IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

特許7573341電源装置及び電動パワーステアリング装置
<>
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図1
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図2
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図3
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図4
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図5
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図6
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図7
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図8
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図9
  • 特許-電源装置及び電動パワーステアリング装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電源装置及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H02P27/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024545000
(86)(22)【出願日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2023018755
(87)【国際公開番号】W WO2024062681
(87)【国際公開日】2024-03-28
【審査請求日】2024-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2022151189
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅彦
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-327263(JP,A)
【文献】特開2020-174419(JP,A)
【文献】特開2015-002634(JP,A)
【文献】特開2011-211783(JP,A)
【文献】特開2003-204699(JP,A)
【文献】特開2010-114969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源から電力が供給されるインバータと、
前記直流電源と前記インバータとの間に前記インバータと並列に接続されるコンデンサと、
前記直流電源と前記コンデンサとの間に接続されて、前記直流電源の正極側電源ラインを前記コンデンサから前記直流電源へ流れる電流を阻止する逆接続保護回路と、
前記コンデンサの両端電圧が所定電圧以上となった場合に前記両端電圧を前記所定電圧以下に制御する過電圧保護回路と、
を備え、
前記過電圧保護回路は、前記直流電源への前記逆接続保護回路の接続点と前記コンデンサへの前記逆接続保護回路の接続点との間の電圧が閾値以上となった場合に、前記両端電圧を前記所定電圧以下に制御することを特徴とする電源装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子の制御端子は、前記直流電源への前記逆接続保護回路の接続点に接続され、
前記スイッチング素子の第1主電極は、前記コンデンサへの前記逆接続保護回路の接続点に接続され、
前記スイッチング素子の第2主電極は、放電抵抗を介して接地線に接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項10】
請求項1、3~9のいずれか一項に記載の電源装置と、
前記電源装置の前記インバータにより駆動される電動モータと、を備え、
前記電動モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、整流回路で整流された電圧を平滑する平滑コンデンサと、電圧を検出する検出回路と、検出回路で検出される電圧が電圧判定値未満の場合には整流回路と平滑コンデンサを接続し、検出回路で検出される電圧が電圧判定値以上の場合には整流回路と平滑コンデンサの接続を開放する遮断回路と、を備えた電源装置が記載されている。
下記特許文献2には、電源電圧が目標値を超えて上昇した場合に、コンデンサの端子電圧に応じてトランジスタをスイッチング動作させてコンデンサの充放電を繰り返し、端子電圧を保護設定電圧の上限値と下限値との間の電圧値に制限する過電圧保護回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-061682号公報
【文献】特開2009-106055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直流電源から電力が供給されるインバータを備える電源装置において、直流電源の極性を誤って反対に接続した場合の故障を防止するために、直流電源とインバータとの間に、インバータ側から直流電源側へ流れる電流を阻止する逆接続保護回路が設けられることがある。このような電源装置の電源ラインに繰り返しパルス信号が印加されると、直流電源とインバータとの間にインバータと並列に接続されるコンデンサの両端電圧が上昇して、コンデンサの故障の要因となる。このようなパルス信号の印加は、例えば過渡エミッション試験や耐圧パルス試験(ISO7632-2試験)で行われる。
