(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法及び回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20241018BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241018BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H01L33/00 Z
(21)【出願番号】P 2020174023
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】奥野 武志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良和
(72)【発明者】
【氏名】梶山 康一
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143403(WO,A1)
【文献】特開2019-176154(JP,A)
【文献】特開2019-015899(JP,A)
【文献】特開2009-166410(JP,A)
【文献】特開平11-142878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
G09F 9/33
H01L 33/62
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロLEDを駆動する画素回路を含む画素回路チップを備えた回路基板の製造方法であって、
シリコンのウェハの表面に予め定められた配列に従って画素回路を形成することと、
前記画素回路上に接続用の電極パッドを形成することと、
前記ウェハの表面を、前記画素回路を介して第1の転写基板に貼り付けた後、前記ウェハを薄型化することと、
薄型化したウェハに対して、前記画素回路に連なる領域のウェハ部分を残すようにしてエッチングをすることにより、分離化したウェハ部分と前記電極パッドを有する画素回路とからなる画素回路チップを前記第1の転写基板に転写することと、
前記第1の転写基板を、前記画素回路チップを介して第2の転写基板に貼り付けた後、前記第1の転写基板を剥離することにより、前記画素回路チップを反転させて前記第2の転写基板に転写することと、
前記第2の転写基板を、前記画素回路チップを介して実装用の基板に貼り付けた後、前記画素回路チップを前記基板に接着して実装することと、
前記基板から前記第2の転写基板を剥離することと、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記エッチングは、ウエットエッチングであることを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記ウエットエッチングをすることにより、前記ウェハ部分を台形形状とすることを特徴とする請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記基板から前記第2の転写基板を剥離する手段として、レーザリフトオフを用いることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板から前記第2の転写基板を剥離する手段として、紫外線照射を用いることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロLEDを駆動する画素回路チップを備えた回路基板の製造方法及び回路基板に関し、特に、コストのかかる大規模な設備を用いずに製造時間を短縮することができる、回路基板の製造方法及び回路基板に係るものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイは、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイと比較して、高輝度、高コントラスト、高信頼性といったデバイス特性での優位性に加え、ディスプレイのフレキシブル化も含めて次世代ディスプレイへの適用が期待されている。
【0003】
マイクロLEDを駆動するための回路基板(バックプレーン)としては、低温多結晶シリコンTFT(LTPS-TFT(Low Temperature Polycrystalline Silicon Thin Film Transistor))を備える回路基板や、酸化物TFTを備える回路基板を挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来から、チップの形状のまま回路基板に実装する方式として、集積回路のベアチップをプリント基板(回路基板)に実装する方法とその際に用いられるフリップチップボンダーが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018―185515号公報
【文献】特開平7―153784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイクロLEDを駆動するための回路基板として、低温多結晶シリコンTFT又は酸化物TFTを備える回路基板を製造する場合、一般的に大規模な設備が必要でコストがかかるという問題が生じる。
【0007】
