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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】車両の液圧ブレーキシステムの貯留室
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20241018BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60T17/00 D
B60T8/1761
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019223394
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2020117210
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-23
(31)【優先権主張番号】10 2018 222 392.0
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ゼーヴァルト,カロリーネ
(72)【発明者】
【氏名】オバージャー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ライネル,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ライブレイン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】レフラー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトナー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ザンデル,トマス
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-035571(JP,A)
【文献】特開2014-066361(JP,A)
【文献】実開平07-035224(JP,U)
【文献】米国特許第06612339(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 15/00-17/22
F15B 1/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の液圧ブレーキシステムの貯留室(10)であって、
貯留室ピストン(14)を備え、前記貯留室ピストンは、前記貯留室ピストン(14)によって区画される前記貯留室(10)の貯留室容積の容積が可変であるように、調節可能に前記貯留室(10)のハウジング(12)に配置されており、ブレーキ液を前記拡大された貯留室容積へ前記ハウジング(12)に形成された流入孔(16)を介して移送可能であり、かつ前記縮小された貯留室容積から前記ハウジング(12)に形成された流出孔(18)を介して移送可能である、貯留室において、
前記貯留室ピストン(14)は、前記貯留室容積が最小容積の場合に絞り位置にあり、前記流入孔(16)と前記流出孔(18)との間の液圧接続部(20)が前記絞り位置にある貯留室ピストン(14)によって、前記液圧接続部(20)が液体を通過させ続けるように絞られ
前記流入孔(16)と前記流出孔(18)との間の前記液圧接続部(20)は、前記絞り位置にある貯留室ピストン(14)によって、前記流入孔(16)内のより高い圧力と前記流出孔(18)内のより低い圧力との間の圧力差が1barであっても前記液圧接続部(20)を通る体積流が0より大きく、毎秒1立法センチメートル以下であるように絞られていることを特徴とする、貯留室。
【請求項2】
前記流入孔(16)と前記流出孔(18)との間の前記液圧接続部(20)は、前記貯留室ピストン(14)が絞り位置にあるにもかかわらず、ゼロより大きい最小開口横断面を有する、請求項1に記載の貯留室(10)。
【請求項3】
前記流出孔(18)に逆止弁(24)が配置されており、前記逆止弁は、前記逆止弁(24)が最大0.5barの開弁圧によって開状態に移行可能であり、それによって前記貯留室(10)の前記貯留室容積に入った前記ブレーキ液を前記開いた逆止弁(24)を介して前記貯留室容積から移送可能であるように形成されている、請求項1または2に記載の貯留室(10)。
【請求項4】
車両の液圧ブレーキシステムの貯留室(10)であって、
貯留室ピストン(14)を備え、前記貯留室ピストンは、前記貯留室ピストン(14)によって区画される前記貯留室(10)の貯留室容積の容積が可変であるように、調節可能に前記貯留室(10)のハウジング(12)に配置されており、ブレーキ液を前記拡大された貯留室容積へ前記ハウジング(12)に形成された流入孔(16)を介して移送可能であり、かつ前記縮小された貯留室容積から前記ハウジング(12)に形成された流出孔(18)を介して移送可能である、貯留室において、
前記貯留室ピストン(14)は、前記貯留室容積が最小容積の場合に絞り位置にあり、前記流入孔(16)と前記流出孔(18)との間の液圧接続部(20)が前記絞り位置にある貯留室ピストン(14)によって、前記液圧接続部(20)が液体を通過させ続けるように絞られ、
前記流出孔(18)に逆止弁(24)が配置されており、前記逆止弁は、前記逆止弁(24)が最大0.5barの開弁圧によって開状態に移行可能であり、それによって前記貯留室(10)の前記貯留室容積に入った前記ブレーキ液を前記開いた逆止弁(24)を介して前記貯留室容積から移送可能であるように形成されていることを特徴とする、貯留室。
