(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20241018BHJP
A61H 15/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61N1/36
A61H15/00 320C
(21)【出願番号】P 2020140652
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-05-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210812412(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0105139(KR,A)
【文献】特開2003-000731(JP,A)
【文献】特開平10-295834(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも手のひらとの接触面において
、一定の対向方向に沿って対向して配置される第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の間に手のひらを介して
前記一定の対向方向に沿った電流を流し、手のひらに電気刺激を付与する制御部と
を備える把持可能な
略球形の電気刺激装置
であって、
前記第1電極および前記第2電極は、手のひらと接触する前記接触面としての半球面に設けられ、
前記第1電極を外観上複数に区分する絶縁性の区分部および前記第2電極を外観上複数に区分する絶縁性の区分部が設けられ、
前記区分部によって複数に区分された前記第1電極は、前記電気刺激装置の内部で導通しており、
前記区分部によって複数に区分された前記第2電極は、前記電気刺激装置の内部で導通している
電気刺激装置。
【請求項2】
前記接触面は、前記第1電極または前記第2電極を構成する導電部材によって構成され、
前記接触面の反対側の表面は絶縁部材によって構成される
請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記第1電極および前記第2電極の間を流れる電流を検知する電流検知部が設けられ、
前記制御部は、電気刺激用の刺激電流を流す前に前記第1電極および前記第2電極の間に前記刺激電流よりも弱い検知電流を流し、前記電流検知部によって前記検知電流が検知された場合に前記刺激電流を流す
請求項1
または2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記接触面と、その反対側の表面を区分する環状の環状区分部が設けられ、
当該環状区分部には、前記電気刺激装置の動作状態を発光により表示する発光部が設けられる
請求項1から
3のいずれかに記載の電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の高齢化が進展する中で、高齢者の生活の質(QOL:Quality of Life)の向上が大きな社会的課題となっている。QOLの向上においては、高齢者が自分の手で日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)を行えるように支援することが重要である。そのための一つの方策として、加齢に伴う身体能力の低下を抑え、ADLを行う身体能力を維持するための各種トレーニング装置の開発が盛んに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、身体の様々な部位のうち、手の筋肉に着目して検討を行った。手の筋肉、特に起始と停止が手の中にある内在筋は握力の発生に深く関与するが、従来トレーニングが難しい筋肉とされていた。加齢により内在筋が衰え握力が低下すると、指でものをつまむ、手のひらでものを掴む、手でものを握り続ける等の基本動作に支障をきたすため、効果的なトレーニングができればADL支援およびQOL向上に貢献しうる。
【0005】
特許文献1には、手のひらの一カ所を集中的に刺激することが可能な電気刺激装置が開示されている。しかし、この電気刺激装置の目的は、筋肉のトレーニングではなく、精神的ストレスを和らげることであり、手のひらの中央にある「労宮(自律神経症状や不安に対して鎮静効果があると言われているツボ)」(特許文献1の段落0056)を集中的に刺激するための特有の電極構造を有している。すなわち、上記のツボに対応する中央部に設けられる第1の電極(41:特許文献1中の符号(以下同様))と、それを環状に囲む第2の電極(42)が設けられている。このような電極構造によって、第1の電極(41)を介してツボに局所的に電気刺激を与えることができるが、手のひら面におけるツボ以外の領域に広がる筋肉をトレーニングすることはできない。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、手のひらの筋肉を効果的にトレーニングすることのできる電気刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電気刺激装置は、把持可能な形状に構成され、少なくとも手のひらとの接触面において対向して配置される第1電極および第2電極と、第1電極および第2電極の間に手のひらを介して電流を流し、手のひらに電気刺激を付与する制御部とを備える。
【0008】
この態様によれば、手のひらの筋肉を効果的にトレーニングすることができる。すなわち、手のひらの筋肉は概ね手首側から指先側に向かって延びているが、本態様の電気刺激装置を把持する際に、第1電極と第2電極の対向方向を手のひらの筋肉の延在方向に合わせることにより、電流を手のひらの筋肉に沿って流すことができるので、効果的にトレーニングすることができる。
【0009】
本発明の別の態様の電気刺激装置は、把持可能な形状の手のひら電気刺激装置と、前腕に取付可能な前腕電気刺激装置とが互いに接続される。手のひら電気刺激装置は、少なくとも手のひらとの接触面に配置される手のひら電極を備える。前腕電気刺激装置は、前腕との接触面に配置される前腕電極を備える。そして、手のひら電極および前腕電極の間に電流を流し、手のひらから前腕にかけて電気刺激を付与する制御部が設けられる。
【0010】
この態様によれば、手のひらと前腕の間に延在する外在筋を効果的にトレーニングすることができる。上述の通り、指でものをつまむ、手のひらでものを掴む、手でものを握り続ける等の握力に関わる基本動作には内在筋が深く関与するが、このうち、手のひらでものを掴む、手でものを握り続ける等の動作には外在筋も深く関与する。したがって、本態様の電気刺激装置によれば、外在筋を効果的にトレーニングして、握力の低下を防止することができる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、手のひらの筋肉を効果的にトレーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の電気刺激装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の電気刺激装置の下半球面を底部から見た平面図である。
【
図3】第1実施形態の電気刺激装置の機能を表すブロック図である。
【
図4】第1実施形態の電気刺激装置の上半球面を頂部から見た平面図である。
【
図7】電気刺激モードにおいて推奨される第1実施形態の電気刺激装置の把持の仕方を示す斜視図である。
【
図8】電気刺激モードにおいて推奨される第1実施形態の電気刺激装置の把持の仕方を示す上面図である。
【
