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特許7573332赤外線カットフィルタ、カメラ構造、赤外線カットフィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】赤外線カットフィルタ、カメラ構造、赤外線カットフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241018BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20241018BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20241018BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20241018BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20241018BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/28
G02B1/111
G02B5/26
G02B1/118
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2024508591
(86)(22)【出願日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2024001513
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023018220
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523046291
【氏名又は名称】株式会社TKSF
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大刀夫
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-345680(JP,A)
【文献】特開2016-200716(JP,A)
【文献】特表平11-508380(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/28
G02B 1/111
G02B 5/26
G02B 1/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラに用いられる赤外線カットフィルタであって、
高屈折率樹脂による高屈折率層と低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層されて構成される近赤外線反射フィルタと、
色素を含有する光透過性樹脂又は色素が塗布される光透過性樹脂で構成される赤外線吸収膜フィルタと、
前記近赤外線反射フィルタ及び/又は前記赤外線吸収膜フィルタにおける空気と接する表面に形成される反射防止部と、
を備え、
前記近赤外線反射フィルタにおける前記高屈折率層及び前記低屈折率層の合計層数が200以上であり、
前記近赤外線反射フィルタ単体で、入射光の波長が増大するのに伴って光の透過率が減少して50%となる波長を反射膜カットオフ波長と定義するとき、入射光の入射角が0°となる場合における前記反射膜カットオフ波長が、750nm~880nmの範囲内であり、
前記赤外線吸収膜フィルタは、685nmから800nmの波長域で透過率が2%以下であり、
前記反射防止部は、光透過性樹脂の表面に凹凸が形成される構造であることを特徴とする赤外線カットフィルタ。
【請求項2】
前記近赤外線反射フィルタ単体は、入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける前記反射膜カットオフ波長の波長変動幅が170nm以下であり、
前記近赤外線反射フィルタ単体は、入射光の波長440nmを基準藍色波長と定義するとき、前記入射光の入射角を60°とした場合における前記基準藍色波長の透過率が70%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項3】
前記高屈折率樹脂、前記低屈折率樹脂、前記赤外線吸収膜フィルタを構成する光透過性樹脂が、有機樹脂で構成されることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項4】
前記反射防止部が、有機樹脂で構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項5】
前記高屈折率層及び/又は前記低屈折率層の各層厚は、10nm~300nmの範囲内であることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項6】
前記近赤外線反射フィルタの全体厚さが、100μm以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項7】
前記近赤外線反射フィルタと前記赤外線吸収膜フィルタが一体化されていることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項8】
前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂の少なくともいずれかが前記色素を含有することで、前記赤外線吸収膜フィルタを兼ねることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項9】
前記近赤外線反射フィルタと前記赤外線吸収膜フィルタが、互いに接合されて一体化されており、
前記近赤外線反射フィルタにおける前記赤外線吸収膜フィルタと反対側の表面に、第一の前記反射防止部が形成され、
前記赤外線吸収膜フィルタにおける前記近赤外線反射フィルタと反対側の表面に、第二の前記反射防止部が形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項10】
前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ、及び前記反射防止部の合計厚が300μm以下となることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項11】
前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ、及び前記反射防止部の合計厚を基準として、前記近赤外線反射フィルタの膜厚占有率が20%以上となることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項12】
前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ、及び前記反射防止部の合計厚を基準として、前記赤外線吸収膜フィルタの膜厚占有率が20%以上となることを特徴とする、
請求項11に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項13】
入射光の波長450nm~500nmを低波長透過帯域と定義し、
前記近赤外線反射フィルタ単体において、前記低波長透過帯域における入射光の平均透過率を反射膜低波長透過率と定義するとき、
入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける前記反射膜低波長透過率が75%以上となることを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項14】
前記近赤外線反射フィルタ及び/又は前記赤外線吸収膜フィルタを構成する樹脂が、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項15】
光の入射側に配置される光学レンズ群と、前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と、を備えるデジタルカメラ構造であって、
前記光学レンズ群と前記撮像素子の間に、請求項1に記載の赤外線カットフィルタが配置されることを特徴とする、
カメラ構造。
【請求項16】
光の入射側から順番に、カバーガラス、光学レンズ群、撮像素子を備えるデジタルカメラ構造であって、
請求項1に記載の赤外線カットフィルタを備えており、
前記カバーガラスと前記光学レンズ群の間に前記近赤外線反射フィルタが配置され、
前記光学レンズ群と前記撮像素子の間に前記赤外線吸収膜フィルタが配置されることを特徴とする、
カメラ構造。
【請求項17】
前記カバーガラスに、前記近赤外線反射フィルタが貼り付けられていることを特徴とする、
請求項16に記載のカメラ構造。
【請求項18】
デジタルカメラ用の赤外線カットフィルタの製造方法であって、
合計層数が200以上となる高屈折率樹脂による高屈折率層及び低屈折率樹脂による低屈折率層を共押し出し成形によって交互に積層して近赤外線反射フィルタを形成する反射膜製造工程と、
前記近赤外線反射フィルタに対して、色素を含有する光透過性樹脂又は色素が塗布される吸収膜用光透過性樹脂で構成される赤外線吸収膜フィルタを積層又は貼り合わせる一体化工程と、
空気と接する表面に対して、光透過性樹脂の凹凸を有する反射防止膜を形成する反射防止膜付加工程と、
前記反射膜製造工程、前記一体化工程及び前記反射防止膜付加工程の完了後に、少なくとも前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ及び前記反射防止膜をカット加工又は打ち抜き加工によって所望形状とするチップ加工工程と、
を備え、
