(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/005 20060101AFI20241018BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20241018BHJP
A23L 3/10 20060101ALI20241018BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
A23B7/005
A23L3/00 101A
A23L3/10
A23L19/00 A
(21)【出願番号】P 2024077451
(22)【出願日】2024-05-10
【審査請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2023102844
(32)【優先日】2023-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596143037
【氏名又は名称】マルシン食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】新保 勇
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-348665(JP,A)
【文献】特開2017-063789(JP,A)
【文献】特開平10-113144(JP,A)
【文献】特開2020-152419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0276258(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0142917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/005
A23L 3/00
A23L 3/10
A23L 19/00
B65B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形青果を陳列するために用いられ、固形青果が
保存液に浸漬されずに気体とともに密閉された樹脂製保形容器に対して
、加圧加熱窯内で熱媒液を介して加熱して当該固形青果を含気殺菌する樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法であって、
耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体又は略錐台の樹脂製保形容器に伝熱する熱媒液の温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温する熱媒液昇温工程と、
前記熱媒液昇温工程の後、前記熱媒液の温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する熱媒液降温工程と、
を有すること
を特徴とする樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法。
【請求項2】
前記熱媒液降温工程は、第1降温速度で前記熱媒液の温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で前記熱媒液を降温すること
を特徴とする請求項1に記載の樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法。
【請求項3】
前記第1降温速度は、0.060℃/s超~0.220℃/s以下であること
を特徴とする請求項2に記載の樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法。
【請求項4】
前記第2降温速度は、0℃/s超~0.060℃/s以下であること
を特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法。
【請求項5】
前記熱媒液昇温工程は、前記熱媒液の昇温速度が0℃/s超~0.080℃/s以下であること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法。
【請求項6】
前記熱媒液降温工程は、前記熱媒液の降温速度が0℃/s超~0.220℃/s以下であること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固形青果を常温保存可能とするための樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青果の需要増加に伴い、カット果物(カットフルーツ)やカット野菜が注目されている。カットフルーツは、フルーツの皮むきや食後の残渣処理等の手間がないため利便性が高く、スーパーやコンビニエンスストア等で手軽に購入することができる。ただし、消費期限が製造日から2~5日と短時間であることから、店頭露出時間が短く、食品ロスに繋がりやすい問題があった。
【0003】
固形青果の保存性を高める方法としては、例えば特許文献1の加熱殺菌方法が従来実施されてきた。特許文献1に開示された殺菌方法によれば、スクラロースを含有する保存液中にカットフルーツを浸漬させることで、経時変化における風味の劣化が抑えられる。
【0004】
また、近年、保存液由来の劣化がなく青果本来の風味や食感が維持された固形青果の需要が増えている。特許文献1の方法によれば、保存液への浸漬により青果の風味や食感の劣化が生じ、青果の商品性が低下する懸念がある。そこで、保存液を含まない密閉容器を用いて青果を含気殺菌し、かつ、殺菌後の常温保存が可能な殺菌方法が検討されている。
【0005】
特許文献2には、60~75℃の温水中に10~15分間浸漬して加熱する工程と、0~5℃の冷水中に5~15分間浸漬して冷却する工程とを有する殺菌方法が開示されている。この方法によれば、衛生的で日持ちが良く、十二分な賞味期間を保有する密封容器入り擦りおろし食品を提供できる。
【0006】
また、特許文献3には、冷凍保存する工程を有する殺菌方法が開示されている。この方法によれば、松茸特有の香り、歯応え及び味を保つことができる。
【0007】
また、特許文献4には、加温部、冷却部、及びそれらを通って食材を搬送する搬送部を備え蒸気を供給して殺菌する殺菌方法が開示されている。この方法によれば、大量の食材を均一な温度で画一的に加工し、食材の搬送方向に沿って食材を移動させながら加工することによって空間内の温度のムラによる食材ごとの差を無くすことができる。
【0008】
また、特許文献5には、青果を収容する真空包装体について、耐圧容器の中で加圧しながら熱水で加熱した後に、室温程度の温度を有する水又は流水を加熱後の真空包装体に接触させて、短時間で真空包装体全体を冷却し、特に果実の内部温度を速やかに下げる殺菌方法が開示されている。この方法によれば、色、味、食感、香りなどの良好な風味を有し、低コストで加工でき、かつ常温保存が可能な青果を提供できる。
【0009】
また、特許文献6には、湿熱処理及び加熱処理した剥き栗を収容した密封容器を加熱殺菌する殺菌方法が開示されている。この方法によれば、良質でこくのある甘味としっとりとした食感が増強されている上に、表面がべたつかず、そのままつまみ食べができ、品質が総合的に向上した密封容器入り調理栗を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-99674号公報
【文献】特開2001-238652号公報
【文献】特開平10-4913号公報
【文献】特開2017-55756号公報
【文献】特開2016-86674号公報
