(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】コップ状容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/28 20060101AFI20241018BHJP
B65D 3/22 20060101ALI20241018BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241018BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B65D3/28 A
B65D3/22 B
B65D65/40 D
B32B15/08 F
(21)【出願番号】P 2020212244
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019233927
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-256643(JP,A)
【文献】特開昭54-040774(JP,A)
【文献】特開昭60-046233(JP,A)
【文献】実開昭52-008579(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/28
B65D 3/22
B65D 65/40
B32B 1/00
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部がこれらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの2つの熱融着性樹脂層のうち少なくとも一方の熱融着性樹脂層が2以上の層よりなるとともに、前記2以上の層のうち金属箔層に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂
の融点が、他の層を構成している熱融着性樹脂
の融点よりも10℃以上低いものであり
かつ110~
140℃であり、
胴体のオーバーラップ部において、胴体の内側に位置する胴体用ブランクの内側端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしを熱融着する際に前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されている、コップ状容器。
【請求項2】
さらに、胴体のオーバーラップ部において、胴体の外側に位置する胴体用ブランクの外側端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしを熱融着する際に前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されている、請求項1のコップ状容器。
【請求項3】
胴体用ブランクの両端縁部どうしを合掌状に重ね合わせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部がこれらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの熱融着性樹脂層が2以上の層よりなるとともに、前記2以上の層のうち金属箔層に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂
の融点が、他の層を構成している熱融着性樹脂
の融点よりも10℃以上低いものであり
かつ110~140℃であり、
胴体の合掌部において、胴体の外側に位置する胴体用ブランクの両端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしを熱融着する際に前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されている、コップ状容器。
【請求項4】
胴体の合掌部が、胴体の外面と重なるように一方の側に折り曲げられて同外面に熱融着されている、請求項3のコップ状容器。
【請求項5】
前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が、前記他の層を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)よりも1~5g/10分以上大きいものである、請求項1~
4のいずれか1つのコップ状容器。
【請求項6】
前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が4~10g/10分である、請求項
5のコップ状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばアイスクリームやヨーグルトのような食品や飲料等を内容物とするコップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアイスクリームやヨーグルト等の半固形状乳製品を充填包装するための容器として、紙製のコップ状容器、すなわち紙コップが一般に用いられている。
紙コップは、通常、それぞれ所定形状にカットされた紙製ブランクよりなる胴体と底体とを接合一体化することにより形成されている。より詳細には、胴体は、略扇形の胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形するとともに、下端開口縁部に内方に折り返された折り返し部を形成し、上端開口縁部に外方にカールされたフランジ部を形成してなる。底体は、略円形の底体用ブランクをその外周部に垂下部が形成されるようにスカート成形してなる断面略逆U形のものである。そして、底体の垂下部が胴体の折り返し部に包み込まれて接合されることにより、胴体および底体が一体化されている。
胴体用および底体用の各ブランクは、例えば、一般原紙、耐酸紙、コート紙等よりなる紙層と、紙層の片面または両面に積層されたポリエチレン(PE)層とを有する積層体よりなる(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
また、上記各ブランクの材料として、紙層およびポリエチレン(PE)層に加えてアルミニウム箔等よりなるバリア層を積層してなる積層体を使用した紙コップも知られている(例えば下記の特許文献2参照)。
【0004】
その他、アイスクリーム、ヨーグルト等の容器として、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック成形体よりなるものも知られている(例えば下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-30955号公報
【文献】特開2007-210639号公報
【文献】特開2007-176505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙コップは、生産性に優れ、安価に製造することが可能である反面、バリア性が低く、内容物の長期保存には適していなかった。
アルミニウム箔等のバリア層が付加された紙コップの場合、内容物の長期保存性は向上するが、紙層の端面から水が侵入しやすく、レトルト殺菌を行うことができなかった。