前記近赤外線反射フィルタ単体で、入射光の波長が増大するのに伴って光の透過率が減少して50%となる波長を反射膜カットオフ波長と定義するとき、入射光の入射角が0°となる場合における前記反射膜カットオフ波長が、750nm~880nmの範囲内であり、
前記赤外線吸収膜フィルタは、685nmから800nmの波長域で透過率が2%以下であることを特徴とする赤外線カットフィルタの製造方法。
【請求項19】
前記反射膜製造工程及び前記一体化工程として、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂に加えて、赤外線を吸収する色素を含有する光透過性樹脂を共押し出し成形することで、前記高屈折率樹脂による高屈折率層及び前記低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層される近赤外線反射フィルタ、並びに、前記光透過性樹脂による赤外線吸収膜フィルタを一体成形することを特徴とする、
請求項18に記載の赤外線カットフィルタの製造方法。
【請求項20】
前記反射膜製造工程及び前記一体化工程として、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂のいずれか一方に赤外線を吸収する色素を含有させてから、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂を共押し出し成形することで、前記高屈折率樹脂による高屈折率層及び前記低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層される近赤外線反射フィルタ、前記高屈折率層及び前記低屈折率層における前記色素を含有する側による赤外線吸収膜フィルタを一体成形することを特徴とする、
請求項18に記載の赤外線カットフィルタの製造方法。
【請求項21】
前記チップ加工工程の前に実施され、遮光マスクを印刷するマスク付加工程を備えることを特徴とする、
請求項18に記載の赤外線カットフィルタの製造方法。
【請求項22】
前記一体化工程では、ロール状の前記近赤外線反射フィルタ及びロール状の前記赤外線吸収膜フィルタを、ラミネート装置に供給して一体化し、ロール状に巻き取ることを特徴とする、
請求項18に記載の赤外線カットフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル撮像装置等に設けられる赤外線カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS画像センサが実用化されフィルムカメラに代わってデジタルカメラが主力となって四半世紀が経つ。デジタルカメラは、現在、スマートフォンをはじめとする携帯情報端末をはじめ車載カメラ、Webカメラ、セキュリティ装置などに欠かせないものとなっている。デジタルカメラは、旧来のレンズ交換カメラと同等の大きさとなる高級一眼レフデジタルカメラから、これとは容積比1/400ほどでスマートフォンに内蔵される小型カメラモジュールに至るまで、その大きさの幅は極めて大きくなっている。生産量を見ると、スマートフォン等に内蔵される小型カメラモジュールの方が圧倒的に多く、直近の10年間では、小型カメラモジュールの生産量は、専用デジタルカメラと比較して約700倍にも拡大しており、現在、推定60億個/年程度まで生産が拡大している。しかも、かつてはスマートフォンに単一の小型カメラモジュールが搭載されていたが、現在では多眼化が進み、一台のスマートフォンに3~5個の小型カメラモジュールが搭載されている。多眼化した理由は、スマートフォンの薄型化が進展し、小型カメラモジュールの光軸方向の搭載スペースが限られるため、超広角から望遠までのレンズ機能を一つの小型カメラモジュールで担うことは難しくなり、分散させたためである。ちなみに、高級一眼レフデジタルカメラ等では、光軸方向に十分な空間容積が維持されるので、単一のレンズモジュールで、超広角から望遠までの機能を実現することが可能である。
【0003】
一方、小型カメラモジュール内のCMOSセンサの感度曲線が、可視光の波長領域(380nm~780nm)を超えて、近赤外域(波長約1.1μm)にまで広がっていることから、そのままで撮影された画像は人間の目視画像と異なる色調になる。そのためCMOS画像センサには、近赤外光(NIR)をカットする赤外線カットフィルタ(IRCF)が不可欠となる。デジタルカメラの黎明期では、近赤外光反射多層膜のみの赤外線カットフィルタを使用したが、ゴーストフレアやシェーディングなどによる画質劣化が生じやすい。そこで現在の赤外線カットフィルタ(IRCF)では、近赤外光吸収フィルタを含めた組み合わせに移行している。
【0004】
赤外線カットフィルタは、通常、CMOS画像センサとレンズモジュールの間に装着される。赤外線カットフィルタは、近赤外光を吸収して熱エネルギに変換する近赤外線吸収フィルタ、無機誘電体多層膜からなる近赤外線反射フィルタ、これらと空気との境界面に形成される反射防止膜の組み合わせで構成される(例えば、特開2006-182586参照)。
【0005】
赤外線カットフィルタの特性は、近赤外線吸収フィルタの特性、近赤外線反射フィルタの特性、反射防止膜の特性の3つの部材の個別特性の合成値となる。赤外線カットフィルタには、近赤外線吸収フィルタ、近赤外線反射フィルタ、反射防止膜を合体して一枚となる一体化構造と、近赤外線吸収フィルタと近赤外線反射フィルタが光路内で分離配置される構造が存在するが、互いの合成特性値が変わることはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の小型カメラモジュールは、光軸方向の厚さが8mm程度となっており、その中に6~7枚のレンズ、各種フィルタ、CMOS画像センサ、可動幅1.5mmのレンズアクチュエータなどの構成素子が組み込まれる。それ故、構成素子同士の素子間距離が極限まで接近し、素子間の反復反射によるゴーストフレアなどによる画質劣化が生じ易い。
【0007】
同時に、小型カメラモジュールでも、解像度を高めるニーズが高いため、CMOS画像センサのピクセルピッチを2μm以下に狭めたCMOS画像センサ(特に1μm以下としたサブμCMOS画像センサ)を搭載した機種が増えている。結果、高解像度化のトレードオフとして、花びら状のゴースト画像が映り込む現象が発生する。結果、小型カメラモジュールは画質劣化の問題を多く抱えており、小型カメラモジュールの開発リードタイムが長びく要因となっている。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ゴーストフレア、シェーディングなどの画質劣化を抑制し、かつ、量産性を高めた赤外線カットフィルタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、デジタルカメラに用いられる赤外線カットフィルタであって、高屈折率樹脂による高屈折率層と低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層されて構成される近赤外線反射フィルタと、色素を含有する光透過性樹脂又は色素が塗布される光透過性樹脂で構成される赤外線吸収膜フィルタを備えることを特徴とする赤外線カットフィルタである。
【0010】
上記赤外線カットフィルタに関連して、更に、前記近赤外線反射フィルタ及び/又は前記赤外線吸収膜フィルタにおける空気と接する表面に形成される反射防止部を備えることを特徴としてもよい。
【0011】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記高屈折率樹脂、前記低屈折率樹脂、前記赤外線吸収膜フィルタを構成する光透過性樹脂が、有機樹脂で構成されることを特徴としてもよい。
【0012】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記高屈折率樹脂、前記低屈折率樹脂、前記赤外線吸収膜フィルタを構成する光透過性樹脂及び前記反射防止部が、有機樹脂で構成されることを特徴としてもよい。
【0013】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタは、前記高屈折率層と前記低屈折率層が共押し出し加工されたものであることを特徴としてもよい。
【0014】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記高屈折率層及び/又は前記低屈折率層の各層厚は、10nm~300nmの範囲内であることを特徴としてもよい。
【0015】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記高屈折率層及び前記低屈折率層の合計層数は、30以上であることを特徴としてもよい。
【0016】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタの全体厚さが、100μm以下であることを特徴としてもよい。
【0017】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタと前記赤外線吸収膜フィルタが一体化されていることを特徴としてもよい。
【0018】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂の少なくともいずれかが前記色素を含有することで、前記赤外線吸収膜フィルタを兼ねることを特徴としてもよい。
【0019】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記反射防止部は、前記光透過性樹脂の表面に凹凸が形成される構造であることを特徴としてもよい。
