(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】バッグ式オムツ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61F5/44 D
(21)【出願番号】P 2023216286
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523480118
【氏名又は名称】田中 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-500132(JP,A)
【文献】特表2019-518492(JP,A)
【文献】実開平06-005614(JP,U)
【文献】登録実用新案第3180012(JP,U)
【文献】特開2008-253584(JP,A)
【文献】特開2008-229085(JP,A)
【文献】特表2003-521281(JP,A)
【文献】特開2001-029378(JP,A)
【文献】特開2006-158576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面(1a)と外側面(1b)及び収容部(1c)を有する非透水性フィルムからなる袋状の本体部(1)、前記本体部(1)の内側面(1a)の中央部付近に設置した便導部(2)、前記便導部(2)の周囲
であって且つ前記便導部(2)から離間した前記内側面(1a)
又は前記内側面(1a)の外縁外側に設置した少なくとも1つの固定用粘着部(3)とからなり、前記便導部(2)が、前記内側面(1a)に粘着面(4)を有し、
前記粘着面(4)が、非透水性フィルム又はエラストマーフィルムからなる基材に、粘着剤を積層したものであり、且つ当該粘着面(4)に、前記本体部(1)の前記内側面(1a)を貫通するように形成された便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)を
設け、前記粘着面(4)により肛門を含む臀裂部に貼り付けた前記便導部(2)が前記肛門の開閉する動きに追従して開閉するようにしたことを特徴とするバッグ式オムツ。
【請求項2】
前記便導線状切込み(5)が、中心部から放射状に広がる場合にその中心部に開孔を設けたものである請求項1記載のバッグ式オムツ。
【請求項3】
前記便導孔(5‘)が、エラストマーフィルムである前記基材に形成されたものである請求項1記載のバッグ式オムツ。
【請求項4】
前記便導部(2)及び固定粘着部(3)を除く前記内側面(1a)がトップシート(6)で覆われている請求項1
、請求項2又は請求項3記載のバッグ式オムツ。
【請求項5】
前記便導部(2)の前記粘着面(4)の外周の全部または一部に所定の幅で前記本体部(1)に非接着状態で当接するピックアップ部(7)を有する請求項1
、請求項2又は請求項3記載のバッグ式オムツ。
【請求項6】
前記便導部(2)の前記粘着面(4)及び前記固定用粘着部(3)が剥離紙(8)で被覆されている請求項1
、請求項2又は請求項3記載のバッグ式オムツ。
【請求項7】
前記外周面(1b)の中央部付近であって、且つ前記便導部(2)の前記便導線状切込み(5)
又は便導孔(5‘)に対応する位置に中心マーク(9)が表示されている請求項
1、請求項2又は請求項3記載のバッグ式オムツ。
【請求項8】
前記外周面(1b)に補助固定用の紐又は帯状体(10)が設置されている請求項1記載のバッグ式オムツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大便を溜めるバッグを有し、大便による肛門部の不快な汚れの拡散や悪臭の放散を低減できるとともに、装着や脱着及び廃棄処理が簡単にかつ衛生的にできる使い捨てバッグ式オムツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙オムツは、総じてパンツ式および巻きつけ式に分類されるものであり、排泄物を吸水性高分子に含浸させるものが多い。一方、吸水性高分子の代わりに、送便管を肛門部外周部に粘着剤で貼り排便を収容部に導く方法(特許文献1参照)や性器と肛門が接触する位置に開口部を設け、大便溜め袋と小便溜め袋を具備した排泄物溜め袋付きオムツ(特許文献2参照)などの発明が開示されている。
【0003】
