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特許7573432無線中継装置、無線中継方法、および、無線中継装置用プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】無線中継装置、無線中継方法、および、無線中継装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/26 20090101AFI20241018BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20241018BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20241018BHJP
【FI】
H04W16/26
H04B7/08 802
H04W16/28
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020209575
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096459
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193389
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 智利
(72)【発明者】
【氏名】高橋 行隆
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07123911(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
H04B7/08
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と通信を行うドナーアンテナ、および、端末と通信を行うサービスアンテナを有する無線中継装置であって、
前記無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して前記無線中継装置を設定する中継装置設定部を有し、
設定はモード変更、ソフトウェアリセット、および、ハードウェアリセットの少なくとも1つを含むことを特徴とする、無線中継装置。
【請求項2】
前記中継装置設定部は、前記通信信号に含まれるビームIDの少なくとも一部を使用して前記無線中継装置を設定することを特徴とする、請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項3】
前記ビームIDのうち、少なくとも一部は前記無線中継装置を指定することを特徴とする、請求項2に記載の無線中継装置。
【請求項4】
前記ビームIDのうち、少なくとも一部は前記基地局のビーム方向を指定し、指定された前記基地局のビーム方向に基づいて前記基地局がビームステアリングを行うことを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載の無線中継装置。
【請求項5】
前記基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する、ビームステアリング周期設定部、
形成するビームに番号をビーム番号として付し、前記ビームステアリング周期でビームを切り替えステアリングする、基地局側ビーム形成部、
各ビーム番号で受信した信号を復調する復調部、
前記復調部で復調した結果に基づき、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する記憶部、
すべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する検出部、および、
ドナーアンテナを、検出部において検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定するビーム設定部、
を有することを特徴とする、請求項4に記載の無線中継装置。
【請求項6】
前記ビームステアリング周期設定部は、前記基地局ステアリング周期の整数倍の時間に前記ビームステアリング周期を設定することを有することを特徴とする、請求項5に記載の無線中継装置。
【請求項7】
前記ビームステアリング周期設定部は、前記基地局ステアリング周期を測定する基地局ステアリング周期測定部を有することを特徴とする、請求項5または6のいずれかに記載の無線中継装置。
【請求項8】
通信用以外に前記無線中継装置の設定用のための通信モジュールは別途設けず、前記通信信号の無線周波数以外は使用しないことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の無線中継装置。
【請求項9】
前記通信信号の無線周波数以外を使用する、別周波数通信モジュールをさらに有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の無線中継装置。
【請求項10】
前記通信信号のうち、無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分であって、ビームIDとは異なる部分を、無線中継装置の設定に使用し、無線中継装置の設定信号を含む信号は中継装置の設定信号を含まない信号と長さが同じであることを特徴とする、請求項2ないし9のいずれかに記載の無線中継装置。
【請求項11】
無線中継装置を用いて実施される、無線中継方法であって、
基地局と通信を行うドナーアンテナ、および、端末と通信を行うサービスアンテナを有する無線中継装置において、
前記無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して前記無線中継装置を設定する中継装置設定ステップを有し、
設定はモード変更、ソフトウェアリセット、および、ハードウェアリセットの少なくとも1つを含むことを特徴とする、
ことを特徴とする、無線中継方法。
【請求項12】
前記中継装置設定ステップにおいて、前記通信信号に含まれるビームIDの少なくとも一部を使用して前記無線中継装置を設定することを特徴とする、請求項11に記載の無線中継方法。
【請求項13】
前記中継装置設定ステップにおいて、前記通信信号のうち前記無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分を、前記無線中継装置の設定に使用し、無線中継装置の設定信号を含む信号は中継装置の設定信号を含まない信号と長さが同じであることを特徴とする、請求項11に記載の無線中継方法。
【請求項14】
前記基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する、周期設定ステップ、
前記周期設定ステップの後に行われ、予めビームに番号を、ビーム番号として付けておき、次いで、予め定められた順番でドナーアンテナのビームをステアリングするステアリングステップ、
前記ステアリングステップにおいて各ビーム番号で受信した信号を復調し、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する、復調記憶ステップ、
前記復調記憶ステップにおいて記憶したすべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する、検出ステップ、および、
前記ドナーアンテナを、前記検出ステップにおいて検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定する、ビーム設定ステップ、
を有することを特徴とする、請求項11ないし13のいずれかに記載の無線中継方法。
【請求項15】
請求項11ないし14に記載のステップを実施する無線中継装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置、無線中継方法、および、無線中継装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線中継装置は、設置に際し、基地局装置との方向調整が必要となる。無線中継装置は、基地局側にアンテナの指向性を向ける必要がある。4Gまでは基地局アンテナの水平面内指向性が広いため、ある程度、基地局側に中継装置を向けることで電波が受信できた。しかし、5Gでは、基地局側のアンテナビームが細いため、設置時の方向調整が難しく、無線中継装置の設置難度が上がる。

5G基地局(gNB)は細いビームを上下左右にスイングさせて、1つのビームで端末と通信を行う。例えば、図1において、端末Aは#6、端末Bは#2のビームIDを有する。
アンテナのビームを細くするメリットとしては、アンテナ利得を上げてEIRPを高くし伝搬損失を補完すること、余分な方向にビームを向けないことで所望の端末と効率的に通信を行うことである。

5G基地局はビームフォーミング技術を採用し水平面および垂直面でビームをステアリングしている。それぞれのビームは識別符号としてのビームIDを有している。通常、ビームIDは装置を開発する企業で独自に設定する。
以下では、説明を容易にするため、水平方向のみのステアリングで説明するが、垂直方向についても水平方向と同様である。

