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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】基板積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20241018BHJP
   B32B 37/30 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241018BHJP
   H01L 23/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L23/12 N
B32B37/30
H01L23/02 Z
H01L23/10 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021048012
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022146965
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】西平 成義
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-295481(JP,A)
【文献】特開2013-115104(JP,A)
【文献】特開2009-188191(JP,A)
【文献】特開2019-081342(JP,A)
【文献】特開2016-051808(JP,A)
【文献】特開2018-080309(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140648(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0159114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
B32B 37/30
H01L 23/02
H01L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷法を用いて第1の基板上に硬化性樹脂の第1のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンを型で成型して第2のパターンを形成する工程と、前記第2のパターンを介して前記第1の基板と第2の基板を貼り合わせる工程を有する基板積層体の製造方法。
【請求項2】
前記印刷法がスクリーン印刷である、請求項1に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項3】
前記型の表面粗さRaが5μm以下である、請求項1または2に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板及び前記第2の基板のいずれか一方が透明基板である、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項5】
他方の基板が半導体素子基板である、請求項4に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性樹脂がグリシジル基、または脂環式エポキシ基のいずれかを少なくとも含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項7】
前記硬化性樹脂がポリシロキサン系化合物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項8】
前記硬化性樹脂が感光性樹脂である、請求項1~7のいずれか1項に記載の基板積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第1のパターンまたは前記第2のパターンに露光する工程をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の基板積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサや加速度センサ、圧力センサ等のMEMSセンサでは、光透過性の調整や機械部品の動きを確保するため、半導体素子基板とガラスや金属、セラミック等の封止基板を、半導体素子周辺に配置された接着剤により接着して中空部を設ける必要がある。この際、液状の接着剤を使ってディスペンス法やスクリーン印刷法により接着層のパターンを形成する方法が用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-115104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように従来の液状接着剤を用いたディスペンス法では、接着剤を均一な高さで塗布しにくく、スクリーン印刷の場合は、接着剤層の上面にスクリーンのメッシュ痕が残り平坦化することが難しい場合があった。そのため、接着した際に基板同士の距離が一定になりにくく、積層体の高さにばらつきが生じたり、接着面が不均一となったりするために、得られる基板積層体の信頼性に個体差が生じることが判明した。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高さの均一性に優れており、良好な形状を有する硬化性樹脂のパターンを形成することにより、接着信頼性の高い接着層を有する基板積層体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、印刷法を用いて第1の基板上に硬化性樹脂の第1のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンを型で成型して第2のパターンを形成する工程と、前記第2のパターンを介して前記第1の基板と第2の基板を貼り合わせる工程を有する基板積層体の製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下に関する。
【0007】
〔1〕.印刷法を用いて第1の基板上に硬化性樹脂の第1のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンを型で成型して第2のパターンを形成する工程と、前記第2のパターンを介して前記第1の基板と第2の基板を貼り合わせる工程を有する基板積層体の製造方法。
【0008】
〔2〕.前記印刷法がスクリーン印刷である、〔1〕に記載の基板積層体の製造方法。
【0009】
〔3〕.前記型の表面粗さRaが5μm以下である、〔1〕または〔2〕に記載の基板積層体の製造方法。
【0010】
〔4〕.前記第1の基板及び前記第2の基板のいずれか一方が透明基板である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の基板積層体の製造方法。
【0011】