【0020】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記反射防止部は、低屈折率樹脂膜と高屈折率樹脂膜が交互積層された多層膜構造であることを特徴としてもよい。
【0021】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタにおける複数の前記高屈折率層と複数の前記低屈折率層の一部が、前記反射防止部の前記低屈折率樹脂膜と前記高屈折率樹脂膜を兼ねることを特徴としてもよい。
【0022】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタと前記赤外線吸収膜フィルタが、互いに接合されて一体化されており、前記近赤外線反射フィルタにおける前記赤外線吸収膜フィルタと反対側の表面に、第一の前記反射防止膜が形成され、前記赤外線吸収膜フィルタにおける前記近赤外線反射フィルタと反対側の表面に、第二の前記反射防止膜が形成されることを特徴としてもよい。
【0023】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記反射防止部は、光透過性樹脂の表面に凹凸が形成されるモスアイ構造であることを特徴としてもよい。
【0024】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ、及び前記反射防止部の合計厚が300μm以下となることを特徴としてもよい。
【0025】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ、及び前記反射防止部の合計厚を基準として、前記近赤外線反射フィルタの膜厚占有率が20%以上となることを特徴としてもよい。
【0026】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタ、前記赤外線吸収膜フィルタ、及び前記反射防止部の合計厚を基準として、前記赤外線吸収膜フィルタの膜厚占有率が20%以上となることを特徴としてもよい。
【0027】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタ単体で、入射光の波長が増大するのに伴って光の透過率が減少して50%となる波長を反射膜カットオフ波長と定義するとき、入射光の入射角が0°となる場合における前記反射膜カットオフ波長が、750nm~900nmの範囲内となることを特徴としてもよい。
【0028】
上記赤外線カットフィルタに関連して、前記近赤外線反射フィルタ単体で、入射光の波長が増大するのに伴って光の透過率が減少して50%となる波長を反射膜カットオフ波長と定義するとき、入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける前記反射膜カットオフ波長の波長変動幅が150nm以下となることを特徴としてもよい。
【0029】
上記赤外線カットフィルタに関連して、入射光の波長440nmを基準藍色波長と定義するとき、前記近赤外線反射フィルタ単体は、前記入射光の入射角を60°とした場合における前記基準藍色波長の透過率が70%以上となることを特徴としてもよい。
【0030】
上記赤外線カットフィルタに関連して、入射光の波長450nm~500nmを低波長透過帯域と定義し、前記近赤外線反射フィルタ単体において、前記低波長透過帯域における入射光の平均透過率を反射膜低波長透過率と定義するとき、入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける前記反射膜低波長透過率が75%以上となることを特徴としてもよい。
【0031】
上記目的を達成する本発明は、前記近赤外線反射フィルタ及び/又は前記赤外線吸収膜フィルタを構成する樹脂が、紫外線吸収剤を含有することを特徴としてもよい。
【0032】
上記目的を達成する本発明は、光の入射側に配置される光学レンズ群と、前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と、を備えるデジタルカメラ構造であって、前記光学レンズ群と前記撮像素子の間に、上記赤外線カットフィルタが配置されることを特徴とする、カメラ構造である。
【0033】
上記目的を達成する本発明は、光の入射側から順番に、カバーガラス、光学レンズ群、撮像素子を備えるデジタルカメラ構造であって、上記の赤外線カットフィルタを備えており、前記カバーガラスと前記光学レンズ群の間に前記近赤外線反射フィルタが配置され、前記光学レンズ群と前記撮像素子の間に前記赤外線吸収膜フィルタが配置されることを特徴とする、カメラ構造である。
【0034】
上記カメラ構造に関連して、前記カバーガラスに、前記近赤外線反射フィルタが貼り付けられていることを特徴としてもよい。
【0035】
上記目的を達成する本発明は、デジタルカメラ用の赤外線カットフィルタの製造方法であって、高屈折率樹脂による高屈折率層及び低屈折率樹脂による低屈折率層を共押し出し成形によって交互に積層して近赤外線反射フィルタを形成する反射膜製造工程と、少なくとも前記近赤外線反射フィルタをカット加工又は打ち抜き加工によって所望形状とするチップ加工工程と、を備えることを特徴とする赤外線カットフィルタの製造方法である。
【0036】
上記赤外線カットフィルタの製造方法に関連して、前記近赤外線反射フィルタに対して、色素を含有する光透過性樹脂又は色素が塗布される吸収膜用光透過性樹脂で構成される赤外線吸収膜フィルタを積層又は貼り合わせる一体化工程を備えることを特徴としてもよい。
【0037】
上記赤外線カットフィルタの製造方法に関連して、前記反射膜製造工程では、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂に加えて、赤外線を吸収する色素を含有する光透過性樹脂を共押し出し成形することで、前記高屈折率樹脂による高屈折率層及び前記低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層される近赤外線反射フィルタ、並びに、前記光透過性樹脂による赤外線吸収膜フィルタを一体成形することを特徴としてもよい。
【0038】
上記赤外線カットフィルタの製造方法に関連して、前記反射膜製造工程では、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂のいずれか一方に赤外線を吸収する色素を含有させてから、前記高屈折率樹脂及び前記低屈折率樹脂を共押し出し成形することで、前記高屈折率樹脂による高屈折率層及び前記低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層される近赤外線反射フィルタ、前記高屈折率層及び前記低屈折率層における前記色素を含有する側による赤外線吸収膜フィルタを一体成形することを特徴としてもよい。
【0039】
上記赤外線カットフィルタの製造方法に関連して、前記チップ加工工程の前に実施され、空気と接する表面に反射防止膜を形成する反射防止膜付加工程を備えることを特徴としてもよい。
【0040】
上記赤外線カットフィルタの製造方法に関連して、前記チップ加工工程の前に実施され、遮光マスクを印刷するマスク付加工程を備えることを特徴としてもよい。
【0041】
上記赤外線カットフィルタの製造方法に関連して、前記一体化工程では、ロール状の前記近赤外線反射フィルタ及びロール状の前記赤外線吸収膜フィルタを、ラミネート装置に供給して一体化し、ロール状に巻き取ることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、ゴーストフレア、シェーディングなどの画質劣化が抑制され、かつ、量産効率を飛躍的に高められた赤外線カットフィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第一実施形態の赤外線カットフィルタの断面図である。
図2】同赤外線カットフィルタの近赤外線反射フィルタを拡大して示す断面図である。
図3】同近赤外線反射フィルタの透過特性を示す分光グラフである。
図4】比較説明となる従来の近赤外線反射フィルタの透過特性を示す分光グラフである。
図5】第一実施形態の追加実施例にかかる近赤外線反射フィルタの波長別の入射角依存特性を示すグラフである。
図6】比較例1の近赤外線反射フィルタの波長別の入射角依存特性を示すグラフである。
図7】比較例2の近赤外線反射フィルタの波長別の入射角依存特性を示すグラフである。
図8】第一実施形態の赤外線カットフィルタの赤外線吸収膜フィルタの吸収特性を示す分光グラフである。
図9】第一実施形態の赤外線カットフィルタの反射防止膜の断面形状及び屈折率を拡大して示す図である。
図10】同反射防止膜の透過特性および反射特性を示す分光グラフである。
図11】貼り合わせ工程で用いられるラミネート装置の構造を示す側面図である。
図12】反射防止膜付加工程で用いられる成膜装置の構造を示す側面図である。
図13】第一実施形態の赤外線カットフィルタの全体の光学特性を示す分光グラフである。
図14】比較例3の赤外線カットフィルタの全体の光学特性を示す分光グラフである。
図15】第一実施形態の赤外線カットフィルタを組み込んだカメラモジュールの断面図である。
図16】(A)は本発明の第二実施形態の赤外線カットフィルタの断面図であり、(B)は同赤外線カットフィルタを組み込んだカメラモジュールの断面図である。
図17】(A)は本発明の第三実施形態の赤外線カットフィルタの断面図であり、(B)は本発明の第四実施形態の赤外線カットフィルタの断面図であり、(C)は第五実施形態の赤外線カットフィルタの断面図である。
図18】(A)は本発明の第六実施形態の赤外線カットフィルタの断面図であり、(B)は本発明の第七実施形態の赤外線カットフィルタの断面図であり、(C)は第八実施形態の赤外線カットフィルタの断面図である。