28GHz帯などの高い周波数になると、電波の直進性が強くなるため、ビル影などに電波が回り込みにくくなる。図2において、端末Cはビルなどの建物Zの陰のためビーム#4は端末Cに届かない。
電波の直進性による問題を解決する方法として、図3に示されるように、無線中継装置を利用する方法が考えらえる。無線中継装置はドナーユニットとサービスユニットから構成される。ドナーユニットとサービスユニット間は、有線(例えば同軸ケーブル)で接続される。もちろん、ドナーユニットとサービスユニットは一体型でもよい。ドナーユニットにおいて5G基地局の電波を受信し、サービスユニットから電波を放射する。例えばドナーユニットで電波#5を受信し、サービスユニットから送信することで、端末Cが電波#5を受信できるようにする、つまり、端末Cをサービスエリアに収容することができる。この際、無線中継装置は、電波#5の代わりに、電波#4を中継してもよい。

このように、サービスエリアを拡張する技術として、無線中継装置(ここでは非再生無線中継装置)がある。利点として、基地局装置と無線中継装置間に同軸ケーブルや光ファイバケーブルなどの通信媒体が不要なため、設置が容易である。
無線中継装置については、特許文献1に記載されているような分散アンテナ装置などが知られている。
特許文献1では、マルチビームを有する親機と無線を中継する子機について記載さているが、子機を制御する方法については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6691448号公報
【文献】特許出願2020-175695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、4Gまでの無線中継装置は、中継する周波数と別の周波数の通信モデムを搭載している。例えば、2GHz帯の無線中継装置は、800MHz帯のモデムで監視・制御するなどしている。
例えばON/OFFなど、無線中継装置の設定をする場合は、中継する無線周波数とは異なる周波数を使用した無線システムを使用している。この場合、遠隔操作卓から無線システム経由で無線中継装置の設定を行うが、設定には時間がかかる。また、中継装置が複数の場合、それぞれに指令を出す必要がある。
これは一般に、中継する周波数の信号(以下「通信信号」と呼ぶ)には規格が存在し、規格に合わせた通信を行う場合には通信信号の周波数はすべて通信信号で使用されるため、無線中継装置の設定などの信号を埋め込む余地がないためと考えられる。
このように、無線中継装置は、制御用として別の通信システムを併用する必要がある。例えば図4に示されるように、5Gのスタンドアローン(SA)で使用する場合も、例えば4Gなどの別の通信システムが必要になる。5G基地局と5G無線中継装置との間および5G無線中継装置と端末との間では、端末向けデータは28GHz帯でやり取りされるが、5G無線中継装置を制御するためには、例えば2GHz帯の4G基地局など、別のシステムを利用している。
この場合、制御用として使用する通信システムの通信エリアにしか、5G無線中継装置を設置できず、設置場所が制約されてしまう。
そこで、本技術は5Gで使用される通信線信号の中で含まれているが使用していない設定信号を使用して無線中継装置の制御を行うなど、通信信号の周波数を利用することで、5Gなど通信信号の周波数のみで無線中継装置を制御可能な無線中継装置、無線中継方法、および、無線中継装置用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る無線中継装置は、
基地局と通信を行うドナーアンテナ、および、端末と通信を行うサービスアンテナを有する無線中継装置であって、
前記無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して前記無線中継装置を設定する中継装置設定部を有することを特徴とする、無線中継装置である。

本発明の請求項2に係る無線中継装置は、
前記中継装置設定部は、前記通信信号に含まれるビームIDの少なくとも一部を使用して前記無線中継装置を設定することを特徴とする、請求項1に記載の無線中継装置である。

本発明の請求項3に係る無線中継装置は、
前記ビームIDのうち、少なくとも一部は前記無線中継装置を指定することを特徴とする、請求項2に記載の無線中継装置である。

本発明の請求項4に係る無線中継装置は、
前記ビームIDのうち、少なくとも一部は前記基地局のビーム方向を指定し、指定された前記基地局のビーム方向に基づいて前記基地局がビームステアリングを行うことを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載の無線中継装置である。

本発明の請求項5に係る無線中継装置は、
前記基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する、ビームステアリング周期設定部、
形成するビームに番号をビーム番号として付し、前記ビームステアリング周期でビームを切り替えステアリングする、基地局側ビーム形成部、
各ビーム番号で受信した信号を復調する復調部、
前記復調部で復調した結果に基づき、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する記憶部、
すべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する検出部、および、
ドナーアンテナを、検出部において検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定するビーム設定部、
を有することを特徴とする、請求項4に記載の無線中継装置である。

本発明の請求項6に係る無線中継装置は、
前記ビームステアリング周期設定部は、前記基地局ステアリング周期の整数倍の時間に前記ビームステアリング周期を設定することを有することを特徴とする、請求項4または5のいずれかに記載の無線中継装置である。

本発明の請求項7に係る無線中継装置は、
前記ビームステアリング周期設定部は、前記基地局ステアリング周期を測定する基地局ステアリング周期測定部を有することを特徴とする、請求項5または6のいずれかに記載の無線中継装置である。

本発明の請求項8に係る無線中継装置は、
通信用以外に前記無線中継装置の設定用のための通信モジュールは別途設けず、前記通信信号の無線周波数以外は使用しないことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の無線中継装置である。

本発明の請求項9に係る無線中継装置は、
前記通信信号の無線周波数以外を使用する、別周波数通信モジュールをさらに有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の無線中継装置である。

本発明の請求項10に係る無線中継装置は、
前記通信信号のうち、無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分であって、ビームIDとは異なる部分を、無線中継装置の設定に使用し、無線中継装置の設定信号を含む信号は中継装置の設定信号を含まない信号と長さが同じであることを特徴とする、請求項2ないし9のいずれかに記載の無線中継装置である。

本発明の請求項11に係る無線中継方法は、
無線中継装置を用いて実施される、無線中継方法であって、
基地局と通信を行うドナーアンテナ、および、端末と通信を行うサービスアンテナを有する無線中継装置において、
前記無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して前記無線中継装置を設定する中継装置設定ステップを有することを特徴とする、無線中継方法である。

