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特許7573343強化アクリル系人造大理石およびその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】強化アクリル系人造大理石およびその製造法
(51)【国際特許分類】
   C04B 26/02 20060101AFI20241018BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20241018BHJP
   C08L 5/16 20060101ALI20241018BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241018BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20241018BHJP
   C04B 111/54 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C04B26/02 Z
C08L33/10
C08L5/16
C08K3/013
C08F290/00
C04B111:54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020079570
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172775
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505136963
【氏名又は名称】株式会社ASM
(74)【代理人】
【識別番号】100101731
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 春季
(72)【発明者】
【氏名】柿木 佑一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】藤城 裕也
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074404(WO,A1)
【文献】特開昭60-084364(JP,A)
【文献】特開2011-127012(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105532(WO,A1)
【文献】特開2013-188877(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072356(WO,A1)
【文献】特開2019-116594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 2/44
C08F 6/00-246/00
C08F 290/00-290/14
C08G 63/00-63/91
C08G 65/00-65/48
C04B 26/00-26/32
C04B 111/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル100重量部にメタクリル樹脂20~60重量部を溶解したシラップに、ポリロタキサン0.65~10重量部、無機質フィラー微粉体及び硬化剤を添加重合してなり、ガラス繊維を添加していない強化アクリル系人造大理石であって、
上記ポリロタキサンは、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、アダマンタン封鎖基からなり、シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が2-ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2-ヒドキシプロピル基の水酸基がポリカプロラクトン基によって修飾され、さらに該ポリカプロラクトン基末端の一部がメタクリル基又はアクリル基によって修飾されてなることを特徴とする強化アクリル系人造大理石。
【請求項2】
前記メタクリル酸メチル100重量部に対し、無機質フィラー微粉体40~400重量部を混合した配合物に、硬化剤を添加し重合してなることを特徴とする請求項1記載の強化アクリル系人造大理石。
【請求項3】
前記無機質フィラー微粉体が、水酸化アルミニウム微粉体、シリカ微粉体、ガラス微粉体及び又は炭酸カルシウム微粉体である請求項1又は2記載の強化アクリル系人造大理石。
【請求項4】
メタクリル酸メチル100重量部にメタクリル樹脂20~60重量部を溶解したシラップに、ポリロタキサン0.65~10重量部、及び無機質フィラー微粉体を混合した配合物に硬化剤を添加重合し、上記ポリロタキサンは、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、アダマンタン封鎖基からなり、シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が2-ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2-ヒドキシプロピル基の水酸基がポリカプロラクトン基によって修飾され、さらに該ポリカプロラクトン基末端の一部がメタクリル基又はアクリル基によって修飾されてなり、上記添加重合物を金型に注入して加熱加圧することを特徴とする強化アクリル系人造大理石の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば台所の流し台のトップやシンク、洗面台のトップ、洗面ボウル、浴槽、浴室のカウンター等に用いられる耐衝撃性に優れた強化アクリル系人造大理石とその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような用途に用いられる人造大理石製品は、例えばメタクリル酸メチルにメタクリル樹脂を溶解したシラップに水酸化アルミニウム微粉体等の無機質フィラー微粉体及び硬化剤を混合した配合物を金型に注入し、加熱加圧硬化させる方法が一般的に行われている。
