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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】クーリングタワー用減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3256 20160101AFI20241018BHJP
   F16H 57/029 20120101ALI20241018BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20241018BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALN20241018BHJP
【FI】
F16J15/3256
F16H57/029
F16J15/40 Z
F16J15/3232 201
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019235413
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021102997
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】チィエリー デ ムンク
(72)【発明者】
【氏名】ワン ビィヤオ
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】小川 恭司
【審判官】横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-263739(JP,A)
【文献】特開2011-21755(JP,A)
【文献】実開昭55-152394(JP,U)
【文献】特開2019-184065(JP,A)
【文献】特開2007-292192(JP,A)
【文献】特開2006-46449(JP,A)
【文献】特開平10-153607(JP,A)
【文献】実開平5-94575(JP,U)
【文献】特開2003-97725(JP,A)
【文献】特開2017-67166(JP,A)
【文献】特開2001-193748(JP,A)
【文献】実開昭58-177692(JP,U)
【文献】米国特許第6186507(US,B1)
【文献】米国特許第4428586(US,A)
【文献】特開2003-113930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00 - 57/12
F16J 15/16 - 15/3296
F16J 15/40 - 15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸から入力される回転を減速し、クーリングタワー内に設置されたクーリングファンを回転駆動するクーリングタワー用減速装置であって、
軸とケーシングの間に配置されたシール部材を備え、
前記シール部材は、前記軸に外嵌される第1部材と、前記ケーシングに内嵌される第2部材と、を有し、
前記第1部材は、第1部材本体と、前記第1部材本体の外周に設けられた第1リップ部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1リップ部が当接する第2部材本体と、前記第2部材本体の内周に設けられ、前記第1部材本体に当接する第2リップ部と、を有し、
前記軸は、減速した回転を出力する出力軸であり、
前記シール部材は、内径に対する外径の比が1.6以上である、
クーリングタワー用減速装置。
【請求項2】
入力軸から入力される回転を減速し、クーリングタワー内に設置されたクーリングファンを回転駆動するクーリングタワー用減速装置であって、
軸とケーシングの間に配置されたシール部材を備え、
前記シール部材は、前記軸に外嵌される第1部材と、前記ケーシングに内嵌される第2部材と、を有し、
前記第1部材は、第1部材本体と、前記第1部材本体の外周に設けられた第1リップ部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1リップ部が当接する第2部材本体と、前記第2部材本体の内周に設けられ、前記第1部材本体に当接する第2リップ部と、を有し、
前記軸は、前記入力軸であり、
前記入力軸と前記ケーシングの間に配置される前記シール部材は、内径に対する外径の比が2.0以上である、
クーリングタワー用減速装置。
【請求項3】
前記軸の先端は、前記ケーシングから突出しており、
前記軸の先端を軸方向外側から見たときに、前記シール部材は前記ケーシングの外部に露出して視認可能である、
請求項1又は請求項2に記載のクーリングタワー用減速装置。
【請求項4】
前記シール部材は、前記第1部材と前記第2部材の間の空間に潤滑剤が封入されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクーリングタワー用減速装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、潤滑剤の噴き出し孔と、当該噴き出し孔を閉止するカバーとを有し、
前記シール部材は、前記軸と前記カバーの間に配置される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクーリングタワー用減速装置。
【請求項6】
前記第1部材本体は、径方向外側に延出する第1部材フランジ部を有し、
