(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリートの残必要量算出方法、フレッシュコンクリートの残必要量算出システム、及びフレッシュコンクリートの発注支援システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20241018BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20241018BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/02 ESW
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021053468
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中崎 豪士
(72)【発明者】
【氏名】江里口 玲
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172375(JP,A)
【文献】特開2002-285702(JP,A)
【文献】特開2018-084131(JP,A)
【文献】特開2018-199950(JP,A)
【文献】特開2014-233914(JP,A)
【文献】特開2020-045758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0177482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00
E04G 21/02
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠で囲まれてなる打設予定領域内にフレッシュコンクリートを流し込む打設作業中に、前記型枠の天端の位置から前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に対応した残り高さを連続的又は断続的に検知する工程(a)と、
前記打設作業中又は前記打設作業の開始前に、前記型枠の位置情報に基づいて前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの
前記打設予定領域の面積である基準面積を算出する工程(b)と、
前記工程(a)で得られた前記残り高さの情報と、前記工程(b)で得られた前記基準面積の情報とに基づいて演算処理を行って、フレッシュコンクリートの残必要量を連続的又は断続的に算出する工程(c)と
、
前記打設作業の開始前に、電波を受信することで位置情報を検知する位置情報検知部を搭載した測定モジュールを、鉛直上方から見て前記型枠上の異なる3箇所以上の位置に取り付ける工程(d)を有し、
前記工程(b)は、それぞれの前記測定モジュールが取り付けられた位置情報に基づき、幾何学的手法を利用した演算処理によって、前記基準面積を算出する工程であることを特徴とする、フレッシュコンクリートの残必要量算出方法。
【請求項2】
工程(d)で取り付けられる前記測定モジュールは、対象物との間の距離を測定可能な距離測定部を搭載しており、
前記工程(a)は、前記測定モジュールに搭載された前記距離測定部によって、前記測定モジュールの設置位置から前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離を測定することで、前記残り高さを検知する工程であることを特徴とする、請求項
1に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出方法。
【請求項3】
前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの、前記打設予定領域内に存在する障害物の面積である除外面積を算出する工程(e)を有し、
前記工程(c)は、前記工程(b)で得られた前記基準面積から前記工程(e)で得られた前記除外面積を減じた値に、前記工程(a)で得られた前記残り高さを乗じる処理を含む演算処理を行って、前記フレッシュコンクリートの残必要量を算出することを特徴とする、請求項
1又は2に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出方法。
【請求項4】
型枠で囲まれてなる打設予定領域内にフレッシュコンクリートを流し込む打設作業中にフレッシュコンクリートの残必要量を算出するシステムであって、
電波を受信することで位置情報を検知する位置情報検知部と、対象物との間の距離を計測する距離測定部とが一体化して搭載された、複数の測定モジュールと、
鉛直上方から見たときの前記複数の測定モジュールの設置位置に関する第一情報と、前記測定モジュールから前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に関する第二情報とに基づいて、フレッシュコンクリートの残必要量を演算処理によって算出する演算部と、
前記演算部によって算出された、前記フレッシュコンクリートの残必要量に関する残量情報が記録されると共に、一以上の操作端末に対して前記残量情報を送信可能に構成されたサーバとを備え
、
複数の前記測定モジュールは、鉛直上方から見て前記型枠上の異なる3箇所以上の位置に取り付けられており、
前記演算部は、前記第一情報に基づき、幾何学的手法を利用して前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの前記打設予定領域の面積である基準面積を算出すると共に、前記第二情報から前記型枠の天端の位置から前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に対応した残り高さを検知し、前記基準面積と前記残り高さを乗じる処理を含む演算処理を行って、前記フレッシュコンクリートの残必要量を算出することを特徴とする、フレッシュコンクリートの残必要量算出システム。
【請求項5】
前記
