(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】柱と梁との接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/21 20060101AFI20241018BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E04B1/21 B
E04B1/58 508A
E04B1/58 601A
(21)【出願番号】P 2020152712
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中澤 春生
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-342679(JP,A)
【文献】特開2009-197560(JP,A)
【文献】特開2019-82005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/21
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の柱に互いに直交するように配置された鉄筋コンクリート造の第一梁及び第二梁が接合される柱と梁との接合構造であって、
前記第一梁及び前記第二梁の上側に配置されたスラブ内に、前記柱の前記第一梁側を向く仕口面である第一仕口面の外側に配置された第一上部添え筋と、
前記スラブ内に、前記柱の前記第二梁側を向く仕口面である第二仕口面の外側に配置された第二上部添え筋と、を備え、
前記第一上部添え筋は、
前記第二梁の延在方向に沿って延びる第一直筋部と、
該第一直筋部の端部から下方に向かって折曲されるとともに、先端部が前記第一梁の内部に配置された下向き部と、を有し、
前記第二上部添え筋は、前記第一梁の延在方向に沿って延びて
おり、
前記柱の内部を水平方向に貫通し、前記柱と前記梁とを連結する接合梁主筋を有し、
前記接合梁主筋と、前記梁に設けられた梁主筋と、が同軸上に配置され、前記接合梁主筋と前記梁主筋とは機械式継手を介して接合されていることを特徴とする柱と梁との接合構造。
【請求項2】
前記下向き部の上部は、前記スラブのスラブコンクリート部に埋設され、
前記下向き部の下部は、前記柱と前記梁との間に設けられる接合コンクリート部に埋設されている請求項1に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項3】
鉄筋コンクリート造の柱に互いに直交するように配置された鉄筋コンクリート造の第一梁及び第二梁が接合される柱と梁との接合構造であって、
前記第一梁及び前記第二梁の上側に配置されたスラブ内に、前記柱の前記第一梁側を向く仕口面である第一仕口面の外側に配置された第一上部添え筋と、
前記スラブ内に、前記柱の前記第二梁側を向く仕口面である第二仕口面の外側に配置された第二上部添え筋と、を備え、
前記第一上部添え筋はU字型鉄筋であり、湾曲部分が第一梁の直上に配置され、
前記第二上部添え筋は、前記第一梁の延在方向に沿って延びて
おり、
前記柱の内部を水平方向に貫通し、前記柱と前記梁とを連結する接合梁主筋を有し、
前記接合梁主筋と、前記梁に設けられた梁主筋と、が同軸上に配置され、前記接合梁主筋と前記梁主筋とは機械式継手を介して接合されていることを特徴とする柱と梁との接合構造。
【請求項4】
前記第一仕口面及び前記第二仕口面から突出し、前記第二梁の内部に配置された下部添え筋を備え、
該下部添え筋の先端部は、上方に向かって折曲されている請求項1
~3のいずれか一項に記載の柱と梁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁との接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋コンクリート造の柱梁フレーム構造では、一般的に梁の変形性能を確保するために、梁端部に降伏ヒンジが形成されるように設計されている。しかし、梁端部のヒンジゾーンに梁主筋の継手を設けると、梁主筋とコンクリート間の付着や継手端とコンクリート間の支圧の影響から、予期しない破壊が生じたり、変形性能や損傷状況が劣化したりする可能性がある。
【0003】