【請求項5】
前記逆止弁(24)は、前記逆止弁(24)が前記貯留室(10)の前記貯留室容積に入った前記ブレーキ液を前記開いた逆止弁(24)を介して前記貯留室容積から移送可能であるように、最大0.2barの開弁圧によって開状態に移行可能に形成されている、請求項3または4に記載の貯留室(10)。
【請求項6】
前記逆止弁(24)は、前記貯留室(10)の前記貯留室容積に入った前記ブレーキ液を前記開いた逆止弁(24)を介して前記貯留室容積から移送可能であるように、最大0.05barの開弁圧によって開状態に移行可能な、ばねのない逆止弁である、請求項5に記載の貯留室(10)。
【請求項7】
前記貯留室(10)は、低圧貯留室(10)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の貯留室(10)。
【請求項8】
車両の液圧ブレーキシステムであって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの第1貯留室(10)と、
前記第1貯留室(10)の前記流入孔(16)に結合されている少なくとも1つの第1ホイール吐出バルブ(52)と、
前記第1ホイール吐出バルブ(52)に結合されている少なくとも1つの第1ホイールブレーキシリンダ(54)と
を備える、車両のブレーキシステム。
【請求項9】
前記液圧ブレーキシステムは、少なくとも1つの高圧切換弁(56)および/または少なくとも1つのポンプ(58)を備え、前記少なくとも1つの高圧切換弁(56)および/または前記少なくとも1つのポンプ(58)は、前記第1貯留室(10)の前記流出孔(18)に結合されている、請求項8に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項10】
車両の液圧ブレーキシステムの貯留室(10)の製造方法であって、
前記貯留室(10)が請求項1~7のいずれか1項に記載の貯留室(10)であり、
貯留室ピストン(14)を、前記貯留室ピストン(14)によって区画される前記貯留室(10)の貯留室容積の容積が可変であるように、調節可能に前記貯留室(10)のハウジング(12)に配置するステップを包含し、ブレーキ液が前記拡大された貯留室容積へ前記ハウジング(12)に形成された流入孔(16)を介して移送され、かつ前記縮小された貯留室容積から前記ハウジングに形成された流出孔(18)を介して移送される、方法において、
前記貯留室ピストン(14)は、前記貯留室容積が最小容積の場合に絞り位置にあり、前記流入孔(16)と前記流出孔(18)との間の液圧接続部(20)が前記絞り位置にある貯留室ピストン(14)によって、前記液圧接続部(20)が液体を通過させ続けるように絞られることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項8または9に記載の車両に組み付けられる液圧ブレーキシステムの運転方法であって、
少なくともホイールに割り当てられた回転数センサの信号を考慮して、前記第1ホイールブレーキシリンダ(54)に割り当てられたホイールのホイールロックがかかっているかどうかを検査するステップ(S10)と、
少なくとも前記回転数センサの前記信号をもとにして、前記ホイールのホイールロックがかかっていることが確認されるかぎり、前記第1ホイール吐出バルブ(52)を少なくとも一時的に開くステップ(S12)と
を包含し、
少なくとも前記回転数センサの前記信号をもとにして前記第1ホイール吐出バルブ(52)を前記少なくとも一時的に開くにもかかわらず、所定の待ち時間(tdetect)より長い前記ホイールロックの持続が確認されるかぎり、前記第1ホイール吐出バルブ(52)は、所定の開時間の間、所定のパルスレートでのパルス動作で開かれるだけである、方法。
【請求項12】
前記第1ホイール吐出バルブ(52)が前記開時間の間、前記パルスレートでのパルス動作で開かれるだけである最長継続時間(tS11b)は、少なくとも、前記貯留室ピストン(14)がその絞り位置にある場合に前記流入孔(16)と前記流出孔(18)との間の前記液圧接続部(20)を通って生じる体積流の測定値または推定値(q)を考慮して決定され、前記最長継続時間(tS11b)の経過後に前記第1ホイールブレーキシリンダ(54)において迅速な圧力上昇が行われる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の液圧ブレーキシステムの貯留室、および車両の液圧ブレーキシステムに関する。さらに、本発明は、車両の液圧ブレーキシステムの貯留室の製造方法、および車両に組み付けられる液圧ブレーキシステムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、少なくとも1つの貯留室、特に少なくとも1つの低圧貯留室を有するブレーキシステムが知られている。例えば特許文献1は、2つのブレーキ回路を有する車両のブレーキシステムを記載し、2つのブレーキ回路の各々がそれぞれ1つの低圧貯留室を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102016208529号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両の液圧ブレーキシステムの貯留室、請求項8の特徴を有する車両の液圧ブレーキシステム、請求項10の特徴を有する車両の液圧ブレーキシステムの貯留室の製造方法、および請求項11の特徴を有する車両に組み付けられる液圧ブレーキシステムの運転方法を提供する。
【0005】