しかし、パンツ式および巻きつけ式オムツはその装着や脱着作業に手間が掛かるという課題があった。一方、送便管などを使用した場合は、大便の逆流が起きるおそれがあり、また装着時に送便管の存在による違和感が臀部に生じることがある。さらに、排泄物溜め袋付きオムツの場合も、大便が開口部から溜め袋にうまく取り込まれずに臀部に広がって不衛生となることや、装着者が不快に感じるなどの問題がある。加えて、吸水性高分子を使用した紙オムツは超高齢化社会が進むにつれてその使用ごみが年々増えつづけ焼却施設や環境に負荷がかかるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6959470号公報
【文献】特開2001-29378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、使用者本人(以下、「着用者」という。)の使用時の不快感の低減や着用者の介護者(以下、単に「介護者」という。)の交換処理手数を減らして容易にし、更に雑菌などの放菌や悪臭の放散を極力低減できるバッグ式オムツを提供することである。また、使用済みオムツごみの総量を減らすこともできるようにすることである。
すなわち、本発明は、使い心地の良さ、衛生面、交換介護のし易さなどの利便性と機能性を兼ね備え、且つ使用済み後の廃棄処理や環境への負荷を低減し得る使い捨てオムツを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
内側面(1a)と外側面(1b)及び収容部(1c)を有する非透水性フィルムからなる袋状の本体部(1)、前記本体部(1)の内側面(1a)の中央部付近に設置した便導部(2)、前記便導部(2)の周囲であって且つ前記便導部(2)から離間した前記内側面(1a)又は前記内側面(1a)の外縁外側に設置した少なくとも1つの固定用粘着部(3)とからなり、前記便導部(2)が、前記内側面(1a)に粘着面(4)を有し、前記粘着面(4)が、非透水性フィルム又はエラストマーフィルムからなる基材に、粘着剤を積層したものであり、且つ当該粘着面(4)に、前記本体部(1)の前記内側面(1a)を貫通するように形成された便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)を設け、前記粘着面(4)により肛門を含む臀裂部に貼り付けた前記便導部(2)が肛門の開閉する動きに追従して開閉するようにしたことを特徴とするバッグ式オムツである。
【0007】
本発明はまた、前記便導線状切込み(5)が、中心部から放射状に広がる場合にその中心部に開孔を設けたものであるバッグ式オムツである。
【0008】
本発明はまた、前記便導孔(5‘)が、エラストマーフィルムである前記基材に形成されたものであるバッグ式オムツである。
【0009】
本発明はまた、前記便導部(2)及び固定粘着部(3)を除く前記内側面(1a)がトップシート(6)で覆われているバッグ式オムツである。
【0010】
本発明はまた、前記便導部(2)の前記粘着面(4)の外周の全部または一部に所定の幅で前記本体部(1)に非接着状態で当接するピックアップ部(7)を有するバッグ式オムツである。
【0011】
本発明はまた、前記便導部(2)の前記粘着面(4)及び前記固定用粘着部(3)が剥離紙(8)で被覆されているバッグ式オムツである。
【0012】
本発明はまた、前記外周面(1b)の中央部付近であって、且つ前記便導部(2)の前記便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)に対応する位置に中心マーク(9)が表示されているバッグ式オムツである。
【0013】
本発明はまた、前記外周面(1b)に補助固定用の紐又は帯状体(10)が設置されているバッグ式オムツである。
【0014】
また別の観点から、本発明は、上記のバッグ式オムツの使用方法であって、前記便導部(2)の前記便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)を着用者の肛門に当接させ、且つ前記粘着面(4)を着用者の肛門を含む臀裂部に粘着させることを特徴とするバッグ式オムツの使用方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着用者の使用時の不快感の低減や介護者の交換処理手数を減らして容易にし、更に雑菌などの放菌や悪臭の放散を極力低減できるので、介護事業における衛生管理を容易にできるとともに、介護者や着用者の肉体的精神的負担を低減することができる。更に、吸水性高分子を使用しないことから使用後に生ごみとして廃棄される総量を削減でき、環境負荷を低減することにもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】本発明のバッグ式オムツの使用後に便導部の粘着面を折りたたむ様子を示す図である。
【
