(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】クラッチのシフト位置検出装置及びこのクラッチのシフト位置検出装置を備えたデファレンシャル装置
(51)【国際特許分類】
F16D 27/14 20060101AFI20241018BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20241018BHJP
F16H 48/34 20120101ALI20241018BHJP
F16H 48/24 20060101ALI20241018BHJP
B60K 23/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16D27/14 A
F16H48/08
F16H48/34
F16H48/24
B60K23/04 E
(21)【出願番号】P 2020193414
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】矢口 裕
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-519818(JP,A)
【文献】実開平07-036011(JP,U)
【文献】特開2019-027525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00-39/00,48/00-48/12
B60K 23/00-23/08
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能に配置された一対の回転部材と、
前記一対の回転部材のうち一方の回転部材と一体回転可能で回転軸方向に移動可能に配置されたクラッチ部材と、
前記クラッチ部材の移動により前記一対の回転部材間の動力伝達が断続されるクラッチと、
前記クラッチ部材の配置位置を検出する検出機構と、
を備え、
前記検出機構は、クラッチ部材の移動を検知する検知体と、前記検知体の移動を検出する検出面が前記一方の回転部材の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイルとを有し、
前記検知体は、少なくとも前記クラッチ部材の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、前記センサコイルの前記検出面との間に第1の距離と第2の距離を有して対向し
、
前記センサコイルの前記検出面は、磁束の受け渡しが可能な第1検出面と第2検出面とを有し、
前記検知体は、前記第1の位置と前記第2の位置において、前記第1検出面と前記第2検出面とを透過する磁束の透過割合を変化させることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のクラッチのシフト位置検出装置であって、
前記センサコイルの前記検出面は、前記検知体と前記回転軸方向に対向して配置されていることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のクラッチのシフト位置検出装置であって、
前記センサコイルの前記検出面は、前記検知体と前記回転軸方向と交差する方向に対向して配置されていることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載のクラッチのシフト位置検出装置であって、
前記検知体は、前記クラッチ部材と別体で形成され、前記クラッチ部材に一体移動可能に固定されていることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のクラッチのシフト位置検出装置であって、
前記検知体は、前記クラッチ部材と一体に形成されていることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のクラッチのシフト位置検出装置であって、
前記クラッチ部材は、前記一方の回転部材の軸心と同軸配置され環状に設けられたアクチュエータを備え、
前記センサコイルは、前記検知体に対向可能に、前記アクチュエータに固定されていることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のクラッチのシフト位置検出装置であって、
前記センサコイルは、前記一方の回転部材の軸心と同軸配置され環状に設けられたコイル部と、前記コイル部に環状に固着されて前記一方の回転部材の軸心と同軸配置されたコア部とからなることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置。
【請求項8】
駆動力が入力され回転可能なケースと、前記ケースに対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤと、前記入力ギヤに相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤとを有したデファレンシャル装置であって、
前記ケースから前記一対の出力ギヤへ伝達される駆動力を断続可能なクラッチを備え、
前記ケースの回転軸心と同軸配置され、前記クラッチの断続状態を検知可能な請求項1乃至7のいずれか1項に記載のクラッチのシフト位置検出装置を備えたことを特徴とするデファレンシャル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるクラッチのシフト位置検出装置及びこのクラッチのシフト位置検出装置を備えたデファレンシャル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチのシフト位置検出装置としては、相対回転可能に配置された一対の回転部材としてのデフケースとサイドギヤと、デフケースと一体回転可能で回転軸方向に移動可能に配置されたクラッチ部材と、クラッチ部材の移動によりデフケースとサイドギヤとの間の動力伝達が断続されるクラッチと、クラッチ部材の配置位置を検出する検出機構とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このクラッチのシフト位置検出装置では、検出機構が、クラッチ部材の移動を検知する検知体としてのプレートと、プレートの移動を検出するセンサとを有する。このセンサは、デフケースの回転軸心の周りに、径方向の対称な位置に2箇所配置され、プレートに対して、軸方向に対向して配置されている。
【0004】
このようなクラッチのシフト位置検出装置では、センサが、プレートの軸方向位置を検出することによって、クラッチ部材の軸方向位置を検出し、このクラッチ部材の軸方向位置からクラッチの断続状態を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようなクラッチのシフト位置検出装置では、検知体の移動を検出するセンサの検出面が、デフケースの回転軸心の周りに、2箇所しか設けられておらず、クラッチ部材の配置位置の検出精度が低下し、クラッチの断続状態の検出精度が低下する懸念があった。
【0007】
そこで、この発明は、クラッチの断続状態の検出精度を向上することができるクラッチのシフト位置検出装置及びこのクラッチのシフト位置検出装置を備えたデファレンシャル装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、相対回転可能に配置された一対の回転部材と、前記一対の回転部材のうち一方の回転部材と一体回転可能で回転軸方向に移動可能に配置されたクラッチ部材と、前記クラッチ部材の移動により前記一対の回転部材間の動力伝達が断続されるクラッチと、前記クラッチ部材の配置位置を検出する検出機構と、を備え、前記検出機構は、クラッチ部材の移動を検知する検知体と、前記検知体の移動を検出する検出面が前記一方の回転部材の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイルとを有し、前記検知体は、少なくとも前記クラッチ部材の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、前記センサコイルの前記検出面との間に第1の距離と第2の距離を有して対向し、前記センサコイルの前記検出面は、磁束の受け渡しが可能な第1検出面と第2検出面とを有し、前記検知体は、前記第1の位置と前記第2の位置において、前記第1検出面と前記第2検出面とを透過する磁束の透過割合を変化させることを特徴とするクラッチのシフト位置検出装置である。
【0009】
このクラッチのシフト位置検出装置では、検出機構が、クラッチ部材の移動を検知する検知体と、検知体の移動を検出する検出面が一方の回転部材の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイルとを有する。また、検知体は、少なくともクラッチ部材の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、センサコイルの検出面との間に第1の距離と第2の距離を有して対向する。
【0010】
このため、センサコイルの検出面は、一方の回転部材の軸心と同軸配置され環状に設けられているので、クラッチ部材の移動を、一方の回転部材の軸心周りの全域で検出することができ、クラッチ部材の配置位置の検出精度を向上することができる。
【0011】
従って、このようなクラッチのシフト位置検出装置では、クラッチ部材の配置位置を正確に検出することができ、クラッチの断続状態の検出精度を向上することができる。
【0012】
また、本発明は、駆動力が入力され回転可能なケースと、前記ケースに対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤと、前記入力ギヤに相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤとを有したデファレンシャル装置であって、前記ケースから前記一対の出力ギヤへ伝達される駆動力を断続可能なクラッチを備え、前記ケースの回転軸心と同軸配置され、前記クラッチの断続状態を検知可能な前記クラッチのシフト位置検出装置を備えたことを特徴とする。
【0013】
従って、このようなデファレンシャル装置では、クラッチのシフト位置検出装置を備えているので、クラッチの断続状態の検出精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クラッチの断続状態の検出精度を向上することができるクラッチのシフト位置検出装置及びこのクラッチのシフト位置検出装置を備えたデファレンシャル装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置が適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置のセンサコイルの正面図である。
【
図3】第1実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置のセンサコイルと検知体の一部を断面とした側面図である。
【
図4】第2実施形態に係るデファレンシャル装置の断面図である。
【
図5】第3実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置が適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【
図6】第4実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置が適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【