一方、大規模な設備の使用を避けるため、低温多結晶シリコンTFT又は酸化物TFTを備える回路基板とは異なる構成からなる、マイクロLEDを駆動するための回路基板を製造することを考えた場合、特許文献2に記載されているようなフリップチップボンダーを使用する工程を組み込むと、チップの形状のままの状態でそのチップを1つずつ取り出して回路基板に実装するため、製造時間がかかるという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題に対処し、マイクロLEDを駆動するための回路基板を製造するに際し、コストのかかる大規模な設備を用いずに製造時間を短縮することができる、回路基板の製造方法及び回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の回路基板の製造方法は、マイクロLEDを駆動する画素回路を含む画素回路チップを備えた回路基板の製造方法であって、シリコンのウェハの表面に予め定められた配列に従って画素回路を形成することと、上記画素回路上に接続用の電極パッドを形成することと、上記ウェハの表面を、上記画素回路を介して第1の転写基板に貼り付けた後、上記ウェハを薄型化することと、薄型化したウェハに対して、上記画素回路に連なる領域のウェハ部分を残すようにしてエッチングをすることにより、分離化したウェハ部分と上記電極パッドを有する画素回路とからなる画素回路チップを上記第1の転写基板に転写することと、上記第1の転写基板を、上記画素回路チップを介して第2の転写基板に貼り付けた後、上記第1の転写基板を剥離することにより、上記画素回路チップを反転させて上記第2の転写基板に転写することと、上記第2の転写基板を、上記画素回路チップを介して実装用の基板に貼り付けた後、上記画素回路チップを上記基板に接着して実装することと、上記基板から上記第2の転写基板を剥離することと、を含む。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の回路基板は、マイクロLEDを駆動する画素回路と,該画素回路の一方の面上に設けられた接続用の電極パッドと,上記画素回路の他方の面上に設けられシリコンのウェハがエッチングにより分離化された状態のウェハ部分と,を有する画素回路チップと、上記電極パッドと接続するように予め定められた配列に従って、上記画素回路チップを実装した基板と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回路基板の製造方法によれば、低温多結晶シリコンTFT又は酸化物TFTを備える回路基板とは異なる構成からなる、マイクロLEDを駆動するための回路基板を、上記の製造方法により製造するため、コストのかかる大規模な設備を用いる必要がなく、また、予め定められた複数個の上記画素回路チップを一括して実装するため、製造時間を短縮することができる。
【0012】
本発明の回路基板によれば、本発明の製造方法により、コストのかかる大規模な設備を用いずに製造時間が短縮されて製造される回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による回路基板の製造方法の工程を示す流れ図である。
【
図2】画素回路を表面に形成したウェハの平面図である。
【
図3】
図2に示す破線で囲まれた領域の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図4】画素回路の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】一対の電極パッドが形成された画素回路を含むウェハの構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図6】ウェハの表面を、画素回路を介して第1の転写基板3に貼り付ける工程を示す説明図である。
【
図9】ウエットエッチングによる画素回路チップの分離化に伴う転写の工程を示す説明図である。
【
図10】第1の転写基板を、画素回路チップを介して第2の転写基板に貼り付ける工程を示す説明図である。
【
図11】画素回路チップを反転させて第2の転写基板に転写する工程を示す説明図である。
【
図12】画素回路チップを基板に接着して実装する工程を示す説明図である。
【
図13】基板から第2の転写基板を剥離する工程を示す説明図である。
【
図14】本発明による回路基板の構成を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図15】本発明による回路基板を備えた第1のマイクロLEDディスプレイの構成を示す説明図である。
【
図16】マイクロLEDの構成を示す説明図である。
【
図17】本発明による回路基板を備えた第2のマイクロLEDディスプレイの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による回路基板の製造方法の工程を示す流れ図である。
図2は、画素回路を表面に形成したウェハの平面図である。
図3は、
図2に示す破線R1で囲まれた領域の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。なお、以下の実施形態で説明する図面のうち、構成要素の理解を容易にするために、実際の寸法に基づく比率と異なる場合がある。
【0015】
先ず、
図1に示す画素回路の形成(工程S1)では、半導体技術を適用することにより、
図2に示すウェハ1の表面に予め定められた配列に従って、
図3に示す画素回路2aを形成する処理を行う。
【0016】
ここで、
図3(a)に示すとおり、ウェハ1上には、マイクロLEDの駆動用の画素回路2aが、それぞれP1、P2のピッチ間隔を置いて形成されている。画素回路2aは、半導体デバイス作製用の基板であるシリコンのウェハ1上に形成された微小な半導体素子で構成される電子回路を有するものである。説明を分かりやすくするため、
図3(a)では、一例として、画素回路2aを4行4列の配列にしている。また、ウェハ1は、例えば、シリコン酸化膜1aを有するシリコン基板1bで構成されている(
図3(b)参照)。T1はウェハ1の厚みを示している。一般的には、T1の厚みは、700μm程度であればよい。
【0017】