図5】本発明のバッグ式オムツの使用後に固定用粘着部を貼り合わせた状態とそのF-F線断面を示す図である。
【
図6】本発明のバッグ式オムツを着用者が装着した状態を示す図である。
【
図7】固定用粘着部の実施態様の例及び紐又は帯状体の実施態様の例を示す図である。
【
図8】便導線状切込みの実施態様の例を示す図である。
【
図9】
図1に於けるE-E線断面に関し、肛門の開閉の動きに追従して便導部の粘着面及び便導線状切込みが開閉する様子を示す図である。
【
図10】本発明のバッグ式オムツを着用者に装着するときの肛門と便導部の位置合わせの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明はいかなる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の使い捨てバッグ式オムツの全体平面図であり、主に密封シールされた非透水性フィルムの袋状の本体部(1)と、その本体部の中央付近に形成された便導部(2)及び固定用粘着部(3)から構成される。
【0019】
本体部(1)は、人肌に触れる内側面(1a)とその裏側となる外側面(1b)及び収容部(1c)を有する非透水性フィルムからなる密閉可能な袋状構造で、主として大便を受け容れて溜めるものである。
【0020】
その材質はポリエチレン、ポリプロピレン、その他の高分子材料が好適に使用できるが、撥水加工処理した紙や生分解プラスチックなどの自然分解される素材も活用できる。
【0021】
本体部(1)は、着用者が感染性の細菌の保菌者で、危険な排泄物の衛生管理が必要な場合などは、その全体を特別に着色することや取扱注意の表示を付すことにより、使用後の最終処理の安全性と誤認を防止できる。
【0022】
本体部(1)の外周輪郭形状は矩形が最も入手しやすく、且つ生産時に発生する廃棄ロスも発生しないので適している。
【0023】
本体部(1)の大きさは、成人の1回当たり排便量が普通サイズのバナナ約1~2本分程度であることから、その容積を約200cc~450ccとする。矩形のプラスチックフィルムバッグの場合、その外形寸法は、縦約300mm、横約230mmを目安として、着用者の体格や食事量等に基づく排便量や様々な介護処置の緊急性などの事情に応じて、小さくすることや大きくすることができる。
【0024】
内側面(1a)は人体や肌に直に接する面であるが、中央部には便導部(2)、上部や側面部には固定用粘着部(3)が設置されており、それ以外の部分は肌刺激性の低いトップシート(6)で覆われていて使い心地や肌触りの良さの向上を図るとともに肌への負荷も低減している。
【0025】
外側面(1b)は、内側面(1a)の裏面側であり、その中央部には内側面(1a)の便導部(2)の形成位置で、特に粘着面(4)内の便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)の位置に対応した中心マーク(9)が表示されており、装着時にこれを目印にすることで、着用者の肛門に正確に便導部(2)を位置合わせして貼り付けることができる。
【0026】
図3は、本発明に係るバッグ式オムツの底面図を示しており、中心マーク(9)に指をあわせて押し付けるようにすることで、正確に便導部(2)を肛門部に狙いを合わせて貼りつけることができる。
図10はそのような本発明のバッグ式オムツを着用者に装着するときの肛門と便導部(2)の位置合わせの様子を示す。
【0027】
便導部(2)は、本体部(1)の内側面(1a)の中央部に設置され、前記内側面(1a)に粘着面(4)を有し、且つ当該粘着面(4)から前記本体部(1)の前記内側面(1a)を貫通するように形成された便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)、並びにバッグ式オムツの使用後に前記粘着面を着用者の肌から剥がしやすくするための前記粘着面(4)の外周に位置するピックアップ部(7)とからなっている。
【0028】
便導部(2)は、前記本体部(1)の内側面(1a)の中央部付近に設置し、その位置は本発明のバッグ式オムツ全体の上下、左右共にほぼ2分割の中央位置にあるのが、排便する肛門の位置への対応やバッグ式オムツを着用する際や着用中の多少の位置ズレなどを考慮すると最も好ましい。
【0029】
便導部(2)は本発明のバッグ式オムツの着用者が排便するときに、大便を本体部(1)に導くための開口部となり、排便が終了したときは大便の逆戻りを防ぐ閉塞部となる機能を有する。
【0030】
