IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-免震機構および免震構造物 図1
  • 特許-免震機構および免震構造物 図2
  • 特許-免震機構および免震構造物 図3
  • 特許-免震機構および免震構造物 図4
  • 特許-免震機構および免震構造物 図5
  • 特許-免震機構および免震構造物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】免震機構および免震構造物
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20241018BHJP
   F16F 15/06 20060101ALI20241018BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16F15/04 E
F16F15/06 G
E04H9/02 331E
E04H9/02 351
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021084046
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177639
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080444(JP,A)
【文献】特開2013-130216(JP,A)
【文献】特開2005-240822(JP,A)
【文献】実開昭62-170848(JP,U)
【文献】特開2010-265927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 15/06
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と前記上部構造体の下方に位置する基礎構造体との間に形成される免震層に備えられ、
平時は前記上部構造体を支持し、前記上部構造体の水平方向の変位に追従して変位が増すと前記上部構造体を上昇させる免震装置と、平時は前記上部構造体を支持し、前記上部構造体が水平方向に変位すると前記上部構造体の下部と離間する摩擦支承と、を備え、
前記免震装置と前記摩擦支承とは、前記免震層内で並列配置され、
前記摩擦支承は、前記上部構造体を支持時の高さと、前記上部構造体と離間した後の高さとが略一致し、
前記免震装置は、前記上部構造体の下端部に備えられる上部案内材と、前記基礎構造体の上端部に備えられる下部案内材と、前記上部案内材と前記下部案内材との間に設けられ、前記上部構造体の水平方向の変位に追従して前記上部案内材と前記下部案内材との間で摺動する摺動体とを備え、
前記上部案内材と前記下部案内材とは、前記摺動体に対してそれぞれ水平一方向と前記水平一方向に直交する水平他方向とに摺動させる滑り面をそれぞれ有し、
前記摺動体の前記上部案内材および前記下部案内材のそれぞれとの接地面は、それぞれの案内材の前記滑り面の形状に略一致し、
前記上部案内材と前記摺動体の前記上部案内材との接地面とは、平時における前記摺動体の位置を頂部とした逆Vの字形状の前記滑り面が形成され、
前記下部案内材と前記摺動体の前記下部案内材との接地面とは、平時における前記摺動体の位置を底部としたVの字形状の前記滑り面が形成される、
免震機構。
【請求項2】
前記上部構造体は、前記摺動体が前記水平方向の変位に追従して前記滑り面を摺動すると、前記摩擦支承と離間する、
請求項に記載の免震機構。
【請求項3】
前記摩擦支承は、
前記上部構造体に近接対向する摩擦材と、
水平方向の径長が異なる摺動部と凸部とが形成され、前記凸部の上端に前記摩擦材が設けられるピストンと、
一方の端部が前記摺動部の底部に接続され、予め縮めて設けられる圧縮ばねと、
前記圧縮ばねの他方の端部と底部とが接続され、前記圧縮ばねとを内部に設け、前記上部構造体に近接する端面に前記凸部が通貫可能な開口部が設けられたシリンダーと、
を備え、
前記摺動部は、前記シリンダーの内部を鉛直方向に摺動可能に形成され、
平時において、
前記摩擦材は、前記上部構造体の底部に設けられた滑り板と当接し、
前記摺動部と前記シリンダーの前記開口部が設けられる面の底部とは、鉛直方向に微小間隙を形成し、
前記上部構造体の水平方向の変位時において、
前記微小間隙が解消され、前記摺動部の上部と前記開口部を有する面の底部とが当接し、さらに前記上部構造体が水平方向に変位すると前記摩擦材と前記滑り板との当接が解除される、
請求項1または2に記載の免震機構。
【請求項4】
