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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20241018BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60C9/18 H
B60C9/18 M
B60C9/00 G
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020098754
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2020200032
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】16/437749
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】上横 清志
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-250312(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103070(WO,A1)
【文献】特開2010-247660(JP,A)
【文献】特開2004-216988(JP,A)
【文献】特表2011-516343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、
一方の前記ビードコアから他方の前記ビードコアにトロイダル形状で延びる1つ以上のカーカスプライを有するカーカス層と、
前記カーカス層のトロイダル形状の周囲を周方向に取り囲むトレッド部と、
半径方向に最も内側の主ベルト層と、前記主ベルト層の半径方向外側に配置された無補強の第1のクッション層と、前記第1のクッション層の半径方向外側に配置された無補強の第2のクッション層と、前記第2のクッション層の半径方向外側と前記トレッド部の半径方向内側との間に配置された保護ベルト層とを有するベルト構造を有し、
前記主ベルト層の半径方向に最も外側の層は指定された直径の補強コードを有し、前記第1のクッション層は前記指定された直径の0.5倍から4.0倍の半径方向の厚さを有し、
前記第2のクッション層は、前記指定された直径の1.5倍から5.0倍の半径方向の厚さを有することを特徴とする、ラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記第1のクッション層は、前記指定された直径の0.5倍から2.5倍の半径方向の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記第1のクッション層は、前記ベルト構造の最大全軸方向幅の0.5倍から1.1倍の軸方向幅を有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記第1のクッション層は、前記ベルト構造の最大全軸方向幅の0.5倍から0.9倍の軸方向幅を有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記第2のクッション層は、前記指定された直径の1.5倍から3.5倍の半径方向の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項6】
前記主ベルト層の半径方向に最も外側の層の前記補強コードは、複数の有機繊維、複数の併合されたコードを有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項7】
前記保護ベルト層は、有機繊維コードを有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項8】
前記カーカス層は、有機繊維コードを有することを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【請求項9】
前記主ベルト層は第1の軸方向幅を有し、前記保護ベルト層は第2の軸方向幅を有し、前記第1の軸方向幅に対する第2の軸方向幅の比率は、0.25から1.20であることを特徴とする、請求項1に記載のラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジアルタイヤおよびラジアルタイヤの製造方法に関し、より詳細には、航空機に適したラジアルタイヤであって、異物等による航空機タイヤの切断を軽減することができ、ラジアルタイヤの重量を軽減することができるラジアルタイヤおよびラジアルタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のラジアルタイヤ、特に航空機用ラジアルタイヤは高い内圧と高速回転により生じる遠心力とにより、その半径方向にトレッド面が大きく膨張することがある。トレッド面が半径方向外側に膨張すると、トレッドゴムがタイヤの円周方向に伸びることがある。従来のタイヤが空気入りタイヤでない場合、大きな膨張は高速回転だけで引き起こされることがある。