前記第2リップ部の一部は、前記第1部材フランジ部に当接している、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のクーリングタワー用減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーリングタワー用減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クーリングタワー(冷却塔)のクーリングファンを駆動するクーリングタワー用減速装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の減速装置では、外部に露出した軸(例えば出力軸)とケーシングとの間のシール性が問題になる場合がある。特に水を噴霧する湿式冷却塔では減速装置が高湿度雰囲気中に暴露するため、粉塵はもちろん水分も装置内部に侵入しないよう、軸とケーシングとの間のシール性を高く保つ必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-263739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便な構成で軸とケーシングとの間を好適にシールすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るクーリングタワー用減速装置は、入力軸から入力される回転を減速し、クーリングタワー内に設置されたクーリングファンを回転駆動するクーリングタワー用減速装置であって、
軸とケーシングの間に配置されたシール部材を備え、
前記シール部材は、前記軸に外嵌される第1部材と、前記ケーシングに内嵌される第2部材と、を有し、
前記第1部材は、第1部材本体と、前記第1部材本体の外周に設けられた第1リップ部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1リップ部が当接する第2部材本体と、前記第2部材本体の内周に設けられ、前記第1部材本体に当接する第2リップ部と、を有し、
前記軸は、減速した回転を出力する出力軸であり、
前記シール部材は、内径に対する外径の比が1.6以上である構成とした。
また、本発明に係るクーリングタワー用減速装置は、入力軸から入力される回転を減速し、クーリングタワー内に設置されたクーリングファンを回転駆動するクーリングタワー用減速装置であって、
軸とケーシングの間に配置されたシール部材を備え、
前記シール部材は、前記軸に外嵌される第1部材と、前記ケーシングに内嵌される第2部材と、を有し、
前記第1部材は、第1部材本体と、前記第1部材本体の外周に設けられた第1リップ部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1リップ部が当接する第2部材本体と、前記第2部材本体の内周に設けられ、前記第1部材本体に当接する第2リップ部と、を有し、
前記軸は、前記入力軸であり、
前記入力軸と前記ケーシングの間に配置される前記シール部材は、内径に対する外径の比が2.0以上である構成とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡便な構成で軸とケーシングとの間を好適にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るクーリングタワー用減速装置が適用されたクーリングタワーを示す断面図である。
図2】(a)本実施形態に係るクーリングタワー用減速装置を斜め前側上方から見た斜視図であり、(b)クーリングタワー用減速装置を斜め前側下方から見た斜視図である。
図3】(a)本実施形態に係るクーリングタワー用減速装置の側面図であり、(b)クーリングタワー用減速装置を斜め後側下方から見た斜視図である。
図4】本実施形態に係るクーリングタワー用減速装置の側断面図である。
図5図4のA部の拡大図である。
図6】従来の軸とケーシングとの間のシール構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例えば、図6に示すように、ケーシングと軸との間をオイルシールでシールするとともに、軸にスリンガー部材を設けて、オイルシールによるシール部とスリンガー部材との間に潤滑剤を封入する場合がある。これにより、装置内部からのオイル漏れや、外部からの水分等の侵入を防いでいた。しかしながら、この構成では、スリンガー部材が必要となるため、部品点数が増え、構成が煩雑化してしまう。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
[クーリングタワーの構成]
図1は、本実施形態に係るクーリングタワー用減速装置1が適用されたクーリングタワー100を示す断面図である。
この図に示すように、本実施形態に係るクーリングタワー用減速装置(以下、単に「減速装置」という。)1は、クーリングタワー100に適用される。
クーリングタワー100は、空調用の冷凍機などで使用される冷却水や、原油の精製時などのプロセス流体などを冷却するための冷却塔である。このクーリングタワー100は、タワー部110内に導入した温められた冷却水W1を、散水装置120で充填材130の表面に散布し、滴下する水W2にクーリングファン140で取り入れた外気A1を当てる。これにより水W2の一部を蒸発させ、残りを冷却し、タワー部110の底部に溜まった冷却水W3をポンプにより空調装置等に循環させる。