図7】第5実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置が適用されたデファレンシャル装置の断面図である。
【
図8】第6実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置が適用されたデファレンシャル装置の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図8を用いて本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置及びデファレンシャル装置について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1~
図3を用いて第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置1は、相対回転可能に配置された一対の回転部材としてのデフケース3と出力ギヤ5と、デフケース3と一体回転可能で回転軸方向に移動可能に配置されたクラッチ部材7と、クラッチ部材7の移動によりデフケース3と出力ギヤ5との間の動力伝達が断続されるクラッチ9と、クラッチ部材7の配置位置を検出する検出機構11とを備えている。
【0019】
また、検出機構11は、クラッチ部材7の移動を検知する検知体13と、検知体13の移動を検出する検出面15がデフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイルと17を有する。
【0020】
そして、検知体13は、少なくともクラッチ部材7の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、センサコイル17の検出面15との間に第1の距離と第2の距離を有して対向する。
【0021】
また、センサコイル17の検出面15は、磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する。そして、検知体13は、第1の位置と第2の位置において、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合を変化させる。
【0022】
さらに、センサコイル17の検出面15は、検知体13と回転軸方向に対向して配置されている。
【0023】
また、検知体13は、クラッチ部材7と別体で形成され、クラッチ部材7に一体移動可能に固定されている。
【0024】
さらに、クラッチ部材7は、デフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられたアクチュエータ23を備えている。そして、センサコイル17は、検知体13に対向可能に、アクチュエータ23に固定されている。
【0025】
また、センサコイル17は、デフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられたコイル部25と、コイル部25に環状に固着されてデフケース3の軸心と同軸配置されたコア部27とからなる。
【0026】
さらに、本実施形態に係るデファレンシャル装置501は、駆動力が入力され回転可能なケースとしてのデフケース3と、デフケース3に対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤ503と、入力ギヤ503に相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤ5,505とを有する。
【0027】
そして、デファレンシャル装置501は、デフケース3から一対の出力ギヤ5,505へ伝達される駆動力を断続可能なクラッチ9を備え、デフケース3の回転軸心と同軸配置され、クラッチ9の断続状態を検知可能なクラッチのシフト位置検出装置1を備えている。
【0028】
まず、
図1を用いて本実施形態に係るデファレンシャル装置501について説明する。
【0029】
図1に示すように、デファレンシャル装置501は、差動機構507と、差動制限機構509と、クラッチのシフト位置検出装置1とを備えている。
【0030】
差動機構507は、駆動力が入力され回転可能なケースとしてのデフケース3と、デフケース3に対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤ503と、入力ギヤ503に相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤ5,505とを有する。
【0031】
デフケース3は、軸方向両側に形成されたボス部511,513のそれぞれの外周でベアリング(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回転可能に支持されている。このデフケース3には、リングギヤ(不図示)が固定されるフランジ部515が形成されている。
【0032】
このフランジ部515に固定されたリングギヤは、例えば、駆動源から駆動力を伝達するプロペラシャフトなどの入力側の機構と一体回転可能に設けられた動力伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、駆動力が入力されてデフケース3を回転駆動させる。
【0033】
このようなデフケース3には、入力シャフト517と、入力ギヤ503と、一対の出力ギヤ5,505などが収容されている。
【0034】
入力シャフト517は、長尺の1つのシャフトからなり、両端部がデフケース3に係合され、一方の端部がピンで抜け止め及び回り止めされ、デフケース3と一体に回転駆動される。この入力シャフト517の両端側には、複数の入力ギヤ503がそれぞれ支承されている。
【0035】
複数の入力ギヤ503は、デフケース3の周方向等間隔に2つ配置され、それぞれ入力シャフト517の両端側に支承されてデフケース3の回転によって公転する。
【0036】
この入力ギヤ503は、一対の出力ギヤ5,505に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対の出力ギヤ5,505に差回転が生じると回転駆動されるように入力シャフト517に自転可能に支持されている。
【0037】
一対の出力ギヤ5,505は、デフケース3内に相対回転可能に収容され、それぞれ第1出力部材519と、第2出力部材521とからなる。
【0038】
第1出力部材519は、環状に形成され、外周側に入力ギヤ503のギヤ部と噛み合うギヤ部が形成されている。
【0039】
第2出力部材521は、第1出力部材519と軸方向に近接して配置可能なように、第1出力部材519を収容可能な凹状の収容部を有して環状に形成されている。
【0040】
この第2出力部材521の内周側には、一対の出力ギヤ5,505に伝達された駆動力を出力するスプライン形状の出力部523が設けられている。また、第2出力部材521の外周側には、差動制限機構509のテーパリング529と摺動する摺動部525が設けられている。
【0041】
このような第2出力部材521と第1出力部材519との間には、カム部527が設けられて互いに一体回転可能に連結されている。
【0042】
カム部527は、第1出力部材519の内周側に設けられ回転方向前後に傾斜した係合面を有する複数の凹凸部と、第2出力部材521の出力部523の外周側に設けられ回転方向前後に傾斜した係合面を有する複数の凹凸部とからなる。
【0043】
このカム部527は、第1出力部材519と第2出力部材521との互いの複数の凹凸部が回転方向に係合することにより、互いに連結する凹凸部が第1出力部材519と第2出力部材521とを一体回転可能とさせる。
【0044】
このようなカム部527における複数の凹凸部の回転方向の係合面は、所定角度傾斜され相互に当接するカム面が形成されているが、カム面の形態に関しては、回転方向に連結し回転軸方向にスラスト力を発生させる構造であれば、他の形状も適宜採り得る。
【0045】
このカム部527におけるカム面は、一対の出力ギヤ5,505の回転により、入力ギヤ503のギヤ部から伝達された駆動力によって第1出力部材519,519を介して第2出力部材521,521を軸方向外側にそのカムスラスト力で移動させる。
【0046】
この第2出力部材521,521の軸方向移動により、一対の出力ギヤ5,505の摺動部525,525とテーパリング529,529との摺動が強化され、差動制限機構509における差動制限力を強化することができる。
【0047】
このような一対の出力ギヤ5,505の出力部523,523には、例えば、左右車輪などの出力側の機構に一体回転可能に接続される駆動軸(不図示)がそれぞれ出力ギヤ5,505と一体回転可能に連結され、デフケース3に入力された駆動力を出力側の機構に出力する。
【0048】
このような差動機構507は、その差動が差動制限機構509によって制限される。
【0049】
差動制限機構509は、一対の出力ギヤ5,505とデフケース3との間に配置された一対のテーパリング529,529を備えている。
【0050】
一対のテーパリング529,529は、それぞれ環状部531,531を備え、回転軸方向一端側から回転軸方向他端側に向けて所定角度をもって縮径するように形成されている。このテーパリング529の環状部531の内周面は、出力ギヤ5,505に所定角度をもって形成された摺動部525と摺動する摺動面が設けられている。
【0051】
また、環状部531の外周面は、デフケース3に所定角度をもって形成されたテーパ面に相対回転不能かつ相対移動不能に当接されている。
【0052】
このようなテーパリング529には、デフケース3に設けられた内部に部材を収容するための孔部(不図示)に回転方向に係合する係合部(不図示)が設けられ、孔部に係合部を係合させることにより、テーパリング529がデフケース3と一体回転可能に配置される。
【0053】
なお、上述したように、テーパリング529は、環状部531がデフケース3のテーパ面と出力ギヤ5,505の摺動部525との間に保持されており、回転軸方向に対しても適切に位置決めされている。
【0054】
このテーパリング529は、環状部531が、差動機構507の回転状況に応じて、入力ギヤ503との噛み合い反力によって軸方向に移動された一対の出力ギヤ5,505の摺動部525と摺動することにより、差動機構507の差動を制限する。
【0055】
このようなテーパリング529の環状部531と一対の出力ギヤ5,505の摺動部525とは、デフケース3に入力する駆動トルクの大きさに応じて摩擦トルクを生じるトルク感応型のコーンクラッチとなっている。
【0056】
このような差動制限機構509を有するデファレンシャル装置501における差動機構507の差動は、クラッチのシフト位置検出装置1において、一方の回転部材としてのデフケース3と、他方の回転部材としての出力ギヤ5との間に設けられたクラッチ9によって断続される。
【0057】
このクラッチのシフト位置検出装置1が適用されたデファレンシャル装置501では、クラッチ9が接続されると、デフケース3と出力ギヤ5とが接続され、差動機構507の差動がロック状態となる。この状態では、デフケース3に入力された駆動力が、一対の出力ギヤ5,505から出力側の機構に対して均等に出力される。
【0058】
このようなデファレンシャル装置501は、差動制限機構509による差動制限機能と、クラッチのシフト位置検出装置1によるデフロック機能とを有するデファレンシャル装置となっている。以下、
図1~
図3を用いて本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置について説明する。
【0059】
図1~
図3に示すように、クラッチのシフト位置検出装置1は、クラッチ機構29と、検出機構11とを備えている。