【0003】
一般に、従来の航空機用ラジアルタイヤは、高内圧、高負荷、高速の条件下で使用されることがある。したがって、タイヤが異物の上に乗っているとき、タイヤ全体が異物の上に乗っていると、航空機のラジアルタイヤが損傷する可能性があり、これは、いわゆる「エンベロープ特性」と呼ばれる。タイヤのトレッドゴムが周方向に伸ばされると、異物に対する抵抗力が弱くなる場合がある。さらに、このような踏みつけられた異物がトレッドに容易に侵入し、それによってタイヤを損傷することがある。
【0004】
タイヤの幅方向の中央部の膨張量が、タイヤの幅方向の両端部よりも大きくなると、タイヤの直径差が発生することがある。この直径差は、回転タイヤにドラッグ現象を引き起こす可能性がある。その結果、トレッドの肩部分はトレッドの中央部分よりも早く摩耗することがあり、それによって、トレッドおよびタイヤの寿命が短くなる。この現象は、偏摩耗と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膨張変形を抑制することによりトレッドの摩耗特性を改善し、トレッドの摩耗特性を強化し、トレッドのエンベロープ特性を強化するために、従来のラジアルタイヤは、トレッドゴム層とカーカス層のクラウン領域との間に配置されたベルト層を含んでいることがある。ベルト層は、広いベルトプライを有する従来の主ベルト層と、主ベルト層の半径方向外周に追加されたより狭いベルトプライを有するより狭い補助ベルト層とを含んでもよい。このように、この構造は、主ベルト層の中央部に配置された補助ベルト層とによってベルトの剛性を高めることができる。さらに、この構造は、トレッド中央領域の膨張変形を抑えることができる。膨張を減らすための1つの従来の構成は、芳香族ポリアミド(例えば、ケブラーTM)で作られた比較的高弾性のコードを使用する。航空機用タイヤに従来使用されている脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン)と比較して、芳香族ポリアミドコードは伸びの割合が低い領域で高い張力を示し、タイヤの内圧を維持することができ、それによってタイヤの膨張を効果的に抑制することができる。
【0006】
従来、補強層は、有機繊維からなるベルトの最外層に設けられたガラス、金属、アラミド等で補強されたコードを含んでいる。さらに、より高い張力を有するベルトプライを追加してもよい。このような層は、ベルト層の総厚が最も厚くなるトレッド中央領域において、ゴム厚(コードの厚さを含まないゴムのみの厚さ)を必ず使用する。これにより、トレッドの両側側方領域のゴム厚が過度に厚くなり、したがって、タイヤ重量が増大し、トレッドの両側側方領域の加熱が増大し、トレッドの高速耐久性が低下する可能性がある。
【0007】
上記を考慮して、本発明は、回転中にトレッド面の径が大きくなることを防止し、異物等により発生する切断に対する耐久性を高め、タイヤの重量を低減する航空機に適したラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0008】
(定義)
「エイペックス」とは、ビードコアの半径方向上方でプライと折り返しプライとの間に配置されたエラストマー充填材を意味する。
【0009】
「環状」とは、リングのように形成されていることを意味する。
【0010】
「アスペクト比」とは、タイヤの断面幅に対するタイヤ断面高さの比を意味する。
【0011】
「ビード断面のアスペクト比」とは、ビードの断面幅に対するビードの高さの比を意味する。
【0012】
「非対称トレッド」とは、タイヤの中心面または赤道面EPに関し対称でないトレッドパターンを有するトレッドを意味する。
【0013】
「軸線方向の」および「軸線方向に」は、タイヤの回転軸に平行な線または方向を示す。
【0014】
「ビード」とは、環状の引張り部材を含むタイヤの一部分を意味し、プライコードによって巻かれ、設計リムに適合するように形成されており、この際、フリッパー、チッパー、エイペックス、トゥーガードおよびチェーファーのような、その他の補強用要素を用いてもよいし、またはそれらを用いなくてもよい。
【0015】
