(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】斜板式可変容量ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/00 20060101AFI20241018BHJP
F04B 1/295 20200101ALI20241018BHJP
F04B 1/324 20200101ALI20241018BHJP
【FI】
F04B53/00 B
F04B1/295
F04B1/324
(21)【出願番号】P 2021014653
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591005693
【氏名又は名称】ボッシュ・レックスロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】押見 真宏
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089458(JP,A)
【文献】特開平08-159361(JP,A)
【文献】特開2016-109025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
F04B 1/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜板(39)の傾転量に応じて作動油を吐出する斜板式のポンプ部(30)と、
一端が前記斜板(39)に当接するコントロールピストン(61)を含み前記斜板(39)の最大傾転量を規定する最大傾転量調節部(50)と、を備えた斜板式可変容量ポンプ(100)において、
前記コントロールピストン(61)の他端側に作用する制御油圧(Pc)を前記最大傾転量調節部(50)の圧力室(53)に導入する制御油路(128)と、
前記ポンプ部(30)及び前記最大傾転量調節部(50)を収容するとともに前記制御油路(128)の一部(128a,128c)を有するポンプハウジング(10)と、
前記ポンプハウジング(10)に取付けられ、両端がそれぞれ前記ポンプハウジング(10)の前記制御油路の一部(128a,128c)に連通する制御油路(128b)と、前記制御油路(128b)の途中に設けられて通路面積が小さくされた二つの絞り部(81a,81b)、及び、前記二つの絞り部(81a,81b)の間に設けられて前記制御油路(128b)の一部を構成する容積部(83a)を含む減衰部(80)と、前記二つの絞り部(81a,81b)の前記通路面積を調節する通路面積調節部(85a,85b)と、を有する減衰モジュール(90)と、
を備える、斜板式可変容量ポンプ。
【請求項2】
前記絞り部(81a,81b)の上流側又は下流側の少なくともいずれかに接続されたダンパ部材(87a,87b,87c)を備える、請求項
1に記載の斜板式可変容量ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機械に用いられる斜板式可変容量ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの油圧機械に用いられる油圧ポンプとして、エンジンにより駆動され、斜板の傾転量に応じて吐出流量が調節される斜板式可変容量ポンプが知られている。斜板式可変容量ポンプでは、作動油の吸入及び吐出が繰り返されることで生じる流量脈動により、振動や騒音の原因となる圧力脈動が発生する。
【0003】
例えば特許文献1には、圧力脈動を低減するための共鳴器を設けた可変容量ポンプが開示されている。具体的に、特許文献1に記載の可変容量ポンプは、ポンプ機構の押しのけ容積を制御するためにサーボピストンを移動させるためのレギュレータをポンプケーシングに着脱可能とするレギュレータケーシングに、連通路を介してポンプ機構から吐出される作動油をポンプケーシングの外部に導く吐出路と連通する共鳴室が設けられ、共鳴室及び連通路により構成されたヘルムホルツ型共鳴器を備えている。また、特許文献1には、レギュレータケーシングに、共鳴室の容積を調整する共鳴室容積調整機構を設けることにより、低減効果のある周波数を変更できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の可変容量ポンプの共鳴室容積調整機構は、ヘルムホルツ型の共鳴室自体の容積を調整するものである。このため、共鳴室容積調整機構のスペースが大きくなってしまうおそれがある。また、特許文献1に記載の可変容量ポンプの共鳴室容積調整機構は、共鳴室の容積を調整できるものの、共鳴室の形状を変形することができない。