また、プラスチック製の容器の場合、製造設備のコストが高くつく上、内容物の長期保存には適していなかった。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明者は、胴体用ブランクおよび底体用ブランクそれぞれの材料として、金属箔層とその両面のうち少なくとも一方の面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体を使用したコップ状容器を先に提案した(特願2019-106125号)。
上記のコップ状容器によれば、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌を行うこともできる。
【0008】
ここで、上記のコップ状容器の場合、胴体のオーバーラップ部において、容器の内側に位置する胴体用ブランクの内側端面が内容物に晒されることになるため、内容物の種類等によっては、同内側端面にデラミネーション(層間剥離)や腐食による劣化が生じるおそれがあり、また、衛生上必ずしも好ましいとは言えない場合がある。
この発明の目的は、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌も可能なコップ状容器として、内容物との接触による劣化等を抑制しうるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0010】
1)胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部がこれらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの2つの熱融着性樹脂層のうち少なくとも一方の熱融着性樹脂層が2以上の層よりなるとともに、前記2以上の層のうち金属箔層に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が、他の層を構成している熱融着性樹脂と比べて融点が低いものであり、
胴体のオーバーラップ部において、胴体の内側に位置する胴体用ブランクの内側端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしを熱融着する際に前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されている、コップ状容器。
【0011】
2)さらに、胴体のオーバーラップ部において、胴体の外側に位置する胴体用ブランクの外側端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしを熱融着する際に前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されている、上記1)のコップ状容器。
【0012】
3)胴体用ブランクの両端縁部どうしを合掌状に重ね合わせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部がこれらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの熱融着性樹脂層が2以上の層よりなるとともに、前記2以上の層のうち金属箔層に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が、他の層を構成している熱融着性樹脂と比べて融点が低いものであり、
胴体の合掌部において、胴体の外側に位置する胴体用ブランクの両端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、胴体用ブランクの両端縁部の熱融着性樹脂層どうしを熱融着する際に前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されている、コップ状容器。
【0013】
4)胴体の合掌部が、胴体の外面と重なるように一方の側に折り曲げられて同外面に熱融着されている、上記3)のコップ状容器。
【0014】
5)前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂の融点が、前記他の層を構成している熱融着性樹脂の融点よりも10℃以上低いものである、上記1)~4)のいずれか1つのコップ状容器。
【0015】
6)前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂の融点が110~140℃である、上記5)のコップ状容器。
【0016】
7)前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が、前記他の層を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)よりも1~5g/10分以上大きいものである、上記1)~6)のいずれか1つのコップ状容器。
【0017】
8)前記ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が4~10g/10分である、上記7)のコップ状容器。
【発明の効果】
【0018】
上記1)のコップ状容器によれば、胴体のオーバーラップ部において、胴体の内側に位置する胴体用ブランクの内側端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、熱融着時に胴体用ブランクの2以上の層よりなる熱融着性樹脂層におけるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されており、内容物に晒されることがないので、同内側端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制され、また、衛生面でも好ましい。
なお、この発明を特定するに当たり、「融点」は、JIS K7121?1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tmp)を指すものとする。
【0019】
上記2)のコップ状容器によれば、胴体のオーバーラップ部において、胴体の外側に位置する胴体用ブランクの外側端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分も、熱融着時に胴体用ブランクの2以上の層よりなる熱融着性樹脂層におけるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されているので、同外側端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
【0020】
上記3)のコップ状容器によれば、胴体の合掌部において、胴体の外側に位置する胴体用ブランクの両端面の金属箔層部分および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面部分が、熱融着時に胴体用ブランクの2以上の層よりなる熱融着性樹脂層におけるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されているので、同両端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
【0021】