「ベルト構造」とはトレッドの下層にあり、ビードに固定されていない、織られまたは織られていない平行なコードからなる少なくとも2つの環状の層またはプライを意味し、タイヤの赤道面に対して傾斜したコードを有する。ベルト構造はまた、制限層として機能する、比較的低い角度で傾斜した平行なコードのプライを含んでもよい。
【0016】
「バイアスタイヤ」(クロスプライ)とは、カーカスプライ内の補強コードがビードからビードへタイヤを斜めに横切ってタイヤの赤道面に対して約25度から65度に延びるタイヤを意味する。複数のプライが存在する場合、プライコードは、互いに隣接する層において互いに逆向きの角度に延びる。
【0017】
「ブレーカー」とは、平行な補強コードからなる少なくとも2つの環状層またはプライを意味し、補強コードはタイヤの赤道面に関して、カーカスプライの平行な補強コードと同じ角度を有する。ブレーカーは、通常、バイアスタイヤと組み合わされる。
【0018】
「ケーブル」とは、2本以上のプライ糸を一緒に撚ることによって形成されたコードを意味する。
【0019】
「カーカス」とはプライ上のベルト構造、トレッド、アンダートレッド、およびサイドウォールラバーとは別のタイヤ構造を意味し、ビードを含む。
【0020】
「ケーシング」とは、トレッドおよびアンダートレッドを除くカーカス、ベルト構造、ビード、サイドウォール、およびタイヤの他のすべての構成要素、すなわちタイヤ全体を意味する。
【0021】
「チッパー」は、ビード領域を補強し、サイドウォールの半径方向最内部分を安定させる機能を有し、ビード領域内に位置する織物コードまたはスチールコードからなる狭いバンドを示す。
【0022】
「周方向の」および「周方向に」とは、赤道面(EP)に平行で軸線方向に垂直な環状のタイヤの表面の周縁部に沿って延びるラインまたは方向を意味し、互いに隣接する円形曲線の複数の組であって、断面視において、それらの円形曲線の半径がトレッドの軸線方向の湾曲を画定する複数の円形曲線の組の方向を示すこともある。
【0023】
「コード」とは、タイヤの補強構造を構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0024】
「コード角度」とはコードによって形成される、赤道面に対する鋭角を意味し、タイヤの平面図において左右の鋭角を意味する。「コード角度」は、硬化したが膨張していないタイヤにおいて測定される。
【0025】
「クラウン」とは、タイヤトレッドの幅方向の境界内におけるタイヤの部分を意味する。
【0026】
「デニール」とは、9000メートル当たりのグラム重量(線密度を表す単位)を意味する。「Dtex」は、1万メートル当たりのグラム重量を意味する。
【0027】
「密度」とは、単位長さ当たりの重量を意味する。
【0028】
「エラストマー」とは、変形後にその大きさと形状を回復する能力を備えた弾性材料を意味する。
【0029】
「赤道面(EP)」とは、タイヤの回転軸に垂直で、タイヤのトレッドの中心を通る面、またはトレッドの周方向中心線を含む面を意味する。
【0030】
「織物」は、本質的に一方向に延びる複数のコードの網構造を意味し、複数のコードは撚られていてもよく、あるいは、高弾性率材料からなる多数本のフィラメント(撚られてもよい)を複数束ねて構成される。
【0031】
「繊維」とは、フィラメントの基本要素を形成する天然または人工の物質の単位である。長さが直径または幅の少なくとも100倍であることを特徴とする。
【0032】
「フィラメント数」とは、糸を構成するフィラメントの数を意味する。例:1000デニールのポリエステルは約190のフィラメントを有する。
【0033】
「フリッパー」とは、強度上およびタイヤ本体内でビードワイヤを結束するためにビードワイヤの周囲に配置された織物を意味する。
【0034】
「フットプリント」とは、ゼロ速度且つ通常の負荷および気圧下における、タイヤトレッドと平坦な面との接触面または接触領域を意味する。
【0035】
「ゲージ」とは、一般に、測定値、具体的には厚さの測定値を示す。
【0036】
「溝」とは、トレッドを周方向、または横方向に、直線状、または曲線状、またはジグザグ状に延びていてよいトレッド内の細長い空隙領域を意味する。周方向および横方向に延びる溝は、時々共通部分を有する。「溝幅」は、溝または溝部分によって占められるトレッド表面を、そのような溝または溝部分の長さで割ったものとすることができ、したがって、溝幅は、その長さ全体の平均幅とすることができる。溝は、タイヤ内で深さが変わっていてもよい。溝の深さは、トレッドの外周の周りで変化してもよく、または1つの溝の深さは一定であってもよいが、タイヤ内の他の溝の深さと異なっていてもよい。このような狭いまたは広い溝が、広い円周溝と比較して実質的に浅い深さであり、当該広い円周溝を相互接続する場合、それらは、それらが含まれるトレッド領域においてリブのような特性を維持する傾向がある「タイバー」を形成するものとみなすことができる。本明細書で使用されるように、溝は、タイヤ接触面またはフットプリント内に開いたままであるのに十分な幅を有することが意図されている。