本発明の請求項12に係る無線中継方法は、
前記中継装置設定ステップにおいて、前記通信信号に含まれるビームIDの少なくとも一部を使用して前記無線中継装置を設定することを特徴とする、請求項11に記載の無線中継方法である。

本発明の請求項13に係る無線中継方法は、
前記中継装置設定ステップにおいて、前記通信信号のうち前記無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分を、前記無線中継装置の設定に使用し、無線中継装置の設定信号を含む信号は中継装置の設定信号を含まない信号と長さが同じであることを特徴とする、請求項11に記載の無線中継方法である。

本発明の請求項14に係る無線中継方法は、
前記基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する、周期設定ステップ、
前記周期設定ステップの後に行われ、予めビームに番号を、ビーム番号として付けておき、次いで、予め定められた順番でドナーアンテナのビームをステアリングするステアリングステップ、
前記ステアリングステップにおいて各ビーム番号で受信した信号を復調し、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する、復調記憶ステップ、
前記復調記憶ステップにおいて記憶したすべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する、検出ステップ、および、
前記ドナーアンテナを、前記検出ステップにおいて検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定する、ビーム設定ステップ、
を有することを特徴とする、請求項11ないし13のいずれかに記載の無線中継方法である。

本発明の請求項15に係る無線中継装置用プログラムは、
請求項11ないし14に記載のステップを実施する無線中継装置用プログラムである。

以上の構成により、5G基地局装置(gNB)からの無線信号で無線中継装置の設定が可能となる。
また、制御用として使用する通信システムの通信エリアにしか、5G無線中継装置を設置できず、設置場所が制約されてしまうという従来の問題を解決できる。また、高周波を使用すると、信号の直進性が高まるため、信号がうまく送受信できない場合があるという信号の直進性の問題は、無線中継装置ではその役割から理解されるようにすでに解決されているため、問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】基地局と端末との通信例を示す。
図2】基地局と端末との通信例を示す。
図3】基地局と端末との通信例を示す。
図4】従来の無線中継装置の構成例を示す。
図5】無線中継装置の構成例を示す。
図6】無線中継装置で使用される通信信号の例を示す。
図7】無線中継装置の構成例を示す。
図8】無線中継装置の構成例を示す。
図9】本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
図10】本発明の一実施例における制御部の構成例を示す。
図11】本発明の一実施例におけるビームステアリング周期設定部の構成例を示す。
図12】本発明の一実施例における基地局側ビーム形成部の構成例を示す。
図13】本発明の一実施例における復調部の構成例を示す。
図14】本発明の一実施例における制御部の構成例を示す。
図15】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図16】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図17】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図18】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図19】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図20】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図21】本発明の一実施例における検出部の構成例を示す。
図22】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図23】本発明の一実施例における記憶部の構成例を示す。
図24】本発明の一実施例における無線中継方法の例を示す。
図25】本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
図26】本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
図27】本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
図28】本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図5は本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
無線中継装置100は、基地局2と通信を行うドナーアンテナ201、および、端末3と通信を行うサービスアンテナ301を有する。
無線中継装置100は中継装置設定部150を有する。中継装置設定部150は、無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して無線中継装置100を設定する。
【0008】
一実施例において、基地局2は5G基地局であり、無線中継装置100は5G無線中継装置である。
基地局2と無線中継装置100との間、および、無線中継装置100と端末3との間では、端末向けデータが28GHz帯でやり取りされると同時に、無線中継装置100を制御するための制御信号も、同じ28GHz帯で、端末向けデータ通信と同じシステムを利用して基地局2から無線中継装置100に送信されている。
【0009】
図6は、本発明の一実施例において無線中継装置で使用される通信信号の例を示す。縦軸は周波数、横軸は時間である。
通信信号は、SSバーストセット周期の中に、SS/PBCHブロック(SS/PBCH INDEX)を有する。図示されるように、SS/PBCHブロックには、時間順に、ビームID#0、ビームID#1、から、ビームID#N-1(Nは例えば64)が含まれている。
【0010】
本実施例では、5Gなどの基地局2からの無線信号に含まれるSS/PBCH INDEX、つまりビームIDなどを使用する。
SS/PBCH INDEXは、基地局2のビームと紐づけられている。基地局2がビームフォーミング技術を使用してビームをステアリングする場合、ビーム毎にユニークに割り当てられる。
【0011】
ただし、ビームIDは必ずしも割り当てられたすべてを使用する必要はなく、基地局毎に開発企業が決めることができる。また、基地局が固定ビームの場合は、通常、ビームIDを1つしか使用しない。
