/L以上、約8nmol BCE/L以上、約9nmol BCE/L以上、約10nmol BCE/L以上、約11nmol BCE/L以上、約12nmol BCE/L以上、約13nmol BCE/L以上、約14nmol BCE/L以上、約15nmol BCE/L以上、約16nmol BCE/L以上、約17nmol BCE/L以上、約18nmol BCE/L以上、約19nmol BCE/L以上、約20nmol BCE/L以上、約21nmol BCE/L以上、約22nmol BCE/L以上、約23nmol BCE/L以上、約24nmol BCE/L以上または約25nmol BCE/L以上、あるいは約30nmol BCE/L以下、約29nmol BCE/L以下、約28nmol BCE/L以下、約27nmol BCE/L以下、約26nmol BCE/L以下、約25nmol BCE/L以下、約24nmol BCE/L以下、約23nmol BCE/L以下、約22nmol BCE/L以下、約21nmol BCE/L以下、約20nmol BCE/L以下、約19nmol BCE/L以下、約18nmol BCE/L以下、約17nmol BCE/L以下、約16nmol BCE/L以下、約15nmol BCE/L以下、約14nmol BCE/L以下、約13nmol BCE/L以下、約12nmol BCE/L以下、約11nmol BCE/L以下または約10nmol BCE/L以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清I型コラーゲン架橋N-テロペプチドを有する。
【0028】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、骨型アルカリフォスファターゼによって特徴づけられる。骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)は、骨芽細胞で作られる骨形成マーカーとして知られ、胆汁うっ滞などにより血中レベルが上昇する。高レベルの骨型アルカリフォスファターゼ値は、臨床上初期の骨疾患合併症(ベーチェット病、骨粗鬆症、骨硬化症、骨軟化症、甲状腺機能低下または亢進症、糖尿病、多発性骨髄腫、末端肥大症、腎不全、原発性骨肉腫、骨転移癌などの指標となり得る。血清骨型アルカリフォスファターゼの基準値は、およそ3.7~20.9μg/L(男性)、2.9~14.5μg/L(閉経前女性)、3.8~22.6μg/L(閉経後女性)と考えられている。
【0029】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約4.0μg/L以上、約5.0μg/L以上、約6.0μg/L以上、約7.0μg/L以上、約8.0μg/L以上、約9.0μg/L以上、約10.0μg/L以上、約11.0μg/L以上、約12.0μg/L以上、約13.0μg/L以上、約14.0μg/L以上、約15.0μg/L以上、約16.0μg/L以上、約17.0μg/L以上、約17.2μg/L以上、約17.4μg/L以上、約17.6μg/L以上、約17.8μg/L以上、約18.0μg/L以上、約18.5μg/L以上、約19.0μg/L以上、約19.5μg/L以上、または約20.0μg/L以上、あるいは約30.0μg/L以下、約28.0μg/L以下、約26.0μg/L以下、約24.0μg/L以下、約22.0μg/L以下、約20.0μg/L以下、約19.0μg/L以下、約18.0μg/L以下、約17.0μg/L以下、約16.0μg/L以下または約15.0μg/L以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲の血清骨型アルカリフォスファターゼを有する。好ましい実施形態において、本開示の組成物は、約17.6μg/L以上の血清骨型アルカリフォスファターゼを有するヒトに摂取され得、高いカルシウム吸収量が達成され得る。いずれの理論に束縛されることを望むものではないが、高い骨型アルカリフォスファターゼ値を有するヒトは骨形成が盛んであり、要求されるカルシウム吸収量が高度であり得る。
【0030】
ボディマスインデックス(BMI)は、体重(kg)/身長(m)2で計算される値である。高レベルのボディマスインデックスは、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常などの指標となり得る。低レベルのボディマスインデックスは、栄養不良、慢性進行性疾患などの指標となり得る。ボディマスインデックスの基準値は、およそ22と考えられている。一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を摂取するヒトは、約10~40、約12~35、約15~30、約17~27または約20~25のボディマスインデックスを有し得る。特定の実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を摂取するヒトは、約22以上、約22.5以上、約23以上、約23.5以上、または約24以上のボディマスインデックスを有し得る。
【0031】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、約15歳以上、約20歳以上、約25歳以上、約30歳以上、約35歳以上、約40歳以上、約45歳以上、約50歳以上、約53歳以上、約55歳以上、約57歳以上、約60歳以上または約65歳以上の年齢であり得る。好ましい実施形態において、本開示の組成物は、53歳以上の年齢のヒトに摂取され得、高いカルシウム吸収量が達成され得る。高齢になるほど摂取する食事量が減少する傾向があるため、特に高いカルシウム吸収量が望まれ得る。
【0032】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、週に約1、2、3、4、5、6、7回の運動習慣があるまたは運動習慣がない。
【0033】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を経口摂取するヒトは、女性または男性である。一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を摂取するヒトは、閉経前の女性または閉経後の女性である。一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を摂取するヒトは、黄色人種、白色人種または黒色人種である。一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を摂取するヒトは、アジア人である。一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物を摂取するヒトは、日本人である。
【0034】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物は、4週に1回、3週に1回、2週に1回、週に1~7回または毎日1~3回摂取される。
【0035】