図9】第1実施形態の電気刺激装置の電気刺激モードの処理を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態の電気刺激装置の電気刺激付与プログラムの構成例を示す図である。
【
図11】第1実施形態の電気刺激装置において、異なる周波数の電気刺激を発生させる手法を示す図である。
【
図12】第1実施形態の電気刺激装置の電気刺激モードの使用前後における手指先の血流変化を測定した結果を示す図である。
【
図13】第1実施形態の電気刺激装置を使用したグループと使用しなかったグループの握力およびピンチ力の変化を示す図である。
【
図14】第2実施形態の電気刺激装置の構成を示す図である。
【
図15】第2実施形態の電気刺激装置の機能を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
初めに本実施形態の概要を説明する。本実施形態に係る電気刺激装置は、手で把持可能な略球形の装置である。装置の下半球側(南半球側)の表面が導電性シリコーン等の導電部材で形成され、それを電極として手のひらの筋肉に電気刺激を付与する。この電極は、手のひらの手首側から指先側に向かって電流を流す配置となっているため、その方向に延在する手のひらの筋肉を効果的にトレーニングすることができる。
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略し、その寸法を適宜拡大、縮小する。各図面における上下左右等の方向は、その図面における符号の向きを基準に記述するものとする。本明細書において二つの構成要素の間の関係を表す「当てる」、「接触」、「固定」、「取り付け」等の用語は、特に明示がない限り、言及している条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も包含する。
【0016】
図1は第1実施形態に係る電気刺激装置1の外観を示す斜視図である。電気刺激装置1は全体として略球形の形状をしており、手で把持可能な大きさで構成されている。以降の説明においては、略球形の電気刺激装置1を地球に例えて、上半球を北半球、上半球における頂部を北極、下半球を南半球、南半球における底部を南極、上半球と下半球を隔てる環状部を赤道、上半球の頂部から下半球の底部に向かう方向を経度方向、経度方向と垂直な方向あるいは赤道部と平行な方向を緯度方向等と適宜記載する。
【0017】
電気刺激装置1の表面は、赤道を構成する環状区分部2により、北半球面ないし上半球面3と、南半球面ないし下半球面4に区分されている。電気刺激装置1を手で把持して電気刺激を付与する際の詳細は後述するが、下半球面4が手のひらとの接触面となり、上半球面3が指先(好ましくは人差し指、中指、薬指、小指の第二関節より先の部分)によって上から押さえられて把持状態が維持される。また、環状区分部2には電気刺激装置1の動作状態を発光により表示する環状の発光部が設けられる。
【0018】
ここで、電気刺激装置1は、手で把持しやすいように、球形よりもややつぶれた形状となっている。具体的には、上下方向あるいは北極と南極を結ぶ方向の長さが、円形の環状区分部2すなわち赤道の直径よりも小さくなっている。具体的な寸法の数値例としては、上下方向の長さを54mmから70mm、より好ましくは62mm、環状区分部2の直径はそれより大きく60mmから76mm、より好ましくは68mmとすることができる。このように上下方向の長さを比較的小さくすることで、指先が上半球面3に届きやすくなり、指先の力で電気刺激装置1を把持しやすくなる。また、後述するように上半球面3には電気刺激装置1の操作を行う操作部が設けられるため、上記のような形状とすることで操作がしやすくなる。
【0019】
電気刺激装置1の表面には、頂部(北極)および底部(南極)を除く略全面に亘って凹凸構造5が設けられる。凹凸構造5は、電気刺激装置1の表面の略全面に亘って略隙間なく配置された多数の三角錐状の突起部5Aと、それぞれ円形の頂部および底部を包囲する包囲部5Bによって構成される。電気刺激装置1を手で把持した際に、各突起部5Aおよび各包囲部5Bが手の各部の皮膚および筋肉に刺激を与えることで、ストレッチ効果やトレーニング効果が得られる。
【0020】
突起部5Aおよび包囲部5Bの表面の材質は適宜選択可能であるが、手に対する刺激や負荷が過大にならないように、適度な弾性を備えた材料を選択するのが好ましい。例えば、ゴム状のシリコーンを使用する。なお、後述するように、上半球面3は絶縁部材で構成され、下半球面4は導電部材で構成されるため、シリコーンを使用する場合、上半球面3の突起部5Aおよび包囲部5Bの表面には絶縁性シリコーンを使用し、下半球面4の突起部5Aおよび包囲部5Bの表面には導電性シリコーンを使用する。
【0021】
三角錐状の各突起部5Aの高さや底面形状は、ストレッチ効果またはトレーニング効果を最大化するために適宜調整可能である。例えば、高さおよび底面形状を全ての突起部5Aにおいて同一としてもよい。また、突起部5A間の隙間を減らすために、複数の底面形状の突起部5Aを組み合わせて電気刺激装置1の表面に敷き詰めるようにしてもよい。さらに、手の各部に対して異なる強さの刺激を与えることを目的として、突起部5Aの高さを変えてもよい。
【0022】
電気刺激装置1の頂部および底部を包囲する包囲部5Bの底面形状は、頂部および底部の形状(本実施形態では円形)と、包囲部5Bに隣接する突起部5Aとの間のスペースを略隙間なく埋められるように適宜決定される。また、上半球面3における包囲部5Bは、突起部5Aと同様に突起を有している。後述する
図5でも示されるように、包囲部5Bの突起は、頂部の表面よりも高い位置まで突出しているため、電気刺激装置1を手で把持した際に、手が意図せず頂部表面に触れることを防止し、頂部に設けられる操作部6の誤操作を防止することができる。一方、下半球面4における包囲部5Bは突起を有さず、電気刺激装置1の底部と段差なく繋がっている。これは、底部には操作部が設けられないため誤操作の恐れがなく、また手のひらとの密着性を上げて効率的に電気刺激を付与するためである。
【0023】
電気刺激装置1の頂部すなわち北極には、電気刺激装置1を操作する操作部6が設けられる。操作部6の詳細は後述するが、操作部6を頂部に配置することには利点がある。後述する
図8でも示されるように、電気刺激装置1が手に電気刺激を付与する際には、電気刺激装置1の底部が手のひらの中央部に接触するように配置されるので、指先が頂部にある操作部6までは届きにくい。したがって、電気刺激時における誤操作を防止できる。電気刺激時にユーザが何らかの操作をしたい場合、電気刺激を付与していない方の手で操作部6を操作すればよい。また、操作部6には電気刺激レベルを表示する電気刺激レベル表示部が設けられるので、ユーザは電気刺激装置1を把持したまま電気刺激レベルを容易に確認できる。
【0024】
電気刺激装置1の表面は、その頂部から底部に向かう経度方向に放射状に延びる四本の放射状区分部7によって区分される。各放射状区分部7は絶縁部材によって構成され、導電部材で構成される下半球面4を互いに絶縁された四つのセグメントに分割する。後述するように、本実施形態では、これらのセグメントが電極を構成し、手のひらの筋肉に電気刺激を付与する。一方、上半球面3は元々絶縁部材で構成されているため、放射状区分部7によって電気的に絶縁すること自体に意味はない。しかし、放射状区分部7を上半球面3にも構成することにより、下半球面4と統一感のある外観を構成でき、ユーザに電極等の技術的な構成を意識させずに済む。
【0025】