従って、このSS/PBCH INDEXを使用することで、基地局2から無線中継装置100を設定できる。
【0012】
なお、以下ではビームIDを例として説明するが、ビームIDの替わりに、信号の規格のうえでは基地局2のビーム以外と紐づけられている部分を用いることもでき、これを「無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分」と呼ぶ。
無線中継装置100の設定信号を含む信号は中継装置100の設定信号を含まない信号と長さが同じであるものとすることができる。あるいは、基地局2からの信号に、無線中継装置100を制御するための信号を埋め込むことができる。
本構成により、信号の規格内で無線中継装置の設定を行うことができ、新たな機器を追加する必要もなく、事前の設定も簡素化できる。
【0013】
図7は本発明の一実施例における無線中継装置の構成例を示す。
本実施例において、中継装置設定部150は、通信信号に含まれるビームIDの少なくとも一部を使用して無線中継装置100を設定する。
【0014】
本実施例は、基地局2からの無線信号に含まれるSS/PBCH INDEX、つまりビームIDを使用するものであり、基地局2がビーム固定の場合、つまり基地局2からのビームはステアリングしない場合である。
基地局2がビーム固定の場合、例えば、ビームIDは0とすると、残りのビームIDは使用されない。以下は8個の場合で説明する。
【0015】
ビームID=0は既に基地局2のビームで使用されていると、残りはビームID=1~7の7個である。
あらかじめ無線中継装置100にビームIDの意味、つまり、指令内容を決めておくことで、基地局2からの無線信号で無線中継装置100の設定ができる。遠隔操作卓では基地局2のみに指令を出すだけでよく、無線中継装置個別に指令を出す必要がない。
【0016】
本実施例では無線中継装置100は復調部を有し、常に基地局2からのビームIDを検出、判定、それに従って動作する。
ビームID=1をサービスユニットの送信停止と決めておけば、基地局2の支配下の無線中継装置100を同時に送信停止することができる。同様にビームID=2をサービスユニットの送信ONと決めておけば基地局2の支配下の無線中継装置100を同時に送信ONとすることができる。これは、例えば、夜間は動作しない工場やモール、競技場など、特定の時間のみ基地局を動作させる環境で有効である。
【0017】
また、使用しない無線中継装置100や配下に端末がない無線中継装置100をOFFすることによって、基地局2から送信され端末3で受信されるダウンリンクでの干渉調整や、端末3から送信され基地局2で受信されるアップリンクでのサービスエリアの縮退を防ぐことができる。
設定項目としてはスタンバイモードなどのモード変更、ソフトウェアリセット、ハードウェアリセット、指向性変更、ビームステアリングなども含まれ得る。
【0018】
本発明の一実施例では、ビームIDのうち、少なくとも一部は無線中継装置100を指定する。これにより、特定の無線中継装置100をOFFとして、通信電波同士の干渉を抑制することなどが可能となる。
本実施例では、基地局2からの無線信号に含まれるSS/PBCH INDEX、つまりビームIDを使用し、基地局2はビーム固定であり、かつそれぞれの無線中継装置100にIDが割り当てられている。
基地局2がビーム固定(ビームID=0)で、ビームIDが64個とする。
【0019】
例えば、残りの63個のうち、1~9を無線中継装置100の識別IDに、10~63を設定に使用する。
基地局2の支配下に配置される無線中継装置1001,1002,1003にはユニークな識別IDを設定する。
【0020】
また、識別IDとビームIDの関係を設定しておく。ここでは,無線中継装置1001=ビームID1、無線中継装置1002=ビームID2、のように、識別IDとビームIDが同じ値とする。
本構成により、遠隔制御卓から基地局2経由で、特定の無線中継装置を設定することができる。ビームID=10が無線中継装置のサービスユニットの送信OFFとすると、無線中継装置1001のサービスユニットの送信をOFFしたい場合、基地局2からの無線信号内に含まれるビームIDを0,1,10と設定すればよい。
【0021】
図8は本発明の一実施例における無線中継装置の構成を示す。
本実施例では、ビームIDのうち、少なくとも一部は基地局2のビーム方向を指定し、指定された基地局2のビーム方向に基づいて基地局2がビームステアリングを行う。
基地局2からの無線信号に含まれるSS/PBCH INDEX、つまりビームIDを使用し、基地局2がビームステアリングを行い、さらに無線中継装置1001,1002,1003にIDを割り当てる。
【0022】
基地局2のビームに割り当てられるビームIDが0~31とする。さらにビームID全体は64個とする。
例えば、残りのビームID32~63までの32個のうち、32~41を無線中継装置100の識別IDに、42~64を設定に使用することができる。
【0023】
図9は本発明の一実施例における無線中継装置100の構成例を示す。
本実施例では、無線中継装置内で、5G基地局などの基地局からのRF信号を復調し、ビームに関する情報を取得し、所望の方向へドナーアンテナのビームを向ける。
【0024】
無線中継装置は、5G基地局側にドナーユニットのアンテナを向ける必要があり、設置時の制約になる。5G基地局はビームが細いので、調整が難しい。
また、木や自動車、建物などの障害物など、電波環境の変化の問題がある。例えば5G基地局とドナーユニット間に、これらの障害物などにより電波環境が変化すると、無線中継装置を設置しなおさなければならない。
【0025】
そこで、以下の実施例では、基地局のビームを識別し、無線中継装置のビームを最適な方向へ向けることにより、設置を容易とし、設置性能を向上させた無線中継装置を提供することを目的とする。
また、以下の実施例では、一度の設置により、電波環境の変化にも柔軟に対応できる無線中継装置を提供することを目的とする。
また、以下の実施例では、容量を維持することではなくサービスエリア拡張を目的とし、設置性を向上させつつMIMOのレイヤが増えてもビームを1つのままとできる無線中継装置を提供することを目的とする。
【0026】
本実施例は、無線中継装置のアンテナ指向性を制御し、自動で基地局側へ指向性を向けるものであり、無線中継装置の設置性の向上が期待できる。
以下、具体的に説明する。
【0027】
無線中継装置100は、基地局と通信を行うドナーアンテナ201、および、端末と通信を行うサービスアンテナ301を有する。無線中継装置100はさらに、ビームステアリング周期設定部111、基地局側ビーム形成部210、復調部120、記憶部115、検出部113、および、ビーム設定部114を有する。
ビームステアリング周期設定部111は、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置100のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する。