【文献】国際公開第2010/095702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方で、固形青果の流通性確保の観点で、長期の常温保存が可能であり、かつ、含気殺菌後の容器や内容物を加工することなく速やかに輸送及び店頭露出が可能な商品美観性及び商品陳列性を有する固形青果入り密閉容器の需要がある。
【0012】
特許文献2の方法によれば、容器を60~75℃の温水加熱殺菌後に0~5℃の冷却水で急冷するため、容器が変形し、商品美観性及び商品陳列性が低下する懸念がある。
【0013】
また、特許文献3の方法によれば、冷凍保存を前提としており、固形青果の長期の常温保存に対応できない。
【0014】
また、特許文献4の方法によれば、大気開放された加温部から供給した蒸気を対流させて加熱するため、加圧加熱窯等を用いる場合と比べて加温部内の温度が安定しにくく、長期の常温保存に対応する含気殺菌の確実性に懸念がある。
【0015】
また、特許文献5の方法によれば、気体を含まない真空包装体を加圧下で加熱するため、含気殺菌と比べて必要以上の熱が固形青果に伝わり、含気殺菌よりも青果の食感が損なわれ商品性が低下する懸念がある。また、真空包装のため容器の形状が統一されず、商品陳列性の向上に対応できない。
【0016】
また、特許文献6の方法によれば、加熱処理した密閉容器内の剥き栗を取り出して焼成処理する必要があり、含気殺菌後の容器をそのまま店頭露出することが想定されておらず、商品美観性及び商品陳列性を向上する旨の開示がない。
【0017】
したがって、特許文献1~6の含気殺菌方法によれば、固形青果の常温保存性向上と、樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性と、の低下抑制ができない問題がある。
【0018】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができる樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1発明における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法は、固形青果を陳列するために用いられ、固形青果が保存液に浸漬されずに気体とともに密閉された樹脂製保形容器に対して、加圧加熱窯内で熱媒液を介して加熱して当該固形青果を含気殺菌する樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法であって、耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体又は略錐台の樹脂製保形容器に伝熱する熱媒液の温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温する熱媒液昇温工程と、前記熱媒液昇温工程の後、前記熱媒液の温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する熱媒液降温工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
第2発明における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法は、第1発明において、前記熱媒液降温工程は、第1降温速度で前記熱媒液の温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で前記熱媒液を降温することを特徴とする。
【0021】
第3発明における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法は、第2発明において、前記第1降温速度は、0.060℃/s超~0.220℃/s以下であることを特徴とする。
【0022】
第4発明における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法は、第2発明又は第3発明において、前記第2降温速度は、0℃/s超~0.060℃/s以下であることを特徴とする。
【0023】
第5発明における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記熱媒液昇温工程は、前記熱媒液の昇温速度が0℃/s超~0.080℃/s以下であることを特徴とする。
【0024】
第6発明における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記熱媒液降温工程は、前記熱媒液の降温速度が0℃/s超~0.220℃/s以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
第1発明~第6発明によれば、耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体又は略錐台の樹脂製保形容器に伝熱する熱媒液の温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温する熱媒液昇温工程と、熱媒液の温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する熱媒液降温工程と、を有する。このため、樹脂製保形容器が急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台に保たれやすい。これにより、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができる。
【0026】
特に、第2発明によれば、熱媒液降温工程は、第1降温速度で熱媒液の温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で熱媒液を降温する。このため、樹脂製保形容器が含気殺菌後に急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台にさらに保たれやすい。これにより、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0027】
特に、第3発明によれば、第1降温速度は、0.060℃/s超~0.220℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0028】
特に、第4発明によれば、第2降温速度は、0℃/s超~0.060℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0029】
特に、第5発明によれば、熱媒液昇温工程は、熱媒液の昇温速度が0℃/s超~0.080℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器が含気殺菌温度までの昇温に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0030】
特に、第6発明によれば、熱媒液降温工程は、熱媒液の降温速度が0℃/s超~0.220℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本実施形態における固形青果の含気殺菌方法に用いる樹脂製保形容器の一例を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の準備工程の一例を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の準備工程の一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の熱媒液昇温工程の一例を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の熱媒液降温工程の一例を示す模式断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の回収工程の一例を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、本実施例における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の昇温工程について、循環液の温度推移の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図7の工程について、循環液の昇温速度推移の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、
