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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】燃料セルプレートおよび流れ構造設計
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20241018BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20241018BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20241018BHJP
   H01M 8/021 20160101ALI20241018BHJP
   H01M 8/0232 20160101ALI20241018BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241018BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0247
H01M8/0273
H01M8/021
H01M8/0232
H01M8/10 101
C25B9/00 A
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020539188
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019013950
(87)【国際公開番号】W WO2019143781
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】62/618,223
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ガンビーニ,フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】バーンド,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ドミット,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】バーガー,アンドリュー
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-091225(JP,A)
【文献】特開2007-026694(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182404(WO,A1)
【文献】特開2006-185882(JP,A)
【文献】特開2007-073231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02-8/0297
H01M 8/10
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを備えた電気化学セルスタックであって、前記複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、
カソード触媒層、アノード触媒層、および、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備えた膜電極接合体と、
アノードプレートおよびカソードプレートであって、前記膜電極接合体は前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に介在させられる、アノードプレートおよびカソードプレートと、
前記カソードプレートと前記カソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を備えたカソード流れ場と
を備え、
前記多孔質構造は、算術平均粗さが約2.54μm(100μインチ)未満であるように平滑である、前記多孔質構造の第1の側の1つまたは複数の表面領域を有し、前記1つまたは複数の表面領域は、前記膜電極接合体に面し、前記1つまたは複数の表面領域は、前記膜電極接合体のサブガスケットと合わせられた、
電気化学セルスタック。
【請求項2】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記アノードプレートは、前記アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、電気化学セルスタック。
【請求項3】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記アノードプレートまたは前記カソードプレートのうちの少なくとも1つは、コーティングされない316ステンレス鋼合金から形成される、電気化学セルスタック。
【請求項4】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セルスタック。
【請求項5】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セルスタック。
【請求項6】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記アノードプレートのすべての表面は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セルスタック。
【請求項7】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セルスタック。
【請求項8】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セルスタック。
【請求項9】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記カソードプレートのすべての表面は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セルスタック。
【請求項10】
請求項に記載の電気化学セルスタックであって、前記多孔質構造の第1の側は、前記第1の側の算術平均粗さが約2.54μm(100μインチ)未満であるように平滑であり、前記第1の側は、前記膜電極接合体に面する、電気化学セルスタック。
【請求項11】
カソード触媒層、アノード触媒層、および、前記カソード触媒層と前記アノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備えた膜電極接合体と、
アノードプレートおよびカソードプレートであって、前記膜電極接合体は前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に介在させられる、アノードプレートおよびカソードプレートと、
前記カソードプレートと前記カソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を備えたカソード流れ場と
を備えた電気化学セルであって、
前記多孔質構造は、算術平均粗さが約2.54μm(100μインチ)未満であるように平滑である、前記多孔質構造の第1の側の1つまたは複数の表面領域を有し、前記1つまたは複数の表面領域は、前記膜電極接合体に面し、前記1つまたは複数の表面領域は、前記膜電極接合体のサブガスケットと合わせられた、
電気化学セル。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記アノードプレートは、前記アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定する、電気化学セル。
【請求項13】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記アノードプレートまたは前記カソードプレートのうちの少なくとも1つは、コーティングされない316ステンレス鋼合金から形成される、電気化学セル。
【請求項14】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セル。
【請求項15】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セル。
【請求項16】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記アノードプレートのすべての表面は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セル。
【請求項17】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セル。
【請求項18】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セル。
【請求項19】
請求項11に記載の電気化学セルであって、前記カソードプレートのすべての表面は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、電気化学セル。
【請求項20】
カソードプレートと膜電極接合体との間に配置されるカソード流れ場を備えた電気化学セルであって、
前記カソード流れ場は多孔質構造を備え、