一つの実施形態において、本開示のカルシウムまたはカルシウム組成物は、約100mg以上、約200mg以上、約300mg以上、約400mg以上、約500mg以上、約600mg以上、約700mg以上、約800mg以上、約900mg以上または約1000mg以上、あるいは約2000mg以下、約1700mg以下、約1500mg以下、約1200mg以下、約1000mg以下、約900mg以下、約800mg以下、約700mg以下、約600mg以下、約500mg以下または約400mg以下、あるいはこれらの任意の2つの数値の間の範囲のカルシウムの用量で摂取される。
【0036】
一つの実施形態において、本開示の組成物は、カルシウムおよびマグネシウムを含む。一つの実施形態において、本開示の組成物は、カルシウムおよびマグネシウムを、カルシウム:マグネシウム=約2:1~50:1、約3:1~50:1、約4:1~50:1、約6:1~50:1、約8:1~50:1、約10:1~50:1、約12:1~50:1、約15:1~50:1、約20:1~50:1、約2:1~40:1、約3:1~40:1、約4:1~40:1、約6:1~40:1、約8:1~40:1、約10:1~40:1、約12:1~40:1、約15:1~40:1、約20:1~40:1、約2:1~30:1、約3:1~30:1、約4:1~30:1、約6:1~30:1、約8:1~30:1、約10:1~30:1、約12:1~30:1、約15:1~30:1、約20:1~30:1、約2:1~25:1、約3:1~25:1、約4:1~25:1、約6:1~25:1、約8:1~25:1、約10:1~25:1、約12:1~25:1、約15:1~25:1、約2:1~20:1、約3:1~20:1、約4:1~20:1、約6:1~20:1、約8:1~20:1、約10:1~20:1、約12:1~20:1、約15:1~20:1、約2:1~15:1、約3:1~15:1、約4:1~15:1、約6:1~15:1、約8:1~15:1または約10:1~15:1の比で含み得る。
【0037】
一つの実施形態において、本開示の組成物において、カルシウムは、酸との塩を形成していてもよい。一つの実施形態において、この酸として、クエン酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、氷酢酸、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、塩酸、硫酸、および炭酸、アルドン酸、ウロン酸、アルダン酸、アルギン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルカン酸、ガラクタル酸、およびガラクツロン酸、C2-C30カルボン酸、安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、ヒドロキシ酸、シクロヘキシルカルボン酸、タンニン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アジピン酸、ヒドロキシクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クロロゲン酸、サリチル酸、クレアチン、塩酸グルコサミン、グルコノ-δ-ラクトン、カフェ酸、胆汁酸、酢酸、アスコルビン酸、アルギン酸、エリソルビン酸、およびポリグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、この酸は、クエン酸であり得る。クエン酸カルシウムは、高いカルシウム溶解度、カルシウムの苦みマスキングおよび/または疲労低減、痙攣低減、疲労骨折予防を提供し得る。一つの実施形態において、本開示の組成物において、マグネシウムは、カルシウムと同様の様式で酸との塩を形成していてもよい。
【0038】
本開示の組成物におけるカルシウムは、任意の形態であり得るが、一つの実施形態において、カルシウムは粒子状であり得る。一つの実施形態において、カルシウム粒子は、マグネシウムを含んでもよいし、含まなくてもよい。一つの実施形態において、本開示の組成物におけるカルシウムは、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態であり得る。
【0039】
一つの実施形態において、カルシウム粒子は、約0.1~200μm、約0.5~200μm、約1~200μm、約2~200μm、約5~200μm、約10~200μm、約20~200μm、約50~200μm、約0.1~100μm、約0.5~100μm、約1~100μm、約2~100μm、約5~100μm、約10~100μm、約20~100μm、約50~100μm、約0.1~70μm、約0.5~70μm、約1~70μm、約2~70μm、約5~70μm、約10~70μm、約20~70μm、約0.1~50μm、約0.5~50μm、約1~50μm、約2~50μm、約5~50μm、約10~50μm、約20~50μm、約0.1~20μm、約0.5~20μm、約1~20μm、約2~20μm、約0.1~10μm、約0.5~10μm、約1~10μm、約0.1~5μm、約0.5~5μm、約0.1~2μm、約0.2~2μmまたは約0.1~1μmの粒径(または平均粒径)を有し得る。ここで、「粒径」は、(例えば、水に分散させた状態で)レーザ回折・散乱法によって測定してもよいし、顕微鏡(例えば、電子顕微鏡)で観察して画像ソフトまたは目視で測定してもよい。一つの実施形態において、「平均粒径」は平均体積径であり得る。一つの実施形態において、「平均粒径」は、顕微鏡(例えば、電子顕微鏡)で観察して、粒径測定可能な(例えば、重なりがない)粒子を100個選択した場合の、粒径測定値の相加平均であり得る。カルシウム粒子は、細長い形状を有し得るが、その場合、カルシウム粒子の粒径は粒子の最長の測定値を指し得る。カルシウムが一次粒子が凝集して形成された二次粒子の形態である場合、一次粒子および二次粒子の粒径は、それぞれ上記の範囲であり得るが、一つの実施形態において、二次粒子の粒径(または平均粒径)は一次粒子の粒径(または平均粒径)の約5~500倍、約10~500倍、約20~500倍、約50~500倍、約5~200倍、約10~200倍、約20~200倍、約50~200倍、約5~100倍、約10~100倍、約20~100倍、約50~100倍、約5~50倍、約10~50倍、約20~50倍、約5~20倍または約5~10倍であり得る。具体的な実施形態において、一次粒子の粒径(または平均粒径)は、約2μm付近、例えば、約0.1~10μm、約0.1~5μm、約0.1~2μm、約0.2~10μm、約0.2~5μm、約0.2~2μm、約0.5~10μm、約0.5~5μm、約0.5~2μm、約1~10μmまたは約1~5μmであり、二次粒子の粒径(または平均粒径)は、約50μm付近、例えば、約5~200μm、約5~100μm、約5~70μm、約5~50μm、約10~200μm、約10~100μm、約10~70μm、約10~50μm、約20~200μm、約20~100μm、約20~70μm、約50~200μmまたは約50~100μmであり得る。
【0040】