【0037】
「高張力鋼(HT)」とは、フィラメント径0.20mmにおいて少なくとも3400MPaの引張り強度を有する炭素鋼を意味する。
【0038】
「内側」とは、タイヤの内側に向かい、「外側」とは、タイヤの外側に向かうことを意味する。
【0039】
「インナーライナー」とは、チューブレスタイヤの内部表面を形成し、タイヤ内に膨張流体を封じ込めるエラストマーまたは他の材料の1つの層または複数の層を意味する。
【0040】
「インボード側」とは、タイヤがホイールに取り付けられ、ホイールが車両に取り付けられたときに、車両に最も近いタイヤの側を意味する。
【0041】
「LASE」とは、指定された伸長における負荷である。
【0042】
「横方向」とは、軸方向を意味する。
【0043】
「設置長さ」とは、撚られたフィラメントまたはストランドが延在して、他のフィラメントまたはストランドの周りを360度回転する距離を意味する。
【0044】
「負荷範囲」とは、The Tire and Rim Association, Inc.の表に定義されている特定の種類のサービスで使用される所定のタイヤの負荷量および膨張限界を意味する。
【0045】
「メガ張力鋼(MT)」とは、0.20mmにおけるフィラメント直径で少なくとも4500MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0046】
「正味接触面積」とは、定義された境界エッジ間の地面に接触する要素の総面積を、トレッドの全周にわたって測定された境界エッジ間の総面積で割ったものを意味する。
【0047】
「ネット対グロス比」とは、トレッドの全周の周りのトレッドの側縁間の地面に接触するトレッド要素の総面積を、側縁間のトレッドの全周の総面積で割ったものを意味する。
【0048】
「非方向性トレッド」とは、好ましい前進方向を持たず、トレッドパターンを好ましい移動方向と一致させるために車両の特定のホイール位置に配置する必要がないトレッドを意味する。逆に、方向性トレッドパターンは、特定のホイール位置を必要とする好ましい移動方向を有する。
【0049】
「通常負荷」とは、タイヤの使用条件に対して、適切な標準化機構によって割り当てられた特定の設計膨張圧力および負荷を意味する。
【0050】
「普通張力鋼(NT)」とは、0.20mmフィラメント直径において少なくとも2800MPaの引張り強度を有する炭素鋼を意味する。
【0051】
「アウトボード側」とは、タイヤがホイールに取り付けられ、ホイールが車両に取り付けられたときに、車両から最も離れたタイヤの側を意味する。
【0052】
「プライ」とは、ゴムで被覆された複数のコードからなるコード補強層を意味し、複数のコードは半径方向に展開され、または平行に延びている。
【0053】
「半径方向の」および「半径方向に」は、径方向にタイヤの回転軸に向かい、または離れる方向を意味する。
【0054】
「ラジアルプライ構造」とは、少なくとも1つのプライがタイヤの赤道面に対して65度から90度の角度で配向した補強コードを有する1つ以上のカーカスプライを意味する。
【0055】
「ラジアルプライタイヤ」とは、少なくとも1つのプライが、ビードからビードへ延びタイヤの赤道面に対して65度から90度のコード角に配置されるコードを有する、ベルト構造の、または周方向に拘束された空気入りタイヤを意味する。
【0056】
「リブ」とは、少なくとも1つの周方向溝と、第2のそのような溝または側縁のいずれかと、によって画定される、トレッド上の周方向に延びるゴムのストリップを意味し、ストリップは、最も深い溝によって横方向に分割されない。
【0057】
「リベット」とは、層中のコード間の開放空間を意味する。
【0058】
「断面高さ」とは、赤道面での公称リム直径からタイヤの外径までの半径方向距離を意味する。
【0059】
「断面幅」とは、通常圧力且つ無負荷時で24時間膨張させたとき、およびそれ以降の、サイドウォールの外側間の、タイヤ軸に平行な最大直線距離を意味し、ラベル、装飾または保護バンドによるサイドウォールの高さを除く。
【0060】
「自立型ランフラット」とは、タイヤが限られた時間および限られた速度で、非膨張状態で操作されたときに、タイヤ構造のみで車両の負荷を支持するのに十分に強い構造を有するタイプのタイヤを意味する。タイヤ構造しかないため(例えば、内部構造がないため)、タイヤのサイドウォールおよび内面は潰れたり、座屈したりすることがない。
