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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】ノイズを低下させるための複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241018BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/34
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020555824
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019026863
(87)【国際公開番号】W WO2019200023
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】62/657,226
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520233010
【氏名又は名称】イメリーズ ユーエスエイ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ラウト プラサド
(72)【発明者】
【氏名】ボロルキ マジヤール
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-194743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0001810(US,A1)
【文献】特開2016-108229(JP,A)
【文献】特開2000-129036(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105237850(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103897262(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体の、ノイズを低下させるための使用であって、前記熱可塑性エラストマーが、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性加硫物、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系、熱可塑性コポリエステル又はそれらの組合せから選択され、前記熱可塑性エラストマーが、複合体の全質量に基づいて40~95質量パーセントの量で存在する、前記使用。
【請求項2】
前記ウォラストナイトの粒子サイズメジアン値d50が、1μm~90μmである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ウォラストナイトのBET表面積が、0.2~5.0m2/gである、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ウォラストナイトが、複合体の全質量に基づいて5~50質量パーセントの量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記複合体が、可塑剤、安定剤、衝撃改良剤、充填剤/増量剤、難燃剤、粘着性付与剤、増粘剤/レオロジー改良剤、酸化防止剤、相溶化剤、促進剤またはそれらの組合せから選択される、1種または複数種の成分をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
ノイズ低下材料として使用するための熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体であって、前記熱可塑性エラストマーが、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性加硫物、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系、熱可塑性コポリエステル又はそれらの組合せから選択され、前記熱可塑性エラストマーが、複合体の全質量に基づいて40~95質量パーセントの量で存在する、前記複合体。
【請求項7】
請求項6に記載の熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体を含む物品。
【請求項8】
パネルである、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
押出し、射出成形および/または熱成形により請求項7又は8に記載の物品を製造する方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の使用を含む、ノイズを低下させる方法。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の物品を含む装置。
【請求項12】
エアコンユニット、洗濯機、回転式乾燥機、洗濯機/回転式乾燥機、冷蔵庫、冷凍庫、食器洗浄機、グラインダー、電気掃除機、ヘアドライヤー、ポンプ、コンプレッサー、発電機または芝刈り機である、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