〔5〕他方の基板が半導体素子基板である、〔4〕に記載の基板積層体の製造方法。
【0012】
〔6〕.前記硬化性樹脂がグリシジル基、または脂環式エポキシ基のいずれかを少なくとも含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の基板積層体の製造方法。
【0013】
〔7〕.前記硬化性樹脂がポリシロキサン系化合物である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の基板積層体の製造方法。
【0014】
〔8〕.前記硬化性樹脂が感光性樹脂である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の基板積層体の製造方法。
【0015】
〔9〕.前記第1のパターンまたは前記第2のパターンに露光する工程をさらに備える、〔8〕に記載の基板積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法を用いることで、安定化した接着面が得られることにより接着信頼性に優れるだけでなく、基板間の距離の違いによる半導体の個体差を抑制した基板積層体が得られるという効果を奏する。また、簡便な工程で高精度にパターン制御された基板積層体が得られるため、特にCMOS・CCDセンサ用中空構造体やMEMSデバイス用中空構造体の製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る第1の基板上に第1のパターンを形成した状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る第1のパターンを型で成型して第2のパターンを形成する工程を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る第2のパターンを介して第1の基板と第2の基板を貼り合わせた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1.基板積層体)
本発明における基板積層体は、印刷法を用いて第1の基板上に硬化性樹脂の第1のパターンを形成する工程と、前記第1のパターンを型で成型して第2のパターンを形成する工程と、前記第2のパターンを介して前記第1の基板と第2の基板を貼り合わせる工程を経ることによって得られる。
【0019】
使用し得る基板として、例えば、半導体素子基板、シリコンウエハ、ガラス基板、透明樹脂基板、着色樹脂基板、セラミック基板などが挙げられる。後述するイメージセンサの製造においては、第1の基板または第2の基板として半導体素子基板を用い、他方の基板としてガラス基板が用いられる。
【0020】
基板の形状としては、丸型でも角型でも構わない。生産性の観点から、100mm×100mm以上の四角基板、もしくは100mm×100mm以上のエリアに一度個片化された基板を再配列した基板、もしくは4インチ~12インチの丸型基板を用いることが好ましい。また、第1の基板と第2の基板のサイズや形状は同じであっても異なっていても構わない。
【0021】
本発明の基板積層体の基板上にパターン形成する硬化性樹脂は、第1の基板と第2の基板を接着する接着層として機能する。接着層の幅および高さは適宜設定可能であるが、適切に選択することで中空構造を有する基板積層体を簡便に得ることができる。特に、CMOS・CCDセンサ用に基板積層体を用いる場合、接着層が低すぎると組み立て時にセンサ基板を傷つける可能性がある。また接着層が高すぎると良好なパターンが得られない場合がある。これらの点から接着層の高さとしては1μm~300μmであり、好ましくは50μm~150μmである。接着層の幅としては、細すぎると十分な接着強度が得られない場合があり、また、接着層の幅が太すぎるとセンサ基板を配置するスペースが無くなってしまう恐れがある。これらの点から接着層の幅としては1μm~1000μmであり、好ましくは100μm~300μmである。
【0022】
また、第1の基板に形成した接着層の上面、すなわち、第2の基板と接する面の表面粗さRaは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。5μm以下とすることによって貼り合せ性が向上し接着信頼性を高めることが可能となり、また高さばらつきの低減にも効果がある。表面粗さは3D測定レーザー顕微鏡を用いて測定することができる。
【0023】
(2.基板積層体の製造方法)
以下に本発明の基板積層体の製造方法の一実施形態を詳細に説明する。
【0024】
接着層として用いる硬化性樹脂の調製方法は特に限定されず、種々の方法によって調製可能である。各種成分を使用直前に混合調製してもよく、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいてもよい。ハンドリング性などの観点から液状であることが好ましい。硬化性樹脂を含む組成物の粘度としては25℃環境下において1Pa・s以上が染み出し抑制の観点から好ましい。また、印刷法を用いた塗布を実施する観点から250Pa・s以下が好ましい。粘度はレオメーターを用いて測定することができる。
【0025】
まず、印刷法を用いて第1の基板上に硬化性樹脂の複数の第1のパターンを形成する(図1(a)、図1(b))。パターン形状は所望の用途によって適宜設定することができる。印刷法にはディスペンサー方式・インクジェット印刷・活版印刷・フレキソ印刷・オフセット印刷・グラビア印刷・スクリーン印刷等があるが、その中でも簡便かつパターニング性が良好な観点からスクリーン印刷法が好ましい。スクリーン印刷に使用する版は、硬化性樹脂が通過するものであれば特に限定されない。第2のパターンを形成する工程で使用する型の外に硬化性樹脂が漏れないよう第1のパターンを形成することが好ましい。
【0026】
印刷後のパターン形状をさらに制御するため、スクリーン印刷法を用いて第1のパターンを形成した後、第1のパターンを成型する。まず、第1のパターンと型の位置を合わせ(図2(a))、その後、型を第1のパターンに押し当てて成型し(図2(b))、離型することで第2のパターンを形成する(図2(c))。第2のパターンは第1のパターンと同等、もしくはパターン高さが低くなることが好ましい。また、第2のパターンを型の内側に入れるという観点から、型の幅は第1のパターンより広いことが好ましい。型の幅と高さは、樹脂が型から漏れ出さないという観点から、型の断面積が第1のパターンの断面積の1倍以上2倍以下であることが好ましい。
【0027】
用いる型の材質は特に限定されないが、ステンレス鋼などの金属、ガラスなどの無機物質、ゴムや樹脂などの有機物、またはこれらを組み合わせたものなどが挙げられる。また、パターンの離型性や耐久性を向上させるために型表面に処理を施してもよい。例えばフッ素、シリコーン、PEEK等の有機系コーティングや、超硬合金、硬質クロム、DLC等の金属系コーティングを施してもよく、表面を梨地処理を施してもよい。