上記P1及びP2のピッチ間隔の値は、最終的にディスプレイの仕様(画素ピッチ)を考慮した上で設定される。例えば、P1及びP2で規定される値は目標とするディスプレイの画素ピッチの最小サイズに相当する。なお、実際には、ウェハ1上には、チップ仕様に応じて、例えば数十万個の単位の画素回路2aが形成される。
【0018】
また、より大きなディスプレイの画素を構成する場合、例えば上記画素ピッチが、上記配列ピッチの整数倍であれば、その分、ウェハ1に形成されている画素回路2aの集積度が上がることになるので、後述する画素回路チップ2を実装用の基板8(
図13(b)参照)に選択的に実装することにより、ウェハ1の表面に形成された画素回路2aを有効活用することができる。詳細は、
図13を用いて後述する。
【0019】
ここで、
図3において、ウェハ1のシリコン酸化膜1aは、実際に画素回路2aが形成されている回路形成領域(シリコン(Si)チップ領域)R2と、画素回路2aが形成されていない回路非形成領域(スクライブ(SCB)領域)R3と、に分類される。但し、
図3(a)に示す回路形成領域R2は、画素回路2aと、その画素回路2aの下層のシリコン酸化膜1aの領域を示している。
【0020】
また、回路非形成領域R3は、シリコン酸化膜(SiO2)1aのみで形成されている。なお、ウェハ1の設計ルールや実際に製造する回路基板の構成にもよるが、画素回路2aの厚みT2は、例えば4~5μm程度となる。回路形成領域R2における画素回路2aの下層の領域をこのように回路非形成領域R3と同等の膜構成として作成しておくことにより、後述するエッチングの加工をより簡単に行うことが可能となる。
【0021】
図4は、画素回路2aの概略構成を示すブロック図である。
図4に示すように、画素回路2aは、マイクロLEDを駆動するものであって、画素駆動回路2b及びスキャン回路2cを内蔵している。本実施形態では、画素回路2aは、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類のマイクロLEDを組み合わせて一画素単位とし、該一画素単位毎にマイクロLEDを駆動するものである。但し、画素回路2aは、一画素のマイクロLEDだけでなく、複数画素のマイクロLEDを駆動する構成にしても良い。また、画素回路2aは、後述する第1のマイクロLEDディスプレイ100で採用される第1の方式と第2のマイクロLEDディスプレイ101で採用される第2の方式とに兼用される構成にしてもよい。
【0022】
画素駆動回路2bは、各RGBのデータ電圧を、後述するマイクロLED10R,10G,10B(
図15参照)を駆動するための電流に変換するための回路である。スキャン回路2cは、画素駆動回路2bを駆動するための制御信号を出力する回路である。
【0023】
ここで、画素回路2aは、例えば、RGBのデータ電圧の値を転送する配線(3本)、画素部毎の発光又は消灯を切り換えるための選択(SEL)用の信号の配線(1本)、発光のタイミングを規定するための制御信号用の配線(1本)を備える。スキャン回路2cに入力する向きの矢印、スキャン回路2cから出力する向きの矢印は、制御信号の流れを示している。
【0024】
画素回路2aにおいて、スキャン回路2cから出力された制御信号の各タイミングに従って、画素制御信号が出力され、白抜きの矢印で示すように、画素駆動回路2bに入力される(
図4参照)。そして、画素回路2aにおいて、RGBの各電圧データは、LED駆動を行うための電流データに変換され、
図15に示すマイクロLED10R,10G,10Bが所定のタイミングで電流駆動される。これにより、マイクロLED10R,10G,10Bは、通電される電流の大きさに応じた光を発光し、フルカラー表示が可能となる。
【0025】
次に、電極パッドの形成(工程S2)では、電気的接続用の電極パッド2d,2eを画素回路2a上に形成する処理を実行する。
【0026】
図5は、一対の電極パッド2d、2eが形成された画素回路2aを含むウェハ1の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。なお、(a)は、詳細には、画素回路2aに一対の電極パッド2d、2eが形成された後の上記領域R1の拡大平面図である。一対の電極パッド2d、2e(以下、電極パッド2d,2eをまとめて「電極部2f」ということがある)は、例えば、電極パッド2dがn側電極パッド(カソード電極)、電極パッド2eがp側電極パッド(アノード電極)である。
【0027】
工程S2では、ウェハ1上に画素回路2aを形成後、複数の画素回路2aを一括して転写する実装を行うために、予め、電解めっき法又は無電界めっき法を用いて、UBM(Under Bump Metal)電極等の電極パッド2d、2eを形成する必要がある。画素回路2a自体が非常に小さい(チップの外形サイズの一辺は、100~200μm)ことから、画素回路2aに形成される電極パッドの外形サイズの一辺は、例えば10~20μmとすることが好ましい。
【0028】
このように極小チップサイズ、パッドサイズを扱う場合、電解めっき法は、電解印加用のための別の電極を形成する必要があるため、効率的ではない。また、電解めっき法では、電極を形成するための加工プロセスがより複雑になることから、上記電極部2fの形成には、無電界めっき法を用いることが、配線スペース、プロセス面、コスト面から考えて好適である。
【0029】
このように、上述した工程S1で画素回路2aをウェハ1上に形成した後、工程S2を行うことにより、後述する工程S8において、各々の画素回路チップ2を実装用の基板8(
図12(a)参照)に実装する場合、各々の画素回路チップ2を基板8に一括して転写する実装が可能となる。この場合、基板8は、この一括して転写する実装を可能とするためにバンプ電極8a,8bを有する電極構成としている。