このPCT国際出願は、内容がその全体で参照により本明細書に組み込まれる2018年4月13日出願の米国特許仮出願第62/657,226号の優先権に基づく利益を主張する。
本発明は、ノイズを低下させるための熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体の使用に一般的に関する。本発明は、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイトおよび/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体を含む物品、本発明による物品を作製する方法、および本発明による物品を含む装置にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機、回転式乾燥機、電気掃除機およびエアコンユニットなどの家庭用装置を含む多くの電気装置は、音を発する。騒々しいおよび/または長期にわたるノイズへの曝露は、聴力に有害である場合があり、睡眠を妨げおよび/またはストレスの原因となることもある。そのような装置により発せられるノイズを鎮めるかまたはこのノイズをヒトの耳から遮蔽する材料を見出す必要が、依然として存在する。装置のノイズの低下は、オープンな居住空間が増えている動向と特に関係する。
ノイズ低下のために使用され得る材料を開発する際には多くの課題がある。そのような材料は、広い範囲の要求を満たすことが求められる。特に、適当な材料は、ノイズを生ずる装置に適合する正確な物理的性質を有しながら、異なる周波数および温度にわたってノイズを低下することが求められることもある。これらの要求の1つまたは複数を満たす、ノイズを低下させるための代替的なまたは改善された材料を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、添付の特許請求の範囲で明確にされる。
第1の態様により、ノイズを低下させるための熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体の使用が提供される。
第2の態様により、ノイズ低下の材料として使用するための熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイトが提供される。
第3の態様により、第2の態様による熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイトを含む物品が提供される。
第4の態様により、押出し、射出成形および/または熱成形により第3の態様による物品を製造する方法が提供される。
第5の態様により、第1の態様による使用を含む、ノイズを低下させる方法が提供される。
第6の態様により、第3の態様による物品を含む装置が提供される。
【0004】
本発明のある実施形態は、以下の利点の1つまたは複数を提供することができる:
所望のノイズ低下;
所望のノイズ遮断;
所望の機械的性質;
所望の熱的性質;
所望のレオロジー的性質;
所望の密度;
所望の成形収縮;
所望のコスト。
上述の本発明の態様の特定の1つまたは複数に関して提供された詳細、例および好ましい条件は、本発明の全ての態様に等しく当てはまる。本明細書に記載された実施形態、例および好ましい条件の、それらのあらゆる可能な変形における任意の組合せは、本明細書で他のように示されていない限りまたは前後関係で明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
本発明は、以下の図を参照してさらに例証される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】組成物Aおよび組成物Bについての音響透過損失(sound transmission loss)の結果を描いた図である。
図2】組成物Aおよび組成物Bについてのtanδの結果を描いた図である。
図3】組成物Aおよび組成物Bについての複合体損失係数の結果を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明および図への参照は、本発明の典型的な実施形態に関するものであり、特許請求の範囲を限定するべきものではないことが理解される。
本発明は、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体がノイズ低下剤として有効であるという驚くべき発見に基づく。ウォラストナイトは、化学的にカルシウム、ケイ素および酸素を含む工業用鉱物である。その分子式はCaSiO3であり、その理論的組成は、CaO48.28%およびSiO251.72%からなる。天然のウォラストナイトは、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムなどの微量または少量の種々の金属イオンを含有することもある。
【0007】
本明細書で開示されるウォラストナイトは、ある粒子サイズを有する。粒子サイズは、当業者に現在公知であるかまたは今後発見される任意の適当な測定技法により測定され得る。特に断らない限り、粒子サイズ、および粒子サイズ分布(「psd」)などの粒子サイズの特性は、0.12μm~704μmの粒子サイズ範囲にわたって粒子サイズ分布を決定することができるLeeds and Northrup Microtrac X100レーザー粒子サイズ分析器(Leeds and Northrup、米国ペンシルベニア州North Wales)を使用して測定される。所与の粒子のサイズは、懸濁液を通して沈降する当量直径の球の直径に置き換えて表現され、当量球形直径または「esd」としても知られている。粒子サイズメジアン値、すなわちd50値は、粒子の50質量%がそのd50値未満のesdを有する値である。d10値は、粒子の10質量%がそのd10値未満のesdを有する値である。d90値は、粒子の90質量%がそのd90値未満のesdを有する値である。