【0061】
「サイドウォールインサート」とは、タイヤのサイドウォール領域に配置されたエラストマーまたはコード補強材を意味する。インサートは、カーカス補強プライおよびタイヤの外面を形成する外側のサイドウォールゴムへの追加であってもよい。
【0062】
「サイドウォール」とは、トレッドとビードとの間のタイヤの部分を意味する。
【0063】
「サイプ」または「切り込み」とは、トレッド表面を細分化し、牽引力を改善する、タイヤのトレッド要素に成形された小さなスロットを意味し、サイプは溝とは異なり、接触面またはフットプリント内で閉じるように設計されてもよい。
【0064】
「ばね率」とは、所与の圧力での負荷たわみ曲線の勾配として表されるタイヤの剛性を意味する。
【0065】
「剛性比」とは、コードの両端が支持され、固定端の間の中心に掛けられた負荷で曲げられる固定三点曲げ試験によって値が決定された場合の、対照制御ベルト構造の剛性値を別のベルト構造の剛性値で割った値を意味する。
【0066】
「超高張力鋼(ST)」とは、0.20mm繊維径において少なくとも3650MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0067】
「靭性」とは、歪みのない試験片の単位線密度当たりの力(gm/texまたはgm/デニール)として表される応力である。織物で使用される。
【0068】
「引張り」とは、力/断面積で表される応力である。強度(psi)=12,800×比重×デニールあたりのグラムにおける靭性。
【0069】
「トゥーガード」とは、各ビードの軸方向内側のタイヤの円周方向に展開されたエラストマーのリム接触部分を示す。
【0070】
「トレッド」とは、タイヤケーシングに結合されたときに、タイヤの通常負荷通常膨張時に道路と接触するタイヤの部分を含む成型されたゴム部品を意味する。
【0071】
「トレッド要素」または「牽引要素」とは、リブまたはブロック要素を意味する。
【0072】
「トレッド幅」は、タイヤの回転軸を含む平面におけるトレッド表面の弧の長さを意味する。
【0073】
「折り返し端」とは、プライが巻き付けられているビードから上方に(すなわち、半径方向外側に)曲がるカーカスプライの部分を意味する。
【0074】
「超超張力鋼(UT)」とは、0.20mmフィラメント直径において少なくとも4000MPaの引張り強度を有する炭素鋼を意味する。
【0075】
「垂直たわみ」とは、タイヤが負荷の下でたわむ量を意味する。
【0076】
「糸」は、織物繊維またはフィラメントの連続ストランドの総称であり、以下の形態で発生する。:(1)一緒に撚り合わされた多数の繊維;(2)撚りをかけずに一緒に配置された多数の繊維;(3)ある程度の撚りを加えて一緒に配置された多数の繊維;(4)撚りの有無にかかわらず単一の繊維(モノフィラメント);および(5)撚りの有無にかかわらない材料の狭いストリップ。
【課題を解決するための手段】
【0077】
本発明による第1のラジアルタイヤは、一対のビードコアと、一方のビードコアから他方のビードコアに延びる1つ以上のカーカスプライを有するカーカス層と、カーカス層のトロイダル形状の周囲を周方向に取り囲むトレッド部と、ベルト構造とを含む。ベルト構造は、半径方向に最も内側の主ベルト層と、主ベルト層の半径方向外側に配置された無補強の第1のクッション層と、第1のクッション層の半径方向外側に配置された無補強の第2のクッション層と、第2のクッション層の半径方向外側とトレッド部の半径方向内側との間に配置された保護ベルト層とを含む。主ベルト層の半径方向に最も外側の層は、指定された直径の補強コードを有する。第1のクッション層は、指定された直径の0.5倍から4.0倍の半径方向の厚さを有する。
【0078】
第1のラジアルタイヤの別の態様によれば、第1のクッション層は、指定された直径の0.5倍から2.5倍の半径方向の厚さを有する。
【0079】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、第1のクッション層は、ベルト構造の最大全軸方向幅の0.5倍から1.1倍の軸方向幅を有する。
【0080】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、第1のクッション層は、ベルト構造の最大全軸方向幅の0.5倍から0.9倍の軸方向幅を有する。
【0081】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、第2のクッション層は、指定された直径の1.5倍から5.0倍の半径方向の厚さを有する。