したがって、圧力脈動を低減可能な周波数帯域が制限されるおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、発生する圧力脈動の周波数に応じて、様々な周波数帯域の圧力脈動を低減可能な油圧ダンパを備えた斜板式可変容量ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、斜板の傾転量に応じて作動油を吐出する斜板式のポンプ部と、一端部が斜板に当接するコントロールピストンを含み斜板の最大傾転量を規定する最大傾転量調節部と、を備えた斜板式可変容量ポンプであって、コントロールピストンの他端部側に作用する制御油圧を最大傾転量調節部の圧力室に導入する制御油路と、制御油路の途中に、通路面積が小さくされた少なくとも一つの絞り部を含む減衰部を備えるとともに、絞り部の通路面積を調節する通路面積調節部を備える斜板式可変容量ポンプが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、発生する圧力脈動の周波数に応じて、様々な周波数帯域の圧力脈動を低減可能な油圧ダンパを備えた斜板式可変容量ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る斜板式可変容量ポンプの構成例を示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係る可変容量ポンプの油圧回路の構成例を示す説明図である。
【
図4】減衰モジュールの第1の例を示す説明図である。
【
図5】減衰モジュールの第2の例を示す説明図である。
【
図6】同実施形態に係る可変容量ポンプの油圧回路の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.斜板式可変容量ポンプの基本構成例>
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の基本構成例を説明する。
図1は、斜板式可変容量ポンプ100の断面図を示している。
【0012】
斜板式可変容量ポンプ100は、例えば複数の油圧アクチュエータにより操作される油圧ショベル等の建設機械や産業車両に搭載されて使用される。斜板式可変容量ポンプ100は、斜板39の傾きである傾転量を制御することによって、ポンプ吐出流量を調整可能なピストンポンプとして構成されている。
【0013】
本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100において、圧力脈動を低減する圧力ダンパ部に関連する構成要素以外の構成については、従来公知の斜板式可変容量ポンプと同様に構成され得る。以下、圧力ダンパ部以外の斜板式可変容量ポンプ100の全体構成について簡単に説明する。
【0014】
斜板式可変容量ポンプ100は、ケース5及びカバー7を接合して構成されたポンプハウジング10を備える。ケース5及びカバー7には、図示しないエンジンにより回転駆動される駆動軸8が挿通されている。本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100は、図示しない2つの吐出ポートを備えた2連ポンプを構成するポンプ部30を備えている。また、駆動軸8には、ギヤポンプ20が連結されている。ギヤポンプ20は、駆動軸8の回転により所定の油圧(以下、「ギヤポンプ油圧」ともいう)Pgの作動油を圧送する。
【0015】
ケース5及びカバー7により形成される内部空間には、斜板39及びシリンダブロック40が収容される。シリンダブロック40は、駆動軸8に連結され、駆動軸8の回転により回転駆動する。シリンダブロック40は、それぞれ駆動軸8の軸方向に沿って形成された複数(本実施形態では2つ)のシリンダ41を備える。それぞれのシリンダ41には、加圧ピストン45が軸方向に往復移動可能に保持されている。
【0016】
それぞれの加圧ピストン45の一端側は斜板39に当接している。駆動軸8の回転によりシリンダブロック40が一回転する間に、加圧ピストン45はシリンダ41内を往復移動し、作動油の吸入及び吐出が行われる。加圧ピストン45の往復移動の方向に直交する面に対する斜板39の傾き(傾転量)によって、シリンダブロック40が一回転する間の加圧ピストン45のストローク量が可変となる。つまり、斜板39の傾転量によって、ポンプ吐出流量が可変となる。
【0017】
斜板39は、図の上方において、コイルスプリング35により付勢されている。コイルスプリング35は、カバー7と斜板39とにより挟持されている。一方、斜板39は、図の下方において、最大傾転量調節部50のコントロールピストン61の一端面に当接している。コントロールピストン61は、カバー7に固定されたガイドスリーブ51により、駆動軸8の軸方向に沿って摺動可能に支持される。コントロールピストン61の他端面(後端面)は、ガイドスリーブ51に取付けられた支持部材52により支持されている。コントロールピストン61の長さを調節することによってコントロールピストン61の一端面(先端部)の位置が変化し、斜板39の最大傾転量が設定される。
【0018】