そのために、便導部(2)は粘着面(4)で肛門及び臀裂部に貼り付けられ排便時に肛門の形状に追従して便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)が開き、又排便の通過圧力で開いた便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)を通じて便を本体部(1)の収容部(1c)であるバッグの中に導き、排便が終わると肛門の形状に追従して便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)は閉じて、上記収容部(1c)(若しくはバッグ)内の便の臀部への逆流と拡がりを防ぐ。
【0031】
上記の様に便導部(2)は排便の時のみに肛門部の開閉の動きの形状に追従して開閉する構造だが、肛門部の汚れは基本的に便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)の開口隙間だけなので臀部の汚れはごく僅かで介護の作業簡素化になる。
【0032】
図9はこのような便導部(2)の肛門の動きに追従した開閉動作を示す図である。
【0033】
(o)には着用者のヒップライン(11)と肛門と共に本発明のバッグ式オムツを装着した状態が示されている。この時、便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)は閉じている。
【0034】
次に(p)は、着用者の排便開始初期の状態を示す。この時、便が出始め、便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)は着用者の肛門の開きに追従して少し開く。
【0035】
続いて(q)は、着用者の排便中の状態を示す。この時、便は連続的に排出され、着用者の肛門の開きは最大となり、便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)の開きも大きくなる。
【0036】
最後に(r)は、着用者の排便が終了した状態を示す。この時、便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)は、肛門が閉じる動きに追従して元のように閉じる。
【0037】
以上の便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)の肛門の開閉に追従する動作は、本発明の便導部(2)を粘着面(4)で着用者の特に肛門に貼り付くように工夫したことによる。
【0038】
なお、粘着面(4)は、非透水性フィルム又はエラストマーフィルムからなる基材に、粘着剤を積層したものである。非透水性フィルムとしては本体部(1)と同じものが使用できる。エラストマーフィルムとしては伸縮性の天然又は合成ゴムをシートやフィルム状に成形したものが使用でき、特に伸縮性、引張強度及び安全性等に優れる天然ゴムラテックス、水系又は溶剤系ポリウレタン又はポリイソプレン等のゴムが好適に使用できる。
【0039】
粘着面(4)の粘着部分は粘着面の全部であることが望ましいが、着用者の排便の開始から終了までの肛門の動きに追従可能であったり、排便時や排便終了後における便の肛門周辺への広がり汚染を防止できるのであれば、必ずしも粘着面の全面でなくて一部であっても良い。例えば、便導線状切込み(5)の中心位置やピックアップ部(7)付近などは粘着しないようにすることもできる。
【0040】
便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)は、排便の本体部(1)の収容部(1c)への導きの役目や臀部への便の広がりなどを防いでいる。
【0041】
なお、当然のことであるが、便導線状切込み(5)と便導孔(5‘)は併用して、例えば便導孔(5‘)の外周に便導線状切込み(5)を設けるようにすることもできる。
【0042】
便導線状切込み(5)の具体的な形態の例を
図8の(h)~(m)に示す。すなわち、X字状やこれを基本とした放射状の線状切込みや十字状やこれを基本とした横断線が複数の線状切込みを有する。これらの中でも、特にX字状のように、縦の切込み線が無いものが、排便時の臀部や性器やその周辺への便の広がりをより少なくするうえで好ましい。
【0043】
また、便導線状切込み(5)の切込み線がその中心部から放射状に広がるX字状や十字状やそれらを基本とした線状切込みの場合(h、i、jなど)、粘着面(4)の中心部に直角や鋭角の尖った形状の切込み片が形成され、これが着用者の肛門部に刺さると痛みを感じることがある。そのような場合には、(k)や(l)に示すように、その切込み片の尖った先端を適宜例えば小さな又は大きな円形状や多角形状に切除することで、そのような痛みを感じるような不都合を回避することができる。