【0005】
パルス信号の印加によって電荷が繰り返しコンデンサへ流れ込むとともに、逆接続保護回路によってコンデンサの放電が妨げられるため、コンデンサに電荷が徐々に蓄積する。この結果、コンデンサの両端電圧が耐電圧を超えてコンデンサの故障の要因となる。
本発明は、直流電源から電力が供給されるインバータと直流電源との間に、インバータ側から直流電源側へ流れる電流を阻止する逆接続保護回路が設けられた場合に、直流電源からの電源ラインにパルス信号が繰り返し印加されても、直流電源とインバータとの間にインバータと並列に接続されるコンデンサの両端電圧が過大になることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による電源装置は、直流電源と、直流電源から電力が供給されるインバータと、直流電源とインバータとの間にインバータと並列に接続されるコンデンサと、直流電源とコンデンサとの間に接続されて、直流電源の正極側電源ラインをコンデンサから直流電源へ流れる電流を阻止する逆接続保護回路と、コンデンサの両端電圧が所定電圧以上となった場合に両端電圧を所定電圧以下に制御する過電圧保護回路と、を備える。
本発明の他の一態様による電動パワーステアリング装置は、上記の電源装置と、電源装置のインバータにより駆動される電動モータと、を備え、電動モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、直流電源からの電源ラインにパルス信号が繰り返し印加されても、直流電源とインバータとの間にインバータと並列に接続されるコンデンサの両端電圧が過大になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の電動パワーステアリング装置の一例の概要を示す構成図である。
図2】実施形態の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)の一例の概要を示す構成図である。
図3】制御演算装置の機能構成の一例のブロック図である。
図4】(a)及び(b)は、それぞれ過電圧保護回路の第1例及び第2例の概要を示す構成図である。
図5】電子制御ユニットの第1変形例の概要を示す構成図である。
図6】電子制御ユニットの第2変形例の概要を示す構成図である。
図7】電子制御ユニットの第3変形例の概要を示す構成図である。
図8】電動パワーステアリング装置の第1変形例の概要を示す構成図である。
図9】電動パワーステアリング装置の第2変形例の概要を示す構成図である。
図10】電動パワーステアリング装置の第3変形例の概要を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(構成)
図1は、実施形態の電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)装置の一例の概要を示す構成図である。ステアリングホイール(操向ハンドル)1の操舵軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は、減速機構を構成する減速ギア(ウォームギア)3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a、6bを経て、更にハブユニット7a、7bを介して操向車輪8L、8Rに連結されている。
【0011】
ピニオンラック機構5は、ユニバーサルジョイント4bから操舵力が伝達されるピニオンシャフトに連結されたピニオン5aと、このピニオン5aに噛合するラック5bとを有し、ピニオン5aに伝達された回転運動をラック5bで車幅方向の直進運動に変換する。
操舵軸2には操舵トルクThを検出するトルクセンサ10が設けられている。また、操舵軸2には、ステアリングホイール1の操舵角θhを検出する操舵角センサ14が設けられている。
【0012】
また、ステアリングホイール1の操舵力を補助するモータ20は、減速ギア3を介して操舵軸2に連結されている。モータ20は、例えば多相モータであってよい。以下の説明では、同じモータハウジング内に第1系統コイルと第2系統コイルが巻き回されて2つの系統のコイルにより共通のロータを回転させる2重巻線を有する三相モータの例について説明するが、モータ20は、2重巻線モータ以外のモータであってもよく、モータ20の相数は3相でなくてもよい。ステアリングホイール1の操舵力を補助する複数のモータ20を同一の操舵軸2に連結してもよい。
【0013】
電動パワーステアリング装置を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)30には、バッテリ13から電力が供給されるとともに、イグニションスイッチ11を経てイグニションキー信号が入力される。バッテリ13及びECU30は、特許請求の範囲に記載の「電源装置」の一例である。
ECU30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと、車速センサ12で検出された車速Vhと、操舵角センサ14で検出された操舵角θhに基づいてアシスト制御指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値によってモータ20に供給する電流(第1系統コイルのA相電流I1a、B相電流I1b、C相電流I1cと、第2系統コイルのA相電流I2a、B相電流I2b、C相電流I2c)を制御する。ECU30は、特許請求の範囲に記載の「モータ制御装置」の一例である。
【0014】
なお、操舵角センサ14は必須のものではなく、モータ20の回転軸の回転角度を検出する回転角センサ23aから得られるモータ回転角θmと減速ギア3のギア比との積に、トルクセンサ10のトーションバーの捩れ角を加えて操舵角θhを算出してもよい。回転角センサ23aには、例えば、モータの回転位置を検出するレゾルバや、モータ20の回転軸に取り付けられた磁石の磁界を検出する磁気センサが利用できる。また、操舵角θhに代えて、操向車輪8L、8Rの転舵角を用いてもよい。例えばラック5bの変位量を検出することにより転舵角を検出してもよい。