支持部材52は、圧力室53に導入される制御油圧Pcをコントロールピストン61の他端面に導入する孔部52aを有する。つまり、コントロールピストン61の他端面は圧力室53に導入される制御油圧Pcの受圧面となっている。したがって、斜板39の下方側には、コントロールピストン61を介して制御油圧Pcが作用するように構成されている。
【0019】
このように構成された斜板式可変容量ポンプ100では、加圧ピストン45が作動油を吐出する際に、斜板39に対して加圧ピストン45に作用する吐出圧力が作用する。斜板39に対して作用する吐出圧力は、斜板39の傾転量を減少させる力(傾転復帰力)として作用する。したがって、吐出圧力が小さい間、斜板39の傾転量はコントロールピストン61によって規定される最大傾転量となり、吐出圧力が上昇して斜板39に作用する傾転復帰力がコイルスプリング35の付勢力を上回ったときに斜板39の傾転量が減少し始める。斜板39の傾転量は、吐出圧力によって定められる。
【0020】
<2.油圧回路の構成例>
次に、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の油圧回路110の構成例を説明する。
図2は、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の油圧回路110の構成例を示す説明図である。
【0021】
図2に示した油圧回路110は、第1のポンプ部112、第2のポンプ部114及び第3のポンプ部116を備える。このうち、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114は、2つの加圧ピストン45の吸入吐出動作によりそれぞれ吐出ポートA1,A2から作動油を吐出する上述の斜板式のポンプ部30に相当する。また、第3のポンプ部116は、上述のギヤポンプ20に相当する。
【0022】
第1のポンプ部112は、第1の吐出油路122を介して第1の吐出ポートA1から油圧機器のアクチュエータ等に対して作動油圧P1を供給する。第2のポンプ部114は、第2の吐出油路124を介して第2の吐出ポートA2から油圧機器のアクチュエータ等に対して作動油圧P2を供給する。第3のポンプ部116は、第3の吐出油路126を介して第3の吐出ポートA3からギヤポンプ油圧Pgを供給する。第3の吐出油路126には、ギヤポンプ油圧Pgを調節するための圧力制御弁131が設けられている。
【0023】
また、第3の吐出油路126の途中には制御油路128が接続されている。制御油路128は、ポンプハウジング10内に設けられた制御油路128a,128cと、減衰部80内に設けられた制御油路128bとにより構成される。制御油路128は、ギヤポンプ油圧Pgを基にして最大傾転量調節部50のコントロールピストン61の圧力室53に制御油圧Pcを導入する。最大傾転量調節部50の圧力室53に導入される制御油圧Pcは、
図1に示した支持部材52の孔部52aを介してコントロールピストン61の後端面(他端面)に伝達される。
【0024】
上述したとおり、斜板式可変容量ポンプ100では、加圧ピストン45に作用する吐出圧力が斜板39に対して作用するため、加圧ピストン45の往復移動に伴う作動油の吸入吐出動作により圧力脈動が発生し、斜板39の振動が発生する。斜板39が振動する際に斜板39とコントロールピストン61との接触及び離間が繰り返されると、斜板39とコントロールピストン61との接触音が騒音となり得る。吐出圧力の上昇に伴って圧力脈動も大きくなることから、斜板39の傾転量が減少した場合であっても斜板39とコントロールピストン61との接触音による騒音が発生し得る。
【0025】
本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100では、コントロールピストン61の後端面に対して制御油圧Pcが作用し、コントロールピストン61が斜板39に対して押し付けられる。したがって、斜板39の振動が発生した場合であってもコントロールピストン61が斜板39から離れることがなく、接触音による騒音を抑制することができる。また、コントロールピストン61の後端面に作用する制御油圧Pcは、ギヤポンプ油圧Pgを基にした比較的低圧の制御油圧Pcであり、斜板39の傾転量に影響を与えることがないようになっている。
【0026】
また、制御油路128の途中には、圧力室53に導入される制御油圧Pcの圧力脈動を低減するための減衰部80が設けられている。コントロールピストン61が斜板39に対して押し付けられている場合、斜板39の振動がコントロールピストン61を介して圧力室53及び制御油路128内の作動油に伝達され、制御油路128内で圧力脈動を生じる。発生する圧力脈動の周波数帯域や振幅等は、例えば斜板式可変容量ポンプ100の構成や、斜板式可変容量ポンプ100の吐出圧力、回転速度、作動油の粘度等に応じて変化し得る。減衰部80は、制御油路128内の作動油の圧力脈動を低減する。減衰部80は、通路面積が小さくされた少なくとも一つ(本実施形態では2つ)の絞り部81a,81bを含む。また、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100では、絞り部81a,81bの通路面積を調節する通路面積調節部85a,85bを備えている。