【0044】
一方において、便導線状切込み(5)の中心部に予め円形状や多角形状の孔を開けておくことで、着用者の使用感を改善したり、排便をし易くすることができる。加えて、便導線状切込み(5)の中心部付近が排便により汚れることを低減できる。なお、このように便導線状切込み(5)の中心部に予め孔を開けておく場合、バッグ式オムツを使用後に脱着するときに、着用者の肛門付近を清浄に拭き取るなどの処置が必要になる。しかし、そのような孔を設けない場合にもほぼ同様の処置は必要であり、さほど不都合なことではないと言える。
【0045】
又、便導線状切込み(5)を延長することで小便を受け容れるように使用することも可能だが、必要に応じ、性器周辺の体毛を剃ることや吸水性高分子や凝固剤を本体部(1)の収容部(1c)に入れて併用使用するなど、オムツ外部に尿が漏れ難いようにする等の工夫が必要である。
【0046】
便導孔(5‘)の具体的な形態の例を
図8の(n)に示す。便導孔(5‘)は、粘着面(4)のほぼ中央部に配置され、円形や楕円形や多角形状の開孔を有する。
【0047】
粘着面(4)の全体をエラストマーフィルム基材で作成することもできるが、粘着面(4)の中央部分の一部のみをエラストマーフィルム基材で作成することもできる。いずれの場合も、本体部(1)の内側面(1a)の、便導部(2)全体の形状や大きさ若しくは便導部(2)の中央の一部に合わせて切り取り開口した非透水性フィルムに、エラストマーフィルム基材を粘着剤や熱融着処理で固定して、便導孔(5‘)の位置を決めて設置するようにする。
【0048】
便導部(2)の大きさや形状は、本体部(1)の内側面(1a)内の中央部付近に収まる範囲で自由に決められるが、第一に排便を確実に本体部(1)の収容部(1c)に導き且つ着用者の臀部を汚さないようにするために、次に着用者の臀部や肛門への装着時の使用感並びに固定用粘着部(3)やトップシート(6)を設置する都合などを考慮して、最適な範囲や形状とする必要がある。
【0049】
一例としては、
図8の(h)に示すように、縦横の寸法がそれぞれ約100mm~約120mm及び約70mm~約90mm程度であり、形状としては縦長の長方形や楕円形が望ましい。
【0050】
また、便導線状切込み(5)のサイズは、着用者の肛門が最大に開く場合を基準に設計する。一例としては、同じく
図8の(h)に示すように、大便の直径が最大約35mmとして、縦と横の長さをそれぞれ約40mmと約35mm程度とするのが良い。
【0051】
さらに、便導孔(5‘)の開孔部の直径は、基材のエラストマーフィルムの伸縮性にもよるが、大便の最大直径が約35mmであることから、それ以下であることが望ましく、肛門やその周辺への便の広がりを低減するためには更に小さい方が望ましい。具体的には開孔部の直径が約30mm以下であることが好ましく、約20mm以下であることがより好ましく、約15mm以下であることがさらに好ましい。
【0052】
固定用粘着部(3)は、着用者の臀部や尾骨付近の背中下部に貼って本発明のバッグ式オムツを固定する役割をする。固定用粘着部(3)は、
図7に示すように、便導部(2)の周囲の内側面(1a)、内側面(1a)の外縁外側又はそれらの両方に少なくとも1つ設置する。なお、着用者の体への固定の確実性や固定力を高めるためには複数設置することが望ましい。
【0053】
便導部(2)の周囲の内側面(1a)のみに固定用粘着部(3)を設置する場合は、便導部(2)の左右や上部に連続的にまたは複数個所に分割して設置するのが良い。
【0054】
内側面(1a)の外縁外側に固定用粘着部(3)を設置する場合、本体部(1)の外側面(1b)を利用し、片面粘着テープを部分的に本体部(1)の内側面(1a)より外側にはみ出るように貼るなどして設置する。この場合、本体部(1)の内側面(1a)を取り囲むようにその左右や上部に連続的にまたは複数個所に分割して設置するのが良い。
【0055】
一方、使用後の廃棄処理の時には
図5のようにオムツを内側面(1a)の中央より折りたたんで、固定用粘着部(3)同士を貼り合わせると、オムツの便導部(2)がさらに若しくは二重に密閉されて便を包んだ袋状となるので廃却処理などの利便性がある。
【0056】
固定用粘着部(3)は、本体部(1)の内側面(1a)に粘着剤を塗布することや、内側面(1a)に両面粘着テープを貼り付けることや、外側面(1b)に片面粘着テープを貼り付けることで形成できる。なお、着用者の体格などに応じて、
図7に示すように、形成する位置、形状及び面積を適宜変更できる。
【0057】