クーリングファン140は、タワー部110の上部に設けられ、タワー部110内で蒸発した水分を上方の外気に放出する。このクーリングファン140は、減速装置1を介してモータ150に連結されている。減速装置1は、モータ150の動力を減速して出力し、クーリングファン140を回転駆動する。
なお、クーリングタワーは、図1に示す開放式以外にも種々の方式が存在し、本実施形態の減速装置1はあらゆる方式のクーリングタワー(のクーリングファン駆動用)に使用可能であり、例えば密閉式、吸込通風型あるいは押込通風型の空冷式熱交換器(エアフィンクーラー)にも使用可能である。
【0010】
[減速装置の構成]
続いて、減速装置1の構成について説明する。
図2(a)、(b)は、減速装置1を斜め前側上方及び斜め前側下方から見た斜視図であり、図3(a)、(b)は、減速装置1の側面図と、減速装置1を斜め後側下方から見た斜視図である。図4は、減速装置1の側断面図である。
図2図4に示すように、減速装置1は、順次連結されて動力を伝達する入力軸20、中間軸30及び出力軸40と、これらの軸を収容するケーシング50とを備える。
【0011】
入力軸20は、軸線方向を略水平に向けて配置され、中間軸30及び出力軸40は、各々の軸線方向を入力軸20と略直交する上下方向に向けて配置されている。これら入力軸20、中間軸30及び出力軸40は、各々とケーシング50との間に配置された軸受21、31、41に軸支されている。また、入力軸20、中間軸30及び出力軸40は、各々の軸線が互いに同一平面内に位置している。
なお、以下の説明では、入力軸20に沿った方向(図4の紙面左右方向)を「前後方向」、前後方向と直交する図4の紙面垂直方向を「左右方向」、出力軸40に沿った方向(図4の紙面上下方向)を「上下方向」として、減速装置1の向き等を規定する。また、「前後方向」のうち、入力軸20がケーシング50から露出した側を「前側」、その反対側を「後側」とする。
【0012】
入力軸20の後側の先端にはベベルピニオン22が形成されている。このベベルピニオン22は、中間軸30に一体的に回転するように連結されたベベルギヤ32と噛合している。中間軸30には、外周面に中間ギヤ33が形成されている。この中間ギヤ33は、出力軸40に一体的に回転するように連結された出力ギヤ42と噛合している。
入力軸20は、前側の先端がケーシング50から露出しており、当該先端にモータ150(図1参照)が連結されて動力(回転運動)が入力される。出力軸40は、上端がケーシング50から露出しており、クーリングファン140(図1参照)に連結される。
【0013】
このような構成により、入力軸20に入力された回転運動は、ベベルピニオン22及びベベルギヤ32のギヤセットと、中間ギヤ33及び出力ギヤ42のギヤセットとを介して減速されつつ出力軸40に伝達され、出力軸40からクーリングファン140に出力される。ここで、ベベルピニオン22、ベベルギヤ32、中間軸30、中間ギヤ33及び出力ギヤ42は、入力軸20の回転を減速して出力軸40に伝達する減速機構を構成する。ただし、この減速機構は、ケーシング50に収納され、入力軸20の回転を減速して出力軸40に伝達するものであれば、その具体構成は特に限定されない。例えば、ベベルピニオン22とベベルギヤ32のギヤセットは、ハイポイドギヤやウォームギヤなどのギヤセットであってもよい。
【0014】
また、入力軸20のうち、ケーシング50から露出(突出)した前側部分の先端には、ファン(羽根車)23が配置されている(図4では図示省略)。ファン23は、入力軸20の回転に伴って回転し、後方のケーシング50に向けて送風する。
【0015】
ケーシング50は、前後方向にやや長尺な略直方体状に形成された一体の鋳造部品(鋳鉄製)である。このケーシング50は、前面51、後面52、上面53、下面54、及び左右両側面55、55を有する。
ケーシング50の前面51には、円形状の貫通孔51aが形成されている。貫通孔51aには、軸受21を介して入力軸20を軸支する軸支持部材56が取り付けられている。軸支持部材56は、前後方向に沿った略円筒状に形成され、後半部が貫通孔51aからケーシング50内に挿入された状態でケーシング50に固定されている。軸支持部材56の前端には、入力軸20との間の隙間をシールするシール部材25が設けられている。
【0016】
ケーシング50の後面52には、貫通孔52aが形成されている。貫通孔52aは、左右方向に幅広な形状であって、ベベルギヤ32及び出力ギヤ42の歯車部材が通過可能な大きさに形成されている。この貫通孔52aは、組立時にベベルギヤ32及び出力ギヤ42をケーシング50内に組み込むための孔部である。組立時には、中間ギヤ33及び出力ギヤ42が貫通孔52aからケーシング50内に入れられ、ケーシング50内で中間軸30及び出力軸40に取り付けられる。貫通孔52aは、蓋部材521で閉止される。
【0017】
ケーシング50の上面53及び下面54には、中間軸30を支持するための第1軸受孔53a、54aと、出力軸40を支持するための第2軸受孔53b、54bとが形成されている。第1軸受孔53a、54aは、同軸上に略同一の内径に形成され、それぞれ軸受31が内嵌されて、当該軸受31を介して中間軸30を軸支する。第2軸受孔53b、54bは、同軸上に略同一の内径に形成され、それぞれ軸受41が内嵌されて、当該軸受41を介して出力軸40を軸支する。下面54の第1軸受孔54a及び第2軸受孔54bは、その開口部に近い高さ(深さ)位置で、蓋部材541、542により閉止されている。蓋部材541、542は、熱伝導の良好なものが好ましい。ケーシング50は、第1軸受孔53a、54a及び第2軸受孔53b、54bが設けられる部分が、全て単一の素材で一体的に形成されている。