【0015】
ECU30は、例えば、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含むコンピュータを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するECU30の機能は、例えばECU30のプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0016】
なお、ECU30を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、ECU30は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を含んでいてもよい。例えばECU30はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0017】
図2は、実施形態のECU30の一例の概要を示す構成図である。ECU30は、モータ回転角検出回路23と、制御演算装置31aと、第1モータ電流遮断回路33Aおよび第2モータ電流遮断回路33Bと、第1ゲート駆動回路41A及び第2ゲート駆動回路41Bと、第1電力変換回路42A及び第2電力変換回路42Bと、第1逆接続保護回路44A及び第2逆接続保護回路44Bと、過電圧保護回路45A及び45Bと、を備える。
ECU30には、コネクタCNTを介してバッテリ13からの電力を伝送する電力配線PWaが接続される。電力配線PWaの正極側電源ラインLpaは、チョークコイルLaとセラミックコンデンサCa1及びCa2により形成されたEMC(Electromagnetic Compatibility)フィルタ等のノイズフィルタ回路を経由して、制御演算装置31aに接続されるとともに、分岐点Pbにて分岐し、それぞれ第1逆接続保護回路44Aと第2逆接続保護回路44Bにそれぞれ接続される。
【0018】
チョークコイルLaの一端が正極側電源ラインLpaとセラミックコンデンサCa1の一端とに接続され、チョークコイルLaの他端が、セラミックコンデンサCa2の一端と制御演算装置31aと分岐点Pbとに接続され、セラミックコンデンサCa1及びCa2の他端は接地されている。一方で、電力配線PWaの負極側ラインは、ECU30の接地線に接続される。
【0019】
制御演算装置31aには、コネクタCNTを介してトルクセンサ10で検出された操舵トルクThと、車速センサ12で検出された車速Vhと、操舵角センサ14で検出された操舵角θhの信号が伝送される。
制御演算装置31aは、少なくとも操舵トルクThに基づいて、モータ20の駆動電流の制御目標値である電流指令値を演算し、電流指令値に補償等を施して得られる電圧制御指令値V1a、V1b、V1c、V2a、V2b、V2cを、第1ゲート駆動回路41Aと第2ゲート駆動回路41Bとに出力する。電圧制御指令値V1a、V1b、V1cは、それぞれ第1系統コイルのA相電圧制御指令値、B相電圧指令値、C相電圧指令値であり、電圧制御指令値V2a、V2b、V2cは、それぞれ第2系統コイルのA相電圧制御指令値、B相電圧指令値、C相電圧指令値である。
【0020】
第1逆接続保護回路44Aは、正極側電源ラインLpaと第1電力変換回路42Aとの間を接続又は遮断する電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)QCを備える。FETQCのソースは正極側電源ラインLpaに接続され、ドレインが第1電力変換回路42Aの各FETQ1、Q3およびQ5のドレインに接続されている。制御演算装置31aは、第1逆接続保護回路44Aの通電と遮断とを制御する制御信号SpAを第1ゲート駆動回路41Aに出力する。第1ゲート駆動回路41Aは、制御信号SpAに応じてFETQCのゲート信号を出力して、FETQCのオンオフを制御する。
FETQCの寄生ダイオードのアノードが正極側電源ラインLpaに接続され、カソードが第1電力変換回路42Aに接続されるため、FETQCがオフになると第1電力変換回路42A側からバッテリ13側へ正極側電源ラインを流れる電流が阻止される。この結果、バッテリ13の極性を誤って反対に接続しても第1電力変換回路42Aを損傷から保護できる。
【0021】
また、第2逆接続保護回路44Bは、正極側電源ラインLpaと第2電力変換回路42Bとの間を接続又は遮断するFETQDを備える。FETQDのソースは正極側電源ラインLpaに接続され、ドレインが第2電力変換回路42Bの各FETQ1、Q3およびQ5のドレインに接続されている。制御演算装置31aは、第2逆接続保護回路44Bの通電と遮断とを制御する制御信号SpBを第2ゲート駆動回路41Bに出力する。第2ゲート駆動回路41Bは、制御信号SpBに応じてFETQDのゲート信号を出力して、FETQDのオンオフを制御する。
FETQDの寄生ダイオードのアノードが正極側電源ラインLpaに接続され、カソードが第2電力変換回路42Bに接続されるため、FETQDがオフになると第1電力変換回路42側からバッテリ13側へ正極側電源ラインを流れる電流が阻止される。この結果、バッテリ13の極性を誤って反対に接続しても、第2電力変換回路42Bを損傷から保護できる。
【0022】
第1ゲート駆動回路41Aは、制御演算装置31aから電圧制御指令値V1a、V1b、V1cが入力されると、これらの電圧制御指令値V1a、V1b、V1cと三角波のキャリア信号に基づいてパルス幅変調(PWM)した6つのゲート信号を形成する。そして、これらゲート信号を第1電力変換回路42Aに出力する。
第2ゲート駆動回路41Bは、制御演算装置31aから電圧制御指令値V2a、V2b、V2cが入力されると、これらの電圧制御指令値V2a、V2b、V2cと三角波のキャリア信号に基づいてパルス幅変調(PWM)した6つのゲート信号を形成する。そして、これらゲート信号を第2電力変換回路42Bに出力する。