前記多孔質構造の第1の側の1つまたは複数の表面領域は、算術平均粗さが約2.54μm(100μインチ)未満であるように平滑であり、
前記第1の側は前記膜電極接合体に面し、
前記1つまたは複数の表面領域のうちの少なくとも1つは、前記膜電極接合体のサブガスケットと合わせられた、
電気化学セル。
【請求項21】
請求項20に記載の電気化学セルであって、前記多孔質構造の前記第1の側全体は、算術平均粗さが約2.54μm(100μインチ)未満であるように平滑な表面である、電気化学セル。
【請求項22】
請求項20に記載の電気化学セルであって、前記多孔質構造の第2の側は第1のカソード分配チャネルおよび第2のカソード分配チャネルを有し、該第1のカソード分配チャネルおよび第2のカソード分配チャネルは、前記カソードプレートに面する前記多孔質構造の表面内の凹所に据えられる、電気化学セル。
【請求項23】
請求項22に記載の電気化学セルであって、前記多孔質構造は、前記第1のカソード分配チャネルおよび前記第2のカソード分配チャネルの全体を通して形成される複数の支持特徴部を含む、電気化学セル。
【請求項24】
請求項20に記載の電気化学セルであって、前記多孔質構造は、少なくともニッケルおよびクロムを含む、電気化学セル。
【請求項25】
請求項24に記載の電気化学セルスタックであって、前記多孔質構造は、約60質量%から約80質量%のニッケル濃度、および、約20質量%から約40質量%のクロム濃度を含み、前記多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約3質量%から約50質量%のクロム濃度を含む、電気化学セルスタック。
【請求項26】
請求項24に記載の電気化学セルスタックであって、前記多孔質構造は、約3%から約6%のクロム濃度、約10%から約20%のスズ濃度、および、約74%から約87%のニッケル濃度を含む、電気化学セルスタック。
【請求項27】
請求項26に記載の電気化学セルスタックであって、前記多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約10質量%から約45質量%のクロム濃度を含む、電気化学セルスタック。
【請求項28】
請求項24に記載の電気化学セルスタックであって、前記多孔質構造の第1の表面は、反対の第2の表面より高いクロム濃度を有する、電気化学セルスタック。
【請求項29】
請求項28に記載の電気化学セルスタックであって、前記第1の表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有し、前記第2の表面は、約3質量%未満のクロム濃度を有する、電気化学セルスタック。
【請求項30】
請求項からのいずれか一項に記載の電気化学セルスタックであって、前記粗さは、前記アノードプレートまたはカソードプレート上へと、スタンピング、エッチング、研磨、または圧延加工される、電気化学セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、2018年1月17日に出願された、米国仮出願第62/618,223号の利益を主張するものであり、その米国仮出願は、その全体が参照により組み込まれている。
【0002】
[002]本開示は、電気化学セル、より詳細には、改善されたプレートおよび流れ構造表面設計を伴う電気化学セルを対象とする。
【背景技術】
【0003】
[003]普通は燃料セルまたは電解セルと分類される電気化学セルは、化学反応から電流を発生させる、または、電流の流れを使用して化学反応を誘導するために使用されるデバイスである。例えば、燃料セルは、燃料(例えば、水素、天然ガス、メタノール、ガソリン、その他)および酸化剤(空気または酸素)の化学エネルギーを、電気、ならびに、熱および水の廃棄生成物へと変換する。基本的な燃料セルは、負帯電アノードと、正帯電カソードと、電解質と呼ばれるイオン伝導材料とを備える。
【0004】
[004]異なる燃料セル技術は、異なる電解質材料を利用する。プロトン交換膜(PEM)燃料セルは、例えば、電解質として高分子イオン伝導膜を利用する。水素PEM燃料セルにおいて、水素原子が、アノードにおいて電子およびプロトン(水素イオン)へと電気化学的に分けられる。電子は、次いで、回路を通ってカソードに流れ、電気を発生させ、一方で、プロトンは、電解質膜を通ってカソードに拡散する。カソードにおいて、水素プロトンは、電子および酸素(カソードに供給される)と組み合わさって、水および熱を生成する。
【0005】
[005]電解セルは、逆に動作させられる燃料セルを表す。基本的な電解セルは、外部電位が付与されるときに、水を水素および酸素ガスへと分解することにより、水素発生器として機能する。水素燃料セルまたは電解セルの基本的な技術は、電気化学的水素圧縮、精製、または膨張などの電気化学的水素操作に応用され得る。電気化学的水素操作は、水素管理に対して従前から使用される機械的システムに対する存立可能な代替案として出現した。エネルギー担体としての水素の成功裏の商業化、および、「水素経済」の長期の持続可能性は、主として、燃料セル、電解セル、および他の水素操作/管理システムの、効率およびコスト有効度に依存する。
【0006】
[006]動作において、単一の燃料セルは、一般的には、約1ボルトを発生させることができる。所望される量の電力を得るために、個々の燃料セルは、燃料セルスタックを形成するために組み合わされ、燃料セルは、順次的に一体に積層される。各々の燃料セルは、カソードと、電解質膜と、アノードとを含み得る。カソード/膜/アノード接合体は、典型的にはバイポーラプレートにより両方の側で支持される、「膜電極接合体」すなわち「MEA」の構成物である。反応物ガス、すなわち、燃料(例えば、水素)および酸化剤(例えば、空気または酸素)が、流れ場を通してMEAの電極に供給される。機械的支持を提供することに加えて、バイポーラプレート(さらには流れ場プレートまたはセパレータプレートとして知られている)は、スタック内の個々のセルを物理的に分離し、一方で、それらのセルを電気的に接続する。燃料セルスタックは、燃料および酸化剤を、アノードおよびカソード流れ場それぞれに導くための、マニホールドおよび入口ポートを含み得る。燃料セルスタックは、さらには、過剰燃料および酸化剤を駆逐するための、排気マニホールドおよび出口ポートを含む。燃料セルスタックは、さらには、燃料セルスタックにより発生させられる熱を駆逐する助けとなる冷却剤流体を循環させるためのマニホールドを含み得る。
【0007】
[007]製造のコストを減少しながら、燃料セルの信頼性、性能特性、および堅牢性を改善することの継続する必要性が存する。例えば、燃料セルスタック内の構成要素の間の接触抵抗を減少することがしばしば望ましく、そのことは、化学反応が燃料セルスタックの中で起こるレートを増大することができる。一部の先の燃料セルスタックにおいて、セルの中のプレートは、接触抵抗を低下させるためにコーティングされてきた。しかしながら、コーティングされたプレートは、普通、燃料セルスタックを製造するコストを増大する。一部の事例において、接触抵抗を減少するためにコーティングを塗布することは、法外なコストになり得る。そのようなコーティングに対する代替案が、それゆえに望ましくあり得る。
【0008】
[008]加えて、燃料セルのMEAにわたる燃料および/または酸化剤がリークすること(例えば、クロスオーバ)を防止するために、MEAを包囲するガスケットが、アノードおよびカソード区画を分離するために利用されてきた。しかしながら、ガスケットが、隣接する構造(例えば、流れ場構造)により破壊されるリスクを回避または低減するために、ガスケットの厚さが増大されてきたが、このことは、燃料セルの総体的な厚さおよび/または体積が増大することを結果的に生じさせることがある。より厚いガスケットを使用してガスケット破壊を防止することに対する代替案が、それゆえに望ましくあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[009]開示される燃料セルプレートおよび流れ構造設計は、上記で論述された1つもしくは複数の問題、および/または、既存の技術に関する他の問題を克服することを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[010]1つの態様において、本開示は、電気化学セルスタックを対象とする。電気化学セルスタックは、長手方向軸に沿って積層される複数の電気化学セルを備え得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を含む膜電極接合体を含み得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、さらには、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられる、アノードプレートおよびカソードプレートと、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場とを含み得る。カソード流れ場は、多孔質構造を含み得る。アノードプレートは、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定し得る。アノードプレートまたはカソードプレートのうちの少なくとも1つは、コーティングされない316ステンレス鋼合金から形成され得る。アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有し得る。アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有し得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、すべての表面が約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有するアノードプレートを含み得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有する、カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分を含み得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有する、カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分を含み得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、すべての表面が約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有するカソードプレートを含み得る。複数の電気化学セルのうちの1つまたは複数は、多孔質構造を含み得るものであり、その多孔質構造は、平滑である、多孔質構造の第1の側の1つまたは複数の表面領域を有し、1つまたは複数の表面領域は、膜電極接合体に面し、1つまたは複数の表面領域は、膜電極接合体のサブガスケットと位置合わせする。多孔質構造の第1の側は、第1の側の算術平均粗さが約2.54μm(100μインチ)未満であるように平滑であり得るものであり、第1の側は、膜電極接合体に面し得る。
【0011】
[011]別の態様において、本開示は、電気化学セルを対象とする。電気化学セルは、カソード触媒層、アノード触媒層、およびカソード触媒層とアノード触媒層との間に介在させられる高分子膜を備える膜電極接合体を含み得る。電気化学セルは、さらには、アノードプレートおよびカソードプレートであって、膜電極接合体が、それらのアノードプレートとカソードプレートとの間に介在させられ、カソードプレートが、カソード触媒層に隣接して配置される、アノードプレートおよびカソードプレートを含み得る。電気化学セルは、カソードプレートとカソード触媒層との間に配置されるカソード流れ場であって、多孔質構造を含む、カソード流れ場を含み得る。アノードプレートは、アノード触媒層に面するアノード流れ場を形成する複数のチャネルを規定し得る。アノードプレートまたはカソードプレートのうちの少なくとも1つは、コーティングされない316ステンレス鋼合金から形成され得る。アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有し得る。アノードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有し得る。電気化学セルは、すべての表面が約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有するアノードプレートを含み得る。カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有し得る。カソードプレート上の1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の算術平均粗さを有し得る。電気化学セルは、すべての表面が約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有するカソードプレートを含み得る。多孔質構造は、平滑である、多孔質構造の第1の側の1つまたは複数の表面領域を有し得る。1つまたは複数の表面領域は、膜電極接合体に面し得る。1つまたは複数の表面領域は、膜電極接合体のサブガスケットと位置合わせし得る。
【0012】
[012]別の態様において、本開示は、カソードプレートと膜電極接合体との間に配置されるカソード流れ場を伴う電気化学セルを対象とする。カソード流れ場は、多孔質構造を含み得る。多孔質構造の第1の側の1つまたは複数の表面領域は、平滑であり得る。第1の側は、膜電極接合体に面し得るものであり、1つまたは複数の表面領域のうちの少なくとも1つは、膜電極接合体のサブガスケットと位置合わせし得る。多孔質構造の、第1の側全体は、平滑な表面であり得る。1つまたは複数の表面領域は、約2.54μm(100μインチ)未満の算術平均粗さを有する。多孔質構造の第2の側は、カソードプレートに面する多孔質構造の表面内の凹所に据えられる、第1のカソード分配チャネルと、第2のカソード分配チャネルとを有し得る。多孔質構造は、第1のカソード分配チャネルおよび第2のカソード分配チャネルの全体を通して形成される複数の支持特徴部を含み得る。多孔質構造は、少なくともニッケル、スズ、およびクロムを含み得る。多孔質構造は、約60質量%から約80質量%のニッケル濃度、および、約20質量%から約40質量%のクロム濃度を含み得るものであり、多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約3質量%から約50質量%のクロム濃度を含み得る。多孔質構造は、約3%から約6%のクロム濃度、約10%から約20%のスズ濃度、および、約74%から約87%のニッケル濃度を有し得る。多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約10質量%から約45質量%のクロム濃度を含み得る。多孔質構造の第1の表面は、反対の第2の表面より高いクロム濃度を有し得る。第1の表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有し得るものであり、第2の表面は、約3質量%未満のクロム濃度を有する。
【0013】
[013]上述の全体的な説明、および、後に続く詳細な説明の両方は、請求される際、本開示について、単に例示的および解説的であり、限定的ではないということが理解されるべきである。
【0014】
[014]本明細書に組み込まれ、本明細書の部分の構成物である、添付図面は、本開示の実施形態を例解し、説明とともに、本開示の原理を解説するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[015]例示的な実施形態による、一体に積層される複数の電気化学セル(例えば、燃料セル)の側面概略図である。
図2】[016]例示的な実施形態による、図1の隣接する燃料セルの一部分の部分的に分解された側面斜視図である。
図3】[017]例示的な実施形態による、図2のアノードプレートの正面図である。
図4】[018]例示的な実施形態による、図2のカソードプレートの正面図である。
図5】[019]例示的な実施形態による、図2のカソード流れ場の正面図である。
図6】[020]例示的な実施形態による、図2のカソード流れ場の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[021]本開示の例示的な実施形態に対する言及が、今から詳細に為されることになり、それらの実施形態の例が、添付図面において例解される。可能である場合はいつでも、同じ参照番号が、同じまたは類する部分を指すために、図面の全体を通して使用されることになる。電気を発生させるための電気化学セルとの関係において説明されるが、本開示のデバイスおよび方法は、電解セル、水素精製器、水素エキスパンダ、および水素ポンプを含むが、それらに制限されない、様々なタイプの燃料セルまたは電気化学セルによって用いられ得るということが理解される。
【0017】
[022]本明細書の全体を通して、用語「概して平行な」および「概して垂直な」は、軸、平面、または、他の構成要素との関係において、1つまたは複数の構成要素の配置構成を説明するために使用され得る。「概して平行な」または「概して垂直な」と配置構成を説明するときに許容され得る、平行および垂直からのずれの度は変動し得る。許されるずれは、例えば、約10度未満のずれ、約5度未満のずれ、および、約3度未満のずれ、約2度未満のずれ、および、約1度未満のずれなど、約20度未満の外れであり得る。
【0018】
[023]図1は、例示的な実施形態による、燃料セルスタック11の少なくとも一部分を形成するために、長手方向軸5に沿って一体に積層される複数の電気化学セル、例えば、燃料セル10の側面概略側面図である。燃料セル10は、一括して膜電極接合体(MEA)18と呼称され得る、さらには本明細書においてカソードと呼称され得るカソード触媒層12と、さらには本明細書においてアノードと呼称され得るアノード触媒層14と、カソード触媒層12とアノード触媒層14との間に配設されるプロトン交換膜(PEM)16とを備えることができる。PEM16は、純粋な高分子膜、または、他の材料を伴う複合膜を含むことができ、例えば、シリカ、ヘテロポリ酸、層状金属リン酸塩、リン酸塩、およびリン酸ジルコニウムが、高分子マトリクス内に埋め込まれ得る。PEM16は、プロトンに対して透過性であり得るものであり、一方で、電子を伝導しない。カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、触媒を内包する多孔質炭素電極を含むことができる。例えば、白金、白金-コバルト合金、または非白金族金属であり得る触媒材料が、酸素および燃料の反応を増大することができる。一部の実施形態において、カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、約1μmの平均孔サイズを有し得る。