上記4)のコップ状容器によれば、胴体の合掌部が一方の側に折り曲げられて胴体の外面に熱融着されているので、同部分のシール性およびバリア性が向上する。しかも、同コップ状容器によれば、合掌部が外側に張り出さないので、外観が向上し、持ちやすくなる。さらに、同コップ状容器によれば、折り曲げられた合掌部の内側面およびこれと重なる胴体の外面を構成している熱融着性樹脂層におけるラミネート側熱融着性樹脂層を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化することによっても保護被膜が形成されるため、保護被膜による胴体用ブランクの両端面の被覆がより一層確実に行われる。
【0022】
上記4)~7)のコップ状容器によれば、上記1)~4)のコップ状容器による上記効果がより一層確実に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係るコップ状容器の斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う垂直断面図であって、同図中、一点鎖線Aで囲まれた部分は一点鎖線aで囲まれた部分を拡大して示したものであり、一点鎖線Bで囲まれた部分は一点鎖線bで囲まれた部分を拡大して示したものである。
【
図3】(a)は胴体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であり、(b)は底体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であって、各熱融着性樹脂層が2層構造である態様を示したものである。
【
図4】(a)は胴体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であり、(b)は底体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であって、各熱融着性樹脂層が3層構造である態様を示したものである。
【
図5】上記コップ状容器における胴体のオーバーラップ部の一態様を拡大して示す水平断面図である。
【
図6】上記コップ状容器における胴体のオーバーラップ部の別態様を拡大して示す水平断面図である。
【
図7】(a)は胴体用ブランクの平面図であり、(b)は胴体用ブランクから成形された胴体の斜視図である。
【
図8】(a)は底体用ブランクの平面図であり、(b)は底体用ブランクから成形された底体の斜視図である。
【
図9】上記コップ状容器の製造工程の一部を示す垂直断面図である。
【
図10】この発明の第2の実施形態に係るコップ状容器の水平断面図である。
【
図11】
図10の一点鎖線cで囲まれた部分を拡大して示す水平断面図である。
【
図12】上記コップ状容器の胴体の製造工程の一部を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を、
図1~
図12を参照して説明する。
なお、以下の説明において、「上下」は、コップ状容器、胴体、底体における上下(例えば
図2,9それぞれの上下)をいうものとし、また、「内」は、コップ状容器、胴体、底体における中心に近い側(例えば
図5,6の各下、
図9の右、
図11の上)をいい、「外」は、コップ状容器、胴体、底体における中心から遠い側(例えば
図5,6の各上、
図9の左、
図11の下)をいうものとする。
【0025】
<第1の実施形態>
図1および
図2は、この発明の第1の実施形態のコップ状容器(1)の全体構成を示すものであって、同容器(1)は、胴体用ブランク(20A)から成形された胴体(2)と、底体用ブランク(30A)から成形された底体(3)とを接合一体化してなる。
胴体(2)は、テーパ筒状のものであって、
図7に示すように、扇形をした胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより成形されている。したがって、胴体(2)には、その高さ方向に沿ってのびるオーバーラップ部(21)が存在する。
胴体(2)の下端開口縁部には、内方に折り返された折り返し部(22)が形成されている。
また、胴体(2)の上端開口縁部には、外方に折り曲げられたフランジ部(23)が設けられている。フランジ部(23)は、下方に折り返されてほぼ水平な偏平状に成形されている。なお、フランジ部は、図示以外の形態、例えば、下方にカールさせられて横断面略円弧状に成形されていてもよい。
底体(3)は、円形をした水平な底部(31)と、底部(31)の外周縁部から下方にのびた垂下部(32)とを有する断面略逆U形のものであって、
図8に示すように、円形の底体用ブランク(30A)を絞り成形してなる。
そして、底体(3)の垂下部(32)の外面が胴体(2)の下端部(2a)の内面に接合されるとともに、胴体(2)の折り返し部(22)が垂下部(32)の内面に接合されることにより、胴体(2)および底体(3)が一体化されている(
図2および
図9参照)。
なお、図示は省略したが、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造によって、胴体(2)と底体(3)とを一体化した構成とすることもできる。この構成によれば、底体(3)の成形時に垂下部(32)に若干のシワが発生していた場合でも、空気等を混入することなく、胴体(2)の下端部(2a)と底体(3)の垂下部(32)とを確実にシールすることができる。
【0026】
胴体用ブランク(20A)は、
図3(a)および
図4(a)に示すように、金属箔層(201)と、金属箔層(201)の両面のうち胴体(2)の内側となる面に積層された内側熱融着性樹脂層(202)と、金属箔層(201)の両面のうち胴体(2)の外側となる面に積層された外側熱融着性樹脂層(203)とよりなる積層体(20)から形成されており、紙層を有していない。
また、底体用ブランク(30A)も、
図3(b)および
図4(b)に示すように、金属箔層(301)と、金属箔層(301)の両面のうち底体(3)の上側となる面に積層された上側熱融着性樹脂層(302)と、金属箔層(301)の両面のうち底体(3)の下側となる面に積層された下側熱融着性樹脂層(303)とよりなる積層体(30)から形成されており、紙層を有していない。なお、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造とする場合には、底体用ブランク(30A)の下側熱融着性樹脂層(303)を省略することも可能である。
各積層体(20)(30)の厚さは、250μm未満とするのが好ましく、200μm未満とするのがより好ましい。各積層体(20)(30)の厚さを上記範囲とすることによって、ブランクの材料として厚さ250~400μm程度の積層体を使用する紙コップのように、胴体(2)のフランジ部(23)のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差が大きくなりすぎたり、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部
(32)との接合が安定しない、といった問題が確実に回避される。
【0027】
金属箔層(201)(301)は、内容物をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能するものである。