【0018】
ケーシング50の下面54は、前端から後方に向かうに連れて、次第に下方に位置するように形成されている。本実施形態では、ケーシング50の下面54は、後方に向かってこの順に段階的に下方に位置する前端部54c、中段部54d及び後半部54eを有する。
このうち、下面54の前端部54cには、前後方向に沿った複数のフィン544が立設されている。複数のフィン544は、入力軸20に設けられたファン23の風を、下面54の後半部54eに形成された第2軸受孔54bに誘導する。
下面54の中段部54dには、中間軸30を支持する第1軸受孔54aが開口している。
下面54の後半部54eには、出力軸40を支持する第2軸受孔54bが開口している。また、下面54の後半部54eには、クーリングタワー100上部のベース台160(図1参照)に固定される4つの脚部543が設けられている。
【0019】
ケーシング50の両側面55の前半部は、前端が前面51と滑らかに連なるとともに、後半部に向かうに連れて次第に側方に位置するように滑らかな面状に形成されている。
また、ケーシング50の側面55の後半部には、出力軸40の軸線方向(上下方向)に沿った複数(本実施形態では2つ)の溝部551が設けられている。複数の溝部551は、前後方向に並設され、その下端が2つの脚部543の間でケーシング50の下面54の後半部54eと連なっている。
【0020】
ケーシング50の上面53は、前端で前面51と滑らかに連なり、平坦面状に形成されている。
ケーシング50の上面53には、略平板状のトップカバー57が取り付けられている。トップカバー57は、第1軸受孔53aの上方に位置する挿通孔57aから出力軸40を露出させるとともに、第2軸受孔53bを閉止する。
また、トップカバー57は、ケーシング50の上面53に形成されたオイル循環孔(噴き出し孔)53cを閉止している。オイル循環孔53cは、第1軸受孔53aの前方に形成されており、入力軸20に取り付けられたスプラッシャー24によりケーシング50内で上方に巻き上げられた潤滑剤を上面53の上側に噴き出させる。この潤滑剤は、上面53の上側から第1軸受孔53a内の軸受31に供給され、ケーシング50内に戻される。
【0021】
[シール部材]
トップカバー57の挿通孔57a内には、当該トップカバー57と出力軸40との間の隙間をシールする円環状のシール部材58が設けられている。シール部材58は、ケーシング50(トップカバー57)の外部に露出している。
図5は、図4のA部の拡大図であって、シール部材58を説明するための図である。
この図に示すように、シール部材58は、出力軸40に外嵌される第1部材581と、トップカバー57に内嵌される第2部材584とを有する。
【0022】
第1部材581は、当該第1部材581の本体である第1芯金582と、第1芯金582の周囲を覆う第1弾性体583とを有する。
第1芯金582は、出力軸40に外嵌される円筒部582aと、当該円筒部582aの上端から出力軸40の軸線の半径方向外側に延出するフランジ部582bとを有する断面L字状に形成されている。
第1弾性体583は、第1芯金582に対応した形状に形成され、当該第1芯金582の周囲を覆っている。また、第1弾性体583は、外周部先端に設けられた第1リップ部583aを有する。第1リップ部583aは、先端が第2部材584と当接している。
【0023】
第2部材584は、当該第2部材584の本体である第2芯金585と、第2芯金585の周囲を覆う第2弾性体586とを有する。
第2芯金585は、トップカバー57の挿通孔57aに外嵌される円筒部585aと、当該円筒部585aの下端から出力軸40の軸線の半径方向内側に延出するフランジ部585bとを有する断面L字状に形成されている。第2芯金585と第1芯金582とは、互いの円筒部582a、585aが対向し、互いのフランジ部582b、585bが対向するように組み合わされている。第2芯金585の内周上端には、第1部材581の第1リップ部583aが当接する。
第2弾性体586は、内周部に設けられた3つの第2リップ部586a~586cを有する。このうち、第2リップ部586aは、第2芯金585のフランジ部585bの内周部から内径方向やや上向きに延出し、先端が第1芯金582の円筒部582aの外周面に当接している。第2リップ部586bは、第2リップ部586aのやや上側において内径方向やや上向きに延出し、先端が第1芯金582の円筒部582aの外周面に当接している。第2リップ部586cは、第2芯金585のフランジ部585bの内周部から上方に延出し、先端が第1芯金582のフランジ部582bの下面に当接している。なお、第2リップ部586a~586cの数量や形状は特に限定されない。
【0024】
第1部材581と第2部材584の間の空間、すなわち隣接する第2リップ部586a~586cの間の空間や、第2リップ部586cと第1リップ部583aとの間の空間には、潤滑剤Gが封入されている。
また、シール部材58は、内径(直径)D1に対する外径(直径)D2の比が1.6以上であるのが好ましく、この比が1.8~2.0の範囲内であるのがより好ましい。このような比に設定することにより、シール部材58を配置するために内径の小さい専用カバーを用意する必要がなくなる。