【0019】
[024]燃料セル10は、2つのバイポーラプレート、例えば、カソードプレート20およびアノードプレート22を備えることができる。カソードプレート20は、カソード触媒層12に隣接して配置され得るものであり、アノードプレート22は、アノード触媒層14に隣接して配置され得る。MEA18は、カソードプレート20とアノードプレート22との間に介在させられ、それらのプレートの間で囲繞され得る。カソード区画19が、MEA18とカソードプレート20との間に形成され得るものであり、アノード区画21が、MEA18とアノードプレート22との間に形成され得る。カソードプレート20およびアノードプレート22は、電流コレクタの役割を果たし、それぞれの電極表面(例えば、アノード触媒層14およびカソード触媒層12)への燃料および酸化剤に対するアクセス流れ通路を提供し、燃料セル10の動作の間に形成される水の除去のための流れ通路を提供することができる。カソードプレート20およびアノードプレート22は、さらには、冷却剤流体(例えば、水、グリコール、または、水グリコール混合物)に対する流れ通路を規定することができる。例えば、隣接する燃料セル10のカソードプレート20とアノードプレート22との間に、冷却剤区画23が形成され得るものであり、その冷却剤区画23は、隣接する燃料セル10の間で冷却剤流体を循環させるように構成される。燃料セル10により発生させられる熱は、冷却剤流体に伝達され、冷却剤流体の循環により別のところに搬送され得る。カソードプレート20およびアノードプレート22は、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni-Cr合金、グラファイト、または、任意の他の適した電気伝導性材料から作製され得る。
【0020】
[025]一部の実施形態において、例えば、図1において例解されるように、燃料セル10は、さらには、MEA18の各々の側で、燃料セル10の中に、電気伝導性ガス拡散層(例えば、カソードガス拡散層24およびアノードガス拡散層26)を含み得る。ガス拡散層24、26は、セルの中でのガスおよび液体の輸送を可能にする拡散媒体として働き、電気的にカソードプレート20、アノードプレート22と、MEA18との間の伝導を提供し、燃料セル10からの熱およびプロセス水の除去において助力となり、一部の事例において、PEM16に対する機械的支持を提供し得る。ガス拡散層24、26は、PEM16に面する側にコーティングされるカソード触媒層12およびアノード触媒層14を伴う、織布または不織布の炭素布を含むことができる。一部の実施形態において、カソード触媒層12およびアノード触媒層14は、隣接するGDL24、26またはPEM16のいずれか上へとコーティングされ得る。一部の実施形態において、ガス拡散層24、26は、約10μmの平均孔サイズを有し得る。
【0021】
[026]燃料セル10は、MEA18の各々の側に配置される流れ場をさらに含み得る。例えば、燃料セル10は、本明細書においてさらに説明されるように、カソードプレート20とGDL24との間に配置される多孔質構造を含み得るカソード流れ場28と、アノードプレート22により形成され得るアノード流れ場30とを含み得る。流れ場は、MEA18の各々の側の燃料および酸化剤が、場を通って流れる、および、MEA18に達することを可能にするように構成され得る。これらの流れ場は、カソードおよびアノード触媒層12、14への、燃料および酸化剤の均一な分配を手助けし得る。触媒層12、14への、燃料および酸化剤の均一な分配は、燃料セル10の性能を増大し得る。GDL24は、カソード流れ場28からのカソード触媒層12の機械的保護を提供し得る。
【0022】
[027]図1においての1つの燃料セル10のみが、カソード触媒層12、アノード触媒層14、プロトン交換膜16、膜電極接合体(MEA)18、カソード区画19、カソードプレート20、アノード区画21、アノードプレート22、冷却剤区画23、ガス拡散層24、ガス拡散層26、カソード流れ場28、およびアノード流れ場30に対する参照番号を含むが、スタック11の他の燃料セル10は、同じ要素を含み得るということが理解されるべきである。
【0023】
[028]燃料セルスタック11は、さらには、燃料セル10の積層されるカソードプレート20およびアノードプレート22の系列により規定される長手方向軸5に沿って延びる複数の流体マニホールド31A、31Bを含み得る。流体マニホールド31A、31Bは、燃料(例えば、水素)および酸化剤(例えば、酸素)を各々の燃料セル10のMEA18にフィードし、反応物生成物(例えば、未反応の燃料、未反応の酸化剤、および水)を各々の燃料セルのMEA18から排出するために構成され得る。流体マニホールド31A、31Bは、さらには、冷却剤流体を、冷却剤区画23を通してフィードおよび排出するために構成され得る。流体マニホールド31A、31B、カソード区画19、アノード区画21、および冷却剤区画23を通る流れの方向は変動し得る。例えば、一部の実施形態において、マニホールドおよび区画を通る流れは並流であり得るものであり、一方で、他の実施形態において、流れ経路のうちの1つまたは複数は向流であり得る。例えば、一部の実施形態において、アノード区画21を通る燃料の流れは、カソード区画19を通る酸化剤の流れに対して向流であり得る。流体マニホールド31A、31Bは、通路およびポートを介してMEA18に流体接続し得る。特定のマニホールド、通路、およびポートが、本明細書において「フィード」、「排出」、「入口」または「出口」として識別されることがあるが、これらの名称は、流れの方向に基づいて決定され得るものであり、流れの方向は、切り替えられ得るということが理解されるべきである。流れの方向を変化させることは、これらの名称を変化させ得る。
【0024】
[029]図2は、隣接する燃料セル10の一部分の部分的に分解された側面斜視図を示す。例えば、図2は、1つの燃料セル10AのMEA18A、GDL24A、およびアノードプレート22、ならびにさらには、隣接する燃料セル10Bのカソードプレート20、カソード流れ場28、MEA18B、およびGDL24Bを示す。アノード区画21は、MEA18Aとアノードプレート22との間に形成され得る。冷却剤区画23は、隣接するアノードプレート22とカソードプレート20との間に形成され得る。カソード区画19は、カソードプレート20とMEA18Bとの間に形成され得る。カソード区画19は、カソード流れ場28を内包し得る。図2において示されるように、燃料セル10は、さらには上部および下部流体マニホールドと呼称され得る、流体マニホールド31A、31Bを含み得る。流体マニホールド31Aおよび31Bは、長手方向軸5に沿って延び得る。MEA18A、18Bは、PEM16の周りにサブガスケット202を備え得る。サブガスケット202は、プラスチックから作製され得る。所与のMEA(例えば、MEA18A)のサブガスケット202は、アノード区画21の中の燃料が、MEA(例えば、MEA18A)の他方の側のカソード区画19(図示せず)内へとリークすることを防止し得る。
【0025】
[030]図3は、例示的な実施形態による、アノードプレート22の正面図である。図3において可視の側は、MEA18のアノード側(すなわち、アノード触媒層14およびガス拡散層26)に面し、アノード区画21の1つの側を規定するように構成される側である(例えば、図1および2を確認されたい)。アノードプレート22は、いろいろなセクションを含み得る。これらのセクションは、例えば、第1のマニホールドセクション31Aおよび第2のマニホールドセクション31B、第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70などの分配チャネルセクション、ならびに、アノード流れ場30を含み得る。図3において示されるように、アノードプレート22は、第1のマニホールドセクション31A内に、アノードフィードマニホールド32と、カソード排出マニホールド54と、冷却剤フィードマニホールド56とを含み得るものであり、一方で、第2のマニホールドセクション31Bは、アノード排出マニホールド42と、カソードフィードマニホールド44と、冷却剤排出マニホールド62とを含み得る。各々のマニホールドに対する入口および出口の名称は、例えば、燃料セル10を通る燃料、酸化剤、または冷却剤流体流れの、それぞれの流れ方向を切り替えることにより切り替えられ得るということが理解されるべきである。
【0026】