図7の工程について、循環液の昇圧速度推移の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本実施例における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の保温工程について、循環液の温度推移の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、本実施例における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の降温工程について、第1降温速度での循環液の温度推移の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本実施例における樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法の降温工程について、第2降温速度での循環液の温度推移の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態としての樹脂製保形容器1を用いた固形青果41の含気殺菌方法の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。なお、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0033】
(固形青果41の含気殺菌方法)
図面を参照して、本実施形態の樹脂製保形容器1を用いた固形青果41の含気殺菌方法の一例を説明する。
【0034】
本実施形態における固形青果41の含気殺菌方法は、例えば
図1に示すように、固形青果41が収容された樹脂製保形容器1を含気殺菌する。含気殺菌された樹脂製保形容器1は、固形青果41を求める一般消費者に提供される。
【0035】
従来の殺菌方法によれば、生鮮な青果は、製造日を含めた4日間が、食の安全を維持できる消費期限とされていた。また、これらの青果は密閉保管されないため、冷蔵保管下においても初発菌が増殖して腐敗を起こす原因となっていた。
【0036】
一方で、本発明の含気殺菌方法は、固形青果41を樹脂製保形容器1に収容した上で果肉の中心温度が65度以上となる含気殺菌を行うため、固形青果41に含まれる菌を死滅させ又は不活性化させ、常温保存で3ヵ月以上菌の増殖を抑制するロングライフな固形青果41を提供することができる。これにより、より多岐にわたる流通経路を適用することができる。
【0037】
また、本発明は、耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体形状の樹脂製保形容器1に伝熱する熱媒液の温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温した後に、熱媒液の温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する。この場合、昇温に用いた熱媒液とは別の熱媒液を用いて降温する場合と比べて容器が急冷されにくく、樹脂製保形容器1の形状が元の状態で保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができる。なお、熱媒液としては、例えば公知のレトルト殺菌と同様の熱水が用いられる。
【0038】
まず、本実施形態の固形青果41の含気殺菌方法に用いる樹脂製保形容器1について説明する。
【0039】
<樹脂製保形容器1>
樹脂製保形容器1は、含気殺菌するための固形青果41を気体42とともに内部に収容する。樹脂製保形容器1は、加圧下で65℃以上~100℃以下の温度で含気殺菌された後に常温まで降温され、降温後は商品としての固形青果41の陳列のために用いられる。そのため、樹脂製保形容器1は、耐熱温度が100℃超の熱可塑性樹脂が用いられ、自立性を有する。樹脂製保形容器1は、例えば透明な熱可塑性樹脂が用いられてもよい。この場合、陳列された状態の樹脂製保形容器1の外観から一般消費者が固形青果41を視認できる。これにより、固形青果41の商品表示性及び商品美観性の向上を図ることができる。
【0040】
樹脂製保形容器1は、形状が略直方体又は略錐台である。樹脂製保形容器1は、例えば
図1に示すように、一部が開口した樹脂容器2と、樹脂容器2の開口を塞ぐように接合される樹脂フィルム3と、からなる。すなわち、樹脂製保形容器1は、樹脂容器2の底面と樹脂フィルム3とが略平行となるように互いに離間して対向する略直方体又は略錐台である。この場合、複数の樹脂製保形容器1を鉛直方向に積層して陳列することができる。これにより、商品陳列性の向上を図ることができる。
【0041】
樹脂製保形容器1は、樹脂容器2内に固形青果41と気体42とを収容する。本実施形態では樹脂容器2と樹脂フィルム3とを用いる例を説明するが、樹脂製保形容器1は、樹脂容器2の開口が封止されていれば、樹脂フィルム3を用いる必要はなく、例えば2つの樹脂容器2の開口の外周同士が接合されてもよい。
【0042】
樹脂製保形容器1は、樹脂容器2内において固形青果41の保存を目的としたシロップ等の保存液を含まない。すなわち、保存液に由来する固形青果41の風味や食感の劣化が生じない。また、固形青果41の成分が保存液に流出せず、固形青果41本来のフレッシュ感の低下やみずみずしい芳香成分の流出を抑制できる。これにより、固形青果41の商品性の低下抑制を図ることができる。さらに、樹脂製保形容器1を開封して固形青果41を食べる際に保存液を廃棄する必要がないため、一般消費者が手軽に固形青果41を食べる機会を提供することができる。これにより、固形青果41を食べる一般消費者の利便性向上を図ることができる。
【0043】
<樹脂容器2>
樹脂容器2は、固形青果41を収容するための容器である。樹脂容器2は、例えば中空状であり、一部が開口した断面略U字状である。樹脂容器2は、固形青果41を収容するための容器内部空間を有する。
【0044】
樹脂容器2は、例えば側面部21と、フランジ部22と、底面部23と、開口部24と、を備える。底面部23を設置面とした場合、側面部21は、例えば底面部23の外周から略上方向に起立する。すなわち、側面部21と底面部23とは、断面視において略U字を成し、略上方向に開口した箱形状を成す。フランジ部22は、例えば当該開口付近の側面部21から外周方向に起立する。このとき、フランジ部22及び底面部23は、略平行である。開口部24は、上述した樹脂容器2の開口を指し、側面部21又はフランジ部22に囲われた領域である。
【0045】
樹脂容器2の材質は、例えばISO1043-1、又はJIS K 6899-1に記載のプラスチック(合成樹脂)のうち、耐熱温度が100℃超の熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、ポリプロピレン及びEVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)等が用いられる。
【0046】