そこで、仕口面(梁端部)から梁せい寸法の1/2以上の長さ離間した位置に鉄筋継手を設ける方法がある。また、下記の特許文献1では、柱を貫通して梁の内部に埋設されるカットオフ筋を設けて、鉄筋継手よりも梁スパン内側に降伏ヒンジを計画するヒンジリロケーションを施す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、仕口面から梁せい寸法の1/2以上の長さ離間した位置に鉄筋継手を設ける方法では、鉄筋継手の位置が仕口面から遠くなり、特にプレキャスト工法の場合に後打ちコンクリート部分が大きくなってしまう場合がある。また、特許文献1に記載の方法では、カットオフする鉄筋の端部に支圧板が必要であったりするとともに、その鉄筋の長さのためにプレキャスト工法の場合の後打ちコンクリート部の範囲(長さ)の短縮は限定的になってしまう。このため、いずれの方法も、現場での施工に時間がかかるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、梁のヒンジ位置を仕口面から梁側に離れた位置に移動させるヒンジリロケーションを簡便に行うことができる柱と梁との接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る柱と梁との接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱に互いに直交するように配置された鉄筋コンクリート造の第一梁及び第二梁が接合される柱と梁との接合構造であって、前記第一梁及び前記第二梁の上側に配置されたスラブ内に、前記柱の前記第一梁側を向く仕口面である第一仕口面の外側に配置された第一上部添え筋と、前記スラブ内に、前記柱の前記第二梁側を向く仕口面である第二仕口面の外側に配置された第二上部添え筋と、を備え、前記第一上部添え筋は、前記第二梁の延在方向に沿って延びる第一直筋部と、該第一直筋部の端部から下方に向かって折曲されるとともに、先端部が前記第一梁の内部に配置された下向き部と、を有し、前記第二上部添え筋は、前記第一梁の延在方向に沿って延びており、前記柱の内部を水平方向に貫通し、前記柱と前記梁とを連結する接合梁主筋を有し、前記接合梁主筋と、前記梁に設けられた梁主筋と、が同軸上に配置され、前記接合梁主筋と前記梁主筋とは機械式継手を介して接合されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された柱と梁との接合構造では、第一上部添え筋及び第二上部添え筋を設けることで、塑性ヒンジ位置を柱の仕口面から離れた位置へ移動させるヒンジリロケーションを行うことができる。よって、従来のように、仕口面から梁せい寸法の1/2以上の長さ離間した位置に鉄筋継手を設けたり、柱を貫通して梁の内部に埋設されるカットオフ筋を設けたりする場合よりも、梁主筋の突き出し長さを短縮して、現場打ちコンクリートの長さを短くすることができるため、施工性よく簡便にヒンジリロケーションを行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱に互いに直交するように配置された鉄筋コンクリート造の第一梁及び第二梁が接合される柱と梁との接合構造であって、前記第一梁及び前記第二梁の上側に配置されたスラブ内に、前記柱の前記第一梁側を向く仕口面である第一仕口面の外側に配置された第一上部添え筋と、前記スラブ内に、前記柱の前記第二梁側を向く仕口面である第二仕口面の外側に配置された第二上部添え筋と、を備え、前記第一上部添え筋はU 字型鉄筋であり、湾曲部分が第一梁の直上に配置され、前記第二上部添え筋は、前記第一梁の延在方向に沿って延びており、前記柱の内部を水平方向に貫通し、前記柱と前記梁とを連結する接合梁主筋を有し、前記接合梁主筋と、前記梁に設けられた梁主筋と、が同軸上に配置され、前記接合梁主筋と前記梁主筋とは機械式継手を介して接合されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された柱と梁との接合構造では、第一上部添え筋及び第二上部添え筋を設けることで、塑性ヒンジ位置を柱の仕口面から離れた位置へ移動させるヒンジリロケーションを行うことができる。よって、従来のように、仕口面から梁せい寸法の1/2以上の長さ離間した位置に鉄筋継手を設けたり、柱を貫通して梁の内部に埋設されるカットオフ筋を設けたりする場合よりも、梁主筋の突き出し長さを短縮して、現場打ちコンクリートの長さを短くすることができるため、施工性よく簡便にヒンジリロケーションを行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造は、前記第一仕口面及び前記第二仕口面から突出し、前記第二梁の内部に配置された下部添え筋を備え、該下部添え筋の先端部は、上方に向かって折曲されていてもよい。
【0012】