[031]各々のマニホールドの断面積は変動し得る。例えば、図3において示されるように、カソードフィードおよび排出マニホールド44、54は、冷却剤フィードおよび排出マニホールド56、62より大きい断面積を有し得るものであり、一方で、冷却剤フィードおよび排出マニホールド56、62は、アノードフィードおよび排出マニホールド32、42より大きい断面積を有し得る。各々の通路の断面積は、例えば、セルの数、ピークパワー動作状況においての電流密度、反応物の設計化学量論、入口冷却剤温度と出口冷却剤温度との間の差、個々のセルの流れ抵抗、活性区域のサイズ、流体圧力、および、流体流れレートを含む、種々の変数に基づいて決定され得る。1つまたは複数の通路の断面積は、高い流体流れレートの間などの、電気化学セルスタックの長さに沿った流体圧力変動を最小化するようにサイズ設定され得る。
【0027】
[032]第1のマニホールドセクション31Aおよび第2のマニホールドセクション31Bの中のマニホールドの配置構成が、さらには変動し得る。図3において示されるように、マニホールドの配置構成は、第1のマニホールドセクション31Aと、第2のマニホールドセクション31Bとの間で異なり得る。1つの例解的な例において、図3において示されるように、冷却剤フィードマニホールド56は、アノードフィードマニホールド32と、カソード排出マニホールド54との間に配置され得るものであり、冷却剤排出マニホールド62は、アノード排出マニホールド42と、カソードフィードマニホールド44との間に配置され得る。一部の実施形態において、カソード排出マニホールド54は、冷却剤フィードマニホールド56の左であり得るものであり、アノードフィードマニホールド32は、冷却剤フィードマニホールド56の右であり得るものであり、一方で、カソードフィードマニホールド44は、冷却剤排出マニホールド62の右であり得るものであり、アノード排出マニホールド42は、冷却剤排出マニホールド62の左であり得る。第1のマニホールドセクション31Aと、第2のマニホールドセクション31Bとの間で、冷却剤マニホールドに相対的なアノードおよびカソードマニホールドの配置を取り替えることは、直線的横断流れよりむしろ、対角線交差向流の流れ、すなわち「z流れ」を助長し得る。対角線交差向流の流れは、アノード区画21およびカソード区画19内の、燃料および酸化剤の改善された一様な分配を提供し得るものであり、そのことは、燃料セル性能を改善し得る。性能は、対角線交差向流の流れが、利用される活性区域を最大化し得るので、改善され得る。z流れパターンにおいて、1つまたは複数の反応物に対する入口から出口までのストリーム経路距離は、流れ経路に関係なく、実質的に一様であり得る。この対称性は、流体が、流れ場の全体を通して一様に分布し流れることを結果的に生じさせ得る。流れ場30の全体を通しての一様な流れ(図3に関して下記でさらに論考される)は、反応物組成物および冷却剤温度の、より一様な、および/または線形の勾配を結果的に生じさせ得るものであり、そのことは、セル温度の一様な、および/または線形の勾配を結果的に生じさせ得る。このことは、より高い性能、および/または、セルの間の性能においてのより低い相違を結果的に生じさせ得る。
【0028】
[033]第1の流体マニホールド31Aおよび第2の流体マニホールド31Bの中央においての冷却剤マニホールド56、62の配置は、冷却剤区画の中央領域が、最も多い冷却剤流体流れを受けることを結果的に生じさせ得る。冷却剤区画の中央領域は、燃料セル10の活性区域の中央領域に対応し得る。燃料セル10の活性区域の中央領域は、増大される熱発生、および/または、活性区域の他の領域より高い動作温度に対する傾向に遭遇し得る。燃料セル10の側部は、周囲冷却により冷却され得る。一部の実施形態において、より高い温度で動作する傾向があり得る燃料セル10の領域は、最も多い冷却剤流体流れを受ける領域と対応し得る。
【0029】
[034]図3において示されるように、第1および第2のマニホールドセクション31A、31Bとアノード流れ場30との間に配設されるのが、第1および第2のアノード分配チャネル68、70である。第1のアノード分配チャネル68は、アノードフィードマニホールド32から供給される燃料を、アノード入口ポート36を経て、アノード流れ場30に分配するように構成され得る。第2のアノード分配チャネル70は、アノード流れ場30からの燃料(例えば、未反応の燃料)を収集し、燃料を、アノード出口ポート38を通し、アノード排出マニホールド42に導くように構成され得る。第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70は、MEA18とアノードプレート22との間のサンドイッチであり、MEA18およびアノードプレート22により規定され得る。第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70の周辺部は、図3において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。表面ガスケット43は、シリコーン、Viton、Buna、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子もしくはエラストマ材料、または、任意の他の適した封止材料から作製され得る。ガスケットの断面形状は、矩形、三角形、半円形、多歯(三角形)、または放物線状であり得る。形状は、容認可能なリークレート、動作圧力、許容誤差編成、または、他の有意な封止設計パラメータにより決定され得る。表面ガスケット43は、射出成形、圧縮成形、ピックアンドプレース、ロボットディスペンシングなどの任意の知られている方法によって付与され得るものであり、成形プロセスを通して、または、感圧もしくは感温接着剤の助力によって、直接的に接着され得る。表面ガスケット43の硬化は、熱硬化、紫外光硬化、または湿度硬化などの知られているプロセスにより成し遂げられ得る。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネル68の幅、および、第2のアノード分配チャネル70の幅は、アノード流れ場30の幅に概して等しくあり得る。
【0030】
[035]第1のアノード分配チャネル68は、アノード入口ポート36を通して供給される燃料が、第1のアノード分配チャネル68にわたって分配され、複数の開口部74を通してアノード流れ場30に導かれ得るように構成され得る。一部の実施形態において、各々の開口部74は、第1のアノード分配チャネル68の中で燃料へのいくらかの背圧を生成するためのオリフィスとして構成され得る。背圧は、第1のアノード分配チャネル68の中での燃料の分配を助長し得るものであり、以て、第1のアノード分配チャネル68が燃料によって十二分に充満させられるということを確実にする。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネル68を十二分に充満させることは、燃料が、開口部74の実質的にすべてを通ってアノード流れ場30の実質的にすべてのチャネルに送達されることを可能にし得る。一部の実施形態において、第1のアノード分配チャネル68を十二分に充満させることは、アノード流れ場30を通る最も少ない抵抗の経路に沿って燃料の流れを短絡させることを防止し、または、その短絡させることのリスクを低減し得るものであり、その短絡させることは、利用されている活性区域の低減に起因して、燃料セル10の性能を低減することがある。一部の実施形態において、オリフィス開口部74は、第1のアノード分配チャネル68を十二分に充満させることを確実にするために必要とされる最小量の背圧を可能にするようにサイズ設定され得る。図3において例解されるように、第2のアノード分配チャネル70は、第1のアノード分配チャネル68と同じに構成され得るものであり、複数のオリフィス形状の開口部74が、アノード流れ場30のチャネル、および、第2のアノード分配チャネル70を流体接続する。開口部74は、アノード流れ場30内の対応するチャネルより小さい断面積を有し得る。アノード流れ場30内のチャネルは、直線的経路として示されるが、波状またはジグザグ経路であってもよい。アノード流れ場30内のチャネルは、概して正方形、半円形、放物線状、または、任意の他の形状である断面積を有する。
【0031】
[036]接合の間の燃料セル10の圧縮、および、動作の間維持される圧縮された状態が、分配チャネルの中の流れ経路完全性を損なうことがある。例えば、燃料セル10の圧縮は、分配チャネルの体積が減少することを引き起こし得るものであり、そのことは、燃料セル10を通しての燃料、酸化剤、および冷却剤の流れを限定し、燃料セル10にわたって圧力降下を増大することがある。燃料セル10が圧縮されるときに、第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70の縮小または崩壊を、防止または最小化するために、第1のアノード分配チャネル68および/または第2のアノード分配チャネル70は、一部の実施形態において、分配チャネルの全体を通して広げられる複数の支持特徴部76を含み得る。支持特徴部76は、アノードプレート22の統合された特徴部として形成され得る。支持特徴部76は、第1のアノード分配チャネル68および第2のアノード分配チャネル70の全体を通して均一に隔置され得る。
【0032】