【0028】
第2のパターンの上面、すなわち第2の基板と接する面の表面粗さを低減し、接着性・密着性を向上させる観点から、型の表面粗さRaは5μm以下が好ましく、3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。型の表面粗さRaは例えば3D測定レーザー顕微鏡を用いて測定することができる。
【0029】
また、型を押しあてる前から離型するまでに、型及び基板を加熱してもよい。加熱温度は40℃~300℃が好ましく、溶剤除去および硬化物の物性調節の観点から40℃~150℃がより好ましい。
【0030】
接着層として用いる硬化性樹脂が感光性樹脂の場合、第1のパターンまたは第2のパターンに露光する工程をさらに備えることが好ましい。露光は第1のパターン形成後でも第2のパターン形成後であっても、あるいは両方で行ってもよく、第2のパターン形成後の場合、離型前であっても離型後であっても良い。露光工程を備えることでパターン形状の経時変化を抑制することができる。
【0031】
光硬化(露光)させるための光源としては、使用する重合開始剤および増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200nm~450nmの範囲の波長を含む光源(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプまたは発光ダイオード等)を使用できる。
【0032】
また、溶剤除去および硬化物の物性調節の目的で、パターン樹脂の接着性が低下しない程度に、光硬化前後に熱を加えプリベークおよびアフターベークさせてもよい。この時の温度は適宜設定され得るが、好ましくは40℃~300℃、より好ましくは40℃~150℃である。
【0033】
次に、第2のパターンを形成した後、複数のパターンが形成された第1の基板と第2の基板を圧着することで基板積層体が得られる。圧着温度としては、通常25℃~350℃、好ましくは、60℃~300℃、より好ましくは80℃~250℃である。圧着時の条件としては、接着面にかかる圧力が通常0MPa~50MPa、好ましくは0MPa~40MPa、より好ましくは0MPa~30MPaである。なお接着力を向上させるという観点から、圧着後、80℃~350℃で硬化することが好ましい。その後、各パターンごとにダイシングすることで個片化して基板積層体を得る(図3)。
【0034】
なお、上記説明では複数のパターンが形成された第1の基板と第2の基板を圧着する例を記載したが、この方法に限られるものでない。他にも例えば、第1の基板上に複数の第2のパターン形成した後、ダイシングしてパターンが形成された第1の基板の個片と、あらかじめ個片化しておいた第2の基板を個別に貼り合わせてもよいし、あらかじめ個片化した第1の基板を再配列して、複数の第2のパターン形成した後、一括もしくは個片毎に第2の基板と貼り合わせても構わない。
【0035】
(3.硬化性樹脂)
本発明における硬化性樹脂とは、熱、光、または熱および光によって硬化する樹脂を用いることができる。硬化性樹脂が光によって硬化する感光性樹脂である場合は、光反応によってBステージ(半硬化)状態とすることができ、簡便に基板積層体を構成する接着層とすることができることから好ましい。
【0036】
(カチオン重合性)
本発明の接着層には、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基等のカチオン重合性官能基を有する化合物を用いることができる。具体的には、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(環状または鎖状)、グリシジル基含有ポリオルガノシロキサン(環状または鎖状)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,5-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキサン)-1,3-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2-シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,4-ビス{(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ}メチル}ベンゼン、ビス{1-エチル(3-オキセタニル)}メチルエーテル、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタンおよび3-エチル-3-(2-エチルへキシロキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
【0037】
安定性の観点から、エポキシ基を有することが好ましく、エポキシ基の中でも、グリシジル基、または脂環式エポキシ基のいずれかを少なくとも含むことがより好ましく、特に光および熱によるカチオン重合性に優れる点では、脂環式エポキシ基を含むことがさらに好ましい。また、カチオン重合性官能基を1分子中に少なくとも1個有していればよいが、2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。カチオン重合性官能基が3個以上であれば、架橋密度の高い硬化物が得られ、当該硬化物は耐熱性に優れるという利点がある。各カチオン重合性官能基は同一であってもよく、2種以上の異なる官能基であってもよい。硬化性樹脂の中のカチオン重合性基は、溶媒を除いた硬化性樹脂の1~99重量部であることが好ましく、5~90重量部であることがより好ましい。
【0038】
(ポリシロキサン系化合物)
本発明における硬化性樹脂は、リフロー時の耐熱性およびアウトガス低減の観点から、ポリシロキサン系化合物であることが望ましい。本発明において、ポリシロキサン系化合物とは、シロキサン単位Si-O-Siを有する化合物であれば、特に限定されない。ポリシロキサン系化合物中のシロキサン単位のうち、T単位(XSiO3/2)またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物は硬度が高く、より耐熱信頼性に優れる。また、ポリシロキサン系化合物中のシロキサン単位のうち、M単位(XSiO1/2)またはD単位(XSiO2/2)の含有率が高いほど、得られる硬化物はより柔軟で低応力である。硬化性樹脂の中のポリシロキサン系化合物は、他成分との相溶性の観点からカチオン重合性基を分子内に有していることが好ましい。
【0039】
(4.その他添加剤)
(架橋剤)
上記硬化性樹脂には、作業性、反応性、接着性および硬化物強度の調整のために、カチオン重合性官能基以外の光重合性官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤を添加することができる。上記架橋剤としては、硬化反応形式によって選択すれば特に限定されず、アルコキシシラン化合物および(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0040】