図19】(A)は図15で示す本実施形態のカメラモジュールで撮影した画像であり、(B)は比較例となる従来のカメラモジュールで撮影した画像である。
図20】(A)は図15で示す本実施形態のカメラモジュールで撮影した画像であり、(B)は比較例となる従来のカメラモジュールで撮影した画像である。
図21】従来のカメラモジュールで撮影した画像である。
図22】(A)は本発明の第九実施形態の赤外線カットフィルタの断面図であり、(B)は同赤外線カットフィルタを組み込んだカメラ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0045】
本発明の第一実施形態となる赤外線カットフィルタ1の断面構造を図1に示す。赤外線カットフィルタ1は、デジタルカメラ用の赤外線カットフィルタであって、近赤外線反射フィルタFref1と、赤外線吸収膜フィルタFab1と、反射防止膜(反射防止部)Far1と、遮光マスクMを備える。近赤外線反射フィルタFref1は、反射膜用高屈折率樹脂による高屈折率層と反射膜用低屈折率樹脂による低屈折率層が交互に積層されて構成される。赤外線吸収膜フィルタFab1は、色素を含有する吸収膜用光透過性樹脂又は色素が塗布される吸収膜用光透過性樹脂で構成される。反射防止膜Far1は、近赤外線反射フィルタFref1及び/又は赤外線吸収膜フィルタFab1における空気と接する表面に形成され、反射防止用光透過性樹脂によって構成される。以下、各部材について個別に詳述する。
【0046】
<近赤外線反射フィルタ>
【0047】
(本実施形態の膜構造)
本実施形態の近赤外線反射フィルタFref1は、図2に拡大して示すように、反射膜用高屈折率樹脂による高屈折率層Hindと反射膜用低屈折率樹脂による低屈折率層Lindが交互に積層されて構成される。高屈折率層Hindと低屈折率層Lindの多層形成は、共押し出し工法(Co-Extrusion)やスピンコート法を採用できる。本実施形態では、Tダイを用いる共押し出し工法を採用する。共押し出し工法では、反射膜用高屈折率樹脂と反射膜用低屈折率樹脂を積層構成に合わせた層数分だけ一緒に押し出し、これらを合流させつつTダイからフィルム状に流出させることで、製膜とラミネート(相互貼り合わせ)を同時に行うものである。なお、この際、Tダイの内部で高屈折率層Hind及び低屈折率層Lindの各単層をフィルム状にしてから合流させるマルチマニホールド法と、各単層をフィルム状にする前に反射膜用高屈折率樹脂と反射膜用低屈折率樹脂を合流させてから、Tダイの内部でまとめてフィルム状にするフィードブロック法等があるが、いずれを採用してもよい。共押し出し工法によれば、単体ではフィルム状にすることが困難な1μm以下の膜厚の高屈折率層Hind及び低屈折率層Lindを、百層以上(例えば数百層)或いは千層以上の状態で交互に積層可能となり、更には、長尺の近赤外線反射フィルタFref1として一時的にロールに巻き取ることも可能となる。なお、ここではTダイを用いる共押し出し工法を紹介するが、インフレーション法による共押し出し工法を採用してもよい。
【0048】
反射膜用高屈折率樹脂及び反射膜用低屈折率樹脂は、隣接膜同士で互いに屈折率の異なる透明な樹脂であれば、様々なものを選択できる。例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂(例:ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、セルローズ系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂などから少なくとも二種を選択できる。
【0049】
反射膜用高屈折率樹脂としては、例えば、屈折率が1.53以上となる樹脂、具体的にはポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂から選択することが好ましく、より好ましくは屈折率が1.56以上となる樹脂、具体的にはポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選択する。
【0050】
反射膜用低屈折率樹脂は、屈折率が1.53未満となる樹脂、具体的にはビニル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル系樹脂、セルローズ系樹脂、フッ素系樹脂から選択することが好ましく、より好ましくは屈折率が1.50未満となる樹脂、具体的にはビニル系樹脂(ポリビニルアルコール)、ポリプロピレン樹脂、アクリル系樹脂(例:ポリメチルメタクリレート系樹脂)、セルローズ系樹脂、フッ素系樹脂を選択する。なお、これらの樹脂から選択された複数樹脂、又は、これらの樹脂と他の樹脂とを(共)重合させたコポリマーを採用して、屈折率を調整しても良い。更に、交互に積層される高屈折率層Hindと低屈折率層Lindに関して、複数の高屈折率層Hindが全て同一樹脂材料にする必要はなく、同様に、複数の低屈折率層Lindが全て同一樹脂材料にする必要はない。
【0051】
更に、屈折率を微調整するために、反射膜用高屈折率樹脂及び/又は反射膜用低屈折率樹脂に対して、屈折率調整用の添加剤を付加してもよく、更に、複数種類の樹脂を混ぜることで屈折率を調整することもできる。更に耐紫外線性を向上させるために、反射膜用高屈折率樹脂及び/又は反射膜用低屈折率樹脂に、硫黄化合物などのクエンチャー(消光色素)を添加してもよい。
【0052】
高屈折率層Hindと低屈折率層Lindの各膜厚は、反射をしたい波長(または波長帯域)をλとして、λ/4の厚み以下で形成することが好ましい。例えば、本実施形態では、600nm~1200nmの波長λの範囲の光を反射することが求められるので、高屈折率層Hindと低屈折率層Lindの各層厚は、例えば400nm以下の範囲内に設定される。
【0053】
反射膜用高屈折率樹脂と反射膜用低屈折率樹脂を採用する場合、従来の誘電体膜と比較して屈折率差を小さく設定せざるを得ないことから、各境界単位の近赤外光の反射率が小さくなる。そこで近赤外光の高反射率を実現するためにも、本実施形態では、各膜厚を小さくすると同時に層数を増大させる。より具体的に、本実施形態では、高屈折率層Hindと低屈折率層Lindの各層厚は、例えば200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは80nm以下、一層好ましくは50nm以下とする。本実施形態では20nm以下の15nmにする。また、交互に積層される高屈折率層Hindと低屈折率層Lindの全層数は、30層以上にすることが好ましく、更に好ましましくは100層以上にし、より好ましくは200層以上とする。一層好ましくは300層以上とし、例えば400層を採用する。
【0054】
各膜厚を小さくすることで、近赤外線反射フィルタFref1の全体膜厚は、100μm以下となるようにすることが好ましく、更に好ましくは50μm以下とする。なお、量産時のハンドリングの観点から、近赤外線反射フィルタFref1の全体膜厚は、10μm以上、好ましくは30μm以上とすることが好ましい。
【0055】
以上の通り、本実施形態の赤外線吸収膜フィルタFab1は、有機樹脂が基材となっていることから、材料選定、添加剤や樹脂混合による屈折率調整が容易である。つまり、高屈折率層Hindと低屈折率層Lindの屈折率差の設定が自由に行える。更に、共押し出し加工法を採用することで、各膜厚を1μm以下の膜制御が可能になる。また、後述する型抜き加工時に、膜特性が劣化しないで済むという利点も得られる。
【0056】
(反射特性)
図3に、近赤外線反射フィルタFref1の単体の反射特性を示す。ここで、入射光の波長が増大するのに伴って、近赤外線反射フィルタFref1の光の透過率が減少して50%となる波長を「反射膜カットオフ波長」と定義する。入射光の入射角が0°(つまり、膜に対して垂直入射光)となる場合の反射膜カットオフ波長は、750nm~900nmの範囲内に設定される。より詳細に同反射膜カットオフ波長は、750nm~880nmの範囲内に設定され、更に詳細には、同反射膜カットオフ波長が770nm~880nmの範囲内に設定され、一層詳細には、同反射膜カットオフ波長が780nm~880nmの範囲内に設定される。
【0057】
また、本実施形態では、入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける反射膜カットオフ波長の変動幅(波長シフト量)Sref1が170nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、更に好ましくは100nm以下となる。つまり、入射角0°の反射膜カットオフ波長と、入射角60°の反射膜カットオフ波長の波長差が150nm以下となる。カメラモジュールを薄肉化すればする程、入射角の大きい光が近赤外線反射フィルタFref1まで到達しやすくなるが、本実施形態の、近赤外線反射フィルタFref1では、反射膜カットオフ波長の短波長側への波長シフト量Sref1が抑制されているので、高品質な撮像を実現できる。なお、入射角60°の反射膜カットオフ波長は、650nm以上に設定されることが望ましく、赤外線吸収膜フィルタFab1の入射角60°の吸収膜カットオフ波長より小さくならないで済むので、撮像結果に乱れが生じにくい。
【0058】
更に、近赤外線反射フィルタFref1の光の透過率が減少して10%以下となる波長域を「反射膜全反射波長域」と定義する。入射角0°の反射膜全反射波長域Wref1は、概ね790nm~1100nmとなる。なお、反射膜全反射波長域Wref1は、入射角によって短波長側に変動(シフト)するが、その変動量は、反射膜カットオフ波長の波長シフト量Sref1に近似する。
【0059】