幾何学的手法は、前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの前記複数の測定モジュールの設置位置を頂点とする多角形を利用した閉合トラバース演算
を含むことを特徴とする、請求項
4に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出システム。
【請求項6】
前記複数の測定モジュールに搭載されている前記位置情報検知部は、RTK測位により、鉛直上方から見たときのそれぞれの前記複数の測定モジュールの設置位置を検知することを特徴とする、請求項
4又は5に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出システム。
【請求項7】
前記演算部は、前記複数の測定モジュールのうちの少なくとも1つの前記測定モジュールに搭載されており、
前記演算部が搭載された前記測定モジュールが、演算処理によって得た前記残量情報を前記サーバに対して送信することで、前記サーバ内に記録された前記残量情報が更新されることを特徴とする、請求項
4~6のいずれか1項に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出システム。
【請求項8】
前記演算部は、前記サーバに搭載されており、
前記測定モジュールから前記サーバに対して、前記第一情報及び前記第二情報が送信され、
前記サーバに搭載された前記演算部は、受信した前記第一情報及び前記第二情報に基づいて前記残量情報を算出することを特徴とする、請求項
4~7のいずれか1項に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出システム。
【請求項9】
フレッシュコンクリートの発注支援システムであって、
請求項
4~8のいずれか1項に記載のフレッシュコンクリートの残必要量算出システムを備え、
前記操作端末は、前記残量情報に基づく発注必要量のフレッシュコンクリートを発注する旨の発注情報を、発注先に対して送信する指示を行う発注処理部を備えることを特徴とする、フレッシュコンクリートの発注支援システム。
【請求項10】
前記サーバは、フレッシュコンクリートの発注済未使用量を更新可能な状態で記憶しており、前記残量情報に記載されたフレッシュコンクリートの残必要量から前記発注済未使用量を差し引くことで前記発注必要量を算出し、前記操作端末に送信することを特徴とする、請求項
9に記載のフレッシュコンクリートの発注支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設作業に必要なフレッシュコンクリートの残量を算出する方法及びそのシステムに関する。また、本発明は、フレッシュコンクリートの発注処理を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を建設するに際しては、建設したいコンクリート構造物の形状に合わせて設計・配置された型枠で囲まれた領域に、フレッシュコンクリート(「生コン」とも称される。)が流し込まれる(打設)。その後、打設されたフレッシュコンクリートの水和が進行して一定程度の強度が発現すると、型枠を外す作業(脱型)が行われる。
【0003】
フレッシュコンクリートの打設段階では、想定量よりもやや多めの数量を見積もってフレッシュコンクリートの発注が行われるケースが多い。この場合、使用されずに余ったフレッシュコンクリート(以下、「残コン」と称する。)は、フレッシュコンクリートの製造工場(生コン工場)に返送されており、その処理が旧来から問題となっている。
【0004】
生コン工場に返送されるフレッシュコンクリート(以下、「戻りコン」と称する。)の量が、月に100m3を超える工場も存在し、全国的には年間で150~200万m3にも及ぶと言われている。このため、戻りコンの存在は、生コン会社の経費面だけでなく業界の環境面からも課題となっている。
【0005】
戻りコンの量を抑制するための手法として、例えば下記特許文献1に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
残コンや戻りコンが発生する理由としては、打設作業に必要なフレッシュコンクリート量を算出するのが難しいため、正確な量を事前に注文しにくいことによる。このような事情により、まずは必要と推定される量から若干少なめのコンクリート量を注文しておき、打設箇所を観察しながらコンクリート液面の上昇挙動を確認し、目分量ないし型枠天端からの距離を巻き尺で測定することで必要量を認識して追加注文を行うという作業手順が採用される場合が多い。
【0008】
最終的なコンクリート量の発注段階において、交通状況によりコンクリートミキサー車(アジテータ車)の到着が遅れた場合には、既に打設されたコンクリート表面との界面に打ち継ぎ不良などの施工不良が生じるおそれがある。このため、施工管理の観点から追加注文時には多めにコンクリートを発注する傾向にあり、余ったコンクリートが残コン・戻りコンとして生じる。
【0009】
かかる事情に鑑みると、残コンや戻りコンの発生量を抑制するためには、特に打設途中において、フレッシュコンクリートの残必要量をなるべく精度良く検知することが要求される。つまり、打設の進行に伴って、なるべくリアルタイムでフレッシュコンクリートの残必要量が検知できるのが好ましい。
【0010】
上記特許文献1の技術は、打設作業の開始以前に、型枠内部の容積を深度センサないし画像撮影にて取得し、この取得した情報に基づいてフレッシュコンクリートの必要量を検知するというものである。しかし、この方法の場合には、打設の作業中(例えば打設工事の最終段階等)に、現時点での打設の状況に基づいてフレッシュコンクリートの残必要量を推定することはできない。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、特に打設作業の途中において、当該打設作業を完了させるのに必要なフレッシュコンクリートの残量を算出するための方法及びシステムを提供することを目的とする。また本発明は、この方法を用いたフレッシュコンクリートの発注処理の支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るフレッシュコンクリートの残必要量算出方法は、