[037]図4は、例示的な実施形態による、カソードプレート20の正面図である。図4において可視の側は、隣接するアノードプレート22に面するように構成される側である(例えば、図2を確認されたい)。カソードプレート20は、アノードプレート22に類して、第1のマニホールドセクション31Aと、第2のマニホールドセクション31Bとを含み得る。図4において示されるように、カソードプレートプレート20は、第1のマニホールドセクション31A内に、アノードフィードマニホールド32と、カソード排出マニホールド54と、冷却剤フィードマニホールド56とを含み得るものであり、一方で、第2のマニホールドセクション31Bは、アノード排出マニホールド42と、カソードフィードマニホールド44と、冷却剤排出マニホールド62とを含み得る。各々のマニホールドに対する「入口」または「出口」の名称は、例えば、燃料セル10を通る燃料、酸化剤、または冷却剤流体の流れ方向を切り替えることにより切り替えられ得るということが理解されるべきである。
【0033】
[038]カソードプレート20は、カソード区画19およびカソード流れ場28を、カソード入口通路46を介してカソードフィードマニホールド44と流体接続するように構成される、複数のカソード入口ポート48を含み得る。カソードプレート20は、さらには、カソード区画19およびカソード流れ場28を、カソード出口通路52を介してカソード排出マニホールド54と流体接続するように構成される、複数のカソード出口ポート50を含み得る。カソード入口および出口通路46、52は、隣接する燃料セル10のアノードプレート22とカソードプレート20との間に位置し得る。カソード入口および出口通路46、52、ならびに、カソードフィードおよび排出マニホールド44、54の周辺部は、図4において例解されるように、表面ガスケット43により封止され得る。
【0034】
[039]カソード入口および出口ポート48、50は、図4において例解されるように、概して矩形の形状のものであり得る。カソードプレート20は、図4において例解されるように、互いに概して垂直に配置構成され得る少なくとも2つの - 例えば、一部の実施形態において、3つの - カソード入口ポート48を有するように構成され得る。カソードプレート20は、図4において例解されるように、互いに概して垂直に配置構成される少なくとも2つのカソード出口ポート50を有するように構成され得る。カソードプレート20は、カソード入口通路46の反対の両端部において配置される少なくとも1つのカソード入口ポート48を有するように構成され得る。カソードプレート20は、カソード出口通路52の反対の両端部において配置される少なくとも1つのカソード出口ポート50を有するように構成され得る。カソードプレートは、カソード入口通路46の1つの端部において配置される2つのカソード入口ポート48と、反対の端部において配置される1つのカソード入口ポート48とを有するように構成され得る。1つの端部において配置される2つのカソード入口ポート48は、互いに概して平行であり、カソード入口通路46の反対の端部において配置されるカソード入口通路46に概して垂直であり得る。本明細書において説明されるような、カソード入口ポート48の形状および配置構成は、酸化剤の、それがカソード区画19内へと流れる際の分配を助長し得る。一部の実施形態において、ポートの面積に対するポートの周長の比率を増大することは、ポートにわたる圧力降下を減少し得る。一部の実施形態において、ポートの垂直な配置構成は、ポートにわたる、より低い圧力降下を結果的に生じさせ得る。
【0035】
[040]複数のカソード入口ポート48の総合的な入口面積は、カソード出口ポート50の総合的な出口面積より大であり得る。総合的な入口面積未満の総合的な出口面積を有するカソード出口ポート50は、カソード区画19およびカソード流れ場28を通る酸化剤流れへの背圧を生成することができる。そのような背圧は、カソード区画を横断する酸化剤の配分を助長し得る。
【0036】
[041]図4において示されるように、カソードプレート20は、表面特徴部、例えば、カソード流れ場28の側部に沿って、カソードプレート20からMEA18の方に、外に突出するカソード流れ場境界88を含み得る(例えば、図2を確認されたい)。図4において示されるように、カソード流れ場境界88は、カソードプレート20の反対の両側部に沿って、第1の流体マニホールド31Aと、第2の流体マニホールド31Bとの間にまたがり得る。カソード流れ場境界88は、カソード流れ場28を通ってカソード触媒層12に流れることよりむしろ、カソード流れ場28の外側に沿って流れることにより、カソード流れ場28およびカソード触媒層12を迂回する酸化剤の流れを防止する、または、その流れの量を低減するように構成され得る。例えば、カソード流れ場境界88は、カソード流れ場28の各々の側部で境界壁の役割を果たすことができ、以て、カソード流れ場28を通る酸化剤流れを強制する。カソードプレート20は、カソード流れ場境界88の間の距離がカソード流れ場28の幅にほぼ等しいように構成され得る。カソード流れ場境界88は、カソード流れ場28の深さに等しい量で、カソードプレート20から突出するように構成され得る。カソード流れ場境界88は、図4において示されるように、丸みを付けられた、または面取りされた外方隅部を伴う、概して矩形の形状のものであり得る。カソード流れ場境界88は、流体が、実質的に開放の流れ面積を経由して、カソード流れ場28の長さに沿って流れることを防止するために、カソード流れ場28の縁部に沿って障壁を提供するように配置構成され得る。カソード流れ場境界88は、(図4において示されるように)カソードプレート20内へと形成され得るものであり、および/または、第2の材料をカソードプレート20に付与することにより形成され得る(例えば、プレートにボンディングされる、高分子またはエラストマ)。
【0037】
[042]アノードプレート22および/またはカソードプレート20は、316Lステンレス鋼などの合金から製造され得る。一部の実施形態において、合金は、コーティングされない316Lステンレス鋼合金などのコーティングされない合金、または、316、304、304L、および/もしくは310などの、別のコーティングされないステンレス鋼合金であり得る。アノードプレート22および/またはカソードプレート20の、1つまたは複数の表面は、1つまたは複数のプレート表面と、他の表面との間の、より低い電気接触抵抗を手助けし得る表面粗さを有し得る。1つまたは複数のプレート表面と、他の表面との間の、より低い電気接触抵抗は、化学反応が燃料セルスタック11の中で起こるレートを増大し得る。化学反応が燃料セルスタック11の中で起こるレートを増大することは、燃料セルスタック11の電流および/または電圧能力を増大し得る。MEA18A上のGDL26と、アノードプレート22との間の、より低い電気接触抵抗は、アノード触媒層14からGDL26を通ってアノードプレート22への電子の流れを増大し得る。アノードプレート22とカソードプレート20との間の、より低い電気接触抵抗は、隣接するアノードプレート22とカソードプレート20との間の電子の流れを増大し得る。カソードプレート20とカソード流れ場28との間の、より低い電気接触抵抗は、カソードプレート20からカソード流れ場28への電子の流れを増大し得る。カソード流れ場への電子の増大流れは、MEA18B上のGDL24からの水素イオンが、水分子へと、酸素原子および電子と組み合わさるレートを増大し得る。
【0038】
[043]アノードプレート22および/またはカソードプレート20の表面粗さは、例えば、1つまたは複数の前に述べられたインターフェイスにおいてを含めて、プレートの表面にわたって実質的に一様であり得る。一部の実施形態において、アノードプレート22および/またはカソードプレート20の異なる表面は、異なる粗さパラメータを有し得る。一部の実施形態において、アノードプレート22および/またはカソードプレート20の、1つまたは複数の表面の、1つまたは複数の一部分は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.254μm(10μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.381μm(15μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.508μm(20μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.635μm(25μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.762μm(30μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.762μm(30μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.635μm(25μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.508μm(20μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.381μm(15μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.254μm(10μインチ)、約0.254μm(10μインチ)から約0.762μm(30μインチ)、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)、約0.254μm(10μインチ)から約0.635μm(25μインチ)、約0.381μm(15μインチ)から約0.508μm(20μインチ)、約0.4064μm(16μインチ)から約0.4826μm(19μインチ)、約0.4318μm(17μインチ)から約0.4572μm(18μインチ)、約0.4445μm(17.5μインチ)から約0.4699μm(18.5μインチ)、約0.4445μm(17.5μインチ)から約0.4572μm(18μインチ)、約0.4445μm(17.5μインチ)、約0.4572μm(18μインチ)、または約0.4699μm(18.5μインチ)の範囲に及ぶ算術平均粗さを有し得る。表面粗さは、例えば、形成する前、間、または後の、アノードプレート22および/またはカソードプレート20の、スタンピング、エッチング、研磨、または圧延加工を含む、種々の適した方法により生成され得る。一部の実施形態において、例えば、表面性状がアノードプレート22および/またはカソードプレート20内へとスタンピングされ得る場合、前に述べられたインターフェイスは、アノードプレート22および/またはカソードプレート20の隆起させられた特徴部(例えば、高い点)において一般的には起こるので、隆起させられた特徴部に対応する表面性状を伴って構成されるダイが利用され得る。このことは、工具複雑さを低減するのに有利であり得る。