本発明は、流入孔と流出孔との間の絞り箇所にもとづいて、流入孔と流出孔との間の液圧接続部を、それぞれの貯留室の絞り位置にある貯留室ピストンによって的確に絞ることが可能な貯留室を提供する。それによりそれぞれの貯留室の流入孔と流出孔との間でのブレーキ液移送を、絞り位置にある貯留室ピストンによって確実に絞ることが可能である。それとともに、それぞれの貯留室の絞り位置において液圧接続部を絞るように形成された貯留室ピストンは、多くの場合それぞれの貯留室におよび/または貯留室内に設置され、流入孔と流出孔との間でのブレーキ液移送を制御する、例えば逆止弁などのバルブエレメントの代わりをするか、または機能を支援することができる。詳しく後述するように、このことはそれぞれのバルブエレメントの形成におけるより高い設計自由度を可能にする。
【0006】
本発明によって本発明による貯留室にもたらされる絞り箇所は、貯留室ピストンのピストン底面/ピストン底に設計技術的に一体化されている。したがって、それぞれの貯留室の流入孔と流出孔との間でのブレーキ液の移送の的確な絞り/阻止を比較的少ない作業の手間で、かつ安価に実現可能である。同時に、貯留室ピストンが絞り位置にあってもなお貯留室の流入孔と流出孔との間の液圧接続部を通ってゼロより大きい体積流が生じ、それにより絞り位置にある貯留室ピストンの粘着(Adhaesion)/「液圧的膠着」(hydraulisches Kleben)を危惧する必要がない。(「体積流」は、「流量」と解することもできる。)
【0007】
貯留室の有利な一実施形態では、流入孔と流出孔との間の液圧接続部は、貯留室ピストンが絞り位置にあるにもかかわらず、ゼロより大きい最小開口横断面を有する。同様に、絞り位置にある貯留室ピストンによって、流入孔と流出孔との間の液圧接続部が、流入孔内のより高い圧力と流出孔内のより低い圧力との圧力差が1barであっても液圧接続部を通る体積流が0より大きく、毎秒1立法センチメートル以下であるように絞られているならば有利である。
【0008】
貯留室の別の有利な一実施形態では、流出孔に逆止弁が配置されており、逆止弁は、貯留室の貯留室容積(Speichervolumen)に入ったブレーキ液を開いた逆止弁を介して貯留室容積から移送可能であるように、最大0.5barの開弁圧によって開状態に移行可能に形成されている。従来では、貯留室容積が流出孔を介して空にされた(Entleeren)後も、かつ貯留室が空にされた状態であるにもかかわらず、さらなるブレーキ液がなお流入孔を介して流出孔へ流れることを防ぐために、逆止弁を少なくとも1barの開弁圧用に設計することが必要である。本発明を利用する場合にはこのような前提はなくなる。
【0009】
例えば、逆止弁は、逆止弁が貯留室の貯留室容積に入ったブレーキ液を開いた逆止弁を介して貯留室容積から移送可能であるように、最大0.2barの開弁圧によって開状態に移行可能に形成されていてもよい。特に、逆止弁は、逆止弁が貯留室の貯留室容積に入ったブレーキ液を開いた逆止弁を介して貯留室容積から移送可能であるように、最大0.05barの開弁圧によって開状態に移行可能に形成されていてもよい。詳しく後述するように、逆止弁をこのように形成することにより、貯留室の貯留室容積を空にすることが容易になる。
【0010】
有利には、逆止弁が貯留室の貯留室容積に入ったブレーキ液を開いた逆止弁を介して貯留室容積から移送可能であるように、最大0.05barの開弁圧によって開状態に移行可能な、ばねのない逆止弁であってもよい。逆止弁に少なくとも1つのばねを設けることを省略することによって逆止弁の製造コストを著しく低減することができる。
【0011】
別の有利な一実施形態では、貯留室は低圧貯留室である。したがって、本発明は多面的に使用可能である。したがって特に、本発明を有利にもそれぞれの車両を制動するための発電機として用いられる電気モータの回生運転中にブレーキ液を遮蔽する(verblenden)ためにも一緒に利用することができる。
【0012】
上記の利点は、少なくとも1つの第1のこのような貯留室を有する車両の液圧ブレーキシステムにも保証されている。例えば液圧ブレーキシステムは、第1貯留室の流入孔に結合された少なくとも1つの第1ホイール吐出バルブと、第1ホイール吐出バルブに結合された少なくとも1つの第1ホイールブレーキシリンダとを備えていてもよい。オプションで、液圧ブレーキシステムは、少なくとも1つの高圧切換弁および/または少なくとも1つのポンプを備えていてもよく、少なくとも1つの高圧切換弁および/または少なくとも1つのポンプは第1貯留室の流出孔(18)に結合されている。
【0013】
車両の液圧ブレーキシステムの貯留室の対応する製造方法の実施も上記の利点をもたらす。車両の液圧ブレーキシステムの貯留室の製造方法は、貯留室の上述した実施形態のとおりに展開することができる。
【0014】
さらに、車両に組み付けられる液圧ブレーキシステムの運転方法の一実施形態も利点を提供する。方法は、少なくともホイールに割り当てられた回転数センサの信号を考慮して、第1ホイールブレーキシリンダに割り当てられたホイールのホイールロック(Radblockade)がかかっているかどうかを検査するステップと、少なくとも回転数センサの信号をもとにしてホイールのホイールロックがかかっていることが決定されるかぎり、第1ホイール吐出バルブを少なくとも一時的に開くステップと、を包含し、少なくとも回転数センサの信号をもとにして第1ホイール吐出バルブを少なくとも一時的に開くにもかかわらず、所定の待ち時間より長いホイールロックの持続が確認されるかぎり、第1ホイール吐出バルブは、所定の開時間の間、所定のパルスレートでのパルス動作(gepulst)で開かれるだけである。
【0015】