前記滑り板は、前記上部構造体の底部から前記滑り板と前記摩擦材との当接部の端部に向かう方向にテーパー面が形成されている、
請求項に記載の免震機構。
【請求項5】
上部構造体と前記上部構造体の下方に位置する基礎構造体との間に形成される免震層に備えられ、
平時は前記上部構造体を支持し、前記上部構造体の水平方向の変位に追従して変位が増すと前記上部構造体を上昇させる免震装置と、平時は前記上部構造体を支持し、前記上部構造体が水平方向に変位すると前記上部構造体の下部と離間する摩擦支承と、を備え、
前記免震装置と前記摩擦支承とは、前記免震層内で並列配置され、
前記摩擦支承は、前記上部構造体を支持時の高さと、前記上部構造体と離間した後の高さとが略一致し、
前記摩擦支承は、
前記上部構造体に近接対向する摩擦材と、
水平方向の径長が異なる摺動部と凸部とが形成され、前記凸部の上端に前記摩擦材が設けられるピストンと、
一方の端部が前記摺動部の底部に接続され、予め縮めて設けられる圧縮ばねと、
前記圧縮ばねの他方の端部と底部とが接続され、前記圧縮ばねを内部に設け、前記上部構造体に近接する端面に前記凸部が通貫可能な開口部が設けられたシリンダーと、
を備え、
前記摺動部は、前記シリンダーの内部を鉛直方向に摺動可能に形成され、
平時において、
前記摩擦材は、前記上部構造体の底部に設けられた滑り板と当接し、
前記摺動部と前記シリンダーの前記開口部が設けられる面の底部とは、鉛直方向に微小間隙を形成し、
前記上部構造体の水平方向の変位時において、
前記微小間隙が解消され、前記摺動部の上部と前記開口部を有する面の底部とが当接し、さらに前記上部構造体が水平方向に変位すると前記摩擦材と前記滑り板との当接が解除される、免震機構。
【請求項6】
前記免震装置は、前記上部構造体の下端部に備えられる上部案内材と、前記基礎構造体の上端部に備えられる下部案内材と、前記上部案内材と前記下部案内材との間に設けられ、前記上部構造体の水平方向の変位に追従して前記上部案内材と前記下部案内材との間で摺動する摺動体とを備え、
前記上部案内材と前記下部案内材とは、前記摺動体に対してそれぞれ水平一方向と前記水平一方向に直交する水平他方向とに摺動させる滑り面をそれぞれ有し、
前記摺動体の前記上部案内材および前記下部案内材のそれぞれとの接地面は、それぞれの案内材の前記滑り面の形状に略一致する、
請求項5に記載の免震機構。
【請求項7】
前記上部案内材と前記下部案内材とは、形状が略一致する一対の球面形状の前記滑り面が形成され、
一対の前記滑り面の間に上下面が一対の前記球面形状と略一致する曲率を有し、一対の前記滑り面に当接して摺動する前記摺動体を有する、
請求項に記載の免震機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の免震機構を備えていることを特徴とする、免震構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震機構および免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物に対して作用する外力には、例えば、風力等の平均成分を持ち方向性を有する外力と、地震動等の変動成分のみを有する地盤震動による外力と、があり、前者に抵抗するためには構造物の水平方向の変位を拘束するのが望ましく、後者に抵抗するためには地盤と構造物との間に水平方向の変位を拘束しない免震装置を設けるのが望ましい(例えば、特許文献1参照)。また、免震装置を設ける構造物には前者の外力にも対応できる機構を備えているものもある。
従来、上記の両方の外力に対応する方法として、免震装置に加えて風速や地震動を感知するセンサや測定機器を有する制御装置を備えて水平方向の変位を拘束したり解除したりする機構を設ける方法(アクティブ制御機構)がある。また、上記のような制御装置を設けないパッシブ型の方法として免震層の内部にシヤピンを設け、風力等の方向性外力に対して免震装置を固定する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-130216号公報