金属箔層(201)(301)を構成する金属箔としては、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔などを使用することができるが、好適にはアルミニウム箔が用いられる。アルミニウム箔の場合、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔のいずれでもよく、また、軟質、硬質のいずれでもよいが、例えば、JIS H4160で分類されるA8000系(特に、A8079HやA8021H)の焼鈍処理済の軟質材(O材)であれば、成形性に優れているので、好適に用いることができる。また、金属箔層(201)(特に胴体用ブランク(20A)の金属箔層(201))を構成するアルミニウム箔として、硬質材(H材)を適用した場合、フランジ部(23)の強度が高められて、予期せぬ衝撃によるフランジ部(23)の変形が抑制され、さらにはコップ状容器(1)全体として保形性が向上すると考えられる。
金属箔層(201)(301)の両面には、必要に応じて、化成処理などの下地処理を行う。具体的には、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
上記化成処理により金属箔層(201)(301)表面に形成される皮膜は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m2~50mg/m2とするのが好ましく、特に、2mg/m2~20mg/m2とするのが好ましい。
金属箔層(201)(301)の厚さは、40~200μmとするのが好ましく、80~160μmとするのがより好ましい。金属箔層(201)(301)の厚さを上記範囲とすることによって、充分なバリア性と成形加工性を得ることができる。
【0028】
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、容器(1)の内外面を構成するものであって、金属箔層(201)(301)を保護するとともに、積層体(20)(30)に成形性を付与する役割を担うものであり、また、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合の際に熱融着層として機能するものである。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、通常、例えば、熱融着性を有するポリプロピレン(PP)フィルムやポリエチレン(PE)フィルム等の汎用性フィルム、または、これらを貼り合わせた複合フィルムによって構成されるが、とりわけ、耐熱性や絞り成形性に優れている無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)が好適である。なお、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、上記フィルムに代えて、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル、エポキシ樹脂やシェラック樹脂等のコート層により形成されていてもよい。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さは、5~80μmとするのが好ましく、10~60μmがより好ましい。熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さを上記範囲とすることによって、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合部や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合部において十分な接着強度を得ることができると共に、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差を緩やかにすることができて、蓋材で封緘した際の密封性が良好となる。
【0029】
金属箔層(201)(301)を構成する金属箔と、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を構成するフィルムとの積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介してドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤やポリエーテル-ポリウレタン系接着剤が用いられる。
上記の接着剤層の存在により、例えば胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)が熱融着により減肉した場合でも、金属箔層(201)どうしが接触するのが回避されるので、シール性が保持される。また、上記の接着剤層があれば、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を透過する内容物が充填される場合であっても、金属箔層(201)(301)が腐食して内容物が漏れ出すのを回避することができる。
【0030】
なお、胴体用ブランク(20A)を構成する積層体(20)と、底体用ブランク(30A)を構成する積層体(30)とは、通常、同一のものが用いられるが、材質および/または厚さの異なるものとしてもよい。
【0031】
次に、上記積層体(20)(30)を使用して、コップ状容器(1)を形成する方法の一例を説明する。
まず、積層体(20)を所定サイズの扇形に打ち抜いて、胴体用ブランク(20A)を形成する(
図7(a)参照)。
また、積層体(30)を所定サイズの円形に打ち抜いて、底体用ブランク(30A)を形成し(
図8(a)参照)、このブランク(30A)を、金型(図示略)を用いて絞り成形加工することにより、底部(31)および垂下部(32)よりなる横断面略逆U形の底体(3)を成形する(
図8(b)参照)。得られた底体(3)には、シワが生じていない。また、底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分は、角が出ている。
そして、略円錐台形の金型(図示略)の頂面に、底体(3)をその底部(31)上面が重なるようにセットしておいてから、上記金型の外周面に胴体用ブランク(20A)を巻き付けて、その両端縁部どうしをオーバーラップさせた後、オーバーラップ部(21)の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着させることにより、テーパ筒状の胴体(2)を成形する(
図7(b)参照)。オーバーラップ部(21)の熱融着の手段は、熱板を用いたヒートシールの他、高周波シールや超音波シール等であってもよい。
ここで、ヒートシールは、例えば、内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)が無延伸ポルプロピレンフィルム(CPP)よりなる場合、シール温度:160~220℃、荷重:80~200kgf、シール時間:1~5秒の条件下で行われるのが好ましい。また、内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)がポリレチレンフィルム(PE)よりなる場合、シール温度:140~220℃、荷重:80~200kgf、シール時間:1~5秒の条件下で行われるのが好ましい。つまり、ヒートシールの場合、オーバーラップさせた胴体用ブランク(20A)の両端縁部の両側から、熱融着性樹脂層(202)(203)を構成する樹脂の融点よりも20~40℃高い温度で加熱しながら行うのが好ましい。