一つの実施形態において、カルシウム(またはカルシウム粒子)は、2より高いpHの水溶液中で炭酸カルシウムよりも高い溶解性を示す。一つの実施形態において、カルシウム(またはカルシウム粒子)は、15℃において、pHが約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5または約5.5の水溶液(例えば、塩酸水溶液、胃酸溶液と水との混合液)中で炭酸カルシウム(例えば、ホタテ貝殻を焼成して調製される炭酸カルシウム)よりも高い溶解性を示す。一つの実施形態において、ここで、カルシウム(またはカルシウム粒子)は、炭酸カルシウムよりも約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約300%以上、約400%以上または約500%以上高い溶解性を示す。いずれの理論に束縛されることを望むものでもないが、ヒトにおけるカルシウムの吸収のためには、カルシウムが胃や腸において溶解状態にあることを要し得るので、高い溶解性を示すカルシウム(またはカルシウム粒子)を摂取することがカルシウム吸収において有用であり得る。
【0041】
カルシウムは、鉱石など天然由来のもの、市販品など任意の供給源のものを使用することができる。一つの実施形態において、カルシウムは、ホタテ、カキ、ウニ、卵の殻などの生物由来原料から取得することができる。例えば、ホタテなどの貝類の貝殻からカルシウムを取得する場合、貝殻中の炭酸カルシウムは、約950~1150℃で焼成することにより酸化カルシウムに変換され得る。
【0042】
一つの実施形態において、本開示の組成物において使用するカルシウム粒子は、任意の好適な方法で作製することができるが、例えば、消石灰スラリー化(水に生石灰(CaO)を混ぜることにより、消石灰スラリー(Ca(OH)2)を生成する工程)、酸添加(撹拌された反応槽中の消石灰スラリーに酸水溶液を滴下して、カルシウム塩を合成する工程)、濃度調整(カルシウム塩スラリーに水を添加して固形分濃度を調整する工程)、湿式粉砕(液体中のカルシウム塩に対して湿式粉砕を行う工程)、噴霧乾燥(カルシウム塩溶液を噴霧乾燥して粉末化し、カルシウム塩の顆粒を作製する工程)などの工程を任意に組み合わせて作製することができる。
【0043】
一つの実施形態において、粒子に成形したカルシウムには、結合剤が含まれてもよい。例えば、一次粒子は、結合剤とともに混合されることで凝集して二次粒子の形成が促進され得る。一つの実施形態において、結合剤として、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン)、水溶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、シクロデキストリンは、一次粒子をより微細化するために湿式粉砕を行うときにカルシウム塩の凝集を防止し得る。一つの実施形態において、結合剤(例えば、シクロデキストリン)は、水の存在下において溶解し、二次粒子の崩壊および一次粒子の分散を促進し得る。例えば、結合剤は、二次粒子において約5~20重量%の割合で使用され得る。
【0044】
一つの実施形態において、本開示の組成物は、ムコ多糖を含んでもよい。ムコ多糖は、カルシウムによる疲労低減を向上させ得る。ムコ多糖は、典型的には、アミノ糖(ガラクトサミン、グルコサミン)と、ウロン酸(グルクロン酸、イズロン酸)またはガラクトースとの2糖の繰り返し構造を含む化合物であり、多くは、この繰り返し構造に硫酸基が付加されている。ムコ多糖として、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリンなどが挙げられる。一つの実施形態において、本開示の組成物は、ポリグルタミン酸(PGA)を含んでいてもよい。PGAは胃や腸におけるカルシウムの溶解性を向上させ得る。
【0045】
好ましい実施形態において、本開示の組成物は、カルシウム、マグネシウムおよびコンドロイチン硫酸を含み得る。カルシウムおよびマグネシウムは上述のとおり任意の塩の形態で本開示の組成物中に含まれ得る。この実施形態において、組成物は、カルシウムおよびマグネシウム(または、カルシウム塩およびマグネシウム塩におけるカルシウム部分およびマグネシウム部分)を、カルシウム:マグネシウム=約10:1~50:1または約20:1~30:1の比で含み得る。この実施形態において、組成物は、カルシウムに対して(または、カルシウム塩におけるカルシウム部分に対して)コンドロイチン硫酸を、約0.2~5重量%または約0.5~3重量%の重量比で含み得る。特に好ましい実施形態において、本開示の組成物は、ユニカル(登録商標)(ユニカ食品株式会社)であり得る。ユニカル(登録商標)は、クエン酸、貝カルシウム、炭酸マグネシウムおよびサメ軟骨抽出物を含み、カルシウムと、カルシウム:マグネシウム=約10:1~50:1の比のマグネシウムと、カルシウムに対して約0.2~5重量%のコンドロイチン硫酸とを含む(特許第3131385号を参照のこと。なお、特許第3131385号は参照により本願に援用される。)。
【0046】
一つの実施形態において、塩として、酸成分(リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、塩酸、硫酸、炭酸、アルドン酸、ウロン酸、アルダン酸、アルギン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルカン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、ヒドロキシ酸、シクロヘキシルカルボン酸、タンニン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アジピン酸、ヒドロキシクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クロロゲン酸、サリチル酸、クレアチン、塩酸グルコサミン、グルコノ-δ-ラクトン、カフェ酸、胆汁酸、酢酸、アスコルビン酸、アルギン酸、エリソルビン酸、ポリグルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、テアニン、システイン、シスチン、アラニン、バリン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、セリン、リシン、ヒスチジン、オルニチン、メチオニン、カルニチン、アミノ酪酸、グルタミン、ヒドロキシプロリン、タウリン、ノルバリン、グルタチオン、サルコシン、ポリ-L-アスパラギン酸ンなど)と、塩基成分(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、グアニジン、グルコサミン、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、テアニン、システイン、シスチン、アラニン、バリン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、セリン、リシン、ヒスチジン、オルニチン、メチオニン、カルニチン、アミノ酪酸、グルタミン、ヒドロキシプロリン、タウリン、ノルバリン、グルタチオン、サルコシン、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-リジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-アルギニンなど)との任意の組合せにより形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸カリウム、硫酸マグネシウム、ミョウバン、塩化マグネシウム、リン酸のナトリウムまたはカリウム塩、炭酸のナトリウムまたはカリウム塩、アルギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グアニジンHCl、グルコサミンHCl、グルタミン酸ナトリウム、アデノシン1リン酸塩、グルコン酸マグネシウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウムおよびこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0047】