【文献】特開2017-106185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上記で挙げたアクティブ制御による方法において、計測器やセンサ等の測定機器を有する制御機構は一般的に設置費用や維持管理費用が高額になりやすいという課題がある。また、上記でパッシブ型の制御機構として挙げた免震機構の内部にシヤピン等の抵抗機構を設ける方法においては、水平方向の変位として想定されている地震動が一般的に大きな変位を生じさせるために、水平変位が発生する度に抵抗機構に大きな負担がかかり破断等が生じやすくなる。抵抗機構に破断等が生じると、水平変位(地震動)の発生後に抵抗機構を交換する必要が生じるため、設置費用や維持管理費がかさむという課題がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、安価で、風力等の方向性外力による免震構造物の揺れを防止し、かつ、メンテナンスフリーで所望の免震性能を有するパッシブ型の免震機構と該免震機構を備えた免震構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る免震機構は、上部構造体と前記上部構造体の下方に位置する基礎構造体との間に形成される免震層に備えられ、平時は前記上部構造体を支持し、前記上部構造体の水平方向の変位に追従して変位が増すと前記上部構造体を上昇させる免震装置と、平時は前記上部構造体を支持し、前記上部構造体が水平方向に変位すると前記上部構造体の下部と離間する摩擦支承と、を備え、前記免震装置と前記摩擦支承とは、前記免震層内で並列配置され、前記摩擦支承は、前記上部構造体を支持時の高さと、前記上部構造体と離間した後の高さとが略一致する。
【0007】
上記の構成とすることで、平時において風力等の方向性外力が作用した際は、免震装置の摩擦抵抗力および復元力と摩擦支承の摩擦抵抗力により方向性外力に抵抗し、地震動等による水平変位が作用した際は、摩擦支承の摩擦抵抗力が上部構造体に作用せず、免震機構により抵抗し水平変位に対応することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る免震機構において、前記摩擦支承は、前記上部構造体に近接対向する摩擦材と、水平方向の径長が異なる摺動部と凸部とが形成され、前記凸部の上端に前記摩擦材が設けられるピストンと、一方の端部が前記摺動部の底部に接続され、予め縮めて設けられる圧縮ばねと、前記圧縮ばねの他方の端部と底部とが接続され、前記摩擦材と前記ピストンと前記圧縮ばねとを内部に設け、前記上部構造体に近接する端面に前記凸部が通貫可能な開口部が設けられたシリンダーと、を備え、前記摺動部は、前記シリンダーの内部を鉛直方向に摺動可能に形成され、平時において、前記摩擦材は前記上部構造体の底部に設けられた滑り板と当接し、前記摺動部と前記シリンダーの前記開口部が設けられる面の底部とは、鉛直方向に微小間隙を形成し、前記上部構造体の水平方向の変位時において、前記微小間隙が解消され前記摺動部の上部と前記開口部を有する面の底部とが当接し、さらに前記上部構造体が水平方向に変位すると前記摩擦材と前記滑り板との当接が解除されてもよい。
【0009】
上記の構成を有することで、摩擦支承の摩擦抵抗力を圧縮ばねによって任意で調整することが可能となり、風力等の方向性外力に対しては摩擦支承の摩擦抵抗力と免震装置の摩擦抵抗力および復元力とにより抵抗し、地震動等による水平変位で生じるせん断力に対しては免震層に設けられた免震装置やダンパーで抵抗することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る免震機構において、前記滑り板は、前記上部構造体の底部から前記滑り板と前記摩擦材との当接部の端部に向かう方向にテーパー面が形成されてもよい。
【0011】
上記の構成とすることで、免震装置が免震作用を発揮している状態において免震装置の鉛直方向の高さがわずかしか変わらない構成であっても、平時は風力等の方向性外力に対して摩擦支承と免震装置とで抵抗し、地震動等による水平変位が作用した際は、摩擦支承と上部構造体とを離間させることが可能となる。また、上部構造体の水平変位が減少して摩擦支承が上部構造体と再接触する際、テーパーを設けることで滑り板の端部に摩擦支承が衝突するおそれがなくなる。
【0012】
また、本発明に係る免震機構において、前記免震装置は、前記上部構造体の下端部に備えられる上部案内材と、前記基礎構造体の上端部に備えられる下部案内材と、前記上部案内材と前記下部案内材との間に設けられ、前記上部構造体の水平方向の変位に追従して前記上部案内材と前記下部案内材との間で摺動する摺動体とを備え、前記上部案内材と前記下部案内材とは、前記摺動体に対してそれぞれ水平一方向と前記水平一方向に直交する水平他方向とに摺動させる滑り面をそれぞれ有し、前記摺動体の前記上部案内材および前記下部案内材のそれぞれとの接地面は、それぞれの案内材の前記滑り面の形状に略一致してもよい。
【0013】