ある実施形態では、ウォラストナイトは、約1μm~約90μm、または約3μm~約85μm、または約5μm~約80μm、または約8μm~約75μm、または約10μm~約70μm、または約12μm~約65μm、または約15μm~約60μm、または約17μm~約55μm、または約20μm~約50μm、または約23μm~約45μm、または約25μm~約40μm、または約30μm~約35μmの平均粒子サイズd50を有する。
【0008】
一部の実施形態によるウォラストナイトの形態は、アスペクト比により特徴づけることができる。粒子のアスペクト比は、一般的に粒子の長さ対幅の比を指す。所与の粒子の試料について、アスペクト比は、平均として決定することができる。例えば、一部の実施形態によるウォラストナイト粒子のアスペクト比は、最初に、ウォラストナイト粒子の試料を含むスラリーを標準SEMのステージに堆積させて、乾燥されたスラリーを白金でコートすることにより決定することができる。その後、粒子の像が得られて、粒子の寸法は、例えば、粒子の厚さおよび幅が等しいと仮定された、コンピューターに基づく分析を使用して決定することができる。次に、アスペクト比は、個々の粒子の長さ対幅のアスペクト比の多くの計算(例えば、50の計算)を平均することにより決定することができる。アスペクト比を決定する他の方法も考えられる。
ある実施形態では、ウォラストナイト粒子は、少なくとも2:1のアスペクト比を有することができる。例えば、ウォラストナイト粒子は、少なくとも3:1のアスペクト比、少なくとも4:1のアスペクト比、少なくとも7:1のアスペクト比、少なくとも12:1のアスペクト比、少なくとも15:1のアスペクト比、または少なくとも20:1のアスペクト比を有していてもよい。
【0009】
方法のある実施形態では、ウォラストナイト粒子は、約2μm未満またはそれと等しい、例えば、約1μm未満またはそれと等しいプレート厚さメジアン値を有することができる。一部の実施形態により、ウォラストナイトは、約3~約70μm、または約4~約60μm、または約5~約50μm、または約6~約40μm、または約7~約30μm、または約8~約20μm、または約9~約15μmの範囲のプレート厚さメジアン値を有することができる。プレート厚さメジアン値は、Leeds and Northrup Microtrac X100レーザー粒子サイズ分析器(LeedsおよびNorthrup、米国ペンシルベニア州 North Wales)を使用して測定することができる。
鉱物の表面積は、前記粒子の表面に、前記表面を完全に覆う単分子層を形成するように吸着された窒素の量により、BET方法を使用して測定される(BET方法、AFNOR標準X11-621および622またはISO9277による測定)。
【0010】
ある実施形態では、BET表面積は、約0.2~約5.0m2/g、または約0.4~約4.8m2/g、または約0.6~約4.6m2/g、または約0.8~約4.4m2/g、または約0.6~約4.2m2/g、または約1.0~約4.0m2/g、または約1.2~約3.8m2/g、または約1.4~約3.6m2/g、または約1.6~約3.0m2/g、または約1.7~約2.7m2/g、または約1.8~約2.5m2/g、または約1.9~約2.2m2/gの範囲内である。
本発明による熱可塑性ポリマーは、加熱および冷却されたときにその性質が変化するタイプのプラスチックである。熱可塑性ポリマーは、リンクしていない長いポリマー分子で構成され、一般的に高分子量を有することができる。それらは加熱されたときには軟化および溶融し、一方、冷却されたときにそれらは固まる。この特性は、熱可塑性樹脂が、材料の物理的性質に不利に影響することなく、再成形およびリサイクルされることを可能にする。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「and」および「the」は、本文が明確に他のように指示していない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「熱可塑性ポリマー(a thermoplastic polymer)」、「熱可塑性ポリマー(the thermoplastic polymer)」および「熱可塑性ポリマー(thermoplastic polymer)」は、2種以上の熱可塑性ポリマーを含むポリマーを指すこともできる。同様に、「熱可塑性エラストマー(a thermoplastic elastomer」、「熱可塑性エラストマー(the thermoplastic elastomer)」および「熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer)」は、2種以上の熱可塑性エラストマーを含むポリマーを指すこともできる。
【0012】
