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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】浸漬式周期的リブレット
(51)【国際特許分類】
   F15D 1/12 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F15D1/12
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020139848
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2021113607
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】16/547,304
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504242618
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン アール スミス
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジェイムズ ヤグル
(72)【発明者】
【氏名】ポール ダグラス マクルーア
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519591(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017206968(DE,A1)
【文献】特表2002-514500(JP,A)
【文献】米国特許第04907765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15D 1/00- 1/14
B64C 21/10;23/06; 1/12
B63B 1/34
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗を減少させる方法であって、
物理的物体の第1の部分上に滑らかな表面を形成するステップを含み、
前記物理的物体の前記第1の部分は、移行表面をさらに有し、
前記物理的物体の前記第1の部分の前記移行表面と前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面とのなす角度は、90°から179°までの範囲内にあり、
前記物理的物体の第2の部分上に周期的リブレットを形成するステップを含み、
前記物理的物体の前記第2の部分は、前記物理的物体の前記第1の部分に隣接して位置し、
前記物理的物体の前記第2の部分の前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面の平面の下方に押し下げられ、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、
第1の方向に見て、前記物理的物体の前記第1の部分の前記移行表面のところで終端しており、
同一長さを有し、
前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面と同じ長さであり、
0.002インチ(0.0508mm)未満の最大高さを有し、
0.004インチ(0.1016mm)未満の最大幅を有し、かつ、
流れ方向に平行に延び、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山は、前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面の前記平面の下方の高さ位置にあり、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山相互間の距離は、一定であり、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山は、90°の角度をなし、かつ、
前記周期的リブレットのうちの隣り合うリブレット相互間の各谷は、90°の角度をなしており、
前記物理的物体の第3の部分上に滑らかな表面を形成するステップを含み、
前記物理的物体の第3の部分は、移行表面をさらに有し、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記物理的物体の前記第1の部分から前記物理的物体の前記第3の部分まで及んでおり、かつ、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記第1の方向と逆の第2の方向に見て、前記物理的物体の前記第3の部分の前記移行表面のところで終端しており、
流れを前記物理的物体の前記第2の部分の前記周期的リブレット上にかつ前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面上に発生させるステップを含み、前記周期的リブレットのうちの各リブレットの長さは、前記流れの方向に平行に延びる、方法。
【請求項2】
前記物理的物体は、以下のもの、すなわち、
航空機、
船舶、
乗り物、
パイプライン、
風車、および
飛翔体のうちの1つと関連している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
物理的物体であって、
滑らかな表面を備えた第1の部分を有し
前記物理的物体の前記第1の部分は、移行表面をさらに有し、
前記物理的物体の前記第1の部分の前記移行表面と前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面とのなす角度は、90°から179°までの範囲内にあり、
周期的リブレットを備えた第2の部分を有し、
前記物理的物体の前記第2の部分は、前記物理的物体の前記第1の部分に隣接して位置し、
前記物理的物体の前記第2の部分の前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面の平面の下方に押し下げられ
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、
第1の方向に見て、前記物理的物体の前記第1の部分の前記移行表面のところで終端しており、
同一長さを有し、
前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面と同じ長さであり、
0.002インチ(0.0508mm)未満の最大高さを有し、
0.004インチ(0.1016mm)未満の最大幅を有し、かつ、
流れ方向に平行に延び、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山は、前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面の前記平面の下方の高さ位置にあり、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山相互間の距離は、一定であり、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山は、90°の角度をなし、かつ、