このように構成された柱と梁との接合構造では、下部添え筋を設けることで、より確実にヒンジリロケーションを行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る柱と梁との接合構造によれば、梁のヒンジ位置を仕口面から梁側に離れた位置に移動させるヒンジリロケーションを簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す模式図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す鉛直断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る柱と梁との接合構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の柱と梁との接合構造10では、鉄筋コンクリート造の柱1と、鉄筋コンクリート造の梁2とが接合されている。本実施形態では、柱1に対して3方向から梁2(梁(第一梁)2A、梁(第一梁)2B、梁(第二梁)2C)が接合されている。梁2の上側には、スラブ3(
図2参照。以下同じ。)が配置されている。
【0016】
ここで、互いに同軸上に配置される梁2A,2Bの延在方向をX方向と称することがある。梁2A,2Bの延在方向と直交する方向に延在する梁2Cの延在方向をY方向と称することがある。
【0017】
柱1は、角柱形状をなすプレキャストコンクリート部材である。柱1は、複数の柱主筋11と、柱コンクリート部12と、不図示の複数の帯筋と、を有している。柱主筋11は、鉛直方向に延びている。柱主筋11及び帯筋は、柱コンクリート部12に埋設されている。
【0018】
梁2は、梁部材20を有している。梁部材20は、角柱形状をなすプレキャストコンクリート部材である。
【0019】
梁部材20は、複数の梁主筋21と、複数のあばら筋22と、梁コンクリート部23と、を有している。梁主筋21は、各梁2の延在方向に沿って延びている。梁主筋21は、梁コンクリート部23に埋設されている。梁主筋21の先端部は、梁コンクリート部23の端面(柱1側を向く側の端面)23dから突出している。
【0020】
あばら筋22は、複数の梁主筋21を囲繞するように配置されている。あばら筋22の上部及び複数の梁主筋21のうち上側の梁主筋21uは、梁コンクリート部23から突出していて後述するスラブ3のスラブコンクリート部32(
図2参照。以下同じ。)に埋設されている。あばら筋22のそれ以外の部分及び上側の梁主筋21u以外の梁主筋21は、梁コンクリート部23に埋設されている。
【0021】
図2は、柱と梁との接合構造10を示す鉛直断面図である。
図2に示すように、スラブ3は、梁2の上側に配置されている。スラブ3は、複数のスラブ筋(不図示)と、スラブコンクリート部32と、を有している。
【0022】
複数のスラブ筋は、X方向やY方向等の水平方向に沿って配置されている。複数のスラブ筋及び上側の梁主筋21uは、水平面に沿う板状に形成されたスラブコンクリート部32に埋設されている。
【0023】
図1に示すように、柱と梁との接合構造10は、複数の第一接合梁主筋41と、複数の第二接合梁主筋43と、複数の第一上部添え筋51と、複数の第二上部添え筋52と、複数の下部添え筋53と、接合コンクリート部54(
図2参照。以下同じ。)と、を備えている。
【0024】
第一接合梁主筋41は、柱1の内部を貫通して、柱1の仕口面16から突出して梁2側に延びている。具体的には、X方向に延びる第一接合梁主筋41Aは、梁2A側を向く仕口面(第一仕口面)16Aから梁2A側に突出するとともに、梁2B側を向く仕口面(第一仕口面)16Bから梁2B側に突出している。Y方向に延びる第一接合梁主筋41Bは、梁2C側を向く仕口面(第二仕口面)16Cから梁2C側に突出している。第一接合梁主筋41は、普通強度鉄筋でもよいし、高強度鉄筋材料で構成されていてもよい。
【0025】
本実施形態では、第一接合梁主筋41は、梁主筋21と対応する位置に、梁主筋21と同軸上で配置されている。第一接合梁主筋41の端部は、梁主筋21の端部とカプラ等の鉄筋継手42を介して接合されている。
【0026】
第二接合梁主筋43は、柱1の内部を貫通して、柱1の仕口面16から突出して梁2側に延びている。具体的には、X方向に延びる第二接合梁主筋43Aは、仕口面16Aから梁2A側に突出するとともに、仕口面16Bから梁2B側に突出している。Y方向に延びる第二接合梁主筋43Bは、仕口面16Cから梁2C側に突出している。第二接合梁主筋43Bは、第二接合梁主筋43Aよりも高い位置に配置されている。
【0027】