有利な展開形態として、第1ホイール吐出バルブがパルスレートでのパルス動作で開かれるだけの最長継続時間は、少なくとも、貯留室ピストンがその絞り位置にある場合に流入孔と流出孔との間の液圧接続部を通って生じる体積流の測定値または推定値を考慮して決定されてもよく、最長継続時間の経過後に第1ホイールブレーキシリンダにおいて迅速な圧力上昇が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】貯留室の第1実施形態の模式図である。
図2】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図3】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図4】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図5】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図6】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図7】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図8】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図9】貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図である。
図10】液圧ブレーキシステムの一実施形態の模式図である。
図11】車両の液圧ブレーキシステムの貯留室の製造方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
図12】車両に組み付けられる液圧ブレーキシステムの運転方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の他の特徴および利点を以下に図面をもとにして説明する
【0018】
図1は、貯留室の第1実施形態の模式図を示す。
【0019】
以下に詳しく説明される貯留室10は、車両/自動車の液圧ブレーキシステムにおいて使用することができる。貯留室10は、特に液圧ブレーキシステムの液圧ユニットの一部であってもよい。ここで、貯留室10の使用可能性は特定のブレーキシステムタイプにも特殊な車両タイプ/自動車タイプにも限定されないことに十分に留意されたい。
【0020】
貯留室10は、調節可能に貯留室10のハウジング12に配置された貯留室ピストン14を有する。ハウジング12は、特に液圧ユニットハウジングと解することができる。貯留室ピストン14は、選択的に金属から形成されていてもよいし、またはプラスチックから形成されていてもよい。したがって貯留室ピストン14は安価に製造可能である。
【0021】
貯留室ピストン14は、貯留室ピストン14によって区画される貯留室10の貯留室容積の容積が変更可能である/変更されるように、調節可能にハウジング12に配置されている。このようにすることでブレーキ液は、拡大された貯留室容積へハウジング12に形成された流入孔16を介して移送可能であり/移送され、縮小された貯留室容積からハウジング12に形成された流出孔18を介して移送可能である/移送される。
【0022】
貯留室容積が最小容積の場合に貯留室ピストン14は絞り位置にある。貯留室10が最小貯留室容積のときの貯留室ピストン14の絞り位置と呼ぶことができる位置が図1に描かれている。通常、貯留室ピストン14は、少なくとも1つのばねの少なくとも1つの弾発力が貯留室ピストン14を、この貯留室ピストンに反力が作用しないかぎり、その絞り位置へ押す/引くように少なくとも1つの(図示されない)ばねによって支持されている。しかし貯留室10の形成可能性は、少なくとも1つのばねについて特定のばねタイプを前提としていないので、ここでは貯留室10の少なくとも1つのばねの詳しい説明は省略される。
【0023】
貯留室ピストン14および/またはハウジング12は、さらに流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20が絞り位置にある貯留室ピストン14によって、液圧接続部20が液体を通過させ続けるように絞られるように形成されている。したがって流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20は、貯留室ピストン14が絞り位置にあるにもかかわらずゼロより大きい最小開口横断面を有する。したがって貯留室ピストン14が絞り位置にあってもなおゼロより大きい体積流が流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20を通って生じる。したがって貯留室ピストン14が絞り位置にあっても、絞り位置にある貯留室ピストン14の粘着/「液圧的膠着」を危惧する必要がない。したがって貯留室10を使用する場合に、従来の貯留室によくある欠点を受け入れる必要がない。
【0024】
流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20は、例えば流入孔16と流出孔18とが別々に開口している貯留室容積の部分容積と解することができる。貯留室ピストン14の絞り位置からの行程がゼロより大きい場合の流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20の開口横断面が、貯留室ピストン14が絞り位置にある場合の最小開口横断面より大きいことが、液圧接続部20を「絞る」と解される。したがって液圧接続部20を「絞る」とは、貯留室ピストン14が絞り位置にある場合に液圧接続部20を通る体積流が、貯留室ピストン14の絞り位置からの行程がゼロより大きい場合より少ないこととも解することができる。