上記の構成とすることで、複数の方向の水平変位に対して所望の免震装置の免震効果を発揮させることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る免震機構において、前記上部構造体は、前記摺動体が前記水平方向の変位に追従して前記滑り面を摺動すると、前記摩擦支承と離間する構成としてもよい。
【0015】
上記の構成により、摺動体が上部案内材と下部案内材との間を水平方向の変位に追従して摺動することで、確実に摩擦支承と上部構造体とを離間させることが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る免震機構において、前記上部案内材と前記摺動体の前記上部案内材との接地面とは、平時における前記摺動体の位置を頂部とした逆Vの字形状の前記滑り面が形成され、前記下部案内材と前記摺動体の前記下部案内材との接地面とは、平時における前記摺動体の位置を底部としたVの字形状の前記滑り面が形成されてもよい。
【0017】
上記の構成とすることで、免震構造物に水平変位が作用した際に所定の免震装置の効果を発揮し、かつ所望の傾斜復元力を容易に得ることができるため、水平変位の解放後(地震後)に残留変位が生じにくくなり、免震装置を原位置に復元することなく継続使用することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る免震機構において、前記上部案内材と前記下部案内材として、形状が略一致する一対の球面形状の前記滑り面が形成され、一対の前記滑り面の間に上下面が一対の前記球面形状と略一致する曲率を有し、一対の前記滑り面に当接して摺動する前記摺動体を有する構成(球面滑り支承)としてもよい。
【0019】
上記の構成とすることで、任意方向の水平変位に追従できる免震機構とすることが可能となる。
【0020】
また、本発明の免震構造物は、上記の免震機構を備えていることを特徴とする。
【0021】
上記の構成とすることで、風力等の方向性外力と地震動等による水平変位とに対して、設置や維持管理等の費用を抑えた、所望の免震性能を有するパッシブ型の免震機構を備えた免震構造物とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安価で、風力等の方向性外力による免震構造物の揺れを防止し、かつ、シヤピンのように破断して交換する部材もないことから、メンテナンスフリーで所望の免震性能を有するパッシブ型の免震機構と該免震機構を備えた免震構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一実施形態による免震機構と免震構造物との立面図である。(a)は、本発明の第一実施形態による平時における免震機構の設置状況を示す立面図である。(b)は、本発明の第一実施形態による水平変位作用時の免震機構の免震効果の発現状況を示す立面図である。
図2】本発明の第一実施形態による摩擦支承の立面図である。(a)は、本発明の第一実施形態による平時における摩擦支承の設置状況を示す立面図である。(b)は、本発明の第一実施形態による水平変位作用時の摩擦支承の設置状況を示す立面図である。
図3】本発明の第一実施形態による免震機構に作用する荷重と免震装置の水平変位との関係図である。(a)は、水平変位と免震装置の傾斜復元力との関係図である。(b)は、水平変位と免震装置の摩擦抵抗力との関係図である。(c)は、水平変位と摩擦支承の摩擦抵抗力との関係図である。(d)は、水平変位と免震機構の総抵抗力(総反力)との関係図である。
図4】本発明の第一実施形態による摩擦支承の摩擦抵抗力と免震装置の水平変位との関係図である。(a)は、摩擦支承が免震構造物に対して摩擦抵抗力を有する水平変位範囲を示す関係図である。(b)は、水平変位と摩擦支承の摩擦抵抗力との関係図である。
図5】本発明の第二実施形態による摩擦支承の立面図である。(a)は、本発明の第二実施形態による平時における免震機構の設置状況を示す立面図である。(b)は、本発明の第二実施形態による水平変位作用時の免震機構の免震効果の発現状況を示す立面図である。
図6】本発明の第二実施形態による摩擦支承の摩擦抵抗力と免震装置の水平変位との関係図である。(a)は、摩擦支承が免震構造物に対して摩擦抵抗力を有する水平変位範囲を示す関係図である。(b)は、水平変位と摩擦支承の摩擦抵抗力との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態による免震機構および免震構造物について、図1乃至図6に基づいて説明する。
【0025】
<第一実施形態>