【0003】
しかしながら、人造大理石製品を得るに当たって、耐衝撃性を高めるために補強材としてガラス繊維を0.1~30重量部を添加することが一般的に行われている。しかし、ガラス繊維を添加することにより混合物の粘度が高くなり、攪拌時に気泡の巻き込み現象が生じ、切削加工性も劣るという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2005/095493号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】なし。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガラス繊維を添加せずに耐衝撃性が強く、気泡の巻き込みが少ない、加工性の良い強化アクリル系人造大理石とその製造法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、メタクリル酸メチルにメタクリル樹脂を溶解したシラップにポリロタキサン及び無機質フィラー微粉体からなる配合物に硬化剤を添加して重合してなる強化アクリル系人造大理石に関するものである。
【0008】
本発明による強化アクリル系人造大理石の製造方法の一例を述べれば、メタクリル酸メチルにメタクリル樹脂を配合してシラップを作り、これにポリロタキサン及び無機質フィラー微粉体を混合した配合物に硬化剤を添加し、これを金型に注入し、加熱加圧して重合硬化させる。
【0009】
これにより、耐衝撃性が強く、気泡の巻き込みが少ない、加工性の良好な強化アクリル系人造大理石を製造することができる。
【0010】
ここに、ポリロタキサンとは、直鎖状のポリエチレングリコールが環状をなす分子であるシクロデキストリンを貫通し、その両端に該環状分子が脱離しないように封鎖基である嵩高いアダマンタンを配置して閉じ込めた分子形態であり、シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が2-ヒドロキシプロピル基によって修飾され、該2-ヒドキシプロピル基の水酸基がポリカプロラクトン基によって修飾され、さらに該ポリカプロラクトン基末端の一部がメタクリル基、又はアクリル基によって修飾される。
【0011】
上記の修飾基により、ポリロタキサンがメタクリル酸メチル及びメタクリル樹脂を溶解したシラップに高い溶解性を示す。上記ポリロタキサンは、例えば、市販されているものを使用することができ、国際公開WO2011/105532公報に記載されている方法を参考に作製することもできる。
【0012】
ポリロタキサンを含有するシラップの配合割合は、前記シラップ100重量部に対し0.2~10重量部が好適である。0.2重量部未満では耐衝撃性の向上が極めて小さく、また10重量部を超えても大きな耐衝撃性の向上は見られない。
【0013】
また、ここでいう無機質フィラー微粉体とは、水酸化アルミニウム微粉体、シリカ微粉体、水酸化マグネシウム微粉体、石膏微粉体、ガラス微粉体、炭酸カルシウム微粉体、タルク微粉体等の単体又はその混合体であるが、特に水酸化アルミニウム微粉体、シリカ微粉体、ガラス微粉体、炭酸カルシウム微粉体の単体又はその混合体が好ましい。
【0014】
無機質フィラー微粉体の配合割合は、メタクリル酸メチルにメタクリル樹脂を溶解したシラップ100重量部に対して、40~400重量部が好適である。この範囲外では、天然の大理石の美麗な外観のイメージを呈することはできない。
【0015】
また、硬化剤は、適宜の量を用い、例えば2-2アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジー2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、ジーn-プロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルジシクロヘキシル)パーオキシカーボネート等のうちの少なくとも1種以上を使用する。
また、使用される金型は、金属製、木製、プラスチック製等の注型用やプレス用の金型あるいは金属ベルト状の金型である。
【発明の効果】
【0016】
本発明による強化アクリル系人造大理石は、メタクリル酸メチルにメタクリル樹脂を溶解したシラップにポリロタキサン及び無機質フィラー微粉体からなる配合物に硬化剤を添加して重合してなり、後記「表1」からも分かるように、優れた耐衝撃性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
実施例
【0018】
下記の表1に示すように、メタクリル酸メチル100重量部に対しメタクリル樹脂20重量部を溶解させたシラップ100重量部に対し、ポリロタキサン0.65重量部を混合し、水酸化アルミニウム微粉体120重量部と硬化剤としてジー2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート0.5重量部を混合して、人造大理石用配合物とした。
【0019】
比較例
比較例として、前記シラップ100重量部に対してガラス繊維2.2重量部の人造大理石配合物(比較例1)、及びガラス繊維、ポリロタキサン添加なしの人造大理石配合物(比較例2)も調製した。
【0020】
下記試験方法により測定したデュポン衝撃強さ、シャルピー衝撃強さの結果を表1に併せて示す。
【0021】
デュポン衝撃試験(JIS K 5400準拠)
シャルピー衝撃試験(JIS K 7111準拠)
【0022】

【表1】
【0023】
表1の結果から明らかなように、実施例1、実施例2で得られた成形品では、比較例2の成形品に比べてデュポン衝撃強さ、及びシャルピー衝撃強さについて大きな値を示した。
【0024】
また、比較例1のガラス繊維を添加した成形品と比べても、同等かそれ以上の結果となった。
【0025】
よって、本発明では、ガラス繊維を添加せずに耐衝撃性を向上させることができ、気泡の巻き込みが少ない、加工性に優れた強化アクリル人造大理石を得ることができる。