樹脂容器2は、例えばバリアナイロン等のガスバリア性を有する材質でもよい。すなわち、固形青果41を酸素等から遮断することができる。この場合、固形青果41の食感、色合い、風味等の品質低下を抑制することができる。これにより、固形青果41の商品性の低下抑制を図ることができる。樹脂容器2は、各部21、22、23のうち少なくとも何れかにおいて、その外面、表面又は内部に、アルミナやシリカ等で構成されるガスバリア性を有する金属層が設けられてもよい。
【0047】
樹脂容器2は、例えば樹脂容器2内に窒素、炭酸ガス等の不活性ガスが封入されてもよい。この密閉方法は、MAP包装とも呼ばれ、真空密閉よりも固形青果41の鮮度が長持ちしやすく、固形青果41の変色や品質劣化を防ぐことができる。具体的には、窒素ガスを封入することで、固形青果41の酸化防止や包装の型崩れを抑えることができ、また二酸化炭素を封入することで、固形青果41の表面又は内部に存在する一般生菌の活動を抑える(静菌作用)ことができる。この方法によっても同様に、固形青果41の食感、色合い、風味等の品質低下を抑制することができ、固形青果41の商品性の低下抑制を図ることができる。
【0048】
樹脂容器2の寸法としては、例えば各部21、22、23の厚さが0.8mm~1.2mm程度である。
【0049】
<樹脂フィルム3>
樹脂フィルム3は、固形青果41を収容する樹脂容器2を密閉するためのフィルムである。樹脂フィルム3は、例えば平面状であり、平面視において外周がフランジ部22又は開口部24と略同様の形状である。
【0050】
樹脂フィルム3は、例えば中央部31と、周辺縁部32と、を備える。樹脂フィルム3は、周辺縁部32においてフランジ部22と接合されることにより、中央部31において開口部24を塞ぎ、樹脂容器2を密閉することができる。
【0051】
樹脂フィルム3は、例えば公知の溶着方法により樹脂容器2に溶着されてよい。適用可能な溶着方法としては、例えば外部から加熱する熱板溶着、高周波溶着、レーザー溶着等や、内部から加熱する超音波溶着等である。
【0052】
樹脂フィルム3の材質は、例えば樹脂容器2と同様の樹脂材料からなる。樹脂フィルム3の寸法としては、例えば厚さが70ミクロン~90ミクロン程度である。樹脂フィルム3は、例えばイージーピール性を有する材質が用いられてもよい。この場合、一般消費者は、過大な力を加えずに容易に樹脂製保形容器1を開封することができる。
【0053】
<固形青果41>
固形青果41は、樹脂容器2内に収容される。固形青果41は、例えば従来提供されているカット果物(カットフルーツ)やカット野菜として用いられる未加工の生鮮な固形の青果又は加工済みの固形の青果を含む。すなわち、固形青果41は、一般消費者が樹脂容器2を開封して加工をすることなくすぐに食べられる固形青果41であればよい。そのため、固形青果41は、皮ごと食べられるリンゴ等については必ずしも皮をむく必要はなく、カットせずとも食べられるイチゴ等については必ずしもカットする必要はない。固形青果41の具体例としては、例えばパイナップル、ミカン、サクランボ、リンゴ、モモ、マンゴー、メロン、スイカ等が挙げられる。
【0054】
固形青果41は、例えば市販の缶詰内に保存された固形の青果(果肉)を洗浄して用いてもよい。ここで、洗浄とは、缶詰内で果肉を浸漬するための保存液を少なくとも果肉表面から除去する作業を指している。保存液は、缶詰内の果肉を活性ガスに曝さず、かつ加熱殺菌時に果肉の中心温度を殺菌温度まで確実に昇温する点で有用であるが、上述のとおり、固形青果41の品質低下につながる問題がある。このため、この洗浄作業を施すことで、含気殺菌後の固形青果41のさらなる商品性の低下を防止するとともに、保存液を使用せずに保存性を保つことができる。
【0055】
固形青果41は、例えば生鮮な固形の青果を用いてもよい。生鮮な固形の青果とは、皮むきやカットが不要な果物や、皮むきやカット等の一次加工のみが施された果物の果肉を含む。
【0056】
<気体42>
気体42は、例えば樹脂製保形容器1を形成する作業環境下の空気である。気体42は、空気の他、例えば樹脂製保形容器1内に封入される上述の不活性ガスでもよい。不活性ガスが用いられる場合、樹脂製保形容器1内の固形青果41について、菌の増殖をさらに抑制することができ、より多岐にわたる流通経路を適用して固形青果41を提供することができる。
【0057】
次に、本実施形態の固形青果41の含気殺菌方法として、加圧加熱窯5の動作の各工程について説明する。加圧加熱窯5の動作は、各工程について、加圧加熱窯5に予め搭載されたCPUがRAMを作業領域としてROM等に記憶されたプログラムを、予め設定された設定温度、設定圧力等の含気殺菌条件に基づいて実行することにより実現してもよく、人間が主体となり加圧加熱窯5の各構成を利用して含気殺菌条件を設定した上で実行してもよい。なお、以下の説明において、各工程を実施する人間を「作業者」という。
【0058】
本実施形態の固形青果41の含気殺菌方法は、例えば
図2に示すように、内部の加熱及び加圧が可能であり二槽式の加圧加熱窯5を用いる。加圧加熱窯5は、公知のレトルト殺菌装置が用いられてよく、例えば熱水貯湯式のレトルト殺菌装置が用いられてもよい。加圧加熱窯5は、例えば固形青果41を含気殺菌する処理槽51と、処理槽51内を昇温するための熱媒液Lを予熱するための調整槽52と、を有する。処理槽51は、例えば調整槽52から高温の熱媒液Lが供給されることで内部が昇温される。調整槽52は、例えば外部から蒸気が供給されることで熱媒液Lが昇温され、外部から冷却水が供給されることで熱媒液Lが降温される。
【0059】
含気殺菌の実施条件として、熱媒液Lの温度は、例えば65℃以上~100℃以下の間で調節される。また、含気殺菌の実施時間は、例えば10分間~60分間の間で調節される。
【0060】
固形青果41の含気殺菌方法は、例えば熱媒液昇温工程と、熱媒液降温工程と、を有する。加圧加熱窯5は、熱媒液昇温工程により樹脂製保形容器1内の固形青果41を65℃以上~100℃以下の含気殺菌温度まで昇温させ、その後熱媒液降温工程により樹脂製保形容器1内の固形青果41を常温以上~45℃以下まで降温させる。作業者は、熱媒液昇温工程の前に、予め樹脂製保形容器1を形成する準備工程を実施する。ここで、加圧加熱窯5内において加圧下で熱媒液Lの昇温又は降温を行うことで、熱媒液Lの温度を制御しやすく樹脂製保形容器1に対してより確実に伝熱することができる。また、樹脂製保形容器1が変形することを抑制しやすい。
【0061】
すなわち、本実施形態の含気殺菌方法は、耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体又は略錐台の樹脂製保形容器1に伝熱する熱媒液Lの温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温する熱媒液昇温工程と、熱媒液Lの温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する熱媒液降温工程と、を有する。この場合、樹脂製保形容器1が急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができる。
【0062】
<準備工程>
作業者は、熱媒液昇温工程の前に、保存液を洗浄除去した固形青果41又は生鮮な固形青果41のうち少なくとも何れかを予め準備する。また、固形青果41に対してカット加工が必要な場合は、予めカット加工を完了しておく。
【0063】
次に、作業者は、事前準備した固形青果41を気体42とともに空の樹脂容器2に収容した上で、開口の外縁(例えばフランジ部22)と樹脂フィルム3(例えば周辺縁部32)とを接合して、樹脂製保形容器1を形成する。空の樹脂容器2一つ当たりに収容される固形青果41の重量は、例えば100g~300gである。