【0023】
第1電力変換回路42Aは、スイッチング素子であるFETにより構成された3つのスイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcを有するインバータと、電解コンデンサCA1及びCA2とを備える。
スイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcは互いに並列に接続されている。A相のスイッチングアームSWAaは、直列接続されたFETQ1及びQ2を備え、B相のスイッチングアームSWAbは、直列接続されたFETQ3及びQ4を備え、C相のスイッチングアームSWAcは、直列接続されたFETQ5及びQ6を備える。
【0024】
各FETQ1~Q6のゲートに第1ゲート駆動回路41Aから出力されるゲート信号が入力され、このゲート信号により、各スイッチングアームSWAa、SWAbおよびSWAcのFET間の接続点からA相電流I1a、B相電流I1b、C相電流I1cが第1モータ電流遮断回路33Aを介してモータ20の第1系統コイルのA相巻線、B相巻線及びC相巻線に通電される。
電解コンデンサCA1及びCA2は、第1電力変換回路42Aに対するノイズ除去機能および電力供給補助機能を備えている。電解コンデンサCA1及びCA2は、例えば導電性高分子と電解液を融合した電解質が採用されたハイブリッドコンデンサであってよい。
【0025】
第2電力変換回路42Bは、スイッチング素子であるFETにより構成された3つのスイッチングアームSWBa、SWBb及びSWBcを有するインバータと、電解コンデンサCB1及びCB2とを備える。
スイッチングアームSWBa、SWBb及びSWBcは互いに並列に接続されている。A相のスイッチングアームSWBaは、直列接続されたFETQ1及びQ2を備え、B相のスイッチングアームSWBbは、直列接続されたFETQ3及びQ4を備え、C相のスイッチングアームSWBcは、直列接続されたFETQ5及びQ6を備える。
【0026】
各FETQ1~Q6のゲートに第2ゲート駆動回路41Bから出力されるゲート信号が入力され、このゲート信号により、各スイッチングアームSWBa、SWBbおよびSWBcのFET間の接続点からA相電流I2a、B相電流I2b、C相電流I2cが第2モータ電流遮断回路33Bを介してモータ20の第2系統コイルのA相巻線、B相巻線及びC相巻線に通電される。
電解コンデンサCB1及びCB2は、第2電力変換回路42Bに対するノイズ除去機能および電力供給補助機能を備えている。電解コンデンサC1及びC2は、例えばハイブリッドコンデンサであってよい。
【0027】
なお、第1電力変換回路42Aと第2電力変換回路42Bは、ステアリングホイール1の操舵を補助する操舵補助力をそれぞれ発生する2つの異なるモータに三相電流を供給する電力変換回路であってもよい。例えばこれら2つの異なるモータは、減速ギアを介して同一の操舵軸2に連結されていてもよい。
【0028】
第1電力変換回路42AのスイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcの下側アームを形成するFETQ2、Q4およびQ6の各ソース側には、電流検出回路39A1、39B1及び39C1が設けられる。電流検出回路39A1、39B1及び39C1は、それぞれスイッチングアームSWAa、SWAb及びSWAcの下流側電流を、第1系統コイルのA相電流、B相電流、C相電流として検出し、その検出値I1ad、I1bd、I1cdを出力する。
第2電力変換回路42BのスイッチングアームSWBa、SWBb及びSWBcの下側アームを形成するFETQ2、Q4およびQ6の各ソース側には、電流検出回路39A2、39B2及び39C2が設けられる。電流検出回路39A2、39B2及び39C2は、それぞれスイッチングアームSWBa、SWBb及びSWBcの下流側電流を、第2系統コイルのA相電流、B相電流、C相電流として検出し、その検出値I2ad、I2bd、I2cdを出力する。
【0029】
第1モータ電流遮断回路33Aは、3つの電流遮断用のFETQA1、QA2およびQA3を有する。FETQA1のソースが第1電力変換回路42AのスイッチングアームSWAaのFETQ1およびQ2の接続点に接続され、ドレインがモータ20の第1系統コイルのA相巻線に接続されている。FETQA2のソースがスイッチングアームSWAbのFETQ3およびQ4の接続点に接続され、ドレインが第1系統コイルのB相巻線に接続されている。FETQA3のソースがスイッチングアームSWAcのFETQ5およびQ6の接続点に接続され、ドレインが第1系統コイルのC相巻線に接続されている。
制御演算装置31aは、第1モータ電流遮断回路33Aの通電と遮断とを制御する制御信号SmAを第1ゲート駆動回路41Aに出力する。第1ゲート駆動回路41Aは、制御信号SmAに応じてFETQA1~QA3のゲート信号を出力して、第1電力変換回路42Aからモータ20へのA相電流I1a、B相電流I1b、C相電流I1cを通電又は遮断する。
【0030】
第2モータ電流遮断回路33Bは、3つの電流遮断用のFETQB1、QB2およびQB3を有する。FETQB1のソースが第2電力変換回路42BのスイッチングアームSWBaのFETQ1およびQ2の接続点に接続され、ドレインがモータ20の第2系統コイルのA相巻線に接続されている。FETQB2のソースがスイッチングアームSWBbのFETQ3およびQ4の接続点に接続され、ドレインが第2系統コイルのB相巻線に接続されている。FETQB3のソースがスイッチングアームSWBcのFETQ5およびQ6の接続点に接続され、ドレインが第2系統コイルのC相巻線に接続されている。