【0028】
基地局は通常、最大で64のビームを切り替えるが、その周期は5ms、10ms、20ms、40ms、80ms、160msから選択される。よって、基地局の周期が不明である場合には、予めビームステアリング周期を160ms以上に設定しておく。ビームステアリング周期が、基地局ビームステアリング周期以上であれば、ビームステアリング周期中に確実に基地局ステアリング周期が収まることとなり、後述のビームIDごとの受信電力の測定が確実に行える。
機器のタイミングのずれなどを考慮する場合には、ビームステアリング周期を基地局ステアリング周期の2倍以上に設定すると、後述のビームIDごとの受信電力の測定がより確実に行える。
【0029】
基地局側ビーム形成部210は、形成するビームに番号をビーム番号として付し、ビームステアリング周期でビームを切り替えステアリングする。
なお、ビームに付す番号や、ビーム番号などは、後述のようにビームごとの受信電力を記憶するためのものであり、実際の数字に限られず、ビームごとの受信電力を記憶できるものであれば、例えば測定した時間や他の手法によるものも含む。
【0030】
復調部120は、各ビーム番号で受信した信号を復調する。
記憶部115は、復調部120で復調した結果に基づき、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する。
検出部113は、すべてのビーム番号の中で受信電力が最大になるビームIDを検出する。
【0031】
ビーム設定部114は、ドナーアンテナ201を、検出部113において検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定する。
本実施例では、図10に示されるように、中継装置設定部150、基地局ステアリング周期測定部112、記憶部115、検出部113、および、ビーム設定部114は、制御部110内に一体に設けられている。
制御部110は、基地局側ビーム形成部210、基地局側送受信切替部220、基地局側周波数演算部、および、端末側の利得制御部350、端末側周波数変換部240、増幅部330、対端末送受信切替部220に接続されている。
【0032】
本発明の一実施例において、ビームステアリング周期設定部111は、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、基地局ステアリング周期の整数倍の時間にビームステアリング周期を設定する。これにより、ビームステアリング周期の中で基地局ステアリング周期がちょうど整数回行われることになり、ビームIDごとの受信電力を効率よく測定することができる。なお、整数が2以上であれば、ビームIDごとの受信電力の測定をより精度よく行うことができる。
機器のタイミングのずれなどを考慮する場合には、ビームステアリング周期を基地局ステアリング周期の3倍以上に設定すると、仮に基地局ステアリング周期のうち最初と最後の周期でずれによりすべての測定ができなかった場合にも、真ん中の基地局ステアリング周期が確実に含まれることになるため、ビームIDごとの受信電力の測定がより確実に行える。
【0033】
本発明の一実施例において、図11に示されるように、ビームステアリング周期設定部111は、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期を測定する基地局ステアリング周期測定部112を有する。これにより、予め基地局ステアリング周期が不明な場合にも、測定により基地局ステアリング周期を把握し、ビームステアリング周期を基地局ステアリング周期の整数倍に設定することが容易となる。
【0034】
図12は基地局側ビーム形成部210の構成例を示す。対基地局ビーム形成部210内では、対基地局アンテナ(ドナーアンテナ)#1には、送受信切替部2101a、受信増幅器2101a1、振幅調整器2101a2、位相調整器2101a3、送受信切替部2101bが順に接続され、送受信切替部2101b、位相調整器2101b1、振幅調整器2101b2、送信増幅器2101b3、送受信切替部2101aが順に接続されている。
対基地局アンテナ#2から#Nについても同様である。そして、送受信切替部1bからNbは、分配合成器210cに接続されている。
【0035】
基地局側ビーム形成部210は、基地局へのアンテナビームを形成するものであり、増幅器、位相調整器、振幅調整器、送受信切替器を有する。ビーム形成部は対端末側にも、端末側ビーム形成部310として設置できる。
送受信切替部220は、送信と受信で経路を切り替える。切り替えは制御部110からの信号に基づく。
【0036】
例えば28GHzなどの準ミリ波帯では増幅器の価格や損失が大きくなり、設計難易度や製造時の歩留まりが悪くなるため、数GHzなど扱いやすい周波数に変換し、また、その逆の処理を行う基地局側周波数変換部240を有する。
図12のビーム形成部は時分割複信方式(TDD)の構成であるが、周波数分割複信方式(FDD)でもよい。
【0037】
図13は復調部120の構成例を示す。復調部120内では、復調部内利得制御部1201、復調部内周波数変換部1202、アナログデジタル変換部(AD変換部)1203、デジタル信号処理器1204が順に接続され、デジタル信号処理器1204が、制御部110内のMCU1101と接続されている。
復調部120はRF信号をデジタル信号に変換し、信号の復調を行い、ビーム情報を取得する。
復調部に入力されるRF信号の周波数がAD変換部で直接取り込むことができる場合は、周波数変換部を省略することもできる。
【0038】
制御部110は、図14に示されるように、MCU1101などの演算装置と、演算装置に接続された記憶装置1102を有する構成とすることができる。
制御部110は、復調部120からの結果によりビーム形成部を制御する。なお、制御部110は復調部120内に設置してもよい。
【0039】
本実施例では、無線中継装置を用いて実施される、無線中継方法を示す。
無線中継方法は、基地局と通信を行うドナーアンテナ、および、端末と通信を行うサービスアンテナを有する無線中継装置において、無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して無線中継装置を設定する中継装置設定ステップを有する。
【0040】
本実施例では、中継装置設定ステップにおいて、通信信号に含まれるビームIDの少なくとも一部を使用して前記無線中継装置を設定する。
ビームID=1が電源OFF、ビームID=2が中継開始、ビームID=3が待機であるとする。ただし、電源OFFの状態では、装置全体がOFFするのでなく、アンテナから復調部までの受信経路はONしている。以下も同様である。
【0041】
図15に示されるように、無線中継装置100の電源がONになると(ステップS001)、無線中継装置100は待機ステップS002に移る。
無線中継装置100が基地局2から通信信号を受信すると、ステップS003に移る。
