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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20241018BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 160
H01G4/30 201C
H01G4/30 201D
H01G4/30 201L
H01G4/30 541
H01G4/30 544
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020191813
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080628
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】早見 泰明
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-515353(JP,A)
【文献】特表2022-516865(JP,A)
【文献】特開2013-077733(JP,A)
【文献】特開平06-077442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/10
H01G 4/14-4/22
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面に相互に離間して積層され、かつ、パターン形成されている複数の導電膜と、
前記主面に前記複数の導電膜と交互に配置され、かつ、パターン形成されている複数の誘電膜と、
前記複数の導電膜のうち相互に対向している一対の導電膜の一方と電気的に接続している高電位側電極と、
前記一対の導電膜の他方と電気的に接続している低電位側電極を備え、
前記高電位側電極と電気的に接続している前記導電膜がN型半導体であり、
前記低電位側電極と電気的に接続している前記導電膜がP型半導体であ
前記基板は前記主面に溝を有し、
前記導電膜と前記誘電膜が前記溝に埋め込まれ、
前記溝の底面における前記誘電膜が屈曲部を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板の主面に相互に離間して積層されている、端部を有する複数の導電膜と、
前記主面に前記複数の導電膜と交互に配置されている、端部を有する複数の誘電膜と、
前記複数の導電膜のうち相互に対向している一対の導電膜の一方と電気的に接続している高電位側電極と、
前記一対の導電膜の他方と電気的に接続している低電位側電極を備え、
前記高電位側電極と電気的に接続している前記導電膜がN型半導体であり、
前記低電位側電極と電気的に接続している前記導電膜がP型半導体であ
前記基板は前記主面に溝を有し、
前記導電膜と前記誘電膜が前記溝に埋め込まれ、
前記溝の底面における前記誘電膜が屈曲部を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記基板が単結晶シリコン基板である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電膜が多結晶シリコン膜である
ことを特徴とする請求項1-のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記誘電膜が酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜からなる群から選択される1つである、
ことを特徴とする請求項1-のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記誘電膜が、相互に異なる材料からなる複数の誘電膜の積層による多層構造である、
ことを特徴とする請求項1-のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特にコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性のキャパシタ電極層を誘電膜と交互に配列させたトレンチ充填物を含むトレンチキャパシタが知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、トレンチ開口内に充填されたトレンチ充填物によって高い静電容量密度を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2008/139393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、導電性のキャパシタ電極層を誘電膜と交互に配列させた積層配列が基板の上面上に延在されており、キャパシタ端子と接続している。当該積層配列中の誘電膜において、角張っている箇所は、電界集中が発生しやすく、当該箇所の耐圧が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたものであり、誘電膜の角張っている箇所にかかる電界集中を緩和して耐圧の低下を抑制する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る半導体装置において、誘電膜を挟む一対の導電膜の一方は、高電位側電極と電気的に接続している。誘電膜を挟む一対の導電膜の他方は、低電位側電極と電気的に接続している。また、高電位側電極と電気的に接続している導電膜がN型半導体であり、低電位側電極と電気的に接続している導電膜がP型半導体である。基板はその主面に溝を有し、導電膜と誘電膜が溝に埋め込まれ、溝の底面における誘電膜が屈曲部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、誘電膜の角張っている箇所にかかる電界集中を緩和して耐圧の低下を抑制する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2図2は、基板1の主面を基準にしたときの、図1の俯瞰図である。