制御演算装置31aは、第2モータ電流遮断回路33Bの通電と遮断とを制御する制御信号SmBを第2ゲート駆動回路41Bに出力する。第2ゲート駆動回路41Bは、制御信号SmBに応じてFETQB1~QB3のゲート信号を出力して、第2電力変換回路42Bからモータ20へのA相電流I2a、B相電流I2b、C相電流I2cを通電又は遮断する。
【0031】
モータ回転角検出回路23は、回転角センサ23aから検出値を取得し、モータ20の回転軸の回転角度であるモータ回転角θmを検出する。モータ回転角検出回路23は、モータ回転角θmを制御演算装置31aへ出力する。
制御演算装置31aは、図示しないA/D変換部を介して、第1系統コイルのA相電流、B相電流、C相電流の検出値I1ad、I1bd、I1cdと、第2系統コイルのA相電流、B相電流、C相電流の検出値I2ad、I2bd、I2cdを取得する。
【0032】
図3は、制御演算装置31aの機能構成の一例のブロック図である。なお、図3では、モータ20の第1系統のコイルを駆動する機能構成のみ記載するが、第2系統のコイルを駆動する機能構成も同様の構成を有する。
制御演算装置31aは、電流指令値演算部60と、減算器62及び63と、電流制限部64と、比例積分(PI:Proportional-Integral)制御部65と、2相/3相変換部66と、3相/2相変換部67と、角速度変換部68を備えており、モータ20をベクトル制御で駆動する。
【0033】
電流指令値演算部60は、操舵トルクThと、車速Vhと、モータ20のモータ回転角θmと、モータ20の回転角速度ωに基づいてモータ20に流すべきq軸電流指令値Iq及びd軸電流指令値Idを演算する。
一方で、電流検出回路39A1、39B1、39C1により検出されたモータ20の第1系統コイルのA相電流、B相電流及びC相電流の検出値I1ad、I1bd、I1cdは、3相/2相変換部67でd-q2軸の電流id、iqに変換される。
減算器62及び63は、フィードバックされた電流iq、idをq軸電流指令値Iq及びd軸電流指令値Idからそれぞれ減じることにより、q軸偏差電流Δq0及びd軸偏差電流Δd0を算出する。
【0034】
電流制限部64は、q軸偏差電流Δq0及びd軸偏差電流Δd0の上限値を制限する。制限後のq軸偏差電流Δq及びd軸偏差電流Δdは、PI制御部65に入力される。
PI制御部65は、q軸偏差電流Δq及びd軸偏差電流Δdを各々0とするような電圧指令値vq、vdを算出する。2相/3相変換部66は、電圧指令値vd、vqを、モータ20の第1系統のA相電圧制御指令値V1a、B相電圧指令値V1b、C相電圧指令値V1cにそれぞれ変換して、第1ゲート駆動回路41Aへ出力する。
角速度変換部68は、モータ回転角θmの時間的変化に基づいてモータ20の回転角速度ωを算出する。これらモータ回転角θm及び回転角速度ωは、電流指令値演算部60に入力されてベクトル制御に使用される。
【0035】
再び図2を参照する。過電圧保護回路45Aは、第1逆接続保護回路44Aと並列に、接続点Pca1及びPca2に接続される。接続点Pca1は、第1逆接続保護回路44Aが正極側電源ラインLpa側に接続される点であり、接続点Pca2は、第1逆接続保護回路44Aが電解コンデンサCA1及びCA2側に接続される点である。
過電圧保護回路45Aは、第1逆接続保護回路44AのFETQCがオフの状態で正極側電源ラインLpaに繰り返しパルス信号が印加された場合に、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧が過大となるのを防止する。例えば両端電圧が電解コンデンサCA1及びCA2の耐電圧以上となるのを防止する。
このようなパルス信号の印加は、例えば過渡エミッション試験や耐圧パルス試験(ISO7632-2試験)で行われる。ISO7632-2試験は、第1逆接続保護回路44AのFETQCがオンの状態とオフの状態の両方で実施されることがある。
【0036】
図2に示す回路構成のように、バッテリ13側から電解コンデンサCA1及びCA2側へ正極側電源ラインLpaを流れる電流を阻止する整流素子が存在しない場合には、正極側電源ラインLpaにパルス信号が印加されると、第1逆接続保護回路44AのFETQCがオンの場合にはFETQCのチャネルを経由して、FETQCがオフの場合には寄生ダイオードを経由して電解コンデンサCA1及びCA2に電荷が流れ込む。
このときFETQCがオフの場合には、FETQCの寄生ダイオードによって電解コンデンサCA1及びCA2の放電が妨げられる。この結果、電解コンデンサCA1及びCA2に電荷が徐々に蓄積する。これにより電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧が耐電圧を超えると、電解コンデンサCA1及びCA2の故障の要因となる。
【0037】
このため、過電圧保護回路45Aは、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRが所定電圧以上となった場合に、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRを所定電圧以下に制御する。例えば過電圧保護回路45Aは、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRが所定電圧以上となった場合に、電解コンデンサCA1及びCA2に蓄積した電荷を放電して電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRを所定電圧以下に制御する放電回路であってよい。
【0038】
同様に過電圧保護回路45Bは、第2逆接続保護回路44Bと並列に、接続点Pcb1及びPcb2に接続される。接続点Pcb1は、第2逆接続保護回路44Bが正極側電源ラインLpa側に接続される点であり、接続点Pcb2は、第2逆接続保護回路44Bが電解コンデンサCB1及びCB2側に接続される点である。