【0064】
次に、作業者は、形成した樹脂製保形容器1を、例えば加圧加熱窯5のうち処理槽51の内部に設けられた金属製のトレイ511上に載置する。また、作業者は、調整槽52に熱媒液Lを収容した上で蒸気を供給して予熱しておく。ここで、調整槽52内は熱媒液Lで満たされる必要はなく、上方に気相Gを有してもよい。このとき、処理槽51内は気層で満たされている。
【0065】
<熱媒液昇温工程>
熱媒液昇温工程において、加圧加熱窯5は、例えば
図3に示すように、調整槽52内において蒸気で予熱した熱媒液Lを処理槽51に注水して、処理槽51内を昇温する。その後、加圧加熱窯5は、例えば
図4に示すように、処理槽51内をほぼ満たすまで熱媒液Lを注水する。熱媒液Lの水量が増加するにつれて、処理槽51内部が昇温され、樹脂製保形容器1及び固形青果41の温度が昇温される。このとき、熱媒液Lの熱量が樹脂製保形容器1及び固形青果41等に伝熱することで熱媒液Lが降温し、処理槽51内部を含気殺菌温度まで昇温できないおそれがあるため、処理槽51に供給された熱媒液Lを昇温する必要がある。
【0066】
そのため、加圧加熱窯5は、処理槽51内の熱媒液Lに対して外部から蒸気を供給するとともに処理槽51からの排水と注水を繰り返して循環させる。詳しくは、加圧加熱窯5は、温度調節するためのスチームエジェクタ(図示せず)を介して熱媒液Lに蒸気を吹き込み、その熱媒液Lを処理槽51と接続された循環配管(図示せず)及び送水ポンプ(図示せず)を介して循環させる。なお、熱媒液Lが加熱窯50内を流動する方向については任意である。
【0067】
この間、処理槽51は、熱媒液Lからの伝熱により昇温される。このため、樹脂製保形容器1及び固形青果41の温度は、熱媒液Lからの伝熱により含気殺菌温度まで昇温される。以上により、加圧加熱窯5は、熱媒液昇温工程により熱媒液Lを昇温することで樹脂製保形容器1及び固形青果41を含気殺菌温度まで昇温できる。
【0068】
熱媒液昇温工程は、例えば昇温速度0℃/s超~0.080℃/s以下で熱媒液Lを昇温する。この場合、樹脂製保形容器1が含気殺菌温度までの昇温に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。なお、熱媒液昇温工程は、例えば0.080℃/s超の昇温速度を含むとき、内容物の重量や含水率によっては樹脂製保形容器1が変形するおそれがあり、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができない場合がある。
【0069】
なお、熱媒液Lの昇温速度が0℃/s未満又は0.080℃/s超では、樹脂製保形容器1が含気殺菌温度までの昇温に伴い膨張変形又は収縮変形するおそれがあるため、樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができない。また、熱媒液Lの昇温速度が0℃/sでは、固形青果41の含気殺菌を所定時間だけ継続できず、固形青果41の常温保存性向上を図ることができない。熱媒液Lの昇温速度と樹脂製保形容器1の変形の有無の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0070】
熱媒液Lの循環により、処理槽51内の樹脂製保形容器1が加熱される。すなわち、樹脂製保形容器1内の固形青果41が気体42とともに含気殺菌される。この場合、固形青果41の一般生菌数の増加を常温保存で3ヵ月以上抑制することができる。これにより、固形青果41の保存性の向上を図ることができる。一方で、固形青果41を収容する容器を密閉せず含気殺菌を行わないときは、固形青果41の一般生菌数の増加を抑制することができず、固形青果41の保存性の向上を図ることができない。なお、一般生菌数の保存性の効用については、後述の実施例において説明する。
【0071】
また、樹脂製保形容器1には保存液が含まれないため、保存液を加えた缶詰による保存と比べて、保存液に由来する固形青果41の風味や食感の劣化が生じない。これにより、固形青果41の商品性の低下抑制を図ることができる。また、固形青果41を食べた後に保存液を廃棄する必要がない。これにより、保存液に関するの食品ロス量の削減と、固形青果41を食べる一般消費者の利便性向上とを図ることができる。
【0072】
従来のマイクロ波殺菌や紫外線殺菌等の殺菌方法によれば、容器に対して局所的に伝熱するため、容器の変形や内容物の変質が生じるおそれがあった。また、容器内に空気が残存する場合、熱伝導率が悪くなり、殺菌効率が低下したり、加温加圧釜内で加圧される際に容器が変形又は破損したりするおそれがあり、容器内に内容物を収容した後に脱気処理や真空処理を行う必要があった。
【0073】
一方で、本発明によれば、加圧加熱窯5は、熱媒液Lを介して、固形青果41と気体42とを含む樹脂製保形容器1を均一に加熱し、その加熱を殺菌温度65℃~100℃の間で約10分~60分間実施することで、容器の保形性を損なうことなく殺菌を完了することができる。また、樹脂製保形容器1の耐熱温度が100℃超であり熱媒液Lの殺菌温度よりも高いため、容器の保形性を保ちやすい。これにより、固形青果41の商品性の低下抑制を図ることができる。
【0074】
<熱媒液降温工程>
熱媒液降温工程において、加圧加熱窯5は、例えば
図5に示すように、処理槽51を循環する熱媒液Lに冷水を供給して処理槽51内の熱媒液Lを降温するとともに、増加した水量分を調整槽52に供給する。
【0075】
この間、処理槽51は、内部に熱媒液Lが満たされたまま、降温された熱媒液Lからの伝熱により降温される。このため、樹脂製保形容器1及び固形青果41の温度は、熱媒液Lからの伝熱により、熱媒液Lの降温に追従して降温される。以上により、加圧加熱窯5は、熱媒液降温工程により熱媒液Lを降温することで樹脂製保形容器1及び固形青果41を常温以上~45℃以下まで降温できる。
【0076】
熱媒液降温工程は、例えば降温速度0℃/s超~0.220℃/s以下で熱媒液Lを降温する。この場合、樹脂製保形容器1が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。なお、熱媒液降温工程は、例えば0.220℃/s超の降温速度を含むとき、内容物の重量や含水率によっては樹脂製保形容器1が変形するおそれがあり、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができない場合がある。
【0077】
なお、熱媒液Lの降温速度が0℃/s未満又は0.220℃/s超では、樹脂製保形容器1が降温に伴い膨張変形又は収縮変形するおそれがあるため、樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができない。また、熱媒液Lの降温速度が0℃/sでは、熱媒液Lを介して樹脂製保形容器1を降温することができず樹脂製保形容器1が急冷されて変形するおそれがあるため、樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができない。熱媒液Lの降温速度と樹脂製保形容器1の変形の有無の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0078】
熱媒液降温工程は、例えば第1降温速度で熱媒液Lの温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で熱媒液Lを降温してもよい。この場合、樹脂製保形容器1が含気殺菌後に急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台にさらに保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0079】