前記周期的リブレットのうちの隣り合うリブレット相互間の各谷は、90°の角度をなしており、
滑らかな表面を備えた第3の部分を有し、
前記物理的物体の第3の部分は、移行表面をさらに有し、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記物理的物体の前記第1の部分から前記物理的物体の前記第3の部分まで及んでおり、かつ、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記第1の方向と逆の第2の方向に見て、前記物理的物体の前記第3の部分の前記移行表面のところで終端している、物理的物体。
【請求項4】
前記物理的物体は、以下のもの、すなわち、
航空機、
船舶、
乗り物、
パイプライン、
風車、および
飛翔体のうちの1つと関連している、請求項記載の物理的物体。
【請求項5】
物理的物体を製造する方法であって、
物理的物体の第1の部分上に滑らかな表面を形成するステップを含み
前記物理的物体の前記第1の部分は、移行表面をさらに有し、
前記物理的物体の前記第1の部分の前記移行表面と前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面とのなす角度は、90°から179°までの範囲内にあり、
前記物理的物体の第2の部分上に周期的リブレットを形成するステップを含み
前記物理的物体の前記第2の部分は、前記物理的物体の前記第1の部分に隣接して位置し、
前記物理的物体の前記第2の部分の前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面の平面の下方に押し下げられ
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、
第1の方向に見て、前記物理的物体の前記第1の部分の前記移行表面のところで終端しており、
同一長さを有し、
前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面と同じ長さであり、
0.002インチ(0.0508mm)未満の最大高さを有し、
0.004インチ(0.1016mm)未満の最大幅を有し、かつ、
流れ方向に平行に延び、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山は、前記物理的物体の前記第1の部分の前記滑らかな表面の前記平面の下方の高さ位置にあり、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山相互間の距離は、一定であり、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットの各山は、90°の角度をなし、かつ、
前記周期的リブレットのうちの隣り合うリブレット相互間の各谷は、90°の角度をなしており、
前記物理的物体の第3の部分上に滑らかな表面を形成するステップを含み、
前記物理的物体の第3の部分は、移行表面をさらに有し、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記物理的物体の前記第1の部分から前記物理的物体の前記第3の部分まで及んでおり、かつ、
前記周期的リブレットのうちの各リブレットは、前記第1の方向と逆の第2の方向に見て、前記物理的物体の前記第3の部分の前記移行表面のところで終端している、方法。
【請求項6】
前記物理的物体は、以下のもの、すなわち、
航空機、
船舶、
乗り物、
パイプライン、
風車、および
飛翔体のうちの1つと関連している、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、すなわち本発明は、一般に、リブレット、特に浸漬される周期的リブレット(浸漬式周期的リブレット)に関する。
【背景技術】
【0002】
流体(例えば、空気または水)を通って動く物体(例えば、航空機または船舶)は、抗力または抵抗を受ける。物体の受ける抗力の増加により、物体が流体を通って動くのに必要なエネルギーが増大する。例えば、設定された速度で動く航空機の受ける抗力の増加により、航空機が同じ設定された速度で空気を通って動くのに必要な動力が増大する。かくして、抗力は、航空機用燃料の消費量および航空機の飛行範囲について相当大きな影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態によれば、抵抗を減少させる方法は、物理的物体の第1の部分上に滑らかな表面を形成するステップを含む。本方法は、物理的物体の第2の部分上に周期的リブレットを形成するステップをさらに含む。物理的物体の第2の部分は、物理的物体の第1の部分に隣接して位置する。物理的物体の第2の部分の周期的リブレットのうちの各リブレットは、物理的物体の第1の部分の滑らかな表面の平面の下方に押し下げられる。本方法は、流れを物理的物体の第2の部分の周期的リブレット上にかつ物理的物体の第1の部分の滑らかな表面上に発生させるステップをさらに含む。周期的リブレットのうちの各リブレットの長さは、流れの方向に平行に延びる。
【0004】
別の実施形態によれば、物理的物体は、滑らかな表面を備えた第1の部分を有する。本物理的物体は、周期的リブレットを備えた第2の部分をさらに有する。物理的物体の第2の部分は、物理的物体の第1の部分に隣接して位置する。物理的物体の第2の部分の周期的リブレットのうちの各リブレットは、物理的物体の第1の部分の滑らかな表面の平面の下方に押し下げられる。
【0005】
さらに別の実施形態によれば、物理的物体を製造する方法は、物理的物体の第1の部分上に滑らかな表面を形成するステップを含む。本方法は、物理的物体の第2の部分上に周期的リブレットを形成するステップをさらに含む。物理的物体の第2の部分は、物理的物体の第1の部分に隣接して位置する。物理的物体の第2の部分の周期的リブレットのうちの各リブレットは、物理的物体の第1の部分の滑らかな表面の平面の下方に押し下げられる。
【0006】
本発明の技術的利点は、以下のうちの1つまたは2つ以上を含むことができる。物理的物体への浸漬式リブ付き表面の使用により、滑らかな表面を備えた物理的物体と比較して、物理的物体の受ける全体的抵抗(これは、圧力抵抗および粘性抵抗を含む)が減少し、それにより物体が流体(例えば、気体または液体)を通って動くのに必要な動力が少なくなるので燃料費を著しく減少させることができる。浸漬式リブ付き表面を用いる物理的物体、例えば航空機の受ける抵抗減少はまた、滑らかな表面を備えた物理的物体と比較して物理的物体の飛行範囲(すなわち、航空機が離陸と着陸との間で飛行することができる最大距離)を増大させることができる。ある特定の実施形態では、抵抗減少により、推進入力が一定の場合により高い最大速度を得ることができる。幾つかの実施形態では、浸漬式周期的リブレットは、乱流境界層に隣接して位置する高温または低温の表面上における熱伝達量を減少させることができ、それにより特定の用途に必要な断熱材を減少させることができる。浸漬式周期的リブレットの使用は、かかる高温または低温の表面からの乱流境界層中の流れの分離を遅延させまたは阻止することができ、それにより空気力学的抵抗を減少させ、物理的物体(例えば、航空機翼)に加わる揚力を増大させるとともに/あるいは推進システムの性能を向上させることができる。