型枠で囲まれてなる打設予定領域内にフレッシュコンクリートを流し込む打設作業中に、前記型枠の天端の位置から前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に対応した残り高さを連続的又は断続的に検知する工程(a)と、
前記打設作業中又は前記打設作業の開始前に、前記型枠の位置情報に基づいて前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの基準面積を算出する工程(b)と、
前記工程(a)で得られた前記残り高さの情報と、前記工程(b)で得られた前記基準面積の情報とに基づいて演算処理を行って、フレッシュコンクリートの残必要量を連続的又は断続的に算出する工程(c)とを有することを特徴とする。
【0013】
上記方法によれば、工程(b)によって型枠で囲まれた打設予定領域の上面視の面積(基準面積)が算定される。また、工程(a)によって、打設作業中に変化するフレッシュコンクリートの液面高さに起因した残り高さが算定される。よって、この工程(a)及び(b)で得られた結果に基づいて演算処理を行うことで、フレッシュコンクリートの残必要量を連続的又は断続的に算出できる。
【0014】
これにより、例えば建設現場の作業員が、このフレッシュコンクリートの残必要量を把握し、この量に基づいて追加でフレッシュコンクリートを発注することで、従来よりも残コンや戻りコンの発生を抑制できる。
【0015】
前記フレッシュコンクリートの残必要量算出方法は、更に、
前記打設作業の開始前に、電波を受信することで位置情報を検知する位置情報検知部を搭載した測定モジュールを、鉛直上方から見て前記型枠上の異なる3箇所以上の位置に取り付ける工程(d)を有し、
前記工程(b)は、それぞれの前記測定モジュールが取り付けられた位置情報に基づく演算処理によって、前記基準面積を算出する工程であるものとしても構わない。
【0016】
上記方法によれば、事前に測定モジュールを所定の箇所に取り付けておくのみで、自動的な演算処理によって型枠の内側に係る打設予定領域の断面積を算出できる。つまり、予め詳細な設計図が入手できない場合等においても、打設作業中に、採寸作業等の別途の作業負担を作業員に課すことがない。
【0017】
位置情報検知部としては、位置情報を検知する機能を有していればその形式は不問であり、例えば、測位衛星からの電波、Wi-Fi(登録商標)からの電波、赤外線等を受信して、自己位置を推定する方法が利用可能である。ただし、位置情報の推定精度を高める観点からは、RTK(Real Time Kinematic)測位を利用するのが好ましい。この場合、位置情報の精度誤差を数cm以内に抑制できるため、この位置情報に基づいて演算することで打設予定領域の断面積(すなわち基準面積)を精度良く推定できる。
【0018】
また、演算部が行う演算手法としては、幾何学的手法を採用することができ、例えば閉合トラバース演算が利用できる。すなわち、鉛直上方から見たときの、複数の測定モジュールのそれぞれの設置位置を、それぞれを頂点とする多角形の構成要素として認識した上で、この多角形で囲まれた領域の面積を算出する方法が採用できる。
【0019】
工程(d)で取り付けられる前記測定モジュールは、対象物との間の距離を測定可能な距離測定部を搭載しており、
前記工程(a)は、前記測定モジュールに搭載された前記距離測定部によって、前記測定モジュールの設置位置から前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離を測定することで、前記残り高さを検知する工程であるものとしても構わない。
【0020】
上記方法によれば、残り高さを測定するための距離測定機能と、基準面積を算出するための位置情報検出機能の両者が搭載された測定モジュールを、複数箇所に事前に取り付けておくことで、フレッシュコンクリートの残必要量が自動的に算出される。このため、作業負担が極めて軽減される。距離測定部としては、例えばレーザ距離計を採用することができる。
【0021】
前記フレッシュコンクリートの残必要量算出方法は、前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの、前記打設予定領域内に存在する障害物の面積である除外面積を算出する工程(e)を有し、
前記工程(c)は、前記工程(b)で得られた前記基準面積から前記工程(e)で得られた前記除外面積を減じた値に、前記工程(a)で得られた前記残り高さを乗じる処理を含む演算処理を行って、前記フレッシュコンクリートの残必要量を算出するものとしても構わない。
【0022】
型枠に囲まれた打設予定領域内には、鉄筋等が配設されるのが一般的である。特に、打設作業の終盤の時期においては、鉄筋は鉛直方向に延在しており、鉛直上方から見たときにこの鉄筋の占有面積の変化量は少ない。よって、鉛直上方から見たときの鉄筋の占有面積が把握できている場合には、工程(b)で算出された基準面積から、この鉄筋の占有面積(除外面積)を除外することで、鉛直上方から見てフレッシュコンクリートが埋設される予定の領域の面積を更に精度よく算出できる。
【0023】
除外面積は、例えば、打設作業中の所定時間内にアジテータ車から型枠の内側に投入されたフレッシュコンクリートの投入量と、この所定時間内におけるフレッシュコンクリートの液面の変化量とに基づいて算出できる。詳細については「発明を実施するための形態」の項で後述される。
【0024】
また、本発明は、型枠で囲まれてなる打設予定領域内にフレッシュコンクリートを流し込む打設作業中にフレッシュコンクリートの残必要量を算出するシステムであって、
電波を受信することで位置情報を検知する位置情報検知部と、対象物との間の距離を計測する距離測定部とが一体化して搭載された、複数の測定モジュールと、
鉛直上方から見たときの前記複数の測定モジュールの設置位置に関する第一情報と、前記測定モジュールから前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に関する第二情報とに基づいて、フレッシュコンクリートの残必要量を演算処理によって算出する演算部と、