本開示の組成物は、酸味料、甘味料、調味料、香料、着色料、ミネラル、ビタミン、酸化防止剤、防腐剤、発泡剤、助泡剤、アルコール(例えば、エタノール)、結合剤、増量剤、増粘剤、界面活性剤、固化防止剤、果汁、野菜汁などの添加成分を含んでもよい。一般に食品に使用され得る任意の好適な添加成分が本開示の組成物において使用され得る。
【0048】
酸味料の例として、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、塩酸、硫酸、炭酸、アルドン酸、ウロン酸、アルダン酸、アルギン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルカン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、ケイ皮酸、ヒドロキシ酸、シクロヘキシルカルボン酸、タンニン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アジピン酸、ヒドロキシクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クロロゲン酸、サリチル酸、クレアチン、塩酸グルコサミン、グルコノ-δ-ラクトン、カフェ酸、胆汁酸、酢酸、アスコルビン酸、アルギン酸、エリソルビン酸、ポリグルタミン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
甘味料の例として、本明細書に記載の糖成分、ステビア、ステビオール配糖体、モグロサイド、羅漢果成分、モナチン、クルクリン、スクラロース、サッカリン、シクラマート、アスパルテーム、アセスルファムカリウムまたは他の塩、ネオテームなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本開示の組成物に添加される甘味料は、ステビア、アセスルファムカリウムおよび/またはスクラロースであり得る。
【0050】
調味料の例として、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、テアニン、システイン、シスチン、アラニン、バリン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、セリン、リシン、ヒスチジン、オルニチン、メチオニン、カルニチン、アミノ酪酸、グルタミン、ヒドロキシプロリン、タウリン、ノルバリン、グルタチオン、サルコシン、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-リジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-アルギニン、カフェイン、キニーネ、尿素、苦橙皮油、ナリンギンおよび苦木、イノシン1リン酸、グアノシン1リン酸、アデノシン1リン酸、シトシン1リン酸、ウラシル1リン酸、イソシン2リン酸、グアノシン2リン酸、アデノシン2リン酸、シトシン2リン酸、ウラシル2リン酸、イソシン3リン酸、グアノシン3リン酸、アデノシン3リン酸、シトシン3リン酸、ウラシル3リン酸、タンニン酸、ミョウバン、タンニン酸、ポリフェノール(例えば、茶ポリフェノール)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
香料の例として、メントール、柑橘類、ショウガ、マンゴー抽出物、シナモン、ココナツ、ビリジフロロール、アーモンド、バニリン、バニラ抽出物、ブドウ皮抽出物、ブドウ種抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
着色料の例として、アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素、リコピン、パプリカ色素、カロチノイド系色素、アカネ色素、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、キノン系色素、赤キャベツ色素、シソ色素、アントシアニン色素、タマリンド色素、ベニバナ色素、フラボノイド系色素、クロロフィリン、クロロフィル、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号、β-カロチン、リボフラビンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ミネラルの例として、亜鉛、鉄、銅、クロム、セレン、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ビタミンの例として、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなど)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノールなど)、ビタミンA(レチノール、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン)、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6(ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシンなど)、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12(シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミンなど)、ビタミンK(フィロキノン、メナキノンなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本開示の組成物は、ビタミンCおよび/またはビタミンDを含み得る。
【0055】
酸化防止剤の例として、アスコルビン酸、カテキン、ポリフェノール、ルチン、ネオヘスペリジン、ナリンギン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
防腐剤の例として、安息香酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
発泡剤の例として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
助泡剤の例として、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、ガラクトマンナン、グア豆繊維、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性トウモロコシ繊維、大豆食物繊維、それらの加水分解物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