(光酸発生剤)
上記硬化性樹脂は、光酸発生剤を含有することが好ましい。光酸発生剤は、活性エネルギー線を照射されることにより、硬化性樹脂が有する光重合性官能基を架橋させることができる酸性活性物質を放出することができる化合物であれば、特に限定されない。光酸発生剤により発生する酸のpKaは、限定はされないが、好ましくは3未満、さらに好ましくは1未満である。
【0041】
上記光酸発生剤としては、公知の光酸発生剤を使用することができる。例えば、光酸発生剤として、特開2000-1648号公報、特表2001-515533号公報および国際公開第2002/83764号において好適とされている各種の化合物が挙げられるが、特に限定されない。上記光酸発生剤は、スルホネートエステル類、カルボン酸エステル類またはオニウム塩類であることが好ましく、オニウム塩類であることがより好ましい。
【0042】
上記スルホネートエステル類としては、種々のスルホン酸誘導体を使用することができ、例えば、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、トリフルオロメチルスルホネート誘導体等のイミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1-オキシ-2-ヒドロキシ-3-プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類およびベンジルスルホネート類が挙げられる。
【0043】
上記スルホネートエステル類として、具体的には、ジフェニルジスルホン、ジトシルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシリルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)メタン、1,8-ナフタレンジカルボン酸イミドメチルスルホネート、1,8-ナフタレンジカルボン酸イミドトシルスルホネート、1,8-ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、1,8-ナフタレンジカルボン酸イミドカンファースルホネート、コハク酸イミドフェニルスルホネート、コハク酸イミドトシルスルホネート、コハク酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、コハク酸イミドカンファースルホネート、フタル酸イミドトリフルオロスルホネート、シス-5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、ベンゾイントシラート、1,2-ジフェニル-2-ヒドロキシプロピルトシラート、1,2-ジ(4-メチルメルカプトフェニル)-2-ヒドロキシプロピルトシラート、ピロガロールメチルスルホネート、ピロガロールエチルスルホネート、2,6-ジニトロフェニルメチルトシラート、オルト-ニトロフェニルメチルトシラートおよびパラ-ニトロフェニルトシラート等が挙げられる。
【0044】
これらは、1種のみまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、光酸発生剤としてカルボン酸エステル類も同様に使用することができる。
【0045】
一般に、スルホネートエステルおよびカルボン酸エステルは、酸を遊離するために、加熱ステップ(50℃~100℃)を必要とする場合がある。
【0046】
上記オニウム塩としては、テトラフルオロボレート(BF )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF )、ヘキサフルオロアルセネート(AsF )、ヘキサクロルアンチモネート(SbCl )、テトラフェニルボレート、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロメチルフェニル)ボレート、フルオロアルキルフルオロホスフェート、過塩素酸イオン(ClO )、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO )、フルオロスルホン酸イオン(FSO )、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸アニオンおよびトリニトロトルエンスルホン酸アニオン等のアニオンを有するスルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられる。光酸発生剤は、吸収波長の観点から、芳香族系スルホニウム塩が好ましい。
【0047】
光酸発生剤における陰イオンを酸強度が強いものから順に並べるとSbF 、B(C 、PF 、CFSO 、HSO となる。光酸発生剤の陰イオンの酸強度が強いものほど、残膜率が高くなる傾向にある。
【0048】
硬化性樹脂に含まれる光酸発生剤の含有量は、特に制限はない。硬化速度および硬化物の物性バランスの観点から、光酸発生剤の含有量は、化合物(A)100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がさらに好ましい。
【0049】
光酸発生剤の量が少ないと、硬化に長時間を要したり、十分に硬化した硬化物が得られなかったりする場合がある。また、光酸発生剤が多いと、色が硬化物に残ったり、急硬化のために着色または耐熱性もしくは耐光性を損なったりするため、好ましくない場合がある。
【0050】
(塩基性化合物)
上記硬化性樹脂は、硬化速度制御や貯蔵安定性の向上観点から、塩基性化合物を含有してもよい。
【0051】
塩基性化合物の配合量は、カチオン重合性官能基を有する化合物100重量部に対して、好ましくは0.001~2.0重量部であり、より好ましくは0.01~1.0重量部である。上記塩基性化合物の配合量が0.001重量部以上であれば、効果を十分に奏することができる。上記塩基性化合物の配合量が2.0重量部以下であれば、感度を向上させることができる。
【0052】
(A)光酸発生剤に対する(B)塩基性化合物の重量比((B)/(A))は、0.001~0.2であり、好ましくは0.01~0.15である。当該重量比が0.001以上であれば、塩基性化合物の効果を十分に奏することができる。当該重量比が0.2以下であれば、十分に架橋を行うことができる。
【0053】
塩基性化合物としては、特に制限はないが、第一級、第二級および第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、アミド誘導体およびイミド誘導体等が挙げられる。この中でも芳香族アミン類および複素環アミン類が、塩基性化合物として好適に使用できる。
【0054】