【0025】
[減速装置の動作]
続いて、減速装置1の動作について説明する。
減速装置1では、モータ150の動力が入力されて入力軸20が回転すると、この運動がベベルピニオン22及びベベルギヤ32のギヤセットを介して減速されて中間軸30に伝達された後、中間ギヤ33及び出力ギヤ42のギヤセットを介してさらに減速されて出力軸40に伝達される。こうして、減速された動力が出力軸40からクーリングファン140に出力され、当該クーリングファン140が回転駆動される。
【0026】
このとき、減速装置1では、図5に示すように、出力軸40とトップカバー57との間の隙間がシール部材58によりシールされている。
シール部材58では、第1部材581が出力軸40に外嵌され、第2部材584がケーシング50(トップカバー57)に内嵌されて、これら第1部材581と第2部材584とが相対回転する。そして、第1部材581の第1リップ部583aが第2芯金585と摺接し、第2部材584の第2リップ部586a~586cが第1芯金582と摺接することで、シール部材58の上側と下側、つまりケーシング50(トップカバー57)の上側と下側とが好適にシールされる。
またこのとき、出力軸40はどの部材とも摺接しない。これにより、例えばシールリングのリップ部を出力軸40に直接摺接させる場合と異なり、出力軸40に摺接痕(摩耗痕)が形成されることを防止できる。
【0027】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、出力軸40とケーシング50(トップカバー57)の間に配置されたシール部材58が、出力軸40に外嵌される第1部材581と、トップカバー57に内嵌される第2部材584とを有する。第1部材581は、第1芯金582と、第1芯金582の外周に設けられた第1リップ部583aとを有し、第2部材584は、第1リップ部583aが当接する第2芯金585と、第2芯金585の内周に設けられ、第1芯金582に当接する第2リップ部586a~586cとを有する。
これにより、シール部材58では、第1部材581の第1リップ部583aが第2芯金585と摺接し、第2部材584の第2リップ部586a~586cが第1芯金582と摺接することで、シール部材58の上側と下側、つまりケーシング50(トップカバー57)の上側と下側とが好適にシールされる。
したがって、スリンガー部材が必要であった従来と異なり、簡便な構成で出力軸40とケーシング50との間を好適にシールすることができる。
さらに、出力軸40に外嵌された第1部材581と、ケーシング50(トップカバー57)に内嵌された第2部材584とが相対回転し、出力軸40はどの部材とも摺接しない。これにより、例えばシールリングのリップ部を出力軸40に直接摺接させる場合と異なり、出力軸40に摺接痕が形成されることを防止できる。
【0028】
また、本実施形態によれば、シール部材58は、第1部材581と第2部材584の間の空間に潤滑剤が封入されている。
これにより、出力軸40とケーシング50との間をより好適にシールでき、減速装置1内部への水分の侵入を防止できる。
【0029】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、本発明に係るシール部材の構造を、出力軸40とケーシング50(トップカバー57)との間をシールするシール部材58に適用した場合について説明した。しかし、本発明に係るシール部材は、軸とケーシングの間に配置されてその隙間をシールするものに広く適用でき、例えば入力軸20とケーシング50(軸支持部材56)との間をシールするシール部材25に適用してもよい。ここで、シール部材25に適用する場合には、内径(直径)D1に対する外径(直径)D2の比が2.0以上であるのが好ましく、この比が2.2~2.5の範囲内であるのがより好ましい。このような比に設定することにより、シール部材25を配置するために内径の小さい専用カバーを用意する必要がなくなる。
【0030】
また、上記実施形態では、出力軸40とトップカバー57との間にシール部材58を配置することとしたが、出力軸40とケーシング50との間に配置してもよい。
また、出力軸40とケーシング50(トップカバー57)との間をシール部材58でシールしたうえに、その外側にスリンガー部材(図6参照)を設けてさらにシール性を向上させてもよい。
【0031】
また、本発明に係るクーリングタワーは、クーリングファンを有するものであれば、その型式は特に限定されない。
また、本発明に係るクーリングタワー用減速装置は、露出した軸を有するものであればよく、直交型の減速装置に限定されない。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 クーリングタワー用減速装置
20 入力軸
25 シール部材
40 出力軸
50 ケーシング
53 上面
53b 第2軸受孔
53c オイル循環孔(噴き出し孔)
57 トップカバー
57a 挿通孔
58 シール部材
581 第1部材
582 第1芯金(第1部材本体)
583 第1弾性体
583a 第1リップ部
584 第2部材
585 第2芯金(第2部材本体)
586 第2弾性体
586a~586c 第2リップ部
D1 シール部材の内径
D2 シール部材の外径
G 潤滑剤
100 クーリングタワー
140 クーリングファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6