【0025】
絞り位置にある貯留室ピストン14による液圧接続部20の絞りは、貯留室10の最小貯留室容積の場合に、ブレーキ液が流入孔16から流出孔18へ比較的少量しか流れないことを確保する。同様に、流出孔18内の負圧の流入孔16への「伝送(Weiterleiten)」は、貯留室10の貯留室容積が最小の場合に絞り位置にある貯留室ピストン14によって「抑制される(gedaempft)」。以下に詳しく説明されるように、提供される、絞り位置にある貯留室ピストン14によって液圧接続部20を絞る可能性は、貯留室10と貯留室10を備える液圧ブレーキシステムの他のブレーキシステムコンポーネントとの協働を改善する。
【0026】
流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20は、絞り位置にある貯留室ピストン14によって、流入孔16内のより高い圧力と流出孔18内のより低い圧力との圧力差が1barであったとしても、液圧接続部20を通る体積流が0より大きく、毎秒1立法センチメートル(cm/sまたはccm/s)以下となるように絞られることが好ましい。例えば、流入孔16内のより高い圧力と流出孔18内のより低い圧力との圧力差が1barであったとしても、液圧接続部20を通る体積流がゼロより大きく、毎秒0.5立法センチメートル以下であり、殊に毎秒0.2立法センチメートル以下、特に毎秒0.1立法センチメートル以下であってもよい。ピストン底面14aと端面22との間に液密かつ面全体の形状結合が阻止されているにもかかわらず、例えば、絞り位置にある貯留室ピストン14のピストン底面14aの少なくとも一部の面がハウジング12に形成された端面22に対して液密に押し付けられることで液圧接続部20の有利な絞りがもたらされる。
【0027】
図1に模式的に示される貯留室10を、貯留室10が最小貯留室容積の場合に液圧接続部20を的確に絞るための絞り箇所が貯留室10に形成されると表現することができる。絞り箇所は、貯留室ピストン14のピストン底面14aに「一体化された」絞り箇所と表現することができる。貯留室10は、絞り位置からゼロより大きい行程だけ調節された貯留室ピストン14によって解除可能であり、かつ貯留室ピストン14の行程をゼロに低減することによって「有効にできる(aktivierbar)」「変更可能な絞り」を有する。したがって絞り位置からの貯留室ピストン14の行程が0より大きくなって以降は、絞られない液圧接続部20を介して流入孔16と流出孔18との間でブレーキ液を移送することが問題なく可能である。
【0028】
同様に、図1に模式的に示された貯留室10では、貯留室ピストン14のピストン底面14aと端面22との間に絞り間隙を形成するともいうことができる。絞り間隙の形成は、流入孔16および/または流出孔18を中心に形成することを前提としない。流入孔16および流出孔18を中心から離れたところに形成してもなお、絞り位置にある貯留室ピストン14によって液圧接続部20が絞られるように絞り間隙を形成することができる。したがってさらに、流入孔16および流出孔18の形成における設計自由度が高い。
【0029】
図1の貯留室10は、流出孔18に配置される逆止弁24も有している。逆止弁24は、逆止弁24の遮断方向が貯留室10から離れる方向に向いた流出孔18の端18aから貯留室10の貯留室容積における流出孔18の開口部(Muendung)18bへ延びるように流出孔18に配置されている。それゆえ逆止弁24の遮断方向に向いたブレーキ液流、すなわち流出孔18の端18aから流出孔18の開口部18bへ延びるブレーキ液流は逆止弁24によって阻止されている。しかし逆止弁24は、その遮断方向とは逆に向いたブレーキ液流については、開弁圧によって、貯留室10の貯留室容積に入ったブレーキ液を開いた逆止弁24を介して貯留室容積から移送可能であるように開状態へ移行可能である。開弁圧は開口部18b内の第1圧力から流出孔18の端18aの第2圧力を引いた圧力差と解されるべきであり、第2圧力以上で、逆止弁24がその遮断方向とは逆に向いたブレーキ液流に対して開く。
【0030】
絞り位置にある貯留室ピストン14によって液圧接続部20を絞る貯留室10の有利な形態が逆止弁24の開弁圧を最大0.5barまで低減することを可能にするのに対して、従来の逆止弁は、通常、少なくとも1barの開弁圧用に設計される。逆止弁24は、特に、すでに最大0.2barの開弁圧によって、殊に最大0.1barの開弁圧によって、貯留室10の貯留室容積に入ったブレーキ液を開いた逆止弁24を介して貯留室容積から移送可能であるように開状態へ移行可能であってもよい。逆止弁24は、貯留室10の貯留室容積に入ったブレーキ液を開いた逆止弁24を介して貯留室容積から移送可能であるように、最大0.05barの開弁圧によってすでに開状態に移行可能な、ばねのない逆止弁24であってもよい。従来技術と比較してそのように低減された開弁圧用に逆止弁24を形成する利点がさらに詳しく後述される。貯留室10に逆止弁24を使用するために逆止弁24をボール逆止弁として形成する必要がないことにも留意されたい。その代わりに、貯留室10に使用される逆止弁24は、ボールではなく別の形の閉鎖体を有してもよい。
【0031】
図2図9は、貯留室の別の実施形態の貯留室ピストンの模式図を示す。
【0032】
図2図9において、それぞれの貯留室10の貯留室ピストン14のそれぞれ1つのピストン底面14aが示され、それぞれの貯留室ピストン14は、貯留室ピストン12が絞り位置にある場合にピストン底面14aがハウジング12の隣接する端面22の方に向けられるように関連する貯留室10のハウジング12に配置可能である。図2図9において、線26、28は、孔16、18のそれぞれ1つの開口部縁(Muendungsrand)を示す。