熱可塑性ポリマーの例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、熱可塑性デンプンおよびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネートまたはそれらの組合せから選択され得る。ある実施形態では、本発明による熱可塑性ポリマーは、リサイクルされた熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンのリサイクルされたポリマーである。ある実施形態では、本発明による熱可塑性ポリマーは、部分的に、リサイクルされた熱可塑性ポリマーである。
【0013】
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性および弾性体の両方の性質を示す。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性加硫物、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性コポリエステルおよびそれらの組合せから選択され得る。ある実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマーは、リサイクルされた熱可塑性エラストマーである。ある実施形態では、本発明による熱可塑性エラストマーは、部分的にリサイクルされた熱可塑性エラストマーである。
熱硬化性エラストマーを含む熱硬化性ポリマーは、加熱されたときに形状および強度を保持する。熱硬化性ポリマーは、エポキシ樹脂、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリイミド、ポリイソシアヌレート、ビニルエステルから選択され得る。熱硬化性エラストマーは、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンもしくはエチレンプロピレンジエン(EPDM)、シリコーンまたはそれらの組合せから選択され得る。
【0014】
ある実施形態では、熱可塑性ポリマーおよび/または熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリマーおよび/または熱可塑性エラストマーの全質量に基づいて、50質量パーセント以下の熱硬化性ポリマーおよび/もしくは熱硬化性エラストマー、または40質量パーセント以下の熱硬化性ポリマーおよび/もしくは熱硬化性エラストマー、または30質量パーセント以下の熱硬化性ポリマーおよび/もしくは熱硬化性エラストマー、または20質量パーセント以下の熱硬化性ポリマーおよび/もしくは熱硬化性エラストマー、または10質量パーセント以下の熱硬化性ポリマーおよび/もしくは熱硬化性エラストマーを含む。ある実施形態では、熱可塑性ポリマーおよび/または熱可塑性エラストマーは、熱硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性エラストマーを含まない。
本発明による熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体は、熱可塑性ポリマーおよびウォラストナイトを含む複合体材料である。本発明による熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体は、熱可塑性エラストマーおよびウォラストナイトを含む複合体材料である。
【0015】
熱可塑性発泡体は、1種または複数種のガスで熱可塑性ポリマーを膨らませることにより製造される。このようにして、ポリマーは1.5~50倍膨張することができ、例えば15kg/m3~750kg/m3の低密度を有する発泡生成物を生ずる。熱可塑性発泡体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)またはエチレン酢酸ビニルから作製され得る。ある実施形態では、本発明による熱可塑性ポリマーおよび熱可塑性エラストマーは、1種または複数種のガスで処理されず発泡体を形成しない。本発明のある実施形態では、複合体は、熱可塑性発泡体を本質的に含まず、それは、ある例では、熱可塑性発泡体が、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体中に、複合体の全質量に基づいて、0.1質量パーセント未満、または0.5質量パーセント未満、または1.0質量パーセント未満、または1.5質量パーセント未満、または2.0質量パーセント未満、または2.5質量パーセント未満の量で存在することを意味する。
【0016】
ある実施形態では熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体は、ウォラストナイトを、複合体の全質量に基づいて、約5~約50質量パーセント、または約10~約45質量パーセント、または約15~約40質量パーセント、または約20~約35質量パーセント、または約25~約30質量パーセントの量で含む。
ある実施形態では、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体は、熱可塑性ポリマーを、複合体の全質量に基づいて、約40~約95質量パーセント、または約45~約90質量パーセント、または約50~約85質量パーセント、または約55~約80質量パーセント、または約60~約75質量パーセント、または約65~約70質量パーセントの量で含む。
【0017】
ある実施形態では、熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体は、熱可塑性エラストマーを、複合体の全質量に基づいて約40~約95質量パーセント、または約45~約90質量パーセント、または約50~約85質量パーセント、または約55~約80質量パーセント、または約60~約75質量パーセント、または約65~約70質量パーセントの量で含む。