【0030】
次に、工程S3では、ウェハ1の表面を第1の転写基板に貼り付ける処理を実行する。なお、シリコン基板1bに積層されているシリコン酸化膜1aの表面が、ウェハ1の表面に相当する。
【0031】
図6は、ウェハ1の表面を、画素回路2aを介して第1の転写基板3に貼り付ける工程を示す説明図である。第1の転写基板3は、ウェハ1の表面に形成されている画素回路2aの転写に用いるものである。第1の転写基板3は、ガラス基板31とUVテープ32とを備え、ガラス基板31の一方の面上に別途UVテープ32を貼り合わせたものである。
【0032】
図7は、UVテープ32の構成を示す概略断面図である。UVテープ32は、紫外線照射により粘着力が低下するテープであって、基材フィルム32aと、粘着剤層32bとを備えている。基材フィルム32aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されている。
【0033】
粘着剤層32bは、アクリル系のポリマー、オリゴマー(比較的少数のモノマーが結合した重合体)等の成分を有するものである。この粘着剤層32bの厚みは約50μmである。なお、粘着剤層32bには、紫外線照射により光重合を開始させる光重合開始剤も含まれている。粘着剤層32bは、紫外線照射により粘着剤層32bの成分が光重合を引き起こし、粘着剤層32bの柔軟性が失われ、粘着力が低下することになる。
【0034】
したがって、工程S3では、後述する工程S7において、紫外線照射により粘着剤層32bを有する第1の転写基板3から画素回路チップ2を剥離させやすくするため、第1の転写基板3のUVテープ32にウェハ1の表面を貼り付ける処理を行っている。
【0035】
次に、ウェハの薄型化(工程S4)では、ウェハ1の厚みを薄型化するバックグラインディングの処理を実行する。なお、バックグラインディングとは、シリコンのウェハの裏面を研磨して厚みを薄くする加工方法のことをいう。
【0036】
図8は、ウェハの薄型化の工程を示す説明図である。工程4では、ウェハ1を機械的な研磨手段を用いて薄型化する。本実施形態では、ウェハ1を第1の転写基板3のUVテープ32に貼り付けることにより、研磨時にウェハ1を固定し、チッピング等のカケ、ワレの不良を防止することができる。
【0037】
工程4を行うことにより、
図8に示すように、ウェハ1は通常の厚みT1(例えば700μm程度(
図6参照))から、用途に応じてT3=10~30μmの厚みまで薄型化される。通常、マイクロLEDの厚みは10~30μm程度となるので、画素回路2aの厚みもこれに合わせて調整される。
【0038】
工程S4においては、ガラス基板31上への貼り合わせにUVテープ32を用いたが、これはウェハ1の固定の他に、後述する工程S7で、第1の転写基板3を剥離し、画素回路チップ2を反転して第2の転写基板7に転写する場合に、紫外線照射によりテープ面(粘着剤層32b)の粘着性を弱め、貼り換えをしやすくする効果も想定しているためである。なお、貼り換えが行えるのであれば、UVテープ32に限られず、他の接着テープ、接着剤を用いても良い。
【0039】
次に、工程S5では、エッチングによる画素回路チップの分離化に伴う転写の処理を実行する。工程S5では、上記エッチングとして、例えばウエットエッチングを採用する。ウエットエッチングは、例えば半導体集積回路等の微細回路を作製する際、薬品の溶液(薬液)中に回路基板を浸し、その薬液中で不必要な部分を取り去り、形状加工する加工技術である。
【0040】
図9は、ウエットエッチングによる画素回路チップ2の分離化に伴う転写の工程を示す説明図である。具体的には、
図9(a)~(e)は、ウェハ1から各々の画素回路チップ2を分離して第1の転写基板3に転写するためのウエットエッチングの処理を示す工程図である。
【0041】
図9(a)は、上述した工程S4において、ウェハ1を10~30μmの厚さまで薄型化した状態を示した図である。この状態で、画素回路2aが形成されたウェハ1と、第1の転写基板3とは、貼り合わせられている。
【0042】
続いて、ウエットエッチング法について説明をする。
図9(b)において、工程S5では、先ず、ウェハ1の裏面に例えばクロム等のコート層4を積層し、その上に、例えばポジ型のレジスト層5をコーティングする。コート層4を積層するのは、レジスト層5との密着性を向上させるためである。
【0043】
その後、
図9(c)において、工程S5では、露光装置(図示省略)を使用し、遮光性のマスク6により遮光する部分をマスクした後、露光用の光L1を照射して露光する。なお、図中において、露光用の光L1を矢印で模式的に表現している。
【0044】
図9(d)において、工程S5におけるウエットエッチングでは、マスク6で遮光されていないレジスト層5、コート層4について露光処理をした後、例えば、硝フッ酸等を用いて、ウェハ1におけるシリコン基板1bのエッチングを行う。その後、例えばBHF(バッファドフッ酸)を用いて、シリコン酸化膜1aのエッチング処理を行う。上記コート層4、レジスト層5については、例えばネガ型のレジスト層を用いても良いし、シリコン基板1bとレジスト層5との密着性について適宜検討した上でクロム以外の材料を用いても良い。
【0045】
また、ウエットエッチングで使用する薬液についても、シリコン基板1b及びシリコン酸化膜1aのエッチングが可能なものであれば特に限定されない。但し、画素回路2aの外形、シリコン基板1bの厚み等の条件を考慮した上で、エッチング時間、初期のエッチングの部分や幅を調整しておく必要がある。
【0046】
なお、
図9(d)において、ウエットエッチングの処理を矢印WEで模式的に表現している。但し、
図9(d)では、簡略化のため柱状に削った状態を示しているが、
図9(e)に示すとおり、実際にはウェハ部分1cは最終的に台形形状となる。