第1降温速度の降温工程(先降温工程)における第1降温速度及び第2降温速度の降温工程(後降温工程)における第2降温速度は、熱媒液降温工程の実施時間内において瞬間値が変動し続ける。ここで、第1降温速度と第2降温速度の大小関係は、例えば先降温工程における第1降温速度の秒速平均値又は秒速中央値と、後降温工程における第2降温速度の秒速平均値又は秒速中央値と、に基づいてもよい。すなわち、後降温工程における第2降温速度の秒速の瞬間値に、先降温工程における第1降温速度の秒速の瞬間値よりも高い瞬間値が含まれていても、工程の実施時間内における降温速度の秒速平均値又は秒速中央値に基づいて第2降温速度が第1降温速度よりも遅いものとみなしてもよい。
【0080】
熱媒液降温工程は、第1降温速度0.060℃/s超~0.220℃/s以下で樹脂製保形容器1を降温してもよい。この場合、樹脂製保形容器1が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。なお、熱媒液降温工程は、例えば0.220℃/s超の第1降温速度を含むとき、内容物の重量や含水率によっては樹脂製保形容器1が変形するおそれがあり、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができない場合がある。
【0081】
熱媒液降温工程は、第2降温速度は、0℃/s超~0.060℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器1が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。なお、熱媒液降温工程は、例えば0.060℃/s超の第2降温速度を含むとき、内容物の重量や含水率によっては樹脂製保形容器1が変形するおそれがあり、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができない場合がある。
【0082】
なお、熱媒液Lの第1降温速度が0.060℃/s未満又は0.220℃/s超、又は第2降温速度が0.220℃/s超では、樹脂製保形容器1が降温に伴い膨張変形又は収縮変形するおそれがあるため、樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができない。熱媒液Lの第1降温速度及び第2降温速度と樹脂製保形容器1の変形の有無の詳細については、後述の実施例にて説明する。
【0083】
以上の工程により、本実施形態における固形青果41の含気殺菌方法が完了する。
【0084】
加圧加熱窯5は、含気殺菌が完了した後、例えば
図6に示すように処理槽51内の降温された熱媒液Lを処理槽51から排水して回収する。作業者は、処理槽51内から熱媒液Lの排水が完了した後、処理槽51内から樹脂製保形容器1を取り出す。処理槽51内から取り出された樹脂製保形容器1は、含気殺菌前後で自立性を有する略直方体又は略錐台の形状がほぼ維持され、固形青果41の常温保存性向上とともに商品美観性及び商品陳列性を有しているため、容器を開封することなくそのまま店頭露出することができる。
【0085】
(飲料の製造方法)
作業者は、例えば本実施形態の含気殺菌方法により含気殺菌された固形青果41を用いて、飲料の製造方法を実施してもよい。飲料の製造方法は、例えば飲料製造工程を有する。
【0086】
<飲料製造工程>
飲料製造工程において、作業者は、含気殺菌工程により含気殺菌された固形青果41と、希釈液とを混合して飲料を製造してもよい。この場合、3ヵ月程度保存された固形青果41であっても飲料の材料に用いることができる。これにより、固形青果41の食品ロス量の低減を図ることができる。また、保存された固形青果41に残る食感と希釈液とが混じり合う新たな食感とを提供することができる。これにより、固形青果41を用いた飲料の商品性の向上を図ることができる。
【0087】
さらに、樹脂容器2には保存液が含まれず、気体42が封入された空間が設けられている。このため、樹脂容器2から固形青果41を取り出したり内部を洗浄したりすることなく、その樹脂容器2に希釈液を直接供給して飲料の容器とすることができる。これにより、固形青果41を用いた飲料の製造効率の向上を図ることができる。
【0088】
製造される飲料は、例えば果物である固形青果41と希釈液とを混合した液体状の果物飲料を含む。ここで、希釈液とは、牛乳及び豆乳等の乳飲料、紅茶等の茶飲料、コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料等を含む。また、製造される飲料は、例えば果物又は野菜である固形青果41をすりつぶして裏ごししたピューレと、と希釈液とを混合した液体状又は半液体状の飲料を含む。
【0089】
本実施形態によれば、耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体又は略錐台の樹脂製保形容器1に伝熱する熱媒液Lの温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温する熱媒液昇温工程と、熱媒液Lの温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する熱媒液降温工程と、を有する。このため、樹脂製保形容器1が急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、熱媒液降温工程は、第1降温速度で熱媒液Lの温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で熱媒液Lを降温する。このため、樹脂製保形容器1が含気殺菌後に急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台にさらに保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、第1降温速度は、0.060℃/s超~0.220℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器1が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、第2降温速度は、0℃/s超~0.060℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器1が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、熱媒液昇温工程は、熱媒液Lの昇温速度が0℃/s超~0.080℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器1が含気殺菌温度までの昇温に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、熱媒液降温工程は、熱媒液Lの降温速度が0℃/s超~0.220℃/s以下である。このため、樹脂製保形容器1が含気殺菌後の冷却に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に確実に保たれやすい。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【実施例】
【0095】
以下に、上述した実施形態を用いた本発明例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
【0096】
<実験1:固形青果41の含気殺菌方法の保存性の検証実験>
本発明に係る固形青果41の含気殺菌方法について、保存性の効用に関する検証実験を説明する。
【0097】