経度方向の各放射状区分部7は、赤道を構成する緯度方向の環状区分部2を四分割する位置で交差する。各交差点では、放射状区分部7と環状区分部2が直交し、環状区分部2が放射状区分部7を上下に分断する。放射状区分部7は絶縁部材であるため、このように上下に分断されても機能上は問題ない。一方、環状区分部2は分断のない完全な環状となるため、電気刺激装置1の動作状態を環状の発光により示す発光部を設けることができる。
【0026】
図2は、電気刺激装置1の下半球面4を底部(南極方向)から見た平面図である。底部には、円形のUSB接続部8が設けられる。
図2(A)で示されるように、電気刺激装置1の使用時には、USB接続部8は、ゴム等の弾性絶縁材料でできたUSBキャップ81によって内部を被覆し、手のひらが内部に接触したり、トレーニングによる汗が内部に浸入したりすることを防止する。
【0027】
図2(B)はUSBキャップ81を開けたUSB接続部8の内部を示し、USB(Universal Serial Bus)規格に対応したUSBプラグが挿抜されるUSBポート82と、USBキャップ81の基部83(断面)と、USBキャップ81の裏側に設けられる凸形状の係止部を受けてUSBキャップ81の閉状態を保持する凹状係止部84が設けられる。ユーザは、電気刺激装置1の不使用時に、USBキャップ81を開け、USBポート82を介して電気刺激装置1を充電できる。また、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置をUSBポート82を介して電気刺激装置1に接続し、電気刺激装置1からのデータの読み取りを行ったり、電気刺激装置1の操作や設定情報の変更を行ったりすることができる。
【0028】
図2に示される下半球面4は、前述の通り電気刺激装置1による電気刺激付与時に手のひらとの接触面となる。本図における上側が指先側、本図における下側が手首側となるように把持したとき、上下方向に延びる手のひらの筋肉を効果的にトレーニングすることができる。すなわち、導電性の下半球面4を絶縁性の放射状区分部7で区分してできる四つの導電性セグメントを時計回りに4A、4B、4C、4Dとした場合、本図における上側に配置される導電性セグメント4Aおよび4Bを電気刺激装置1の内部で導通して同電位の第1電極41とし、本図における下側に配置される導電性セグメント4Cおよび4Dを電気刺激装置1の内部で導通して同電位の第2電極42とする。
【0029】
このように、第1電極41および第2電極42は、少なくとも手のひらとの接触面において、一方(上側)から他方(下側)に向かって対向して配置される。そして、後述する制御部により第1電極41と第2電極42の間に手のひらを介して対向方向(上下方向)に沿った電流を流し、手首側(下側)から指先側(上側)に向かって延在する手のひらの筋肉に効果的に電気刺激を付与できる。また、第1電極41および第2電極42を構成する各導電性セグメント4A~4Dを、電極の対向方向と直交する左右方向にも延在する幅広形状とすることで、手のひらの一部が下半球面4に適切に接触していない場合も、それ以外の接触部分を介して電流を流すことができる。なお、上記の説明と上下を逆にして電気刺激装置1を把持しても同様の効果が得られる。つまり、上記とは逆に、本図における上側が手首側、本図における下側が指先側となるように電気刺激装置1を把持してもよい。
【0030】
ここで、導電性セグメントあるいは第1電極/第2電極の構成の方法は様々なものが考えられる。例えば、放射状区分部7の本数は図示される4本に限らず、2本以上の任意の本数でよい。例えば、放射状区分部7が2本の場合は、
図2において左右に延びる2本の放射状区分部7のみを残し、上下に延びる2本の放射状区分部7を除くことができる。この場合、
図2の上下に2つの導電性セグメントができるが、
図2の例と同様に上側の導電性セグメントを第1電極41とし、下側の導電性セグメントを第2電極42とする。
【0031】
また、放射状区分部7が4本より多い場合も、基本的には上記と同様に、上側の導電性セグメントと下側の導電性セグメントをグループ分けし、前者で第1電極41を構成し、後者で第2電極42を構成すればよい。このように導電性セグメントの数を増やせば、下半球面4における手のひらの各部の接触状態(接触抵抗)に応じて流れる電流量をきめ細かく変えることができる。
【0032】
なお、このように導電性セグメントの数が多い場合は、第1電極41または第2電極42を構成する導電性セグメントをさらにサブグループに分けてもよい。例えば、放射状区分部7が8本の場合で、第1電極41が上側の四つの導電性セグメントで構成される場合、その導電性セグメントを左から奇数番目(1、3)のサブグループと、偶数番目(2、4)のサブグループに分けて、各サブグループに異なる電位を印加してもよい。同様に下側の第2電極42でも奇数番目と偶数番目の導電性セグメントをサブグループ化すれば、奇数番目の導電性セグメントに対応する第1電極/第2電極の組と、偶数番目の導電性セグメントに対応する第1電極/第2電極の組を形成して、より複雑なパターンの電気刺激を付与することができる。このとき、奇数番目の導電性セグメントに対応する第1電極/第2電極の間で流れる電流の向きと、偶数番目の導電性セグメントに対応する第1電極/第2電極の間で流れる電流の向きを、互いに逆向きとしてもよい(前者が上向きの場合は後者が下向きとなる)。
【0033】
また、本実施形態では、放射状区分部7で下半球面4を区分して導電性セグメントを形成しているが、区分の仕方はこれに限られない。例えば、
図2で、上下方向の区分部は設けずに、左右方向の複数の区分部のみで導電性セグメントを形成してもよい。例えば、
図2の中央において下半球面4を上部領域と下部領域に二分割する主区分部に加え、さらに上部領域と下部領域をそれぞれ上下に分割する副区分部を設けてもよい。このとき、副区分部によって上部領域と下部領域にはそれぞれ複数の導電性セグメントが形成されるが、
図2の例と同様に上部領域の複数の導電性セグメントで第1電極41を構成し、下部領域の複数の導電性セグメントで第2電極42を構成することができる。また、区分部は直線状に限らず、曲線状でもよい。例えば、波線状の区分部としてもよい。
【0034】
以上の例では、線状の区分部で区分された全ての導電性セグメントに通電していたが、一部の導電性セグメントに通電するようにしてもよい。例えば、
図2の例で、導電性セグメント4Aと4Bの一方のみに通電して第1電極41とし、導電性セグメント4Cと4Dの一方のみに通電して第2電極42としてもよい。このとき、導電性セグメント4Aと4Dに通電する場合、図の左側において上下方向に電流が流れ、導電性セグメント4Bと4Cに通電する場合、図の右側において上下方向に電流が流れ、導電性セグメント4Aと4Cに通電する場合、図の左上(4A)と右下(4C)を結ぶ斜め方向に電流が流れ、導電性セグメント4Bと4Dに通電する場合、図の右上(4B)と左下(4D)を結ぶ斜め方向に電流が流れる。このような通電パターンにより、手のひらの対応部位の筋肉を集中的にトレーニングすることができる。また、このような様々な通電パターンを取り入れてトレーニングプログラムを構成することで、手のひらの全体および各部位の筋肉を効果的にトレーニングすることができる。
【0035】
また、上記のように、導電性の下半球面4を線状の区分部で導電性セグメントに区分する手法は、手のひらと導電性セグメントの接触面積を最大化するという観点で好適であるが、これ以外の手法で導電性セグメントを形成してもよい。例えば、下半球面4を絶縁性の材料で構成した上で、そこに第1電極41および第2電極42を構成する任意の形状の導電性セグメントを後から配置してもよい。
【0036】
