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  • 特許-屋根免震構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】屋根免震構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20241018BHJP
   E04H 3/14 20060101ALI20241018BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20241018BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241018BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
E04H3/14 C
E04B7/00 Z
F16F15/02 L
F16F15/04 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020207963
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094844
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 勇気
(72)【発明者】
【氏名】星野 正宏
(72)【発明者】
【氏名】米田 総
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-303931(JP,A)
【文献】特開2016-033313(JP,A)
【文献】特開2016-118008(JP,A)
【文献】特開2020-002614(JP,A)
【文献】特開2009-144419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
E04H 3/14
E04B 7/00
F16F 15/00 -15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に設けられた免震支承と、
前記免震支承に支持された屋根と、
前記屋根に設けられ、下側に突出する突出部と、
前記突出部を囲むように前記構造体に設けられ、前記屋根が前記構造体に対して水平方向に相対移動すると当接し、前記屋根の相対移動量を規制する規制部と、
を備え
前記屋根は、トラス構造部を有し、
前記免震支承は、前記トラス構造部を構成する上弦材と下弦材とを接合する束材の下端部の直下に設けられている、
屋根免震構造。
【請求項2】
構造体に設けられた免震支承と、
前記免震支承に支持された屋根と、
前記屋根に設けられ、下側に突出する突出部と、
前記突出部を囲むように前記構造体に設けられ、前記屋根が前記構造体に対して水平方向に相対移動すると当接し、前記屋根の相対移動量を規制する規制部と、
を備え、
前記屋根は、V字状に配置された斜材を有するトラス構造部を有し、
前記突出部は、V字状に配置された前記斜材の下端部の直下に設けられている、
根免震構造。
【請求項3】
前記屋根の外形は、平面視で矩形状とされ、
前記突出部は、前記屋根の四つの角部又は前記角部の近傍に設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の屋根免震構造。
【請求項4】
構造体に設けられた免震支承と、
前記免震支承に支持された屋根と、
前記屋根に設けられ、下側に突出する突出部と、
前記突出部を囲むように前記構造体に設けられ、前記屋根が前記構造体に対して水平方向に相対移動すると当接し、前記屋根の相対移動量を規制する規制部と、
を備え、
前記屋根の外形は、平面視で矩形状とされ、
前記突出部は、前記屋根の四つの角部又は前記角部の近傍に設けられている、
根免震構造。
【請求項5】
前記規制部における前記突出部が当接する当接面は、平面視で円形である、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の屋根免震構造。
【請求項6】
前記免震支承は、積層ゴム支承で構成され、
前記突出部が前記規制部の当接面に当たる前記屋根の相対移動量は、前記積層ゴム支承が破損する上限を超えないように設定されている、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の屋根免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 屋根免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地震時の建物の応答を抑制する機構を有する免震建物に関する技術が開示されている。この先行技術では、第1層の一部に室部が形成された複数層の免震建物であり、基礎と該基礎から突出した第1層の柱とを含み地震時に地盤の動きに追従する鉄筋コンクリート造の下部構造体と、第1層の室部の構造体と上層の構造体とからなり地震時に前記下部構造体と相対的に変位する鉄骨造の上部構造体と、下部構造体と上部構造体との間に介在する免震装置と、からなっている。第1層の室部が第1層の柱で囲まれた領域内で変位するように最大変位を設定するとともに、免震装置の支承部を第1層の柱上端部と上層の構造体の下端部との間に介在させ、第1層の室部の構造体を、下部構造体とは非接触状態で、上層の構造体から懸架している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-144419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造体と屋根との間に地震時における屋根の振動を吸収するための積層ゴム等の免震支承を介装させる屋根免震構造が知られている。このような屋根免震構造では、想定を超える大地震が発生し、屋根の相対移動量が想定を超えた場合、免震支承が破損する等の不具合が発生する虞がある。