また、高周波シールは、例えば、出力:0.5~1.5kW、シール時間:3~5秒、コイルとの距離:0.5~15mm、荷重:100~200kgfの条件下で行われるのが好ましい。
次に、
図9に示すように、胴体(2)の下端開口縁部を内側に折り返して、その折り返し部(22)を円盤状の回転金型(図示略)によって底体(3)の垂下部(32)に押し付けた後、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)と上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)とを熱融着させることにより、胴体(2)と底体(3)とを接合一体化させる。これらの熱融着性樹脂層(202)(302)(303)どうしの熱融着も、通常、熱板等を用いたヒートシールによって行うが、その他、高周波シールや超音波シール等により行ってもよい。ヒートシールおよび高周波シールを行う際の好適な条件は、胴体(2)のオーバーラップ部(21)の熱融着の場合と同じである。
また、胴体(2)の上端開口縁部を、所定のカール成形金型(図示略)を用いて外方にカールさせるとともに上下方向に加圧して偏平状に成形することにより、フランジ部(23)を形成する(
図9参照)。
こうして、
図1および
図2に示すコップ状容器(1)が得られる。
【0032】
この実施形態のコップ状容器(1)にあっては、まず、胴体用ブランク(20A)について、以下のような特徴を有している。すなわち、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)のうち少なくとも一方(好ましくは両方)が、2以上の層よりなる。
そして、
図3(a)に示すように、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)がそれぞれ2層構造である場合、各層(202)(203)において、金属箔層(201)に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している熱融着性樹脂が、胴体(2)の内面または外面を構成するシール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)を構成している熱融着性樹脂と比べて融点が低いものとなされている。
また、
図4(a)に示すように、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)がそれぞれ3層構造である場合、各層(202)(203)において、金属箔層(201)に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している熱融着性樹脂が、胴体(2)の内面または外面を構成するシール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)を構成している熱融着性樹脂およびラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)とシール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)との間に介在されている中間熱融着性樹脂層(202c)(203c)を構成している熱融着性樹脂と比べて融点が低いものとなされている。
同様に、底体用ブランク(30A)についても、
図3(b)に示すように、上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)をそれぞれ2層構造として、各層(302)(303)において、金属箔層(301)に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層(302b)(303b)を構成している熱融着性樹脂が、底体(3)の表面側に位置するシール側熱融着性樹脂層(302a)(303a)を構成している熱融着性樹脂と比べて融点が低いものとすることができる。あるいは、
図4(b)に示すように、上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)をそれぞれ3層構造として、各層(302)(303)において、金属箔層(301)に積層されるラミネート側熱融着性樹脂層(302b)(303b)を構成している熱融着性樹脂が、底体(3)の表面側に位置するシール側熱融着性樹脂層(302a)(303a)を構成している熱融着性樹脂およびラミネート側熱融着性樹脂層(302b)(303b)とシール側熱融着性樹脂層(302a)(303a)との間に介在されている中間熱融着性樹脂層(302c)(303c)を構成している熱融着性樹脂と比べて融点が低いものとすることができる。
【0033】
ラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)(302b)(303b)を構成している熱融着性樹脂の融点は、シール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)(302a)(303a)(および中間熱融着性樹脂層(202c)(203c)(302c)(303c))を構成している熱融着性樹脂の融点よりも、10℃以上低くなされているのが好ましく、より好ましくは20℃以上低くなされている。なお、ここに規定する融点の差は、3以上の層よりなる熱融着性樹脂層においては、ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂の融点と、他の2以上の熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂の融点のうち最も低い融点との差である。
より詳細には、ラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)(302b)(303b)を構成している熱融着性樹脂の融点は、110~140℃であるのが好ましく、より好ましくは120~135℃である。
また、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)や底体用ブランク(30A)の上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)が2層構造である場合において、シール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)(302a)(303a)を構成している熱融着性樹脂の融点は、150~165℃であるのが好ましく、より好ましくは155~160℃である。
さらに、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)や底体用ブランク(30A)の上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)が3層構造である場合において、シール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)(302a)(303a)を構成している熱融着性樹脂の融点は、110~140℃であるのが好ましく、より好ましくは120~135℃であり、中間熱融着性樹脂層(202c)(203c)(302c)(303c)を構成している熱融着性樹脂層の融点は、150~165℃であるのが好ましく、より好ましくは155~160℃である。