【0033】
貯留室ピストン10のピストン底面14aは、回転対称に成形されていることが好ましい。図2の例では、ピストン底面14aは、このピストン底面に形成された中心の凹部30を取り込んで(mit Aufnahme)平らである。これに対して、図3図5のピストン底面14aは(場合によっては中心の凹部30に加えて)、鋭角の円切片の形態の凹部32(図3図4)、または鈍角の円切片の形態の凹部34(図5)を有している。図6および図7のピストン底面14aは、線状(strichfoermig)の凹部36を有している。図6のピストン底面14aの線状の凹部36は、中心の凹部30を中心としてその周りに延びているが、線状の凹部36は、図6のピストン底面14aの特定の円切片に限定されている。図7のピストン底面14aは、4つの四分円切片に区分され、各四分円切片の線状の凹部36は、各四分円切片の縁と平行に延び、かつ2つの隣接する四分円切片の線状の凹部36に対して垂直に位置合わせされている。図8のピストン底面14aは、円形の凹部38を有し、円形の凹部の中心点は、それぞれピストン底面14aの中心の凹部30の周りで外側円軌道または内側円軌道上に位置する。これに代えて、図9のピストン底面14aは、異なった半径を有する円形の凸部40を有する。
【0034】
それぞれのピストン底面14aに形成された凹部30~38または凸部40は、それぞれのピストン底面14aのワッフリング(Waffelung)とも呼ぶことができる。図2図9をもとにしてわかるように、それぞれのピストン底面14aに形成された凹部30~38または凸部40によって貯留室ピストン14のピストン底面14aと端面22との間の絞り間隙の絞り長を変更することができる。それゆえそれぞれのピストン底面14aに形成された凹部30~38または凸部40によって、貯留室ピストン14が絞り位置にある場合にそれぞれのピストン底面14aと端面22との間にある粘着/粘着力(Adhaesionskraft)を変更することができる。特に、貯留室ピストン14が絞り位置にある場合にそれぞれのピストン底面14aと端面22との間にある粘着/粘着力を、端面22への絞り位置にある貯留室ピストン12のピストン底面14aの「液圧粘着」が阻止されるように決定することができる。図2図9に示される貯留室ピストン14も選択的に金属から形成されてもよいし、またはプラスチックから形成されてもよい。
【0035】
図1図9によって示される貯留室10は、それぞれ低圧貯留室であってもよい。貯留室ピストン14が絞り位置にある場合の液圧接続部20を絞るための貯留室ピストン14の有利な形態は、それぞれの貯留室10の応答圧(Ansprechdruck)を低減するためにも利用することができる。このことは、特にハイブリッド車においてそれぞれの貯留室10を使用する場合に有利である。
【0036】
図10は、液圧ブレーキシステムの一実施形態の模式図を示す。
【0037】
図10に模式的に示された液圧ブレーキシステムは、車両/自動車でおよび/または車両/自動車内において使用される。例示的に、液圧ブレーキシステムの液圧ユニット50から、2つのブレーキ回路のうちの第1ブレーキ回路のみが示され、第2ブレーキ回路は、選択的に第1ブレーキ回路のように形成されてもよいし、または第1ブレーキ回路とは異なるように形成されてもよい。ここで、液圧ブレーキシステムの形成可能性/使用可能性は特定のブレーキシステムタイプおよび特殊な車両タイプ/自動車タイプに限定されないことに十分に留意されたい。
【0038】
液圧ユニット50は、上述した図1図9によって示される、図示された第1ブレーキ回路において使用される少なくとも1つの貯留室10を備える。オプションで、図10に図示されない第2ブレーキ回路もこのような貯留室10を装備していてもよい。それぞれの貯留室10のハウジング12は、液圧ユニット50の液圧ユニットハウジング、特にアルミニウムからなる液圧ユニットハウジングと解することができる。
【0039】
液圧ユニット50は、貯留室10の流入孔16に結合されている少なくとも1つのホイール吐出バルブ52も備えている。少なくとも1つのホイール吐出バルブ52を介して、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ54が貯留室10に液圧的に結合されている。単に例示的に、図10に示された貯留室10の流入孔16は、貯留室10から離れる方に向いた端で分岐し、それにより2つのホイール吐出バルブ52は、流入孔16に結合されたそれぞれのホイールブレーキシリンダ54と結合されている。液圧ユニット50は、さらに少なくとも1つの高圧切換弁56と、ポンプモータ60を有する少なくとも1つのポンプ58とを備えている。高圧切換弁56とポンプ58の吸込側とは流出孔18に結合され、流出孔18は、貯留室10から離れる方に向いた端で分岐する。
【0040】
流出孔18に配置された逆止弁24は、その遮断方向が流出孔18の分岐する端から貯留室10における流出孔18の開口部へ向けられるように位置合わせされている。したがって、逆止弁24は、ブレーキ液がマスタブレーキシリンダ62に結合されたブレーキ操作エレメント/ブレーキペダル64の操作によって、および/またはマスタブレーキシリンダ62に前置されたブレーキ倍力装置66の作動によってマスタブレーキシリンダ62から押し出されたとしても、ブレーキ液を開いた高圧切換弁56を介して高圧切換弁56に結合されたマスタブレーキシリンダ62から貯留室10内に移動させないことを確保する。したがって、逆止弁24は、望ましくない、「高圧切換弁56が開いた場合に貯留室10へブレーキをかける(Einbremsen)」ことを阻止する。
