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特許7573314断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネル
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  • 特許-断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネル 図1
  • 特許-断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネル 図2
  • 特許-断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネル 図3
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  • 特許-断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネル 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20241018BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E04B1/80 100C
E04B1/76 400J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023119489
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505242633
【氏名又は名称】株式会社和紙空間
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勤
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078125(JP,A)
【文献】特開2015-229849(JP,A)
【文献】特開2004-176342(JP,A)
【文献】実開昭57-171031(JP,U)
【文献】特開2005-009288(JP,A)
【文献】特開2009-250004(JP,A)
【文献】特開2015-212463(JP,A)
【文献】特開2017-043945(JP,A)
【文献】登録実用新案第3152730(JP,U)
【文献】特開2024-107866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/80
E04B 1/76
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井や壁面に設置された平行する一対のガイドレール2間において、複数の断熱ユニットパネル1を並設するための取付構造であって、
前記断熱ユニットパネル1は、軟質で変形可能かつ矩形断面の断熱材11の外周縁部に枠材12が固定されて構成されており、
一方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を形態安定ならしめるチャンネル片12Aであって、このチャンネル片12Aの横幅は前記断熱材11の辺長よりも小さく、少なくとも当該断熱材11の両側端部近傍が露出した状態で固定されている一方、
他方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を前記ガイドレール2に取り付けるための取付片12Bであって、この取付片12Bの上面には、弾性変形可能な折曲板バネ13が一体に延成されて構成されており、
一方の折曲板バネ13の凹部13Aを、前記ガイドレール2のフランジ21に衝止させた状態で、他方の折曲板バネ13の斜面13Bを、対向するガイドレール2のフランジ21の先端部に当接させて摺動しつつ押し込むことができ、
前記折曲板バネ13の弾性変形および前記断熱材11の圧縮変形によって、折曲板バネ13の凸部13Cが、ガイドレール2のフランジ21の先端部21aを乗り越えることができる一方、
当該フランジ21の先端部21aを乗り越えた先で前記折曲板バネ13および前記断熱材11が復元して、折曲板バネ13が元の位置に復帰することによって、
前記断熱ユニットパネル1が前記ガイドレール2間に挟装可能であるとともに、前記断熱ユニットパネル1が、ガイドレール2の長手方向に沿ってスライド可能に構成したことを特徴とする断熱パネル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質な断熱材の素材特性を巧みに利用し、押し込む動作だけで簡単に取り付けることができ、かつ、スライド可能で複数のユニットパネルを次々と並設させることができる断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井や壁面において断熱材などのパネルを設置する手段として、平行する一対のガイドレールの間にパネルを取り付けるものが知られている。
【0003】
従来、このような取り付け構造として、パネル側に設けられた取付具の弾性部材を弾性変形させて押し込み、凹凸を嵌合させて固定するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この<特許文献1>における壁面パネルのように、通常は天井材や壁面材には石膏や板材などの硬質な材料が使用されていることが多く、天井材や壁面材が変形することはないことから、取付時には取付具の弾性部材のみを変形させることになるため、押し込む際の力加減が難しく施工性が悪いという問題がある。
【0005】
即ち、押し込む力が弱過ぎると、ガイドレール間への嵌合が不十分でパネルの脱落や落下の原因となって危険であるし、逆に、押し込む力が強過ぎると、勢い余って必要以上にパネルが奥に押し込まれてしまい、パネルを破損したり、作業者のケガにつながるおそれがあった。
【0006】