図1(a)に示すように、本実施形態による免震機構11は、免震構造物1に設けられる。免震構造物1は上部構造体2と、上部構造体2の下方に設けられる基礎構造体3とから構成され、上部構造体2と基礎構造体3との間に免震層4が設けられる。免震機構11は、免震層4内に設けられ、免震装置5と摩擦支承6とを備えている。
また、以下の説明において特に断りがない限り、図1図2および後述する第二実施形態を説明する図5の左右方向を第一水平方向(水平一方向)として「X方向」、X方向に対して水平に直交する方向を第二水平方向(水平他方向)として「Y方向」、X方向およびY方向に直交する方向を鉛直方向として「Z方向」とする。
免震機構11は、風力等の方向性外力に対して全方向で抵抗し、地震動等による水平変位は免震装置5に対してX方向、Y方向の少なくともいずれかに作用し、免震装置5は両方向に対して免震効果を発揮することで水平変位に対応する。
【0026】
図2(a)に示すように、上部構造体2には、免震層4に面する下端部において摩擦支承6に近接対向する滑り板21が設けられる。上部構造体2の種類は、本実施形態において限定されないが、例えば、高層階を有し、風力等の平時においても作用する外力を受ける面積が大きい構造物(例として、高層ビルや高層マンション等)の公知の高層構造物が挙げられる。基礎構造体3は、上部構造体2の自重(上部構造体重量W)を支持する基礎底部31と、免震構造物1周囲の土圧を支持する擁壁部32と、を備えている。
【0027】
また、免震層4において免震機構11を設置するスペースの構成は、免震機構11が所望の機能を発揮できれば本実施形態において限定されない。例えば、図1に示すような免震機構11を設けるスペースに余裕を持たせた構成としてもよいし、免震機構11の設置と免震装置5の免震作用が発揮できる程度の空間で構成されてもよい。
【0028】
また、免震装置5と摩擦支承6とは、免震層4内で並列に配置される。なお、免震装置5と摩擦支承6との設置位置および構成は、所望の外力への抵抗力と免震性能とが得られ、免震装置5と摩擦支承6とが並列配置されていれば限定されない。例えば、免震構造物1の四隅に免震装置5をそれぞれ配設し、各免震装置5間に摩擦支承6をそれぞれ配設してもよいし、免震構造物1の設置下面中央部に摩擦支承6を1つ配設してもよい。
【0029】
免震装置5は、上部構造体2の下端部に備えられる上部案内材51と、基礎底部31の上端部に備えられる下部案内材52と、上部案内材51と下部案内材52との間に設けられ上部構造体2の水平方向の変位に追従して上部案内材51と下部案内材52との間で摺動する摺動体53とを設けている。
【0030】
上部案内材51はY方向に摺動体53を摺動させる上部滑り面51Aを有し、下部案内材52は、X方向に摺動体53を摺動させる下部滑り面52Aを有する。なお、摺動体53を摺動させる方向は上記に限定されず、例えば上部案内材51が摺動体53をX方向に摺動させ、下部案内材52が摺動体53をY方向に摺動させてもよい。
上部滑り面51Aは平時における摺動体53の中央部の設置位置を頂部とした、逆Vの字形状に形成され、下部滑り面52Aは平時における摺動体53の中央部の設置位置を底部とした、Vの字形状に形成される。摺動体53のそれぞれの滑り面に当接する面は、当接する滑り面の表面形状に略一致する。なお、上部滑り面51Aと下部滑り面52Aとは、それぞれの中央部から両端部に向かってそれぞれ傾斜角θを有して形成される(傾斜滑り支承)。また、摺動体53はそれぞれの滑り面に対向する摺動面において摺動面摩擦係数μを有する。
【0031】
上記の構成によって、摺動体53は、免震構造物1のX方向またはY方向の水平変位の作用方向に応じて上部滑り面51Aまたは下部滑り面52Aを摺動し、上部構造体2の水平方向の変位に追従する。そのため、上部構造体2は各滑り面の中央部からX方向またはY方向に変位すると同時にZ方向上向きに持ち上がる。よって、上部構造体2と摩擦支承6とが離間する。図1(b)において、X方向に作用する水平変位が離間時水平変位xに達すると、上部構造体2と摩擦支承6との間に離間時微小間隙zがZ方向に発生し、上部構造体2と摩擦支承6とが離間する。また、摺動体53は、上部案内材51と下部案内材52とに上下から挟持される構成であるため、免震装置5から脱落することなく摺動する。
【0032】
また、平時において摺動体53は、上部滑り面51Aの頂部および下部滑り面52Aの底部に中央部が位置して挟持されているため、免震装置5は、上部構造体2の支承として作用する。そのため、免震装置5は、上部構造体重量Wを支持可能な十分な強度を有する材料により形成される。例えば、鋼材(案内材・摺動体)、ステンレス鋼(滑り面)により形成される。