本実験では、固形青果41を収容した後含気殺菌した樹脂製保形容器1を用いる本発明例1と、固形青果41を収容した後含気殺菌を実施せずに樹脂容器2と同等の容器の開口をサランラップ(登録商標)で塞いだ比較容器を用いる比較例1~2とについて、経過日数ごとの一般生菌数を集計することで、樹脂製保形容器1の保存性を確認した。なお、本発明例1及び比較例1~2の固形青果41としては、市販の生ホールパインを水洗いして皮をむき、2cm~3cm程度にカットしたカットパインを用いた。
【0098】
本発明例1に用いた樹脂製保形容器1の容量は220ccであり、固形青果41としてカットパインを150g収容した。比較例1~2に用いた比較容器の容量は210ccであり、固形青果41としてカットパインを50~70g程度収容した。
【0099】
本発明例1の含気殺菌条件は、次のとおりである。まず、樹脂製保形容器1を収容した加熱窯50内の熱媒液Lの温度を90℃まで昇温する。その後、熱媒液Lの温度を30分間90℃で維持する。その後、熱媒液Lの温度を10分かけて約45℃まで冷却した後に、樹脂製保形容器1を加熱窯50から取り出す。なお、含気殺菌を行う加圧加熱窯5としては、株式会社日坂製作所製の熱水貯湯式レトルト殺菌装置を用いた。
【0100】
本発明例1の含気殺菌後の保管方法は、常温下での保管とした。比較例1~2の保管方法は、従来の提供方法を考慮して、冷蔵庫内において8℃程度での保管とした。
【0101】
本発明例1及び比較例1~2における一般生菌数の集計方法としては、寒天培地法を用いた。具体的には、まず一般生菌数を集計する検体5g程度を固形青果41から採取し、フラスコを用いてその検体を生理食塩水で約10倍に希釈し、ホモジナイザーを用いて一般生菌が均一になるように分散調整した。その後、希釈調整した検体をシャーレ内の寒天培地に流下し、検体の単位体積当たりの一般生菌数をカウントした。この一般生菌数を最初にカウントした日を、検体の経過日数0日目とした。その後、所定の経過日数が経過した時点で上述の採取、希釈、分散調整、寒天培地への流下を再度実施し、検体の単位体積当たりの一般生菌数をカウントした。なお、検体を落とすシャーレはオートクレーブで事前に滅菌した。また、一連の作業についてはクリーンベンチ内で実施し、他の菌の汚染を防ぐ対策をした。
【0102】
なお、本発明例1の検体については、高温で含気殺菌することで菌がヒートショック状態になり生菌数を正確に検出することが困難となるため、本実験においては含気殺菌後に2日間30℃で保管して菌を活性化させた後に検体を採取して寒天培地に落とした。すなわち、経過日数0日目は、含気殺菌から2日後とした。また、本発明例1における本発明例1の検体採取については、採取の度に未開封の新たな樹脂製保形容器1を開封して採取した。
【0103】
一般生菌数の評価基準としては、次のとおりである。例えば固形青果41の1g当たりの一般生菌数が100万個/g以上のとき、固形青果41の匂いや風味の低下が現れ始めるなど、固形青果41の安全の担保が困難となる。また、本実験は、検体を約10倍に希釈調整する都合上、1g当たりの固形青果41の一般生菌数の検出下限値は10個である。
【0104】
本実験の結果は、表1のとおりである。
【0105】
【0106】
本発明例1によれば、経過日数0日、3日、4日、6日、7日、9日、30日、60日、90日、112日間時点において、固形青果41の1g当たり一般生菌数は、いずれも検出下限値の10個を示すため、「10以下」と評価した。これは、112日間にわたって固形青果41の一般生菌数がほとんど増加しておらず、固形青果41の匂いや風味が損なわれていないことを示している。すなわち、固形青果41の一般生菌数の増加を常温保存で3ヵ月以上抑制することができる。
【0107】
比較例1~2によれば、経過日数6日又は7日間時点において、固形青果41の1g当たり一般生菌数は10万個を超過し、経過日数9日間時点で100万個を超過した。これは、9日間時点で固形青果41の匂いや風味の低下が現れ始めたことを示している。すなわち、固形青果41の一般生菌数の増加を抑制することができない。
【0108】
以上の結果から、本発明に係る固形青果41の含気殺菌方法によれば、固形青果41の一般生菌数の増加を常温保存で3ヵ月以上抑制することができる。これにより、固形青果41の保存性の向上を図ることができる。
【0109】
<実験2:熱媒液Lの昇温速度と樹脂製保形容器1の保形性の検証実験>
本発明に係る固形青果41の含気殺菌方法について、樹脂製保形容器1の保形性の効用に関する検証実験を説明する。
【0110】
本実験では、加圧加熱窯5を用いて樹脂製保形容器1の加圧下での含気殺菌について、釜内の温度と圧力の条件がそれぞれ異なる「本発明例2」、「比較例3」、「比較例4」の3パターンに分けて、それぞれ樹脂製保形容器1の形状の変化を確認した。
【0111】
本実験で用いる樹脂製保形容器1及び固形青果41は、上述の実験1と同様である。本実験で用いる加圧加熱窯5は、上述の実験1と同様に、株式会社日坂製作所製の熱水貯湯式レトルト殺菌装置を用いた。また、熱媒液Lとしては水を用いた。
【0112】
各実験データについては、含気殺菌開始直後から釜内の温度と圧力の時間経過を5秒間隔で測定した。釜内の温度と圧力については、上記のレトルト殺菌装置を構成する処理槽51内に予め搭載された公知の温度センサ及び圧力センサを用いて測定した。
【0113】
次に、含気殺菌方法の各工程の温度条件及び圧力条件の詳細を説明する。本実験の含気殺菌方法としては、「昇温工程」、「保温工程」、「先降温工程」、「後降温工程」の工程を含む。なお、昇温工程は上述の熱媒液昇温工程に、先降温工程は上述の第1降温速度の降温工程に、後降温工程は上述の第2降温速度の降温工程に、それぞれ対応する。また、保温工程は、熱媒液Lを含気殺菌温度付近で安定させて固形青果41を含気殺菌する工程である。
【0114】
昇温工程では、含気殺菌温度として設定した85℃近くまで熱媒液Lを昇温した。保温工程では、熱媒液Lを含気殺菌温度付近に安定した状態を約10分継続した。先降温工程では、後降温工程よりも速い降温速度で熱媒液Lを降温した。後降温工程では、先降温工程の直後に先降温工程よりも遅い降温速度で、45℃以下まで熱媒液Lを降温した。
【0115】
まず、昇温工程の温度条件及び圧力条件を説明する。本発明例2の条件を表2に、比較例3の条件を表3に、比較例4の条件を表4に、それぞれ示す。また、表2~表4の温度、昇温速度、昇圧速度に対応するグラフを
図7、
図8、
図9にそれぞれ示す。
【0116】
なお、表中の「No.」は測定データについて時系列順の連番を指す。また、「昇温速度」は、2つの隣り合う連番間における温度変化の秒速を示す。例えば5秒間で1℃上昇した場合の昇温速度を0.200℃/sとした。なお、昇温速度の負の値は、降温速度を示す。また、「昇圧速度」は、2つの隣り合う連番間における圧力変化の秒速を示す。例えば5秒間で1MPa上昇した場合の昇圧速度は0.200MPa/sとした。なお、昇圧速度の負の値は、降圧速度を示す。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
本発明例2は、表2に示すとおり、昇温工程の昇温速度が-0.320℃/s~0.080℃/s、昇圧速度が-0.320MPa/s~0.080MPa/sであった。比較例3は、表3に示すとおり、昇温工程の昇温速度が-0.620℃/s~0.260℃/s、昇圧速度が-0.001MPa/s~0.001MPa/sであった。比較例4は、表4に示すとおり、昇温工程の昇温速度が-0.600℃/s~0.180℃/s、昇圧速度が-0.001MPa/s~0.001MPa/sであった。
【0121】
次に、保温工程の温度条件及び圧力条件を説明する。本発明例2の条件を表5に、比較例3の条件を表6に、比較例4の条件を表7に、それぞれ示す。また、表5~表7の温度、昇温速度、昇圧速度に対応するグラフを