前記演算部によって算出された、前記フレッシュコンクリートの残必要量に関する残量情報が記録されると共に、一以上の操作端末に対して前記残量情報を送信可能に構成されたサーバとを備えたことを特徴とする。
【0025】
上記システムによれば、コンクリート構造物の建設現場の作業員が、例えばスマートフォンやタブレットPC等の操作端末を用いてサーバにアクセスすることで、現時点におけるフレッシュコンクリートの残必要量を容易に認識することができる。これにより、追加のフレッシュコンクリートの発注を行う場合の発注量や発注時期の判断基準を提供できる。
【0026】
なお、コンクリート構造物の建設現場に対しては、現場を指揮する施工担当者、フレッシュコンクリートを製造供給する生コン工場の製造担当者、及び生コン工場から現場までフレッシュコンクリートを運搬する運搬担当者等、雇用主の異なる複数の作業員が関与するのが一般的である。このため、これらの作業員が、リアルタイム且つマルチデバイスで現状の打設状況、すなわちフレッシュコンクリートの残必要量を確認できるように、前記サーバとしては、操作端末の種別を問わずにアクセス可能なパブリッククラウドシステムを利用したサーバとするのが好適である。また、アクセス時の認証においても、IDやパスワードは、建設現場毎に共通化しておくのが利便性の上からは好ましい。
【0027】
前記演算部は、前記第一情報から前記打設予定領域を鉛直上方から見たときの基準面積を算出すると共に、前記第二情報から前記型枠の天端の位置から前記フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に対応した残り高さを検知し、前記基準面積と前記残り高さを乗じる処理を含む演算処理を行って、前記フレッシュコンクリートの残必要量を算出するものとしても構わない。
【0028】
前記演算部は、前記複数の測定モジュールのうちの少なくとも1つの前記測定モジュールに搭載されており、
前記演算部が搭載された前記測定モジュールが、演算処理によって得た前記残量情報を前記サーバに対して送信することで、前記サーバ内に記録された前記残量情報が更新されるものとしても構わない。
【0029】
この場合、複数の測定モジュールのうちの1つを「親機モジュール」とし、他を「子機モジュール」とするものとしても構わない。例えば、親機モジュールは、複数の子機モジュールからそれぞれの設置位置に関する第一情報が送信される。そして、親機モジュールの演算部は、子機モジュールから送信された第一情報、自身が検知した第一情報、及び自身が検知した、測定モジュールからフレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離に関する第二情報に基づいて、演算処理によってフレッシュコンクリートの残必要量を算出し、サーバに対して送信する。
【0030】
なお、上記の場合において、フレッシュコンクリートの残必要量を算出するに際しては、それぞれの子機モジュールから送信された第二情報も利用して構わない。一例として、各測定モジュールから送信された第二情報の値を平均化した値をもって、フレッシュコンクリートの液面までの鉛直方向に係る距離とするものとしてもよい。
【0031】
前記演算部は、前記サーバに搭載されており、
前記測定モジュールから前記サーバに対して、前記第一情報及び前記第二情報が送信され、
前記サーバに搭載された前記演算部は、受信した前記第一情報及び前記第二情報に基づいて前記残量情報を算出するものとしても構わない。
【0032】
本発明に係るフレッシュコンクリートの発注支援システムは、前記フレッシュコンクリートの残必要量算出システムを備え、
前記操作端末は、前記残量情報に基づく発注必要量のフレッシュコンクリートを発注する旨の発注情報を発注先に対して送信する指示を行う発注処理部を備えることを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、現時点で精度良く推定されたフレッシュコンクリートの残必要量に基づいて、フレッシュコンクリートの発注を行うことができるため、残コンや戻りコンの発生量を従来よりも抑制できる。また、建設現場のフレッシュコンクリートの発注を統括する作業員が、自己の保有するスマートフォン等の操作端末を用いて、容易に発注処理が行える。前記発注先としては、例えば生コン工場等が挙げられる。
【0034】
前記サーバは、フレッシュコンクリートの発注済未使用量を更新可能な状態で記憶しており、前記残量情報に記載されたフレッシュコンクリートの残必要量から前記発注済未使用量を差し引くことで前記発注必要量を算出し、前記操作端末に送信するものとしても構わない。
【0035】
フレッシュコンクリートの発注済未使用量は、例えば、アジテータ車が建設現場に到着した台数と、アジテータ車に収容可能なフレッシュコンクリート容量から利用済又は利用中のフレッシュコンクリート量を算出した上で、現時点までの発注総量から差し引くことで算出される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、打設作業の途中においても、当該打設作業を完了させるのに必要なフレッシュコンクリートの残量を精度良く算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】建設現場において測定モジュールが取り付けられた状態を示す模式的な図面である。
【
図2】測定モジュールの構成を機能的に示すブロック図である。
【
図3】演算部によって型枠の内側領域の面積を演算する方法を説明するための模式的な図面である。
【
図4】打設予定領域内に存在する障害物の存在を考慮した場合の演算部の演算手法を説明するための模式的な図面である。
【
