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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】発酵ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20241018BHJP
   C12G 3/02 20190101ALI20241018BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018223897
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020080792
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】綿屋 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】蛸井 潔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 利久
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】植前 充司
【審判官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-29540(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001825(WO,A1)
【文献】特開平11-127838(JP,A)
【文献】特開2014-124124(JP,A)
【文献】日本醸造協会誌,1998年,93(6),pp.407-413
【文献】日本釀造協會雜誌,1976年,71(7),pp.505-510
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 5/02
C12G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが3.6以上4.2以下であり、苦味価が5未満であり、かつ原料中の麦芽の比率が50重量%以上である、発酵ビールテイスト飲料。
【請求項2】
アルコール度数が5v/v%以上である、請求項1に記載の発酵ビールテイスト飲料。
【請求項3】
原料としてホップを含まない、請求項1又は2に記載の発酵ビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料とは、一般に、ビール様の香味をもつ飲料である。ビール特有の香味は、特にホップ由来の成分に依存するが、最近では、ホップを使用せずにビール特有の香味を再現するビールテイスト飲料が、種々開発されている。例えば、特許文献1には、カルボン酸エステル、アルデヒドおよびペンチルアルコールからなる群より選ばれる1以上の香気成分とテルペノイドとを含み、原材料にホップを用いない、ビールテイスト飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-126079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホップには殺菌作用があるため、ホップを微量しか含まない又は一切含まないビールテイスト飲料は、微生物が増殖しやすくなることが問題となる。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みたものであり、ホップの使用量が少なくても又はホップを一切使用しなくても、微生物の増殖を抑制できる、発酵ビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、pHが4.2以下であり、苦味価が5未満である、発酵ビールテイスト飲料に関する。
【0007】
上記発酵ビールテイスト飲料は、pHが特定の値以下であるため、抗微生物増殖効果を有する。このことから、上記ビールテイスト飲料は、ホップの使用量が少なくても又はホップを一切使用しなくても、微生物の増殖を抑制できる。
【0008】
一態様において、発酵ビールテイスト飲料は、pHが3.6以上であってよい。これにより、香味(特に「平板さ」、「渋味」及び「華やかな香り」)が良好になる。
【0009】
一態様において、発酵ビールテイスト飲料は、アルコール度数が5v/v%以上であってよい。これにより、抗微生物増殖効果が、より顕著に奏される。
【0010】
一態様において、発酵ビールテイスト飲料は、原料としてホップを含まなくてよい。
【0011】
一態様において、発酵ビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50重量%以上であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホップの使用量が少なくても又はホップを一切使用しなくても、微生物の増殖を抑制できる、発酵ビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、pHが4.2以下であり、苦味価が5未満である。
【0015】
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料としては、例えば、酒税法(平成三十年四月一日時点)上のビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュール、スピリッツに分類されるものが挙げられる。発酵ビールテイスト飲料とは、酵母による発酵を経て製造されるビールテイスト飲料である。
【0016】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料(発酵ビールテイストアルコール飲料)であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料(発酵ノンアルコールビールテイスト飲料)であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0017】
発酵ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、特に制限されず、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、又は4v/v%以上であってよく、抗微生物増殖効果の観点から、好ましくは5v/v%以上である。また、発酵ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、又は7v/v%以下であってよい。
【0018】
発酵ノンアルコールビールテイスト飲料は、実質的にアルコールを含有しない発酵ビールテイスト飲料である。発酵ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料のpHは、4.2以下である。発酵ビールテイスト飲料のpHは、例えば3.0以上、3.2以上、又は3.4以上であってよく、香味の観点から、好ましくは3.6以上又は3.8以上、より好ましくは4.0以上である。また、発酵ビールテイスト飲料のpHは、例えば、4.0以下であってよい。pHは、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.7 pH」に記載の方法によって測定することができる。pHは、原料の種類及び使用量、添加する酸味料の種類及び使用量等によって調節することができる。