図10、
図11、
図12にそれぞれ示す。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
本発明例2は、表5に示すとおり、保温工程の昇温速度が-0.020℃/s~0.040℃/s、昇圧速度が0.000MPa/s~0.002MPa/sであった。比較例3は、表6に示すとおり、保温工程の昇温速度が-0.020℃/s~0.040℃/s、昇圧速度が-0.001MPa/s~0.002MPa/sであった。比較例4は、表7に示すとおり、保温工程の昇温速度が-0.020℃/s~0.040℃/s、昇圧速度が0.000MPa/s~0.001MPa/sであった。
【0126】
次に、先降温工程の温度条件及び圧力条件を説明する。本発明例2の条件を表8に、比較例3の条件を表9に、比較例4の条件を表10に、それぞれ示す。また、表8~表10の温度、昇温速度、昇圧速度に対応するグラフを
図13、
図14、
図15にそれぞれ示す。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
本発明例2は、表8に示すとおり、先降温工程の昇温速度が-0.220℃/s~0.020℃/s、昇圧速度が-0.002MPa/s~0.002MPa/sであった。比較例3は、表9に示すとおり、先降温工程の昇温速度が-0.520℃/s~0.100℃/s、昇圧速度が-0.001MPa/s~0.001MPa/sであった。比較例4は、表10に示すとおり、先降温工程の昇温速度が-0.520℃/s~0.060℃/s、昇圧速度が-0.001MPa/s~0.003MPa/sであった。
【0131】
次に、後降温工程の温度条件及び圧力条件を説明する。本発明例2の条件を表11に、比較例3の条件を表12に、比較例4の条件を表13に、それぞれ示す。また、表8~表10の温度、昇温速度、昇圧速度に対応するグラフを
図16、
図17、
図18にそれぞれ示す。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
本発明例2は、表11に示すとおり、後降温工程の昇温速度が-0.060℃/s~0.020℃/s、昇圧速度が-0.003MPa/s~0.002MPa/sであった。比較例3は、表12に示すとおり、後降温工程の昇温速度が-0.220℃/s~0.040℃/s、昇圧速度が-0.003MPa/s~0.002MPa/sであった。比較例4は、表13に示すとおり、後降温工程の昇温速度が-0.220℃/s~0.100℃/s、昇圧速度が-0.002MPa/s~0.003MPa/sであった。
【0136】
次に、本実験の実験結果を表14に示す。
【0137】
【0138】
表14によれば、本発明例2の樹脂製保形容器1は変形しなかった。
【0139】
ここで、本発明例2は、先降温工程の昇温速度が-0.220℃/s~0.020℃/sであるため、第1降温速度が0.220℃/s以下である。また、本発明例2は、後降温工程の昇温速度が-0.060℃/s~0.020℃/sであるため、第2降温速度が0.060℃/s以下である。また、本発明例2は、表2によれば、先降温工程の昇温速度の平均値が-0.054℃/s、中央値が-0.040℃/sであり、後降温工程の昇温速度の平均値が-0.012℃/s、中央値が-0.020℃/sである。すなわち、本発明例2は、第2降温速度の平均値及び中央値が第1降温速度の平均値及び中央値よりも低いため、第1降温速度よりも遅い第2降温速度を有する。
【0140】
したがって、本実験によれば、第1降温速度で熱媒液Lの温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で熱媒液Lを降温する場合、樹脂製保形容器1が含気殺菌後に急冷されにくく自立性を有する略直方体又は略錐台に保形されることが確認された。また、第1降温速度が0.060℃/s超~0.220℃/s以下であるとき、及び第2降温速度が0℃/s超~0.060℃/s以下であるときも同様に、樹脂製保形容器1が保形されることが確認された。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0141】
また、本発明例2は、昇温工程の昇温速度が-0.320℃/s~0.080℃/sであるため、昇温速度が0.080℃/s以下である。したがって、本実験によれば、昇温速度0℃/s超~0.080℃/s以下で熱媒液Lを昇温する場合、樹脂製保形容器1が含気殺菌温度までの昇温に伴い膨張変形又は収縮変形することなく自立性を有する略直方体又は略錐台に保形されることが確認された。これにより、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0142】
また、表14によれば、比較例3の樹脂製保形容器1は圧縮変形した。ここで、比較例3は、昇温工程の昇温速度が-0.620℃/s~0.260℃/sであるため、第1降温速度が0.260℃/s以下である。また、比較例3は、先降温工程の昇温速度が-0.520℃/s~0.100℃/sであるため、第1降温速度が0.520℃/s以下である。また、比較例3は、後降温工程の昇温速度が-0.220℃/s~0.040℃/sであるため、第2降温速度が0.220℃/s以下である。
【0143】
また、表14によれば、比較例4の樹脂製保形容器1は膨張変形した。ここで、比較例3は、昇温工程の昇温速度が-0.600℃/s~0.180℃/sであるため、第1降温速度が0.180℃/s以下である。また、比較例4は、先降温工程の昇温速度が-0.520℃/s~0.060℃/sであるため、第1降温速度が0.520℃/s以下である。また、比較例4は、後降温工程の昇温速度が-0.220℃/s~0.100℃/sであるため、第2降温速度が0.220℃/s以下である。
【0144】
したがって、本実験によれば、昇温工程において0.080℃/s超の昇温速度を含むとき、先降温工程において0.220℃/s超の第1降温速度を含むとき、又は後降温工程において0.060℃/s超の第2降温速度を含むとき、内容物の重量や含水率によっては樹脂製保形容器1が変形するおそれがあり、固形青果41の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器1の商品美観性及び商品陳列性のさらなる低下抑制を図ることができない場合がある。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
1 樹脂製保形容器
2 樹脂容器
21 側面部
22 フランジ部
23 底面部
24 開口部
3 樹脂フィルム
31 中央部
32 周辺縁部
41 固形青果
42 気体
5 加圧加熱窯
51 処理槽
511 トレイ
52 調整槽
L 熱媒液
G 気層
【要約】
【課題】固形青果の常温保存性向上とともに樹脂製保形容器の商品美観性及び商品陳列性の低下抑制を図ることができる樹脂製保形容器を用いた固形青果の含気殺菌方法を提供する。
【解決手段】樹脂製保形容器1を用いた固形青果の含気殺菌方法は、固形青果が気体とともに密閉された樹脂製保形容器1に対して加圧加熱窯内で熱媒液Lを介して加熱して当該固形青果を含気殺菌する方法であって、耐熱温度が100℃超であり自立性を有する略直方体又は略錐台の樹脂製保形容器1に伝熱する熱媒液Lの温度を加圧下で65℃以上~100℃以下まで昇温する熱媒液昇温工程と、熱媒液昇温工程の後、熱媒液Lの温度を加圧下で常温以上~45℃以下まで降温する熱媒液降温工程と、を有することを特徴とする。熱媒液降温工程は、第1降温速度で熱媒液Lの温度を降温した後、当該第1降温速度よりも遅い第2降温速度で熱媒液Lを降温してもよい。
【選択図】
図4