結合剤の例として、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
増量剤の例として、本明細書に記載の糖成分、マルトデキストリン、コーンシロップ固体、ショ糖、果糖、ブドウ糖、転化糖、ソルビトール、キシロース、リブロース、マンノース、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、エリトリトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、麦芽糖、タガトース、ラクトース、イヌリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、ポリデキシトロース、フラクトオリゴ糖、セルロース及びセルロース誘導体、糖アルコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
増粘剤の例として、キトサン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ポリウロン酸、ポリガラクツロン酸、アラビアゴム、カラギーナン、ポリアルギニン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコールメチルエーテル)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリエチレンイミン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、ヘキサメタリン酸、およびポリエチレングリコールアルギン酸、乳清タンパク質、米タンパク質、大豆タンパク質、コラーゲン(例えばゼラチン)、部分的に加水分解したコラーゲンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
界面活性剤の例として、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリソルベート60)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドクセートまたはスルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム(塩化ヘキサデシルピリジニウム)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩素酸ナトリウム、カルバミル、塩化コリン、グリココール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ラウリルアルギン酸、ステアロイルラクチラート塩ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、レシチン、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
固化防止剤の例として、酒石クリーム、珪酸カルシウム、二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、リン酸3カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
上記において機能に基づいて各成分を分類して記載したが、ある機能を有する成分が別の機能に基づいて選択されることを妨げることが企図されるものではない。例えば、アスコルビン酸は、抗酸化剤として使用される場合も、酸味料として使用される場合もあることが当業者には容易に理解される。
【0065】
本開示の組成物は、任意の形態であってよく、例えば、液体、粉末、顆粒、錠剤、ペースト、カプセル、タブレット、懸濁液、食品形態などの形態であり得る。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
閉経後の日本人女性を対象に、カルシウム含有食品を摂取した時のカルシウム吸収を調べ、添加カルシウムの蓄積率を比較した。
【0067】
II.方法
1.研究デザイン
本研究は、健康な閉経後の日本人女性を対象とした、オープンラベルのランダム化並行群間クロスオーバー比較試験である。評価対象のカルシウム含有食品は、炭酸カルシウム、ユニカル(登録商標)(ユニカ食品株式会社、ユニカルカルシウム顆粒)、牛乳の3種類であり、炭酸カルシウムを基準としてそれぞれの食品のカルシウム吸収を評価した。
【0068】
本研究は2つの試験(試験1および試験2)で構成した(
図1)。それぞれ4日間の介入を3回実施した合計12日間の試験であり、各試験において被験者を2グループにランダム割付した。試験1では、19名の被験者を2つのグループAとBに分け、グループAは最初の介入カルシウム源として4日間牛乳を摂取し、その後4日間のウォッシュアウト(WO)期間、続いて炭酸カルシウムを4日間摂取した。グループBは、最初の介入カルシウム源として炭酸カルシウムを4日間、WO期間を4日間、牛乳を4日間摂取した。
同様に、試験2では、19名の被験者をグループCとDに分け、ユニカルと炭酸カルシウムのクロスオーバー試験を実施した。
【0069】
2.被験者
閉経後の女性で、日常的な便秘・下痢を認めず、介入カルシウム源の摂取が可能な者を対象とした。試験期間中、被験者にはカルシウム吸収に影響するアルコール、タバコ、コーヒーの嗜好品を禁止した。期間中の便と尿の採取を除いて、日常の活動を維持するように指示した。また、便秘が発生しないように、毎日の排泄状況を記録した。
【0070】
3.介入(基本食と添加カルシウム)
期間中、被験者に低カルシウム食(以下基本食)、間食、および水を提供した。基本食は、カルシウム250mg、エネルギー約1500kcal、たんぱく質45g、食物繊維12g、食塩8g/日以下に、間食はエネルギー400kcal、カルシウム量は20mg/日以下に設定した(表1)。さらに、介入期間では、介入カルシウム源を、450mg/日のカルシウム含有量で追加提供した。牛乳は225mgのCaを含有する製品を2パック提供し、ユニカルと炭酸カルシウムは1包あたり150mgを3回提供した。被験者には、提供した基本食と介入カルシウム源の全量を摂取することを求め、食事とともに摂取された。間食は範囲内で自由摂取とし、カルシウム摂取量の計算からは除外した。
【表1】
【0071】
4.カルシウム摂取および排泄の測定
カルシウム摂取量は基本食のカルシウム量と介入カルシウム源中のカルシウム量との合計とした。基本食中のカルシウム量は、基本食を冷凍保存し、重複食法にて測定した。カルシウム排泄量は、被験者から各期間の3日目と4日目に糞便と尿を収集した。採取された糞便は冷凍保存、尿は常温保存し重量を測定した。試験終了後に試料中のカルシウム量を測定した。基本食、尿、糞便のカルシウム量は、株式会社エスアールエル(大阪府堺市)にてICP発光分光分析法で測定した。それぞれのサンプルのカルシウム濃度に重量を乗じてカルシウム量とした。
【0072】
5.カルシウムの出納に関する指標
基本食のカルシウム量を測定し、試験期間ごとにそれぞれ1~4日、5~8日、9~12日の4日間ずつを平均した。
【0073】