過電圧保護回路45Bは、第2逆接続保護回路44BのFETQDがオフの状態で正極側電源ラインLpaに繰り返しパルス信号が印加された場合に、電解コンデンサCB1及びCB2の両端電圧が過大となるのを防止する。
【0039】
図4(a)及び図4(b)は、それぞれ過電圧保護回路45Aの第1例及び第2例の概要を示す構成図である。過電圧保護回路45Bも過電圧保護回路45Aと同じ構成を有していてよい。
図4(a)を参照する。過電圧保護回路45Aは、接続点Pca2と接地線の間に接続されて接続点Pca2と接地線との間を接続又は遮断するスイッチング素子であるPチャネル型FETQ10と、FETQ10と接地線との間に直列接続される放電抵抗R1を備える。FETQ10の制御電極であるゲート電極は接続点Pca1に接続される。FETQ10の第1主電極であるソース電極は接続点Pca2に接続される。FETQ10の第2主電極であるドレイン電極は、放電抵抗R1を介して接地線に接続される。FETQ10のゲート電極とソース電極の間に、ゲート・ソース間電圧が耐圧を超過しないように保護するツェナーダイオードZを接続してもよい。また、FETQ10のゲート電極と接続点Pca1との間に保護用抵抗R2を接続してもよい。
【0040】
図4(b)を参照する。図4(b)の過電圧保護回路45Aは、接続点Pca2と接地線の間に接続されて接続点Pca2と接地線との間を接続又は遮断するスイッチング素子として、PNP型トランジスタQ20を備える。放電抵抗R1は、トランジスタQ20と接地線との間に直列接続される。トランジスタQ20の制御電極であるベース電極は接続点Pca1に接続される。トランジスタQ20の第1主電極であるエミッタ電極は接続点Pca2に接続される。トランジスタQ20の第2主電極であるコレクタ電極は、放電抵抗R1を介して接地線に接続される。トランジスタQ20のベース電極とエミッタ電極の間に、ベースエミッタ間電圧が耐圧を超過しないように保護するツェナーダイオードZを接続してもよい。また、トランジスタQ20のベース電極と接続点Pca1との間に保護用抵抗R2を接続してもよい。
【0041】
以下、第1逆接続保護回路44AのFETQCがオフの状態で正極側電源ラインLpaに繰り返しパルス信号が印加された場合(例えばISO7632-2試験を行った場合)における過電圧保護回路45Aの動作例について説明する。
まず、パルス信号の印加前の初期状態では第1逆接続保護回路44AのFETQCをオフに制御する。この状態では、バッテリ13のバッテリ電圧VBATと、ノイズフィルタ回路の出力(チョークコイルLaとセラミックコンデンサCa2との接続点)における電源電圧VBATSYSと、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRは等しい。初期状態におけるVBAT、VBATSYS、VRの値を「初期値V0」と表記する。
【0042】
その後に電力配線PWaに試験用のパルス信号を印加すると、パルス信号によってバッテリ電圧VBATと電源電圧VBATSYSとが変動する。なお、電源電圧VBATSYSの電圧変動は、ノイズフィルタ回路や制御演算装置31a等の負荷の影響でバッテリ電圧VBATの電圧変動よりも小さくなる。
電源電圧VBATSYSの電圧変動により、第1逆接続保護回路44AのFETQCの寄生ダイオードを経由して電解コンデンサCA1及びCA2に電荷が蓄積する。この結果、1個のパルス信号の印加が終了すると、バッテリ電圧VBATと電源電圧VBATSYSが初期値V0に戻るが、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRは、初期値V0よりも高くなる。このため、パルス信号が繰り返し印加されると、両端電圧VRは徐々に上昇する。
【0043】
その後、パルス信号の印加により両端電圧VRの上昇が続き、FETQ10の負値のゲート閾値電圧Vth(<0)と両端電圧VRとの和が、電源電圧VBATSYSよりも高くなる(VR+Vth>VBATSYS)。または、両端電圧VRが、トランジスタQ20のベースエミッタ間の閾値電圧Vthと電源電圧VBATSYSとの和より高くなる。
すると、FETQ10又はトランジスタQ20がオン状態となって、電解コンデンサCA1及びCA2の電荷が、FETQ10又はトランジスタQ20と放電抵抗R1を経由して接地線に流れ、電解コンデンサCA1及びCA2が放電される。これにより、両端電圧VRが低下する。すなわち過電圧保護回路45Aは、接続点Pca1と接続点Pca2との間の電圧がFETQ10又はトランジスタQ20の閾値電圧の絶対値|Vth|以上になると、電解コンデンサCA1及びCA2を放電する。
【0044】
その後、FETQ10のゲート閾値電圧Vthと両端電圧VRの和が、電源電圧VBATSYS以下になると(VR+Vth≦VBATSYS)FETQ10がオフになる。または両端電圧VRが、トランジスタQ20の閾値電圧Vthと電源電圧VBATSYSとの和以下になるとFETQ10がオフになる。これにより電解コンデンサCA1及びCA2の放電が終了する。
これ以降は、パルス信号の印加に伴ってFETQ10又はトランジスタQ20のオンオフが繰り返されるので、両端電圧VRは、電源電圧VBATSYSと閾値電圧の絶対値|Vth|の和の値に安定する。すなわち、過電圧保護回路45Aは、接続点Pca1と接続点Pca2との間の電圧がFETQ10又はトランジスタQ20の閾値電圧の絶対値|Vth|以上になると、両端電圧VRを、電源電圧VBATSYSと閾値電圧の絶対値|Vth|の和以下に制御する。これにより、電解コンデンサCA1及びCA2の両端電圧VRが過大になること(例えば電解コンデンサCA1及びCA2の耐電圧を超えること)を防止できる。
【0045】
(変形例)
(1)図5は、ECU30の第1変形例の概要を示す構成図である。電動パワーステアリング装置は、バッテリ13として、第1電力配線PWaを経由して第1電力変換回路42Aに電力を供給する第1バッテリと、第2電力配線PWbを経由して第2電力変換回路42Bに電力を供給する第2バッテリと、を別個に備えてもよい。