【0082】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、第2のクッション層は、指定された直径の1.5倍から3.5倍の半径方向の厚さを有する。
【0083】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、主ベルト層の半径方向に最も外側の層の補強コードは、複数の有機繊維、複数の併合されたコードを有する。
【0084】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、保護ベルト層は、有機繊維コードを有する。
【0085】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、カーカス層は、有機繊維コードを有する。
【0086】
第1のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、主ベルト層は第1の軸方向幅を有し、保護ベルト層は第2の軸方向幅を有し、第1の軸方向幅に対する第2の軸方向幅の比率は0.25から1.20の間、または0.75から0.95の間である。
【0087】
本発明によるラジアルタイヤ用のトレッドは、円周方向に延びる複数のトレッド溝と、複数のトレッド溝のうちの2つによって画定され、円周方向に延びる1つの中心リブであって、中心リブの半径方向の外側の表面が第1の曲率半径を有する中心リブと、トレッド溝によって画定され、円周方向に延びる2つの中間リブであって、各中間リブの半径方向の外側の表面が第2の曲率半径を有する2つの中間リブと、トレッド溝によって画定され、円周方向に延びる2つの肩リブであって、各肩リブの半径方向の外側の表面が、第3の曲率半径と第3の曲率半径と異なる第4の曲率半径とを有し、各第3の曲率半径はトレッド溝の1つに隣接して配置され、各第4の曲率半径はトレッドの軸方向外縁に隣接して配置された2つの肩リブと、を有し、第2の曲率半径は、何れも第1の曲率半径よりも大きい。
【0088】
トレッドの別の態様によれば、第1の曲率半径は、第3の曲率半径の各々よりも大きい。
【0089】
トレッドのさらに別の態様によれば、第1の曲率半径は、第4の曲率半径の各々よりも大きい。
【0090】
トレッドのさらに別の態様によれば、第3の曲率半径は、第4の曲率半径の各々よりも大きい。
【0091】
トレッドのさらに別の態様によれば、第2の半径は、第4の半径の各々よりも大きい。
【0092】
本発明による第2のラジアルタイヤは、一対のビードコアと、一方のビードコアから他方のビードコアにトロイダル形状で延びる1つ以上のカーカスプライを有するカーカス層と、カーカス層のトロイダル形状の周囲を周方向に取り囲むトレッド部と、ベルト構造とを含む。ベルト構造は、半径方向に最も内側の主ベルト層と、主ベルト層の半径方向外側に配置された無補強の第1のクッション層と、第1のクッション層の半径方向外側に配置された無補強の第2のクッション層と、第2のクッション層の半径方向外側とトレッド部の半径方向内側との間に配置された保護ベルト層とを含む。トレッド部は、円周方向に延びる複数のトレッド溝と、トレッド溝のうちの2つによって画定され、円周方向に延びる1つの中心リブであって、中心リブの半径方向の外側の表面が第1の曲率半径を有する中心リブと、トレッド溝によって画定され、円周方向に延びる2つの中心リブであって、各中間リブの半径方向の外側の表面が第2の曲率半径を有する2つの肩リブと、を備え、第2の曲率半径は、何れも第1の曲率半径よりも大きい。
【0093】
第2のラジアルタイヤの別の態様によれば、主ベルト層は第1の軸方向幅を有し、保護ベルト層は第2の軸方向幅を有し、第1の軸方向幅に対する第2の軸方向幅の比率は、0.5からと0.90の間、または0.70から0.90の間である。
【0094】
第2のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、主ベルト層の有機繊維コードはアラミドを含み、保護ベルト層の有機繊維コードはナイロンを含む。
【0095】
第2のラジアルタイヤのさらに別の態様によれば、ベルト構造の最大軸方向幅に対する第1のクッション層の軸方向幅の比率は、0.5から1.1である。
【0096】
本発明は、例として、添付の図面を参照して説明される
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】本発明に係るラジアルタイヤの一例の概略断面図である。
図2図1のラジアルタイヤの一部の概略詳細図である。