ステップS003で電源OFFが指示された場合、つまり、受信した通信信号においてビームID=1であった場合には、無線中継装置100は電源をOFFとして終了する。電源OFFが指示されなかった場合、ステップS004に移る。
ステップS004で中継開始が指示された場合、つまり、受信した通信信号においてビームID=2であった場合には、通信ステップS100に移る。中継開始が指示されなかった場合には、待機ステップS002に移る。
【0042】
通信ステップS100では、基地局2や端末3などと信号のやり取りを行い、基地局2と端末3を中継するなど通信を行う。
通信を行った後、基地局2から通信信号を受信すると、ステップS006に移る。
ステップS006で電源OFFが指示された場合、つまり、受信した通信信号においてビームID=1であった場合には、無線中継装置100は電源をOFFとして終了する。電源OFFが指示されなかった場合、ステップS007に移る。
【0043】
ステップS007で待機が指示された場合、、つまり、受信した通信信号においてビームID=3であった場合には、待機ステップS002に移る。待機が指示されなかった場合には通信ステップS100に移る。
以上のステップのうち、電源のOFF、中継の開始、待機の指示を行う、S003、S004、S006、S007が、中継装置設定ステップに該当する。
【0044】
ステップS003とステップS004は同時に行うこともできる。つまり、、信号を受信したとき、ビームID=1であった場合には電源をOFFにし、ビームID=2であった場合には通信ステップS100に進み中継を行うこともできる。さらに、ビームID=3であった場合、あるいは、ビームIDに1も2も含まれない場合には待機ステップS002に戻る構成としてもよい。
同様に通信ステップS100の後、ステップS006とステップS007を同時に行うこともできる。
【0045】
説明するまでもなく、中継装置設定ステップは、以上の例に限られない。中継の開始と待機の指示のみを行う、所定時間の待機を指示するなど、様々な指示内容が含まれ得る。
一実施例として、中継装置設定ステップにおいて、通信信号のうち無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分を、無線中継装置の設定に使用する。無線中継装置の設定信号を含む信号は中継装置の設定信号を含まない信号と長さが同じである。
【0046】
図16は本発明の一実施例における無線中継方法を示す。
本実施例では、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する、周期設定ステップ、
【0047】
周期設定ステップの後に行われ、予めビームに番号を、ビーム番号として付けておき、次いで、予め定められた順番でドナーアンテナのビームをステアリングするステアリングステップ、
ステアリングステップにおいて各ビーム番号で受信した信号を復調し、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する、復調記憶ステップ、
復調記憶ステップにおいて記憶したすべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する、検出ステップ、および、
ドナーアンテナを、検出ステップにおいて検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定する、ビーム設定ステップ、を有する。
【0048】
本実施例においては、ステップS004の後に、ステップS005において、ビーム調整を開始するか確認し、開始する場合にはビーム調整ステップS200に移し、開始しない場合には、通信ステップS100に移る点において、先の実施例と異なる。
例えば、ビームID=1が電源OFF、ビームID=2が中継開始、ビームID=3が待機、ビームID=4がビーム調整開始であるとすることができるが、これに限られない。
【0049】
図17は本発明の一実施例における無線中継方法において実施される、ビーム調整ステップS200を示す。無線中継方法は、上述の無線中継装置100でも実施することができる。
無線中継方法はビーム調整ステップS200を含み、ビーム調整ステップS200は、周期設定ステップ、ステアリングステップ、復調記憶ステップ、検出ステップ、および、ビーム設定ステップを有する。
【0050】
まず、周期設定ステップS220では、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置100のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する。
ここで、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、中継装置のビームのステアリングの周期を、基地局ステアリング周期の整数倍に設定するものとしてもよい。例えば、基地局は通常、最大で64のビームを切り替えるが、その周期は5ms、10ms、20ms、40ms、80ms、160msから選択される。
これにより、ドナーアンテナ201は基地局ステアリング周期の整数倍の時間でビームを切り替えることとなり、ドナーアンテナ201のビームのステアリングは、基地局のビームのステアリングより遅いものとなる。これにより、受信電力の測定を効率よく行うことができる。
【0051】
図18に示されるように、ビーム周期設定ステップの前に行われ、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期を測定する、基地局周期測定ステップS210を実施してもよい。基地局周期測定ステップS210では、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期を測定し、無線中継装置100のビームのステアリングの周期を基地局ステアリング周期の整数倍に設定する。
次に、予め定められた順番でドナーアンテナ201のビームをステアリングする。この際、予めビームに番号を、ビーム番号として付けておく。また、ビームを形成する位相情報や振幅情報はテーブルとして保持しておく。または、位相、振幅の計算式を保持しておき、計算で求めても良い。
つまり、ステアリングステップでは、予めビームに番号を、ビーム番号として付けておき、次いで、予め定められた順番でドナーアンテナ201のビームをステアリングする。
【0052】
本発明の一実施例において、無線中継装置100は、ドナーアンテナ201のステアリングの範囲を、ステアリングの前に予め限定しておく、ステアリング範囲限定部1130を有する。
本構成によれば、無線中継装置100の設置時におおよその範囲で基地局側と合わせておくことができるため、ドナーアンテナ201のステアリングの範囲は予め限定しておくと、ドナーアンテナ201が必要以上の範囲をステアリングすることがなく、効率よくドナーアンテナ201のビームをステアリングできる。