図3図3は、図1における溝2の底面における導電膜3及び導電膜4のキャリア空乏の様子を模式的に示す図である。
図4図4は、導電膜をすべてN型半導体で構成した場合の、溝2の底面における導電膜3のキャリア空乏の様子を模式的に示す図である。
図5図5は、図1における端部10における導電膜3及び導電膜4のキャリア空乏の様子を模式的に示す図である。
図6図6は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その1)。
図7図7は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その2)。
図8図8は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その3)。
図9図9は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その4)。
図10図10は、図1に示す半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である(その5)。
図11図11は、本実施形態に係る他の半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0011】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る半導体装置20の構成を説明する。図1は、後述する溝2の短手方向に沿った断面図である。図2は、後述する主面1Aを基準にしたときの、図1の俯瞰図である。本実施形態に係る半導体装置20は、基板1を備える。基板1は、主面1Aと、主面1Aに形成された溝2と、を有する。溝2は、側面2A及び底面2Bを有する。図2に示すように、側面2Aは曲面を有している。側面2Aの角部が曲面であると被覆よく誘電膜5等を形成することできるため好ましい。
【0012】
半導体装置20は、さらに、主面1A、側面2A、及び底面2Bに沿って積層されている導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5を備える。図2に示すように、導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5は環状であるがこれに限られず、矩形状であってもよい。導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5によりコンデンサを構成している。相互に対向している導電膜3及び導電膜4は(一対の導電膜ともいう)は、主面1Aに相互に離間して積層され、かつ、パターン形成されている。一対の導電膜の一方は、高電位側電極7と電気的に接続し、一対の導電膜の他方は、低電位側電極8と電気的に接続している。誘電膜5は、主面1Aに導電膜3又は導電膜4と交互に配置され、かつ、パターン形成されている。図1では、導電膜3が1層、導電膜4及び誘電膜5が複数(2層以上)備えられている半導体装置20を示しているがこれに限られず、誘電膜5が正の電圧が印加されているもの(例えば、基板1、導電膜3など)及びが負の電圧が印加されているもの(例えば、導電膜4など)に挟まれていればよく、例えば、導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5のそれぞれが複数備えられている構成であってもよい。
【0013】
基板1は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及び酸化ガリウム(Ga)からなる群から選択される1つを含む単結晶基板又は多結晶基板であり、特に加工性の高い単結晶シリコン基板を基板1に用いることが好ましい。単結晶シリコン基板を用いるによって、微細加工が可能となり、高集積化することができ、静電容量密度の高いコンデンサなどの半導体装置を製造することができる。
【0014】
また、基板1には、N型又はP型の不純物が高濃度にドープされ、後述する導電膜と同様に基板1は導電性を有する導電性基板である。例えば、抵抗率が1×10-4~1×10-5Ωcm程度の高不純物濃度のシリコン基板などを基板1に用いることができる。本実施形態では、基板1はN型の不純物がドープされており、正の電圧が印加される高電位側電極7と電気的に接続している。図1に示すように、基板1と最近接している導電膜4が、基板1と誘電膜5を介して接触することにより、静電容量密度を高くすることができる。
【0015】
半導体装置20は、少なくとも溝2及び主面1Aに交互に積層された少なくとも1層の導電膜3、少なくとも1層の導電膜4、及び少なくとも1層の誘電膜5を備える。本実施形態では、1層の導電膜3、2層の導電膜4、及び3層の誘電膜5が、溝2に埋め込まれ、かつ、溝2の側面2A及び底面2B、並びに主面1Aに交互に積層されている。導電膜3及び導電膜4は誘電膜5によって互いに電気的に絶縁されている。1層の導電膜3、2層の導電膜4、及び3層の誘電膜5の各々は、主面1A、溝の内部(側面2A及び底面2B)に連続して延在している。