図5】フレッシュコンクリートの残必要量算出システムの第一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図6】フレッシュコンクリートの残必要量算出システムの第一実施形態の別の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図7】フレッシュコンクリートの残必要量算出システムの第一実施形態の別の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図8】フレッシュコンクリートの残必要量算出システムの第二実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図9】フレッシュコンクリートの残必要量算出システムの第二実施形態の別の構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下において、本発明に係るフレッシュコンクリートの残必要量算出方法、フレッシュコンクリートの残必要量算出システム、及びフレッシュコンクリートの発注支援システムの実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
[第一実施形態]
図1は、建設現場において、本発明に係るフレッシュコンクリートの残必要量算出システムの要素である測定モジュール10が取り付けられた状態を示す模式的な図面である。建設現場1では、型枠2で囲まれた打設予定領域内に、フレッシュコンクリート3を流し込む作業が行われる。打設予定領域には、所定の箇所に鉄筋4が配設されている。
図1内の+Z方向が鉛直上向きである。
【0040】
測定モジュール10は、後述するように、レーザ光10Lを鉛直下方に向けて照射することで、フレッシュコンクリート3の液面高さを測定できる。また、測定モジュール10は、後述するように、当該測定モジュール10が取り付けられている位置情報を検知できる。
図1に示すように、測定モジュール10は、鉛直上方から見て複数の箇所に取り付けられている。
【0041】
図2は、測定モジュール10の構成を機能的に示すブロック図である。測定モジュール10は、位置情報検知部11、距離測定部12、演算部13、及び送受信部15を備える。
【0042】
位置情報検知部11は、設置されている測定モジュール10の位置を検知する機能的手段である。具体的には、位置情報検知部11は電波を受信して位置情報を検知するものであり、好適には測位衛星からの電波を用いたRTK測位による手法が採用される。RTK測位とは、不図示の基地局と受信機(ここでいう位置情報検知部11)とにおいて、それぞれ測位衛星からの搬送波を受信すると共に、基地局から受信機に対して送信される補正情報に基づいて、受信機の設置位置を精度良く検知する手法である。この手法によれば、数cm以内の誤差で精度良く設置位置が検知できる。
【0043】
距離測定部12は、測定モジュール10の設置位置からフレッシュコンクリート3の液面までの鉛直方向(
図1内のZ方向)の距離を測定する機能的手段である。具体的には、距離測定部12としては、レーザ距離計を採用することができる。レーザ距離計は、対象物に対してレーザ光10L(
図1参照)を照射すると共に反射光を受光し、レーザ光10Lを出射してから反射光を受光するまでの時間に基づいて距離を計測する装置である。例えば、
図1に示すように、測定モジュール10(距離測定部12)から鉛直下方に向けてレーザ光10Lを照射することで、フレッシュコンクリート3の液面で反射した反射光が測定モジュール10で受光される。反射光の受光タイミングは、測定モジュール10の設置位置からフレッシュコンクリート3の液面までの鉛直方向の距離に依存するため、このタイムラグによって前記距離が測定できる。なお、距離測定部12による前記距離の測定のタイミングは、フレッシュコンクリート3を型枠2の隅々まで充填させた後、つまり、締固め後であることが好ましいが、特に限定されない。例えば、高流動コンクリートの場合には締固め作業が不要であり、任意のタイミングで測定を行うことができる。
【0044】
演算部13は、位置情報検知部11で検知された位置情報(「第一情報」に対応する。)、及び距離測定部12で測定された距離情報(「第二情報」に対応する。)に基づいて、現時点から打設完了までに必要なフレッシュコンクリートの量(残必要量)を演算処理によって算出する機能的手段であり、CPUやMPU等のプロセッサで構成される。演算部13における演算方法の具体的な例は、後述される。
【0045】
送受信部15は、他の機器に対して情報の送受信を行う通信用インタフェースである。本実施形態の測定モジュール10は、後述するように、演算部13で算出されたフレッシュコンクリートの残必要量に関する情報を、送受信部15によってサーバ20(
図5で後述)に対して送信する。
【0046】
演算部13は、それぞれの測定モジュール10が備える位置情報検知部11で検知された位置情報に基づいて、鉛直上方から(-Z方向に)見たときの型枠2の内側に係る領域の面積(すなわち断面積)を演算によって推定する。
図3は、この演算方法を模式的に説明するための図面である。
【0047】
上述したように、それぞれの測定モジュール10は、鉛直上方から見て複数の箇所に取り付けられている。ここでは、一例として、8つの測定モジュール10(10a,10b,…,10h)が、打設対象となる建設現場1に取り付けられているものとして説明する。
【0048】
なお、測定モジュール10は、
図1に模式的に示したように型枠2の上部に取り付けられても構わないし、型枠2の上方に設置されている図示しない建設資材(仮設足場や単管パイプ等)に取り付けられても構わない。
【0049】
一例として、各測定モジュール10(10a,10b,…,10h)の位置情報検知部11で検知された位置情報は、いずれかの測定モジュール(ここでは便宜上、測定モジュール10aとする。)の演算部13に対して送られる。この例では、測定モジュール10aが親機となり、それ以外の測定モジュール(10b,10c,…,10h)が子機となる。親機と子機の間では、送受信部15を介して相互に通信が可能に構成されている。なお、この通信手段は任意である。
【0050】