本発明の一実施例において、ドナーアンテナ201のステアリングにおいては、まず第一方向ステアリングステップS232として、図19に示されるように一方向において細く他の方向において幅広のビームでステアリングを行って受信電力が最大となるビームを選択した後に、第二方向ステアリングステップS233として、図20に示されるように他の方向内において細いビームでステアリングを行う。
【0053】
図21に示されるように、検出部113は、第一方向検出部1131、および、第二方向検出部1132を有する。そして、図22に示されるように、第一方向検出部113は、第一方向において細く第一方向と異なる第二方向において広い幅広のビームでステアリングを行って受信電力が最大となるビームを選択する。第二方向検出部113は、第一方向検出部113で受信電力が最大となるビームを選択した後、第二方向内において細いビームでステアリングを行う。図19に示されるようにステアリング範囲限定部1130を有してもよい。
この構成により、細いビームで上下左右をステアリングするよりも検索時間が短縮できる。
【0054】
例えば、ドナー側のアンテナのビームを水平面に幅広にして、垂直面にステアリング、受信電力が最大になるビームを選択し、次いで、そのビームを水平面内において細くし水平面内においてステアリングする構成としてもよい。
復調記憶ステップでは、ステアリングステップS230において各ビーム番号で受信した信号を復調し、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する。受信電力は例えばRS2RPである。ビームIDとしては、例えば5G NRの場合、SS/PBCH INDEXの値を使用する。
無線中継装置100のビーム番号、基地局のビームIDが、例えば、テーブルの第1行では、ビーム番号1、ビームID7、-80dBm、テーブルの第2行では、ビーム番号2、ビームID20、-70dBm、テーブルの第n行では、ビーム番号n、ビームID1、-75dBm、などとなる。
【0055】
本発明の一実施例において、記憶部115は、ビームIDに加えて、基地局毎にユニークに割り当てられる基地局IDも記憶する構成である。基地局IDを用いることで基地局が複数ある場合でも、ビームの選択が可能となる。
例えば、ある基地局AのビームID毎の受信電力と、ある基地局Aとは異なる基地局BのビームID毎の受信電力を記憶し、基地局Aの受信電力と基地局Bの受信電力の差が最大になるビーム番号を選択することで、干渉を最小限に抑えることができる。
【0056】
本発明の一実施例において、図23に示されるように、記憶部115は、主記憶部1151に加えて、受信電力が最大になるビームIDについて、あるいは、ビームID毎に、受信電力が大きい順に複数のビーム番号を記憶する、副記憶部1152を有する。
本構成によれば、通信環境の変化などにより、受信電力が最大であったビーム番号での受信レベルが、受信電力が次に大きかったビーム番号での受信レベルより小さくなった場合などでも、自動あるいは上位装置からの指示などによりビームを切り替えることで、あるビーム番号で通信ができなくなっても、別のビーム番号で通信が可能となるなど、通信環境の変化などにも対応できる。
【0057】
検出ステップS260では、復調記憶ステップS240において記憶したすべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する。
ここで、図24に示されるように、端末に向けるアンテナビームに複数のビームIDをできるだけ含まないようにするため、閾値を設け、1つのビームIDが他のビームIDより閾値以上大きくなることを判定条件とし、判定条件を満たさない場合には、第一段階に戻って再度予め定められた順番でドナーアンテナ201のビームをステアリングする判定ステップS250を設けてもよい。例えば、検出部113は、1つのビームIDの受信電力が他のビームIDの受信電力より閾値以上大きい場合に、受信電力が最大となるビームIDを設定し、1つのビームIDの受信電力が他のビームIDの受信電力より閾値以上大きくない場合に、基地局側ビーム形成部210において基地局ステアリング周期の整数倍の時間でビームを切り替えステアリングする構成としてもよい。
【0058】
ビーム設定ステップS270では、ドナーアンテナ201を、検出ステップにおいて検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定する。
本発明の一実施例において、ドナーアンテナ201のビームとしては、メインビーム側のビームIDの受信レベルが大きくないように、通常の使用時より予めサイドローブレベルを下げたビームを使用する構成である。例えば、基地局側ビーム形成部は、通常の通信時より予めサイドローブレベルを下げたビームを形成して基地局に対してビームをステアリングする。
【0059】
本発明の一実施例において、ドナーアンテナ201のビームは基地局ビームよりも細いビームを用いる構成である。つまり、基地局側ビーム形成部は基地局の発する基地局ビームより細いビームを形成する。
この構成により、無線中継装置100で受信するビームIDが複数となることを防ぐことができる。
【0060】
本発明の一実施例において、無線中継装置100は、アナログ・デジタル変換部、デジタル・アナログ変換部のいずれも介さずにドナーアンテナ201とサービスアンテナ301の間に接続された非再生中継用増幅部330を有し、非再生中継を行う構成である。
この構成ではアナログICのみを使用し遅延を少なくすることが可能となる。
【0061】
図25は本発明の一実施例における無線中継装置100の構成例を示す。本実施例における無線中継装置100は、端末側にも設置後にビーム形成可能なものである。具体的には、端末側にもビーム形成部として端末側ビーム形成部310を設け、複数の対端末アンテナを有する。つまり、複数のサービスアンテナ301、および、サービスアンテナ(対端末アンテナ)301ごとに設けられた端末側ビーム形成部310を有する。
本構成により、端末側にも最適なビームを形成することができる。
【0062】
図26は本発明の一実施例における無線中継装置100の構成例を示す。本実施例において、無線中継装置100は、RFなどの信号ラインには周波数変換部240を有しない。
「信号ライン上に周波数変換部を有しない」とは、周波数変換部240を介さず信号をドナーアンテナ201からサービスアンテナ301まで伝送されることを意味し、本実施例では、ドナーアンテナ201、基地局側ビーム形成部210、基地局側送受信切替部220、RF信号分配部、利得制御部110、増幅部330、端末側送受信切替部320、サービスアンテナ301が順次接続されたラインを有する。つまり、RFなどの信号ラインにおいて周波数変換を行わないものであり、RFなどの信号ラインにおいて遅延をさらに小さくできる。
【0063】
図27は本発明の一実施例における無線中継装置100の構成例を示す。本実施例において、無線中継装置100は、ドナーユニット側筐体290、および、サービスユニット側筐体390を備え、ドナーユニット側筐体290は、ドナーアンテナ201、および、ドナーユニット側接続部291、サービスユニット側筐体390は、サービスアンテナ301、および、ドナーユニット側接続部291と接続可能なサービスユニット側接続部391を有する。