上記芳香族アミン類および上記複素環アミン類としては、アニリン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、フラザン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、イソインドール、1H-インダゾール、インドリン、キノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、1,10-フェナントロリン、アデニン、アデノシン、グアニン、グアノシン、ウラシルおよびウリジン、並びにそれらの誘導体等が例示される。また、上記複素環アミン類としては、2,6-ルチジンも挙げられる。
【0055】
中でも、塩基性化合物としてモルホリン誘導体が好適に使用できる。モルホリン誘導体としては、具体的にはビス(2-モルホリノエチル)エーテル、4,4’-カルボニルジモルホリン、4-[2-(エトキシカルボニル)エチル]モルホリンおよび4-(p-トリル)モルホリン等が例示される。
【0056】
上記塩基性化合物としては、1種が用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
(増感剤)
上記硬化性樹脂は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤によれば、上記硬化性樹脂において、可視光等への感度を向上させることができ、さらにg線(436nm)、h線(405nm)およびi線(365nm)等の高波長の光に感度を持たせることができる。これらの増感剤を、上述の光酸発生剤と併用して使用することにより、上記硬化性樹脂の硬化性の調整を行うことができる。
【0058】
上記増感剤としては、アントラセン系化合物およびチオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0059】
上記アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、1,4-ジメトキシアントラセン、9-メチルアントラセン、2-エチルアントラセン、2-tert-ブチルアントラセン、2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン、9,10-ジフェニル-2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン等が挙げられる。特に入手しやすい観点からは、上記アントラセン系化合物として、アントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセンおよび9,10-ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0060】
上記アントラセン系化合物として、硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性樹脂との相溶性に優れる観点からは9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセンおよび9,10-ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0061】
上記チオキサントン系化合物の具体例としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントンおよび2,5-ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0062】
これらの増感剤としては、1種が使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記増感剤の含有量は、増感効果を発揮できる量であれば、特に限定されないが、添加した光酸発生剤1モルに対して、好ましくは0.01~300モルであり、より好ましくは0.01モル~100モルである。増感剤の量が少ないと、増感効果が得られず、硬化に長時間を要したり、現像性に好ましくない影響を及ぼしたりする場合がある。一方、増感剤の量が多いと、色が硬化物に残ったり、急硬化のために着色したり、耐熱性または耐光性を損なったりするおそれがある。
【0064】
(接着性改良剤)
上記硬化性樹脂は、接着性改良剤を含有していてもよい。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン-フェノール樹脂、α-メチルスチレン-ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレンおよび芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基およびカルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性および接着性の観点から、エポキシ基、メタクリル基またはアクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の観点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の観点からメトキシシリル基またはエトキシシリル基が特に好ましい。
【0066】
好ましいシランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシランおよびアクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類、トリス[3-(トリメトキシシリルプロピル)]イソシアヌレート、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が例示できる。
【0067】
シランカップリング剤の添加量は適宜設定され得るが、カチオン重合性官能基を有する化合物100重量部に対して、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.3~10重量部、さらに好ましくは0.5~5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化性や硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0068】
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤およびエポキシ化合物等としては、1種が使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
(熱可塑性樹脂)