【0047】
図9(e)は、ウエットエッチング及びウェハ部分1c上のレジスト層5、コート層4を剥離した後の第1の転写基板3及び画素回路チップ2の形状を示したものである。
【0048】
工程S5では、薄型化したウェハ1に対して、画素回路2aに連なる領域のウェハ部分1c(
図9(e)参照)を残すようにしてウエットエッチングを行っている。これにより、工程S5では、分離化したウェハ部分1cと、電極パッド2d、2eを有する画素回路2aとからなる画素回路チップ2を、第1の転写基板3に転写することができる。ウェハ部分1cは、シリコン酸化膜1aとシリコン基板1bとで構成されている。
【0049】
工程S5では、ウエットエッチング法を用いることにより、例えばレーザダイシング法と比較して、より短い時間で大量のチップ分離を行うことができる。
【0050】
また、ウエットエッチング法においては、基本的にクロムのコート層4の形成以外の工程は、薬液処理がメインとなるため、大規模な設備を用いる必要がなく、より低コストでの加工や省スペースでの加工が可能である。
【0051】
なお、ウエットエッチング法は等方性エッチングとなるので、上述したとおり、
図9(e)では、ウエットエッチングの加工後の画素回路チップ2のウェハ部分1cの形状は、台形(テーパ)形状となる。つまり、工程S5では、ウエットエッチングをすることにより、ウェハ部分1cを台形形状とすることを特徴としている。但し、
図9(e)に示す台形形状は一例であって、この形状に限定されるものではない。
【0052】
図9(e)に示すとおり、ウェハ部分1cの一方の面が画素回路2aと接している面積は、シリコン基板1bが露出しているSi面の面積よりも大きくなる。このように台形形状とした場合、Si面の面積を小さく加工することができるため、後述する工程S8で、基板8へのボンディング加工時において、接着層72との接着面積を小さくすることができ、レーザ照射による接着剤からの分離がより簡単に行えるというメリットがある。
【0053】
次に、工程S6では、第1の転写基板3を、画素回路チップ2を介して第2の転写基板7に貼り付ける処理を実行する。
【0054】
図10は、第1の転写基板3を、画素回路チップ2を介して第2の転写基板7に貼り付ける工程を示す説明図である。
図10では、複数の画素回路チップ2を第2の転写基板7に貼り付けた後の状態を示している。第2の転写基板7は、ガラス基板71の一方の面上に接着層72を備えたものである。
【0055】
図10の状態において、画素回路チップ2の電極パッド面は、第1の転写基板3におけるUVテープ32を介してガラス基板31と接着された状態となっている。この状態のままでは、後の工程S8で基板8への実装を行うことができないため、画素回路チップ2の電極パッド面を反転させる必要がある。
【0056】
そのため、工程S6では、ガラス基板71及びその上層に接着層72を有する第2の転写基板7に画素回路チップ2を接着させる。接着層72には、例えば熱硬化型の接着剤を用いる。
【0057】
次に、工程S7では、第1の転写基板3を剥離することにより、上記ウェハ部分1cを含む画素回路チップ2を反転させて第2の転写基板7に転写する処理を実行する。
【0058】
図11は、画素回路チップ2を反転させて第2の転写基板7に転写する工程を示す説明図である。工程S7では、例えば、紫外線照射装置(図示省略)を使用して、中心波長が365nmの紫外線を第1の転写基板3に照射する。
図11(a)は、第1の転写基板3に紫外線UVを照射している状態を示している。なお、図中において、紫外線UVの照射の処理を矢印で模式的に表現している。
【0059】
詳細には、工程S7では、ガラス基板31側から紫外線UVを照射し、UVテープ32の粘着力を低下させ、第1の転写基板3を剥離する。換言すると、画素回路チップ2は、第1の転写基板3から剥離される。これは、第1の転写基板3の粘着剤層32b(
図7参照)の画素回路チップ2に対する粘着力よりも、第2の転写基板7の接着層72の画素回路チップ2に対する接着力の方が強いからである。
図11(b)は、画素回路チップ2を反転させて第2の転写基板7に転写した状態を示している。
【0060】
次に、画素回路チップを実装用の基板に接着して実装する処理(工程S8)では、第2の転写基板7を、画素回路チップ2を介して実装用の基板8に貼り付けた後、画素回路チップ2を基板8に接着して実装する処理を実行する。この基板8は、画素回路チップ2を制御するものであって、例えば、フレキシブルプリント回路基板(FPC(Flexible Printed Circuits)基板)である。フレキシブルプリント回路基板は、絶縁性を有するベースフィルム(例えば、ポリイミド)と、電気回路を形成した配線層とからなるフィルム状の回路基板である。なお、画素回路チップ2を制御するとは、画素回路チップ2内の画素回路2aを制御することを意味する。
【0061】
図12は、画素回路チップ2を基板8に接着して実装する工程を示す説明図である。
図12(a)、(b)は、画素回路チップ2の基板8への実装を示した工程図である。工程S8では、予め、画素回路チップ2の画素回路2aの電極パッドパターンと接合が可能なように設計された基板8を準備しておく(
図12(a)参照)。そして、工程S8では、画素回路チップ2とのアライメントを行った後、ボンディング接続により実装する(
図12(b)参照)。FPC電極のパターン表面としては、例えば、Au,Sn等の表面処理を施しておき、画素回路2a側の電極部2fとの間の電極間で、熱圧着等の方法により接合させることが可能である。また、FPC側の電極パターン上にAu等のバンプ電極8a、8bを形成しておいても良い。
【0062】