以上のように、導電性セグメントあるいは第1電極/第2電極の構成の方法は様々なものがあるが、どのような方法を採用したとしても、第1電極と第2電極を
図2における上下方向に沿って対向して配置し、その対向方向(上下方向)に流れる電流が、それに直交する左右方向に流れる電流に比べて大きくなるように構成すれば、上下方向に延在する手のひらの筋肉を効果的にトレーニングするという本実施形態の効果を奏する。
【0037】
図3は、電気刺激装置1の機能を表すブロック図である。演算処理装置である制御部9は、操作部6、接触検知部10、指センサ11、通信部12、電源13、第1電極41、第2電極42、振動部14、第1発光部15、第2発光部16等の各機能ブロックと接続されて電気刺激装置1の制御を行う。
【0038】
操作部6は、
図1にも示されるように、電気刺激装置1の頂部に設けられ、電気刺激装置1の操作を行う。ユーザが操作部6を操作すると、その操作に応じた操作信号が生成され、制御部9はそれに基づく制御を実行する。
【0039】
接触検知部10は、電気刺激装置1による電気刺激付与を行う前に、電気刺激付与対象である手のひらが電気刺激装置1の下半球面4に接触していることを検知する。本実施形態では、接触検知部10は、第1電極41および第2電極42の間を流れる電流を検知する電流検知部として構成される。すなわち、手のひらが電気刺激装置1の下半球面4に適切に接触している場合、手のひらを介して第1電極41と第2電極42の間に電流が流れるため、その電流を検知することで手のひらの接触を検知できる。
【0040】
後述するように、手のひらの接触検知を行うための検知電流は、電気刺激の付与に使用される刺激電流よりも弱くすることが好ましい。接触検知のためには最低限の微弱電流で足りる上、接触が確立されていない状態で刺激電流と同程度の検知電流を無理に流そうとすると電気刺激装置1に過大な負荷がかかる恐れがあるためである。なお、接触検知部10は、上記の電流検知に限らず、その他の検知手法を用いたものでもよい。例えば、下半球面4に圧力センサを設け、そこで測定された圧力に基づいて手のひらの接触検知を行う構成としてもよいし、下半球面4に光学センサを設け、そこで測定された光量等の変化により手のひらが下半球面4を覆ったことを検知する構成としてもよいし、下半球面4に静電容量センサを設け、そこで測定された静電容量の変化に基づいて手のひらの接触検知を行う構成としてもよい。
【0041】
指センサ11は、指の各種状態の測定を行うセンサであり、手のひらとの接触面の反対側の表面である上半球面3に設けられる。電気刺激装置1を手で把持して電気刺激を付与する際は、下半球面4が手のひらとの接触面となり、上半球面3には指先が載置される。したがって、上半球面3に指センサ11を設けることにより、手のひらに電気刺激を付与するのと同時に指の状態を測定できる。なお、指センサ11は上半球面3に露出して設けられる必要はなく、上半球面3に載置された指の状態を直接的または間接的に測定できるものであればよい。したがって、指センサ11は上半球面3に埋設してもよく、電気刺激装置1の外観を保つことができる。
【0042】
また、電気刺激装置1の下半球側は電気刺激付与のための構成を設ける必要があり装置内のスペースに余裕がないが、上半球側は比較的余裕がある。このような余裕スペースに指センサ11を設けることにより、装置内のスペース活用効率を向上させることができる。
【0043】
指センサ11としては様々な種類のセンサを使用できるが、例えば、指の押圧から電気刺激装置1の把持の状態を測定する圧力センサ、指の温度を測定する温度センサ、指の湿度を測定する湿度センサ、指の脈拍を測定する脈拍センサ、人体から発せられる赤外線を検知する焦電センサ等の光学センサ、静電容量の変化により指の接触を検知する静電容量センサ等を目的に応じて適宜使用できる。また、これらのセンサで取得可能なデータに基づいて、電気刺激装置1が手で把持されたことを検知できるので、接触検知部10に加えて、または接触検知部10に代えて、これらの指センサ11で接触検知を行ってもよい。
【0044】
指センサ11で測定された指の状態データは様々な用途に活用できるが、例えば、測定された指の状態に応じて電気刺激や後述する振動のレベル、パターン、持続時間等を変えることができる。また、電気刺激装置1によるトレーニング履歴をアプリケーションソフトウェア等で管理する際に、各トレーニング時の指の状態、および指の状態から推測される身体全体の状態を併せて記録することもできる。
【0045】
通信部12は、電気刺激装置1外の通信装置との間で通信を行い、有線通信部として構成することもできるし、無線通信部として構成することもできる。通信の目的は特に限定されないが、電気刺激装置1に格納されたデータや電気刺激装置1によるトレーニング履歴を通信装置に送信したり、電気刺激装置1の操作や設定情報の変更に関する指令を受信したりすることができる。
【0046】
通信部12を有線通信部として構成する場合、
図2で説明したUSBポート82を介してUSBケーブルで接続されたスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の通信装置と通信させることができる。また、通信部12を無線通信部として構成する場合は、上半球面3を介して無線通信を行う構成とすることが好ましい。下半球面4は導電部材で構成されているため電波を通しにくく無線通信には不向きであるが、上半球面3は絶縁部材で構成されているため無線通信に好適である。また、上述の通り、装置内部のスペースは下半球側よりも上半球側に余裕があるため、そのような余裕スペースを活用して無線通信用のアンテナを配置できる。なお、目的に応じて最適な無線通信規格を選択できるが、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)を利用できる。
【0047】
電源13は、電気刺激装置1の動作に必要な電力を供給する。電源13は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、USBポート82を介して電気刺激装置1を充電できる。電気刺激装置1による電気刺激付与時には、制御部9による制御の下、電源13は第1電極41および第2電極42の間に指定された電圧を印加し、第1電極41および第2電極42の間にある手のひらの筋肉に電気刺激を付与する。
【0048】
振動部14は、制御部9によって振動を発生させる振動モータである。後述するように、本実施形態の電気刺激装置1では、第1電極41および第2電極42による電気刺激付与を通じた手の筋肉のトレーニングに加え、振動部14で発生される振動を通じた手の筋肉のストレッチも行うことができる。振動部14は、第1電極41および第2電極42による電気刺激付与と同時に振動を付与してもよいし、第1電極41および第2電極42による電気刺激モードとは別の振動モードにおいて振動を付与してもよい。
【0049】
第1発光部15は、
図1の赤道部にある環状区分部2の全周に亘って設けられ、環状に発光するLED等の発光素子である。第1発光部15の動作は後述するが、電気刺激装置1の動作状態に応じて異なる色やパターンで発光することにより、ユーザが視認可能な態様で動作状態を表示する。また、第1発光部15または環状区分部2は、導電部材で構成されている下半球面4と絶縁部材で構成されている上半球面3を確実に隔離する。
【0050】