次に、入射光の波長440nmを基準藍色波長と定義するとき、近赤外線反射フィルタFref1単体は、入射光の入射角を60°とした場合における基準藍色波長の透過率が70%以上となる。結果、入射角変動によって藍色成分が減少する従来の不具合を低減できる。更に、入射光の波長450nm~500nmを低波長帯域と定義し、低波長帯域における入射光の平均透過率を反射膜低波長透過率と定義する。近赤外線反射フィルタFref1は、入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける反射膜低波長透過率が常に75%以上となる。つまり、近赤外線反射フィルタFref1単体において、透過率50%の反射膜カットオン波長から、反射膜カットオフまでの範囲を反射膜透過帯域Tref1と定義する場合、反射膜透過帯域Tref1の矩形波形形状における低波長側の角領域TR1の形状が、入射角が0°~60°で変動しても、常に安定する(長波長側の角形状は、短波長側にシフト移動する)。結果、近赤外線反射フィルタFref1は、入射角が増大しても、低波長帯域成分が乱れる現象(いわゆるリップル現象)を低減できる。
【0060】
(従来との比較説明)
従来の近赤外線反射フィルタは、一方面に赤外線吸収膜フィルタ材料を塗布したブルーガラスの他方面に対して、PVDプロセスによって無機誘電体多層膜を形成して、赤外線反射機能を実現している。図4に従来の近赤外線反射フィルタ単体の光学特性を示す。従来の近赤外線反射フィルタは、入射光の入射角を0°~60°の範囲で変化させたときにおける反射膜カットオフ波長の変動幅(波長シフト量)Sreftが150nm以上となる。特に入射角60°になると、分光特性の波形に乱れ・リップルが生じやすい。これは、入射光に関して、その振動面が伝搬面と一致するP成分と、その振動面が伝搬面に垂直な面と一致するS成分に分けた場合、誘電体多層膜に対する入射角が増大すると、P成分とS成分で透過特性にズレが生じることに起因している。その結果、従来の近赤外線反射フィルタの反射膜カットオフ波長は、650nm未満となるので、赤外線吸収膜フィルタの入射角60°の吸収膜カットオフ波長より小さくなってしまい、撮像結果にも乱れを生じさせる。また、入射光の波長440nmを基準藍色波長と定義するとき、従来の近赤外線反射フィルタは、入射光の入射角を60°とした場合における基準藍色波長の透過率に乱れが生じ、60%以下となる場合もある。結果、入射角変動によって藍色成分が減少する。更に、入射光の波長450nm~500nmの低波長帯域において、従来の近赤外線反射フィルタでは、入射光の入射角が60°となる場合、平均透過率が75%未満となり、しかもリップルが増大する。
【0061】
なお、参考であるが、本実施形態の樹脂フィルムによる赤外線吸収膜フィルタFab1に対して、PVDプロセスでその表裏に無機誘電体多層膜を形成しようとすると、その後のダイシング工程を含めて高レベルの技術と経験を要し、歩留まりの低下が生じやすい。具体的に、PVDプロセスでは、無機誘電体多層膜内に必ず微小欠陥が発生し、全品検査によって事後的に取り除く必要がある。更に、ダイシング工程では、無機誘電体多層が剥離しやすいので、これについても全品検査によって剥離状態を目視確認しなければならない。つまり、量産の観点からは、樹脂フィルムとPVDプロセスの相性は極めて悪い。
【0062】
(追加実施例)
本実施形態の近赤外線反射フィルタFref1として、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリメチルメタクリレート系樹脂を用いて200層の高屈折率層Hindと低屈折率層Lindを形成し、近赤外線反射フィルタFref1の全厚を50μmとした。結果、入射光の入射角が0°のときの反射膜カットオフ波長が850nmとなった。図5に示すように、可視光(R:赤630nm、G:緑546nm、B:青436nm)の全てにおいて、入射角が増大しても、全体的に透明度(透過率)が高い状態を維持しており、目視では反射による干渉色は認められなかった。しかも、入射角が50°~60°の範囲でも、透過率75%以上を維持しており、その極端な低下が生じずに、比較的なめらかな減少傾向となる。なお、RGBのうち短波長のB帯が、残りのR帯及びG帯に比して数ポイント乖離が認められるが、その乖離量は画質的に問題ない範囲であると共に、その乖離幅が全入射角にわたって安定しているので、入射角変動による画質変化が生じにくい。
【0063】
(比較例1)
図6に、比較例1となる近赤外線反射フィルタの光学特性を示す。この比較例1では、完全に透明となる光学ガラス板にPVDプロセスによって無機誘電体多層膜を形成し、無機誘電体多層膜の入射角0°時の反射膜カットオフ波長を780nmに調整した。この近赤外線反射フィルタでは、入射角が50°を超えると、R帯の透過率が急激に低下し、入射角70°で完全に失われる。これは、反射膜カットオフ波長が、入射角増大に伴って低波長側に波長シフトして、R帯の光が反射されてしまうことによる。なお、この近赤外線反射フィルタの場合、目視でも容易に赤色の干渉色が観察できた。従来の近赤外線反射フィルタと吸収膜と組み合わせた赤外線カットフィルタをカメラモジュールに組み込み、実写によって画質チェックしたところ、画像の周辺部(つまり、入射角が大きくなる領域)で相対的にグリーンが強くなり、典型的な赤不足の色シェーディングが認められた。
【0064】
(比較例2)
図7に、比較例2となる近赤外線反射フィルタの光学特性を示す。この比較例2では、光学ガラス板にPVDプロセスによって無機誘電体多層膜を形成し、無機誘電体多層膜の入射角0°時の反射膜カットオフ波長を850nmに調整した。この場合、目視では干渉色は認められなくなった。RGB透過率の入射角依存性を見ると、RGB同士の相互乖離が少ないものの、入射角が40°以上になると、RGB全体の透過率の低下現象が発生し、入射角が60°になるとRGB全ての透過率が65%まで低下する。つまり、R帯単独の透過率低下現象は発生しないが、全体的な透過量不足が生じることがわかる。
【0065】
<赤外線吸収膜フィルタ>
【0066】
(膜構造)
本実施形態の赤外線吸収膜フィルタFab1は、いわゆるブルーフィルム構造(吸収膜用光透過性樹脂に近赤外光吸収色素を加えたもの)を採用する。赤外線吸収膜フィルタFab1の膜厚は、100μm以下が好ましく、望ましくは50μm以下とする。なお、量産途中のハンドリングの観点から、赤外線吸収膜フィルタFab1の膜厚は10μm以上とすることが好ましく、更に好ましくは30μm以上とする。
【0067】
近赤外光吸収機能を有する有機色素としては、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物などを用いることができる。赤外線吸収膜フィルタFab1を構成する吸収膜用光透過性樹脂(有機色素にとってのバインダや基材と称することもできる)は、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂(例:ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、セルローズ系樹脂(例:セルローストリアセテート)、オレフィン系樹脂(例:シクロオレフィン、ポリオレフィン)、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、などの有機ポリマーを用いる。吸収膜用光透過性樹脂は、複数の樹脂を混合してもよく、また上記樹脂のモノマーを用いた共重合体であってもよい。また、吸収膜用光透過性樹脂は、可視光領域の光に対して透過率の高いものであればよく、有機色素との相性、成膜プロセス、コスト等を考慮して選択される。また、赤外線吸収膜フィルタFab1の耐紫外線性を向上させるために、吸収膜用光透過性樹脂に硫黄化合物などのクエンチャー(消光色素)を添加してもよい。
【0068】
(吸収特性)
図8に、赤外線吸収膜フィルタFab1単体の吸収特性を示す。赤外線吸収膜フィルタFab1の特性は、近赤外線反射フィルタFref1との相関関係で設定される。赤外線吸収膜フィルタFab1は400nmから700nmの可視光波長領域で、人間の可視感度曲線に近い透過特性を有し、かつ、685nmから800nmの波長域で透過率が2%以下、望ましくは1%以下となる。このように、赤外線吸収膜フィルタFab1単体において、透過率が2%以下となる領域を光吸収領域Wab1と定義すると、入射角を0°~30°の範囲で変動する近赤外線反射フィルタFref1側の反射膜カットオフ波長変動領域は、全て、この光吸収領域内に収まるように設定される。なお、より望ましい赤外線吸収膜フィルタFab1としては、685nmから850nmの波長域で透過率が2%以下となるようにし、更に望ましくは、685nmから900nmの波長域で透過率が2%以下となるようにする。
【0069】
更に、近赤外線反射フィルタFref1側の反射膜全反射波長域Wref1(例:790nm~1100nm)と重なっている、800nmから1150nmの波長領域においても、赤外線吸収膜フィルタFab1単体の最大透過率が60%以下、望ましくは最大透過率が40%以下に設定される。同様に赤外線吸収膜フィルタFab1は、800nmから1150nmの波長領域の平均透過率が40%以下、望ましくは25%以下に設定される。
【0070】
なお、本実施形態では、近赤外線反射フィルタFref1と赤外線吸収膜フィルタFab1を組み合わせることで、赤外線吸収膜フィルタFab1のみでは2%以下に吸収しきれない800nm以上の長さの波長の光を、近赤外線反射フィルタFref1でカット(反射)することで、自然な色合いの画像を取得することが可能になる。一方で、近赤外線反射フィルタFref1だけで近赤外領域の全ての光をカット(反射)しようとすると、既述の通り、入射光の入射角が大きくなることで反射膜カットオフ波長が短波長側に波長シフト(移動)してしまう。そこで、短波長側の赤外線カットは、入射角依存性のない赤外線吸収膜フィルタFab1を組み合わせて実現することで、700nmから1150nmの広域の赤外線カット特性が光の入射角に依存しない赤外線カットフィルタ1を構成することが可能になる。