【0016】
導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5の各々は、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いてパターン形成されるため、端部10を有する。本明細書等において、「端部」とは、パターン形成されたものの中央部から各単一方向において最も離れた部分をいう。
【0017】
また、図1に示すように、溝2の側面2Aと基板1の主面1A、及び溝2の側面2Aと底面2Bは、互いに直交しており、当該直交箇所(角部ともいう)上にも導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5の各々が設けられている。導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5において、当該角部上に位置する箇所を本明細書等では「屈曲部」という。本実施形態において、導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5の各々は屈曲部11を有している。また、角部は曲面を有していてもよい。角部が曲面であると被覆よく誘電膜5等を形成することできるため好ましい。
【0018】
誘電膜5における端部10及び屈曲部11は、角張っている箇所を含むため、電界集中が発生しやすく、当該箇所の耐圧が低下するおそれがあるが、後述のように、導電膜3及び導電膜4は、互いに異なる導電性を有し、導電膜3及び導電膜4に適切な電圧を印加することにより、誘電膜5の電界集中を緩和することができる。
【0019】
導電膜3及び導電膜4は、上述のように互いに異なる導電性を有している。例えば、導電膜3はN型半導体であり、導電膜4はP型半導体である。また、図1に示すように、基板1と導電膜4との間に誘電膜5が設けられている。
【0020】
導電膜3及び導電膜4は、例えば、多結晶シリコン膜を用いることができる。多結晶シリコン膜は、例えば、低圧CVD法等により形成することができ、被覆性のよい導電膜3及び導電膜4を得ることができる。これにより、溝2のアスペクト比が大きくても溝2の内部に被覆よく導電膜3及び導電膜4を形成することでき、静電容量密度の高い半導体装置を製造することができる。
【0021】
誘電膜5は、例えば、酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜を用いることができる。膜応力の小さい酸化シリコン膜を用いることにより、高電圧での動作が可能となる。また、誘電率の高い窒化シリコン膜を用いることにより、静電容量密度を向上させることができる。絶縁破壊電界及び比誘電率の高い材料を用いることにより、耐圧及び誘電率の高い誘電膜を形成することができる。このため、耐圧及び静電容量密度の高い半導体装置を製造することができる。
【0022】
また、誘電膜5が、相互に異なる材料からなる複数の誘電膜の積層による多層構造であってもよく、例えば、相対的に誘電率は高いが膜応力が大きい窒化シリコン膜と、相対的に誘電率が低いが膜応力の小さい酸化シリコン膜を積層して誘電膜5を形成する。これにより、所望の厚みを確保し、かつ、誘電率と応力のバランスのとれた、誘電率の高い誘電膜5を形成することができる。
【0023】
高電位側電極7は、層間絶縁膜6に設けられている開口を介して基板1及び導電膜3と電気的に接続している。低電位側電極8は、層間絶縁膜6に設けられている開口を介して導電膜4と電気的に接続している。高電位側電極7及び低電位側電極8としては、例えば、金属材料を用いることができ、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属材料、チタン/ニッケル/銀(Ti/Ni/Ag)、チタン/アルミニウム(Ti/Al)などの積層膜等を用いることができる。
【0024】
図1に示す半導体装置20はコンデンサとして機能し、当該コンデンサの基本的な動作について説明する。高電位側電極7に正の電圧を印加し、低電位側電極8に負の電圧を印加する。これにより、基板1、導電膜3、及び導電膜4の相互間に配置されている誘電膜5の内部で分極が起こり、静電容量が発生する。導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5が積層されて溝2に埋め込まれており、これらがコンデンサとして機能する。本実施形態では、各コンデンサが並列接続されているので、基板面積あたりの容量密度を高くすることができる。
【0025】
図3に、高電位側電極7に正の電圧を印加し、低電位側電極8に負の電圧を印加ときの、溝2の底面2Bの角部における導電膜3及び導電膜4のキャリア空乏の様子を模式的に示す。基板1及び導電膜3には正の電圧が印加され、導電膜4には負の電圧が印加される。このとき、導電膜4と基板1の間の誘電膜5には当該導電膜4側に電界が発生し、溝2の角部に由来する誘電膜5における屈曲部では電界集中が起こるため、特に強い電界が発生する。
【0026】