第2発光部16は、電気刺激装置1による電気刺激のレベルを発光により表示する電気刺激レベル表示部であり、複数のLED等の発光素子により構成される。後述するように、第2発光部16は、手のひらとの接触面の反対側の表面である上半球面3の頂部、すなわち操作部6と一体化した形で設けられる。本実施形態の電気刺激装置1は6段階で電気刺激のレベルを調整することが可能であり、第2発光部16はその調整段階数と等しい6個の発光素子で構成される。
【0051】
図4は、電気刺激装置1の上半球面3を頂部(北極方向)から見た平面図である。頂部には、円形の操作部6が設けられる。操作部6は、円環状領域に操作ボタンが設けられた操作ボタン部61と、操作ボタン部61の内側の円形領域に第2発光部16が設けられた電気刺激レベル表示部62とを備える。
【0052】
操作ボタン部61には、電気刺激モードボタン611と、電気刺激レベル増加ボタン612と、電気刺激レベル減少ボタン613と、振動モードボタン614が設けられる。
【0053】
電気刺激モードボタン611は、ユーザの押下操作に応じて電気刺激モードを実行する。電気刺激モードの詳細は後述するが、制御部9による制御の下、第1電極41および第2電極42の間に電流を流し、第1電極41および第2電極42の間にある手のひらの筋肉に電気刺激を付与する。なお、ユーザの誤操作を防止するため、電気刺激モードボタン611が1秒程度長押しされた場合に電気刺激モードが実行される。また、ユーザは電気刺激モード実行中に電気刺激モードボタン611を長押しすることで、電気刺激モードを中断または中止できる。
【0054】
電気刺激レベル増加ボタン612および電気刺激レベル減少ボタン613は、ユーザの押下操作に応じて電気刺激モード実行中の電気刺激レベルを調整する電気刺激レベル調整部を構成する。本実施形態の電気刺激装置1では6段階で電気刺激レベルを調整可能であるが、電気刺激レベル増加ボタン612を1回押下すると電気刺激レベルが一段階上がり、電気刺激レベル減少ボタン613を1回押下すると電気刺激レベルが一段階下がる。なお、電気刺激レベルが最大のときに電気刺激レベル増加ボタン612を押下した場合と、電気刺激レベルが最低のときに電気刺激レベル減少ボタン613を押下した場合は、電気刺激レベルは変化しない。
【0055】
振動モードボタン614は、ユーザの押下操作に応じて振動モードを実行する。振動モードの詳細は後述するが、制御部9による制御の下、振動部14を駆動して、電気刺激装置1を把持している手に振動を付与する。なお、ユーザの誤操作を防止するため、振動モードボタン614が1秒程度長押しされた場合に振動モードが実行される。また、ユーザは振動モード実行中に振動モードボタン614を長押しすることで、振動モードを中断または中止できる。
【0056】
電気刺激レベル表示部62には、6段階の電気刺激レベルを表す6個の発光素子からなる第2発光部16が設けられる。第2発光部16は、点灯している発光素子の数で電気刺激のレベルを示す。すなわち、電気刺激レベルが1のときは1個の発光素子が点灯し、電気刺激レベルが6のときは6個の発光素子が点灯する。そして、電気刺激レベル増加ボタン612および電気刺激レベル減少ボタン613によって電気刺激レベルが変化した場合、それに伴って点灯する発光素子の数が増減する。なお、電気刺激レベル表示部62は、電気刺激モード時以外は他の用途に利用できる。例えば、電気刺激装置1をUSBポート82を介して充電する際に、その充電の状態を6個の発光素子で表示できる。また、充電時に異常が生じた場合、全ての発光素子を一斉に点滅させて、ユーザに異常を知らせることができる。
【0057】
続いて、
図5および
図6の断面図を参照して、電気刺激装置1の内部におけるいくつかの特徴について説明する。なお、説明の簡素化のため、全ての構成については説明しない。
【0058】
図5は、
図2および
図4のA-A断面図である。
図2および
図4に示されるように、A-A断面は電気刺激装置1の頂部(北極)と底部(南極)を結ぶ中心軸を含み、かつ
図2および
図4の左右方向に延びる放射状区分部7を含む平面である。この図に示されるように、電気刺激装置1は、上半球に設けられる上基板17および下半球に設けられる下基板18の二つの基板を有する。この二つの基板は図示されないワイヤーハーネスにより接続され、全体として
図3に示される電気刺激装置1の機能が実現される。
【0059】
上基板17には、主に操作部6に関連する素子が実装される。本断面図で示されるように、操作部6の電気刺激レベル増加ボタン612と電気刺激レベル減少ボタン613が上基板17に接続され、各ボタンでの操作信号が上基板17に入力される。また、電気刺激レベル表示部62を構成する第2発光部16における6個の発光素子のうち、本断面図では3個の発光素子に対応する構成が示される。発光素子自体は上基板17に実装され、そこで発せられた光を電気刺激レベル表示部62の表面まで導く導光構造が形成される。この導光構造は、6個の発光素子からそれぞれ上方に延びる6本の柱状の透明樹脂161と、上基板17の近傍で各透明樹脂161を囲んで遮光する遮光部材162を備える。遮光部材162によって上基板17上の6個の発光素子で発せられた光が互いに混ざることを防止できるので、電気刺激レベル表示部62で適切な表示を行うことができる。
【0060】
下基板18には、電源に関連する素子や、電気刺激や振動の付与に関連する素子が実装される。本断面図で示されるように、電気刺激装置1の充電等を行うUSBポート82が下基板18に接続される。また、
図6に関して後述する電気刺激付与のための導電ピン19が下半球に設けられ、下基板18を介して電圧が印加される。さらに、振動を付与するための振動モータ(振動部14)が下基板18の直上に設けられ、下基板18を介して駆動される。
【0061】
以上のように、電気刺激装置1の上半球と下半球にそれぞれ実装される機能に応じた素子を上基板17と下基板18に効果的に実装できる。また、手で把持できるサイズとするため電気刺激装置1の内部のスペースは限られており、一つの基板に全ての素子を実装することは現実的に困難であるが、以上のように基板を分割することにより対応できる。また、上半球側に比べて下半球側に密に部品を設け、また重量のある振動部14等を下半球側に配置することで、電気刺激装置1の重心が下半球側に来るので、電気刺激付与時に下半球面4を手のひらに接触させる際の密着性を向上できる。
【0062】
図6は、
図2および
図4のB-B断面図である。
図2および
図4に示されるように、B-B断面はA-A断面と平行で各図の上側にずれた位置にある平面である。上半球面3の表面は絶縁性シリコーン31で構成され、樹脂製の筐体32を被覆する。絶縁性シリコーン31は、筐体32の表面を被覆するだけでなく、筐体32の端部に回り込んで保護する構造を有する(図の右上の絶縁性シリコーン31における回り込み部33として示す)。また、筐体32の裏面に切欠が設けられ、そこに絶縁性シリコーン31を充填することで、筐体32と絶縁性シリコーン31の間の密着性を高める(図の右上の絶縁性シリコーン31における充填部34として示す)。
【0063】
下半球面4の表面は導電性シリコーン43で構成されており、樹脂製の筐体44を被覆する。導電性シリコーン43は、筐体44の表面を被覆するだけでなく、筐体44の端部に回り込んで保護する構造を有する(図の右下の導電性シリコーン43における回り込み部45として示す)。また、筐体44の裏面に切欠が設けられ、そこに導電性シリコーン43を充填することで、筐体44と導電性シリコーン43の間の密着性を高める(図の右下の導電性シリコーン43における充填部46として示す)。
【0064】