【0034】
上記の融点差に加えて、ラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)(302b)(303b)を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、シール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)(302a)(303a)(および中間熱融着性樹脂層(202c)(203c)(302c)(303c))を構成している熱融着性樹脂のメルトマスフローレート(MFR)よりも大きくなされているのが好ましく、より好ましくは1~5g/10分以上大きくなされており、さらに好ましくは、2~4g/10分以上大きくなされている。なお、ここに規定するメルトマスフローレート(MFR)の差は、3以上の層よりなる熱融着性樹脂層においては、ラミネート側熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂のMFRと、他の2以上の熱融着性樹脂層を構成している熱融着性樹脂のMFRのうち最も値の大きいMFRとの差である。
ここで、メルトマスフローレート(MFR)は、JIS K7210-1-2014に規定されたMFRの標準的試験方法に準拠して求めたものを指す。例えば、各熱融着性樹脂層がポリプロピレンよりなる場合、そのMFRは、上記試験方法に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定した値となる。
より詳細には、ラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)(302b)(303b)を構成している熱融着性樹脂のMFRは、4~10g/10分であるのが好ましく、より好ましくは5~8g/10分である。
また、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)や底体用ブランク(30A)の上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)が2層構造である場合において、シール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)(302a)(303a)を構成している熱融着性樹脂のMFRは、4~10g/10分であるのが好ましく、より好ましくは5~8g/10分である。
さらに、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)や底体用ブランク(30A)の上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)が3層構造である場合において、シール側熱融着性樹脂層(202a)(203a)(302a)(303a)を構成している熱融着性樹脂のMFRは、4~10g/10分であるのが好ましく、より好ましくは5~8g/10分であり、中間熱融着性樹脂層(202c)(203c)(302c)(303c)を構成している熱融着性樹脂層のMFRは、2~5g/10分であるのが好ましく、より好ましくは3~4g/10分である。
【0035】
そして、この実施形態のコップ状容器(1)では、胴体(2)のオーバーラップ部(21)に、以下のような構成上の特徴を有している。
すなわち、
図5に示すように、胴体(2)の内側に位置する胴体用ブランク(20A)の内側端面(204)の金属箔層(201)部分および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面部分が、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着する際にラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜(M1)によって被覆されている。
また、
図6に示す態様の胴体(2)のオーバーラップ部(21)の場合、上記保護被膜(M1)による内側端面(204)の被覆に加えて、胴体(2)の外側に位置する胴体用ブランク(20A)の外側端面(205)の金属箔層(201)部分および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面部分が、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着する際にラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜(M2)によって被覆されている。
【0036】
コップ状容器(1)の胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに熱融着された内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)の合計厚さ(T1)が8~150μmであるのが好ましく、より好ましくは16~80μmとなされる(
図5参照)。上記合計厚さ(T1)が8μm未満であると、オーバーラップ部(21)のシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記合計厚さ(T1)が150μmを超えると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがある。
また、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の金属箔層(201)(201)どうしの厚さ方向から見た重なり幅(W1)が2~10mmであるのが好ましく、より好ましくは4~8mmとなされる。上記重なり幅(W1)が2mm未満であると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがあり、また、シール幅が小さくなりすぎてシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記重なり幅(W1)が10mmを超えると、必要以上にオーバーラップ部(21)の幅が大きくなってコストアップにつながり、さらに、オーバーラップ部(21)の内側部分(胴体用ブランク(20A)の一方の端縁部)と外側部分(胴体用ブランク(20A)の他方の端縁部)とにかかる応力の相違に起因して、オーバーラップ部(21)の内側部分にシワが入るなどの外観不良が発生するおそれがある。
【0037】
この実施形態のコップ状容器(1)によれば、以下のような効果が奏される。
a)胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)のそれぞれが、金属箔層(201)(301)およびその両面に積層された熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)よりなる積層体(20)(30)から形成されているので、紙コップの製造設備を利用して安価に製造することができる。