【0005】
上記事実を鑑み、本発明は、屋根の相対移動量が想定を超えることを防止することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、構造体に設けられた免震支承と、前記免震支承に支持された屋根と、前記屋根に設けられ、下側に突出する突出部と、前記突出部を囲むように前記構造体に設けられ、前記屋根が前記構造体に対して水平方向に相対移動すると当接し、前記屋根の相対移動量を規制する規制部と、を備えた屋根免震構造である。
【0007】
第一態様の屋根免震構造では、地震時に屋根が構造体に対して水平方向に相対移動すると、突出部が規制部に当たることで、屋根の相対移動量が規制される。したがって、屋根の相対移動量が想定を超えることが防止される。
【0008】
第二態様は、前記屋根は、V字状に配置された斜材を有するトラス構造部を有し、前記突出部は、V字状に配置された前記斜材の下端部の直下に設けられている、第一態様に記載の屋根免震構造である。
【0009】
第二態様の屋根免震構造では、斜材の下端部の直下に突出部を設けることで、突出部が規制部に当たった際の水平方向の衝撃力を、斜材を介してトラス構造部全体で受けることができ、衝撃力によるトラス構造部の変形が抑制される。
【0010】
第三態様は、前記規制部における前記突出部が当接する当接面は、平面視で円形である、第一態様又は第二態様に記載の屋根免震構造である。
【0011】
第三態様の屋根免震構造では、規制部における突出部が当接する当接面を平面視で円形状にすることで、屋根が水平方向のどのような方向に相対移動しても、突出部が規制部の当接面に当たるまでの相対移動量を同じ又は略同じにできる。
【0012】
第四態様は、前記屋根の外形は、平面視で矩形状とされ、前記突出部は、前記屋根の四つの角部又は前記角部の近傍に設けられている、第一態様~第三態様のいずれか一態様に記載の屋根免震構造である。
【0013】
第四態様の屋根免震構造では、平面視で矩形状の屋根の角部又は角部の近傍に突出部を設けることで、突出部が規制部に当たった際の屋根のねじれ等が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屋根の相対移動量が想定を超えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の屋根免震構造が適用されたスタジアムのY方向に沿った断面を模式的に示す断面図である。
図2図1のスタジアムを平面視して模式的に示す平面図である。
図3図2のA部の屋根免震構造の要部をY方向から見た正面図である。
図4図2のA部の屋根免震構造の要部をZ方向から見た平面図である。
図5図2のA部の屋根免震構造の要部をX方向から見た一部断面で示す側面図である。
図6】規制機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態に係る屋根免震構造について説明する。
【0017】
(構造)
まず、本発明の一実施形態に係る屋根免震構造及びこの屋根免震構造が適用されたスタジアムの全体構造について説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、スタジアム10は、フィールド部12の周囲に観客席14が設けられている。
【0019】
スタジアム10の屋根30には、屋根免震構造102が適用されている。屋根免震構造102は、免震支承(アイソレータ)の一例としての積層ゴム支承50と、積層ゴム支承50に支持された屋根30と、突出部110と、規制部120と、を備えている。
【0020】
観客席14を構成する構造体20の上端部22には、積層ゴム支承50が設けられている。積層ゴム支承50は、上端部22のY方向の両側にX方向に沿って設置されている(図2を参照)。そして、前述したように、これら積層ゴム支承50に屋根30が支持されている。屋根30における各角部からY方向内側に向けての部位は、鉄骨造のトラス構造部60となっている。
【0021】
図3図5に示すように、鉄骨造のトラス構造部60は、上弦材62(図3及び図4参照)、下弦材72(図5参照)、下弦材74、連結材78、束材82(図3及び図5)、斜材92及び斜材94(図3及び図4参照)を有して構成されている。なお、図3図5は、図2のA部のトラス構造部60を図示したものである。
【0022】
トラス構造部60の下弦材72(図5参照)及び下弦材74(図3図5参照)は、X方向に沿って配置されると共にY方向に間隔をあけて配置されている。下弦材72(図5参照)及び下弦材74(図3図5参照)の端部同士は、連結材78(図3図5参照)で連結されている。
【0023】
上弦材62(図3及び図4参照)は、X方向に沿って配置されている。また、上弦材62は、一方の下弦材72(図5参照)の上方に配置されている。
【0024】
図3に示すように、上弦材62と下弦材72とは、端部同士がそれぞれ束材82、84で接合されている。なお、一方の束材84は、鉛直方向に対して若干斜めに配置されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、上弦材62と下弦材74との間には、Y方向から見てV字状に斜材92及び斜材94が接合されている。
【0026】
図3に示すように、斜材92及び斜材94の上端部は、束材82、84と上弦材62との接合部位にガセットプレート95を介して接合されている。また、斜材92及び斜材94の下端部は、下弦材74の材軸方向の中央部にガセットプレート96を介して接合されている(図6も参照)。
【0027】
図3及び図4に示すように、前述した積層ゴム支承50は、下弦材72(図5参照)の束材82、84の直下に設置されている。
【0028】
図2に示すように、スタジアム10の屋根30のトラス構造部60に相当する部分には、屋根30の構造体20に対する水平方向の相対移動量を規制する規制機構100が設けられている。
【0029】