さらに導電性シリコーン43は、筐体44の裏面において電気刺激装置1の内部に向かって延在部47を有する。筐体44の裏面側には、本図の最下部で表面に露出している放射状区分部7と一体的に成形された樹脂部材が存在するが、導電性シリコーン43の延在部47を設けるために、その部分だけが切り欠かれる。導電性シリコーン43の延在部47には図の上下方向に穴が設けられ、そこに導電性の導電ピン19が差し込まれる。このように、筐体44の両面に亘って設けられる導電性シリコーン43によって、導電ピン19が下半球面4と導通する。そして、制御部9が導電ピン19に電圧を印加することで、下半球面4の各導電性セグメント(導電性シリコーン43)を第1電極41または第2電極42として機能させることができる。
【0065】
なお、
図2で説明したように、四つの導電性セグメント4A、4B、4C、4Dが形成される本実施形態では、4Aと4Bが接続されて同電位の第1電極41となり、4Cと4Dが接続されて同電位の第2電極42となる。ここで、
図6で示される二つの導電ピン19は、それぞれ導電性セグメント4Aと4Bに対応するので、互いに接続されて同電位となる。図示は省略するが、導電性セグメント4Cと4Dに対応する二つの導電ピン19も互いに接続されて同電位となる。
【0066】
続いて、以上のような構成の電気刺激装置1の使用方法を説明する。電気刺激装置1には主に次の三通りの使用方法がある。
(1)ストレッチ(振動なし)
(2)ストレッチ(振動あり)
(3)トレーニング(電気刺激あり)
以降、それぞれの使用方法について順次説明する。
【0067】
(1)ストレッチ(振動なし)
本使用方法は、電気刺激装置1に通電せずに、表面に設けられる凹凸構造5を疲労した手の部位に押し当てることでストレッチ効果を得るものである。電気刺激装置1の持ち方、押し当てる部位や押し当て方に特に限定はないが、例えば、手の甲に押し当ててもよいし、握りしめて手のひらに押し当ててもよいし、指の間に挟んで指に押し当ててもよい。
【0068】
(2)ストレッチ(振動あり)
本使用方法は、上記の「(1)ストレッチ(振動なし)」において、振動部14による振動を付与して、より高いストレッチ効果を得るものである。上記(1)と同様、電気刺激装置1の持ち方、押し当てる部位や押し当て方は特に限定はないが、例えば、握りしめて手のひらに押し当てる場合には、手のひらの接触面全体に亘って振動によるストレッチを行うことができる。
【0069】
図4で述べたように、振動部14による振動付与を行う振動モードを開始するためには、操作部6の振動モードボタン614を長押しする。振動モードは通常約2分間継続し、その間に振動部14は予めプログラムされた振動パターンで振動する。例えば、短時間(例えば0.1秒から0.5秒、より好ましくは0.3秒)の振動を小刻みに繰り返すパターンや、長時間(例えば1秒から5秒、より好ましくは3秒)の振動を一回または複数回付与するパターンを組み合わせて所望のプログラムを構成できる。また、振動モード中、振動部14の振動パターンに合わせて環状区分部2に設けられた第1発光部15が所定の色(例えば青)で発光しで、ユーザに対して振動パターンを視覚的に伝達する。
【0070】
なお、本実施形態では、振動部14を構成する振動モータの回転数は、振動パターンによらず、例えば1分当たり5000回転から10000回転、より好ましくは7500回転としているが、振動モードにおけるプログラムに応じて振動部14の回転数すなわち振動周波数を可変としてもよい。また、本実施形態では、振動の強さも一定としているが、それを可変としてもよい。この場合、電気刺激レベル調整用に設けられた電気刺激レベル増加ボタン612および電気刺激レベル減少ボタン613を、振動モードにおける振動レベル調整に使用できる。同様に、電気刺激レベル表示用に設けられた電気刺激レベル表示部62を、振動モードにおける振動レベル表示に使用できる。
【0071】
(3)トレーニング(電気刺激あり)
本使用方法は、第1電極41および第2電極42による電気刺激を付与して、手のひらの筋肉をトレーニングするものである。
図4で述べたように、第1電極41および第2電極42による電気刺激付与を行う電気刺激モードを開始するためには、操作部6の電気刺激モードボタン611を長押しする。
【0072】
図7および
図8は、このような電気刺激モードにおいて推奨される電気刺激装置1の把持の仕方を示す。電気刺激装置1のUSB接続部8が設けられる底部(南極)が手のひらの略中央に来るように把持し、手のひらの筋肉が通電面である下半球面4に密着するようにする。
【0073】
このとき、
図8で示されるように、手首側(下側)から指先側(上側)に向かう方向と、操作部6の上下方向が略一致するように把持することが推奨される。このように把持することで、下半球面4において、指先側に配置される導電性セグメント4A(
図8の裏側にあるため図示されないが、対応する位置を点線で示す。以下同様。)と手首側に配置される導電性セグメント4Dを結ぶ上下方向に沿って手のひらの筋肉に電流を流すことができる。同様に、指先側に配置される導電性セグメント4Bと手首側に配置される導電性セグメント4Cを結ぶ上下方向に沿って手のひらの筋肉に電流を流すことができる。したがって、本実施形態によれば、手首側から指先側に向かって延在する手のひらの筋肉、特に起始と停止が手の中にある内在筋を効果的にトレーニングすることができ、握力の低下を防止できる。
【0074】
また、
図7に示されるように、電気刺激装置1において上半球面3と下半球面4を区分する環状区分部2が人差し指、中指、薬指、小指の第二関節より下の位置に来るように把持することが推奨される。手でトレーニングが必要な筋肉は指の第二関節より下側(手首側)に集中しており、第二関節より先の指先部分を通電面である下半球面4に接触させる必要がないためである。また、略球形の電気刺激装置1の上半球面3を指先部分で押さえることにより、下半球面4と手のひらの密着性を向上できる。さらに、上半球面3に設けられる指センサ11により、指の各種状態の測定を行うことができる。
【0075】
図9は、電気刺激モードの処理を示すフローチャートである。この図の説明において「S」は「ステップ」を意味する。S1では、制御部9が、電気刺激モードボタン611の長押し操作がされたか否かを判定する。本図の例では、ユーザによって電気刺激モードボタン611が0.8秒以上継続して押下された場合に長押し操作があったと判定される。
【0076】
S1において電気刺激モードボタン611の長押し操作があった場合、肌検知ステップS2に進む。最初に、S21において、制御部9が、環状区分部2に設けられる第1発光部15を所定の色とパターンで点灯させ、肌検知ステップが実行中であることをユーザに知らせる。ここで、第1発光部15の発光の色とパターンは任意に設定できるが、本実施形態では、肌検知ステップS2実行時に第1発光部15がオレンジ色で素早く点滅する。
【0077】
続くS22では、制御部9が、第1電極41および第2電極42の間に電気刺激の付与に使用される刺激電流よりも弱い微弱な肌検知用の検知電流を流し、接触検知部10がその検知電流を検知することで、肌との接触を検知する。
図7の推奨把持例にあるように、電気刺激装置1の下半球面4が手のひらに適切に接触している場合、手のひらを介して第1電極41と第2電極42の間に検知電流が流れるので、接触検知部10で接触を検知できる。
【0078】
S22において肌との接触が検知されない場合、S23に進み、所定時間が経過したか否かを制御部9が判定する。ここで、所定時間は任意に設定できるが、例えば120秒とすることができる。所定時間が経過するまでに肌との接触が検知されない場合、S24に進み、制御部9が第1発光部15を消灯し、肌検知ステップS2を終了する。
【0079】
