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  • 特許-仮設足場形成治具 図1
  • 特許-仮設足場形成治具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】仮設足場形成治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/04 20060101AFI20241018BHJP
   E04G 3/18 20060101ALI20241018BHJP
   E04G 5/16 20060101ALI20241018BHJP
   E04G 5/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E04G5/04 J
E04G3/18 C
E04G5/16 B
E04G5/06 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020145470
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040662
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003498
【氏名又は名称】弁理士法人アイピールーム
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】川口 崇政
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3195041(JP,U)
【文献】特開2000-073561(JP,A)
【文献】特開2000-038837(JP,A)
【文献】登録実用新案第3116907(JP,U)
【文献】特開2003-206627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G1/00-7/34
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場を支持する支持用ブラケットと、
前記支持用ブラケットを建築物の躯体に固定する固定部と、
前記支持用ブラケットに加わる前記仮設足場の荷重に対する反力を伝達する反力伝達部とを備え、
前記反力伝達部は、真下方向から前記躯体の支持を受けずに前記支持用ブラケットと前記躯体の上層にある別の躯体との間に配され、前記反力を前記別の躯体に伝達する
ことを特徴とする仮設足場形成治具。
【請求項2】
前記反力伝達部の一端は、前記支持用ブラケットに対して着脱自在に固定され、
前記反力伝達部の他端は、前記別の躯体の裏面に対して着脱自在に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の仮設足場形成治具。
【請求項3】
前記反力伝達部の一端及び/又は他端は、長手方向にスライド自在なジャッキ構造である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設足場形成治具。
【請求項4】
前記固定部は、前記支持用ブラケットに対して着脱自在で前記躯体を押圧する押しボルトである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の仮設足場形成治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の建築物の建設時や修繕時に併設される仮設足場を支持する仮設足場形成治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、集合住宅の建設や修繕を行う場合、屋外側から施工作業を行うために仮設足場が地面に設けられていた。しかしながら、免震構造を備えた集合住宅は、地震発生時に地面の揺れと異なるように揺れるため、仮設足場に衝突して傷ついたり、仮設足場を倒したりする恐れがあった。したがって、仮設足場を地面から浮かせるように集合住宅で支持する必要があった。
【0003】
そこで、集合住宅のベランダの先端が分厚いコンクリート製の躯体の場合、上記躯体に固定する支持用ブラケットで仮設足場を浮かせる手法を採用すれば、集合住宅と仮設足場との衝突を回避できる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。これによれば、工事の進捗状況に応じて仮設足場の下側を解体撤去し、建設中の躯体周囲の下方空間を通路や資材置場等として有効利用できると効果も得られる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-323654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、上記支持用ブラケットを上記躯体に固定するために、固着用インサートを上記躯体の側面に突き刺さしている。すなわち、上記支持用ブラケットが受ける仮設足場の荷重に対する反力を上記固着用インサートのみで抑制するため、上記固着用インサートの取付が極めて重要となることから、専門工や経験を有する者による施工の割り当てに手間がかかり、結果的に仮設足場の設置時の作業性を低下させる恐れがある。
【0006】
また、上記固着用インサートと同様に、仮設足場の支持用ブラケットを固定するために、ベランダの表面から鉛直方向にケミカルアンカーを突き刺し、上記ケミカルアンカーの引き抜き強度のみで上記反力を抑制する手法もあるが、仮設足場の設置時及び撤去時の作業性を低下させたり、上記ケミカルアンカーの撤去後にベランダの復旧作業を要したりするばかりでなく、修繕時には上記ベランダの居室の居住者に生活上の不便を強いる恐れもある。