【0007】
他の技術的利点は、以下の図、説明、および特許請求の範囲の記載から当業者には容易に明らかであろう。さらに、特定の利点を上記において列挙したが、種々の実施形態は、列挙した利点のうちの全て、何割かを含む場合があり、またはこれらを全く含まない場合がある。
【0008】
本発明の理解を助けるため、次に、添付の図面と関連して行われる以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】例示の実施形態にしたがって浸漬式周期的リブレットを備えた物理的物体を示す図である。
図1B】例示の実施形態にしたがって図1Aの物理的物体の縦断面を示す図である。
図2A】例示の実施形態にしたがって突出したリブレットパターンの横断面を示す図である。
図2B】例示の実施形態にしたがって浸漬式リブレットパターンの横断面を示す図である。
図3A】例示の実施形態にしたがって突出したリブレットパターンを有する物理的物体と関連した圧力出力パターンを示す図である。
図3B】例示の実施形態にしたがって浸漬式リブレットパターンを有する物理的物体と関連した圧力出力パターンを示す図である。
図4】突出したリブレットパターンを有する物理的物体によって生じる抵抗を例示の実施形態にしたがって浸漬式リブレットパターンを有する物理的物体と比較した棒グラフ図である。
図5】例示の実施形態にしたがって、浸漬式リブレットパターンを用いて表面上の抵抗を減少させる例示の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、物理的物体であって、これら物理的物体の表面上の抵抗(これは、圧力抵抗および摩擦抵抗を含む)を減少させるために使用できる浸漬式周期的リブレットを有する物理的物体に関する。リブレットは、物理的物体(例えば、乗り物)の表面に設けられた極めて小さい(例えば、深さ1インチ(2.54cm)の1/100未満)溝またはチャネルである。リブレットは、流れの方向に平行に延びる。浸漬式周期的リブレットは、物理的物体の滑らかな表面の下方に浸漬されるリブレットを備えた領域である。浸漬式周期的リブレットを有する領域に続き、滑らかな表面の短い区分が続く場合がある。この中間パターンは、物理的物体の表面の長さにわたって繰り返される場合がある。
【0011】
物理的物体の表面の上方に突出した従来型リブレットが壁近傍乱流構造体を抑止することによって抵抗を減少させるが、従来型リブレットはまた、湿潤領域を増大させる。本明細書において開示される浸漬式周期的リブレットの技術的思想は、乱流構造体の減衰がリブレット区分の端を越えて続き、それによりリブレットおよび滑らかな領域上の抵抗が減少するという事実を利用している。滑らかな領域とリブレットの領域を交互に配置して湿潤領域を減少させることによって抵抗が減少する。リブレットを浸漬させることにより、突出した周期的または可変高さリブレットと比較して、滑らかな表面とリブレット表面との移行領域の圧力抵抗が減少する。したがって、本発明の実施形態は、突出した周期的リブレットと比較して、周期的リブレットという技術的思想の圧力抵抗による不利益を減少させるために浸漬式周期的リブレットを使用する。
【0012】
図1図5は、浸漬される周期的リブレット(浸漬式周期的リブレット)と関連した例示の装置および方法を示している。図1Aは、浸漬式周期的リブレットを備えた例示の物理的物体を示し、図1Bは、図1Aの物理的物体の例示の縦断面を示している。図2Aは、突出したリブレットパターンの例示の断面を示し、図2Bは、浸漬式リブレットパターンの例示の断面を示している。図3Aは、突出したリブレットパターンを有する物理的物体と関連した例示の圧力出力パターンを示し、図3Bは、浸漬式リブレットパターンを有する物理的物体と関連した例示の圧力出力パターンを示している。図4は、突出したリブレットパターンを有する物理的物体によって生じる抵抗を浸漬式リブレットパターンを有する物理的物体と比較した例示の棒グラフ図を示している。図5は、浸漬式リブレットパターンを用いて表面上の抵抗を減少させる例示の方法を示している。
【0013】
図1Aは、浸漬式周期的リブレット110を有する例示の物理的物体100を示している。浸漬式周期的リブレット110を備えた物理的物体100を用いると、浸漬式周期的リブレット110なしの物理的物体または突出した周期的リブレット(例えば、図2Aの突出したリブレット212)を備えた物理的物体100と比較して、表面上の全体的抵抗(例えば、空気力学的抵抗または流体力学的抵抗)を減少させることができる。物理的物体100の1つまたは2つ以上の部分を鋼、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、プラスチック、ガラス繊維、これらの組み合わせ、または任意他の適当な材料で作ることができる。
【0014】
物理的物体100は、抵抗(例えば、表皮摩擦抵抗および圧力抵抗)の影響をうける任意の物体である。例えば、物理的物体100は、航空機(例えば、飛行機、ヘリコプター、小型飛行船、ドローンなど)の一コンポーネント(例えば、外側本体の一部分)、船舶(例えば、貨物船、乗客船、カヌー、ラフトなど)の一コンポーネント、モーター付き乗り物(例えば、トラック、自動車、列車、スクーターなど)の一コンポーネント、モーター付きではない乗り物(例えば、自転車、スケートボードなど)の一コンポーネント、宇宙航空機(例えば、宇宙船、衛星など)の一コンポーネント、風車、飛翔体(例えば、ミサイル)、または抵抗を受けることができる任意他の物理的物体であるのが良い。ある特定の実施形態では、抵抗は、周囲の流体(例えば、空気)に対して動いている物理的物体100(例えば、航空機の翼)の相対運動とは逆に作用する力によって生じる。幾つかの実施形態では、抵抗は、気体の粘度によって生じる。ある特定の実施形態では、抵抗は、物理的物体100(例えば、パイプまたはダクトの一区分)の表面の近くに位置する流体(例えば、水)の粘度に起因して生じる。
【0015】
図1Aの物理的物体100は、第1の部分120、第2の部分130、および第3の部分140を有する。第1の部分120は、滑らかな表面122を有し、第2の部分130は、リブ付きの表面132を有し、第3の部分140は、滑らかな表面142を有する。ある特定の実施形態では、第1の部分120の滑らかな表面122および/または第3の部分140の滑らかな表面142は、平坦である。幾つかの実施形態では、第1の部分120の滑らかな表面122および/または第3の部分140の滑らかな表面142は、曲率を有する場合がある。図1Aの例示の実施形態では、物理的物体100の第1の部分120の滑らかな表面122は、物理的物体100の第3の部分140の滑らかな表面142と同一の平面(例えば、図1Bの平面180)に沿って位置する。物理的物体100の第2の部分130は、浸漬式周期的リブレット110を有する。第2の部分の浸漬式周期的リブレット110は、リブ付きの表面132を形成する。
【0016】