図3図1のラジアルタイヤの他の一部の概略詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、図1図3を参照して、本発明を実施するための一例を説明する。例示的な航空機ラジアルタイヤ10は、各々が円形断面を有する2つのビードコア14を有するビード部12を有していてもよい。カーカス層16は、ゴム被覆有機繊維コードが半径方向に配列されてビードコア14によって保持されるサイドウォール19を形成する6つ以上の例示的なカーカスプライ(図示せず)を含むことができる。フリッパー、チェーファー、チッパーなどの他の構造物は従来の構造に類似していてもよく、図1には示されていないことに留意されたい。
【0099】
カーカス層16は、例えば、6.3cN/dtex以上の引張破壊強度、負荷が伸長方向に0.2cN/dtexである場合に0.2から1.8パーセントの伸び率、負荷が伸長方向に1.0cN/dtexである場合に1.4から6.4パーセントの伸び率、および負荷が伸長方向に2.9cN/dtexである場合に2.1から8.6パーセントの伸び率を有する有機繊維コードを利用してもよい。カーカス層16の有機繊維コードは、0.12から0.85または0.17から0.51の内層係数、0.4から0.85の外層係数の芳香族ポリアミド繊維であってもよい。
【0100】
カーカス層16は、別の例として、6.3cN/dtex以上の引張破壊強度、負荷が伸長方向に0.3cN/dtexである場合に0.2から2.0パーセントの伸び率、負荷が伸長方向に2.1cN/dtexである場合に1.5から7.0パーセントの伸び率、および負荷が伸長方向に3.2cN/dtexである場合に2.2から9.3パーセントの伸び率を有する有機繊維コードを利用してもよい。カーカス層16の有機繊維コードは、0.12から0.85、または0.17から0.51の内層係数、0.4から0.85の外層係数の芳香族ポリアミド繊維であってもよい。
【0101】
カーカス層16の有機繊維コードは、芳香族ポリアミド繊維および脂肪族ポリアミド繊維を含む、併合された、またはハイブリッドコードであってもよい。芳香族ポリアミド繊維と脂肪族ポリアミド繊維との重量比は、100:27から100:255とすることができる。加えて、ナイロンは、併合されたコードの一部または全部に使用されてもよい。
【0102】
カーカス層16の半径方向外側に位置するベルト構造20は、ベルト構造の半径方向内側に配置された主ベルト層26と、ベルト構造の半径方向外側に設けられた保護ベルト層28とを含んでもよい。ベルト構造は、最大全軸幅BWを有していてよい。主ベルト層26はより大きな第1軸幅BWを有してもよく、保護ベルト層28はより小さな第2軸幅CPWを有してもよい。第2軸幅と第1軸幅との比は、0.25から1.20の間、または0.75から0.95の間であってもよい。
【0103】
主ベルト層26は、2枚から16枚、または8枚の複数のベルトプライで形成することができる。ベルトプライの幅は互いに同じであってもよいし、様々な幅であってもよい。有機繊維コードの傾斜角度、またはコード角度は、赤道面に関して1度から45度、または10度から45度であってもよい。複数の有機繊維コードの密度は、4.0コード/10mmから10.0コード/10mm、または7.0コード/10mmであってもよい。
【0104】
ベルト構造20の主ベルト層26の有機繊維コードは、芳香族ポリアミド繊維および脂肪族ポリアミド繊維を含む、併合された、またはハイブリッドコードであってもよい。芳香族ポリアミド繊維と脂肪族ポリアミド繊維との重量比は、100:27から100:255とすることができる。さらに、ナイロンは、例示的な併合コードの一部または全部に使用されてもよい。
【0105】
ベルト構造20の保護ベルト層28は、ベルト構造20の軸幅BWよりも小さい、または0.25BWから1.2BW、または0.5BWから0.8BWの軸幅CPWを有することができる。保護ベルト層28は、1つ以上のベルトプライから形成されてもよい。さらに、1つ若しくは複数のベルトプライ26または保護ベルト層28の1つ若しくは複数のプライは、薄い物体が一回または360度巻かれるときに常に、薄い物体がプライの軸両端の間で往復し、薄い物体が赤道面に対して0から25度の角度で傾斜することができるように、バンド状の薄い物体を形成するためにゴムでコーティングされた1つまたは複数の有機繊維コードで形成されてもよく、この巻き付けは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0253085号に開示されるように、薄い物体間に隙間が生成されないように薄い物体を周方向にそれらの幅と実質的に同じ距離だけオフセットしながら何度も実行されてもよい(これは、エンドレスジグザグ巻きベルトと呼ばれる)。その結果、実質的に周方向にジグザグ状に延びる有機繊維コードを、軸方向両側のプライ端で曲げ方向を変えることによって、ベルトプライまたは複数のベルトプライの全領域に略均一に埋め込むことができる。主ベルト層26の有機繊維コードの角度は、保護層28の有機繊維コードの角度よりも小さくてもよい。