次に、工程S9では、レーザリフトオフにより、基板8から第2の転写基板7を剥離する処理を実行する。換言すると、第2の転写基板7から画素回路チップ2が剥離される。レーザリフトオフにより、容易に基板8から第2の転写基板7を剥離することができる。
【0063】
図13は、基板8から第2の転写基板7を剥離する工程を示す説明図である。具体的には、
図13(a)は、レーザリフトオフを実行している時の状態、(b)は、レーザリフトオフの実行後の状態を例示している。
【0064】
図13(a)に示すように、第2の転写基板7の裏面から接着層72に向けてレーザ照射を行うLLO(レーザリフトオフ)法を用い、接着層72へのレーザ照射により画素回路チップ2を分離することが可能である。この場合、LLO(レーザリフトオフ)法では、ウェハ部分1cのシリコン基板1bが露出しているSi面と貼り付いている接着層72領域に向けてレーザ光L2を照射する。なお、説明の便宜上、各々の画素回路チップ2を区別して説明するため、
図13では、各々の画素回路チップ2を、画素回路チップ21,22,23,24とする。
【0065】
詳細には、上記LLO法により、接着層72とガラス基板71の界面に特定周波数のレーザ光L2が照射されると、接着層72とガラス基板71の界面部の温度が上昇し、接着層72とガラス基板71と接合している層部分が焼成(破壊)されるため、結果的に第2の転写基板7を剥離することが容易に可能となる。
【0066】
より詳細には、LLO法では、第2の転写基板7の裏面からパルス発振によるレーザ光L2を照射し、各々の画素回路チップ21,22,23,24を第2の転写基板7から剥離させる。工程S9では、具体的には、レーザリフトオフを行う装置(図示省略)を利用して、レーザパワー、レーザ光L2の照射領域、パルス照射に基づく照射回数等のパラメータを調節することによって、第2の転写基板7から画素回路チップ21,22,23,24を剥離させる。ここで、パラメータとしては、例えば、1Hz~100kHzのパルスレーザ(パルス幅:1psec~10nsec)、100~1000mJ/cm2程度のエネルギー密度の中から最適な条件が選択される。
【0067】
工程S9において、レーザリフトオフを行う場合、例えば、固体UV領域のYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ発振器により、第4高調波(FHG:Fourth-Harmonic Generation)である波長266nmのピコ秒パルスレーザを使用することが好ましい。
【0068】
次に、工程S9では、第2の転写基板7が基板8から剥離されることにより、
図13(b)に示すとおり、本発明の回路基板の製造方法で製造された回路基板9が形成される。
【0069】
図14は、本発明による回路基板の構成を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図14において、画素回路チップ2が基板8に実装されたものが、本発明の回路基板の製造方法で製造された回路基板9となる。つまり、回路基板9は、マイクロLEDを駆動する画素回路2a、その画素回路2aの一方の面上に設けられた接続用の電極パッド2d,2e、その画素回路2aの他方の面上に設けられシリコンのウェハ1がエッチングにより分離化された状態のウェハ部分1cを有する画素回路チップ2と、電極パッド2dとバンプ電極8aとが接続し、電極パッド2eとバンプ電極8bとが接続するようにして、予め定められた配列に従って、画素回路チップ2を実装した基板8と、を備えたものである。
【0070】
具体的には、回路基板9は、例えば、FPCバックプレーン(基板8)とシリコンチップ(画素回路チップ2)とを備えた構成を有する。この構成により、従来の低温多結晶シリコンTFTや酸化物TFTを用いたバックプレーンのように、大規模な設備投資をしないで済む。
【0071】
また、回路基板9は、上述したとおり、工程S9において、レーザ照射による接着剤からの分離がより簡単に行えるようにするため、ウェハ部分1cが台形形状であることが好ましい。
【0072】
なお、工程S9では、基板8から第2の転写基板7を剥離する手段として、レーザリフトオフを用いたが、さらに、各々の画素回路チップ21,22,23,24に対して選択的にレーザリフトオフ行う手段を採用してもよい。
【0073】
本実施形態の場合、第2の転写基板7のようなキャリア材を使用すると、例えば転写する画素回路チップ2の画素回路2aの配列ピッチP1(
図3参照)を、基板8の画素ピッチと同じにする必要がない。すなわち、本実施形態の場合、例えば、基板8における画素ピッチを、画素回路2aの配列ピッチP1の整数倍にしてもよい。例えば、
図13(a)において、上記画素ピッチが上記配列ピッチP1の2倍であった場合、上記配列ピッチP1は、上記画素ピッチに対してハーフピッチになることを意味する。この場合、工程S9では、画素回路チップ21,23のみを選択的なレーザリフトオフにより、第2の転写基板7から剥離するようにして、画素回路チップ21,23のみを基板8に実装するようにしてもよい。なお、第2の転写基板7には、画素回路チップ22,24が残存することになる。
【0074】
そして、この第2の転写基板7を用いて、再度、他の基板8に残った画素回路チップ22,24を選択的なレーザリフトオフにより、第2の転写基板7から剥離するようにして、画素回路チップ21,23のみを基板8に実装するようにしてもよい。
【0075】
これにより、上記工程S9において、実装に使う画素回路チップ2だけをリフトオフして、残った画素回路チップ2を次に実装する基板用に使用することができるので、コスト低減に繋がる。つまり、工程S9では、第2の転写基板7に転写された画素回路チップ2を、集積度に応じて有効活用することができる。これは、ウェハ1の表面に形成された画素回路2aを有効活用できることを意味する。
【0076】