【0060】
クラッチ機構29は、クラッチ部材7と、クラッチ9と、アクチュエータ23とを備えている。
【0061】
クラッチ部材7は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部31がデフケース3の壁部33と出力ギヤ5のギヤ部の背面側との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。
【0062】
このクラッチ部材7のデフケース3の壁部33側には、デフケース3と一体回転可能に係合する係合部35が設けられ、クラッチ部材7の出力ギヤ5のギヤ部の背面側には、クラッチ9が設けられている。
【0063】
係合部35は、クラッチ部材7の基部31に周方向等間隔に設けられた複数の凸部37と、デフケース3の壁部33に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔39とからなる。
【0064】
この凸部37と孔39とが回転方向に係合することにより、クラッチ部材7がデフケース3に回り止めされ、クラッチ部材7とデフケース3とが一体回転可能となる。
【0065】
この係合部35としての凸部37と孔39との周方向両側の対向面には、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成されている。
【0066】
このカム面は、クラッチ部材7がクラッチ9の接続方向に移動され、クラッチ9に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、デフケース3の回転によってそれぞれのカム面が係合する。
【0067】
このそれぞれのカム面の係合により、クラッチ部材7をさらにクラッチ9の噛み合い方向に移動させ、クラッチ9の接続を強化させる。
【0068】
クラッチ9は、クラッチ部材7の基部31の係合部35と軸方向反対側の側面で、クラッチ部材7と出力ギヤ5のギヤ部の背面側との軸方向間に設けられている。このクラッチ9は、クラッチ部材7と出力ギヤ5の第2出力部材521とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
【0069】
このようなクラッチ9は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、クラッチ部材7と出力ギヤ5とが一体回転可能に接続、すなわちデフケース3と出力ギヤ5とが一体回転可能に接続され、差動機構507の差動がロック状態となる。
【0070】
この差動機構507のロック状態では、デフケース3に入力され、一対の出力ギヤ5,505に伝達された駆動力が、例えば、出力側の機構としての左右車輪に均一に出力される。
【0071】
一方、クラッチ部材7と出力ギヤ5のギヤ部の背面側との軸方向間でクラッチ9の径方向内側には、付勢部材41が配置されている。この付勢部材41は、クラッチ部材7を、常時、クラッチ9の接続解除方向に付勢している。
【0072】
このような付勢部材41によって、クラッチ部材7がクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除され、差動機構507の差動がアンロック状態となる。このようなクラッチ9の断続状態は、アクチュエータ23によって制御される。
【0073】
アクチュエータ23は、デフケース3のフランジ部515側に配置され、可動部材43と、電磁石45とを備えている。
【0074】
可動部材43は、電磁石45の内径側でデフケース3のボス部511の外周に軸方向移動可能に配置され、環状のプランジャ47と、リング部材49とを備えている。
【0075】
プランジャ47は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石45の内径側に配置されている。
【0076】
リング部材49は、非磁性材料から形成され、プランジャ47の内径側に一体に固定され、プランジャ47の内周側からデフケース3側へ磁束が漏れることを防止している。
【0077】
このリング部材49は、デフケース3のボス部511の外周に軸方向移動可能に配置され、デフケース3のボス部511の外周に圧入固定された非磁性材料からなる規制部材51によって軸方向外側への移動規制がなされている。
【0078】
このようなリング部材49は、クラッチ部材7側の軸方向の端面に、クラッチ部材7の凸部37と当接可能な押圧部53が設けられている。
【0079】
この押圧部53は、電磁石45によって可動部材43がクラッチ部材7側に移動されたときに、その軸方向の移動操作力をクラッチ部材7に伝達し、クラッチ部材7をクラッチ9の接続方向に押圧操作する。
【0080】
電磁石45は、デフケース3のボス部511の外周側でデフケース3の壁部33に対して軸方向に隣接配置されている。この電磁石45は、回り止め部(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回り止めされ、電磁コイル55と、コア57とを備えている。
【0081】
電磁コイル55は、環状に所定巻き数巻回されて樹脂でモールド成形されている。この電磁コイル55には、外部に引き出されるリード線(不図示)が接続され、このリード線を介して通電を制御するコントローラ(不図示)に電気的に接続されている。
【0082】
コア57は、電磁コイル55への通電により磁界が形成されるように磁性材料から形成され、所定の磁路断面積を有している。このコア57は、電磁コイル55の内外周面及び電磁コイル55のデフケース3の壁部33と反対側に位置する軸方向一側端面を環状に覆っている。
【0083】
このようなコア57の外径側には、デフケース3の壁部33から軸方向に延設された延設部59が磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって覆うように配置されている。この延設部59は、軸方向の端面がコア57に設けられた径方向外側に向けて突出する凸部と当接することによって、電磁石45の軸方向内側への位置決めがなされている。
【0084】
一方、コア57の軸方向外側の端面は、可動部材43の軸方向外側への移動を規制する規制部材51によって、可動部材43と共に電磁石45の軸方向外側への位置決めがなされている。
【0085】
このようなクラッチ機構29は、電磁石45の励磁により、コア57とプランジャ47とデフケース3の壁部33とを透過する磁束によって、最短の磁束ループを形成する。
【0086】
この磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ47がクラッチ部材7側に移動操作され、リング部材49が押圧部53を介してクラッチ部材7を押圧する。この可動部材43によるクラッチ部材7の押圧操作により、クラッチ部材7が付勢部材41の付勢力に抗してクラッチ9の接続方向に移動され、クラッチ9が接続される。
【0087】
このクラッチ9の接続により、出力ギヤ5とクラッチ部材7とが一体回転可能に接続され、出力ギヤ5とデフケース3とが接続されて差動機構507がロック状態となる。
【0088】
一方、クラッチ9の接続解除では、電磁石45への通電を停止することにより、クラッチ部材7が付勢部材41の付勢力によってクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除される。
【0089】
このクラッチ9の接続解除により、出力ギヤ5とクラッチ部材7とが相対回転可能となり、出力ギヤ5とデフケース3とが相対回転可能となって差動機構507のロック状態が解除される。
【0090】
なお、アクチュエータは、上述したように電磁石を作動源として如何なる手段かを用いてクラッチ部材を操作してクラッチを接続又は接続解除するものであってもよい。
【0091】
例えば、電磁石以外の作動源として、流体圧作動シリンダとピストンを用いた構成、或いは電動モータと減速機構やカム機構を組み合わせた構成など、適宜採用することができる。
【0092】
このようなクラッチ機構29において、クラッチ部材7は、軸方向に移動することによってクラッチ9を断続するので、クラッチ部材7の軸方向位置を検出することによって、クラッチ9の断続状態、すなわち差動機構507のロック状態とロック解除状態とを検出することができる。
【0093】
そこで、クラッチのシフト位置検出装置1は、検出機構11を備えている。この検出機構11は、検知体13と、センサコイル17とを備えている。なお、
図3では、検知体13が、検出部65のみを有するように図示されている。
【0094】
検知体13は、クラッチ部材7と別体で環状に形成され、内径側が、軸方向に延出された後、軸方向の端部が、径方向内側に延出された複数の固定部61が設けられている。この複数の固定部61は、デフケース3の壁部33の孔39に連通された貫通孔63に挿入され、ボルトを介してクラッチ部材7の凸部37の軸方向端面に固定される。
【0095】
このように複数の固定部61をクラッチ部材7に固定することにより、検知体13がクラッチ部材7と一体に軸方向に移動される。
【0096】
このような検知体13には、径方向外側に向けて延出された円盤状の検出部65が設けられている。この検出部65は、デフケース3の外部において、電磁石45の外周に配置され、検知体13の軸方向移動により、軸方向に対して垂直に配置された状態で軸方向に移動する。
【0097】
このような検出部65には、センサコイル17が対向して配置される。
【0098】
センサコイル17は、デフケース3の軸心と同軸配置されるように環状に形成されたコイル部25と、コイル部25の検知体13と対向する部分以外の外周に環状に固着されデフケース3の軸心と同軸配置されるコア部27とを有する。
【0099】
このセンサコイル17は、コイル部25がコア部27から引き出されるリード線67を介してコントローラに電気的に接続され、コア部27の内周がアクチュエータ23の電磁石45の外周に圧入、接着、溶接などによって固定されている。
【0100】
なお、センサコイル17のコア部27は、アクチュエータ23の電磁石45のコア57と同一部材で一体に形成されてもよい。
【0101】
このようなセンサコイル17には、検知体13の検出部65に対して、軸方向に対向する検出面15が周方向に連続して設けられている。この検出面15は、第1検出面19と、第2検出面21とを有する。
【0102】
第1検出面19は、検出面15において、コア部27の外径側に位置する軸方向の端面となっている。
【0103】
第2検出面21は、検出面15において、コア部27の内径側に位置する軸方向の端面となっている。
【0104】
この第1検出面19と第2検出面21とは、コイル部25への通電によって励磁されたときに発生する磁束の受け渡しが可能となっている。
【0105】
このような第1検出面19と第2検出面21とからなる検出面15は、周方向に連続する径方向の全域が、検知体13の検出部65の径方向の範囲内に配置され、検知体13の検出部65と軸方向に隙間を有して対向して配置される非接触型のセンサとなっている。
【0106】
このような検出面15は、検知体13の検出部65に対して、クラッチ部材7の軸方向の移動範囲内における、例えば、クラッチ9の接続解除状態であるクラッチ部材7の第1の位置(
図1参照)と、クラッチ9の接続状態であるクラッチ部材7の第2の位置(不図示)とで、それぞれ第1の距離と、第2の距離とを有して軸方向に対向して配置される。
【0107】
この検出面15と検知体13の検出部65との間に形成される第1の距離と第2の距離との変化により、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合が変化される。