測定モジュール10aに搭載された演算部13は、それぞれの測定モジュール10(10a,10b,…,10h)の位置情報に基づいて、幾何学的手法により型枠2の内側の領域11Aに係る面積を算出する。幾何学的手法としては、例えばトラバース測量の技術を利用することができる。より詳細には、それぞれの測定モジュール10(10a,10b,…,10h)の位置を結ぶ多角形を認識した上で、基準点と未知点の距離と方位角を求めることで未知点の座標を求めて閉合トラバースを認定し、倍横距法や座標法等の公知の手法によって閉合トラバースの内側の面積が算出される。
【0051】
演算部13は、上記方法によって算出された型枠2に囲まれた領域の面積と、距離測定部12で測定された測定モジュール10の設置位置からフレッシュコンクリート3の液面までの鉛直方向の距離(すなわち残り高さ)とに基づいて、演算処理によってフレッシュコンクリートの残必要量を算出する。なお、測定モジュール10が、型枠2よりも上方の建設資材に取り付けられている場合には、演算部13において、フレッシュコンクリート3の天端の予定高さと測定モジュール10の取り付け高さの差分値を、距離測定部12で測定された前記距離から差し引くことで、残り高さを算出するものとしても構わない。この場合、フレッシュコンクリート3の天端の予定高さと測定モジュール10の取り付け高さの差分値に関する情報は、予め測定モジュール10に対して入力され、測定モジュール10内で記録されるものとしてよい。また、測定モジュール10が型枠2と同じ高さの位置に取り付けられる場合であっても、距離測定部12がレーザ距離計等の光学的な測定手段である場合には、その受光面が、型枠2の天端の位置よりも上方に位置するように、測定モジュール10は取り付けられる。この場合、演算部13において、フレッシュコンクリート3の天端の予定高さと受光面の高さとの差分値を、距離測定部12で測定された前記距離から差し引くことで、残り高さを算出するものとしても構わない。
【0052】
上述した、残り高さの算出のための演算処理についても、各測定モジュール10(10a,10b,…,10h)のうちの一つである親機の測定モジュール10aが備える演算部13で行われるものとして構わない。
【0053】
演算処理に利用される残り高さに関する情報は、親機である測定モジュール10aに搭載された距離測定部12の測定結果のみに基づくものとしても構わないし、測定モジュール10aに加えて、他の測定モジュール(10b,10c,…,10h)のそれぞれに搭載された距離測定部12の測定結果についても考慮するものとしても構わない。後者の場合には、子機である測定モジュール(10b,10c,…,10h)から、親機である測定モジュール10aに対して距離測定部12の測定結果が送信される。このとき、測定モジュール10aの演算部13は、例えば全ての測定モジュール10(10a,10b,…,10h)の測定結果の平均値をもって残り高さとしても構わない。
【0054】
演算部13は、型枠2に囲まれた領域の面積と残り高さを乗じることで、フレッシュコンクリートの残必要量の推定値を算出する。なお、建設現場1では、フレッシュコンクリート3の打設が進行されることで、フレッシュコンクリート3の液面は経時的に上昇し、これに伴って残り高さは経時的に減少する。測定モジュール10aの演算部13は、距離測定部12による測定結果が連続的又は断続的に入力される構成であり、この情報に基づいて経時的に変化する残り高さの値を用いて、フレッシュコンクリートの残必要量の推定値を算出する。つまり、この構成によれば、測定モジュール10aの演算部13は、打設の進行に伴うフレッシュコンクリート3の液面の上昇の程度を踏まえた上で、現時点におけるフレッシュコンクリートの残必要量の推定値が算出される。
【0055】
演算部13は、打設予定領域内に存在する障害物を考慮した上で、フレッシュコンクリートの残必要量をより精度良く推定するものとしても構わない。この障害物の体積を推定する方法としては、任意の方法が採用できる。一例として、事前に構造物の3次元CADデータや寸法図より、鉄筋4などの打設対象除外物の体積に関する情報を得る方法が利用できる。別の一例として、打設対象である型枠2や型枠2が設置されている区域の上方からUAV(ドローン)などに備えられた撮像装置を用いて、型枠2の内部を撮影し、画像処理によって型枠2の上端の断面積と鉄筋量を推定する方法が利用できる。また、CADデータやドローンが準備できない場合であっても、下記の方法で演算処理によって推定することは可能である。
図4は、障害物の存在を考慮した場合の演算部13の演算手法を説明するための模式的な図面である。
【0056】
上述した方法により、演算部13は、打設予定領域の断面積すなわち型枠2で囲まれた領域の面積(
図4内の面積S2)を算出する。この面積S2は、「基準面積」に対応する。
【0057】
演算部13は、距離測定部12の測定結果に基づいて、時刻t1における残り高さh(t1)から時刻t2における残り高さh(t2)を差し引くことで、差分値H(T12)を算出する。この差分値H(T12)は、時刻t1から時刻t2までの時間T12内におけるフレッシュコンクリート3の液面の上昇値に対応する。
【0058】
演算部13は、予め測定された、アジテータ車から打設予定領域内に流し込まれるフレッシュコンクリート3の単位時間あたりの体積(すなわち流量)に、時間T12を乗じる。これにより、時刻t1から時刻t2までの時間T12内に、実際に流し込まれたフレッシュコンクリート3の流量V3(T12)が算出される。
【0059】
演算部13は、基準面積Sと、時刻t1から時刻t2までの時間T12内におけるフレッシュコンクリート3の液面の上昇値H(T12)との積から、実際に流し込まれたフレッシュコンクリート3の流量V3(T12)を差し引く。これにより、時刻t1から時刻t2までの時間T12内に、フレッシュコンクリート3によって埋め込まれた鉄筋4の体積V4(T12)が算出される。
【0060】
演算部13は、体積V4(T12)を、時刻t1から時刻t2までの時間T12内におけるフレッシュコンクリート3の液面高さの上昇値H(T12)で除することで、鉄筋4の断面積S4を算出する。この断面積S4が除外面積に対応する。
【0061】