【0039】
[044]一部の実施形態において、アノードプレート22および/またはカソードプレート20のすべての表面は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.254μm(10μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.381μm(15μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.508μm(20μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.635μm(25μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.762μm(30μインチ)から約0.889μm(35μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.762μm(30μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.635μm(25μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.508μm(20μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.381μm(15μインチ)、約0.127μm(5μインチ)から約0.254μm(10μインチ)、約0.254μm(10μインチ)から約0.762μm(30μインチ)、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)、約0.254μm(10μインチ)から約0.635μm(25μインチ)、約0.381μm(15μインチ)から約0.508μm(20μインチ)、約0.4064μm(16μインチ)から約0.4826μm(19μインチ)、約0.4318μm(17μインチ)から約0.4572μm(18μインチ)、約0.4445μm(17.5μインチ)から約0.4699μm(18.5μインチ)、約0.4445から約0.4572μm(約17.5から約18μインチ)、約0.4445μm(17.5μインチ)、約0.4572μm(18μインチ)、または約0.4699μm(18.5μインチ)の範囲に及ぶ算術平均粗さを有し得る。例えば、アノードプレート22の1つの側の表面は、約0.3302μm(13μインチ)から約0.7112μm(28μインチ)の算術平均粗さを有し得る。一部の実施形態において、1つまたは複数のプレート表面は、約0.127μm(5μインチ)から約0.889μm(35μインチ)の、1つまたは複数の算術平均粗さを有し得る。本明細書において開示される表面粗さ値は、標準スタイラス - 先端部半径:2μm、先端部角度:60°を使用して、JIS B0601-2001によって測定され得る。
【0040】
[045]図5は、例示的な実施形態による、カソード流れ場28の正面図である。図5において可視の側は、隣接するカソードプレート20に面するように構成される側である(例えば、図2を確認されたい)。カソード流れ場28は、多孔質構造、特に、多孔質3次元ネットワーク構造を有する多孔質金属製発泡体構造を含み得る。多孔質構造は、2つの反対向きの表面を伴うシート形状のものであり得る。多孔質構造は、2つの反対向きの表面を伴うシート形状のものであり得る。多孔質構造は、スクリーン、エキスパンデッドメタルメッシュ、および/または、穴あけ加工された金属シートであり得る。一部の実施形態において、多孔質金属製発泡体構造は、約50μmから約500μmの平均孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、電気化学セルスタック内の第1の電気化学セルの多孔質構造の平均孔サイズは、電気化学セルスタック内の少なくとも1つの他の多孔質構造の、多孔質構造の平均孔サイズより約5%から約50%大であり得る。カソード流れ場28は、カソードプレート20に面する多孔質金属製発泡体構造の表面内の凹所に据えられる、第1のカソード分配チャネル90と、第2のカソード分配チャネル92とを含み得る。カソード流れ場28は、約0.2mmから約1.5mmの厚さを有し得るものであり、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92は、構造の厚さの約10%から構造厚さの約75%だけ、カソード流れ場内の凹所に据えられ得る。
【0041】
[046]第1のカソード分配チャネル90は、カソード流れ場28の底部縁部に沿って、カソード流れ場28の一方の側から他方の側に概して延び得る。第2のカソード分配チャネル92は、カソード流れ場28の頂部縁部に沿って、カソード流れ場28の一方の側から他方の側に概して延び得る。カソード流れ場28がカソードプレート20に隣接して配置されるとき、カソード入口ポート48は、第1のカソード分配チャネル90と位置合わせされ得るものであり、カソード出口ポート50は、第2のカソード分配チャネル92と位置合わせされ得る。
【0042】
[047]カソード流れ場28は、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92の全体を通して形成される複数の支持特徴部94を含み得る。支持特徴部94は、概して円柱形、ディンプル形状のもの、または、他の適した形状であり得る。1つまたは複数の支持特徴部94の高さは、第1のカソード分配チャネル90および/または第2のカソード分配チャネル92の凹所深さにほぼ等しくあり得る。第1のカソード分配チャネル90、第2のカソード分配チャネル92、および支持特徴部94は、カソード流れ場28を形成する多孔質金属製発泡体構造を、スタンピングする、圧延加工する、または、他の形で塑性変形させることにより形成され得る。
【0043】
[048]第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92は、酸化剤が多孔質金属製発泡体構造の孔内へと流れる前に沿って流れるための開放流れ経路を提供することにより、カソード流れ場28の幅に沿った酸化剤の一様な流れ分配を助長するように構成され得る。支持特徴部94は、第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92内へのカソードプレート20の変形またはたわみを、防止または低減することにより、燃料セル10が圧縮されるときに、第1のカソード分配チャネル90および第2のカソード分配チャネル92により提供される開放流れ経路を維持するために、適切な支持を提供するように構成され得る。支持特徴部94は、電気化学コールスタックの機械的圧縮の間の支持を提供し得る。
【0044】
[049]カソード流れ場28を作り上げる多孔質構造は、1つまたは複数の、金属および/または合金を含み得る。例えば、多孔質構造は、少なくとも、ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)(例えば、NiCr)、または、ニッケル、スズ(Sn)、およびクロム(例えば、NiSnCr)の組合せを含み得る。多孔質構造のNiCr実施形態に対して、クロムの質量による濃縮物は、約20%から40%の範囲に及ぶことができ、一方で、ニッケルは、残りの残量 - 60%から80%を占め得る。多孔質構造のNiSnCr実施形態に対して、クロムの濃度は、約3%から6%の範囲に及ぶことができ、スズの濃度は、約10%から20%の範囲に及ぶことができ、一方で、ニッケルは、残量 - 74%から87%を占め得る。多孔質構造は、チタンまたは鋼を含み得る。
【0045】