物理的物体100の第2の部分130の浸漬式周期的リブレット110は、物理的物体100の第1の部分120から物理的物体100の第3の部分140まで及んでいる。物理的物体100の各浸漬式周期的リブレット110は、第1の部分120の滑らかな表面122の平面の下に押し下げられており、その結果、物理的物体100から遠ざかる方向に第1の部分120の滑らかな表面122のこの平面を越えて延びるようになって各浸漬式周期的リブレットの部分は存在しないようになっている。
【0017】
各浸漬式周期的リブレット110は、山112を有する。各浸漬式周期的リブレット110の各山112は、滑らかな表面122の平面の最も近くに位置する浸漬式周期的リブレット110の外面に沿う場所(例えば、点、平面、隆起部など)である。図1Aの例示の実施形態では、浸漬式周期的リブレット110の山112は、物理的物体100の滑らかな表面122の平面に達する。幾つかの実施形態では、1つまたは2つ以上の浸漬式周期的リブレット110の1つまたは2つ以上の山112は、とがった先端部を形成する場合がある。幾つかの実施形態では、1つまたは2つ以上の浸漬式周期的リブレット110の1つまたは2つ以上の山112は、平坦なまたは丸形の山表面を形成する場合がある。
【0018】
隣り合う浸漬式周期的リブレット110の交差部は、谷114を形成している。隣り合う浸漬式周期的リブレット110相互間の各谷114は、滑らかな表面122の平面から最も遠くに位置する浸漬式周期的リブレット110の外面に沿う点である。図1Aの例示の実施形態では、浸漬式周期的リブレット110の谷114は、物理的物体100の滑らかな表面122の下方に配置されている。幾つかの実施形態では、浸漬式周期的リブレット110は、隣り合う浸漬式周期的リブレット110が交差することがないよう互いに間隔を置いて配置されるのが良い。例えば、各浸漬式周期的リブレット110相互間の各谷114は、平坦なまたは丸形の谷表面である場合がある。ある特定の実施形態では、1つまたは2つ以上の浸漬式周期的リブレット110の1つまたは2つ以上の谷114は、とがった先端部を形成する場合がある。
【0019】
図1Aの物理的物体100は、浸漬式周期的リブレット110、山112、谷114、第1の部分120、滑らかな表面122、第2の部分130、リブ付き表面132、第3の部分140、および滑らかな表面142について特定の数を示しているが、本発明は、任意適当な数の浸漬式周期的リブレット110、山112、谷114、第1の部分120、滑らかな表面122、第2の部分130、リブ付き表面132、第3の部分140、および滑らかな表面142を想定している。例えば、図1Aの物理的物体100は、滑らかな表面142を備えた第3の部分140に隣接して位置する浸漬式リブ付き表面を備えた第4の部分を有することができる。
【0020】
図1Aの物理的物体100は、浸漬式周期的リブレット110、山112、谷114、第1の部分120、滑らかな表面122、第2の部分130、リブ付き表面132、第3の部分140、および滑らかな表面142について特定の配置状態を示しているが、本発明は、浸漬式周期的リブレット110、山112、谷114、第1の部分120、滑らかな表面122、第2の部分130、リブ付き表面132、第3の部分140、および滑らかな表面142の任意適当な配置状態を想定している。例えば、第3の部分140の滑らかな表面142は、第1の部分120の滑らかな表面122とは異なる平面のところに位置することができる。もう一つの例として、浸漬式周期的リブレット110の山112は、第1の部分120の滑らかな表面122の平面の下方に引っ込められるのが良い。
【0021】
図1Bは、図1Aの物理的物体100の例示の長手方向縦断面150を示している。図1Bの縦断面150は、第1の部分120の表面122、第2の部分130の谷114、および第3の部分140の滑らかな表面142を切断して示したものである。物理的物体100の第1の部分120は、長さL1を有し、物理的物体100の第2の部分130は、長さL2を有し、物理的物体100の第3の部分140は、長さL3を有する。図1Bの例示の実施形態では、第2の部分130の各浸漬式周期的リブレット110は、ほぼ(10パーセント以内の)同一の長さL2を有する。幾つかの実施形態では、第2の部分130の1つまたは2つ以上の浸漬状態の周期的リブレット110は、互いに異なる長さを有しても良い。
【0022】
図1Bの例示の実施形態では、第1の部分120の長さL1は、第2の部分130の長さL2とほぼ同一である、第3の部分140の長さL3は、第2の部分130の長さL2とほぼ同一である。図1Bの例示の実施形態における長さL1、長さL2、および長さL3は、ほぼ同一の長さであるが、長さL1、長さL2、および長さL3は、任意適当な長さであって良い。例えば、長さL1、長さL2、および長さL3は、2倍だけばらつきがあって良い。
【0023】
物理的物体100の浸漬式周期的リブレット110の長さL2は、流れ方向155に平行に延びている。例えば、物理的物体100は、航空機の翼であるのが良く、物理的物体100の浸漬式周期的リブレット110の長さL2は、航空機が飛行状態にあるとき、航空機により生じる流れ方向155に平行に延びるのが良い。図1Bの例示の実施形態では、浸漬式周期的リブレット110の山112は、物理的物体100の滑らかな表面122の平面180と同一高さに位置する。
【0024】
物理的物体100の第1の部分120は、移行表面160を有する。物理的物体100の第1の部分120の移行表面160と物理的物体100の第1の部分120の滑らかな表面122とのなす角度170は、90°から179°までの範囲内(例えば、170°)にある。各浸漬周期的リブレット110は、第1の方向に見て、物理的物体100の第1の部分120の移行表面160で終端している。物理的物体100の第3の部分140は、移行表面162を有する。物理的物体100の第3の部分140の移行表面162と物理的物体100の第3の部分140の滑らかな表面142とのなす角度172は、90°から179°までの範囲内(例えば、170°)にある。各浸漬周期的リブレット110は、第1の方向と逆の第2の方向に見て、物理的物体100の第3の部分140の移行表面162のところで終端している。
【0025】
ある特定の実施形態では、第1の部分120の滑らかな表面122、第2の部分130の浸漬式周期的リブレット110、および第3の部分140の滑らかな部分142によってつくられる間欠的パターンは、所定の長さに沿って繰り返す。例えば、この間欠的パターンは、飛行機翼の幅に沿って繰り返すのが良い。長さL1、長さL2、および長さL3は、物理的物体100の各部分相互間の移行表面の中心から測定される。例えば、図1Bに示されているように、長さL2は、物理的物体100の滑らかな表面122の平面180に沿って移行表面160の中心から移行表面162の中心まで測定される。
【0026】