【0108】
この磁束の透過割合の変化を検出することにより、クラッチ部材7の軸方向の位置を検出することができ、クラッチ9の断続状態を検出することができる。
【0109】
このようにセンサコイル17の検出面15を周方向に連続する環状に形成させることにより、クラッチ部材7の移動を、デフケース3の軸心周りの全域で検出することができる。
【0110】
このため、センサコイル17の検出面15と検知体13との間の距離を正確に検出することができ、正確なクラッチ部材7の配置位置を検出し、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0111】
このようなセンサコイル17は、アクチュエータ23の電磁石45の外周に、検知体13の検出部65と軸方向に対向するように固定されている。
【0112】
このようにセンサコイル17を固定することにより、例えば、デフケース3を収容するキャリアなどの静止系部材に、センサコイル17を固定するための構造を設ける必要がなく、静止系部材などの周辺部材の構造を複雑化する必要がない。
【0113】
このため、キャリアなどの静止系部材は、デフケース3のフランジ部515側の構造が複雑化しており、センサコイル17の固定構造を確保することが難しいが、この部分にセンサコイル17の固定構造を設ける必要がなく、センサコイル17をデフケース3のフランジ部515側に配置することができる。
【0114】
このようなクラッチのシフト位置検出装置1では、検出機構11が、クラッチ部材7の移動を検知する検知体13と、検知体13の移動を検出する検出面15がデフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイル17とを有する。また、検知体13は、少なくともクラッチ部材7の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、センサコイル17の検出面15との間に第1の距離と第2の距離を有して対向する。
【0115】
このため、センサコイル17の検出面15は、デフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられているので、クラッチ部材7の移動を、デフケース3の軸心周りの全域で検出することができ、クラッチ部材7の配置位置の検出精度を向上することができる。
【0116】
従って、このようなクラッチのシフト位置検出装置1では、クラッチ部材7の配置位置を正確に検出することができ、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0117】
また、センサコイル17の検出面15は、磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する。そして、検知体13は、第1の位置と第2の位置において、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合を変化させる。
【0118】
このため、デフケース3の軸心周りの全域において、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合の変化を検出することによって、クラッチ部材7の第1の位置と第2の位置とにおける検出精度を向上することができる。
【0119】
さらに、センサコイル17の検出面15は、検知体13と回転軸方向に対向して配置されている。このため、検知体13の径方向に対して、センサコイル17を配置することがなく、装置の径方向の大型化を抑制することができる。
【0120】
また、検知体13は、クラッチ部材7と別体で形成され、クラッチ部材7に一体移動可能に固定されている。このため、クラッチ部材7と独立して検知体13の設計を行うことができ、検知体13の設計の自由度を向上することができる。
【0121】
さらに、クラッチ部材7は、デフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられたアクチュエータ23を備えている。そして、センサコイル17は、検知体13に対向可能に、アクチュエータ23に固定されている。
【0122】
このため、デフケース3を収容するキャリアなどの静止系部材に、センサコイル17を固定するための構造を設ける必要がなく、静止系部材などの周辺部材の構造を複雑化する必要がない。
【0123】
また、センサコイル17は、デフケース3の軸心と同軸配置され環状に設けられたコイル部25と、コイル部25に環状に固着されてデフケース3の軸心と同軸配置されたコア部27とからなる。
【0124】
このため、簡易な構造の非接触型のセンサで、クラッチ部材7の移動を、デフケース3の軸心周りの全域で検出することができ、クラッチ部材7の配置位置の検出精度を向上することができる。
【0125】
さらに、本実施形態に係るデファレンシャル装置501は、駆動力が入力され回転可能なケースとしてのデフケース3と、デフケース3に対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤ503と、入力ギヤ503に相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤ5,505とを有する。
【0126】
そして、デファレンシャル装置501は、デフケース3から一対の出力ギヤ5,505へ伝達される駆動力を断続可能なクラッチ9を備え、デフケース3の回転軸心と同軸配置され、クラッチ9の断続状態を検知可能なクラッチのシフト位置検出装置1を備えている。
【0127】
従って、このようなデファレンシャル装置501では、クラッチのシフト位置検出装置1を備えているので、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0128】
(第2実施形態)
図4を用いて第2実施形態について説明する。
【0129】
本実施形態に係るデファレンシャル装置601は、クラッチのシフト位置検出装置1が、デフケース3の軸方向に対して、デフケース3のフランジ部515と反対側に配置されている。
【0130】
なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0131】
ここで、
図4に示すように、デファレンシャル装置601は、差動制限機構509(
図1参照)を備えておらず、クラッチのシフト位置検出装置1のみを備えている。
【0132】
このデファレンシャル装置601では、一対の出力ギヤ5,505が、それぞれ第1出力部材519(
図1参照)と、第2出力部材521(
図1参照)とが別体で形成されておらず、第1出力部材519と第2出力部材521との機能を有するように、連続する一部材で形成されている。
【0133】
また、入力シャフト517は、長尺の1つのシャフトと、短尺の2つのシャフトとからなり、長尺のシャフトの両端部がデフケース3に係合され、短尺の2つのシャフトの一端部が長尺のシャフトの孔に係合されている。
【0134】
この入力シャフト517は、短尺のシャフトの他端部がデフケース3に係合されてピンで抜け止め及び回り止めされ、デフケース3と一体に回転駆動される。この入力シャフト517の端部側には、複数の入力ギヤ503がそれぞれ支承されている。
【0135】
このようなデファレンシャル装置601では、クラッチのシフト位置検出装置1が、デフケース3の軸方向に対して、デフケース3のフランジ部515と反対側に配置されている。
【0136】
クラッチのシフト位置検出装置1は、クラッチ機構29と、検出機構11とを備えている。
【0137】
クラッチ機構29のクラッチ部材7は、基部31がデフケース3の壁部69と出力ギヤ505のギヤ部の背面側との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。
【0138】
このクラッチ部材7は、複数の凸部37と複数の孔39とからなる係合部35を介してデフケース3と一体回転可能で、軸方向移動可能に配置されている。この係合部35には、凸部37と孔39との周方向両側の対向面に、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成され、クラッチ9の接続が強化されている。
【0139】
クラッチ9は、クラッチ部材7の基部31の係合部35と軸方向反対側の側面で、クラッチ部材7と出力ギヤ505のギヤ部の背面側との軸方向間に設けられている。このクラッチ9は、クラッチ部材7と出力ギヤ505とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
【0140】
このようなクラッチ9は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、クラッチ部材7と出力ギヤ505とが一体回転可能に接続、すなわちデフケース3と出力ギヤ505とが一体回転可能に接続され、差動機構507の差動がロック状態となる。
【0141】
一方、クラッチ部材7と出力ギヤ505のギヤ部の背面側との軸方向間でクラッチ9の径方向内側には、付勢部材41が配置されている。この付勢部材41は、クラッチ部材7を、常時、クラッチ9の接続解除方向に付勢している。
【0142】
このような付勢部材41によって、クラッチ部材7がクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除され、差動機構507の差動がアンロック状態となる。このようなクラッチ9の断続状態は、アクチュエータ23によって制御される。
【0143】
アクチュエータ23の可動部材43は、電磁石45の内径側でデフケース3のボス部513の外周にリング部材49が軸方向移動可能に配置され、プランジャ47が微小隙間であるエアギャップをもって電磁石45の内径側に配置されている。
【0144】
この可動部材43は、デフケース3のボス部513の外周に圧入固定された非磁性材料からなる規制部材51によって軸方向外側への移動規制がなされている。
【0145】
このような可動部材43は、電磁石45の励磁によって、プランジャ47がクラッチ9の接続方向に移動され、リング部材49が押圧部53を介してクラッチ部材7をクラッチ9の接続方向に押圧操作する。
【0146】
電磁石45は、デフケース3のボス部513の外周側でデフケース3の壁部69に対して軸方向に隣接配置され、電磁コイル55がコア57から引き出されるリード線(不図示)を介してコントローラに電気的に接続されている。
【0147】
この電磁石45は、回り止め部(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回り止めされている。
【0148】
この電磁石45の外径側には、デフケース3の壁部69から軸方向に延設された延設部59が磁束が透過可能に設定された摺動接触面をもって覆うように配置されている。この延設部59は、電磁石45の軸方向内側への位置決めを行う。
【0149】
一方、電磁石45は、可動部材43の軸方向外側への移動を規制する規制部材51によって、可動部材43と共に電磁石45の軸方向外側への位置決めがなされている。
【0150】
このようなクラッチ機構29は、軸方向のフランジ部515と反対側において、電磁石45の励磁によりコア57とプランジャ47とデフケース3の壁部69とを透過する磁束によって、最短の磁束ループを形成する。
【0151】
この磁束ループを有効に用いることによって、プランジャ47がクラッチ部材7側に移動操作され、リング部材49が押圧部53を介してクラッチ部材7を押圧する。この可動部材43によるクラッチ部材7の押圧操作により、クラッチ部材7が付勢部材41の付勢力に抗してクラッチ9の接続方向に移動され、クラッチ9が接続される。