【0020】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、5未満である。発酵ビールテイスト飲料の苦味価は、例えば、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下、0.5以下、又は0であってよく、0.3以上、0.5以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、又は3.0以上であってよい。
【0021】
本明細書において、苦味価は、例えば改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、原料の種類及び使用量を調整することにより(例えば、ホップの添加量、及び添加の有無)、上記範囲で適宜設定することができる。
【0022】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、原料として、麦芽を含んでいてもよい。ここで、原料とは、発酵ビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦及びハト麦等であってよく、大麦であることが好ましい。麦芽にはモルトエキスが含まれる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0023】
原料中の麦芽の比率は、特に限定されず、例えば、10重量%以上であってよく、25重量%以上であってよく、50重量%以上であってよく、66重量%以上であってよく、100重量%であってもよい。また、原料中の麦芽の比率は、100%重量%未満であってよく、66%重量%以下であってよく、50%重量%未満であってもよい。
【0024】
原料は、麦芽以外の麦原料を含んでいてもよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦及びハト麦等の麦、並びに麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
発酵ビールテイスト飲料の原料としては、その他に副原料を用いてもよい。副原料としては、コーン、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等の澱粉原料、液糖、砂糖等の糖質原料が挙げられる。更に、発酵ビールテイスト飲料の原料として、酒税法の第三条第十二号ロ及びハに記載の政令で定める物品(果実又はコリアンダーその他の財務省令で定める香味料)を含んでいてもよい。果実としては、例えば、柑橘系の果実(例えば、みかん、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、すだち、かぼす、シークワーサー等)を乾燥させたもの、もしくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁等が挙げられる。香味料としては、例えば、茶(例えば、紅茶、緑茶、ウーロン茶等)又はその調製品等が挙げられる。これらの原料を含有する場合、上記果実及び香味料の含有量は、麦芽100重量部に対して、5重量部未満であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、原料としてホップを含んでいてもよく、原料としてホップを含んでいなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、pHが4.2以下であるため、ホップを含んでいなくても又は含まれるホップが少量であっても(例えば、BU5未満)、微生物の増殖を抑制できる。したがって、本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、原料としてホップを含んでいないことが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、飲料に通常配合される酸味料、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、塩類等を含んでいてもよい。酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸等を挙げることができる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、リチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
【0028】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度としてもよい。
【0029】
本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0030】
一実施形態における製造方法は、例えば、仕込工程及び発酵工程を備える。
【0031】
仕込工程では、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。なお、本明細書において、原料液とは、発酵ビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液(例えば、後述する、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液)が含まれる。
【0032】
煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液(煮沸後の糖含有液)を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップ等が挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液体であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。
【0033】
煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、上述のホップであってよい。なお、本実施形態に係る発酵ビールテイスト飲料は、pHが4.2以下であるため、ホップを少量含む場合であっても又はホップを含有しなくても、微生物の増殖を抑制することができる。したがって、ホップの添加は、添加量を少なくしてもよいし、省略してもよい。
【0034】
除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。除去工程における原料液の温度は、例えば、99℃以下、95℃以下、92℃以下、90℃以下、又は89℃以下であってよく、80℃、85℃以上、又は90℃以上であってよい。
【0035】
冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。冷却工程では、例えば、発酵前液の温度が5℃以上25℃以下、6℃以上20℃以下、又は7℃以上15℃以下となるように冷却してよい。