【0027】
減衰部80を構成する絞り部81a,81bの通路面積が調節可能に構成されることにより、大きなスペースを要することなく圧力脈動の低減効果が大きい周波数帯域を調節することができる。このため、発生する圧力脈動の周波数帯域や振幅に応じて適切に圧力脈動を低減することができる。
【0028】
具体的に、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の減衰部80は、抵抗型(絞り型)の減衰装置を構成する。
図3は、抵抗型の減衰装置を示す模式図である。
図3に示す抵抗型の減衰装置は、主として減衰及び反射作用を利用して圧力脈動を低減可能な減衰装置である。抵抗型の減衰装置では、管路75の一部に通路面積を小さくした絞り部76を設けることによって圧力脈動を低減させる。かかる抵抗型の減衰装置は、広範囲の周波数帯域の圧力脈動の低減に有効である。
【0029】
図2に示した油圧回路110において、絞り部81aを、
図3に示した絞り部76と見做せば、抵抗型の減衰装置が構成される。あるいは、絞り部81bを、
図3に示した絞り部76と見做すこともできる。この場合、絞り部81a又は絞り部81bの通路面積を調節することにより、圧力脈動の低減効果が大きい周波数帯域を調節したり、圧力脈動の低減度合を調節したりすることができる。つまり、斜板式可変容量ポンプ100の吐出圧力や回転速度、作動油の粘度等の油圧機器の使用態様に応じて通路面積調節部85a,85bを調節して絞り部81a,81bの通路面積を調節することによって、油圧機器の作動状態に応じた圧力脈動に起因する振動や騒音を低減することができる。
【0030】
なお、
図2に示した油圧回路110の構成例では、減衰部80を含む減衰モジュール90をポンプハウジング10に取付けることによって斜板式可変容量ポンプ100が構成されていたが、減衰モジュール90として減衰部80を別体化することなく、ポンプハウジング10内に減衰部80が設けられてもよい。
【0031】
<3.減衰モジュールの構成例>
続いて、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100に設けられる減衰モジュール90の構成例の幾つかを説明する。
【0032】
(3-1.第1の例)
図4は、減衰モジュール90の第1の例を示す説明図であり、減衰モジュール90Aの断面図を示す。第1の例に示す減衰モジュール90Aは、調節部材としてスプール弁を用いた通路面積調節部85a,85bを有する減衰モジュール90Aである。
【0033】
第1の例に示す減衰モジュール90Aは、制御油路128bが形成された筐体201を備える。制御油路128bは、ポンプハウジング10の制御油路128aに連通する制御油路128baと、ポンプハウジング10の制御油路128cに連通する制御油路128bbと、制御油路128bの中間部に位置する容積部83aとを含む。また、筐体201には、第1のスプール弁207aが摺動可能に収容された第1の収容孔205aと、第2のスプール弁207bが摺動可能に収容された第2の収容孔205bとが形成されている。
【0034】
制御油路128ba及び容積部83aは、それぞれ第1の収容孔205aに連通する。第1の収容孔205aの内周面のうち、制御油路128baの接続部分には第1のギャラリ室203aが形成されている。同様に、制御油路128bb及び容積部83aは、それぞれ第2の収容孔205bに連通する。第2の収容孔205bの内周面のうち、制御油路128bbの接続部分には第2のギャラリ室203bが形成されている。なお、第2のギャラリ室203bに接続された制御油路128baは、容積部83bとしても機能する。
【0035】
第1のスプール弁207aの軸方向の一端側には第1の調整ネジ208aが当接している。また、第1のスプール弁207aの軸方向の他端側には、第1の収容孔205aの底面に支持されたバネ211aが設けられており、第1のスプール弁207aはバネ211aにより第1の調整ネジ208a側に付勢されている。第1の調整ネジ208aにはナット209aが取り付けられ、第1の調整ネジ208aの進入量を調節するとともに当該ナット209aを回転させて締め付けることによって、第1の収容孔205a内への第1の調整ネジ208aの進入量を調節可能になっている。
【0036】
第1のスプール弁207aは、バネ211aにより第1の調整ネジ208a側へ付勢されていることから、第1の調整ネジ208aの進入量により第1のスプール弁207aの軸方向の位置が設定される。第1のスプール弁207aの外周面には複数の溝(符号は不図示)が形成され、第1の収容孔205aの内周面と、第1のスプール弁207aの外周面との間には、作動油の通路となる絞り部81aが形成される。