【0041】
これに加えて、絞り位置にある貯留室ピストン14によって流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20を絞るための貯留室10の形成は、ポンプ58の吸入空間が著しい負圧であっても、負圧が流出孔18と貯留室10と流入孔16と少なくとも1つの開いたホイール吐出バルブ52とを介して少なくとも1つの結合されたホイールブレーキシリンダ54へ「伝送され」ないことを確保する。ポンプ58の吸入空間における負圧が逆止弁24を開くために十分であったとしても、開いたホイール吐出バルブ52を介して結合された少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ54への負圧の望ましくないこの「伝送」は、流入孔16と流出孔18との間の液圧接続部20を絞ることによってブレーキ液の比較的少ない体積流しか生ぜしめない。したがって、絞り位置にある貯留室ピストン14による孔16と孔18との間の液圧接続部20の絞りは、このような状況においても、開いたホイール吐出バルブ52を介して結合された少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ54から貯留室10の貯留室容積へ比較的少ないブレーキ液しか流れ込まないことを保証する。したがって、このような状況において、開いたホイール吐出バルブ52を介して結合された少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ54内のブレーキ圧の突然の低下を危惧する必要はない。
【0042】
それゆえ、逆止弁24を最大0.5barの開弁圧用に、殊に(略)0barの開弁圧用に問題なく形成することができる。このことは、貯留室10の貯留室容積を空にすることを容易にする。逆止弁24の開弁圧の低減は、満たされた貯留室10を例えばポンプ58によって空にすることを速める。さらに、貯留室10の貯留室容積は、高圧切換弁56を開くことにより、ポンプモータ60を操作しなくてもマスタブレーキシリンダ62に結合されたブレーキ液リザーバ68内に騒音なしに排出することができる。このようにすることで、満たされた貯留室10を「自動で空にすること(Selbstentleerung)」も可能である。
【0043】
液圧ユニット50は、オプションの補足としてさらに1つの切換弁70、少なくとも1つのホイール吸入バルブ72と、予圧センサ74と、圧力センサ76とを有する。しかし、これらのブレーキシステムコンポーネントを有する液圧ユニット50の形成は単に例示的と解釈すべきであることに留意されたい。
【0044】
図11は、車両の液圧ブレーキシステムの貯留室の製造方法の一実施形態を説明するフローチャートを示す。
【0045】
オプションの方法ステップS1において、まず、貯留室のハウジングが形成される。ハウジングは、例えばアルミニウムおよび/またはプラスチックから成形されてもよい。これに代えて、すでに完成した状態の貯留室のハウジングをここに記載される製造方法を実施するために使用することもできる。
【0046】
オプションの方法ステップS2として、貯留室の貯留室ピストンが形成されてもよい。貯留室ピストンは、金属および/またはプラスチックから成形されてもよい。貯留室ピストンの有利な形態はすでに上述されている。しかしここに記載される製造方法を実施するために、すでに完成した状態の貯留室ピストンを使用することもできる。
【0047】
方法ステップS3において、貯留室ピストンは、貯留室ピストンによって区画される貯留室の貯留室容積の容積が変更可能であるように、調節可能に後の貯留室のハウジングに配置され、ブレーキ液は、拡大された貯留室容積へハウジングに形成された流入孔を介して移送され、縮小された貯留室容積からハウジングに形成された流出孔を介して移送される。貯留室ピストンは、特に、後からの貯留室のハウジングにおいて少なくとも1つのばねによって支持されてもよい。
【0048】
ここに記載される製造方法を実施する場合、貯留室ピストンおよび/またはハウジングは、貯留室容積の容積が最小の場合に貯留室ピストンが絞り位置にあるように形成される。流入孔と流出孔との間の流体接続部は、絞り位置にある貯留室ピストンによって、液圧接続部が液体を通過させ続けるように絞られる。それにより、ここに記載される製造方法によって製造される貯留室も上記の利点をもたらす。
【0049】
図12は、車両に組み付けられる液圧ブレーキシステムの運転方法の一実施形態を説明するフローチャートを示す。
【0050】
以下に説明される方法は、上述の実施形態に係る少なくとも1つの第1貯留室と、第1貯留室の流入孔に結合されている少なくとも1つの第1ホイール吐出バルブと、第1ホイール吐出バルブに結合されている少なくとも1つの第1ホイールブレーキシリンダとを備えるあらゆる液圧ブレーキシステムに利用することができる。したがって以下に記載される方法の実施可能性は、図10の液圧ブレーキシステムに限定されない。
【0051】
方法ステップS10において、第1ホイールブレーキシリンダに割り当てられたホイールのホイールロックがかかっているかどうかが検査される。ホイールロックがかかっているかもしれないことは、少なくともホイールに割り当てられた回転数センサの信号を考慮して検査される。方法ステップS10は、任意の回数繰り返すことができる。
【0052】