【0152】
このクラッチ9の接続により、出力ギヤ505とクラッチ部材7とが一体回転可能に接続され、出力ギヤ505とデフケース3とが接続されて差動機構507がロック状態となる。
【0153】
一方、クラッチ9の接続解除では、電磁石45への通電を停止することにより、クラッチ部材7が付勢部材41の付勢力によってクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除される。
【0154】
このクラッチ9の接続解除により、出力ギヤ505とクラッチ部材7とが相対回転可能となり、出力ギヤ505とデフケース3とが相対回転可能となって差動機構507のロック状態が解除される。
【0155】
このようなクラッチ9の断続状態は、検出機構11によって検出される。
【0156】
クラッチ機構29の検知体13は、クラッチ部材7と別体で環状に形成され、デフケース3の壁部69の孔39に連通された貫通孔63に挿入された複数の固定部61がボルトを介してクラッチ部材7の凸部37の軸方向端面に固定される。
【0157】
このクラッチ部材7と軸方向に一体移動可能に固定された検知体13の検出部65は、デフケース3の外部において、電磁石45の外周側で、センサコイル17と対向して配置される。
【0158】
センサコイル17は、コイル部25がコア部27から引き出されるリード線67(
図2参照)を介してコントローラに電気的に接続され、コア部27の内周がアクチュエータ23の電磁石45の外周に圧入、接着、溶接などによって固定されている。
【0159】
このセンサコイル17の磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する検出面15は、周方向に連続する径方向の全域が、検知体13の検出部65の径方向の範囲内に配置され、検知体13の検出部65と軸方向に隙間を有して対向して配置されている。
【0160】
このような検出面15は、検知体13の検出部65に対して、クラッチ部材7の軸方向の移動範囲内における、例えば、クラッチ9の接続解除状態であるクラッチ部材7の第1の位置(
図4参照)と、クラッチ9の接続状態であるクラッチ部材7の第2の位置(不図示)とで、それぞれ第1の距離と、第2の距離とを有して軸方向に対向して配置される。
【0161】
この検出面15と検知体13の検出部65との間に形成される第1の距離と第2の距離との変化により、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合が変化される。
【0162】
この磁束の透過割合の変化を検出することにより、クラッチ部材7の軸方向の位置を検出することができ、クラッチ9の断続状態を検出することができる。
【0163】
このようにセンサコイル17の検出面15を周方向に連続する環状に形成させることにより、クラッチ部材7の移動を、デフケース3の軸心周りの全域で検出することができる。
【0164】
このため、センサコイル17の検出面15と検知体13との間の距離を正確に検出することができ、正確なクラッチ部材7の配置位置を検出し、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0165】
このようなセンサコイル17は、デフケース3の軸方向に対して、フランジ部515と反対側に配置されたアクチュエータ23の電磁石45の外周に、検知体13の検出部65と軸方向に対向するように固定されている。
【0166】
デフケース3のフランジ部515と反対側において、キャリアなどの静止系部材は、デフケース3のフランジ部515側に比較して、構造が簡易化されており、配置スペースを確保することができる。
【0167】
このため、アクチュエータ23の設計やセンサコイル17の設計の自由度を向上することができ、クラッチ9の断続特性やクラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0168】
このようなデファレンシャル装置601では、クラッチのシフト位置検出装置1が、デフケース3の軸方向に対して、デフケース3のフランジ部515と反対側に配置されている。
【0169】
このため、デフケース3のフランジ部515側と比較して、クラッチのシフト位置検出装置1の設計の自由度を向上することができ、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0170】
(第3実施形態)
図5を用いて第3実施形態について説明する。
【0171】
本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置101は、センサコイル17の検出面15が、検知体13と回転軸方向と交差する方向に対向して配置されている。
【0172】
なお、他の実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は他の実施形態を参照するものとし省略するが、他の実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0173】
図5に示すように、クラッチ機構29のアクチュエータ23の可動部材43は、電磁石45の内径側でデフケース3のボス部513の外周にリング部材49が軸方向移動可能に配置され、プランジャ47が微小隙間であるエアギャップをもって電磁石45の内径側に配置されている。
【0174】
この可動部材43は、リング部材49の軸方向内側の端面が検知体13と当接可能に配置されている。また、可動部材43は、軸方向外側の端面が電磁石45のコア57と当接可能に配置されており、軸方向外側への移動が規制されている。
【0175】
このような可動部材43は、電磁石45の励磁によって、プランジャ47がクラッチ9の接続方向に移動され、リング部材49が検知体13を介してクラッチ部材7をクラッチ9の接続方向に押圧操作する。
【0176】
電磁石45は、デフケース3のボス部513の外周側でデフケース3の壁部69に対して軸方向に隣接配置され、電磁コイル55がコア57から引き出されるリード線(不図示)を介してコントローラに電気的に接続されている。
【0177】
この電磁石45は、回り止め部(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回り止めされている。このような電磁石45の内径側には、コア57と一体的に設けられた環状の支持部103が設けられている。
【0178】
この支持部103の内径側には、デフケース3のボス部513の外周に係合されたC型クリップなどからなる規制部材105が配置されている。この規制部材105は、支持部103と係合することにより、電磁石45の軸方向外側への移動を規制する。
【0179】
一方、支持部103は、デフケース3のボス部513に形成された段差部107と係合され、電磁石45の軸方向内側への移動が規制されている。
【0180】
このような電磁石45を有するクラッチ機構29は、電磁コイル55への通電により、コア57とプランジャ47とを透過する自己完結型の磁束ループを形成する。この磁束ループの形成により、プランジャ47がクラッチ部材7側に移動操作され、リング部材49が検知体13を介してクラッチ部材7を押圧する。
【0181】
この可動部材43によるクラッチ部材7の押圧操作により、クラッチ部材7が付勢部材41の付勢力に抗してクラッチ9の接続方向に移動され、クラッチ9が接続される。
【0182】
このクラッチ9の接続により、出力ギヤ505とクラッチ部材7とが一体回転可能に接続され、出力ギヤ505とデフケース3とが接続されて差動機構507がロック状態となる。
【0183】
一方、クラッチ9の接続解除では、電磁石45への通電を停止することにより、クラッチ部材7が付勢部材41の付勢力によってクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除される。
【0184】
このクラッチ9の接続解除により、出力ギヤ505とクラッチ部材7とが相対回転可能となり、出力ギヤ505とデフケース3とが相対回転可能となって差動機構507のロック状態が解除される。
【0185】
このようなクラッチ9の断続状態は、検出機構11によって検出される。
【0186】
検出機構11の検知体13は、クラッチ部材7と別体で環状に形成され、デフケース3の壁部69の孔39から露出されたクラッチ部材7の凸部37の軸方向端面にボルトを介して複数の固定部61が固定される。
【0187】
このクラッチ部材7と軸方向に一体移動可能に固定された検知体13の検出部65は、デフケース3の外部において、電磁石45の外周側に向けて延出され、周方向に連続する環状に形成されている。
【0188】
この検出部65は、デフケース3の外部において、検知体13の軸方向移動により、軸方向に対して平行に配置された状態で軸方向に移動する。このような検出部65には、センサコイル17が対向して配置される。
【0189】
センサコイル17は、コイル部25がコア部27から引き出されるリード線67(
図2参照)を介してコントローラに電気的に接続され、コア部27の内周がアクチュエータ23の電磁石45の外周に圧入、接着、溶接などによって固定されている。
【0190】
このセンサコイル17の磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する検出面15は、センサコイル17の外径側に周方向に連続して環状に形成されている。この検出面15は、検知体13の検出部65に対して、軸方向と交差する方向、詳細には径方向に隙間を有して対向するように配置されている。
【0191】
このような検出面15は、検知体13の検出部65に対して、クラッチ部材7の軸方向の移動範囲内における、例えば、クラッチ9の接続解除状態であるクラッチ部材7の第1の位置(
図5参照)と、クラッチ9の接続状態であるクラッチ部材7の第2の位置(不図示)とで、それぞれ第1の距離と、第2の距離とを有して径方向に対向して配置される。
【0192】
この検出面15と検知体13の検出部65との間に形成される第1の距離と第2の距離との変化により、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合が変化される。
【0193】
この磁束の透過割合の変化を検出することにより、クラッチ部材7の軸方向の位置を検出することができ、クラッチ9の断続状態を検出することができる。
【0194】
このようにセンサコイル17の検出面15を周方向に連続する環状に形成させることにより、クラッチ部材7の移動を、デフケース3の軸心周りの全域で検出することができる。
【0195】
このため、センサコイル17の検出面15と検知体13との間の距離を正確に検出することができ、正確なクラッチ部材7の配置位置を検出し、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0196】
このようなクラッチのシフト位置検出装置101では、センサコイル17の検出面15が、検知体13と回転軸方向と交差する方向に対向して配置されている。このため、検知体13の軸方向に対して、センサコイル17が張り出すことがなく、装置の軸方向の大型化を抑制することができる。
【0197】
(第4実施形態)
図6を用いて第4実施形態について説明する。
【0198】
本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置201は、相対回転可能に配置された一対の回転部材としてのアウタケース203とインナケース205と、アウタケース203と一体回転可能で回転軸方向に移動可能に配置されたクラッチ部材207と、クラッチ部材207の移動によりアウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が断続されるクラッチ209と、クラッチ部材207の配置位置を検出する検出機構11とを備えている。