図1に示すように、規制機構100は、屋根30のトラス構造部60から下側に突出する突出部110と、構造体20の上端部22に設けられた規制部120と、を有して構成されている。
【0030】
図3図6に示すように、突出部110は、屋根30にトラス構造部60の下弦材74のV字状に配置された斜材92の下端部と斜材94の下端部とが接合された部位の直下から下側に向けて突出している。なお、本実施形態では、突出部110は、角型の鋼管で構成されているが、これに限定されるものではない。円筒形の鋼管で構成されていてもよいし、筒状でなく棒状の鋼材で構成されていてもよい。
【0031】
規制部120は、構造体20の上端部22に設けられ、突出部110の周囲を囲む環状とされている。
【0032】
図4及び図6に示すように、本実施形態の規制部120は、平面視で円環状となっており、内壁面である当接面122は円形となっている。
【0033】
このような規制機構100により、地震時に屋根30が構造体20に対して水平方向に相対移動すると、突出部110が規制部120の当接面122に当たり、屋根30の相対移動量を規制する。なお、突出部110が規制部120の当接面122に当たる屋根30の相対移動量は、閾値を超えないように設定されている。
【0034】
閾値は、屋根30の想定されている水平方向の相対移動量の上限値であり、例えば積層ゴム支承50が破損する上限の相対移動量等である。
【0035】
なお、図示はされていないが、規制部120の当接面122又は突出部110の側面112に、突出部110が規制部120に衝突した際の衝撃を吸収するゴム部材等の衝撃吸収部材が設けられている。
【0036】
また、本実施形態の積層ゴム支承50は、中心部に鉛プラグが設けられて、エネルギー吸収機能を有する免震装置となっている。なお、別途オイルダンパー等のエネルギー吸収装置が、屋根30と構造体20とに接続されていてもよい。
【0037】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
本実施形態の屋根免震構造102では、地震時に屋根30が構造体20に対して水平方向に相対移動すると、突出部110が規制部120に当たることで、屋根30の相対移動量が規制される。したがって、想定を超える大きな地震時であっても屋根30の相対移動量が想定を超えることは無い。つまり、屋根30の相対移動量は、閾値を超えることは無い。よって、相対移動量が想定を超えた場合の積層ゴム支承50の破損等の不具合の発生が防止される。
【0039】
また、V字状に配置された斜材94の下端部の直下に突出部110を設けることで、突出部110が規制部120に当たった際の水平方向の衝撃力を、斜材92、94を介してトラス構造部60全体で受ける。よって、突出部110が規制部120に当たった際の衝撃力によるトラス構造部60の変形が抑制される。
【0040】
また、屋根30の鉛直荷重が作用する束材82、84の直下に積層ゴム支承50を設けることで、屋根30の荷重によるトラス構造部60の撓み等の変形が抑制される。
【0041】
また、規制部120における突出部110が当接する当接面122を平面視で円形状にすることで、屋根30が水平方向のどのような方向に相対移動しても、突出部110が規制部の当接面122に当たるまでの相対移動量を同じ又は略同じにできる。
【0042】
また、屋根30の外形は、平面視で矩形状とされ、突出部110は、屋根30の四つの角部の近傍に設けられている。よって、突出部110が規制部120に当たった際の屋根30のねじれ等が抑制される。
【0043】
また、屋根30の角部の近傍に突出部110を設けることで、観客席14を設けるスペースが狭くなることを抑制することができる。
【0044】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0045】
例えば、上記実施形態では、突出部110は、水平方向の断面の外形が矩形状であったが、これに限定されるものではなく、例えば、円形であってもよい。なお、突出部の外形を円形にすることで、突出部が規制部に当接したときに、突出部に生じる応力を低減することができる。
【0046】
また、例えば、上記実施形態では、規制部120は、平面視で円環状となっており、内壁面である当接面122は円形となっているが、これに限定されるものではない。例えば、規制部は、外形が矩形状で、当接面122は円形であってもよい。或いは、当接面が多角形状であってもよい。
【0047】
また、例えば、上記実施形態では、規制部120は、環状で閉じた構造であったが、これに限定されない。例えば、複数の規制部が突出部110の周りを囲むように環状に配置されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、積層ゴム支承50で屋根30を支持していたが、これに限定されない。他の免震支承(アイソレータ)であってもよい。例えば、すべり支承や転がり支承で屋根30を支持した構造であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、屋根30は、平面視で矩形状であったが、これに限定されるものではない。屋根30の外形は、三角形又は五角形以上の多角形状であってもよいし、円形であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明の屋根免震構造は、スタジアム10に適用したが、これに限定されるものではない。本発明の免震構造は、スタジアム以外の建物、例えば、展示場や体育館等にも適用可能である。
【0051】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0052】
10 スタジアム
20 構造体
30 屋根
50 積層ゴム支承(免震支承の一例)
60 トラス構造部
92 斜材
94 斜材
100 規制機構
102 屋根免震構造
110 突出部
120 規制部
122 当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6