ある実施形態では、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体と熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体との組合せは、熱可塑性ポリマーおよび熱可塑性エラストマーを、複合体の全質量に基づいて、約40~約95質量パーセント、または約45~約90質量パーセント、または約50~約85質量パーセント、または約55~約80質量パーセント、または約60~約75質量パーセント、または約65~約70質量パーセントの量で含む。
【0018】
ある実施形態では、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体は、1種または複数種の成分、例えば、可塑剤、安定剤、衝撃改良剤、充填剤/増量剤、難燃剤、粘着性付与剤、増粘剤/レオロジー改良剤、酸化防止剤、相溶化剤、促進剤などおよびそれらの組合せから選択されるプラスチック添加剤などをさらに含む。プラスチック添加剤は、消泡剤、抗擦過剤、殺生物剤、発泡剤、および、例えば、Plastic Additives Handbook 6th Edition (2009), Zweifel, H., Maier, R., Schiller, M., Hanser Publications中でリストに挙げられた、またはwww.polymer-additives.specialchem.com/selectorsで見出されるその他のプラスチック添加剤を含むが、これらに限定されないリストからも選択することができる。
【0019】
プラスチック添加剤は、相溶化剤、例えば、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン:POLYBOND(登録商標)、Lotryl(登録商標)、Epolene(登録商標)、Fusabond(登録商標)など;レオロジー改良剤、例えば、脂肪酸誘導体のブレンド:Strucktol(登録商標)(例えば、Strucktol(登録商標)RP-11)、Quent(登録商標)(例えば、Quent(登録商標)TPP)、PeroxanTPO、TEGOMER(登録商標)(例えば、TEGOMER(登録商標)P122)、Luperox(登録商標)(例えば、Luperox(登録商標)101PP7.5)など;抗酸化剤、例えば、ANOX(登録商標)(例えば、ANOX(登録商標)BB011)、NAUGARD(登録商標)(例えば、NAUGARD(登録商標)P)、ULTRANOX(登録商標)(例えば、ULTRANOX(登録商標)626)、Irgafos(登録商標)(例えば、Irgafos(登録商標)168)、Irganox(登録商標)(例えば、Irganox(登録商標)1010)などから選択することができる。
【0020】
ノイズ低下は、20Hz~20000Hzの範囲内の周波数などの音波の強度が低下したときに、ヒトの耳により知覚される。この周波数の範囲内の音または振動におけるレベルの低下が望ましい。例えば、食器洗浄機については、音の周波数は200~800Hz以内である。
ノイズ低下は、例えば、音の強度/圧の低下として規定され得る。ある例では、音の強度/圧の低下は、吸収および/またはバリア処理により達成され得る。発泡体の使用などの吸収処理では、音波の内反射が、音のエネルギーの熱への変換を可能にする。バリア処理では、波が材料の高い表面密度に基づいて表面から反射される。
【0021】
ノイズ低下は、振動の低下としても規定され得る。ある例では、振動の低下は、減衰および/または隔離により達成され得る。減衰様式において、振動エネルギーは、材料により吸収されて熱またはエネルギーの他の形態に変換される。隔離処理は、振動を生ずる装置/部分を、装置の残余部分から単純に隔離して、振動が他の部分に伝わることを防止する。
ある実施形態では、本発明による物品は、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体を含む。そのような物品は、押出し、射出成形および/または熱成形を使用して製造することができる。ある実施形態では、物品は、囲い、防音パーティションおよび/または懸垂バッフルとして使用され得る、パネルであることもある。
【0022】
パネルなどの物品は、本発明による装置を包み込むために使用することができる。装置は、ノイズを生じ得る。装置は、エアコンユニット、洗濯機、回転式乾燥機、洗濯機/回転式乾燥機、冷蔵庫、冷凍庫、食器洗浄機、グラインダー、電気掃除機、ヘアドライヤー、ポンプ、コンプレッサー、発電機、芝刈り機、自動車、建設設備、庭の器具または農業設備から選択することができる。
【0023】
ある実施形態では、熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体を含む物品は、以下の効果の1つまたは複数:
ノイズの低下;
1つまたは複数の周波数におけるノイズの低下;
1つまたは複数の周波数における音の低下;
1つまたは複数の周波数における振動の低下;
適当な引張り強度;
適当な耐熱性;
適当なIzod衝撃;
適当な剛性;
適当な部分密度および成形収縮;
化合物の適当な溶融流速。
【0024】
疑義を避けるために、本出願は、以下の番号付けされたパラグラフに記載された主題に関する。