【0106】
保護ベルト層28において、有機繊維コードは、主ベルト層26に含まれる有機繊維コードの弾性率以下の弾性率を有していてもよい。保護ベルト層28の有機繊維コードの例として、ナイロンなどの脂肪族ポリアミド繊維、またはアラミドなどの芳香族ポリアミド繊維と併合されたコード、そして、ナイロンなどの脂肪族ポリアミド繊維を含むことができる。保護ベルト層28は、有機繊維コードの傾斜角が赤道面に対して0から25度の範囲、または10度の角度を有するエンドレスジグザグ巻きベルトを含むことができる。
【0107】
図2から図3に示すように、本発明の1つの特徴によれば、半径方向に最も外側のベルトプライ26のコード261は、均一な直径Cdを有することができる。半径方向において主ベルト層26のコードと、第2の無補強ゴム層32、すなわち第2のクッション層と、の間に位置する第1の無補強(例えば、コード補強材が欠けているなど)ゴム層30ないし第1のクッション層の最小厚みt1は、0.5Cdから4.0Cdまたは1.0Cdから2.5Cdの範囲であってもよい。第1の無補強ゴム層30は、0.5BWから1.1BW、または0.5BWから0.9BWの軸方向幅CWを有していてもよい。第1の無補強ゴム層30の軸方向外縁の半径方向の厚さは、半径方向内側に向かって先細りとすることができる(図2)。第1の無補強層30はまた、上記範囲内の全体的な厚さを有する複数の層を含んでもよい。トレッド貼り替え中のトレッドバフ研磨は、第2の無補強ゴム層32で起こり得る。
【0108】
第1の無補強ゴム層30と保護層28との間の第2の無補強ゴム層32の最小厚みt2は、1.5Cdから5.0Cd、または1.5Cdから3.5Cdの範囲とすることができる。第2の無補強ゴム層32はまた、上記範囲内の全体的な厚さを有する複数の層を含んでもよい。第2の無補強ゴム層32の厚さt2が小さすぎると、タイヤ10のトレッドを貼り替える際に、半径方向内側の主ベルト層26に損傷を与えずにゴム層32を除去することが困難になり得る。逆に、ゴム層30、32の厚さが大きすぎると、タイヤ10の重量が増加するだけでなく、トレッド層18の発熱も増加するので、どちらもタイヤの性能にとって不利である。第2のゴム層32の厚さt2は、トレッドを貼り替え中に保護層28の除去を可能にすることができる。
【0109】
本発明の別の特徴によれば、図1に示すように、トレッド層18は、円周方向に延びる2つの肩リブ182、186、円周方向に延びる2つの中間リブ183、185、および円周方向に延びる1つの中心リブ184を分離する円周方向に延びるトレッド溝181を含んでもよい。中央リブ184の半径方向に最も外側の表面は、曲率半径TR1を有することができる。中間リブ183、185の半径方向に最も外側の表面は、曲率半径TR2を有することができる。溝181に隣接する肩リブ182、186の半径方向に最も外側の表面は、曲率半径TR3を有することができる。サイドウォール19の軸方向外側部分に隣接する肩リブ182、186の半径方向に最も外側の表面は、曲率半径TR4を有することができる。TR2はTR1よりも大きくてもよい。さらに、TR2はTR1よりも大きくてよく、TR1はTR3よりも大きくてよく、TR3はTR4よりも大きくてよい。
【0110】
以上、本発明に係るタイヤ10について詳細に説明した。しかし、本発明は上記の例に限定されるものではなく、実施例の様々な変形が可能である。上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的かつ例示的に記載されている以外の方法で実施されてもよいことを理解されたい。
【0111】
さらに、本明細書で提供される本発明の説明に照らして、本発明の変形形態が可能である。特定の代表的な実施形態および詳細を、本発明を例示する目的で示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、以下の添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の完全に意図された範囲内にある、記載された特定の実施例において変更がなされ得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3