S22において肌との接触が検知された場合、電気刺激付与ステップS3に進む。最初に、S31において、制御部9が、環状区分部2に設けられる第1発光部15を所定の色とパターンで点灯させ、電気刺激付与ステップが実行中であることをユーザに知らせる。ここで、第1発光部15の発光の色とパターンは任意に設定できるが、本実施形態では、電気刺激付与ステップS3実行時に第1発光部15が、肌検知ステップS2実行時よりも低頻度でゆっくりとオレンジ色で点滅する。
【0080】
続くS32では、制御部9が、第1電極41および第2電極42の間にS22における検知電流よりも強い刺激電流を流し、電気刺激装置1の下半球面4と接触する手のひらの筋肉に電気刺激を付与する。ここで、6段階の電気刺激レベルのうち、最弱のレベルを初期レベルとするのが好ましい。そして、S33において、ユーザによる電気刺激レベル増加ボタン612または電気刺激レベル減少ボタン613の押下操作があった場合や、予め用意された電気刺激付与プログラムにおいて電気刺激レベルの調整指示があった場合は、S34に進み、制御部9が第1電極41と第2電極の間に印加する電圧を変更することで電気刺激レベルを変更する。
【0081】
また、電気刺激付与ステップS3中も、S22と同様の肌との接触検知ステップS35を実行し、電気刺激付与中に手のひらが電気刺激装置1から離れたことを検知して電気刺激付与を安全に停止できる。この再検知ステップS35は所定時間継続し(S36)、その間に肌の接触が検知されなかった場合、電気刺激付与ステップS3を終了する。なお、S22では微弱な検知電流で接触検知を行ったが、S35ではS32で既に流している刺激電流を用いてもよいし、S22と同様に検知電流を用いてもよい。また、図示は省略するが、S35で肌との接触が検知されなかった場合、第1発光部15の発光の色とパターンをS21のものに切り替えることで、ユーザに肌との接触が検知されなかったことを報知できる。
【0082】
最後にS37において、予め設定された電気刺激付与のプログラム時間が経過した場合、電気刺激付与ステップS3を終了する。
【0083】
図10は、電気刺激付与ステップS3における、電気刺激付与プログラムの構成例を示す。この例はプログラムの継続時間を10分(600秒)とし、それを五つのフェーズPH1~PH5に分割して構成したものである。各フェーズの長さは適宜設定することができるが、本例においては以下のように設定している。
・ウォームアップフェーズPH1:約50秒
・トレーニング1フェーズPH2:約200秒
・コンディショニングフェーズPH3:約50秒
・トレーニング2フェーズPH4:約200秒
・クールダウンフェーズPH5:約100秒
【0084】
ウォームアップフェーズPH1は、電気刺激付与プログラムの最初のフェーズであり、電気刺激のレベルや周波数を徐々に増加させながら、次のトレーニング1フェーズPH2への円滑な移行を図る。電気刺激の周波数については後述するが、ウォームアップフェーズPH1では、4Hzで開始し、6Hzの中間段階を経て、最後に8Hzまで増加させる。また、本実施形態では、電気刺激レベルも徐々に増加させているが、ウォームアップフェーズPH1を通じて一定としてもよい。
【0085】
トレーニング1フェーズPH2は、手のひらの筋肉のトレーニングを行う主要フェーズである。このフェーズでは、筋肉に不完全強縮を促して持続的な負荷をかける20Hzの周波数と、筋肉に単収縮を促して瞬間的な負荷をかける4Hzの周波数を適宜組み合わせて筋肉のトレーニングを行う。また、周波数だけでなく、電気刺激付与のパターンを目的に合わせて最適に構成することにより、効果的なトレーニングを行える。電気刺激付与のパターンは様々なものが考えられるが、振動部14の振動パターンとして先に例示したようなもの、つまり、短時間(例えば0.1秒から0.5秒、より好ましくは0.3秒)の電気刺激を小刻みに繰り返すパターンや、長時間(例えば1秒から5秒、より好ましくは3秒)の電気刺激を一回または複数回付与するパターン等を使用できる。
【0086】
コンディショニングフェーズPH3は、二つのトレーニングフェーズPH2とPH4の間に設けられるインターバルフェーズであり、ウォームアップフェーズPH1と同様に4~8Hzの周波数の電気刺激付与によって筋肉の状態を調整する。
【0087】
トレーニング2フェーズPH4は、トレーニング1フェーズPH2と同様に、手のひらの筋肉のトレーニングを行う主要フェーズである。トレーニング1フェーズPH2とは異なるパターンの電気刺激を付与してトレーニングを行えるため、トレーニングが単調になるのを防止できるとともに、フェーズ毎に異なるトレーニング効果が得られる。
【0088】
クールダウンフェーズPH5は、ウォームアップフェーズPH1とは逆に電気刺激のレベルと周波数を徐々に減少させながら、トレーニング後のクールダウンを行うフェーズである。十分なクールダウンを行うため、クールダウンフェーズPH5の継続時間はウォームアップフェーズPH1の約2倍としている。周波数に関しては、ウォームアップフェーズPH1とは逆に、8Hzで開始し、6Hzの中間段階を経て、最後に4Hzまで減少させて、プログラムが終了する。
【0089】
図11は、上記のような電気刺激付与プログラムにおいて、異なる周波数の電気刺激を発生させる手法を示す。本図には、制御部9が第1電極41と第2電極42の間に印加する交流電圧の波形が示されている。この波形は時間幅t1(0.1ms)の正負の基本パルスの組合せにより構成される。正の基本パルスは第1電極41から第2電極42に向かう正方向の電流を流し、負の基本パルスは第2電極42から第1電極41に向かう負方向の電流を流す。また、この図において基本パルスの高さは一定であるが、ユーザによる電気刺激レベル増加ボタン612または電気刺激レベル減少ボタン613の押下操作等により調整可能である。
【0090】
正負の基本パルス間には時間幅t2(0.1ms)の停止期間が設けられる。この停止期間において印加電圧は0である。本図の波形においては、5個の基本パルスと5個の停止期間を含む時間幅t3(=5×t1+5×t2=1ms)の基本パルス群が構成される。そして、この基本パルス群は、その後に設けられる時間幅t4(可変)の停止期間と合わせて、時間幅t5(=t3+t4)の基本波形を構成する。
【0091】
以上のような波形の構成手法において、電気刺激装置1は、基本波形の周期t5(より具体的には停止期間t4)を適宜変更することにより、所望の周波数の電気刺激を発生させる。例えば、20Hzの電気刺激を発生させたい場合、基本波形の周期t5はその逆数の50msとする必要がある。そして、周期t5は、基本パルス群の時間幅t3(1ms)と停止期間t4の和であるため、t4を49ms(=50ms-1ms)と設定すればよい。同様に、4Hzの電気刺激を発生させたい場合、基本波形の周期t5はその逆数の250msとする必要がある。したがって、停止期間t4を249ms(=250ms-1ms)と設定すればよい。
【0092】
図12は、以上のような構成の電気刺激装置1の電気刺激モードの使用前後における手指先の血流変化を測定した結果を示す。70歳台の男性8名、女性8名の合計16名が利き手と反対側の手で電気刺激装置1を把持した際の、電気刺激モードを実行した前後での手指先の血流を測定した。図示されるように、電気刺激モード実行前の血流値を100とした場合に、電気刺激モード実行後の血流値が114.4まで増加した。このように、本実施形態の電気刺激装置1が手指先の血流の改善に効果を有することが確認された。手指先の血流は、手の筋肉の運動量に応じて変わるため、本実施形態の電気刺激装置1が手の筋肉への優れたトレーニング効果を有することが分かる。
【0093】