【0071】
ここで、入射光の波長が増大するのに伴って、赤外線吸収膜フィルタFab1単体の光の透過率が減少して50%となる波長を「吸収膜カットオフ波長」と定義する。吸収膜カットオフ波長は、入射光の入射角にほとんど依存しない。吸収膜カットオフ波長は、600nm~680nmの範囲内に設定される。また、吸収膜カットオフ波長は、入射角を0°~60°の範囲で変化させたときの近赤外線反射フィルタFref1側の反射膜カットオフ波長の最低値よりも、常に小さくなるように設定される。
【0072】
(従来との比較説明)
従来の赤外線吸収膜フィルタは、基材としてリン酸ガラスに適量のCuを添加した所謂ブルーガラスが活用されている。このブルーガラスは、好ましい近赤外光吸収特性を得ることができる。しかし、ブルーガラスを薄肉化すると、ブルーガラスの銅イオン溶解量が限られる結果、近赤外光の吸収能不足が生じる。そのために、別途、ブルーガラスの一方の表面に対して、スピンコート等によって、赤外線吸収インクを塗布して補助的な赤外線吸収膜フィルタを形成し、全体としてブルーガラスの赤外線吸収不足を補っている。結果、生産工程が大幅に増大する結果となっている。
【0073】
<反射防止膜(反射防止部)>
【0074】
(膜構造)
反射防止膜Far1は、ここでは反射防止用光透過性樹脂によって構成される。この反射防止膜Far1は、カメラモジュールにとって、画質や明るさを維持するのに不可欠なものとなる。特に小型カメラモジュールの場合、光学素子間の距離が極限まで狭くなっているので、ゴーストやフレアをはじめ様々な画像ノイズが生じ易いが、この反射防止膜Far1によって画像ノイズを低減できる。
【0075】
反射防止膜Far1は、その基本構造として、低屈折率樹脂による「単層膜構造」、屈折率の異なる樹脂膜(低屈折率膜と高屈折率膜)を交互積層し、光を熱に変換して吸収機能を持たせる「多層膜構造」、樹脂表面を多孔質状にすることで低屈折率を形成する「多孔質低屈折率膜構造」、樹脂表面を多孔質状にし、その空気占有率を光軸方向(膜厚方向)に傾斜させて屈折率傾斜を生じさせる「多孔質傾斜屈折率構造」、樹脂表面に突端が細くなる微小突起(モスアイ)を形成して光軸方向(膜厚方向)に屈折率傾斜を生じさせる「モスアイ傾斜屈折率構造」等を採用できる。なお「モスアイ傾斜屈折率構造」では、微小突起(モスアイ)を規則的に配列される規則的モスアイ構造と、高さやピッチが異なる不規則な微小突起を形成する「ランダムモスアイ構造」があるが、いずれも採用できる。
【0076】
反射防止膜Far1は、後述するロール・ツー・ロール製造工程を採用する観点から、「多層膜構造」、「モスアイ傾斜屈折率構造」を採用することが好ましい。ここでは図9に示すような、規則的モスアイ構造を採用している。屈折率傾斜は、突起の基端において反射防止用光透過性樹脂の屈折率となり、突起の突端で空気の屈折率となる。反射防止用光透過性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂を採用し、硬化前の液状の紫外線硬化性樹脂を基材(ここでは近赤外線反射フィルタFref1又は赤外線吸収膜フィルタFab1)に塗布し、モスアイ形状を有する転写フィルム又は転写ロールを押し当てながら紫外線を照射することで、表面にモスアイ形状を転写形成する。「モスアイ傾斜屈折率構造」は、入射光の波長範囲の影響や、入射角変動の影響を受けにくいという利点がある。微細突起のサイズは、突起高さを2μm以下、突起同士のピッチ(格子間隔)を2μm以下とすることが好ましい。更に好ましくは、突起高さを1μm以下、突起同士のピッチ(格子間隔)を1μm以下とし、一層望ましくは、突起高さを0.5μm以下、突起同士のピッチ(格子間隔)を0.5μm以下とする。
【0077】
反射防止膜Far1を「多層膜構造」とする場合、近赤外線反射フィルタFref1の高屈折率層Hindにおける表面側の一部と、低屈折率層Lindの表面側の一部が、反射防止膜Far1の低屈折率膜と高屈折率膜の役割を兼ねることができる。つまり、近赤外線反射フィルタFref1における表面近傍において、反射防止膜Far1の機能を同時に発揮させる。
【0078】
なお、本実施形態の近赤外線反射フィルタFref1は、膜自体が樹脂で構成されていることから、従来の無機誘電体多層膜と比較して、それ自体の表面反射が大幅に抑制される。結果、この近赤外線反射フィルタFref1の表面反射状態と、「モスアイ傾斜屈折率構造」の組み合わせにより、一層、良好な反射防止機能を得ることができ、画像品質が飛躍的に向上する。
【0079】
(透過特性及び反射特性)
図10に、反射防止膜Far1の分光特性を示す。本図では、透過率Tmとして、入射角6°(Tm6)、入射角15°(Tm15)、入射角30°(Tm30)、入射角45°(Tm45)、入射角60°(Tm60)の分光特性と、反射率Rmとして、入射角6°(Rm6)、入射角15°(Rm15)、入射角30°(Rm30)、入射角45°(Rm45)、入射角60°(Rm60)の分光特性を示す。
【0080】
可視光領域(400nm~700nm)の透過率Tmは、入射角が0°から45°の範囲に亘って95%以上となり、反射率Rmは3%以下、望ましくは1%以下となる。更に、入射角が60°であっても、可視光領域の透過率Tは90%以上となり、反射率Rは5%以下となる。ちなみに可視光領域の平均透過率は99.2%となり、平均反射率は0.8%となる。
【0081】
<赤外線カットフィルタの製造方法>
次に、赤外線カットフィルタ1の製造方法について説明する。
【0082】
(反射防止膜製造工程)
まず、共押し出し工法(Co-Extrusion)によって近赤外線反射フィルタFref1を製造する。共押し出し機から押し出されたシートは、延伸装置によって1軸(縦方向)延伸又は2軸(縦方向及び幅方向)延伸することで近赤外線反射フィルタFref1となる。完成した近赤外線反射フィルタFref1は、一時的にロール状に巻き取ることが好ましい。
【0083】
(赤外線吸収膜フィルタ製造工程)
有機色素を含有させた吸収膜用光透過性樹脂を用い、押し出し工法によって赤外線吸収膜フィルタFab1を製造する。押し出し機から押し出されたシートは、延伸装置によって1軸(縦方向)延伸又は2軸(縦方向及び幅方向)延伸することで赤外線吸収膜フィルタFab1となる。完成した赤外線吸収膜フィルタFab1は、一時的にロール状に巻き取ることが好ましい。
【0084】
(貼り合わせ工程)
図11に示すように、ロール・ツー・ロール構造のラミネート装置RSを利用して、近赤外線反射フィルタFref1と赤外線吸収膜フィルタFab1を貼り合わせる。具体的には、ロール状の近赤外線反射フィルタFref1及び赤外線吸収膜フィルタFab1を繰り出して、接着剤塗布装置CTによっていずれかの表面に接着剤を塗布し、両膜を、一対の加熱式のラミネートロールRRで挟み込んで押圧して両膜を貼り合わせる。貼り合わせた近赤外線反射フィルタFref1と赤外線吸収膜フィルタFab1は、再度、ロール状に巻き取ることが好ましい。接着剤塗布装置CTで塗布する接着剤としては、熱硬化タイプ光学用接着剤を用いることができる。
【0085】
(反射防止膜付加工程)
図12に示すように、ロール・ツー・ロール構造の成膜装置MSを利用して、近赤外線反射フィルタFref1の外表面と、赤外線吸収膜フィルタFab1の外表面に反射防止膜Far1を形成する。具体的には、近赤外線反射フィルタFref1の外表面に第一コーター装置CT1によって反射防止用光透過性樹脂(紫外線硬化性樹脂)を塗布し、第一転写ロールPR1を押し当てながら紫外線UV1を照射して硬化させることで、モスアイ傾斜屈折率構造を有する第一反射防止膜Far1を形成する。続いて、赤外線吸収膜フィルタFab1の外表面に第二コーター装置CT2によって反射防止用光透過性樹脂を塗布し、第二転写ロールPR2を押し当てながら紫外線UV2を照射して硬化させることで、モスアイ傾斜屈折率構造を有する第二反射防止膜Far1を形成する。結果、近赤外線反射フィルタFref1、赤外線吸収膜フィルタFab1、一対の反射防止膜Far1が一体化された全ポリマー構造の赤外線カットフィルタ用のシート材が完成する。完成したシート材は、一時的にロール状に巻き取ることが好ましい。
【0086】
(遮光マスク印刷工程)
図12の工程を経た赤外線カットフィルタ用のシート材を、所望の矩形シートにカットして枚葉状態にしてから、印刷装置を利用して、額縁状の遮光マスクを枚葉印刷する。遮光マスクは、CMOS画素センサにとって余分な周縁光をブロックする役割を担う。例えば、矩形シートに対して、格子状又は千鳥状に、合計100個以上、望ましくは300個以上の遮光マスクを印刷する。なお、遮光マスクは、近赤外線反射フィルタFref1側に印刷する場合と、赤外線吸収膜フィルタFab1側に印刷する場合のいずれかを選択できるが、ここでは赤外線吸収膜フィルタFab1側に印刷している。矩形シートのサイズは特に限定されないが、量産効率の観点から、少なくとも縦150mm以上、横150mm以上の大判サイズが好ましく、更に望ましくは、縦200mm以上、横200mm以上、更に望ましくは縦300mm以上、横300mm以上とすることが好ましい。なお、従来のブルーガラス構造の赤外線カットフィルタの場合、ガラス基板のハンドリング上の問題から、ガラス板のサイズは縦100mm以下、横100mm以下に限られていた。
【0087】
(チップ加工工程)