【0199】
また、検出機構11は、クラッチ部材207の移動を検知する検知体13と、検知体13の移動を検出する検出面15がインナケース205の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイルと17を有する。
【0200】
そして、検知体13は、少なくともクラッチ部材207の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、センサコイル17の検出面15との間に第1の距離と第2の距離を有して対向する。
【0201】
また、センサコイル17の検出面15は、検知体13と回転軸方向に対向して配置されている。
【0202】
さらに、検知体13は、クラッチ部材207と一体に形成されている。
【0203】
また、本実施形態に係るデファレンシャル装置701は、駆動力が入力され回転可能なケースとしてのインナケース205と、インナケース205に対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤ703と、入力ギヤ703に相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤ705,707とを有する。
【0204】
そして、デファレンシャル装置701は、インナケース205から一対の出力ギヤ705,707へ伝達される駆動力を断続可能なクラッチ209を備え、インナケース205の回転軸心と同軸配置され、クラッチ209の断続状態を検知可能なクラッチのシフト位置検出装置201を備えている。
【0205】
なお、他の実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は他の実施形態を参照するものとし省略するが、他の実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0206】
まず、
図6を用いて本実施形態に係るデファレンシャル装置701について説明する。
【0207】
図6に示すように、デファレンシャル装置701は、アウタケース203と、差動機構709と、クラッチのシフト位置検出装置201とを備えている。
【0208】
アウタケース203は、軸方向の両側に設けられたボス部711,713の外周でそれぞれベアリング(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回転可能に支持されている。このアウタケース203には、リングギヤ(不図示)が固定されるフランジ部715が形成されている。
【0209】
このフランジ部715に固定されたリングギヤは、例えば、駆動源から駆動力を伝達するプロペラシャフトなどの入力側の機構と一体回転可能に設けられた動力伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、駆動力が入力されてアウタケース203を回転駆動させる。
【0210】
このようなアウタケース203には、相対回転可能に差動機構709のインナケース205が収容され、後述するクラッチ209が接続状態であると、リングギヤに入力された駆動力がインナケース205を介して差動機構709に伝達される。
【0211】
差動機構709は、インナケース205と、入力シャフト717と、入力ギヤ703と、一対の出力ギヤ705,707とを備えている。
【0212】
インナケース205は、回転軸心がアウタケース203と同軸的に平行に配置され、アウタケース203内にアウタケース203と相対回転可能に収容されている。
【0213】
このインナケース205には、入力シャフト717と、入力ギヤ703と、一対の出力ギヤ705,707とが収容され、インナケース205に入力された駆動力が伝達される。
【0214】
入力シャフト717は、長尺の1つのシャフトと、短尺の2つのシャフトとからなり、長尺のシャフトの両端部がインナケース205に係合され、短尺の2つのシャフトの一端部が長尺のシャフトの孔に係合されている。
【0215】
この入力シャフト717は、短尺のシャフトの他端部がインナケース205に係合されてピンで抜け止め及び回り止めされ、インナケース205と一体に回転駆動される。この入力シャフト717の端部側には、複数の入力ギヤ703がそれぞれ支承されている。
【0216】
複数の入力ギヤ703は、インナケース205の周方向等間隔に4つ配置され、それぞれ入力シャフト717の端部側に支承されてインナケース205の回転によって公転する。
【0217】
この入力ギヤ703は、一対の出力ギヤ705,707に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対の出力ギヤ705,707に差回転が生じると回転駆動されるように入力シャフト717に自転可能に支持されている。
【0218】
一対の出力ギヤ705,707は、それぞれに形成されたボス部でアウタケース203に相対回転可能に支持され、入力ギヤ703と噛み合っている。この一対の出力ギヤ705,707は、内周側にスプライン形状の出力部719,721がそれぞれ設けられている。
【0219】
この出力部719,721には、例えば、左右車輪などの出力側の機構に一体回転可能に接続される駆動軸(不図示)がそれぞれ出力ギヤ705,707と一体回転可能に連結され、インナケース205に入力された駆動力を出力側の機構に出力する。
【0220】
このようなアウタケース203から差動機構709に伝達される駆動力は、アウタケース203とインナケース205との間に設けられたクラッチ部材207を有するクラッチのシフト位置検出装置201を作動することによって断続される。
【0221】
このようにアウタケース203とインナケース205との間の動力伝達を断続するクラッチのシフト位置検出装置201を有するデファレンシャル装置701は、いわゆるフリーランニングデフとなっている。以下、
図6を用いてクラッチのシフト位置検出装置201について説明する。
【0222】
図6に示すように、クラッチのシフト位置検出装置201は、クラッチ機構211と、検出機構11とを備えている。
【0223】
クラッチ機構211は、クラッチ部材207と、クラッチ209と、アクチュエータ23とを備えている。
【0224】
クラッチ部材207は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部213がアウタケース203の壁部215とインナケース205との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。
【0225】
このクラッチ部材207のアウタケース203の壁部215側には、アウタケース203と一体回転可能に係合する係合部217が設けられ、クラッチ部材207のインナケース205側には、クラッチ209が設けられている。
【0226】
係合部217は、クラッチ部材207の基部213に周方向等間隔に設けられた複数の凸部219と、アウタケース203の壁部215に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔221とからなる。
【0227】
この凸部219と孔221とが回転方向に係合することにより、クラッチ部材207がアウタケース203に回り止めされ、クラッチ部材207とアウタケース203とが一体回転可能となる。
【0228】
この係合部217としての凸部219と孔221との周方向両側の対向面には、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成されている。
【0229】
このカム面は、クラッチ部材207がクラッチ209の接続方向に移動され、クラッチ209に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、アウタケース203の回転によってそれぞれのカム面が係合する。
【0230】
このそれぞれのカム面の係合により、クラッチ部材207をさらにクラッチ209の噛み合い方向に移動させ、クラッチ209の接続を強化させる。
【0231】
クラッチ209は、クラッチ部材207の基部213の係合部217と軸方向反対側の側面で、クラッチ部材207とインナケース205との軸方向間に設けられている。このクラッチ209は、クラッチ部材207とインナケース205とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
【0232】
このようなクラッチ209は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、クラッチ部材207とインナケース205とが一体可能に接続、すなわちアウタケース203とインナケース205とが一体回転可能に接続され、アウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が可能となる。
【0233】
一方、クラッチ209の径方向内側でクラッチ部材207と出力ギヤ707のギヤ部の背面側との軸方向間には、付勢部材223が配置されている。この付勢部材223は、クラッチ部材207を、常時、クラッチ209の接続解除方向に付勢している。
【0234】
このような付勢部材223によって、クラッチ部材207がクラッチ209の接続解除方向に移動され、クラッチ209の接続が解除され、アウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が遮断される。このようなクラッチ209の断続状態は、アクチュエータ23によって制御される。
【0235】
アクチュエータ23は、アウタケース203の軸方向に対して、アウタケース203のフランジ部715と反対側に配置され、可動部材43と、電磁石45とを備えている。
【0236】
可動部材43は、電磁石45の内径側でアウタケース203のボス部713の外周に軸方向移動可能に配置され、環状のプランジャ47と、リング部材49とを備えている。
【0237】
プランジャ47は、磁性材料から形成され、磁束が透過可能に設定された微小隙間であるエアギャップをもって電磁石45の内径側に配置されている。
【0238】
リング部材49は、非磁性材料から形成され、プランジャ47の内径側に一体に固定され、プランジャ47の内周側からアウタケース203側へ磁束が漏れることを防止している。
【0239】
このリング部材49は、軸方向外側の端面が電磁石45のコア57と当接可能に配置されており、軸方向外側への移動が規制されている。
【0240】
このようなリング部材49は、クラッチ部材207側の軸方向の端面に、クラッチ部材207の凸部219と当接可能な押圧部225が設けられている。
【0241】
この押圧部225は、電磁石45によって可動部材43がクラッチ部材207側に移動されたときに、その軸方向の移動操作力をクラッチ部材207に伝達し、クラッチ部材207をクラッチ209の接続方向に押圧操作する。
【0242】
電磁石45は、アウタケース203のボス部713の外周側でアウタケース203の壁部215に対して軸方向に隣接配置され、電磁コイル55がコア57から引き出されるリード線(不図示)を介してコントローラに電気的に接続されている。
【0243】
この電磁石45は、回り止め部(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回り止めされている。このような電磁石45の内径側には、コア57と一体的に設けられた環状の支持部103が設けられている。
【0244】