b)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が金属箔層(201)(301)を有しているので、内容物の長期保存性に優れている。
c)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差を小さくすることができ、したがって、容器(1)のフランジ部(23)上面に蓋をシールする際にシール不良が起こりにくい。また、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、フランジ部(23)上面の上記段差に殺菌液が残りにくくなる。
d)底体(3)が底体用ブランク(30A)を絞り成形してなるので、底体(3)にシワが発生せず、したがって、従来の紙コップのように底体(3)の垂下部(32)と胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)との接合不良が生じたり、バリア性の低下を招いたりするおそれがない。
e)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とを安定的に接合することができる。
f)紙コップと比べて底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分の曲率半径(アール)を小さくすることができるので、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、コップ状容器(1)の底体(3)上面と胴体(2)内周面との境界部分に殺菌液が残りにくくなる。
g)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が紙層を有しないものであるので、レトルト殺菌を支障なく行うことができる。
h)胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体(2)の内側に位置する胴体用ブランク(20A)の内側端面(204)の金属箔層(201)部分および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面部分が、熱融着時に胴体用ブランク(20A)における複層構造の熱融着性樹脂層(202)(203)のうちラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜(M1)によって被覆されており、内容物に晒されることがないので、同内側端面(204)のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制され、また、衛生面でも好ましい。特に、この保護被膜(M1)は、金属箔層(202)との接着強度に優れた変性ポリオレフィンよりなるので、上記効果が長期間にわたって持続すると考えられる。
i)胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体(2)の外側に位置する胴体用ブランク(20A)の外側端面(205)の金属箔層(201)部分および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面部分が、熱融着時に胴体用ブランク(20A)における複層構造の熱融着性樹脂層(202)(203)のうちラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜(M2)によって被覆されているので、同外側端面(205)のデラミネーションや腐食による劣化が長期間にわたって効果的に抑制される。
【0038】
なお、図示は省略したが、底体用ブランク(30A)の端面、すなわち底体(3)の垂下部(32)の下端面においても、金属箔層(301)部分および金属箔層(301)と熱融着性樹脂層(302)(303)との界面部分が、底体(3)の垂下部(32)ならびに胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)の互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層(302)(303)(202)どうしを熱融着する際に、ラミネート側熱融着性樹脂層(302b)(303b)(202b)を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されていても構わない。それによって、底体(3)の垂下部(32)の下端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
また、胴体用ブランク(20A)の上下端縁面、すなわち、胴体(2)のフランジ部(23)の先端面や胴体(2)の折り返し部(22)の先端面(胴体(2)が折り返し部(22)を有しない場合は、胴体(2)の下端面)においても、上記と同様に、例えば、胴体(2)のフランジ部(23)に蓋材が熱融着される際や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とが熱融着される際に、これらの複層構造の熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)のうちラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)(302b)(303b)を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜によって被覆されていてもよく、それによって上記各先端面のデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
【0039】
<第2の実施形態>
図10~
図12は、この発明の第2の実施形態に係るコップ状容器を示したものである。この実施形態のコップ状容器は、以下の点を除いて、
図1~
図9に示す第1の実施形態のコップ状容器と実質的に同一である。
すなわち、
図10および
図11に示すように、この実施形態のコップ状容器(1X)では、胴体(2)が、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしを合掌状に重ねて接合することにより筒状に成形されている(
図12(a)参照)。より詳細には、胴体用ブランク(20A)の合掌状に重ねられた両端縁部がこれらの内側熱融着性樹脂層(202)どうしを熱融着することにより接合されている。
また、胴体(2)の合掌部(21X)は、胴体(2)の外面と重なるように一方の側に折り曲げられて同外面に熱融着されている(
図12(b)参照)。
胴体(2)の合掌部(21X)の幅(重なり代)は、好適には5~20mm、より好適には10~18mmとなされる。上記幅が5mm未満であると、合掌部(21X)のシール作業が困難になるおそれがある。一方、上記幅が20mmを超えると、必要以上に合掌部(21X)の幅が大きくなってコストアップにつながり、さらに、合掌部(21X)を胴体(2)の外面と重なるように一方の側に折り曲げて同外面に接合する際に合掌部(21X)にシワが入るなどの外観不良が発生するおそれがある。