図2Aは、突出したリブレットパターン210の例示の断面200を示している。突出リブレットパターン210は、隣接の表面の平面の上方に突き出た突出リブレット212のパターンである。例えば、図1Aの例示の実施形態を参照すると、突出リブレット212は、物理的物体100の第1の部分120の滑らかな表面122の平面の上方に配置され、その結果、隣り合う突出リブレット212相互間の各谷216が物理的物体100の第1の部分120の滑らかな表面122の平面に沿って配置されるようになっているのが良い。突出リブレット212のリブ付き表面を有する物理的物体(例えば、図1の物理的物体100)は、動的(例えば、空気力学的または流体力学的)流れを受けたときに、滑らかな表面を有する同等な物理的物体よりも受ける摩擦抵抗が小さい。しかしながら、突出リブレットパターン210の幾何学的形状に起因して、突出リブレット212のリブ付き表面を有する物理的物体は、動的流れを受けたときに、滑らかな表面を有する同等な物理的物体よりも受ける圧力抵抗が高い。
【0027】
図2Aの例示の実施形態では、突出リブレットパターン210は、ベースライン220の上方に突き出ている。ベースライン220は、隣接の表面(例えば、図1Aの滑らかな表面122)の平面に相当する。図2Aの突出リブパターン210は、のこ歯パターンである。突出リブレットパターン210の各突出リブレット212は、山214を有する。各突出リブレット212の山214のベースライン220に対する高さは、0.002インチ(0.0508mm)未満である。幾つかの実施形態では、各突出リブレット212の各山214の高さは、0.001インチ(0.0254mm)から0.002インチ(0.0508mm)までの範囲内(例えば、0.0018インチ(0.0457mm))にあるのが良い。各突出リブレット212の各山214は、角度230をなしている。角度230は、45°から135°までの範囲内にあるのが良い。図2Aの例示の実施形態では、角度230は、90°である。ある特定の実施形態では、各突出リブレット212は、断面200のベースライン220に垂直でありかつこの上方に配置された二次元(2D)の薄型板状のリブレットであるのが良い。2D薄型板状リブレットは、一連のチャネルを作るのが良く、薄いブレードがチャネル壁を構成している。
【0028】
突出リブレットパターン210の隣り合う突出リブレット212は、谷216を形成している。各突出リブレット212の各谷216は、ベースライン220のところに配置されている。各谷216は、角度240をなしている。角度240は、45°から135°までの範囲内にあるのが良い。図2Aの例示の実施形態では、角度240は、90°である。幾つかの実施形態では、1つまたは2つ以上の谷216がベースライン220の上方に配置されるのが良い。例えば、各突出リブレット212の各谷216は、ベースライン220よりも0.0002インチ(0.00508mm)上方に配置されるのが良い。
【0029】
横断面200の各突出リブレット212は、寸法、形状、および/またはベースライン220に対する向きがほぼ同一であるのが良い。図2Aの図示の実施形態では、突出リブレットパターン210の各突出リブレット212は、2つの側部242および基部244を有する三角形の形をしている。各突出リブレット262の各側部242は、0.004インチ(0.1016mm)未満の長さを有する。ある特定の実施形態では、突出リブレットパターン210の各突出リブレット212の各側部242の長さは、0.002インチ(0.0508mm)から0.003インチ(0.0762mm)までの範囲内(例えば、0.0025インチ(0.0635mm))にある。各突出リブレット212の各基部244は、0.005インチ(0.1270mm)未満の長さを有する。ある特定の実施形態では、突出リブレットパターン210の各突出リブレット212の各基部244の長さは、0.003インチ(0.0762mm)から0.004インチ(0.1016mm)までの範囲内(例えば、0.0035インチ(0.0889mm))にある。
【0030】
図2Aの断面200は、突出リブレット212、山214、および谷216について特定の数を示しているが、本発明は、任意適当な数の突出リブレット212、山214、および谷216を想定している。例えば、図2Aの突出リブレットパターン210は、8個以上または6個以下の突出リブレット212を有することができる。図2Aの断面200は、リブレット212、山214、および谷216について特定の配置状態を示しているが、本発明は、突出リブレット212、山214、および谷216について任意適当な配置状態を想定している。例えば、図2Aの2つまたは3つ以上の突出リブレット212は、互いに異なる寸法、形状、および/またはベースライン220に対する向きを有することができる。もう1つの例として、2つまたは3つ以上の突出リブレット212の2つまたは3つ以上の山214は、ベースライン220よりも上方に互いに異なる高さを有することができる。さらにもう1つの例として、1つまたは2つ以上の突出リブレット212の1つまたは2つ以上の山214および/または谷216は、丸形または平坦であるのが良い。さらに別の例として、側部242および基部244の長さは、二等辺三角形を形成するよう同一であるのが良い。
【0031】
図2Aの断面200に示されているように、突出リブレットパターン210を用いる物理的物体の幾何学的形状により、滑らかな表面と比較して、湿潤面積が増大する。したがって、突出リブレットパターン210を備えた物理的物体が動的流れを受けたときに受ける摩擦抵抗は、滑らかな表面を有する同等な物理的物体よりも大きいが、圧力抵抗は、流れ方向における投影面積の増大に起因して増大する。
【0032】
図2Bは、浸漬式リブレットパターン260の例示の断面250を示している。浸漬式リブレットパターン260は、隣接の表面の平面(例えば、図1Bの平面180)の下方に配置された、繰り返して位置する浸漬式リブレットのパターンである。例えば、浸漬式周期的リブレット262は、図1Aの物理的物体100の第1の部分120の滑らかな表面122の平面の下方に配置された浸漬式状態の周期的リブレット110に相当するのが良い。浸漬式リブレットパターン260を用いる浸漬式リブ付き表面を備えた物理的物体は、動的流れを受けたときに受ける摩擦抵抗は、滑らかな表面を有する同等な物理的物体よりも低い。浸漬式リブレットパターン260を用いる浸漬式リブ付き表面を備えた物理的物体は、動的流れを受けたときに受ける圧力抵抗は、滑らかな表面を有する同等な物理的物体よりも高いが、浸漬式リブレットパターン260によって生じる摩擦抵抗は、図2Aの突出リブレットパターン210により生じる圧力抵抗よりも著しく小さい。
【0033】
図2Bの例示の実施形態では、浸漬式リブレットパターン260は、ベースライン270の下方に浸漬されている。ベースライン270は、隣接の表面(例えば、図1Aの滑らかな表面122)の平面に相当する。図2Bの浸漬式リブレットパターン260は、のこ歯パターンである。浸漬式リブレット260の各浸漬式リブレット262は、山264を有する。各浸漬式リブレット262の各山264は、ベースライン220のところに配置されている。各山264は、角度280を形成している。角度280は、45°から135°までの範囲内にあるのが良い。図2Bの例示の実施形態では、角度280は、90°である。
【0034】