【0007】
すなわち、支持用ブラケットの固定と上記反力の抑制とを、上記固着用インサートや上記ケミカルアンカーといった単一の部材のみで両方とも行わず、少なくとも上記反力の抑制を別の部材でも行うことにより、各々の部材に加わる負荷を分散できるため、上記固着用インサートや上記ケミカルアンカーを躯体に直接突き刺す必要もなく、総じて、上述したような作業性の低下も居住者の生活上の不便も回避できる着想に、発明者は辿り着いた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、支持用ブラケットに加わる仮設足場の荷重に対する反力の抑制を分散して行い、仮設足場の設置時及び撤去時における作業性の低下や修繕時における居住者の生活上の不便を回避する仮設足場形成治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明における仮設足場形成治具は、仮設足場を支持する支持用ブラケットと、上記支持用ブラケットを建築物の躯体に固定する固定部と、上記支持用ブラケットに加わる上記仮設足場の荷重に対する反力を伝達する反力伝達部とを備え、上記反力伝達部は、真下方向から上記躯体の支持を受けずに上記支持用ブラケットと上記躯体の上層にある別の躯体との間に配され、上記反力を上記別の躯体に伝達することを特徴とする。
【0010】
上記反力伝達部の一端は、上記支持用ブラケットに対して着脱自在に固定され、上記反力伝達部の他端は、上記別の躯体の裏面に対して着脱自在に固定されることが望ましい。
【0011】
上記反力伝達部の一端及び/又は他端は、長手方向にスライド自在なジャッキ構造であることが望ましい。
【0012】
上記固定部は、上記支持用ブラケットに対して着脱自在で上記躯体を押し付ける押しボルトであることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持用ブラケットが受ける仮設足場の荷重に対する反力の抑制を固定部と反力伝達部とで分散して行い、仮設足場の設置時及び撤去時における作業性の低下や修繕時における居住者の生活上の不便を回避することを期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における仮設足場形成治具の使用状態を示す斜視図である。
図2】上記仮設足場形成治具の動作状況を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態における仮設足場形成治具(以下、「本仮設足場形成治具」ともいう。)について説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの部位の引き出し線をかくれ線(破線)や想像線(二点鎖線)で示した部分もある。説明において、上、下、縦、横、垂直、水平等の向きを示す用語は、基本的に建築物を基準とする。
【0016】
まず、図1を参照しつつ、本仮設足場形成治具の構造について説明する。
【0017】
図1に示すとおり、本仮設足場形成治具は、要するに、2階以上の複数階で構成される集合住宅Mの建設時や修繕時に併設される仮設足場Sの形成に用いられるものである。集合住宅Mは、各階層の居室のベランダやバルコニー、又は共用廊下に該当して外側に突出している躯体C1を備えている。躯体C1は、先端から縦方向に立ち上がった躯体先端部Caを有する。躯体先端部Caは、例えば、ガラス製やアルミ製の板材で構成される手摺を据え付ける部位であり、厚みに限定はない。
【0018】
仮設足場Sは、公知の構造でよく、基本的に、縦方向に設けた複数の建地Tと、建地Tの所定の高さに設けた足場板Pとで構成されており、高さに限定はないが、集合住宅Mの3階~5階の高さに至る分を1セットとして本仮設足場形成治具に支持される。仮設足場Sは、最下端のみを本仮設足場形成治具で支持され、最下端より上部を付番しない壁つなぎでつながれている。すなわち、1セット目の仮設足場Sの上に位置する2セット目の仮設足場は、別の仮設足場形成治具に支持される。
【0019】
本仮設足場形成治具は、詳細には、仮設足場Sを支持する支持用ブラケット1と、支持用ブラケット1を集合住宅Mの躯体C1の躯体先端部Caに固定する固定部2と、支持用ブラケット1に加わる仮設足場Sの荷重に対する反力を伝達する反力伝達部3とを備え、反力伝達部3は、支持用ブラケット1と躯体C1の上層にある別の躯体C2との間に配され、上記反力を別の躯体C2に伝達する。本仮設足場形成治具は、所定の建地ピッチで少なくとも2つ取り付けられ、換言すれば、仮設足場Sの総幅に応じて2つ以上取り付けられてもよい。
【0020】
この構成によれば、反力伝達部3が仮設足場Sの荷重に対する反力を受けて上方に突き上げられ、別の躯体C2の裏面に押し付けられることで、上記反力が別の躯体C2に伝達され、換言すると、反力伝達部3を介して別の躯体C2が上記反力を負担するため、支持用ブラケットに加わる上記反力の抑制を分散して行えることから、固定部2を躯体C1の表面や側面に突き刺さなくても仮設足場Sを安定して支持できる。
【0021】
支持用ブラケット1は、第1棒材11と、第1棒材11に略直交して溶接等で取り付けられた第2棒材12と、第1棒材11及び第2棒材12に傾斜して溶接等で取り付けられた第3棒材13とを備えた略三角形状の治具であり、公知の素材・形状・寸法・重量でよく、躯体Cに取り付けられた状態で、第1棒材11が躯体先端部Caを超えて集合住宅Mの内側と外側とに略水平に突出しており、第2棒材12が躯体先端部Caの外側面に面している。
【0022】