介入カルシウム源に由来するカルシウムの吸収を評価するため、兼松ら(兼松重幸、「成人における各種食品中のカルシウム利用並びにカルシウム所要量に関する研究」、栄養と食糧、6:47~59(1952))に準じて、以下の計算を行った。「カルシウム蓄積量(C=A―B)」は、「カルシウム摂取量(A)」から、糞便中のカルシウム量と尿中カルシウム量の合計である「カルシウム排泄量(B)」を差し引いて算出した。次に、介入期間からWO期間の各量を差し引いて、「添加カルシウム摂取量(ΔA)」および「添加カルシウム蓄積量(ΔC)」を算出した。「カルシウム蓄積率(D)」は、ΔCをΔAで割ることによって決定した。
【0074】
6.血液検査および関連する検査
被験者の血液検査は、登録時と各介入およびWO期間の4日目に合計4回実施された。年齢、肥満度指数(BMI)、歩行、および血清カルシウムとリンのレベルは、カルシウム吸収に関連する可能性のある要因として測定された。さらに、骨代謝関連因子として、エストラジオールE2(E2)、オステオカルシン、1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25-(OH)2D3)、I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)の各濃度、および骨型アルカリホスファターゼ(BAP)を調べた。
【0075】
7.データ解析
記述統計はn(%)またはmean±SD(平均±標準偏差)として示した。クロスオーバー試験のカルシウム食品間の吸収の比較は、カルシウム蓄積率を評価指標として対応あるt検定を用い、有意水準は両側で5%とした。2群間の差の大きさは点推定値と95%信頼区間で表した。カルシウム蓄積率と各測定項目との相関についてPearson相関係数を用いて評価した。統計解析にはStata 14(株式会社ライトストーン、東京)を用いた。
【0076】
8.倫理的配慮
本研究は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針を遵守して実施した。被験者には試験の内容を説明し、自由意志による文書同意を得た。本研究は、大学病院医療情報ネットワーク研究センター(UMIN)臨床試験登録システムの公開データベース(UMIN-CTR)へ事前登録を行い(UMIN000037219)、医療法人日新会日新会病院の倫理審査委員会にて承認された(2019年2月26日)。
【0077】
III.結果
1.被験者の背景
38名の被験者が、医療機関の勤務者を対象に登録され、2018年7~8月に、通常の勤務を行いながら試験に参加した。被験者の背景情報を表2に示す。被験者の体格は平均的であり、血液検査は正常範囲であった。
【表2】
【0078】
2.カルシウムの摂取と排泄
試験期間中の基本食の残食はなく、間食摂取も提供範囲内で行われた。基本食の分析値を表3に、各試験期間のカルシウム摂取量と排泄量を表4および
図2に示す。試験1、試験2を通じて、カルシウム摂取量の平均値は、介入期間において664~668mg/日、WO期間において241mg/日であった。カルシウム蓄積量の平均値は、介入期間において-216~-246mg/日、WO期間は-346~-356mg/日となり、どの介入においても、WO期間と比較して介入期間中のカルシウム減少量が抑制されていることがわかる。
【表3】
【表4】
【0079】
3.介入カルシウム源間の比較
カルシウムを添加した場合と添加しない場合の蓄積率の変化を分析した結果を示す。試験1および試験2のすべての場合において、カルシウムの添加は、添加しない場合と比較して蓄積量(ΔC)を増加させた。カルシウム蓄積率(D)は、試験1で牛乳31.0%、炭酸カルシウム31.2%、ユニカルで29.9%、試験2で炭酸カルシウム23.9%であった。炭酸カルシウムを対照とした添加カルシウムの蓄積率の差は、ユニカル+6.1%(95%信頼区間-36.1%~48.3%、p=0.77)、牛乳-0.2%(同、-52.2%~51.8%、p=0.99)であった。
【表5】
【0080】
4.介入カルシウム源のカルシウム吸収と関連する因子の検討
介入カルシウム源のカルシウム蓄積量と被験者の背景ならびに骨代謝関連因子との相関を表6に示す。試験2のユニカル摂取時で年齢及びBAPと有意な相関がみられた。また、試験1の炭酸カルシウム摂取時では、血清リン濃度に相関がみられた。
【表6】
【0081】
図3は、ユニカル摂取期間中に蓄積されたカルシウムの量と被験者の年齢およびBAPとの間の関係を示している。若い被験者ほど、カルシウム摂取量が多い傾向があることがわかる。さらに、ユニカル摂取時のカルシウム蓄積は、血中BAPの増大に伴って増大することを示唆している。
【0082】
図4は、カルシウム蓄積率(D)と、年齢、血清カルシウムおよびリン濃度との相関係数を示す。試験2では、ユニカル摂取量の蓄積率と年齢の間に負の相関が観察された。一方、試験1では、炭酸カルシウム摂取の場合、高齢者ほど蓄積率が高く、蓄積率が高いほど血清リン濃度が低いことがわかる。したがって、吸収されたカルシウムはリンに結合し、溶出を抑制すると考えられる。また、試験1は、牛乳摂取の場合、蓄積率と血清リン濃度およびCa濃度との間に弱い負の相関があり、血清濃度が低いほど蓄積率が高いことを示している。
【0083】
図5は、カルシウム蓄積率(D)と、BMI、OC、NTX、およびBAPとの相関係数を示す。試験1では、蓄積率と相関する有意な要因は見つらなかった。対照的に、試験2は、炭酸カルシウムとユニカルの両方でカルシウムの蓄積が高い場合、OC、NTX、およびBAPも高いことを示す。ユニカルは、BMIが高い人でも比較的高いカルシウム蓄積効果があることも示唆された。
【0084】
(I群:年齢およびBAPのユニカル摂取時のCa吸収に対するカットオフ値)
ユニカル摂取時のCa吸収を+(Ca吸収量>0)および-(Ca吸収量≦0)の2区分に分け、ROC分析によって、Ca吸収が+となる年齢およびBAPのカットオフ値を算出した。年齢のカットオフ値は53歳(AUC:0.8643)、BAPのカットオフ値は17.6(AUC:0.8857)であった(
図6)。
【0085】
(I群:年齢およびBAP区分別ユニカル摂取時のCa吸収量)
カットオフ値で区分した年齢およびBAPのサブグループ間でユニカル摂取時のCa吸収量を比較した結果、年齢≦53歳のサブグループでは、年齢>53歳のサブグループと比較して、Ca吸収量が有意に高値であった(表7)。同様に、BAP≧17.6(μg/L)のサブグループでは、BAP<17.6のサブグループと比較して有意にCa吸収量が高値であった。
【表7】
【0086】
(I群:年齢・BAP区分別Ca吸収量:ユニカル・炭酸Ca・WO時)
年齢およびBAP区分別にユニカルおよび炭酸Ca摂取時のCa吸収量を算出し、WO時のCa吸収量と比較した。年齢≦53およびBAP≧17.6のサブグループにおいてユニカルはWO時と比較して、Ca吸収量が多い傾向がみられた(表8)。
【表8】
【0087】
(II群:炭酸Ca摂取時のCa吸収量への影響因子)
炭酸Ca摂取時のCa吸収量と、登録時の年齢、BMI、1日平均歩行量、血中アルブミン、Ca、K、P、総蛋白、HbA1c、エストラジオール濃度、オステオカルシン、1.25-(OH)
2VD、NTXおよびBAPとの相関を評価した。その結果、Ca吸収量とP濃度に有意な相関がみられた(表9)。
【表9】
【0088】
(II群:Pの炭酸Ca摂取時のCa吸収に関するカットオフ値)
炭酸Ca摂取時のCa吸収を+(Ca吸収量>0)および(Ca吸収量≦0)の2区分に分け、ROC分析によってCa吸収が+となるPのカットオフ値を算出した。カットオフ値は4.0(AUC:0.700)であった(