浸漬リブレットパターン260の隣り合う浸漬リブレット262は、谷266を形成している。各浸漬リブレット262の各谷266は、ベースライン270に対する深さが0.002インチ(0.0508mm)未満である。ある特定の実施形態では、各浸漬リブレット262の各谷266の深さは、0.001インチ(0.0254mm)から0.002インチ(0.0508mm)までの範囲内(例えば、0.0018インチ(0.0457mm))にあるのが良い。各浸漬リブレット262の各谷266は、角度290を形成している。角度290は、45°から135°までの範囲内にあるのが良い。図2Bの図示の実施形態では、角度290は、90°である。ある特定の実施形態では、各浸漬リブレット262は、横断面250のベースライン270に垂直でありかつこの下方に配置された二次元(2D)の薄型板状のリブレットであるのが良い。2D薄型板状リブレットは、一連のチャネルを作るのが良く、薄いブレードがチャネル壁を構成している。
【0035】
横断面250の各浸漬式リブレット262は、寸法、形状、および/またはベースライン220に対する向きがほぼ同一であるのが良い。図2Bの例示の実施形態では、浸漬式リブレットパターン260の各浸漬式リブレット262は、2つの側部292および基部294を有する三角形の形をしている。各浸漬式リブレット262の各側部292は、0.004インチ(0.1016mm)未満の長さを有する。ある特定の実施形態では、浸漬式リブレットパターン260の各浸漬式リブレット262の各側部292の各長さは、0.002インチ(0.0508mm)から0.003インチ(0.0762mm)までの範囲内(例えば、0.0025インチ(0.0635mm))にある。各浸漬式リブレット262の各基部294は、0.005インチ(0.1270mm)未満の長さを有する。ある特定の実施形態では、浸漬式リブレットパターン260の各浸漬式リブレット262の各基部294の長さは、0.003インチ(0.0762mm)から0.004インチ(0.1016mm)までの範囲内(例えば、0.0035インチ(0.0889mm))にある。
【0036】
浸漬式リブレット262の寸法は、浸漬式リブレットパターン260の用途で決まる。例えば、各浸漬式リブレット262の寸法は、流体の速度、流体の粘度および/または密度、物体(例えば、図1の物理的物体100)の縮尺などで決まる場合がある。ある特定の用途では、浸漬式リブレット262は、深さが1インチの1/100未満である。高粘性流体(例えば、油)に関し、浸漬式リブレット262は、深さが1インチの1/100を超えるのが良い。ある特定の実施形態では、浸漬式リブレット262は、乱流壁面スケール変更を用いて寸法決めされるのが良い。例えば、浸漬式リブ262は、以下の公式、すなわち、無次元スケール変更h+=(高さ)×sqrt((密度)×(壁剪断応力))/(粘度)にしたがって寸法決めされるのが良く、上式においてh+は、5~16の値に設定されるのが良い。別の一例として、浸漬式リブレット262は、以下の公式、すなわち、無次元スパン方向離隔距離s+=(スパン方向間隔)×sqrt((密度)×(壁剪断応力))/(粘度)にしたがって寸法決めされるのが良く、上式においてs+は、8~25の範囲に設定されるのが良い。
【0037】
図2Bの断面250は、浸漬式リブレット262、山264、および谷266について特定の数を示しているが、本発明は、任意適当な数の浸漬式リブレット262、山264、および谷266を想定している。例えば、図2Bの浸漬式リブレットパターン260は、8個以上または6個以下の浸漬式リブレット262を有することができる。図2Bの断面250は、浸漬式リブレット262、山264、および谷266について特定の配置状態を示しているが、本発明は、浸漬式リブレット262、山264、および谷266について任意適当な配置状態を想定している。例えば、図2Bの2つまたは3つ以上の浸漬式リブレット262は、互いに異なる寸法、形状、および/または向きを有することができる。もう1つの例として、隣り合う浸漬式リブレット262相互間の2つまたは3つ以上の谷266は、ベースライン270の下方に互いに異なる深さを有することができる。さらにもう1つの例として、2つまたは3つ以上の浸漬式リブレット262の2つまたは3つ以上の山264は、ベースライン270の下方に配置されるのが良い。さらに別の例として、1つまたは2つ以上の浸漬式リブレット262の側部292および基部294の長さは、二等辺三角形を形成するよう同一であるのが良い。
【0038】
図3Aは、突出リブレットパターン340(例えば、図2Aの突出リブレットパターン210)と関連した例示の圧力パターン300を示している。圧力パターン300は、物理的物体(例えば図1Aの物理的物体100)を表す小規模構造体310のシミュレーションを用いて作られたものである。シミュレーションは、スパン方向および流れ方向の広がりが制限された状態の低レイノルズ数チャネルで実施された。図3Aに示されている圧力勾配の効果をチャネル流れ中のリブレット形態の高分解能コンピュータ計算ラージエディシミュレーション(large eddy simulation )から評価した。シミュレーションは、突出リブレットパターンを有する表面上の流体(例えば、液体または気体)の流れを模倣している。流れ方向305は、突出リブレットパターン340の突出リブレットに平行である。シミュレーションの出力は、圧力パターン300として図3Aに表示されている。
【0039】
圧力パターン300の構造体310は、図1Aの滑らかな表面122,142と類似した滑らかな表面320を有する。圧力パターン300の構造体310は、滑らかな表面320の上方に突き出た突出リブ付きまたはリブレット表面330を有する。突出リブ付き表面330は、突出リブレットパターン340を形成している。図3Aの例示の実施形態では、突出リブレットパターン340は、図2Aの突出リブレットパターン210に類似したのこ歯パターンである。
【0040】
図3Aの圧力パターン300は、シミュレーションによって生じるような時間平均圧力係数(Cp)の分布状態を示している。Cpは、局所圧力と自由流れ圧力との差と、自由流れ領域における動圧の比として定義される無次元パラメータである。Cp値がゼロであるということは、特定の点のところの圧力が自由流れ圧力と同一であることを示し、Cp値が1であることは、よどみ点であることを示し、Cp値がゼロ未満であることは、局所速度が自由流れ速度よりも大きいことを示している。図3Aの例示の実施形態では、Cpは、所定の時間の長さにわたってとられた時間平均圧力を表している。Cpは、図3Aの実施形態では、グレースケールとしてあらわされている。最も小さいCp値(すなわち、-0.040)は、グレースケールでは最も暗い陰影であり、もっと大きいCp値(すなわち、0.040)は、グレースケールでは最も明るい陰影である。したがって、グレースケールは、Cp値が増大するにつれて陰影が明るくなっている。
【0041】
図3Aの圧力出力パターン300におけるグレー(灰色)の互いに異なる陰影によって示されているように、突出リブレットパターン340は、-0.040から0.040までの範囲にわたるCp値のうちの大きな変動値を生じさせる。最も大きなCp値は、流れが流れ方向305において滑らかな表面320から突出リブ付き表面330まで移動しているときに滑らかな表面320と突出リブ付き表面330との間の前方に向いた移行領域344に生じる。最も小さなCp値は、流れが流れ方向305において突出リブ付き表面330から滑らかな表面320に移動しているときに滑らかな表面320と突出リブ付き表面330との間の後方に向いた移行領域346に生じる。浸漬リブレットパターンは、図3B中において以下に記載されているように、構造体の表面上により一定の圧力を生じさせることによってこれらの圧力差を軽減する。