[050]一部の実施形態において、多孔質構造の少なくとも1つの表面は、約3質量%から約50質量%のクロム濃度を含む。例えば、カソード流れ場28を形成する多孔質構造の、1つまたは両方の表面のクロム濃度は、約3質量%から約50質量%、約5質量%から約40質量%、または、約7質量%から約40質量%の範囲に及び得る。多孔質金属体の表面のクロム濃度を増大することは、酸性環境において多孔質構造の耐食性を増大し得る。例えば、カソード流れ場28を形成する多孔質金属体の表面のうちの少なくとも1つが、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有するとき、多孔質金属体に隣接するバイポーラプレートは、カソードプレート20においての実質的に酸性の環境において高耐食性であり得る。本明細書において説明されるような多孔質構造により提供され得る耐食性は、カソードプレート20が、コーティングされないステンレス鋼から形成されることを可能にし得る。
【0046】
[051]一部の実施形態において、多孔質構造の一方の表面は、多孔質構造の他方の表面より高いクロム濃度を有し得る。そのような実例において、より高いクロム濃度を有する表面は、より高耐食性であり得る。より高いクロム濃度を有する表面は、MEA18に面するように配置構成され得る。一部の実施形態において、多孔質構造の、より高耐食性の表面は、約3質量%から約50質量%の範囲に及ぶクロム濃度を有し得るものであり、一方で、金属多孔質構造の、より少ない耐食性表面は、約3質量%クロム未満のクロム濃度を有し得る。
【0047】
[052]多孔質構造は、1つまたは複数の電気めっきプロセスにより形成され得る。例えば、樹脂成形体が、初期に、3次元ネットワーク構造に対する基板として使用され得る。樹脂成形体は、ポリウレタン、メラミン、ポリプロピレン、ポリエチレン、または類するもののうちの、1つまたは複数を含み得る。樹脂成形体は、その3次元ネットワーク構造内に孔を含み得る。一部の実施形態において、樹脂成形体は、約80%から約98%の空隙率を有し得るものであり、約50μmから約500μmの孔サイズを有し得る。一部の実施形態において、樹脂成形体は、約150μmから約5,000μm、約200μmから2,000μm、または、約300μmから約1,200μmの厚さを有し得る。
【0048】
[053]多孔質構造を形成するために、金属層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。多孔質構造のNiCr実施形態に対して、例えば、ニッケル層およびクロム層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。多孔質構造のNiSnCr実施形態に対して、例えば、ニッケル層、スズ層、およびクロム層が、樹脂成形体上へとめっきされ得る。樹脂成形体は、ニッケル粒子、スズ粒子、および/または炭素粒子などの伝導性金属の、無電解めっき、蒸気堆積、スパッタリング、および/または塗布などの電気的伝導処置を受けさせられ得る。ニッケル層および/またはスズ層が、処置された樹脂成形体の3次元構造またはスケルトンの表面上に電気的にめっきされ得る。例えば、樹脂成形体が伝導性層によってコーティングされるとき、ニッケル層が、電気めっきプロセスによって、樹脂成形体のスケルトン上に形成され得る。ニッケル層が形成される後、スズ層が、引き続いて、別の電気めっきプロセスによって、樹脂成形体のスケルトン上に形成され得る。代替的には、樹脂成形体が伝導性層によってコーティングされるとき、スズ層が最初に電気めっきされ、ニッケル層の電気めっきが後に続き得る。一部の実施形態において、化学蒸気堆積が、クロムを実質的にニッケルの構造に付加するために使用され得る。
【0049】
[054]一部の実施形態において、ニッケル層および/またはスズ層などの、1つまたは複数の金属層が、樹脂成形体のスケルトン上へとめっきされる後、クロム層が、電気めっきプロセスによって付加され得る。クロムめっき層は、多孔質構造の少なくとも1つの表面のクロム濃度が、約3質量%から約50質量%になるように形成され得る。クロムめっき層がめっきされた後、または、ニッケルおよび/もしくはスズめっき層がめっきされる後、多孔質構造は、熱処置により初期の樹脂成形体を除去することにより形成され得る。例えば、多孔質構造は、約900℃から約1300℃の範囲内の温度で、不活性雰囲気、または、還元雰囲気内で加熱され得る。一部の実施形態において、多孔質構造は、ニッケルおよびクロムを含むが、スズを欠くことがある。
【0050】
[055]図6は、例示的な実施形態による、カソード流れ場28の背面図である。図6において可視の側は、隣接するMEA18Bに面するように構成される側である(例えば、図2を確認されたい)。カソード流れ場28の少なくとも1つの側は、MEA18Bを破壊することを防止するために、実質的に平滑であり得る。カソード流れ場28は、例えば、その厚さを低減する、および/または、その側のうちの1つもしくは複数を平滑化するために、圧延ミル内で圧延加工され得る。一部の実施形態において、カソード流れ場28の領域102は、MEA18Bのサブガスケット202を押し得る。一部の実施形態において、カソード流れ場28の領域102は、カソード流れ場28の他の領域より平滑であり得る。カソード流れ場28の領域102を、より平滑にすることは、サブガスケット202を破壊することを防止し得る。領域102は、例えば、領域102が平滑であり得るように、スタンピングダイによって平滑にスタンピングされ得る。領域102は、例えば、平滑にスタンピングされることの代わりに、または、そのことに加えて、それらの領域102の平滑さを増大するために、圧延ミル内で圧延加工プロセスを経ることがある。領域102は、領域102との接触を為す、圧延機の一部分上の、特殊な特徴部を伴う、専用化された圧延ダイを使用して、初期の圧延加工プロセスの間に、カソード流れ場28の他の領域より平滑にされ得る。一部の実施形態において、領域102は、約2.54μm(100μインチ)未満の算術平均粗さを有し得る。結果として、領域102は、流れ場28の後部表面の他の一部分の粗さと異なる粗さを有し得る。一部の実施形態において、流れ場28の、全体の後部表面は、実質的に等しい粗さを有し得る。例えば、一部の実施形態において、流れ場28の、全体の後部側の残りとともに、領域102は、平滑な表面であり得る。流れ場28の、全体の後部表面は、約2.54μm(100μインチ)未満の算術平均粗さを有し得る。
【0051】
[056]上述の説明は、例解の目的のために提示されたものである。その説明は、網羅的ではなく、開示される寸分違わない形式または実施形態に限定されない。実施形態の修正および適合が、本明細書の考察、および、開示される実施形態の実践から明白であろう。
【0052】
[057]なおまた、例解的な実施形態が本明細書において説明されたが、範囲は、本開示に基づく均等な要素、修正、省略、組合せ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)、適合、および/または改変を有する一切の実施形態を含む。特許請求の範囲においての要素は、特許請求の範囲において用いられる文言に基づいて広範に解釈されるべきであり、本明細書において、または、本出願の手続処理の間に説明される例に限定されるべきではなく、それらの例は、非排他的と解されるべきである。さらに、開示される方法のステップは、ステップを並べ替えること、および/または、ステップを挿入もしくは削除することを含む、任意の様式で修正され得る。
【0053】
[058]用語「約」または「近似的に」は、本明細書において使用される際、当業者により決定されるような、個別の値に対する容認可能な誤差範囲の中を意味し、その誤差範囲は、部分的には、どのように値が測定または決定されるか、例えば、測定システムの制限に依存することになる。例えば、「約」は、当技術分野においての慣例によって、1または1を超える標準偏差の中を意味することがある。代替的には、「約」は、所与の値の10%まで、5%まで、および、1%までなど、20%までの範囲を意味することがある。
【0054】
[059]本開示の特徴部および利点は、詳細な明細書から明白であり、かくして、添付される特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲の中に収まる、すべてのシステムおよび方法を包含するということが意図される。本明細書において使用される際、不定冠詞「a」および「an」は、「1つまたは複数の」を意味する。同様に、複数形用語の使用は、その用語が所与の文脈において曖昧さのないものでない限り、必ずしも複数を表象するとは限らない。「および」または「または」などの単語は、別段に具体的に指図されない限り、「および/または」を意味する。さらに、数多くの修正および変更が、本開示を考究することから、たやすく浮かぶことになるので、本開示を、例解および説明される、そのままの構築物および動作に限定することは所望されず、よって、本開示の範囲の中に収まる、すべての適した修正および均等物が、頼むところにされることがある。
【0055】
[060]本開示の他の実施形態が、本明細書の考察、および、本明細書においての本開示の実践から、当業者には明白であろう。本明細書および例は、単に例示的と考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、後に続く特許請求の範囲により指示されるということが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6