1.熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体の、ノイズを低下させるための使用。
2.ウォラストナイトが粒子サイズメジアン値d50を約1μm~約90μmの範囲内に有する、パラグラフ番号1に記載の使用。
3.ウォラストナイト粒子が少なくとも2:1のアスペクト比を有する、パラグラフ番号1またはパラグラフ番号2に記載の使用
4.ウォラストナイトがBET表面積を、約0.2~約5.0m2/gの範囲内に有する、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
5.ウォラストナイトが、複合体の全質量に基づいて約5~約50質量パーセントの量で存在する、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
6.熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、熱可塑性デンプンまたはそれらの組合せから選択される、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
7.熱可塑性エラストマーが、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性加硫物、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性コポリエステルまたはそれらの組合せから選択される、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
8.熱可塑性ポリマーおよび/または熱可塑性エラストマーが、複合体の全質量に基づいて約40~約95質量パーセントの量で存在する、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
9.複合体が、可塑剤、安定剤、衝撃改良剤、充填剤/増量剤、難燃剤、粘着性付与剤、増粘剤/レオロジー改良剤、酸化防止剤、相溶化剤、促進剤またはそれらの組合せから選択される1種または複数種の成分をさらに含む、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
10.複合体が熱可塑性発泡体を本質的に含まない、先行するパラグラフ番号のいずれか1つに記載の使用。
11.複合体が、熱可塑性発泡体を、複合体の全質量に基づいて0.1質量パーセント未満の量で含む、パラグラフ番号10に記載の使用。
【0025】
12.ノイズ低下材料として使用するための熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
13.ウォラストナイトが、粒子サイズメジアン値d50を約1μm~約90μmの範囲内に有する、パラグラフ番号12に記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
14.ウォラストナイト粒子が少なくとも2:1のアスペクト比を有する、パラグラフ番号12またはパラグラフ番号13に記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
15.ウォラストナイトがBET表面積を、約0.2~約5.0m2/gの範囲内に有する、パラグラフ番号12~14のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
16.ウォラストナイトが、複合体の全質量に基づいて約5~約50質量パーセントの量で存在する、パラグラフ番号12~15のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
17.熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、熱可塑性デンプンまたはそれらの組合せから選択される、パラグラフ番号12~16のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
18.熱可塑性エラストマーが、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性加硫物、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性コポリエステルまたはそれらの組合せから選択される、パラグラフ番号12~17のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
19.熱可塑性ポリマーおよび/または熱可塑性エラストマーが、複合体の全質量に基づいて約40~約95質量パーセントの量で存在する、パラグラフ番号12~18のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
20.複合体が、可塑剤、安定剤、衝撃改良剤、充填剤/増量剤、難燃剤、粘着性付与剤、増粘剤/レオロジー改良剤、酸化防止剤、相溶化剤、促進剤またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の成分をさらに含む、パラグラフ番号12~19のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
21.熱可塑性発泡体を本質的に含まない、パラグラフ番号12~20のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体。