【0042】
図3Bは、浸漬式リブレットパターン390(例えば、図2Bの浸漬式リブレットパターン260)と関連した例示の圧力パターン350を示している。圧力パターン350は、図3Aの同一のシミュレーション技術を用いて作られたものである。流れ方向355は、浸漬式リブレットパターン390の浸漬式リブレットに平行である。シミュレーションの出力は、圧力パターン350として図3Bに表示されている。
【0043】
圧力パターン350の構造体360は、図1Aの滑らかな表面122,142と類似した滑らかな表面370を有する。圧力パターン350の構造体360は、滑らかな表面370の平面の下方に引っ込められた浸漬リブ付き表面380を有する。浸漬リブ付き表面380は、浸漬リブレットパターン390を形成している。図3Bの図示の実施形態では、浸漬リブレットパターン390は、図2Bの浸漬リブレットパターン260に類似したのこ歯パターンである。
【0044】
図3Bの圧力出力パターン350内のグレー(灰色)の互いに異なる陰影によって示されているように、浸漬式リブレットパターン390は、-0.016から0.016までの範囲にわたるCp値のうちの小さな変動値を生じさせる。ほぼ0.008の正のCp値は、浸漬式リブ付き表面380に沿って作られ、ほぼ-0.008の負のCp値は、滑らかな表面370に沿って作られる。したがって、図3Bに示された浸漬式リブレットパターン390は、構造体360の表面上により一定の圧力を生じさせることによって図3Aの圧力パターン300に示された圧力差を軽減する。
【0045】
図4は、突出リブレットパターンを有する物理的物体によって生じる抵抗を、浸漬式リブレットパターンを有する物理的物体と比較する例示の棒グラフ図400を示している。圧力抵抗および粘性抵抗増分は、スパン方向において一定の横断面積を備えたチャネル内の流れのコンピュータ計算ラージエディシミュレーションにおいて力の時間平均値から計算される。周期的境界条件が無限スパンの2Dチャネル流れに近似するようスパン方向に適用される。シミュレーションは、チャネルの一方の壁上の滑らかな表面および反対側のチャネル壁上のリブレット壁を含む。滑らかな壁とリブレット壁との抵抗成分の差は、図4に示された増分をもたらす。
【0046】
棒グラフ図400は、突出リブレットパターン410および浸漬式リブレットパターン420についての抵抗差を含む。突出リブレットパターン410は、図2Aの突出リブレットパターン210と等価である。浸漬式リブレットパターン410は、図2Bの浸漬式リブレットパターン260と等価である。突出リブレットパターン410および浸漬式リブレットパターン420に対する抵抗は、リブレットのない滑らかな表面により生じる抵抗から百分率の差として測定される。圧力抵抗差、摩擦(例えば、粘性)抵抗差、および全抵抗差が棒グラフ図400に提供されている。
【0047】
突出リブレットパターン410は、図4の棒グラフ図400に示されているように、正の7パーセントのパーセント圧力抵抗差412を生じさせ、このことは、突出リブレットパターン410が滑らかな表面によって生じる無視できるほどの圧力抵抗よりも7パーセント高い圧力抵抗を生じさせることを示している。突出リブレットパターン410は、負の5パーセントのパーセント粘性抵抗差414を生じさせ、このことは、突出リブレットパターン410が滑らかな表面によって生じる粘性抵抗よりも5パーセント低い粘性抵抗を生じさせることを意味している。突出リブレットパターン410の圧力抵抗差412および粘性抵抗差414を追加することによって計算される全抵抗差は、正の2パーセントであり、このことは、突出リブレットパターン410が滑らかな表面によって生じる全抵抗よりも2パーセント高い全抵抗を生じさせることを示している。かくして、突出リブレットパターン410は、リブレットのない滑らかな表面と比較して粘性抵抗を減少させるのに効果的であるが、突出リブレットパターン410は、圧力抵抗を考慮に入れた場合に全体的抵抗を増加させる。
【0048】
浸漬式リブレットパターン420は、図4の棒グラフ図400に示されているように、正の2パーセントのパーセント圧力抵抗差422を生じさせ、このことは、浸漬式リブレットパターン420が滑らかな表面によって生じる圧力抵抗よりも2パーセント高い圧力抵抗を生じさせることを示している。浸漬式リブレットパターン420は、負の4パーセントのパーセント粘性抵抗差424を生じさせ、このことは、浸漬式リブレットパターン420が滑らかな表面によって生じる粘性抵抗よりも4パーセント低い粘性抵抗を生じさせることを示している。浸漬式リブレットパターン420の圧力抵抗差422および粘性抵抗差424を加えることによって計算される全抵抗差は、負の2パーセントであり、このことは、浸漬式リブレットパターン420が滑らかな表面によって生じる全抵抗よりも2パーセント低い全抵抗を生じさせることを示している。かくして、浸漬式リブレットパターン420は、リブレットのない滑らかな表面と比較して粘性抵抗を減少させるのに効果的であり、そしてまた、粘性抵抗と圧力抵抗の両方を考慮に入れた場合に全体的抵抗を減少させる上で効果的である。
【0049】
図5は、例示の実施形態にしたがって浸漬式リブレットパターンを有する表面上の抵抗を減少させるための例示の方法500を示している。方法500は、ステップ510で始まる。ステップ520では、滑らかな表面(例えば、図1Aの滑らかな表面122)を物理的物体(例えば、図1Aの物理的物体100)の第1の部分(例えば、図1Aの第1の部分120)上に形成する。物理的物体は、航空機(例えば、飛行機、ヘリコプター、小型飛行船、ドローンなど)の一コンポーネント(例えば、外側本体の一部分)、船舶(例えば、貨物船、乗客船、カヌー、ラフトなど)の一コンポーネント、モーター付き乗り物(例えば、トラック、自動車、列車、スクーターなど)の一コンポーネント、モーター付きではない乗り物(例えば、自転車、スケートボードなど)の一コンポーネント、宇宙航空機(例えば、宇宙船、衛星など)の一コンポーネント、風車、飛翔体(例えば、ミサイル)、または抵抗を受けることができる任意他の物理的物体であるのが良い。次に、方法500は、ステップ520からステップ530に移る。
【0050】
方法500のステップ530では、周期的リブレット(例えば、図1Aの浸漬式周期的リブレット)を物理的物体の第2の部分(例えば、図1Aの第2の部分130)上に形成する。物理的物体の第2の部分は、物理的物体の第1の部分に隣接して位置する。ある特定の実施形態では、周期的リブレットのうちの各リブレットは、同一の長さを有する。物理的物体の第1の部分の滑らかな表面は、周期的リブレットの長さの方向に測定して周期的リブレットと同一の長さを有するのが良い。
【0051】