本発明の粘着面(4)又は固定用粘着部(5)の各部で使用される素材や粘着剤は、ウレタンゲル、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びハイドロコロイドなどが例示されるがこれらに限定されない。
【0058】
トップシート(6)は、便導部(2)及び固定用粘着部(5)を除く、直接肌に接する内側面(1a)の部分を覆い、肌に低刺激性で且つ水等の液透過性を有し、着用者の使い心地の良さを向上させている。
【0059】
このようなトップシート(6)の素材としては、例えば、不織布、織布、メッシュシート、紙および、液透過孔の形成されたプラスチックフィルムが、挙げられる。トップシート用素材の不織布や織布をなすための繊維の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セルロース、レーヨン、およびコットンが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレートがあげられる。また、トップシート用素材の不織布や織布をなすための繊維は、好ましくは、親水性繊維、または、界面活性剤での表面処理によって表面の親水化が図られた疎水性繊維とする。
【0060】
ピックアップ部(7)は前記便導部(2)の前記粘着面(4)の外周の全部または一部に所定の幅で前記本体部(1)に非接着状態で当接する。ピックアップ部(7)は粘着剤が塗布されておらず、本発明のバッグ式オムツを使用後に取り外す場合、このピックアップ部(7)から便導部(2)を着用者の体から容易に剥せるようにしている。指先などで粘着面(4)を無理に剥すと着用者の肌を傷つけ易くなることを防ぐ。
【0061】
ピックアップ部(7)は、柔軟性を有する材料からなる。ピックアップ部(7)用の柔軟性材料としては、例えば、紙素材、ゴム系素材、スポンジ材、これら以外の樹脂材料が例示される。紙素材としてはある程度の柔軟性と耐水性があるものが好適に使用できる。ゴム系素材としては、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、およびエチレンプロピレンゴムがあげられ、スポンジ材としては、例えば、セルローススポンジ、ポリウレタンスポンジ、およびメラミンスポンジがあげられる。上記樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、および軟質塩化ビニルがあげられる。
【0062】
ピックアップ部(7)は所定の幅と厚みを有する必要がある。幅としては約2mm~約5mm程度あれば良く、約3mmの幅が好適である。厚みとしては、着用者が装着時に違和感を覚えない程度になるべく薄い方が良い。ピックアップ部(7)の形状は、連続状でも非連続状でも良く、幅も一定であっても一定でなくても良く、便導部(2)をなるべく容易に剥がし易く工夫することが重要である。
【0063】
剥離紙(8)は、本発明のバッグ式オムツを保管しておくときに粘着面(4)や固定用粘着部(5)の表面を被覆しておくもので、粘着面や粘着部分の劣化やよごれの付着を防止する役割を果たすと共に、使用する際にはこれを剥がして着用者の体に貼付したり固定したりする。
【0064】
紐又は帯状体(10)は、必要に応じて、本体部(1)の外周部に取り付けて、補助的に本発明のバッグ式オムツを着用者の体に固定するものであり、バッグ式オムツを装着した着用者が体を動かしたりしたときの、オムツのズレや部分的な剥がれなどを防ぐ役割を果たす。
【0065】
紐又は帯状体(10)は、それぞれの自由端部を互いに縛り合わせたり、自由端部に粘着部を形成しておいて互いに若しくは着用者の体に貼り付けて固定させたり、または自由端部を面ファスナー(パイルアンドフック)としておき互いに重ね合わせて固定することができる。
【0066】
本発明のバッグ式オムツは、本体部(1)の内側面(1a)に便導部(2)、固定用粘着部(3)及び肌接触部のトップシート(6)を設置又は形成することで、比較的簡単に製造することができる。
【0067】
この場合、予め別々に作成して準備した便導部(2)、固定用粘着部(3)及びトップシート(6)を、本体部(1)の所定位置に取り付けて製造する方法がある。
【0068】
別の製造方法として、まず、本体部(1)の内側面(1a)の全面に予め粘着剤を塗布しておき、次に、人肌に直接触れる部分の形状に裁断したトップシート(6)を貼り、続いて便導部(2)用のピックアップ部や便導部(2)の粘着面用や固定用粘着部用の剥離紙をそれぞれ所定の位置に粘着固定することで、さらにより簡単に製造できる。つまりこの製造方法の場合、予め内側面(1a)の全面に塗布した粘着剤をそのまま便導部(2)の粘着面(4)や固定用粘着部(3)とすることができる。