本実施形態では、第二接合梁主筋43は、上側の梁主筋21uと対応する位置に、上側の梁主筋21uと同軸で配置されている。第二接合梁主筋43の端部は、上側の梁主筋21uの端部とカプラ等の鉄筋継手44を介して接合されている。
【0028】
第一上部添え筋51は、L字状をなしている。第一上部添え筋51は、第一直筋部51aと、折曲筋部(下向き部)51bと、を有している。
【0029】
第一直筋部51aは、梁2Cの延在方向に沿って延びている。第一直筋部51aは、梁コンクリート部23の端面23dよりも柱1側に配置されている。Y方向から見て、第一直筋部51aは、梁2Cの奥行方向の外側且つ上方の位置に配置されている。第一直筋部51aは、柱1の仕口面16A,16Bの外側に沿って配置されている。第一直筋部51aは、スラブ3のスラブコンクリート部32に埋設されている。
【0030】
折曲筋部51bは、第一直筋部51aの端部から下方に向かって折曲されている。折曲筋部51bの上部はスラブ3のスラブコンクリート部32に埋設され、折曲筋部51bのそれ以外の部分は後述する接合コンクリート部54に埋設されている。
【0031】
本実施形態では、第一上部添え筋51は、柱1の仕口面16A,16Bの外側に、X方向に離間して2本ずつ配置されている。なお、第一上部添え筋51の本数は適宜設定可能である。
【0032】
第二上部添え筋52は、直線状に形成されている。第二上部添え筋52は、梁2A,2Bの延在方向に沿って延びている。第二上部添え筋52は、柱1の仕口面16Cの外側に配置されている。第二上部添え筋52は、第二接合梁主筋43の下方(X方向に延びる上側の梁主筋21uと同じ高さ)に配置されている。第二上部添え筋52の長さは、柱1の幅(X方向の長さ)よりも長い。Y方向から見て、第二上部添え筋52の端部は、梁コンクリート部23の端面23dまでは達していない。第二上部添え筋52は、スラブ3のスラブコンクリート部32に埋設されている。
【0033】
本実施形態では、第二上部添え筋52は、柱1の仕口面16Cの外側に、Y方向に離間して3本配置されている。なお、第二上部添え筋52の本数は適宜設定可能である。
【0034】
下部添え筋53は、L字状をなしている。下部添え筋53は、下部直筋部53aと、折曲筋部53bと、を有している。
【0035】
下部添え筋53は、柱1の内部を貫通して、柱1の仕口面16から突出して梁2側に延びている。具体的には、X方向に延びる下部添え筋53Aは、仕口面16Aから梁2A側に突出している。X方向に延びる下部添え筋53Bは、仕口面16Bから梁2B側に突出している。Y方向に延びる下部添え筋53Cは、仕口面16Cから梁2C側に突出している。なお、下部添え筋53Aと下部添え筋53Bとは柱1の内部で接合されて、1本の鉄筋であってもよい。
【0036】
下部直筋部53aは、梁2の延在方向に沿って延びている。下部直筋部53aは、柱1の内部に配置されるとともに、仕口面16から突出している。下部直筋部53aは、第一接合梁主筋41の上方に配置されている。
【0037】
折曲筋部53bは、下部直筋部53aの端部から上方に向かって折曲されている。下部直筋部53aおける柱1の仕口面16から突出する部分及び折曲筋部53bは後述する接合コンクリート部54に埋設されている。
【0038】
本実施形態では、下部添え筋53は、梁2A,2B、2C側にそれぞれ、梁2の奥行方向に離間して3本ずつ配置されている。なお、下部添え筋53の本数は適宜設定可能である。
【0039】
図2に示すように、接合コンクリート部54は、現場打ちコンクリートである。接合コンクリート部54は、梁コンクリート部23の端面23dから柱1の仕口面16までの範囲に、梁コンクリート部23の高さと略同一の高さで充填されたコンクリートである。
【0040】
梁コンクリート部23の端面23dから柱1の仕口面16までの部分(接合コンクリート部54及び接合コンクリート部54に埋設されている鉄筋)は、梁2の一部として構成され、梁接合部2X(
図2参照。以下同じ。)と称することがある。
【0041】
このように構成された柱と梁との接合構造10では、第一上部添え筋51及び第二上部添え筋52を設けることで、塑性ヒンジ位置を柱1の仕口面16から離れた位置へ移動させるヒンジリロケーションを行うことができる。よって、従来のように、仕口面から梁せい寸法の1/2以上の長さ離間した位置に鉄筋継手を設けたり、柱を貫通して梁の内部に埋設されるカットオフ筋を設けたりする場合よりも、梁主筋21の梁コンクリート部23の端面23dからの突き出し長さを短縮して、現場打ちコンクリートの長さ(梁接合部2Xの接合コンクリート部54の長さ)を短くすることができるため、施工性よく簡便にヒンジリロケーションを行うことができる。
【0042】