図13は、70歳台の男性8名、女性8名の合計16名を二つのグループに分け、「使用側」として図示される一方のグループが電気刺激装置1を使用し、「未使用側」として図示される他方のグループが電気刺激装置1を使用しなかった場合の、握力およびピンチ力の変化を相対値として示す。本図における握力とは、物を握りつぶす力であり、クラッシュ力とも呼ばれる。ピンチ力とは、指先で物をつまむ力であり、広義の握力に含まれる。初めに両グループについて握力およびピンチ力を測定し、その後「使用側」グループのみが電気刺激装置1を使用し、8週間後に再度両グループの握力およびピンチ力を測定した。
【0094】
両グループともに初回の測定結果を100とした場合、8週間後に以下の測定結果が得られた。
握力:「未使用側」101.4、「使用側」105.0
ピンチ力:「未使用側」103.4、「使用側」114.6
ここから明らかなように、電気刺激装置1を使用した「使用側」グループの握力およびピンチ力が顕著に改善しており、「未使用側」グループとの有意な差異が確認された。したがって、本実施形態の電気刺激装置1は、握力およびピンチ力の改善に大きな効果を有することが分かる。
【0095】
図14は第2実施形態に係る電気刺激装置100の構成を示す図である。電気刺激装置100は、手で把持可能な形状の手のひら電気刺激装置101と、前腕に取付可能な前腕電気刺激装置102と、手のひら電気刺激装置101と前腕電気刺激装置102を接続する接続ケーブル103を備える。
【0096】
手のひら電気刺激装置101は、以下で説明する内容を除いて、第1実施形態に係る電気刺激装置1と同一の構成を有する。前腕電気刺激装置102は、前腕の全周に亘って巻き付けて取り付け可能なシート状の装置であり、前腕との接触面において全周に亘って電気刺激付与可能な導電性の前腕電極としての第3電極48を備える。接続ケーブル103は、手のひら電気刺激装置101と前腕電気刺激装置102とを電気的に接続し、特に前腕電気刺激装置102における第3電極48を、手のひら電気刺激装置101内の制御部9に接続して、制御部9が第3電極48に電圧を印加できるように構成される。
【0097】
図15は、第2実施形態に係る電気刺激装置100の機能を表すブロック図である。
図3で示した第1実施形態に係る電気刺激装置1と大部分が共通なので、適宜説明を省略する。操作部6は、電気刺激装置100の操作を行う。操作部6は、第1実施形態と同様に手のひら電気刺激装置101の頂部に設けてもよいし、前腕電気刺激装置102に設けてもよいし、電気刺激装置100を遠隔から操作可能なリモートコントローラとして構成してもよい。
【0098】
接触検知部10は、電気刺激装置100による電気刺激付与を行う前に、電気刺激付与対象である手のひらと前腕が、それぞれ手のひら電気刺激装置101と前腕電気刺激装置102に接触していることを検知する。手のひらの接触検知は第1電極41または第2電極42を流れる電流の検知により行い、前腕の接触検知は第3電極48を流れる電流の検知により行う。
【0099】
指/腕センサ11は、第1実施形態において指の状態の測定を行う指センサ11に加え、腕の状態の測定も行う。手のひら電気刺激装置101に設けられる指センサ11とは別に、前腕電気刺激装置102に各種の腕センサ11を設けることで、腕の各種状態の測定を行う。
【0100】
制御部9は、三つの電極41、42、43の間に任意の電圧を印加して、手のひらおよび前腕に電気刺激を付与する。ここで、第1電極41と第2電極42は少なくとも手のひらとの接触面に配置される手のひら電極を構成するが、
図2および
図8の例に倣って、第1電極41が手の指先側に設けられ、第2電極42が手の手首側に設けられるものとする。このような電極構成によれば、第1電極41と第2電極42の間に印加する電圧によって第1実施形態と同様に手のひらの指先側と手首側の間に延在する筋肉(内在筋)を刺激することができ、第1電極41と第3電極48の間に印加する電圧によって手のひらの指先側と前腕の間に延在する筋肉(内在筋および外在筋)を刺激することができ、第2電極42と第3電極48の間に印加する電圧によって手のひらの手首側と前腕の間に延在する筋肉(外在筋)を刺激できる。
【0101】
特に、前腕電気刺激装置102に設けられる第3電極48を介して電気刺激を付加することにより、手のひらと前腕の間に延在する外在筋を効果的にトレーニングすることができるので、握力の低下を防止できる。なお、本実施形態において、外在筋のトレーニングに焦点を当て、内在筋のトレーニングを行う必要がない場合は、手のひら電気刺激装置101において内在筋のトレーニングを行う二種類の電極41、42を設ける必要はなく、電極を構成する全ての導電性セグメントを導通して一つの手のひら電極としてもよい。この場合、手のひら電極と前腕電極としての第3電極48の間に電圧を印加することにより、外在筋のトレーニングを行うことができる。
【0102】
振動を発生する振動部14、電気刺激装置100の動作状態を示す第1発光部15、電気刺激装置100の電気刺激レベルを示す第2発光部16は、第1実施形態と同様に手のひら電気刺激装置101に設けられるが、同等の機能を前腕電気刺激装置102に設けてもよい。
【0103】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0104】
例えば、第1実施形態では、第1電極41および第2電極42による電気刺激を付与する電気刺激モードと、振動部14による振動を付与する振動モードを個別に説明したが、両モードを組み合わせてもよい。例えば、電気刺激モードを実行して筋肉のトレーニングを行った後に、振動モードを実行して筋肉のストレッチを行うことで、トレーニングによる疲労を効果的に緩和できる。また、電気刺激と振動を同時に付与してトレーニング効果を高めることも可能である。電気刺激装置1が振動している場合は、手でしっかり把持するために手のひらの筋肉に負荷がかかった状態になっており、そこにさらに電気刺激を付与することで筋肉を高負荷でトレーニングすることができる。また、電気刺激に加えて振動を付与すると、人が電気刺激から感じる痛みを低減できるとする研究もあり、トレーニング中のユーザのストレスを低減しうる。
【0105】
第1実施形態の電気刺激装置1および第2実施形態の手のひら電気刺激装置101は、略球形であったが、電気刺激装置1および手のひら電気刺激装置101の形状はこれに限られない。例えば、球面よりも平らな接触面を有する略板状の装置として構成してもよい。第1実施形態および第2実施形態と同様、接触面には手のひらの筋肉の延在方向に沿って対向する第1電極と第2電極が設けられ、手のひらに電気刺激を付与する。このような略板状の装置では、接触面が上になるように載置された装置に上方から手のひらを載せて軽く把持して使用してもよいし、手のひらが上になるように載置された手に上方から装置を載せて軽く把持して使用してもよい。
【0106】
なお、実施の形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 電気刺激装置、2 環状区分部、3 上半球面、4 下半球面、5 凹凸構造、6 操作部、7 放射状区分部、8 USB接続部、9 制御部、10 接触検知部、11 指/腕センサ、12 通信部、13 電源、14 振動部、15 第1発光部、16 第2発光部、17 上基板、18 下基板、19 導電ピン、31 絶縁性シリコーン、41 第1電極、42 第2電極、43 導電性シリコーン、48 第3電極、61 操作ボタン部、62 電気刺激レベル表示部、100 電気刺激装置、101 手のひら電気刺激装置、102 前腕電気刺激装置。