ここで、導電膜4はP型半導体であるため、誘電膜5における屈曲部付近で多数キャリアの空乏化が起こり、空乏領域9が形成される。空乏化した半導体(空乏領域9)は絶縁体として機能するため、誘電膜5の電界を緩和する。当該現象は導電膜3と導電膜4との間の誘電膜5における屈曲部でも同様に起こる。さらに、導電膜3と導電膜4との間の誘電膜5においては、導電膜4側へ電界が発生するため、N型半導体である導電膜3においても多数キャリアの空乏化が起こり、誘電膜5の電界を緩和する。すなわち、全ての誘電膜5における屈曲部において電界緩和効果が起こるため、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0027】
一方、導電膜をすべてN型半導体で構成した場合の、導電膜のキャリア空乏の様子を比較例として図4に示す。この場合、低電位側電極8に接続される導電膜3がN型半導体で構成されるため、基板1と最も近接している導電膜3と基板1との間に配置される誘電膜5において、当該導電膜3側に発生する電界による多数キャリアの空乏は起こらず、誘電膜5における屈曲部の電界集中は緩和されない。このことは、基板1から2番目に近接している導電膜3(図4では、基板1から2番目に遠い導電膜3)と基板1から3番目に近接している導電膜3(図4では、基板1から最も遠い導電膜3)の間に配置される誘電膜5においても同様である。
【0028】
したがって、すべての導電膜をN型半導体で構成した場合は、基板1と最も近接している導電膜3と基板1との間に配置される誘電膜5、及び、基板1から2番目に近接している導電膜3と基板1から3番目に近接している導電膜3の間に配置される誘電膜5に発生する電界集中により半導体装置としての耐圧が低下してしまう。
【0029】
しかし、本実施形態では、高電位側電極7に接続している導電膜3をN型半導体、低電位側電極8に接続している導電膜4をP型半導体でそれぞれ構成しており、誘電膜5における屈曲部での電界緩和が起こるため、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0030】
ここでは、溝2の内部に積層される導電膜の層数の合計が3層(導電膜3が1層、導電膜4が2層)で場合について例示的に説明したがこれに限られず、例えば、導電膜が1層(図3では、基板1から最も近接している導電膜4)のみであってもよい。これにより、製造工程を短縮することができる。
【0031】
また、積層される導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5の層数が多いほど、単位面積当たりの静電容量密度をより高くすることができる。したがって、導電膜3及び導電膜4の層数の合計が4層以上であってもよい。基板1、並びに導電膜3及び導電膜4の相互間に配置される誘電膜5の層数は、導電膜3及び導電膜4の層数の合計と同数である。
【0032】
さらに、図5に示すように、誘電膜5の端部においても屈曲部と同様に多数キャリアの空乏化が起こり、空乏領域9が形成される。空乏化した半導体(空乏領域9)は絶縁体として機能するため、誘電膜5の電界を緩和する。屈曲部と同様、全ての誘電膜5における端部において電界緩和効果が起こるため、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0033】
以下に、図面を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。
【0034】
まず、基板1を用意する。基板1は、例えば、単結晶シリコン基板を用いることができる。
【0035】
次に、図6に示すように、基板1の主面1Aに溝2を形成する。溝2は、側面2A及び底面2Bを有する。側面2Aは曲面を有している。側面2Aの角部が曲面であると被覆よく誘電膜5等を形成することできるため好ましい。溝2は、次のようにして形成することができる。まず、基板1の主面1Aにマスク材を形成する。マスク材としては酸化シリコン膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。次に、マスク材上にレジストをパターニングする。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィ技術を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、マスク材をエッチングする。マスク材は、溝2が形成される部分に開口を有する。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。次に、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。このようにして形成したマスク材を用いて、ドライエッチング又はウェットエッチングによって、マスク材の開口から表出する基板1をエッチングし、溝2を形成する。溝2を形成した後、マスク材に用いた酸化シリコン膜を除去する。
【0036】
次に、図7に示すように、溝2の側面2A及び底面2B、並びに基板1の主面1Aに、基板1を覆うように誘電膜5を形成する。誘電膜5としては、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等を用いることができ、形成方法としては熱酸化法、熱CVD法等を用いることができる。また、熱CVD法を用いる際は減圧条件にすることによって溝2が深い場合にも被覆良く酸化シリコン膜を形成することができる。誘電膜5の膜厚は、例えば、8000Åである。
【0037】