22.複合体が、熱可塑性発泡体を、複合体の全質量に基づいて0.1質量パーセント未満の量で含む、パラグラフ番号21に記載の使用。
23.パラグラフ番号12~22のいずれか1つに記載の熱可塑性ポリマー-ウォラストナイト複合体および/または熱可塑性エラストマー-ウォラストナイト複合体を含む物品。
24.パネルである、パラグラフ番号23の物品。
25.押出し、射出成形および/または熱成形により、パラグラフ番号23またはパラグラフ番号24に記載の物品を製造する方法。
26.パラグラフ番号1~11に記載の使用を含む、ノイズを低下させる方法。
27.パラグラフ番号23またはパラグラフ番号24に記載の物品を含む装置。
28.エアコンユニット、洗濯機、回転式乾燥機、洗濯機/回転式乾燥機、冷蔵庫、冷凍庫、食器洗浄機、グラインダー、電気掃除機、ヘアドライヤー、ポンプ、コンプレッサー、発電機または芝刈り機である、パラグラフ番号27に記載の装置。
【実施例
【0026】
表2における条件を使用し、2連式スクリュー押出しプロセスを使用して表1に示された成分を混ぜ合わせることにより、複合体A~Dのペレットを得た。
【表1】

【表2】
【0027】
下で説明するASTM試験の各々のための標準検体を得るために、66トンArburg Allrounder 370E600-170射出成形機を使用する射出成形プロセスでペレットを使用した。全ての化合物は、射出成形に先立って、コンベクションオーブン内で80℃で乾燥した。表3は、この検討で使用した射出成形パラメーターを示す。電気駆動射出成形機のための射出圧も、凡そ等しい液圧の圧力と共に括弧内に示す。
【0028】
【表3】

寸法10インチ×10インチの圧縮成形された試験検体を、SAE J1400(2010年8月)に従って音響透過損失を試験するために使用した。射出成形された検体を、tanδおよび複合体損失係数の測定のために使用した。
【0029】
tanδは、40mmの3点屈曲治具を備えたTA Instruments RSA G2を使用するDynamic機械的分析を使用して、0~80℃の温度範囲にわたって、0.05%の引張り歪みを使用して10ラジアン/秒の角周波数で測定した。試験検体の寸法は、およそ12.6×3.1×54mmであった。
複合体損失係数は、ISO 16940(2008)を使用して、23℃および60℃で寸法125mm×12.5mmの検体を使用して測定した(振動減衰/中心点試験とも称される)。
組成物AおよびBについての音響透過損失試験、tanδ試験および複合体損失係数試験の結果は、図1図2および図3で、それぞれ見ることができる。3種の全ての試験は、組成物A(比較例)より優れた組成物B(本発明の例)の性能を実証している。
【0030】
図1で見られるように、組成物Bは、音響透過試験で、特に250Hz~4,000Hzの間の1/3オクターブ帯の周波数において、組成物Aより性能が優れていた。図2は、tanδにより測定された組成物Aおよび組成物Bの減衰性能を示す。本発明による組成物Bは、温度の範囲で、より高いtanδを有して、比較例の組成物Aより再び性能が優れていた。図3は、組成物Aおよび組成物Bの両方について、多くの周波数(200、400および800Hz)における複合体損失係数を示す。これらの例の各々において、本発明による組成物Bは、比較例の組成物Aより性能が優れている。
本発明による組成物Bのノイズ低下の性質に加えて、組成物Bは、適用の範囲について、特にノイズを生ずる装置のためのパネルとして適当な機械的性質を有することも見出された。
【0031】
上で論じられた試験を実施するために調製されて成形された検体を、23℃および相対湿度50%で7日間コンディショニングして、以下の性質についても試験した:
灰分含有率(内部方法-マイクロ波灰化オーブンを使用する)
Mettler Toledo MSセミミクロ天秤および密度キットを使用する密度測定
ASTM D790を使用する曲げ特性(0.05インチ/分の速さで)
ASTM D638を使用する引張り特性(2インチ/分の速さで)
ASTM D256を23℃で使用する切り欠きIzod衝撃
ASTM D648により測定された加熱撓み温度
GardnerミクロTri-光沢計を使用する光沢測定
社内で開発された設備を使用する成形収縮(流動および交差流動)
【0032】
リストに挙げた試験の各々において、本発明による組成物は、首尾よく性能を発揮することが見出された。ある試験では、下に示すように、ニート樹脂を含む組成物に勝る顕著な改善が見出された。それに加えて、本発明による組成物の機械的性質は大部分の家庭用の電気製品の要求に応じる。
灰分含有率(内部方法-マイクロ波灰化オーブンを使用する)-充填剤の添加が検証され、許容範囲内であることが見出された;
Mettler Toledo MSセミミクロ天秤および密度キットを使用した密度測定-測定された密度の値は、目的の充填剤添加の場合の理論的密度値と同様であった;
ASTM D790(0.05インチ/分の速さで)を使用した曲げ特性-本発明による組成物Bは、ニート樹脂を含む組成物に勝る約200%の曲げモジュラス改善をもたらした;
ASTM D256を23℃で使用した切り欠きIzod衝撃-組成物Bは、ニート樹脂を含む組成物に勝る約200%の曲げモジュラス改善をもたらした。
ASTM D648により測定した加熱撓み温度(HDT)-組成物Bは、ニート樹脂を含む組成物に30℃勝るHDT改善をもたらした。
図1
図2
図3