また、下部添え筋53を設けることで、より確実にヒンジリロケーションを行うことができる。
【0043】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態の変形例に係る柱と梁との接合構造について、主に
図3を用いて説明する。
以下の実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
図3は、本発明の第二実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す模式図である。
図3に示すように、本実施形態では、柱と梁との接合構造10Aは、複数の第一接合梁主筋41と、複数の第二接合梁主筋43と、複数の第一上部添え筋55と、複数の第二上部添え筋52と、複数の下部添え筋53と、接合コンクリート部54(
図2参照。以下同じ。)と、を備えている。
【0045】
第一上部添え筋55は、U字状をなしたU字型鉄筋である。第一上部添え筋55は、柱1の仕口面16A,16Bの外側に沿って配置されている。
【0046】
第一上部添え筋55は、一対の直筋部55aと、湾曲筋部(湾曲部分)55bと、を有している。直筋部55aは、梁2Cの延在方向に沿って延びている。一対の直筋部55aは、X方向に離間して配置されている。直筋部55aは、梁コンクリート部23の端面23dよりも柱1側に配置されている。Y方向から見て、直筋部55aは、梁2Cの奥行方向の外側且つ上方の位置(Y方向に延びる上側の梁主筋21uと同じ高さ)に配置されている。直筋部55aは、柱1の仕口面16A,16Bの外側に配置されている。直筋部55aは、スラブ3のスラブコンクリート部32に埋設されている。
【0047】
湾曲筋部55bは、一対の第一上部添え筋55の端部どうしを接続するとともに、湾曲形成されている。湾曲筋部55bは、梁2A,2Bの梁接合部2Xの直上(Y方向に延びる上側の梁主筋21uと同じ高さ)に配置されている。湾曲筋部55bは、スラブ3のスラブコンクリート部32に埋設されている。
【0048】
本実施形態では、第一上部添え筋55は、柱1の仕口面16A,16Bの外側に、それぞれ1本ずつ配置されている。なお、第一上部添え筋55の本数は適宜設定可能である。
【0049】
このように構成された柱と梁との接合構造10Aでは、第一上部添え筋55及び第二上部添え筋52を設けることで、塑性ヒンジ位置を柱1の仕口面16から離れた位置へ移動させるヒンジリロケーションを行うことができる。よって、従来のように、仕口面から梁せい寸法の1/2以上の長さ離間した位置に鉄筋継手を設けたり、柱を貫通して梁の内部に埋設されるカットオフ筋を設けたりする場合よりも、梁主筋21の梁コンクリート部23の端面23dからの突き出し長さを短縮して、現場打ちコンクリートの長さ(梁接合部2Xの接合コンクリート部54の長さ)を短くすることができるため、施工性よく簡便にヒンジリロケーションを行うことができる。
【0050】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、上記に示す実施形態では、柱と梁との接合構造10は下部添え筋53を備えているが、本発明はこれに限られない。柱と梁との接合構造10は下部添え筋53を備えていなくてもよい。
【0052】
また、上記に示す実施形態では、柱1及び梁2の梁部材20は、プレキャストコンクリート部材であるが、本発明はこれに限られない。柱及び梁全体が現場打ちコンクリートの鉄筋コンクリート造であってもよい。
【0053】
また、上記に示す実施形態では、柱1に梁2A,2B,2cが接合されているが、本発明はこれに限られない。柱1に互いに直交する梁2A,2C(または梁2B,2C)が接合される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…柱
2…梁
2A…梁(第一梁)
2B…梁(第一梁)
2C…梁(第二梁)
2X…梁接合部
3…スラブ
10,10A…柱と梁との接合構造
11…柱主筋11
12…柱コンクリート部
16…仕口面
16A…仕口面(第一仕口面)
16B…仕口面(第一仕口面)
16C…仕口面(第二仕口面)
20…梁部材
21…梁主筋
21u…上側の梁主筋
22…あばら筋
23…梁コンクリート部
32…スラブコンクリート部
41…第一接合梁主筋
43…第二接合梁主筋
51…第一上部添え筋
51a…第一直筋部51a
51b…折曲筋部(下向き部)
52…第二上部添え筋
53…下部添え筋
53a…下部直筋部
53b…折曲筋部
54…接合コンクリート部
55…第一上部添え筋
55a…直筋部
55b…湾曲筋部(湾曲部分)