図7)。
【0089】
(II群:P区分別炭酸Ca摂取時のCa吸収量)
血中Pのカットオフ値で区分したサブグループ間で炭酸Ca摂取時のCa吸収量を比較した結果、P<4.0(mg/dL)のサブグループではP≧4.0(mg/dL)のサブグループと比較して有意にCa吸収量が多かった(表10)。
【表10】
【0090】
(II群:P区分別Ca吸収量:炭酸Ca・牛乳・WO時)
血中P区分別に炭酸Caおよび牛乳摂取時のCa吸収量を算出し、WO時のCa吸収量と比較した。P濃度<4.0(mg/dL)のサブグループにおいて、炭酸CaはWO時と比較してCa吸収量が有意に高値であった(表11)。
【表11】
【0091】
IV.考察
本研究では、閉経後の健康な日本人女性において、ユニカル、炭酸カルシウムおよび牛乳のカルシウム吸収を評価した。各群の蓄積率は、試験1は牛乳31.0%、炭酸カルシウム31.2%、試験2はユニカル29.9%、炭酸カルシウム23.9%であった。試験を通して、カルシウム排泄量がカルシウム摂取量を上回っており、特に摂取するカルシウムが少ないWO期間でこの傾向が顕著であった。
【0092】
ユニカルによる試験2は、比較的若年のヒトのカルシウム蓄積率が高く、ユニカルが骨代謝の活性化により効果的であることを示唆した。試験1は、これらの相関関係を示していない。同じカルシウム摂取量の平均カルシウム蓄積は、試験1では牛乳で-223mg/日、炭酸カルシウムで-224mg/日であったが、試験2ではユニカルで-216mg/日、炭酸カルシウムで-246mg/日であった。試験2で炭酸カルシウムによって蓄積されたカルシウムの量が他の場合よりも少なかったという事実は、それが吸収性の高いユニカルよりも骨代謝活動を誘発する効果が低いことを示唆している。
【0093】
本研究は、閉経後の女性においてカルシウム含有食品の吸収を評価した最初の研究である。現在の日本人の食事摂取基準において、カルシウムの推奨量は650mg/日とされているが、この値は高齢者を含めて成人のカルシウムの体内蓄積量が0mg/日という仮定に基づいて設定されている。対照的に、この研究の結果は、健康な閉経後の女性が660mg/日のカルシウムを摂取した場合、カルシウム蓄積は約-230mg/日であり、カルシウムの損失を示している。被験者は平均年齢58歳の閉経後の被験者であったため、カルシウム喪失率の高い閉経後の年齢層では、通常の推奨カルシウム摂取量ではカルシウム喪失を抑えることができなかったと考えられる。しかし、介入カルシウム源を摂取すると、介入カルシウム源がないWO期間に比べて蓄積量が増加し、介入カルシウム源がカルシウム喪失を抑制した。このことから、閉経後の女性では平均的にカルシウムの不足が起こっていると考えるべきであり、これを最小にするためには、さらに多くのカルシウム摂取、たとえば、骨粗鬆症患者へ推奨されている800~1000mg/日程度が必要であるかもしれない。
【0094】
経口摂取されたカルシウムは、その一部は腸管から吸収され、残りは糞便中に排泄される。並行して体内プールにあるカルシウムの一部が、尿中および糞便中に排泄される。したがって、全身を対象にしたカルシウム蓄積は負の値になることが起こり得る。閉経後の女性の場合、体内からのカルシウムの排泄は骨粗鬆症のリスクを高めるが、カルシウムサプリメントの過剰摂取は、心血管疾患のリスクを高める可能性も報告されている(Bolland MJ et. al., BMJ, 2008; 336, 262-266.:Bolland MJ et. al., BMJ, 2010; 341: c3691-3699.)。体内のカルシウム量を維持するためには、吸収性の高いカルシウム補給が必要であり、ユニカルはこれに好適であると考えられる。
【0095】
また、ユニカルの摂取はカルシウム蓄積とBMIの間に弱い相関を示した。梶田らによると、閉経後のBMIと骨塩密度の間には有意な正の相関があり、低体重は骨粗鬆症と骨折の危険因子であると報告されている(Kajita et. al., 1995; 50 (4): 893-900.:Yoneyama K et. al., Nihon Koshu Eisei Zasshi (Jpn J Public health), 2010; 57 (19): 880-889.)。したがって、閉経後の女性の初期段階でカルシウムの減少に伴って進行する体重減少を抑制することにより、骨代謝が活性化され、BMIの低下が防止され、骨粗鬆症の予防が期待される。
【0096】
V.結論
本研究では、3つの介入カルシウム源を用いて吸収比較試験を行った。炭酸カルシウムを比較対照とした場合の添加カルシウムのカルシウム蓄積率の差は、ユニカルは6.1%、牛乳は-0.2%であった。若年女子で行われた従来の報告とは異なり、閉経後の女性の体内カルシウムの喪失は顕著であった。しかし、その喪失は、添加カルシウムによって抑制された。この研究の結果は、吸収性の高いカルシウムサプリメントであるユニカルが、閉経後の日本人女性の骨粗鬆症の進行を抑制するのに効果的であることを示している。
【0097】
(まとめ)
・試験2において年齢およびBAPはユニカル摂取時のCa吸収量と有意な相関がみられた。年齢≦53歳のサブグループでは年齢>53歳と比較して、ユニカル摂取時のCa吸収量が有意に多かった。また、BAP≧17.6のサブグループではBAP<17.6と比較して、ユニカル摂取時のCa吸収量が有意に多かった。
・試験2において、ユニカルおよび炭酸Ca摂取時のCa吸収量をWO時と比較した結果、年齢≦53歳およびBAP≧17.6の各サブグループにおいて、ユニカル摂取時のCa吸収量はWO時より高い傾向がみられた。
・試験2において、ユニカルは、BMIが高いヒトにおいて比較的高いカルシウム蓄積効果があることが示唆された。
・試験1において、炭酸Ca摂取時のCa吸収量と登録時の血中Pに有意な相関がみられた。血中P濃度<4.0のサブグループではP≧4.0と比較して、炭酸Ca摂取時のCa吸収量が有意に多かった。
・試験1において、炭酸Caおよび牛乳摂取時のCa吸収量をWO時と比較した結果、炭酸Caおよび牛乳摂取時のCa吸収量は全体ではWO時と差がみられなかった。また、P<4.0mg/dLのサブグループにおいて、炭酸Ca摂取時のCa吸収量はWO時と比較して有意に高値であった。
【0098】
(実施例2)
摂取したCaは胃酸によって溶解しCaイオンとなって腸に送られ十二指腸で吸収されると報告されている(Diaz B.G. Barboza G. Guizzardi S. Talamoni N.T. (2015) Molecular aspects of intestinal calcium absorption, World J Gastroenterol., 21 (23), 7142-7154.)。Caを飲食物と共に摂取する場合には、飲食物の水分により胃酸が希釈および中和されるため、胃内のCaイオン化率が低下し腸での吸収率も低下すると考えられる。そこで希釈された胃液条件下におけるCa製剤について検討した。また、Caの溶解を補助する成分についても検討した。
【0099】
(材料と方法)
1:カルシウム製剤
Nano-CAL、ユニカル(登録商標)(ユニカ食品株式会社、ユニカルカルシウム顆粒)(UNICAL)、および市販の貝殻由来の炭酸カルシウム製剤(CaCO