方法500は、次に、ステップ530からステップ540に移り、ステップ540では、物理的物体の第2の部分の周期的リブレットのうちの各リブレットは、物理的物体の第1の部分の滑らかな表面の平面の下方に押し下げられている。周期的リブレットのうちの各リブレットの山は、物理的物体の第1の部分の滑らかな表面の平面の同一の高さ位置にあるのが良い。ある特定の実施形態では、一定の距離が周期的リブレットのうちの各リブレットの各山(例えば、図1Aの山112)相互間に形成され、その結果、各山相互間の距離は、同一である。ある特定の実施形態では、一定の距離が周期的リブレットのうちの各リブレットの各谷(例えば、図1Aの谷114)相互間に形成され、その結果、各谷相互間の距離は、同一である。次に、方法500は、ステップ540からステップ550に移る。
【0052】
ステップ550では、流れを物理的物体の第2の部分の周期的リブレット上にかつ物理的物体の第1の部分の滑らかな表面上に生じさせる。例えば、流れを飛行機が所定の速度で空中を動いているときに生じさせるのが良い。流れ方向(例えば、図3Bの流れ方向335)は、周期的リブレットのうちの各リブレットの長さに平行に延びる。次に方法500は、ステップ550からステップ560に移り、この場合、方法500は、流れが気体であるか液体であるかを判定する。
【0053】
流れが気体(例えば、空気)である場合、方法500は、ステップ560からステップ570に移り、このステップ570では、リブレットのない滑らかな表面上に流れを生じさせることによって生じる全空気力学的抵抗(すなわち、圧力抵抗および粘性抵抗)よりも小さい空気力学的抵抗を浸漬式リブレットパターン上に生じさせる。上述の図4に示されているように、突出リブレットパターン(例えば、図4の突出リブレットパターン410)上に流れを生じさせることによって生じる全空気力学的抵抗よりも小さい空気力学的抵抗を浸漬式リブレットパターン上に生じさせる。したがって、浸漬式リブレットパターンは、空気力学的学的表面上の抵抗を減少させ、それにより浸漬式リブレットパターンを利用している乗り物(例えば、航空機)の燃料費を減少させるとともに飛行範囲を増大させることができる。
【0054】
流れが液体(例えば、水)である場合、方法500は、ステップ560からステップ580に移り、このステップ580では、リブレットのない滑らかな表面上に流れを生じさせることによって生じる全流体力学的抵抗(すなわち、圧力抵抗および粘性抵抗)よりも小さい流体力学的抵抗を浸漬式リブレットパターン上に生じさせる。上述の図4に示されているように、突出リブレットパターン(例えば、図4の突出リブレットパターン410)上に流れを生じさせることによって生じる全流体力学的抵抗よりも小さい流体力学的抵抗を浸漬式リブレットパターン上に生じさせる。したがって、浸漬式リブレットパターンは、流体力学的表面上の抵抗を減少させ、それにより浸漬式リブレットパターンを利用している乗り物(例えば、船舶)の燃料費および航行範囲を増大させることができる。次に、方法500は、ステップ570およびステップ580からステップ590に移り、このステップ590において方法500が終了する。
【0055】
図5に示された方法500の改造例、追加例、または省略例を構成することができる。方法500は、これよりも多いもしくは少ない、または他のステップを含むことができる。例えば、方法500は、周期的リブレットのうちの各リブレットの各山を45°と135°との間の角度(例えば、90°)に形成するステップを含むことができる。もう1つの例として、方法500は、周期的リブレットのうちの隣り合うリブレット相互間の各谷を45°と135°との間の角度(例えば、90°)に形成するステップを含むことができる。さらにもう1つの例として、方法500は、コンポーネント(例えば、航空機翼)の所定の長さに沿って間欠的パターンを形成するようステップ520からステップ540までを繰り返すことができる。
【0056】
図5に示された方法500の諸ステップを並行してまたは適当な順序で実施することができる。例えば、物理的物体の第1の部分上に滑らかな表面を形成することを目的とするステップ520と、物理的物体の第2の部分上に周期的リブレットを形成することを目的とするステップ530を逆にすることができる。任意適当なコンポーネントは、方法500の任意のステップを実施することができる。例えば、1つまたは2つ以上の機械(例えば、ロボット機械)を用いて物理的物体の1つまたは2つ以上の表面を形成することができる。
【0057】
本発明の実施形態を境界層が乱流でありかつ表皮摩擦が相当大きな任意の流体流れ用途に適用することができる。例えば、本発明の実施形態を用いると、推進システムの内部流れ抵抗を減少させ、パイプ流れ抵抗を減少させ、自動車システム中の抵抗を減少させることなどを行うことができる。
【0058】
本明細書において「または」は、明示の別段の定めがなければまたは文脈上別段の指定がなければ、包括的であって排他的ではない。したがって、本明細書において、「AまたはB」は、別段の定めがなければまたは文脈上別段の指定がなければ、「A、B、または両方」を意味する。さらに、「および」は、別段の定めがなければまたは文脈上別段の指定がなければ、結合と各自の両方である。したがって、本明細書において「AおよびB」は、別段の定めがなければまたは文脈上別段の指定がなければ、「AとBを合わせてまたはそれぞれ独自に」を意味する。
【0059】
本発明の範囲は、本明細書において説明されまたは図示されていて当業者が理解する例示の実施形態のすべての変更例、置換例、変形例、代替例、および改造例を含む。本発明の範囲は、本明細書において説明されまたは図示された例示の実施形態には限定されない。さらに、本発明は、特定のコンポーネント、要素、特徴、機能、作用、またはステップを含むものとして本明細書におけるそれぞれの実施例を説明するとともに図示しているが、これら実施形態のうちの任意のものは、本明細書において任意の場所で説明されまたは図示されていて当業者が理解するコンポーネント、要素、特徴、機能、作用、またはステップのうちの任意のものの任意の組み合わせまたは順列を含むことができる。さらに、添付の特許請求の範囲において、特定の機能を実行するよう構成され、配置され、特定の機能を実行することができ、そのように形作られ、そのように実施可能であり、そのように動作可能であり、またはそのように動作する装置もしくはシステム、または装置またはシステムのコンポーネントの参照は、装置、システム、またはコンポーネントがそのように構成され、配置され、可能であり、形作られ、実施可能にされ、動作可能であり、あるいは動作する限り、特定の機能を起動させ、作動させ、またはロック解除するかどうかにかかわらず、その装置、システム、コンポーネントを含む。加うるに、本発明は、特定の利点を提供するものとして特定の実施形態を説明しまたは図示しているが、特定の実施形態は、これらの利点のどれも提供しない場合があり、あるいはこれら利点のうちの幾つかをもしくは全てを提供する場合がある。
【符号の説明】
【0060】
100 物理的物体
110 浸漬式リブレット
112 山
114 谷
120 第1の部分
122 滑らかな表面
130 第2の部分
140 第3の部分
142 滑らかな表面
150 縦断面
155 流れ方向
160,162 移行表面または領域
170,174 角度
180 平面
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5