この支持部103の内径側には、アウタケース203のボス部713の外周に係合されたC型クリップなどからなる規制部材105が配置されている。この規制部材105は、支持部103と係合することにより、電磁石45の軸方向外側への移動を規制する。
【0245】
一方、支持部103は、アウタケース203のボス部713に形成された段差部107と係合され、電磁石45の軸方向内側への移動が規制されている。
【0246】
このような電磁石45を有するクラッチ機構211は、電磁コイル55への通電により、コア57とプランジャ47とを透過する自己完結型の磁束ループを形成する。この磁束ループの形成により、プランジャ47がクラッチ部材207側に移動操作され、リング部材49が押圧部225を介してクラッチ部材207を押圧する。
【0247】
この可動部材43によるクラッチ部材207の押圧操作により、クラッチ部材207が付勢部材223の付勢力に抗してクラッチ209の接続方向に移動され、クラッチ209が接続される。
【0248】
このクラッチ209の接続により、インナケース205とクラッチ部材207とが一体回転可能に接続され、アウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が可能となる。
【0249】
一方、クラッチ209の接続解除では、電磁石45への通電を停止することにより、クラッチ部材207が付勢部材223の付勢力によってクラッチ209の接続解除方向に移動され、クラッチ209の接続が解除される。
【0250】
このクラッチ209の接続解除により、インナケース205とクラッチ部材207とが相対回転可能となり、アウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が遮断される。
【0251】
このようなクラッチ209の断続状態は、検出機構11によって検出される。
【0252】
検出機構11の検知体13は、クラッチ部材207と一体に形成され、アウタケース203の壁部215の孔221からアウタケース203の外部に露出された凸部219の軸方向の端面となっている。
【0253】
この検知体13としての凸部219の軸方向端面は、アウタケース203の外部において、電磁石45との軸方向間で、センサコイル17と対向して配置される。
【0254】
センサコイル17は、インナケース205の軸心と同軸配置されるように環状に形成されたコイル部25と、コイル部25の検知体13と対向する部分以外の外周に環状に固着されインナケース205の軸心と同軸配置されるコア部27とを有する。
【0255】
このセンサコイル17は、コイル部25がコア部27から引き出されるリード線67(
図2参照)を介してコントローラに電気的に接続され、コア部27の軸方向端面がアクチュエータ23の電磁石45の軸方向端面に接着、溶接などによって固定されている。
【0256】
このようなセンサコイル17の磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する検出面15は、周方向に連続する径方向の全域が、検知体13としての凸部219の軸方向端面の径方向の範囲内に配置され、検知体13と軸方向に隙間を有して対向して配置されている。
【0257】
このような検出面15は、検知体13に対して、クラッチ部材207の軸方向の移動範囲内における、例えば、クラッチ209の接続解除状態であるクラッチ部材207の第1の位置(
図6参照)と、クラッチ209の接続状態であるクラッチ部材207の第2の位置(不図示)とで、それぞれ第1の距離と、第2の距離とを有して軸方向に対向して配置される。
【0258】
この検出面15と検知体13との間に形成される第1の距離と第2の距離との変化により、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合が変化される。
【0259】
この磁束の透過割合の変化を検出することにより、クラッチ部材207の軸方向の位置を検出することができ、クラッチ209の断続状態を検出することができる。
【0260】
このようにセンサコイル17の検出面15を周方向に連続する環状に形成させることにより、クラッチ部材207の移動を、インナケース205の軸心周りの全域で検出することができる。
【0261】
このため、センサコイル17の検出面15と検知体13との間の距離を正確に検出することができ、正確なクラッチ部材207の配置位置を検出し、クラッチ209の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0262】
このようなセンサコイル17は、検知体13としてのクラッチ部材207とアクチュエータ23の電磁石45との軸方向間に、検知体13と軸方向に対向するように固定されている。
【0263】
このようにセンサコイル17を固定することにより、例えば、アウタケース203を収容するキャリアなどの静止系部材に、センサコイル17を固定するための構造を設ける必要がなく、静止系部材などの周辺部材の構造を複雑化する必要がない。
【0264】
加えて、センサコイル17が電磁石45の外径側に張り出すことがなく、電磁石45の外径側に位置する周辺部材を径方向に近接して配置することができ、周辺部材の配置スペースを小型化することができる。
【0265】
このようなクラッチのシフト位置検出装置201では、検出機構11が、クラッチ部材207の移動を検知する検知体13と、検知体13の移動を検出する検出面15がインナケース205の軸心と同軸配置され環状に設けられたセンサコイル17とを有する。また、検知体13は、少なくともクラッチ部材207の移動範囲における第1の位置と第2の位置で、センサコイル17の検出面15との間に第1の距離と第2の距離を有して対向する。
【0266】
このため、センサコイル17の面出面15は、インナケース205の軸心と同軸配置され環状に設けられているので、クラッチ部材207の移動を、インナケース205の軸心周りの全域で検出することができ、クラッチ部材207の配置位置の検出精度を向上することができる。
【0267】
従って、このようなクラッチのシフト位置検出装置201では、クラッチ部材207の配置位置を正確に検出することができ、クラッチ209の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0268】
また、センサコイル17の検出面15は、検知体13と回転軸方向に対向して配置されている。このため、検知体13の径方向に対して、センサコイル17を配置することがなく、装置の径方向の大型化を抑制することができる。
【0269】
さらに、検知体13は、クラッチ部材207と一体に形成されている。このため、部品点数を削減することができ、クラッチ部材207と検知体13とを別々に取り扱う必要がなく、組付性を向上することができる。
【0270】
また、本実施形態に係るデファレンシャル装置701は、駆動力が入力され回転可能なケースとしてのインナケース205と、インナケース205に対して自転及び公転可能に配置された入力ギヤ703と、入力ギヤ703に相対回転可能に噛み合って駆動力を分岐出力する一対の出力ギヤ705,707とを有する。
【0271】
そして、デファレンシャル装置701は、インナケース205から一対の出力ギヤ705,707へ伝達される駆動力を断続可能なクラッチ209を備え、インナケース205の回転軸心と同軸配置され、クラッチ209の断続状態を検知可能なクラッチのシフト位置検出装置201を備えている。
【0272】
従って、このようなデファレンシャル装置701では、クラッチのシフト位置検出装置201を備えているので、クラッチ209の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0273】
(第5実施形態)
図7を用いて第5実施形態について説明する。
【0274】
本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置301は、センサコイル17の検出面15が、検知体13と回転軸方向と交差する方向に対向して配置されている。
【0275】
なお、他の実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は他の実施形態を参照するものとし省略するが、他の実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0276】
ここで、
図7に示すように、クラッチのシフト位置検出装置301では、クラッチ部材207と可動部材43のリング部材49との軸方向間に、クラッチ部材207とリング部材49とに軸方向に付勢力を付与する皿バネ303が配置されている。
【0277】
この皿バネ303は、電磁石45の励磁により、可動部材43がクラッチ部材207側に移動されたときに、その軸方向の移動操作力をクラッチ部材207に伝達し、クラッチ部材207をクラッチ209の接続方向に押圧操作し、クラッチ209を接続する。
【0278】
このクラッチ209の接続により、インナケース205とクラッチ部材207とが一体回転可能に接続され、アウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が可能となる。
【0279】
一方、クラッチ209の接続解除では、電磁石45への通電を停止することにより、クラッチ部材207が付勢部材223の付勢力によってクラッチ209の接続解除方向に移動され、クラッチ209の接続が解除される。
【0280】
このクラッチ209の接続解除により、インナケース205とクラッチ部材207とが相対回転可能となり、アウタケース203とインナケース205との間の動力伝達が遮断される。
【0281】
このようなクラッチ209の断続状態は、検出機構11によって検出される。
【0282】
検出機構11の検知体13は、クラッチ部材207と一体に形成され、アウタケース203の壁部215の孔221からアウタケース203の外部に露出された凸部219の外周面となっている。
【0283】
この検知体13としての凸部219の外周面は、アウタケース203の外部において、電磁石45との軸方向間で、センサコイル17と対向して配置される。
【0284】
センサコイル17は、インナケース205の軸心と同軸配置されるように環状に形成されたコイル部25と、コイル部25の検知体13と対向する部分以外の外周に環状に固着されインナケース205の軸心と同軸配置されるコア部27とを有する。
【0285】
このセンサコイル17は、コイル部25がコア部27から引き出されるリード線67(
図2参照)を介してコントローラに電気的に接続され、コア部27の内周面がアクチュエータ23の電磁石45の外周面に圧入、接着、溶接などによって固定されている。
【0286】
このようなセンサコイル17の磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する検出面15は、センサコイル17の内径側に周方向に連続して環状に形成されている。この検出面15は、検知体13としての凸部219の外周面に対して、軸方向と交差する方向、詳細には径方向に隙間を有して対向するように配置されている。
【0287】
このような検出面15は、検知体13に対して、クラッチ部材207の軸方向の移動範囲内における、例えば、クラッチ209の接続解除状態であるクラッチ部材207の第1の位置(
図7参照)と、クラッチ209の接続状態であるクラッチ部材207の第2の位置(不図示)とで、それぞれ第1の距離と、第2の距離とを有して径方向に対向して配置される。
【0288】
この検出面15と検知体13との間に形成される第1の距離と第2の距離との変化により、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合が変化される。