ホイールのホイールロックがかかっていることが少なくとも回転数センサの信号をもとにして決定されるかぎり方法ステップS11が実行される。方法ステップS11において、第1ホイール吐出バルブが少なくとも一時的に開かれ、その際、少なくとも回転数センサの信号をもとにして第1ホイール吐出バルブが少なくとも一時的に開くにもかかわらず、所定の待ち時間tdetectより長いホイールロックの持続が確認されるかぎり、第1ホイール吐出バルブは、所定の開時間の間、所定のパルスレートでのパルス動作で開かれるだけである。
【0053】
方法ステップS11は、例えば、部分ステップS11a~S11dを含んでもよく、その際、一連の部分ステップS11a~S11dが少なくとも1回実行される。まず、部分ステップS11aとして、第1ホイールブレーキシリンダに割り当てられたホイールのホイールロックの迅速な解除をもたらすために、第1ホイール吐出バルブが完全に開かれてもよい。待ち時間tdetectの後にホイールロックの解除が確認されない場合、ホイールに割り当てられた回転数センサの回転数センサエラーの疑いがある。それゆえ、待ち時間tdetectの後に部分ステップS11aから部分ステップS11bへ切り替えられる。待ち時間tdetectは、例えば1秒~1.5秒の範囲であってもよい。
【0054】
部分ステップS11bにおいて、第1ホイール吐出バルブは、開時間の間、パルスレートでのパルス動作で開かれるだけである。このようにすることで、貯留室ピストンが絞り位置にあることにもとづいて絞られた、第1貯留室の流入孔と流出孔との間の液圧接続部を通る体積流が第1ホイールブレーキシリンダ(および場合によっては第1ホイール吐出バルブに結合された他のホイールブレーキシリンダ)において限界量Vcriticalを失わないことを確保することができる。限界量Vcriticalは、例えば2~5立方センチメートルであり得る。
【0055】
オプションで、第1ホイール吐出バルブが開時間の間、パルスレートでのパルス動作で開かれるだけの最大継続時間tS11b(すなわち部分ステップS11bが最大限実行される長さ)が、少なくとも、貯留ピストンが絞り位置にある場合に流入孔と流出孔との間の液圧接続部を通って生じる体積流の測定値または推定値qを考慮して決定されてもよい。限界量Vcriticalが液圧接続部を通って漏れた全時間長tcriticalは、例えば式(式1)によって決定されてもよい。
(式1) tcritical=Vcritical/q
【0056】
最大継続時間tS11bは、例えば式(式2)によって決定されてもよく、その際、部分ステップS11b中の第1ホイール吐出バルブの開弁率(Oeffnungsrate)popenは、パルスレートと開弁継続時間とから導き出すことができる。
(式2) tS11b=(tcritical-tdetect)/popen
【0057】
開弁率popenについては、例えば5%~15%の値を代入することができる。場合によっては、最大継続時間tS11bは、式(式3)によっても求めることができ、その際、他のホイールブレーキシリンダから第1貯留室への流出量vabが、通常、同様に考慮される。
(式3) tS11b=(tcritical-tdetect+vab)/popen
【0058】
部分ステップS11bを最大限、最大継続時間tS11bの間実行した後に、部分ステップS11cとして、第1ホイールブレーキシリンダにおける迅速な圧力上昇が実行される。このことを「圧力上昇ランプの開始」と呼ぶこともできる。圧力の目標値は、例えば最小ブロック圧力の高さに設定されてもよい。迅速な圧力上昇は、第1ホイールブレーキシリンダに割り当てられたホイール吸入バルブが開かれるのに対して、それと同時に第1ホイール吐出バルブが閉じられることでもたらすことができる。それにより、部分ステップS11cを実行するために従来のABS制御時と類似の過程を一緒に利用することができる。
【0059】
続いて、部分ステップS11dとして、第1ホイールブレーキシリンダにおける圧力を再び0まで低減してもよい。部分ステップS11a~11dは、その後、方法ステップS12として車両の制動が終了するまで少なくとも1回繰り返されてもよい。
【0060】
オプションで、方法ステップS12の後に、あるかもしれない空隙を解消するために第1ホイールブレーキシリンダのブレーキパッドをわずかに当接させるもう1つの(オプションの)方法ステップS13が実行されてもよい。方法ステップS13を、ブレーキディスクワイパ機能の実行と表現することもできる。ブレーキディスクワイパ機能は、場合によっては、運転者の作業の手間なしに、例えばマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式ブレーキ倍力装置を使用して行われる。したがって、ブレーキディスクワイパ機能は「自律的機能」と解することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 貯留室
12 ハウジング
14 貯留室ピストン
14a ピストン底面
16 流入孔
18 流出孔
18a 端
18b 開口部
20 液圧接続部
22 端面
24 逆止弁
26、28 線
30~38 凹部
40 凸部
50 液圧ユニット
52 ホイール吐出バルブ
54 ホイールブレーキシリンダ
56 高圧切換弁
58 ポンプ
60 ポンプモータ
62 マスタブレーキシリンダ
64 ブレーキペダル、ブレーキ操作エレメント
66 ブレーキ倍力装置
68 ブレーキ液リザーバ
70 切換弁
72 ホイール吸入バルブ
74 予圧センサ
76 圧力センサ
S1、S2、S3 ステップ
S10、S11、S12、S13 ステップ
S11a、S11b、S11c、S11d 部分ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12