上記硬化性樹脂の特性を改質する等の目的で、上記硬化性樹脂に種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体またはメチルメタクリレートと他のモノマーとのランダム、ブロック、もしくはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)およびブチルアクリレートの単独重合体またはブチルアクリレートと他のモノマーとのランダム、ブロック、もしくはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドとの共重合体等のオレフィン-マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI-PAS等)、ビスフェノール類(ビスフェノールAおよびビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等)またはジオール類(ジエチレングリコール等)と、フタル酸類(テレフタル酸およびイソフタル酸等)または脂肪族ジカルボン酸類とを重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O-PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。これらの熱可塑性樹脂は単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記熱可塑性樹脂は架橋性基を有していてもよい。上記架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基およびアルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという観点から、上記熱可塑性樹脂は、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0071】
上記熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、ポリシロキサン系化合物との相溶性が良好となりやすいという観点からは、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。一方、得られる硬化物が強靭となりやすいという観点からは、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという観点からは、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0072】
上記熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、上記硬化性樹脂全体に対して好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~30重量%である。上記熱可塑性樹脂の添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなる場合がある。上記熱可塑性樹脂の添加量が多いと耐熱性(高温での弾性率)が低くなり易い。
【0073】
熱可塑性樹脂は上記硬化性樹脂に溶解して均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、上記硬化性樹脂に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を上記硬化性樹脂に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態または混合状態としてもよい。
【0074】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、当該熱可塑性樹脂の平均粒子径は適宜設定され得るが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となり易いという観点からは、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0075】
(充填材)
上記硬化性樹脂には必要に応じて充填材を添加してもよい。充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、シリカ系充填材(石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカおよび超微粉無定型シリカ等)、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムおよび無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系充填材等の、従来の封止材の充填材として一般に使用または提案されている充填材等が挙げられる。
【0076】
(老化防止剤)
上記硬化性樹脂には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系老化防止剤等の一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸、リン酸および硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0077】
上記ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、BASF社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられ得る。
【0078】
上記硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィド類(スルフィドカルボン酸エステル類およびヒンダードフェノール系スルフィド類等)、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類およびスルホキシド類等が挙げられる。また、これらの老化防止剤としては、1種が使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
(ラジカル禁止剤)
上記硬化性樹脂にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-3-メチルフェノール(BHT)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)およびテトラキス(メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤、並びにフェニル-β-ナフチルアミン、α-ナフチルアミン、N,N’-第二ブチル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジンおよびN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。また、これらのラジカル禁止剤としては、1種が使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
(溶剤)