また、工程S9では、基板8から第2の転写基板7を剥離する手段として、紫外線照射を用いてもよい。上述したように、接着層72の代わりに、例えば
図7に示すUVテープ32を用いた場合は、紫外線照射を行うことにより、UVテープ32の粘着剤層32bの粘着力を弱くすることで、第2の転写基板7を容易に剥離することが可能となる。この場合、
図13(a)に示すレーザ光L2が紫外線UV(図示省略)に置き換わる。
【0077】
また、工程S9では、基板8から第2の転写基板7を剥離する手段として、選択的なレーザリフトオフと同様にして、選択的な紫外線照射により、実装に使う画素回路チップ2だけを基板8に実装して、第2の転写基板7を剥離するようにしてもよい。これにより、選択的な紫外線照射によっても、第2の転写基板7に残った画素回路チップ2を次に実装する基板用に使用することができるので、コスト低減に繋がる。つまり、工程S9では、選択的な紫外線照射によっても、第2の転写基板7に転写された画素回路チップ2を、集積度に応じて有効活用することができる。
【0078】
以上、説明したように、本発明の回路基板の製造方法に基づいて、
図1に示す工程S1~工程S9までの一連の処理を行うことで、基板8上に画素回路チップ2を実装した回路基板9を製造することできる。
【0079】
なお、上述した実施形態では、工程S5において、エッチングとしてウエットエッチングを採用したが、これに限られず、例えば、エッチングをプラズマ中で行うドライエッチングを採用してもよい。したがって、エッチングには、ウエットエッチングとドライエッチングとが含まれる。
【0080】
次に、本発明による回路基板を備えた第1のマイクロLEDディスプレイについて説明する。
図15は、本発明による回路基板を備えた第1のマイクロLEDディスプレイ100の構成を示す説明図である。
図16は、マイクロLEDの構成を示す説明図である。
【0081】
第1のマイクロLEDディスプレイ100は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類のマイクロLEDを組み合わせて一画素単位とし、フルカラー表示を実現する第1の方式を採用したものである。
【0082】
第1のマイクロLEDディスプレイ100は、回路基板9aを備え、その回路基板9aは、発光部10としてのマイクロLED10R,10G,10Bと、駆動部としての画素回路チップ2と、発光部10及び画素回路チップ2をそれぞれ予め定められた配列に従って実装している基板8aとで構成されている。
図15では、一例として、発光部10及び画素回路チップ2は、各々4行4列に配置されている。ここで、発光部10の配列をm行n列とし、画素回路チップ2の配列をm行n列とした場合、m,nを自然数として、同じインデックスの値の画素回路チップ2と発光部10とが関連付けられている。例えば破線R4で囲む領域に位置する画素回路チップ2の配列を1行1列とし、発光部10の配列を1行1列とした場合、1行1列に配置されている画素回路チップ2が、1行1列に配置されている発光部10を駆動することになる。つまり、1つの画素回路チップ2が1つの発光部10の発光を制御する。
【0083】
図16において、
図15に示すマイクロLED10Bを例にして、構成を説明すると、マイクロLED10Bは、青色発光ダイオードであって、本体部10a、本体部の一方の面に発光用のアノード電極10b、カソード電極10cを有し、他方の面に本体部10aから光を放出する光放出面10dを備えている。なお、マイクロLED10Rは、本体部10aが赤色発光ダイオードであり、マイクロLED10Gは、本体部10aが緑色発光ダイオードである。
【0084】
回路基板9aは、基板8aが図示省略の配線で画素回路チップ2及び発光部10に接続されている。詳細には、発光部10としてのマイクロLED10R,10G,10Bの各々のアノード電極10b、カソード電極10cが、基板8a上に設けられたバンプ電極(図示省略)を介して電気的に接続されている。これにより、マイクロLED10R,10G,10Bは、各々基板8aに通電可能な状態で実装されている。
【0085】
以上の構成により、第1のマイクロLEDディスプレイ100は、別途準備されたドライバIC等の制御回路(図示省略)により、各々の画素回路チップ2は制御され、マイクロLED10R,10G,10Bは外部からの電力に応じてフルカラー表示を行うことが可能となる。
【0086】
次に、本発明による回路基板を備えた第2のマイクロLEDディスプレイについて説明する。
図17は、本発明による回路基板を備えた第2のマイクロLEDディスプレイ101の構成示す説明図である。
【0087】
第2のマイクロLEDディスプレイ101は、紫外光発光ダイオード(UV-LED)等の短波長の光を発光するマイクロLEDとRGB蛍光体とを組み合わせてフルカラー表示を実現する第2の方式を採用したものである。
【0088】
第2のマイクロLEDディスプレイ101は、回路基板9bを備え、その回路基板9bは、発光用の蛍光体セル11と、駆動部としての画素回路チップ2と、蛍光体セル11及び画素回路チップ2をそれぞれ予め定められた配列に従って実装している基板8bとで構成されている。
【0089】
図18は、蛍光体セル11の構成を示す説明図である。(a)は、
図17に示す蛍光体セル11の拡大平面図、(b)は、
図18(a)のB-B線断面図である。(c)は、マイクロLED12の正面図である。
【0090】
蛍光体セル11は、
図18(b)に示すとおり、蛍光発光層11aと、マイクロLED12と、平坦化膜13と、を備える。
【0091】
蛍光発光層11aは、赤色の蛍光色素を充填した蛍光材層11R、緑色の蛍光色素を充填した蛍光材層11G、青色の蛍光色素を充填した蛍光材層11Bを有している。これらの蛍光色素は、RGB蛍光体の一例である。蛍光発光層11aは、赤色、緑色、青色の蛍光色素がフルカラー表示を実現するための赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光に夫々波長変換するものである。