演算部13は、型枠2に囲まれた領域の面積すなわち基準面積S2から、除外面積S4を差し引いた値に、時刻t2の時点における残り高さh(t2)を乗じることで、時刻t2の時点におけるフレッシュコンクリート3の残必要量の推定値Vr(t2)を算出する。この方法によれば、鉄筋4等の障害物を考慮した状態で、フレッシュコンクリート3の残必要量を推定できる。
【0062】
特に打設作業の終盤の段階においては、鉄筋4等の障害物の断面積S4が経時的に変化することが想定しにくい。このため、時刻t1から時刻t2までの時間T12の間におけるフレッシュコンクリート3の液面高さの上昇値H(T12)の値に基づいて算出された鉄筋4の断面積S4の推定値によって、時刻t2の時点でフレッシュコンクリート3の液面よりも上方に突出している鉄筋4の断面積S4の値とすることができる。
【0063】
打設作業の終盤の段階とは、型枠2で囲まれる打設予定領域の規模に応じて様々であるが、目安として、コンクリート打設計画上、打設予定領域に打設完了するまでに現場へ入場するアジテータ車が残り20台以下程度となった段階である。
【0064】
なお、アジテータ車から打設予定領域内に流し込まれるフレッシュコンクリート3の流量に関する情報は、作業員が事前に測定した後に測定モジュール10に対して送信しておき、測定モジュール10が備える不図示の記憶部に記録されているものとしても構わない。
【0065】
なお、鉄筋4等の障害物の体積が、型枠の底面から天端までの鉛直方向において、変化しない場合には、初回の推定値Vrの算出において演算された除外面積S4を、それ以降の推定値Vrの算出における除外面積S4として用いてもよい。
【0066】
測定モジュール10が備える演算部13で算出されたフレッシュコンクリート3の残必要量に関する情報は、サーバ20に送信される。
図5は、サーバ20を含むシステム100の構成を模式的に示すブロック図である。
【0067】
サーバ20は、建設現場1(
図1参照)とは離れた箇所に設置されており、好適には、機器の種別を問わずに接続が可能な、パブリッククラウドシステムを利用したサーバである。サーバ20は、情報を格納するための記憶部21と、複数の端末や装置との間で情報の送受信を行うためのインタフェースである送受信部22とを備える。
【0068】
測定モジュール10が算出した、フレッシュコンクリート3の残必要量に関する情報は、ネットワーク回線NWを介してサーバ20に対して送信され、記憶部21に格納される。上述したように、測定モジュール10は、連続的又は断続的に、現時点におけるフレッシュコンクリート3の残必要量の推定値を算出するため、この算出結果に関する情報が実質的にリアルタイムでサーバ20に対して送信される。
【0069】
サーバ20は、建設現場1の作業員等が保有する操作端末30から接続可能に構成されている。操作端末30からサーバ20に対して接続を行うに際しては、ユーザIDやパスワードの入力を求める所定の認証処理が事前に行われるものとしても構わない。建設現場1の場所に応じて共通のユーザIDやパスワードを設定しておくことで、当該建設現場1に関与する各作業員が、サーバ20に対して接続しやすくなる。この操作端末30としては、例えばスマートフォンやタブレットPC、ノートブックPC、ウェアラブルデバイスが利用可能である。なお、操作端末30は、システム100の運用元が提供するアプリケーションを実行することで、サーバ20に対して接続するものとしても構わない。
【0070】
建設現場1の作業員が、操作端末30を操作して送受信部32からサーバ20に対して接続すると、サーバ20の記憶部21に記録されているフレッシュコンクリート3の残必要量に関する情報が、ネットワーク回線NWを通じて操作端末30で受信される。作業員は、操作端末30の表示部31を確認することで、現時点における建設現場1でのフレッシュコンクリート3の残必要量を認識できる。
【0071】
なお、上述したように、測定モジュール10からサーバ20に対しては、連続的又は断続的にフレッシュコンクリート3の残必要量に関する情報が送信される。このため、サーバ20の記憶部21は、フレッシュコンクリート3の残必要量の経時的な変化の記録が可能である。操作端末30の表示部31には、サーバ20からの情報に基づいて、フレッシュコンクリート3の残必要量の経時的な変化の態様が、例えばグラフ等によって表示されるものとしても構わない。このグラフ化の機能は、例えば、本システム100の運用元が提供するアプリケーションによって実現される。
【0072】
本システム100によれば、建設現場1に存在する複数の作業員が、自己の保有する操作端末30を操作してサーバ20に対して接続することで、現時点でのフレッシュコンクリート3の残必要量をリアルタイムに認識できる。これにより、追加のフレッシュコンクリート3の発注を行う場合の発注量や発注時期の判断基準とすることができる。
【0073】
なお、
図5に示すように、生コン工場に設置された工場内端末40からも、サーバ20に対して接続できるものとしても構わない。これにより、生コン工場側でも、建設現場1におけるフレッシュコンクリート3の残必要量をリアルタイムに認識できる。
【0074】
図6に示すように、操作端末30が発注処理部33を備えるものとしても構わない。これにより、建設現場1に存在するフレッシュコンクリート3の発注担当の作業員が、自己の保有する操作端末30によって現時点でのフレッシュコンクリート3の残必要量を認識した上で、当該残必要量に対応した量(発注必要量)で、追加のフレッシュコンクリート3の発注処理を行える。この発注情報は、ネットワーク回線NWを介して、発注先に対して送信される。発注先としては、例えば生コン工場の工場内端末40とすることができるが、生コン工場以外の発注先の拠点に設置された端末や、発注先の担当者のモバイル端末であってもよい。。生コン工場側では、発注情報に対応した発注量のフレッシュコンクリート3の製造(練り混ぜ)を行うと共に、建設現場1への出荷の準備が行われる。つまり、
図6に示すシステム100によれば、フレッシュコンクリート3の発注処理の支援が可能となる。なお、発注情報は、少なくとも、発注必要量に関する情報と出荷すべき場所等の発注元に関する情報とを含むものであるが、その他の情報を含んでも構わない。
【0075】