上記硬化性樹脂が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。上記溶剤は特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル、およびジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤;クロロホルム、塩化メチレンおよび1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤;酢酸ブチル、イソ酪酸イソブチル等のエステル系溶剤;γーブチロラクトン、εーカプロラクトン、δーバレロラクトン等のラクトン系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤としては、1種が使用されてもよく、2種類以上の混合溶媒として用いられてもよい。
【0081】
溶剤の使用量は適宜設定され得るが、用いる上記硬化性樹脂1gに対しての好ましい使用量の下限は0.001mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。
【0082】
(その他)
上記硬化性樹脂には、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤(アンチモン-ビスマス等)、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤および物性調整剤等を、本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0083】
(用途)
本発明にかかる基板積層体は、種々の用途に用いることができる。従来のアクリル樹脂およびエポキシ樹脂接着剤を用いて作製される基板積層体を用いた各種用途に応用することが可能である。
【0084】
上記用途としては、CMOS・CCDセンサ用中空構造体、MEMSデバイス用中空構造体に本願発明で製造される基板積層体を適用すれば、壁材の接着安定性が可能になり、構造体を不良が減少するため好ましい。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0086】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
(パターン表面性)
作製したパターンは3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000、オリンパス社製)を用いてパターン形状を観察し、パターン表面の表面粗さRaを下記基準に従い評価した。
<評価基準>
○:非常に良好なレベル(Raが5μm以下)
×:実用に適さないレベル(Raが5μmを超えるもの)
【0088】
(パターン高さ)
作製したパターンは3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000、オリンパス株式会社製)を用いてパターンの高さを10点以上測定し、測定したパターンの高さの最大値と最小値の差を算出し、高さばらつきを下記基準に従い評価した。
<評価基準>
○:非常に良好なレベル(パターンの高さの最大値と最小値の差が6μm未満)
×:実用に適さないレベル(パターンの高さの最大値と最小値の差が6μm以上)
【0089】
(パターン接着性)
3D測定レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000、オリンパス株式会社製)を用いて、第2の基板と接着層の接着状態を透明基板側から接着層を観察し、下記基準に従い評価した。接着部分と未接着部分は明らかにコントラストが異なるため観察での判断が可能である。
<評価基準>
○:非常に良好なレベル(接着している)
×:実用に適さないレベル(未接着箇所がある)
【0090】
(合成例1)
ジアリルモノメチルイソシアヌル酸50gをトルエン100gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)87mgを加えた。このようにして得られた溶液を、3%酸素含有の窒素雰囲気下、105℃に加熱した1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン94g、トルエン186gの溶液に3時間かけて滴下した。滴下終了から30分後にH-NMRでアルケニル基の反応率(アルケニル基が減少した割合)が95%以上であることを確認した後、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン55g、トルエン55gの溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後にH-NMRでアルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した後、冷却により反応を終了した。溶媒のトルエンとジオキサンを減圧留去し、「硬化性樹脂A」を得た。
【0091】
(製造例1)
上記硬化性樹脂A100重量部に対し、CEL2021P(ダイセル有機合成カンパニー社製、脂環式エポキシ化合物)を7重量部、CPI―210S(サンアプロ社製、光酸発生剤)を2重量部、IRGANOX1010(BASF社製、酸化防止剤)を0.5重量部の比率で配合、混合し組成物を得た。
【0092】
(実施例1)
100mm×100mmのガラス基板(D263Teco SCHOTT社製)上に製造例1で得られた硬化性樹脂Aを含む組成物をスクリーン印刷装置(DP-320 ニューロング精密工業株式会社製)を用いてスクリーン印刷し幅250μm、高さ50μmの第1のパターンを形成した。スクリーン版はメッシュ数250(本/inch)、線径30μm、乳剤厚30μmのものを使用した。スクリーン印刷後の第1のパターンを作製した基板に幅280μm、高さ45μm、表面粗さRaが5μm以下のガラスの型を押し当て第2のパターンを形成した。第2のパターン形成後に積算光量300mJ/cmで露光し、露光後にパターン表面性、パターン高さを上記方法で観察した。その後、パターン毎に個片化し、ガラス基板上の第2のパターンを介してシリコン基板を積層して120℃のホットプレート上で5MPaの圧力をかけて30秒間、加熱圧着を行い基板積層体を得た。得られた基板積層体について、上記方法でパターン接着性を評価した。
【0093】
(比較例1)
第1のパターンを形成後、型で成型しなかったこと以外は実施例1と同様に実施し、パターン表面性とパターン接着性を評価した。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1のように第1のパターンを形成後に型で成型することで、良好な形状の接着層が得られ、高さばらつきや接着性が良好な基板積層体が得られた。型で成型しなかった比較例1は表面性・高さばらつき・接着性いずれも不十分な結果であった。
【符号の説明】
【0096】
1.硬化性樹脂(第1のパターン)
2.第1の基板
3.型
4.硬化性樹脂(第2のパターン)
5.第2の基板
図1
図2
図3