第1電力配線PWaの正極側電源ラインLpaは、チョークコイルLaとセラミックコンデンサCa1及びCa2により形成されたノイズフィルタ回路を経由して、制御演算装置31aに接続されるとともに、第1逆接続保護回路44Aに接続される。
【0046】
第2電力配線PWbの正極側電源ラインLpbは、チョークコイルLbとセラミックコンデンサCb1及びCb2により形成されたノイズフィルタ回路を経由して、制御演算装置31bに接続されるとともに、第2逆接続保護回路44Bに接続される。
チョークコイルLbの一端が正極側電源ラインLpbとセラミックコンデンサCb1の一端とに接続され、チョークコイルLbの他端が、セラミックコンデンサCb2の一端と制御演算装置31bに接続され、セラミックコンデンサCb1及びCb2の他端は接地されている。一方で、第2電力配線PWbの負極側ラインは、ECU30の接地線に接続される。
【0047】
制御演算装置31a及び31bには、コネクタCNTを介してトルクセンサ10で検出された操舵トルクThと、車速センサ12で検出された車速Vhと、操舵角センサ14で検出された操舵角θhの信号が伝送される。
制御演算装置31aは、少なくとも操舵トルクThに基づいて、モータ20の駆動電流の制御目標値である電流指令値を演算し、電流指令値に補償等を施して得られる電圧制御指令値V1a、V1b、V1cを、第1ゲート駆動回路41Aに出力する。また、第1逆接続保護回路44Aを制御する制御信号SpAと、第1モータ電流遮断回路33Aを制御する制御信号SmAとを生成して、第1ゲート駆動回路41Aに出力する。
【0048】
制御演算装置31bは、少なくとも操舵トルクThに基づいて、モータ20の駆動電流の制御目標値である電流指令値を演算し、電流指令値に補償等を施して得られる電圧制御指令値V2a、V2b、V2cを、第2ゲート駆動回路41Bに出力する。また、第2逆接続保護回路44Bを制御する制御信号SpBと、第2モータ電流遮断回路33Bを制御する制御信号SmBとを生成して、第2ゲート駆動回路41Bに出力する。
なお、制御演算装置31aと制御演算装置31bとを単一の制御演算装置に統合して、第1電力配線PWaの正極側電源ラインLpa又は第2電力配線PWbの正極側電源ラインLpbから電力が供給されるように構成してもよい。
【0049】
(2)図6は、ECU30の第2変形例の概要を示す構成図である。ECU30の第2変形例は、第1逆接続保護回路44Aと第2逆接続保護回路44Bを統合して、単一の第1逆接続保護回路44Aを備える。電力配線PWaの正極側電源ラインLpaは、第1逆接続保護回路44Aと第1電力変換回路4Aとの間で分岐し、それぞれ第1電力変換回路4Aと第2電力変換回路4Bとに接続されている。
電解コンデンサCA1、CA2、CB1及びCB2の両端電圧VRが過大になることを防止する過電圧保護回路45Aは、第1逆接続保護回路44Aと並列に接続される。すなわち、過電圧保護回路の数は逆接続保護回路の数と同数であれば足りる。
【0050】
(3)図7は、ECU30の第3変形例の概要を示す構成図である。ECU30の第3変形例は、単一のインバータによりモータ20を駆動する。このため、図2に表した構成に含まれる第1モータ電流遮断回路33Aおよび第2モータ電流遮断回路33Bと、第1ゲート駆動回路41A及び第2ゲート駆動回路41Bと、第1電力変換回路42A及び第2電力変換回路42Bと、第1逆接続保護回路44A及び第2逆接続保護回路44Bと、過電圧保護回路45A及び45Bのうち、第1モータ電流遮断回路33Aと、第1ゲート駆動回路41Aと、第1電力変換回路42Aと、第1逆接続保護回路44Aと、過電圧保護回路45Aのみを備えている。
【0051】
(4)以上の説明では、本発明の電源装置を、いわゆる上流アシスト方式と呼ばれるコラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置に適用する例について記載したが、本発明の電源装置は、いわゆる下流アシスト方式の電動パワーステアリング装置に適用してもよい。以下、下流アシスト方式の電動パワーステアリング装置の例として、シングルピニオンアシスト方式、ラックアシスト方式、デュアルピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置に、本発明の電源装置を適用する構成例を説明する。
なお、下流アシスト方式の場合には、防水対策のためモータ20、回転角センサ23a、ECU30は別体ではなく、図8図10の破線で示すように一体構造のMCU(Motor Control Unit)としてよい。
【0052】
図8は、シングルピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置に、本発明の電源装置を適用する構成例を示す。ステアリングホイール1は、操舵軸2を経て、インターミディエイトシャフトの一方のユニバーサルジョイント4aと連結されている。また、他方のユニバーサルジョイント4bには、トーションバー(図示せず)の入力側シャフト4cが連結されている。
ピニオンラック機構5は、ピニオンギア(ピニオン)5a、ラックバー(ラック)5b及びピニオン軸5cを備える。入力側シャフト4cとピニオンラック機構5とは、入力側シャフト4cとピニオンラック機構5との間の回転角のずれによってねじれるトーションバー(図示せず)によって連結されている。トルクセンサ10は、トーションバーの捩れ角を、ステアリングホイール1の操舵トルクThとして電磁気的に測定する。
ピニオン軸5cには、ステアリングホイール1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介して連結されており、回転角センサ23aは、上記実施形態と同様にモータ20のモータ回転軸の回転角情報を算出する。
【0053】