遮光マスクが印刷された矩形シートは、全て、有機樹脂によって構成されている。従って、矩形シートをプレス側の打抜き装置を利用して所望形状(例えば、縦数ミリ、横数ミリの矩形形状)に打ち抜くことで、複数の赤外線カットフィルタ1の個片にチップ加工する。結果、図1に示される赤外線カットフィルタ1が完成する。なお、打抜き刃としては、矩形シートを挟み込む両方の型(ダイ)に刃を設ける両刃構造とすることで、周縁のバリ等の発生を抑制することが好ましい。矩形シートが有機樹脂で構成されているので、ガラスや無機誘電体膜等と比較して、チップ加工時における異物(破片)混入も極めて少ない。なお、両刃構造のダイに限られず、片刃構造のダイであってもよい。更に、プレス打抜きに限られず、カッター等を利用したダイシングを採用することもできる。
【0088】
(外観検査工程)
本実施形態の赤外線カットフィルタ1の場合、既述の量産工程において部材同士のばらつきが殆ど発生しないので、全品検査ではなく、一部の素子に限定した検査を行うことで、品質を保証することができる。
【0089】
<赤外線カットフィルタの全体構造及び特性>
図1に示される赤外線カットフィルタ1は、全てが有機樹脂によって構成されており、ガラス基材や誘電体多層膜を含まない。結果、製造工程を大幅に簡素化できると同時に、量産時の光学特性を安定させることができる。例えば、近赤外線反射フィルタFref1と、赤外線吸収膜フィルタFab1と、反射防止膜Far1のそれぞれの膜厚を100μm以下とすることで、赤外線カットフィルタ1の全体厚を300μm以下にできる。結果、カメラモジュールの低背化を実現できる。なお、本実施形態では、近赤外線反射フィルタFref1と、赤外線吸収膜フィルタFab1と、反射防止膜Far1のそれぞれの膜厚を50μm以下とすることで、全体厚を150μm以下にしており、具体的には、全体厚を100μm以下にしている。なお、赤外線カットフィルタ1の全体膜厚は、カメラモジュールの組み立て時のハンドリング上の観点から、30μm以上とすることが望ましい。この際、赤外線カットフィルタ1の全体厚を、近赤外線反射フィルタFref1の厚みと、赤外線吸収膜フィルタFab1の厚みに分散させることができる結果、ロール・ツー・ロールによる量産時に、近赤外線反射フィルタFref1のハンドリング特性と、赤外線吸収膜フィルタFab1のハンドリング特性の双方を向上させることができる。この観点から、赤外線カットフィルタ1の全体厚を100%とした場合、近赤外線反射フィルタFref1の膜厚占有率を20%以上とし、望ましくは30%以上とする。同様に、赤外線吸収膜フィルタFab1の膜厚占有率を20%以上とし、望ましくは30%以上とする。また、近赤外線反射フィルタFref1と赤外線吸収膜フィルタFab1の膜厚差を、100μm以下とすることが好ましく、望ましくは80μm以下、更に好ましくは50μm以下とする。
【0090】
図13に、本実施形態の赤外線カットフィルタ1の光学特性を示す。可視光領域(400nm~700nm)における50%カットオンから50%カットオフに至る透過帯Qの透過率は、赤外線吸収膜フィルタFab1の分光特性がほぼそのまま反映されている。特に、入射角が0°から60°まで変化しても、この透過帯Qの透過率の分光特性が殆ど変化しておらず、リップルも少ない。とりわけ、波長440nmの基準藍色波長や、波長450nm~500nmの低波長帯域に関しては、入射角が60°となっても、その透過率の落ち込み量はわずかである。結果、撮像した画像において、シェーディングやゴーストの発生が大幅に抑制される。更に、赤外線領域は、赤外線吸収膜フィルタFab1の光吸収領域Wab1(図8参照)と、近赤外線反射フィルタFref1の反射膜全反射波長域Wref1(図3参照)の組み合わせによって、全体の700nm~1150nmに亘って低い透過率が維持されることがわかる。つまり、撮像した画像内に赤外線映像が写り込んでしまうことを抑制できる。
【0091】
(比較例3)
図14に、本実施形態と同じ赤外線吸収膜フィルタFab1(図8)と、比較例1で示した従来の近赤外線反射フィルタ(図4)を組み合わせた赤外線カットフィルタの光学特性を示す。この赤外線カットフィルタでは、可視光領域(400nm~700nm)の透過率について、赤外線吸収膜フィルタFab1の分光特性が反映されているものの、波長440nmの基準藍色波長や、波長450nm~500nmの低波長帯域について、従来の近赤外線反射フィルタに起因するリップルが発生している。更に入射角が60°になると、可視光領域(400nm~700nm)の全体的な透過率が減少し、特に、可視光領域波長440nmの基準藍色波長や、波長450nm~500nmの低波長帯域の透過率が大幅に落ち込むと同時にリップルが大きくなる。結果、撮像した画像において、周縁にシェーディングやゴーストが発生しやすい。
【0092】
<カメラモジュールに対する組み込み>
図15に、第一実施形態の赤外線カットフィルタ1を組み込んだカメラモジュール20を示す。カメラモジュール20は、カメラ構造として、光学レンズ群となるレンズユニット50と、レンズユニット50を保持するレンズキャリア40と、自動焦点機能を実現するためにレンズユニット50を軸方向に移動させるマグネットホルダ30と、レンズユニット50を介して入射した光を受光する撮像素子70と、撮像素子70が実装される基板80と、レンズユニット50と撮像素子70の間に配置される赤外線カットフィルタ1を備える。
【0093】
このカメラモジュール20では、赤外線カットフィルタ1が薄肉構造であり、更に、レンズユニット50と撮像素子70に接近させることができるので、低背化を実現できる。更に、撮像素子70となるCMOS画像センサのピクセルピッチを2μm以下、望ましくは1μm以下としても、画質劣化が生じにくい。なお、赤外線カットフィルタ1と撮像素子70のクリアランスを0.5mm以下、望ましくは0.3mm以下に接近させることができる。同様に、赤外線カットフィルタ1とレンズユニット50のクリアランスを0.5mm以下、望ましくは0.3mm以下に接近させることができる。
【0094】
なお、特に図示しないが、カメラモジュール20の光入射側に、カバーガラスを配置してもよい。このカバーガラスには、屈折率の異なる誘電体を交互に複数積層して形成される誘電体多層膜を形成することが好ましい。誘電体多層膜は、真空蒸着によってカバーガラスの内側に積層する。この誘電体多層膜によって、近赤外線反射フィルタFref1の反射機能を補うことができる。
【0095】
<撮影実験>
カメラモジュール20を利用して被写体を撮影した画像を図19(A)及び図20(A)に示す。モジュール20の構成要素の反復反射によって発生する虚像が殆ど発生しない。一方、従来の赤外線カットフィルタを組み込んだカメラモジュールで撮影した画像を図19(B)、図20(B)及び図21に示す。図19(B)及び図20(B)の画像では、はなびら状(放射状)に広がるゴースト像GST-Aや、風船状に形成されるゴースト像GST-Bが形成された。また図21の画像では、画像の周縁部分が、中央部分と比較して緑色となる色シェーディング領域SHDが形成された。この色シェーディング領域SHDは、赤外線カットフィルタに対する外光の入射角が大きくなる領域と一致しており、R(赤色)とB(藍色)の透過率が減少して赤色と藍色の減光が顕著となり、その反作用として、G(緑色)が強調されることを意味している。
【0096】
次に、図16(A)に本発明の第二実施形態にかかる赤外線カットフィルタ101を示す。この赤外線カットフィルタ101は、近赤外線反射フィルタFref1と、赤外線吸収膜フィルタFab1が分離しており、各々の両表面に反射防止膜Far1が形成される。つまり、赤外線カットフィルタ101は、両表面に反射防止膜Far1を有する近赤外線反射フィルタFref1となる反射部材REFと、両表面に反射防止膜Far1を有する赤外線吸収膜フィルタFab1となる吸収部材ABを、互いに独立して備える。また、ここでは吸収部材AB側に、遮光マスクMが印刷される。なお、近赤外線反射フィルタFref1、赤外線吸収膜フィルタFab1、反射防止膜Far1の構成は、第一実施形態の赤外線カットフィルタ1と同じであるので、ここでの説明を省略する。また、赤外線カットフィルタ101全体の光学特性は、第一実施形態の赤外線カットフィルタ1と殆ど同じである。
【0097】
吸収部材ABと反射部材REFが独立しているため、組み立て時の各々のハンドリング性から、吸収部材ABの膜厚は、50μm~100μmの範囲内が好ましく、反射部材REFの膜厚は、50μm~100μmの範囲内が好ましい。
【0098】
図16(B)に、赤外線カットフィルタ101を組み込んだカメラモジュール120を示す。カメラモジュール120は、光学レンズ群となるレンズユニット50と、レンズユニット50を保持するレンズキャリア40と、自動焦点機能を実現するためにレンズユニット50を軸方向に移動させるマグネットホルダ30と、レンズユニット50を介して入射した光を受光する撮像素子70と、撮像素子70が実装される基板80と、レンズユニット50と撮像素子70の間に配置される吸収部材ABと、レンズユニット50の光入射側に配置される反射部材REFを備える。つまり、カメラモジュール120は、赤外線カットフィルタ1の吸収部材ABと反射部材REFが分離配置される。反射部材REFは、いわゆるカバーガラスの内側に貼り付けてもよい。また、反射部材REFは、レンズユニット50における光学レンズ群の途中に挿入されてもよい。なお、ここでは特に図示しないが、レンズユニット50と撮像素子70の間に反射部材REFを配置し、レンズユニット50の光入射側に吸収部材ABを配置してもよい。
【0099】
なお、特に図示しないが、カメラモジュール120の光入射側に、カバーガラスを配置してもよい。このカバーガラスには、屈折率の異なる誘電体を交互に複数積層して形成される誘電体多層膜を形成することが好ましい。誘電体多層膜は、真空蒸着によってカバーガラスの内側に積層する。この誘電体多層膜によって、近赤外線反射フィルタFref1の反射機能を補うことができる。