【0036】
発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。発酵工程における原料液の温度(発酵温度)は、例えば、5℃以上25℃以下、6℃以上20℃以下、又は7℃以上15℃以下であってよい。
【0037】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
【0038】
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)の添加、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができる。
【0039】
発酵ビールテイスト飲料がノンアルコールビールテイスト飲料である場合は、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させることによって製造してもよく、また、発酵期間を短くしてアルコールの生成を抑えることによって製造してもよい。
【0040】
他の実施形態における製造方法は、例えば、水と、必要に応じて、蒸留アルコール及び各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)と、を原料タンクに配合する配合工程を含む。
【0041】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ビン、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0042】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一の殺菌工程及び第二の殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。また、発泡性の飲料とする場合は、例えば、第一の殺菌工程と充填工程の間でカーボネーションを行うとよい。
【実施例
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0044】
(実施例1-1)
<発酵ビールテイスト飲料の調製>
紅茶(紅茶の茶葉)及びみかん(果皮及び果肉を含むみかんの乾燥粉末)を原料として使用して、麦芽比率 約99%の発酵ビールテイスト飲料を以下の方法により調製した。まず、大麦麦芽と、水とを混合した後、常法により糖化して、麦汁(糖化液)を得た(糖化工程)。麦汁をろ過した後(麦汁ろ過工程)、麦汁を昇温して煮沸させた(煮沸工程)。煮沸工程において、紅茶及びみかんを、煮沸させた状態の麦汁に添加した。煮沸工程後の麦汁(熱麦汁)に対し、沈殿による不溶物の除去(静置工程)、冷却(冷却工程)等を行って、冷麦汁(発酵前液)を得た。次いで、冷麦汁に、酵母(ビール酵母)を添加して発酵させ、発酵後液を得た(発酵工程)。貯酒して、発酵後液を熟成させた。貯酒後の液(貯酒液)をろ過して、実施例1の発酵ビールテイスト飲料を得た。得られたビールテイスト飲料は、アルコール濃度が5.8v/v%であり、苦味価(BU)が定量限界未満であった。原麦汁エキス(主バイ)濃度は、約13.0g/100cmとなるように調整した。
【0045】
<抗微生物増殖効果>
実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料の抗微生物増殖効果は、発酵ビールテイスト飲料に菌体としてSporolactobacillus terraeを接種させ、目視で菌体の増殖性を評価することにより行った。結果を表1に示す。なお、抗微生物増殖効果は、菌体を添加していない発酵ビールテイスト飲料と比較して目視で菌体の沈殿が認められたものをA、菌体を添加していない発酵ビールテイスト飲料と比較して目視で菌体の沈殿が認められなかったものをBとした。
【0046】
<官能評価>
実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料の官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル4名により、「平板さ」、「渋味」及び「華やかな香り」を評価することにより行った。結果を表1に示す。なお、官能評価は、いずれの評価項目も評点1~5の5段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。
【0047】
「平板さ」は、口に含んだ瞬間から味に落差がない(キレがない)感覚であり、評点が高いほど好ましくない平板さを強く感じることを示す。「渋味」は、後味として渋味が残る感覚であり、評点が高いほど好ましくない渋味を強く感じることを示す。「華やかな香り」は、口に含んだ瞬間に広がる華やかな香りであり、評点が高いほど好ましい華やかな香りを強く感じることを示す。
【0048】
(実施例2-1)
実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料に対し、表1に示すアルコール度数となるように、原料用アルコールを添加し、実施例2-1の発酵ビールテイスト飲料を調製した。
【0049】
実施例2-1の発酵ビールテイスト飲料について、実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料と同様に官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料に対し、表1に示すpHとなるように、水酸化ナトリウムを添加し、比較例1の発酵ビールテイスト飲料を調製した。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1-1及び2-1の発酵ビールテイスト飲料は、微生物の増殖を抑制することが示された。また、「平板さ」、「渋味」及び「華やかな香り」が良好であることが示された。
【0053】
(実施例1-2~1-4)
実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料に対し、表2に示すpHとなるように、リン酸を添加し、実施例1-2~1-4の発酵ビールテイスト飲料を調製した。
【0054】
実施例1-2~1-4の発酵ビールテイスト飲料について、実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料と同様に官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(実施例2-2~2-4)
実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料に対し、表2に示すアルコール度数となるように、原料用アルコールを添加し、実施例2-2~2-4の発酵ビールテイスト飲料を調製した。
【0056】
実施例1-2~1-4の発酵ビールテイスト飲料について、実施例1-1の発酵ビールテイスト飲料と同様に官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表1及び表2から、「平板さ」、「渋味」及び「華やかな香り」は、pHが3.6以上であると、優れる傾向にあり、pHが4.0以上であると、より一層優れる傾向にあることが示された。