図4に示した例では、溝部が第1のギャラリ室203aに重なるときに絞り部81aが形成される。また、第1の調整ネジ208aの進入量に応じた第1のスプール弁207aの軸方向の位置に応じて絞り部81a全体の通路面積が変化する。
【0037】
第2のスプール弁207bの軸方向の一端側には第2の調整ネジ208bが当接している。また、第2のスプール弁207bの軸方向の他端側には、第2の収容孔205bの底面に支持されたバネ211bが設けられており、第2のスプール弁207bはバネ211bにより第2の調整ネジ208b側に付勢されている。第2の調整ネジ208bにはナット209bが取り付けられ、第2の調整ネジ208bの進入量を調節するとともに当該ナット209bを回転させて締め付けることによって、第2の収容孔205b内への第2の調整ネジ208bの進入量を調節可能になっている。
【0038】
第2のスプール弁207bは、バネ211bにより第2の調整ネジ208b側へ付勢されていることから、第2の調整ネジ208bの進入量により第2のスプール弁207bの軸方向の位置が設定される。第2のスプール弁207bの外周面には複数の溝(符号は不図示)が形成され、第2の収容孔205bの内周面と、第2のスプール弁207bの外周面との間には、作動油の通路となる絞り部81bが形成される。
図4に示した例では、溝部が第2のギャラリ室203bに重なるときに絞り部81bが形成される。また、第2の調整ネジ208bの進入量に応じた第2のスプール弁207bの軸方向の位置に応じて絞り部81b全体の通路面積が変化する。
【0039】
以上のように構成された減衰モジュール90Aでは、第1の調整ネジ208a又は第2の調整ネジ208bの少なくともいずれか一方の進入量を調節することにより、絞り部81a,81bの少なくともいずれか一方の通路面積が変化する。これにより、形成される抵抗型の減衰装置により低減効果のある圧力脈動の周波数帯域が調節される。その際に、発生する振動又は騒音を確認しながら第1の調整ネジ208a又は第2の調整ネジ208bの少なくともいずれか一方の進入量を調節することで、斜板式可変容量ポンプ100の駆動状態に応じて、適切に圧力脈動を低減することができる。
【0040】
(3-2.第2の例)
図5は、減衰モジュール90の第2の例を示す説明図であり、減衰モジュール90Bの断面図を示す。第2の例に示す減衰モジュール90Bは、調節部材としてニードル弁を用いた通路面積調節部85a,85bを有する減衰モジュール90Bである。なお、
図5において、容積部83は、断面には現れるものではなく、紙面奥側に存在する。
【0041】
第2の例に示す減衰モジュール90Bは、制御油路128bが形成された筐体221を備える。制御油路128bは、ポンプハウジング10の制御油路128aに連通する制御油路128baと、ポンプハウジング10の制御油路128cに連通する制御油路128bbと、制御油路128bの中間部に位置する容積部83とを含む。また、筐体221には、第1のニードル弁223aの先端側が摺動可能に収容された第1の収容孔225aと、第2のニードル弁223bの先端側が摺動可能に収容された第2の収容孔225bとが形成されている。
【0042】
制御油路128ba及び容積部83は、それぞれ第1の収容孔225aに連通する。第1の収容孔225aの、ニードル弁223aの先端部が位置する領域にはテーパ部(符号は不図示)が形成されている。同様に、制御油路128bb及び容積部83は、それぞれ第2の収容孔225bに連通する。第2の収容孔225bの、ニードル弁223bの先端部が位置する領域にはテーパ部(符号は不図示)が形成されている。
【0043】
第1のニードル弁223aにはナット229aが取り付けられ、第1のニードル弁223aの進入量を調節するとともに当該ナット229aを回転させて締め付けることによって、第1の収容孔225a内への第1のニードル弁223aの進入量を調節可能になっている。第1のニードル弁223aの先端部の外周面と、第1の収容孔225aのテーパ部の内周面との間には、作動油の通路となる絞り部81aが形成される。また、第1のニードル弁223aの軸方向の位置に応じて絞り部81a全体の通路面積が変化する。
【0044】
第2のニードル弁223bにはナット229bが取り付けられ、第2のニードル弁223bの進入量を調節するとともに当該ナット229bを回転させて締め付けることによって、第2の収容孔225b内への第2のニードル弁223bの進入量を調節可能になっている。第2のニードル弁223bの先端部の外周面と、第2の収容孔225bのテーパ部の内周面との間には、作動油の通路となる絞り部81bが形成される。また、第2のニードル弁223bの軸方向の位置に応じて絞り部81b全体の通路面積が変化する。
【0045】