(5)図9は、ラックアシスト方式の電動パワーステアリング装置に、本発明の電源装置を適用する構成例を示す。ラックバー5bの外周面には螺旋溝(図示せず)が形成され、これと同様のリードの螺旋溝(図示せず)がナット81の内周面にも形成されている。これら螺旋溝によって形成される転動路に複数の転動体が配置されることによりボールネジが形成されている。
ステアリングホイール1の操舵力を補助するモータ20の回転軸20aに連結する駆動プーリ82と、ナット81に連結する従動プーリ83にはベルト84が巻きかけられており、回転軸20aの回転運動がラックバー5bの直進運動に変換される。回転角センサ23aは、上記実施形態と同様にモータ20のモータ回転軸の回転角情報を算出する。
【0054】
(6)図10は、デュアルピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置に、本発明の電源装置を適用する構成例を示す。デュアルピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置は、ピニオン軸5c、ピニオンギア5aに加えて、第2ピニオン軸85、第2ピニオンギア86を有し、ラックバー5bは、ピニオンギア5aと噛合する第1ラック歯(図示せず)と、第2ピニオンギア86と噛合する第2ラック歯(図示せず)を有する。
第2ピニオン軸85には、ステアリングホイール1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介して連結されており、回転角センサ23aは、上記実施形態と同様にモータ20のモータ回転軸の回転角情報を算出する。
【0055】
(実施形態の効果)
(1)実施形態の電源装置は、直流電源と、直流電源から電力が供給されるインバータと、直流電源とインバータとの間にインバータと並列に接続されるコンデンサと、直流電源とコンデンサとの間に接続されて、直流電源の正極側電源ラインをコンデンサから直流電源へ流れる電流を阻止する逆接続保護回路と、コンデンサの両端電圧が所定電圧以上となった場合に両端電圧を所定電圧以下に制御する過電圧保護回路と、を備える。
これにより、インバータ側から直流電源側へ流れる電流を阻止する逆接続保護回路が設けられる電源装置において、電源ラインにパルス信号が繰り返し印加されても、インバータと並列に接続されるコンデンサの両端電圧が過大になることを防止できる。
【0056】
このため、インバータと並列に接続されるコンデンサとして耐電圧がより低いコンデンサを使用することができる。耐電圧が低いコンデンサは耐電圧が高いコンデンサよりも静電容量が大きいため、同じ容量を確保するのに必要がコンデンサの点数を減らすことができる。これにより、部品点数、コスト、実装面積を低減できる。
【0057】
(2)過電圧保護回路は、直流電源への逆接続保護回路の接続点とコンデンサへの逆接続保護回路の接続点との間の電圧が閾値以上となった場合に、両端電圧を所定電圧以下に制御する回路であってよい。これにより、コンデンサの両端電圧が過大になることを防止できる。
(3)過電圧保護回路は、コンデンサの正極と接地線との間に設けられてコンデンサの両端電圧が所定電圧以上となった場合に導通するスイッチング素子であってよい。例えばスイッチング素子は、Pチャネル型電界効果トランジスタであってもよく、PNP型トランジスタであってもよい。これにより簡易な構成で過電圧保護回路を実現できる。
【0058】
(4)スイッチング素子の制御端子は、直流電源への逆接続保護回路の接続点に接続され、スイッチング素子の第1主電極は、コンデンサへの逆接続保護回路の接続点に接続され、スイッチング素子の第2主電極は、放電抵抗を介して接地線に接続されてよい。これにより、コンデンサの両端電圧に応じてスイッチング素子のオンオフを制御できる。
(5)所定電圧はコンデンサの耐電圧未満であってよい。これによりコンデンサの両端電圧が耐電圧を超えることによるコンデンサの故障の要因を回避できる。
(6)コンデンサは、例えばハイブリッドコンデンサであってよい。これによりコンデンサの実装面積をより低減できる。
(7)直流電源の正極側電源ラインを直流電源からコンデンサへ流れる電流を阻止する整流素子が配置されていなくてもよい。このような整流素子を配置しなくても過電圧保護回路によってコンデンサの両端電圧が過大になることを防止できる。例えば、正極側電源ラインを直流電源からコンデンサへ流れる電流を阻止する向きの寄生ダイオードを含んだスイッチング素子が配置されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ステアリングホイール、2…操舵軸、3…減速ギア、4a、4b…ユニバーサルジョイント、4c…入力側シャフト、5…ピニオンラック機構、5a…ピニオンギア(ピニオン)、5b…ラックバー(ラック)、5c…ピニオン軸、6a、6b…タイロッド、7a、7b…ハブユニット、8L、8R…操向車輪、10…トルクセンサ、11…イグニションスイッチ、12…車速センサ、13…バッテリ、14…操舵角センサ、20…モータ、23…モータ回転角検出回路、30…電子制御ユニット(ECU)、31a、31b…制御演算装置、33A…第1モータ電流遮断回路、33B…第2モータ電流遮断回路、39A1、39A2、39B1、39B2、39C1、39C2…電流検出回路、41A…第1ゲート駆動回路、41B…第2ゲート駆動回路、42A…第1電力変換回路、42B…第2電力変換回路、44A…第1逆接続保護回路、44B…第2逆接続保護回路、45A、45B…過電圧保護回路、60…電流指令値演算部、62、63…減算器、64…電流制限部、65…PI制御部、66…2相/3相変換部、67…3相/2相変換部、68…角速度変換部、81…ナット、82…駆動プーリ、83…従動プーリ、84…ベルト、85…第2ピニオン軸、86…第2ピニオンギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10