【0100】
図17(A)に本発明の第三実施形態にかかる赤外線カットフィルタ201を示す。この赤外線カットフィルタ201は、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜の内部に、赤外線吸収膜フィルタFab1が挿入されている。従って、両表面は近赤外線反射フィルタFref1となっており、各々の表面に反射防止膜Far1が形成される。換言すると、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜が2群以上に分かれており、その群の間に赤外線吸収膜フィルタFab1が介在される。この場合、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜を群単位で共押し出し工法(Co-Extrusion)で製造し、赤外線吸収膜フィルタFab1を挟み込むようにして貼り合わせてもよい。また、近赤外線反射フィルタFref1と反射防止膜Far1の全体を、共押し出し工法(Co-Extrusion)で一体的に製造してもよい。ここでは、単層の赤外線吸収膜フィルタFab1を挿入する場合を例示したが、赤外線吸収膜フィルタFab1を多層構造としてもよい。また、複数の赤外線吸収膜フィルタFab1を、複数群となる近赤外線反射フィルタFref1の間に分散配置してもよい。
【0101】
図17(B)に本発明の第四実施形態にかかる赤外線カットフィルタ301を示す。この赤外線カットフィルタ301は、複数層に分散形成される赤外線吸収膜フィルタFab1の内部に、多層構造の近赤外線反射フィルタFref1が挿入されている。従って、両表面は赤外線吸収膜フィルタFab1となっており、各々の表面に反射防止膜Far1が形成される。この場合、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜を群単位で共押し出し工法(Co-Extrusion)で製造し、これを複数の赤外線吸収膜フィルタFab1で挟み込むようにして貼り合わせてもよい。また、近赤外線反射フィルタFref1と反射防止膜Far1の全体を、共押し出し工法(Co-Extrusion)で一体的に製造してもよい。ここでは、一群の赤外線吸収膜フィルタFab1を挿入する場合を例示したが、赤外線吸収膜フィルタFab1を多群構造としてもよい。
【0102】
図17(C)に本発明の第五実施形態にかかる赤外線カットフィルタ401を示す。この赤外線カットフィルタ401は、複数層に分散形成される赤外線吸収膜フィルタFab1と、多層構造となる複数群で分散形成される近赤外線反射フィルタFref1が、交互に積層されている。この場合、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜を群単位で共押し出し工法(Co-Extrusion)で製造し、複数の赤外線吸収膜フィルタFab1を交互に貼り合わせてもよい。また、複数群の近赤外線反射フィルタFref1と複数層の反射防止膜Far1の全体を、共押し出し工法(Co-Extrusion)で一体的に製造してもよい。
【0103】
図18(A)に本発明の第六実施形態にかかる赤外線カットフィルタ501を示す。この赤外線カットフィルタ501は、近赤外線反射フィルタFref1の反射膜用低屈折率樹脂に、近赤外光吸収機能を有する有機色素を含有させることで、低屈折率層Lindが赤外線吸収膜フィルタFab1を兼ねるようにしたものである。結果、赤外線吸収膜フィルタFab1が、近赤外線反射フィルタFref1の多層内に分散配置されることになる。この場合、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜を共押し出し工法(Co-Extrusion)で製造すれば、同時に赤外線吸収膜フィルタFab1が重畳形成される。共押し出し工法(Co-Extrusion)において、二種類の樹脂を用いるだけで済むので、生産効率が高められる。なお、ここでは低屈折率層Lind側に近赤外光吸収機能を有する有機色素を含有させる場合を例示したが、高屈折率層Hind側に有機色素を含有させても良い。
【0104】
図18(B)に本発明の第七実施形態にかかる赤外線カットフィルタ601を示す。この赤外線カットフィルタ601は、近赤外線反射フィルタFref1の反射膜用低屈折率樹脂及び反射膜用高屈折率樹脂の双方に、近赤外光吸収機能を有する有機色素を含有させることで、低屈折率層Lind及び高屈折率層Hindの双方が赤外線吸収膜フィルタFab1を兼ねるようにしたものである。結果、近赤外線反射フィルタFref1全体が、赤外線吸収膜フィルタFab1を兼ねることになる。この場合、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜を共押し出し工法(Co-Extrusion)で製造すれば、同時に赤外線吸収膜フィルタFab1が重畳形成される。
【0105】
図18(C)に本発明の第八実施形態にかかる赤外線カットフィルタ701を示す。この赤外線カットフィルタ701は、近赤外線反射フィルタFref1の反射膜用低屈折率樹脂及び反射膜用高屈折率樹脂の双方の一部に、近赤外光吸収機能を有する有機色素を含有させることで、低屈折率層Lind及び高屈折率層Hindの双方が赤外線吸収膜フィルタFab1を兼ねるようにしたものである。ここでは、CMOS画素センサ側(図示省略)に近い低屈折率層Lind及び高屈折率層Hindに、有機色素を含有させている。結果、近赤外線反射フィルタFref1の一部の多層群が、赤外線吸収膜フィルタFab1を兼ねることになる。この場合、近赤外線反射フィルタFref1の多層膜を共押し出し工法(Co-Extrusion)で製造すれば、同時に赤外線吸収膜フィルタFab1が重畳形成される。
【0106】
図22(A)に本発明の第九実施形態にかかる赤外線カットフィルタ901を示す。この赤外線カットフィルタ901は、近赤外線反射フィルタFref1と、赤外線吸収膜フィルタFab1が分離しており、赤外線吸収膜フィルタFab1の両表面に反射防止膜Far1が形成される。一方、近赤外線反射フィルタFref1は、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラス215の内側に貼り付けられている。カバーガラス215は、光を透過する透明基板として結晶化ガラス130を使用する。なお、カバーガラス215と赤外線吸収膜フィルタFab1の間に、屈折率の異なる誘電体を交互に複数積層して形成される誘電体多層膜を介在させてもよい。誘電体多層膜は、真空蒸着によってカバーガラス215の内側に積層すればよい。この誘電体多層膜によって、近赤外線反射フィルタFref1の反射機能を補うことができる。
【0107】
図22(B)に、赤外線カットフィルタ901を組み込んだカメラ構造を示す。当該カメラ構造は、カバーガラス215と、カメラモジュール920を備える。カメラモジュール920は、光学レンズ群となるレンズユニット50と、レンズユニット50を保持するレンズキャリア40と、自動焦点機能を実現するためにレンズユニット50を軸方向に移動させるマグネットホルダ30と、レンズユニット50を介して入射した光を受光する撮像素子70と、撮像素子70が実装される基板80と、レンズユニット50と撮像素子70の間に配置される吸収部材ABと、カバーガラス215の内側に貼り付けられる反射部材REFを備える。なお、カバーガラス215は、スマートフォン等の撮像装置の筐体20に固定される。
【0108】
本実施形態の赤外線カットフィルタ1では、反射防止膜(反射防止部)Far1を樹脂材料とする場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。反射防止膜(反射防止部)Far1を、従来の無機誘電体多層膜で構成してもよい。この場合、図11に示すように、ロール・ツー・ロール構造のラミネート装置RSを利用して、近赤外線反射フィルタFref1と赤外線吸収膜フィルタFab1を貼り合わせた後、このフィルムを所望サイズとなるシート状に裁断して、真空蒸着工程によってシート表面に無機誘電体多層膜を形成すればよい。
【0109】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0110】
1、101、201、301、401、501、601、701、901 赤外線カットフィルタ
20 カメラモジュール
30 マグネットホルダ
40 レンズキャリア
50 レンズユニット
70 撮像素子
80 基板
120 カメラモジュール
AB 吸収部材
CT 接着剤塗布装置
CT1 第一コーター装置
CT2 第二コーター装置
Fab1 赤外線吸収膜フィルタ
Far1 反射防止膜
Fref1 近赤外線反射フィルタ
Hind 高屈折率層
Lind 低屈折率層
M 遮光マスク
MS 成膜装置
PR1 第一転写ロール
PR2 第二転写ロール
REF 反射部材
RR ラミネートロール
RS ラミネート装置
【要約】
デジタルカメラに用いられる赤外線カットフィルタ1であって、高屈折率樹脂による高屈折率層Hindと低屈折率樹脂による低屈折率層Lindが交互に積層されて構成される近赤外線反射フィルタFref1と、色素を含有する光透過性樹脂又は色素が塗布される光透過性樹脂で構成される赤外線吸収膜フィルタFab1を備えるようにした。これにより、ゴーストフレア、シェーディングなどの画質劣化が抑制され、かつ、量産効率を飛躍的に高められた赤外線カットフィルタを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22