また、グラスウールなどの軟質な断熱材を天井や壁面に設置する場合は、単純に断熱材を圧縮するなどして変形させて、隙間に詰め込んで固定する方法が一般的であるが、断熱材のサイズは比較的大きく、敷き詰める手間がかかるため、施工負担の軽減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公平6-24511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、軟質な断熱材の素材特性を巧みに利用し、押し込む動作だけで簡単に取り付けることができ、かつ、スライド可能で複数のユニットパネルを次々と並設させることができる断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、天井や壁面に設置された平行する一対のガイドレール2間において、複数の断熱ユニットパネル1を並設するための取付構造であって、
前記断熱ユニットパネル1は、軟質で変形可能かつ矩形断面の断熱材11の外周縁部に枠材12を固定して構成し、
一方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を形態安定ならしめるチャンネル片12Aであって、このチャンネル片12Aの横幅は前記断熱材11の辺長よりも小さく、少なくとも当該断熱材11の両側端部近傍が露出した状態で固定する一方、
他方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を前記ガイドレール2に取り付けるための取付片12Bであって、この取付片12Bの上面には、弾性変形可能な折曲板バネ13を一体に延成して構成し、
一方の折曲板バネ13の凹部13Aを、前記ガイドレール2のフランジ21に衝止させた状態で、他方の折曲板バネ13の斜面13Bを、対向するガイドレール2のフランジ21の先端部に当接させて摺動しつつ押し込むことができ、
前記折曲板バネ13の弾性変形および前記断熱材11の圧縮変形によって、折曲板バネ13の凸部13Cが、ガイドレール2のフランジ21の先端部21aを乗り越えることができるようにする一方、
当該フランジ21の先端部21aを乗り越えた先で前記折曲板バネ13および前記断熱材11が復元して、折曲板バネ13が元の位置に復帰することによって、
前記断熱ユニットパネル1を前記ガイドレール2間に挟装可能にするとともに、前記断熱ユニットパネル1を、ガイドレール2の長手方向に沿ってスライド可能に構成するという技術的手段を採用したことによって、断熱パネル取付構造を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、断熱材の外周縁部に固定した枠材の形状に特徴を有し、天井や壁面への取付時に断熱材を変形させる際に枠材同士が干渉しないため、断熱材の形態安定性を保持しつつも、無理なく変形させることができる。
【0013】
このように、本発明は、軟質な断熱材の素材特性を巧みに利用し、折曲板バネおよび断熱材の両方を変形させることができるため、取付時の抵抗力が小さく、押し込む動作だけで簡単に取り付けることができるのである。
【0014】
また、ガイドレールへの取付後にスライド可能であるため、複数のユニットパネルを次々と取り付けて並設することができ、フラットで見栄えの良い外観を形成することができる。
【0015】
更にまた、特に、天井に設置する場合には、断熱ユニットパネルがスライド可能に挟装されているため、このクリアランスによって、地震等の振動や衝撃も吸収可能で落下を防止することができて非常に安全である。
【0016】
更にまた、断熱ユニットパネルは軽量で無理なく変形できるため、力加減の調節も容易で、施工作業の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の断熱ユニットパネルを表わす斜視図である。
図2】本発明の実施形態の断熱ユニットパネルを表わす斜視図である。
図3】本発明の実施形態の断熱パネル取付構造を表わす説明側面図である。
図4】本発明の実施形態の断熱パネル取付構造を表わす説明側面図である。
図5】本発明の実施形態の断熱パネル取付構造を表わす説明側面図である。
図6】本発明の実施形態の断熱パネル取付構造を表わす説明側面図である。
図7】本発明の実施形態の断熱パネル取付構造を表わす説明側面図である。
図8】本発明の実施形態の断熱パネル取付構造の使用状態を表わす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは断熱ユニットパネルであり、符号2で指示するものはガイドレールである。
【0019】
まず、本実施形態の断熱ユニットパネル1の構成について説明する(図1および図2参照)。前記断熱ユニットパネル1は、軟質で変形可能かつ矩形断面の断熱材11の外周縁部に枠材12が固定されて構成されている。本実施形態の断熱材11には、軽量で断熱性が高く、吸音性にも優れていることから、積層構造のグラスウールを採用する。
【0020】
断熱材11が矩形断面であるとは、基本的には平板状に近い直方体における平面視の形状をいうが、断熱材11は中実のものに限定されず、軟質で変形可能という性質からも、発泡体(フォーム、スポンジ)やハニカム構造など中空部分を有するものも含まれる。
【0021】
また、本実施形態では、枠材12の使用材料として、弾性および耐食性に優れており、軽量で加工性が良く。低コストであることから、ガルバリウム鋼板(登録商標/JIS規格名称:溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板)やアルミニウム等の金属材料を採用することが好ましいが、同様の性質を有するプラスチック材料を採用することもできる。
【0022】
次に、本実施形態の枠材12の構成について説明する。この枠材12は、矩形断面の断熱材11の外周縁部に固定される部材であるため、2組の対辺でそれぞれ別の構造および機能を有して構成されている。
【0023】
まず、一方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を形態安定ならしめるチャンネル片12Aであって、このチャンネル片12Aの横幅は前記断熱材11の辺長よりも小さく、少なくとも当該断熱材11の両側端部近傍が露出した状態で固定されている。