さらに、誘電膜5を覆うように導電膜4を形成する。導電膜4としては、例えば、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)などのP型の導電性を付与する不純物をドープした多結晶シリコン膜を用いることができ、CVD法等を用いて多結晶シリコン膜を形成した後、P型の導電性を付与する不純物を多結晶シリコン膜にドープすることによって形成することができる。多結晶シリコン膜にドープするP型の導電性を付与する不純物の濃度は、例えば、1×1019~1×1020cm-3である。
【0038】
その後、導電膜4を覆うように、さらに誘電膜5、導電膜3、誘電膜5、及び導電膜4を順に形成する。導電膜3としては、例えば、リン(P)、ヒ素(As)などのN型の導電性を付与する不純物をドープした多結晶シリコン膜を用いることができ、CVD法等を用いて多結晶シリコン膜を形成した後、N型の導電性を付与する不純物を多結晶シリコン膜にドープすることによって形成することができる。多結晶シリコン膜にドープするN型の導電性を付与する不純物の濃度は、例えば、1×1019~1×1020cm-3である。
【0039】
また、導電膜3及び導電膜4の膜厚は、例えば、4000Åである。図7に示すように、導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5の各々は屈曲部11を有する。
【0040】
次に、図8に示すように、基板1及び各導電膜(導電膜3及び導電膜4)に達する開口を形成、及び導電膜3、導電膜4、及び誘電膜5をパターン形成し、それぞれに端部10を形成する。当該開口及び当該端部10は、一般的なフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングを行い、レジスト等のマスク材を用いて、ドライエッチング又はウェットエッチングすることによりそれぞれを順次形成することができる。
【0041】
次に、図9に示すように、層間絶縁膜6を形成する。層間絶縁膜6は、基板1及び各導電膜(導電膜3及び導電膜4)に達する開口の側面及び底面を沿うように形成されている。層間絶縁膜6としては、誘電膜5と同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよく、例えば、酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0042】
次に、図10に示すように、基板1及び各導電膜(導電膜3及び導電膜4)に達する開口を層間絶縁膜6に形成する。当該開口は、一般的なフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングを行い、レジスト等のマスク材を用いて、ドライエッチングすることによりそれぞれを形成することができる。
【0043】
その後、図1に示すように、当該開口を埋め込むように高電位側電極7及び低電位側電極8を形成する。高電位側電極7は、基板1及び導電膜3と電気的に接続しており、低電位側電極8は、導電膜4と電気的に接続している。
【0044】
以上の工程により、図1に示す半導体装置20を製造することができる。
【0045】
本実施形態によれば、誘電膜が高電位側電極に接続しているN型半導体の導電膜又は基板と低電位側電極に接続しているP型半導体の導電膜との間に設けられているため、当該誘電膜における屈曲部での電界緩和が起こるため、半導体装置の耐圧を向上させることができる。また、誘電膜と導電膜とが交互に配置されるため、単位面積当たりの静電容量密度を向上させることができる。
【0046】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、本発明を実施する形態の例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、これ以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0047】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【0048】
上記実施形態では、溝2が1つであったが、主面1Aに複数の溝2を形成してもよい。また、導電膜3がN型半導体であり、導電膜4がP型半導体である構成を例示的に説明したが、これに限られない。
【0049】
例えば、図11に示すように、半導体装置20Aが、基板1と最近接している導電膜をN型半導体である導電膜3であり、当該導電膜3が高電位側電極7と電気的に接続し、基板1及び導電膜4が低電位側電極8と電気的に接続している構成であってもよい。
【0050】
また、この他、上記実施形態では、基板1が導電性を有する場合を説明したが、基板1がガラス基板などの非導電性基板であってもよい。基板が絶縁性を有することで素子分離を容易に行うことができ、短絡などを防止しやすくなる。
【0051】
さらに、導電膜としてN型又はP型の多結晶シリコン膜を用いて説明したが、その他に半導体材料を用いてもよい。さらに、導電膜として、金属などの他の導電性のある材料であってもよい。例えば、導電型の多結晶の炭化シリコン(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、アルミニウム(Al)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 基板
1A 主面
2 溝
2A 側面
2B 底面
3、4 導電膜
5 誘電膜
6 層間絶縁膜
7 高電位側電極
8 低電位側電極
9 空乏領域
10 端部
11 屈曲部
20、20A 半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11