上記のコップ状容器(1X)によれば、胴体(2)の合掌部(21X)において、胴体用ブランク(20A)の両端面が容器(1X)に収容された内容物と接触することがないので、デラミネーションや腐食等の発生が抑制される。また、同容器(1X)によれば、内容物と接触する面を1種類の樹脂で構成することができるため、殺菌が容易となり、衛生面でも有利である。
また、上記のコップ状容器(1X)によれば、胴体(2)の合掌部(21X)が一方の側に折り曲げられて胴体(2)の外面に熱融着されているので、同部分のシール性およびバリア性が向上する。しかも、同コップ状容器(1X)によれば、合掌部(21X)が外側に張り出さないので、外観が向上し、持ちやすくなる。
【0040】
図11に詳しく示すように、胴体(2)の外側に位置する胴体用ブランク(20A)の両端面(206)の金属箔層(201)部分および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面部分が、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の複層構造の内側熱融着性樹脂層(202)どうしを熱融着する際、さらには、胴体(2)の合掌部(21X)を胴体(2)の外面と重なるように一方の側に折り曲げて同外面に熱融着する際、すなわち、折り曲げられた合掌部(21X)の内側面およびこれと重なる胴体(2)の外面を構成している複層構造の外側熱融着性樹脂層(203)どうしを熱融着する際に、同各層(202)(203)のうちラミネート側熱融着性樹脂層(202b)(203b)を構成している低融点の熱融着性樹脂が溶融固化して形成された保護被膜(M3)によって被覆されている。この保護被膜(M3)によって、胴体用ブランク(20A)の両端面(206)のデラミネーションや腐食による劣化が長期間にわたって効果的に抑制される。
【0041】
上記のコップ状容器(1X)を製造するに当たり、胴体(2)を形成する工程は、例えば以下のようにして行われる。
すなわち、胴体用ブランク(20A)の両端縁部を合掌状に重ね合わせて、これらの互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)どうしを1回目の熱融着を行って接合することにより、合掌部(21X)を有する筒状の胴体(2)を形成する。1回目の熱融着は、通常、熱板等を用いたヒートシールによって行うが、その他、高周波シールや超音波シール等により行ってもよい。
次いで、合掌部(21X)を一方の側に折り曲げて胴体(2)の外面に重ね、この状態で、高周波シールにより2回目の熱融着を行う。それによって、胴体用ブランク(20A)の両端縁部の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)どうしが更に熱融着されると同時に、折り曲げられた合掌部(21X)の内側面およびこれと重なる胴体(2)の外面を構成している外側熱融着性樹脂層(203)どうしが熱融着されて、合掌部(21X)が胴体(2)の外面に接合される。
以上のような2段階の熱融着により、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしがより確実に接合され、また、熱融着に伴い当該接合箇所に上記保護被膜(M3)が形成され易くなり、さらには熱融着に伴う変形等の発生が抑制される。
【実施例】
【0042】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例1>
厚さ100μmのアルミニウム箔(A8021H-O)の化成処理が施された両面に、それぞれ2液硬化型ウレタン系接着剤を約3g/m
2塗布して、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をドライラミネートした。そして、接着剤を硬化させるために所定のエージング処理を行うことにより、積層体を得た。ここで、無延伸ポリプロピレンフィルムには、厚さ12μmのエチレン-プロピレンランダム共重合体層(融点=130℃)および厚さ28μmのホモポリプロピレン(rPP)層(融点=160℃)よりなる共押出フィルムを使用し、同フィルムのエチレン-プロピレンランダム共重合体層側の面をアルミニウム箔に接着するようにした。
次に、得られた積層体を所定形状に打ち抜いて、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを成形した(
図7および
図8参照)。
そして、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを用いて、前述した実施形態と同一の工程により、
図1および
図2に示すコップ状容器を作製し、これを実施例1とした。
得られたコップ状容器は、厚さ100μmのアルミニウム箔を使用しているので、酸素や水蒸気の透過がほとんど無い、バリア性の良好な容器である。
尚、コップ状容器の寸法は下記の通りとした。
・コップ状容器上部の開口部の内径:65mm
・コップ状容器下部の内径:50mm
・フランジ部の幅:4mm
・コップ状容器の高さ:95mm
・コップ状容器の脚部(折り返し部(22))の高さ:6mm
・胴体のオーバーラップ部の幅(重なり代):8mm
また、コップ状容器の胴体のオーバーラップ部を横断方向に切断して同切断面を顕微鏡で観察したところ、胴体用ブランクの内側端面が、熱融着時に形成されたエチレン-プロピレンランダム共重合の保護被膜によって被覆され、胴体用ブランクの外側端面が、熱融着時に形成されたエチレン-プロピレンランダム共重合の保護被膜によって被覆されていることが確認された。
【0044】
<実施例2>
実施例1と同一の胴体用ブランクおよび底体用ブランクを用いて、前述した第2の実施形態と同一の工程により、
図12および
図13に示すコップ状容器を作製し、これを実施例2とした。
実施例2のコップ状容器の寸法は、胴体の合掌部の幅(重なり代)を15mmとした点を除いて、実施例1と同一とした。
上記コップ状容器の胴体の合掌部を横断方向に切断して同切断面を顕微鏡で観察したところ、胴体用ブランクの両端面が、熱融着時に形成されたエチレン-プロピレンランダム共重合の保護被膜によって被覆されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、例えば流動状食品や飲料等を内容物とするコップ状容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
(1)(1X):コップ状容器
(2):胴体
(2a):胴体の下端部
(21):オーバーラップ部
(21X):合掌部
(23):フランジ部
(20A):胴体用ブランク
(20):積層体
(201):金属箔層
(202):内側熱融着性樹脂層
(202a):シール側熱融着性樹脂層
(202b):ラミネート側熱融着性樹脂層
(203):外側熱融着性樹脂層
(203a):シール側熱融着性樹脂層
(203b):ラミネート側熱融着性樹脂層
(204):(胴体用ブランクの)内側端面
(205):(胴体用ブランクの)外側端面
(206):(胴体用ブランクの)両端面
(3):底体
(31):底部
(32):垂下部
(30A):底体用ブランク
(30):積層体
(301):金属箔層
(302):上側熱融着性樹脂層
(303):下側熱融着性樹脂層
(M1):保護被膜
(M2):保護被膜
(M3):保護被膜