3)を使用した。Nano-CALは、北海道産ホタテ貝殻を原料とするカルシウム製剤として開発した微粉末Ca製剤であり、天然ホタテ貝殻を粉砕および焼成して得られた酸化カルシウムCaOをクエン酸で中和したスラリーに各種配合剤を添加したのちスプレードライヤー法により細粒化した粉末である。以下の表にCa製剤の特徴をまとめる。粒子径は各Ca製剤を蒸留水に分散した時の公称値(参考値)を示す。
【表12】
【0100】
2:人工胃液希釈試験液の調製
胃酸液および希釈胃酸液におけるCa製剤の溶解性の検討のために、人工胃液濃度(%)を0、1、2、5、10、20、30、40、50、100の10段階に設定した溶液を調製した(各溶液のpHを
図8に示す)。
【0101】
3:Ca製剤の人工胃液溶解性試験
上記試験に基づき選択した10段階の濃度に設定した人工胃液希釈液に各種Ca製剤を添加し溶解試験を行った。Ca製剤添加量は、胃体積1L当たりCa 670mg(成人1日の推奨摂取量)に調製するために、溶解液10mLに対しNano-CALとUNICALは37mg(Ca 6.7mg)、CaCO3は16.7mg(同)とした。Ca製剤の溶解度は、所定量の試料を人工胃液希釈液に懸濁し撹拌したのち、30分間室温で静置した懸濁溶液を再度均一に撹拌し濁度OD(光源波長660nm)を測定することで求めた。Ca製剤濃度とODの関係は、Ca製剤の飽和水溶液に対しCa製剤を段階的に添加し、不溶性Ca製剤の懸濁濃度とODの関係から求めた。
【0102】
4:粒子径分布と走査型電子顕微鏡観察
蒸留水に分散したCa製剤微粒子を、粒子径分布測定装置(マイクロトラック MT3000)を用いて測定した。また、カーボンテープ面に塗布したCa製剤試料を、走査型電子顕微鏡(Hitachi S-3400N)を用いて10000倍の拡大倍率で観察し一次粒子と造粒構造の形状とサイズを比較した。
【0103】
5:ポリグルタミン酸添加溶解性試験
Nano-CALを天然水に対し3.7mg/mL(Ca=0.67mg/mL)の濃度で添加し、ポリグルタミン酸(PGA、味の素株式会社)の添加効果を比較した。溶解性試験液に対しPGA濃度を0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0mg/mlの10段階に設定し、Ca製剤の溶解度を比較した。また、UNICALを乳鉢と乳棒を用いて0、5、10、15分間摩砕し微粒子化した粉体の分散液(Ca=0.67mg/ml、人工胃液5%希釈水)に対し,PGAを2mg/ml添加し溶解度を比較した。
【0104】
(結果)
1:人工胃液希釈液によるCa製剤の溶解試験
図9は、人工胃液を希釈した水溶液に対する各Ca製剤の溶解度の変化を示す。人工胃液40%希釈液では、どのCa製剤も約100%溶解したが、人工胃液20%希釈液などのより希釈された溶液では、Ca製剤の溶解度は低下する傾向が見られたが、Nano-CALおよびUNICALの溶解度は、CaCO
3と比較して高かった。例えば、人工胃液5%希釈液ではNano-CALが51%、UNICALの溶解度が42%だったのに対し、CaCO
3は18%に低下した。このようにCaCO
3と比較してNano-CALやUNICALの方が溶解性が高いことが明らかとなった。また、人工胃液濃度10%~30%の範囲では粒子径が小さなNano-CALの方がUNICALよりもさらに溶解度が高いことが分かった。
【0105】
図10は、人工胃液希釈液の初期pHに対する各Ca製剤の溶解度の変化を示す。人工胃液濃度30%の場合はpHが2.0と酸性でありCa製剤はほぼ全量溶解した。より高いpHの溶液では、Ca製剤の溶解度は低下する傾向が見られたが、Nano-CALおよびUNICALの溶解度は、CaCO
3と比較して高かった。例えば、pHが3.0の溶液では、CaCO
3の溶解度が18%であったのに対し、UNICALは42%、Nano-CALは51%であった。このように人工胃液濃度に依存して水溶液の初期pHが変化した結果、各Ca製剤の溶解度も変化したことが分かる。
【0106】
2:粒子径と粒度分布
図11は、実験に用いたCa製剤のSEM画像を示す。高倍率(10000倍)画像を解析すると、Nano-CALの一次粒子の大きさは公称サイズである0.4μm~2μmほどであり、UNICALやCaCO
3よりも微細粒子であることが分かる。
【0107】
図12は、各Ca製剤を蒸留水に分散し測定した粒子径分布を示す。Nano-CALは、1μm未満の微細画分にもピークが観察され、平均粒子径は1.9μmであった。蒸留水中で部分的に溶解が進んだ結果、一次粒子が遊離し分散したと考えられる。一方、UNICALは平均粒子径が60.6μmの単一ピークであった。CaCO
3は6μm付近の主ピークが見られ、UNICALよりも粒径が小さいことが見出された。しかし、上記のように、より粒径の大きいUNICALの方が、CaCO
3より溶解度は高かった。
【0108】
3:ポリグルタミン酸添加試験
ポリグルタミン酸(PGA)濃度を段階的に変えた天然水にNano-CALを添加して外観を観察したところ、PGA無添加の場合は液が懸濁し、試験管の底部に白い沈殿が堆積したが、PGAを0.5mg/ml添加した場合は沈殿が消失し白濁し、2.5mg/ml以上のPGA濃度ではほぼ全量溶解した。UNICALは、PGA無添加の場合は一部が試験管の底部に沈殿し、液が白濁した(摩砕時間を増加させるほど白濁した)が、PGAを添加した場合には、沈殿部の残存は観察されたが、白濁は消失した。
【0109】
Ca製剤を飲食物に添加し摂取した場合は飲食物の水分により胃酸が希釈および中和されるため、胃内のCa溶解率が低下し小腸での吸収率も低下すると考えられている。胃液の主成分は塩酸(HCI)、タンパク質分解酵素(ペプシン)、粘液および水分であり、空腹時の胃液量は50mL以下と少量であるが、1回の食事で約500~700mL分泌され、1日の分泌量は約1500~2500mL、pHは1.0~1.5の酸性であると報告されている(第一薬品工業株式会社ホームページ、健康情報 2016.11.29版)。これに対し1回の食事における水分の摂取量は1L前後であるため、食中食後のCa補給剤の摂取を想定した溶解性は、人工胃液の希釈倍率を5%~50%の範囲で段階的に設定することで模倣できると考えられる。人工胃液希釈液を用いて各種Ca製剤の溶解性試験を行ったところ、Nano-CALおよびUNICALは、CaCO3よりも溶解度が高くなることが判明した。また、Nano-CALやUNICALにPGAを添加すると、溶解度が向上し得る。
【0110】
理論に拘束されることを意図しないが、食事により胃液が中和されている状態(pH4)における溶解性が高いことが、実施例1に示した特定のヒト群におけるUNICALの効果につながっていると考えられる。
【0111】
以上のように、本開示の好ましい実施形態および実施例を用いて本開示を例示してきたが、本開示はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載した構成の範囲内において様々な態様で実施することができ、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本開示は、ヒトによる摂取のためのカルシウム含有組成物を提供する。特に、本開示のカルシウム含有組成物は、効率の良いカルシウム吸収を提供し得る。