以上のように構成された減衰モジュール90Bでは、第1のニードル弁223a又は第2のニードル弁223bの少なくともいずれか一方の進入量を調節することにより、絞り部81a,81bの少なくともいずれか一方の通路面積が変化する。これにより、形成される抵抗型の減衰装置により低減効果のある圧力脈動の周波数帯域が調節される。その際に、発生する振動又は騒音を確認しながら第1のニードル弁223a又は第2のニードル弁223bの少なくともいずれか一方の進入量を調節することで、斜板式可変容量ポンプ100の駆動状態に応じて、適切に圧力脈動を低減することができる。
【0046】
<4.本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100によれば、先端部が斜板39に当接して斜板39の最大傾転量を規定するコントロールピストン61の後端面に制御油圧Pcが作用する。このため、加圧ピストン45の吸入吐出動作に伴う圧力脈動によって斜板39が振動する場合であっても、コントロールピストン61と斜板39とが接触及び離間を繰り返すことがなくなり、コントロールピストン61と斜板39との接触音を低減することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100では、コントロールピストン61の後端面に制御油圧Pcを導入する制御油路128の途中に、少なくとも一つの絞り部81a,81bを含む減衰部80を備えるとともに、絞り部81a,81bの通路面積を調節する通路面積調節部85a,85bを備える。これにより、形成される抵抗型の減衰装置により低減効果のある圧力脈動の周波数帯域を調節することができる。したがって、大きなスペースを要することなく、様々な周波数帯域の圧力脈動を低減して、コントロールピストン61を介して制御油路128内の作動油に伝達される圧力脈動に起因する騒音や振動を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100では、減衰部80が、ポンプハウジング10に取付けられる減衰モジュール90として構成されている。このため、既存の斜板式可変容量ポンプの比較的簡単な改良によって、容易に本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100を構成することができる。
【0049】
<5.まとめ>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上記実施形態では、二つの絞り部81a,81bが設けられていたが、絞り部の数は限定されない。また、複数設けられた絞り部のうち、一部の絞り部の通路面積のみが調節可能に構成されていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、抵抗型の減衰装置の機能により圧力脈動を低減したが、本発明はかかる例に限定されない。
図6に示すように、絞り部81a,81bの上流側又は下流側の少なくともいずれかに、アキュムレータ等のダンパ部材87a,87b,87cが接続されていてもよい。これにより、一部の周波数帯域についての圧力脈動の低減効果をさらに高めることができる。
【0052】
また、上記実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100は、作業者が通路面積調節部85a,85bを調節する構成であったが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、騒音又は振動を検出するセンサを設け、当該センサにより検出される騒音又は振動が低減されるように、スプール弁やニードル弁のアクチュエータに電流を供給するように構成された電子制御式の減衰部として構成されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態で説明した斜板式可変容量ポンプ100の基本構成はあくまでも一例であり、当該構成は種々変形が可能である。例えば上記実施形態では、ギヤポンプ油圧Pgを基にした制御油圧Pcが最大傾転量調節部50のコントロールピストン61の圧力室53に導入されていたが、ギヤポンプ油圧Pgと併せてその他の油圧が圧力室53に導入されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…ポンプハウジング、20…ギヤポンプ、30…ポンプ部、39…斜板、50…最大傾転量調節部、53…圧力室、61…ピストン、80…減衰部、81a,81b…絞り部、83a,83b…容積部、85a,85b…通路面積調節部、87a,87b,87c…ダンパ部材、90,90A,90B…減衰モジュール、100…斜板式可変容量ポンプ、110…油圧回路、128,128a,128b,128ba,128bb,128c…制御油路、207a…第1のスプール弁、207b…第2のスプール弁、223a…第1のニードル弁、223b…第2のニードル弁