【0289】
この磁束の透過割合の変化を検出することにより、クラッチ部材207の軸方向の位置を検出することができ、クラッチ209の断続状態を検出することができる。
【0290】
このようにセンサコイル17の検出面15を周方向に連続する環状に形成させることにより、クラッチ部材207の移動を、インナケース205の軸心周りの全域で検出することができる。
【0291】
このため、センサコイル17の検出面15と検知体13との間の距離を正確に検出することができ、正確なクラッチ部材207の配置位置を検出し、クラッチ209の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0292】
このようなクラッチのシフト位置検出装置301では、センサコイル17の検出面15が、検知体13と回転軸方向と交差する方向に対向して配置されている。このため、検知体13の軸方向に対して、センサコイル17が張り出すことがなく、装置の軸方向の大型化を抑制することができる。
【0293】
(第6実施形態)
図8を用いて第6実施形態について説明する。
【0294】
本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置401は、検知体13が、一方の回転部材としてのデフケース3と一体に形成され、アクチュエータ403が、デフケース3の軸心と同軸配置されて環状に設けられ、回転軸方向への移動によりクラッチ部材7を移動させる。
【0295】
そして、センサコイル17は、検知体13に対向可能に、アクチュエータ403に固定されている。
【0296】
なお、他の実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は他の実施形態を参照するものとし省略するが、他の実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0297】
ここで、
図8に示すように、クラッチのシフト位置検出装置401は、差動機構507の差動を断続可能な差動ロック機能を有するデファレンシャル装置501に適用されている。
【0298】
このクラッチのシフト位置検出装置401におけるクラッチ機構29は、クラッチ部材7と、クラッチ9と、アクチュエータ403とを備えている。
【0299】
クラッチ部材7は、環状に形成され、デフケース3のフランジ部515側の壁部33に形成されたボス部511の外径より内径が大径に設定された収容部533内に、軸方向移動可能で、デフケース3と一体回転可能に収容されている。
【0300】
クラッチ9は、クラッチ部材7と出力ギヤ5との軸方向間に設けられている。このクラッチ9は、クラッチ部材7と出力ギヤ5とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯となっている。
【0301】
このようなクラッチ9は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、クラッチ部材7と出力ギヤ5とが一体回転可能に接続、すなわちデフケース3と出力ギヤ5とが一体回転可能に接続され、差動機構507の差動がロック状態となる。
【0302】
一方、クラッチ部材7と出力ギヤ5との軸方向間でクラッチ9の径方向内側には、付勢部材405が配置されている。この付勢部材405は、クラッチ部材7を、常時、クラッチ9の接続解除方向に付勢している。
【0303】
このような付勢部材405によって、クラッチ部材7がクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除され、差動機構507の差動がアンロック状態となる。このようなクラッチ9の断続状態は、アクチュエータ403によって制御される。
【0304】
アクチュエータ403は、デフケース3のフランジ部515側に配置された電磁石45となっており、回り止め部(不図示)を介してキャリアなどの静止系部材(不図示)に回り止めされている。
【0305】
この電磁石45は、コア57から引き出されたリード線(不図示)を介して電磁コイル55がコントローラ(不図示)に電気的に接続され、通電が制御されている。
【0306】
このような電磁石45は、ベアリング407を介してデフケース3の収容部533の外周に、デフケース3と相対回転可能で、軸方向移動可能に配置されている。なお、デフケース3のフランジ部515側の壁部33には、電磁石45が軸方向に移動したときに、電磁石45を収容可能な凹部409が形成されている。
【0307】
この電磁石45には、軸方向外側の端面に、環状に形成された連動部材411の外径側が配置され、連動部材411の軸方向外側の端面に係合する係合部(不図示)が設けられている。この連動部材411の内径側は、収容部533から露出するクラッチ部材7にボルト413を介して一体移動可能に連結されている。
【0308】
このため、電磁石45とクラッチ部材7とは、連動部材411を介して一体移動可能に連結されている。なお、収容部533内において、デフケース3とクラッチ部材7との軸方向間には、非磁性材料からなるワッシャ415が配置されており、電磁石45の励磁によって、クラッチ部材7がクラッチ9の接続解除方向に移動することが規制されている。
【0309】
このようなアクチュエータ403としての電磁石45は、電磁コイル55への通電により、コア57とデフケース3の壁部33とを透過する磁束によって、磁束ループを形成する。
【0310】
この磁束ループの形成により、電磁石45が凹部409に収容されるように移動操作され、連動部材411を介してクラッチ部材7が付勢部材405の付勢力に抗してクラッチ9の接続方向に移動され、クラッチ9が接続される。
【0311】
このクラッチ9の接続により、出力ギヤ5とクラッチ部材7とが一体回転可能に接続され、出力ギヤ5とデフケース3とが接続されて差動機構507がロック状態となる。
【0312】
一方、クラッチ9の接続解除では、電磁石45への通電を停止することにより、クラッチ部材7が付勢部材405の付勢力によってクラッチ9の接続解除方向に移動され、クラッチ9の接続が解除される。このとき、電磁石45は、連動部材411を介して凹部409から抜け出るように移動される。
【0313】
このクラッチ9の接続解除により、出力ギヤ5とクラッチ部材7とが相対回転可能となり、出力ギヤ5とデフケース3とが相対回転可能となって差動機構507のロック状態が解除される。
【0314】
このようなクラッチ9の断続状態は、検出機構11によって検出される。
【0315】
検出機構11の検知体13は、デフケース3のフランジ部515側の壁部33の軸方向外側に位置する軸方向の端面となっている。
【0316】
この検知体13としての壁部33の軸方向端面は、デフケース3の外部において、センサコイル17と対向して配置される。
【0317】
センサコイル17は、デフケース3の軸心と同軸配置されるように環状に形成されたコイル部25と、コイル部25の検知体13と対向する部分以外の外周に環状に固着されデフケース3の軸心と同軸配置されるコア部27とを有する。
【0318】
このセンサコイル17は、コイル部25がコア部27から引き出されるリード線67(
図2参照)を介してコントローラに電気的に接続され、コア部27の内周面がアクチュエータ403としての電磁石45の外周面に圧入、接着、溶接などによって固定されている。
【0319】
このようなセンサコイル17の磁束の受け渡しが可能な第1検出面19と第2検出面21とを有する検出面15は、周方向に連続する径方向の全域が、検知体13としての壁部33の軸方向端面の径方向の範囲内に配置され、検知体13と軸方向に隙間を有して対向して配置されている。
【0320】
このような検出面15は、検知体13に対して、クラッチ部材7の軸方向の移動範囲内における、例えば、クラッチ9の接続解除状態であるクラッチ部材7の第1の位置(
図8参照)と、クラッチ9の接続状態であるクラッチ部材7の第2の位置(不図示)とで、それぞれ第1の距離と、第2の距離とを有して軸方向に対向して配置される。
【0321】
この検出面15と検知体13との間に形成される第1の距離と第2の距離との変化により、第1検出面19と第2検出面21とを透過する磁束の透過割合が変化される。
【0322】
この磁束の透過割合の変化を検出することにより、クラッチ部材7の軸方向の位置を検出することができ、クラッチ9の断続状態を検出することができる。
【0323】
このようにセンサコイル17の検出面15を周方向に連続する環状に形成させることにより、クラッチ部材7の移動を、デフケース3の軸心周りの全域で検出することができる。
【0324】
このため、センサコイル17の検出面15と検知体13との間の距離を正確に検出することができ、正確なクラッチ部材7の配置位置を検出し、クラッチ9の断続状態の検出精度を向上することができる。
【0325】
このようなセンサコイル17が固定されるアクチュエータ403は、クラッチ部材7を移動操作する電磁石45のみであるので、部品点数を削減することができ、装置を小型化することができる。
【0326】
このようなクラッチのシフト位置検出装置401では、センサコイル17が、検知体13に対向可能に、アクチュエータ403に固定されている。このため、デフケース3を収容するキャリアなどの静止系部材に、センサコイル17を固定するための構造を設ける必要がなく、静止系部材などの周辺部材の構造を複雑化する必要がない。
【0327】
なお、本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置では、センサコイルの検出面が、検知体と回転軸方向と交差する方向に対向して配置されているものとして、センサコイルの検出面が、検知体と径方向に配置されているが、これに限るものではない。
【0328】
例えば、センサコイルの検出面を、回転軸方向と径方向との間に位置するように傾斜させ、検知体も、検出面と同様に傾斜して配置させ、検出面と検知体との間に隙間を有するように対向して配置させる。
【0329】
このようにセンサコイルの検出面と検知体とを配置させる場合であっても、センサコイルの検出面は、ケースの軸心周りに周方向に連続する環状に配置されており、クラッチ部材の配置位置の検出精度を向上することができる。
【0330】
また、センサコイルの検出面と検知体とを回転軸方向に対して傾斜して配置することにより、センサコイルの検出面を回転軸方向や径方向に対して平行に配置させる場合に比較して、センサコイルの配置スペースを回転軸方向及び径方向に小型化することができる。
【0331】
さらに、クラッチは、噛み合いクラッチとなっているが、これに限らず、例えば、押圧部材の移動によって締結される多板クラッチ、スリーブの移動によって接続が切り換えられる切換クラッチなどであってもよい。
【0332】
この場合には、本実施形態に係るクラッチのシフト位置検出装置で、押圧部材やスリーブの配置位置を検出することにより、クラッチの断続状態の検出精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0333】
1,101,201,301,401 シフト位置検出装置
3 デフケース(回転部材)
5,505 出力ギヤ(回転部材)
7,207 クラッチ部材
9,209 クラッチ
11 検出機構
13 検知体
15 検出面
17 センサコイル
19 第1検出面
21 第2検出面
23,403 アクチュエータ
25 コイル部
27 コア部
203 アウタケース(回転部材)
205 インナケース(回転部材)
501,601,701 デファレンシャル装置
503,703 入力ギヤ
705,707 出力ギヤ