【0024】
本実施形態では、チャンネル片12AはL字型断面のチャンネル材(アングル材)であって、断熱材11の上面から側面にかけて接着されて固定されている。また、断熱材11の両側端部近傍を露出させる主目的は、断熱材11を形態安定させることであり、露出部分は後述する断熱材11の変形を許容するための非接着部位に過ぎないため、具体的には約1~2cm程度の幅の露出で十分である。
【0025】
そして、他方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を前記ガイドレール2に取り付けるための取付片12Bであって、この取付片12Bの上面には、弾性変形可能な折曲板バネ13が一体に延成されて構成されている。
【0026】
本実施形態では、折曲板バネ13の凹部13Aの角度を45°~50°の範囲にして、かつ、凸部13Cの角度を90°にすることが好ましく、押し込み作業時の抵抗力を少なくするとともに、断熱材11の脱落を確実に防止することができる。
【0027】
次に、本実施形態の断熱パネル取付構造およびその施工手順について説明する(図3図7参照)。本実施形態では、天井や壁面に設置された平行する一対のガイドレール2間において、複数の断熱ユニットパネル1を並設するためのものである。
【0028】
ガイドレール2は、天井に設置する場合は天井から吊下された部材であって、下端にフランジ21が形成されている。このフランジ21は、下端から垂直方向に延成されており、両側に延成したT字型断面のものであっても、片側に延成したL字型断面のものであっても良い。
【0029】
まず、一方の折曲板バネ13の凹部13Aを、前記ガイドレール2のフランジ21に衝止させる(図4参照)。そして、その状態のままで、他方の折曲板バネ13の斜面13Bを、対向するガイドレール2のフランジ21の先端部に当接させて摺動しつつ押し込む。
【0030】
すると、前記折曲板バネ13の弾性変形および前記断熱材11の圧縮変形によって、折曲板バネ13の凸部13Cが、ガイドレール2のフランジ21の先端部21aを乗り越えることができる。
【0031】
このように力が加わったとき、時折曲板バネ13および断熱材11の材質の弾性や密度の微妙な偏倚によって、図5に示すように、両方の折曲板バネ13および断熱材11が変形する場合もあるし、図6に示すように、片方の折曲板バネ13および断熱材11が変形する場合もある(図示した左側単独の変形に限らず、図示しない右側単独の変形でも良い)。なお、断熱材11の圧縮変形は、取付施工時の一時的なものであってパネルを頻繁に着脱するものではないから、断熱材11は直ちに復元し、変形履歴が残存することはない。
【0032】
なお、折曲板バネ13および断熱材11を変形させる場合、折曲板バネ13の凹部13Aが形成される折曲部が、断熱材11の表面を押圧するが、この折曲部はチャンネル片12A(の上面)に接触せず、枠材同士が干渉しないため、断熱材11の形態安定性を保持しつつも、スムースに弾性変形させることができるのである。
【0033】
然る後、折曲板バネ13の凸部13Cが当該フランジ21の先端部21aを乗り越えた先で前記折曲板バネ13および前記断熱材11が復元して、かつ、折曲板バネ13が元の位置に復帰する。
【0034】
こうすることによって、前記断熱ユニットパネル1が前記ガイドレール2間に挟装可能である(図7参照)。
【0035】
そして、図8に示すように、取り付けた前記断熱ユニットパネル1は、ガイドレール2の長手方向に沿ってスライド可能であり、断熱ユニットパネル1を移動させて、同様の要領で、他の複数の断熱ユニットパネル1を次々と取り付けて並設することができ、フラットで見栄えの良い外観を形成することができる。
【0036】
また、このようにスライド可能なクリアランスな可動域を有することによって、振動や衝撃のエネルギーを吸収することができ、断熱ユニットパネル1の脱落や落下等を効果的に防止することができる。
【0037】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、枠材12のチャンネル片12AはL字型断面に限らず、コの字断面であっても良く、断熱材11本体を挟んで上面から側面、下面にかけて接着して固定しても良い。
【0038】
また、折曲板バネ13は、通常は取付片12Bの全長に亙って設けるが、部分的に設けたり、複数箇所に設けても良い。
【0039】
更にまた、本発明は天井に設置する構造を説明しているが、ガイドレールを有するものであれば、天井のような水平方向に設置される構造物における適用に限らず、壁面のような鉛直方向に設置される構造物における適用も当然に可能であり、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0040】
1 断熱ユニットパネル
11 断熱材
12 枠材
12A チャンネル片
12B 取付片
13 折曲板バネ
13A 凹部
13B 斜面
13C 凸部
2 ガイドレール
21 フランジ
【要約】
【課題】 軟質な断熱材の素材特性を巧みに利用し、押し込む動作だけで簡単に取り付けることができ、かつ、スライド可能で複数のユニットパネルを次々と並設させることができる断熱パネル取付構造およびそれに用いる断熱ユニットパネルを提供すること。
【解決手段】 軟質で変形可能かつ矩形断面の断熱材11の外周縁部に枠材12が固定されて構成されており、
一方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を形態安定ならしめるチャンネル片12Aであって、このチャンネル片12Aの横幅は前記断熱材11の辺長よりも小さく、少なくとも当該断熱材11の両側端部近傍が露出した状態で固定する一方、
他方の対辺に配設された前記枠材12は、前記断熱材11を前記ガイドレール2に取り付けるための取付片12Bであって、この取付片12Bの上面には、弾性変形可能な折曲板バネ13を一体に延成して構成する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8