ドナーアンテナ201とサービスアンテナ301を別の筐体とすることにより、設置性を向上させたものである。ドナーユニット200とサービスユニット300間を同軸ケーブルあるいは光ファイバケーブルと制御ケーブルで接続する。制御ケーブルを設ける代わりに、同軸ケーブルあるいは光ファイバケーブルのみとし、同軸ケーブルあるいは光ファイバに制御信号を重畳する構成でもよい。また、同軸ケーブルの場合は、制御信号に加えてサービスアンテナ301への直流電圧を重畳する構成でもよい。
【0064】
以上の実施例では、通信用以外に無線中継装置100の設定のための通信モジュールは別途設けず、通信信号の無線周波数以外は使用していない。
図28は本発明の一実施例における無線中継装置100の構成例を示す。 本実施例では、通信信号の無線周波数以外を使用する、別周波数通信モジュールをさらに有する。
無線中継装置100は、別周波数通信モジュールとして、無線中継装置100を伝送する無線周波数とは異なる、セルラー周波数あるいはWiFiあるいはBluetoothなどの無線周波数を使用する通信部140を有し、通信部140を経由して上位装置など無線中継装置100の外部にある外部装置と通信する。
【0065】
本構成により、例えば中継装置の異常の監視のために用いることができる。また、基地局のビームのステアリング周期が変更された場合にも、外部から通信により無線中継装置100に指令を送り、基地局のビームのステアリング周期の整数倍でビームを切り替えることも可能となる。
このため、無線中継装置の設定では通信信号と同じ高周波数を用いながら、異常の監視などにおいては、従来の通信機器など、低コストの装置を用いながら、無線中継装置からの基地局側への通信を実施することができる。
【0066】
本発明の一実施例として、上述のステップを実施するための、無線中継装置用プログラムを説明する。基本的な構成は上述の無線中継方法と例と同様であるため、上述の例と重複する部分については一部説明を省略する。
本実施例においても、図15を再度参照する。
無線中継装置用プログラムは、無線中継装置を用いて実施される。
【0067】
無線中期装置は、基地局と通信を行うドナーアンテナ、および、端末と通信を行うサービスアンテナを有する。
無線中継装置用プログラムは、無線中継装置において、基地局や端末と通信を行う通信ステップS100を有する。
また、無線中継装置内で伝送される無線周波数の通信信号を使用して無線中継装置を設定する中継装置設定ステップとして、電源のOFF、中継の開始、待機の指示を行う、S003、S004、S006、S007の各ステップを有する。
【0068】
すでに述べたのように、ステップS003とステップS004は同時に行うこともできる。つまり、、信号を受信したとき、ビームID=1であった場合には電源をOFFにし、ビームID=2であった場合には通信ステップS100に進み中継を行うこともできる。さらに、ビームID=3であった場合、あるいは、ビームIDに1も2も含まれない場合には待機ステップS002に戻る構成としてもよい。
同様に通信ステップS100の後、ステップS006とステップS007を同時に行うこともできる。
【0069】
説明するまでもなく、中継装置設定ステップは、以上の例に限られない。中継の開始と待機の指示のみを行う、所定時間の待機を指示するなど、様々な指示内容が含まれ得る。
一実施例として、中継装置設定ステップにおいて、通信信号のうち無線中継装置の設定以外の用途に規定されている部分を、無線中継装置の設定に使用する。無線中継装置の設定信号を含む信号は中継装置の設定信号を含まない信号と長さが同じである。
【0070】
図16に示されるように、本発明の一実施例における無線中継装置用プログラムは、周期設定ステップ、ステアリングステップ、検出ステップ、および、ビーム設定ステップを有する。
周期設定ステップでは、基地局のビームのステアリングの周期である基地局ステアリング周期に対して、無線中継装置のビームを切り替えステアリングするビームステアリング周期を基地局ステアリング周期以上の長さに設定する。
ステアリングステップでは、周期設定ステップの後に行われ、予めビームに番号を、ビーム番号として付けておき、次いで、予め定められた順番でドナーアンテナのビームをステアリングする。
【0071】
復調記憶ステップでは、ステアリングステップにおいて各ビーム番号で受信した信号を復調し、基地局のビームIDごとの受信電力を記憶する。
検出ステップでは、復調記憶ステップにおいて記憶したすべてのビームIDの中で受信電力が最大になるビームIDを検出する。
ビーム設定ステップでは、ドナーアンテナを、検出ステップにおいて検出したビームIDに対応したビーム番号のビームに設定する。
【0072】
本発明は以上の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な実施例を含むことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
100,1001,1002,1003 無線中継装置
110 制御部
111 ビームステアリング周期設定部
112 基地局ステアリング周期測定部
113 検出部
1130 ステアリング範囲限定部
1131 第一方向検出部
1132 第二方向検出部
114 ビーム設定部
115 記憶部
1151 主記憶部
1152 副記憶部
120 復調部
1201 利得制御部
1202 復調部内周波数変換部
1203 アナログデジタル変換部
1204 デジタル信号処理器
130 RF信号分配部
140 通信部
150 中継装置設定部

2 基地局
200 ドナーユニット
201 ドナーアンテナ
210 基地局側ビーム形成部
2101a,2102a,…,210na 送受信切替部
2101a1,2102a1,…,210na1 受信増幅器
2101a2,2102a2,…,210na2 振幅調整器
2101a3,2102a3,…,210na3 位相調整器
2101b,2102b,…,210nb 送受信切替部
2101b1,2102b1,…,210nb1 位相調整器
2101b2,2102b2,…,210nb2 振幅調整器
2101b3,2102b3,…,210nb3 送信増幅器
210c 分配合成器
220 基地局側送受信切替部
240 基地局側周波数変換部
260 基地局側合成分配部
290 ドナーユニット筐体
291 ドナーユニット筐体側接続部

3 端末
300 サービスユニット
301 サービスアンテナ
310 端末側ビーム形成部
320 端末側送受信切替部
330 増幅部
340 端末側周波数変換部
350 利得制御部
360 端末側合成分配部
390 サービスユニット筐体
391 サービスユニット筐体側接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28