第1棒材11は、建地Tの挿入用として上方向に突出している筒状の第1ソケット11a,11aを備えている。第1棒材11の縦寸法は、ガラス製やアルミ製の手摺の下端面と躯体先端部Caの頂上面との隙間の高さ寸法より低くてもよく、上記高さ寸法は40mm程度でもよい。
【0023】
固定部2は、支持用ブラケット1が躯体先端部Caに取り付けられた状態で、躯体先端部Caより集合住宅Mの内側に位置しており、支持用ブラケット1の第1棒材11に対して着脱自在であり、第1棒材11を挿しこでスライド自在にする筒状のスライド部21と、スライド部21から下方向に突出している付番しない突出部を介して躯体先端部Caを集合住宅Mの外側に向かって押圧する押しボルト22と、反力伝達部3の挿入用としてスライド部21から上方向に突出している第2ソケット23とを備えている。
【0024】
スライド部21は、躯体先端部Caに対する押しボルト22の押圧度合いに応じてスライドする。押しボルト22は、躯体先端部Caを押圧して支持用ブラケット1の第2棒材12と共に躯体先端部Caを挟むことで、支持用ブラケット1を固定する。第2ソケット23は、筒状で、内側面を雌ネジ状に形成されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、躯体先端部Caにガラス製やアルミ製の手摺が取り付けてあっても、集合住宅Mの外側から第1棒材11を上記手摺の下端面と躯体先端部Caの頂上面との隙間から挿しこみ、その後に集合住宅Mの内側から第1棒材11に固定部2のスライド部21を挿しこんで所定の位置までスライドし、最後に押しボルト22で躯体先端部Caを押圧することで、支持用ブラケット1を躯体Cに容易に固定できる。
【0026】
反力伝達部3は、鋼管等の棒材であるが、鉄板でもよく、寸法・形状・重量は限定しない。反力伝達部3の一端は、支持用ブラケット1に対して着脱自在に固定され、具体的には、固定部2の第2ソケット23に挿入のみされて固定されてもよく、雄ねじ状に形成されていて雌ネジ状の第2ソケット23にねじ止めされてもよい。反力伝達部3の他端は、別の躯体C2の裏面に対して着脱自在に固定され、具体的には、支持用ブラケット1に加わる仮設足場Sの荷重に対する反力で別の躯体C2の裏面に押し付けのみされて固定されてもよく、上記裏面に対する滑り止め部材を端面に取り付けてあってもよい。
【0027】
反力伝達部3の全長は、躯体先端部Caの頂上面から別の躯体C2の裏面までの高さ寸法と略同等でも、上記高さ寸法より短くてもよく、短い場合は反力伝達部3の一端側及び/又は他端側に所定の下敷き部材を設けて高さ調整してもよい。
【0028】
この構成によれば、支持用ブラケット1を躯体C1に取り付けた後、反力伝達部3を支持用ブラケット1と別の躯体C2との間に容易に設置できる。すなわち、固定部2の第2ソケット23により反力伝達部3の一端を支持用ブラケット1に対して容易に固定及び位置決めでき、その後に反力伝達部3の他端を別の躯体C2の裏面に対して固定できるため、支持用ブラケット1に加わる仮設足場Sの荷重に対する反力を確実に別の躯体C2に伝達できる。
【0029】
反力伝達部3の一端及び/又は他端は、長手方向にスライド自在なジャッキ構造であってもよい。具体的には、反力伝達部3の一端及び他端は、各々の端面から長手方向に出し入れ自在な図示しないネジ式のジャッキを有し、この場合、反力伝達部3の全長は、躯体先端部Caの頂上面から別の躯体C2の裏面までの高さ寸法より短くてもよい。すなわち、反力伝達部3は、上記ジャッキの上げ下げにより着脱自在な構造であってもよい。
【0030】
この構成によれば、集合住宅Mの仕様や支持用ブラケット1の仕様に関わらず、反力伝達部3を介して支持用ブラケット1に加わる仮設足場Sの荷重に対する反力を別の躯体C2に伝達できる。すなわち、躯体先端部Caの頂上面から別の躯体C2の裏面までの高さ寸法や支持用ブラケット1の第1棒材11の高さ寸法を厳密に考慮して反力伝達部3を設計しなくてもよく、反力伝達部3の製造も設置もどちらも容易に行えることを期待できる。
【0031】
次に、図2を参照しつつ、本仮設足場形成治具の動作について説明する。
【0032】
図2に示すとおり、躯体C1に取り付けられた支持用ブラケット1に、仮設足場Sの荷重が矢印L1方向に加わると、躯体先端部Caを支点にして、支持用ブラケット1の外側が矢印R1方向に動こうとするため、支持用ブラケット1の内側が矢印R2方向に動こうとする。すなわち、矢印L1方向における仮設足場Sの荷重に対して、矢印R2方向の反力が支持用ブラケット1の内側に生じる。
【0033】
固定部2は、支持用ブラケット1を躯体先端部Caに固定しつつ、矢印R2方向の反力を負担している。反力伝達部3は、支持用ブラケット1及び別の躯体C2の裏面に対して固定されており、上記反力により押し上げられる。そのため、上記反力は、矢印L2方向に生じ、別の躯体C2に伝達される。すなわち、固定部2と反力伝達部3とが、上記反力を分散して負担するため、ケミカルアンカーのように固定部2を躯体C1に突き刺さなくても、上記反力を抑制できる。
【0034】
なお、本実施形態に示した仮設足場形成治具は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる部位の位置・形状・寸法や、部位同士の関係を含む。
【符号の説明】
【0035】
1 支持用ブラケット、11 第1棒材、11a 第1ソケット、12 第2棒材、13 第3棒材、2 固定部、21 スライド部、22 押しボルト、23 第2ソケット、3 反力伝達部、S 仮設足場、T 建地、P 足場板、C 躯体(C1 躯体、Ca 躯体先端部、C2 別の躯体)、M 集合住宅
図1
図2