【0069】
本発明のバッグ式オムツの使用方法は、特に、便導部(2)の便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)を着用者の肛門に当接させ、且つ粘着面(4)を着用者の肛門を含む臀裂部に粘着させることを特徴とする。
【0070】
このようにして着用者に装着させることで、着用者の排便時の肛門の開閉に追従して便導部(2)の便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)が開閉するようにできる。
【0071】
本発明のバッグ式オムツの実際の着用に係る使用方法の例としては、先ず便導部(2)の粘着面(4)の剥離紙(8)を剥がし、次に内側面(1a)を着用者の体の臀部から臀裂部に向けて当接させるようにする。次に、本体部の外側面(1b)の中心マーク(9)を目印にして、便導部(2)の便導線状切込み(5)又は便導孔(5‘)を着用者の肛門に当接させるようにして手指で押し当てて、便導部(2)の粘着面(4)を着用者の肛門を含む臀裂部に粘着させる。その後、固定用粘着部(3)の剥離紙(8)を剥がして着用者の臀部や尾骨周辺の背中下部に粘着固定させる。さらに必要に応じて、補助固定用の紐又は帯状体(10)を使って着用者の体に固定する。
【0072】
使用後の本発明のバッグ式オムツは、先ず、固定用粘着部(3)や補助固定用の紐又は帯状体(10)を剥がす又は解くなどし、次に便導部(2)のピックアップ部(7)を利用して、便導部(2)の粘着面(4)を着用者の肛門を含む臀裂部から剥がす。その後、廃却に向けて、
図4に示す様に便導部(2)を左右の中央に沿って折り、貼り合わせて密閉する。これにより本体部(1)内の汚物の漏れやそれに伴う放菌の防止や悪臭の放散の低減が出来るなどの複合的且つ衛生的な機能を兼ね合わせて果たすことができる。
【0073】
更に便導部(2)の左右や上部等の周囲の固定用粘着部(3)を向き合うように折りたたみ貼り合わせることでも、オムツを使用後の廃却時の衛生性や安全性を高めることができる。
【0074】
なお、本発明は主に大便の排泄処理を中心に説明してきたが、小便の排泄処理にも応用することができる。ただし、小便は液体であるために漏れを十分に防止できない恐れがある。そのような場合、前述したのと同様に、着用者の体毛を剃って便導部(2)の粘着面(4)や固定用粘着部(3)を粘着固定し易くすることや、本体部(1)の収容部(1c)に吸水性高分子や尿凝固剤等を入れておくことで改善が図れる。
【0075】
吸水性高分子や尿凝固剤の構成材料としては、例えば、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアスパラギン酸系樹脂、セルロース系樹脂が例示される
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のバッグ式オムツは、着用者の使用時の不快感低減や介護者のオムツの交換等の処理手数を軽減して作業労働の負担を減らし、且つ、細菌などの放菌や悪臭の放散を低減でき、更に、吸水性高分子を使用していないので、使用後に生ごみとして廃棄される総量を削減できるとともに環境負荷を低減することにもつながる。また、本発明のバッグ式オムツは安価に簡単に製造可能であり、それ自体の容積も少ないのでストックヤードのスペースや輸送コスト等も少なくて済む。
【符号の説明】
【0077】
符号
Aバッグ式オムツ全体図
1本体部
1a本体部の内側面
1b本体部の外側面
1c本体部の収容部
2便導部
3,3’固定用粘着部
4粘着面
5便導線状切込み
5‘便導孔
6トップシート
7ピックアップ部
8剥離紙
9中心マーク
10紐又は帯状体
11着用者のヒップライン
D―D
図1の断面矢視方向を示す。
E―E
図1の断面矢視方向を示す。
F―F
図5の断面矢視方向を示す。
【要約】
【課題】着用者の使用時の不快感低減や介護者の交換処理
の負担を減らし、且つ、細菌
や悪臭の放散を低減でき、使用後に生ごみとして廃棄される総量を削減できて環境負荷
の低減にもつながるバッグ式オムツを提供する。
【解決手段】内側面と外側面及び収容部を有する非透水性フィルムからなる袋状の本体部、前記本体部の内側面の中央部に設置した便導部、前記便導部の周囲の前記内側面
又は前記内側面の外縁外側に設置した固定用粘着部とからなり、前記便導部が、前記内側面に粘着面を有
し、当該粘着面
に前記本体部の前記内側面を貫通するように形成された便導線状切込み又は便導孔を有するバッグ式オムツとする。
【選択図】
図1