【0092】
具体的には、マイクロLED12から放出された光(励起光)によって、各蛍光材層11R、11G、11Bの蛍光色素が励起状態に遷移し、その後、基底状態に戻るときに、各蛍光材によって各々波長変換された赤(R)、緑(G)、青(B)の可視スペクトルに相当する蛍光を発光する。これらの蛍光材層11R、11G、11Bは、混色を防止するための反射用の金属膜14を表面に有する隔壁15で区画されている。
【0093】
マイクロLED12は、
図18(c)に示すとおり、本体部12a、本体部の一方の面に発光用のアノード電極12b、カソード電極12cを有し、他方の面に本体部12aから光を放出する光放出面12dを備えている。マイクロLED12は、本体部12aが例えば窒化ガリウム(GaN)を主材料として製造されたものである。なお、マイクロLED12は、紫外光発光ダイオード(UV-LED)であっても青色光を発光するLEDであってもよい。本実施形態では、例えば、RGB蛍光体の変換効率等を考慮して、例えばピーク波長が385nmに対応する光を発光する紫外光発光ダイオード(UV-LED)を選択してもよい。
【0094】
平坦化膜13は、平板状に形成され、マイクロLED12の周側面と接着して保持するものである。
【0095】
以上の構成により、別途準備されたドライバIC等の制御回路(図示省略)により、各々の画素回路チップ2は制御され、蛍光体セル11は外部からの電力に応じてフルカラー表示を行うことが可能となる。この場合、
図4に示す画素回路2aでは、上記第1の方式から上記第2の方式に変更されたことにより、RGBのデータ電圧の値を転送する配線(3本)は、上記蛍光を発光するためにRGB蛍光体のRGBにそれぞれ対応付けられている各々のマイクロLED12のデータ電圧の値を転送することになる。そして、画素回路2aにおいて、第2の方式の場合の各電圧データは、LED駆動を行うための電流データに変換され、
図18(b)に示す各々のマイクロLED12が所定のタイミングで電流駆動される。これにより、蛍光体セル11は、は、通電される電流の大きさに応じた光を発光し、フルカラー表示が可能となる。
【0096】
したがって、画素回路2aは、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類のマイクロLEDを組み合わせて一画素単位とし、フルカラー表示を実現する第1の方式と、紫外光発光ダイオード(UV-LED)等の短波長の光を発光するマイクロLEDとRGB蛍光体とを組み合わせてフルカラー表示を実現する第2の方式とに対応しており、上記第1の方式又は上記第2の方式に従ってマイクロLEDを駆動することを特徴としている。これにより、本発明による回路基板は、上記第1の方式と上記第2の方式との何れであっても兼用できるので汎用性が高まる。
【0097】
以上より、本発明の回路基板の製造方法を用いることにより、例えば、上述したとおり、従来の低温多結晶シリコンTFTや酸化物TFTを用いたバックプレーンのように、大規模な設備投資が必要ない。さらに、既存の半導体設備を活用して、低コストで、本発明の回路基板の製造方法を用いて回路基板を製造できると共に、この回路基板を備えたマイクロLEDディスプレイ製造することが可能となる。
【0098】
また、FPC等の基板のサイズ、精細度等の設計変更を行うだけで、上述した選択的なレーザリフトオフ又は選択的な紫外線照射を行うことにより、異なるサイズや異なる仕様のディスプレイへの対応も可能である。これにより、多品種、少量生産への要求に対して、柔軟な対応が可能となる。
【0099】
また、本発明の製造方法で製造された回路基板は、駆動能力の優れたシリコン半導体を用いることから、LTPS半導体や酸化物半導体を用いる場合と比較して、駆動能力が約10倍であり、マイクロLEDの発光効率の特性の観点から、マイクロLEDデバイスの駆動に必要なPWM(Pulse Width Modulation)駆動のための十分な駆動能力を確保することが可能となる。
【0100】
さらに、シリコン半導体の場合、その十分なトランジスタ特性を維持しつつ、さらに微細化が可能であれば、同じ面積に、より多くのトランジスタを搭載することが可能である。そのため、上述した実施形態では、
図4に示すとおり、画素駆動回路2bの他に、例えば通常は表示領域外に配置しているスキャン回路1c等の必要な回路機能を画素回路2a内に集積することが可能となる。さらに、画素回路2aは、必要に応じて、例えば入力されたRGBパラレルデータをRGBシリアルデータに変換するための回路を備えてもよい。
【0101】
これらの機能を集積することにより、ディスプレイ内配線数の最小化による各接続端子数の削減、通常は、表示領域外に配置される回路の削減を行うことが可能となるため、ディスプレイ内の端子接続不良の低減による信頼性向上や、外部の回路の削減によるコスト低減が期待できる。
【0102】
上述した実施形態は、本発明が理解及び実施できる程度に示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲を逸脱しない限り種々に変更及び修正をすることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…ウェハ
1c…ウェハ部分
2,21,22,23,24…画素回路チップ
2a…画素回路
2d,2e…電極パッド
3…第1の転写基板
7…第2の転写基板
8,8a,8b…基板
9,9a,9b…回路基板
10R,10G,10B,12…マイクロLED
100…第1のマイクロLEDディスプレイ
101…第2のマイクロLEDディスプレイ