本システム100で利用されるネットワーク回線NWの通信方式は任意であるが、通常、フレッシュコンクリートの製造が10分以内で完了することを考慮し、データ遅延の少ない数百MHz以上の通信周波数を示す高速通信を採用するのが好適である。
【0076】
ところで、サーバ20の記憶部21に対してフレッシュコンクリート3の残必要量に関する情報が格納された時点において、すでに生コン工場に対してフレッシュコンクリート3の発注を行ったものの未だ使用されていない量(発注済未使用量)が存在する場合があり得る。具体的には、生コン工場から建設現場1に向かって運搬中であるフレッシュコンクリート3や、建設現場1に到着したばかりのフレッシュコンクリート3の量が、発注済未使用量に対応する。
【0077】
図7に示すように、サーバ20が演算部23を備える場合には、演算部23において、測定モジュール10から送信されたフレッシュコンクリート3の残必要量から、発注済未使用量を差し引くことで、発注必要量を算出するものとしても構わない。この発注必要量に関する情報は、サーバ20から操作端末30に対して送信される。操作端末30の発注処理部33において発注処理が行われると、発注必要量(発注量)と発注現場に関する情報が記載されたフレッシュコンクリート3の発注情報が、発注先の一例である生コン工場の工場内端末40に送信される。
【0078】
サーバ20の記憶部21には、これまでの発注情報が記録されるものとしても構わない。建設現場1には、フレッシュコンクリート3を運搬するためのアジテータ車が到着することを検知する機能を搭載したゲートが設けられている場合がある。この場合には、アジテータ車の到着がゲートによって検知されると、その旨の情報がサーバ20に対して送信されることで、アジテータ車が建設現場1に到着したことが認識できる。アジテータ車が運搬可能なフレッシュコンクリート3の容量と到着台数とに基づいて、現場に到着したフレッシュコンクリートの量が認識できるため、既に発注された総量からこの到着量を差し引くことで、発注済で未到着の量を検知できる。ただし、発注済未使用量の検知方法は、この方法には限られない。
【0079】
[第二実施形態]
第一実施形態では、測定モジュール10が備える演算部13において、フレッシュコンクリート3の残必要量が算出されると共に、この残必要量に関する情報が測定モジュール10からサーバ20に対して送信されるものとした。しかし、この演算処理は測定モジュール10以外の箇所で行われるものとしても構わない。
【0080】
例えば、
図8に示すように、サーバ20に備えられる演算部23によって、フレッシュコンクリート3の残必要量を推定するための演算処理が行われるものとしてもよい。この場合、各測定モジュール10は、それぞれの位置情報検知部11で検知された位置情報と、距離測定部12で測定された距離情報とを、ネットワーク回線NWを通じてサーバ20に対して送信する。サーバ20の演算部23では、第一実施形態と同様の方法によって演算処理が行われ、フレッシュコンクリートの残必要量の推定値が算出される。つまり、この場合には、各測定モジュール10(10a,10b,…)が演算部13を備えないものとしても構わない。
【0081】
また、
図9に示すように、建設現場1の近くに測定モジュール10(10a,10b,…)との間で情報の送受信が可能な演算装置50が設置されるものとしてもよい。この場合、各測定モジュール10は、それぞれの位置情報検知部11で検知された位置情報と、距離測定部12で測定された距離情報とを、演算装置50に対して送信する。演算装置50が備える演算部51では、これらの情報に基づいて、第一実施形態と同様の方法によって演算処理が行われ、フレッシュコンクリートの残必要量の推定値が算出される。算出結果に関する情報は、演算装置50の送受信部52より、ネットワーク回線NWを通じてサーバ20に対して送信される。この演算装置50としては、例えば演算機能が搭載されたルータとすることができる。
【0082】
その他は、第一実施形態と共通するため、説明が割愛される。
【0083】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0084】
〈1〉上記実施形態では、測定モジュール10が、位置情報検知部11と距離測定部12との両者を搭載した、単一の装置であるものとして説明した。しかし、位置情報検知部11と距離測定部12とが、別体で構成されていても構わない。
【0085】
〈2〉上述したように、複数の測定モジュール10に搭載される位置情報検知部11で検知されたそれぞれの位置情報は、型枠2に囲まれた領域の断面積の算定のために利用される。この断面積の値は、フレッシュコンクリート3の打設の進行に伴って変化することはない。一方で、測定モジュール10に搭載される距離測定部12で測定される残り高さは、フレッシュコンクリート3の打設が進行して液面が上昇するに伴って経時的に変化する。
【0086】
演算部(13,23,51)での演算に利用される残り高さに関する情報は、単一の測定モジュール10に搭載される距離測定部12での測定結果を利用するものとしてもよい。このため、打設前の時点で、複数の測定モジュール10に搭載される位置情報検知部11によってそれぞれの型枠2の設置位置に関する情報を検知しておき、この情報を特定の測定モジュール10(例えば上述した親機としての測定モジュール10a)に記録しておく。そして、測定モジュール10a以外の測定モジュール(10b,10c,…)についてはその後取り外し、打設中は建設現場1に測定モジュール10aのみが取り付けられているという態様であっても構わない。
【符号の説明】
【0087】
1 :建設現場
2 :型枠
3 :フレッシュコンクリート
4 :鉄筋
10(10a,10b,…,10h) :測定モジュール
10L :測定モジュールから出射されたレーザ光
11 :位置情報検知部
12 :距離測定部
13 :演算部
15 :送受信部
20 :サーバ
21 :記憶部
22 :送受信部
23 :演算部
30 :操作端末
31 :表示部
32 :送受信部
33 :発注処理部
40 :工場内端末
50 :演算装置
51 :演算部
52 :送受信部
100 :システム
NW :ネットワーク回線