【0033】
図2(a)に示すように、摩擦支承6は、免震層4内に設けられ、滑り板21に近接対向する摩擦材61と、摩擦材61が一方の端部に設けられたピストン62と、一方の端部がピストン62の他方の端部に接続された圧縮ばね63とが、シリンダー64内に設けられた構成を有する。
【0034】
摩擦材61は、ピストン62の一方の端部に設けられ、平時は滑り板21に当接する。滑り板21と摩擦材61とは、平時における圧縮ばね63の反力により破壊されない所望の強度を有する材料により形成される。例えば、ステンレス鋼等の公知の金属材料やPTFE(樹脂系摩擦材)が挙げられる。また、本実施形態において、滑り板21と摩擦材61との当接面の面積は、免震構造物1が水平変位して滑り板21と摩擦材61とが離間するまで摩擦材61が滑り板21に全面接触するように、滑り板21の方が大きく形成されている。なお、上記の材質と同様に平時における圧縮ばね63の反力により破壊されなければ本実施形態に限らない。例えば、滑り板21と摩擦材61との当接面の面積は略一致してもよいし、上部構造体2の下部全面に滑り板21を設けてもよい。また、滑り板21と摩擦材61とは、滑り板21と摩擦材61とが離間する時点でのX方向の水平変位である離間時水平変位x以下の水平変位で当接し、ピストン62が摺動できればよい。
【0035】
ピストン62は、上端部に摩擦材61が設けられた凸部62Aと下端部に圧縮ばね63が接続され、凸部62Aを周方向に拡大し、シリンダー64の内径形状と略一致する径形状を備えた凸側当接部(摺動部)62Bとを設けている。ピストン62は、圧縮ばね63の伸縮により凸側当接部62Bがシリンダー64の内部をZ方向に摺動可能に備えられる。
【0036】
圧縮ばね63は、一方の端部が凸側当接部62Bの下端部に接続され、他方の端部がシリンダー64の底部に接続されて設けられる。また、摩擦支承6は、圧縮ばね63が予め縮められた状態で摩擦材61と滑り板21とが当接し上部構造体2を支持する。
【0037】
シリンダー64は、底部に圧縮ばね63の他方の端部が接続され、頂部に凸部62Aが通貫可能で凸側当接部62Bが通貫不可能な開口部64Bを有し、Z方向上向きに摺動した凸側当接部62Bと当接する凹側当接部64Aが形成される。この構成により、ピストン62の摺動範囲および圧縮ばね63の伸びの範囲は一定範囲に制限される。また、凸部62Aと摩擦材61とは開口部64Bを通貫高さzの長さでZ方向に通貫し、滑り板21と摩擦材61とが当接する。
【0038】
摩擦支承6は、平時において凸側当接部62Bと凹側当接部64Aとの間に微小間隙6Aを形成した状態で上部構造体2を支持する。また、平時においては、免震装置5についても上部構造体2の支承として作用するため、上記の状態における摩擦支承6のZ方向の高さと免震装置5の平時におけるZ方向の高さとは略一致する。
【0039】
また、図2(b)に示すように、微小間隙6Aは、水平変位の作用時において上部構造体2がZ方向上向きに持ち上がることで、ピストン62も上記Z方向上向きの変位量に応じて同様に持ち上がるため、徐々に減少する。微小間隙6Aが解消され、凸側当接部62Bと凹側当接部64Aとが当接すると、滑り板21と摩擦材61とは当接が解除されて離間し、摩擦支承6の摩擦抵抗力Fは0となる。そのため、上部構造体2の振動制御は免震装置5のみの抵抗に切り替わる。免震層4にダンパーが設置されていれば、免震装置5とダンパーとの抵抗となる。
【0040】
また、微小間隙6Aは、摩擦材61の長期的な使用による摩耗等により摩擦支承6の高さが変化しても、圧縮ばね63の伸縮量を調整することで同じ位置で摩擦支承6が負担する鉛直重量を保持するために設けられる。なお、圧縮ばね63を予め縮めて設置すると、微小間隙6AのZ方向の長さの変化による圧縮ばね63の圧縮力の変動はわずかとなり、摩擦支承6はほぼ一定の鉛直荷重を支持する。また、微小間隙6AのZ方向の長さ(微小間隙高さ)zは、上記の摩耗等の予測を考慮して2mm程度の微小な間隔で形成される。本実施形態では、図1および図2に示すようにX方向に作用する水平変位が離間時水平変位x以上で微小間隙6Aが解消され滑り板21と摩擦材61との当接が離間時微小間隙zを有して解除される。
【0041】
また、摩擦支承6が所望の性能を発揮でき、水平変位の作用時は上部構造体2から離間できれば本実施形態の構成に限らない。例えば、圧縮ばね63の他方の端部はシリンダー64の底部に接続されているが、シリンダー64の底部がない形態で基礎底部31に接続され、圧縮ばね63の他方の端部が基礎底部31に直接接続される構成でもよい。
【0042】
次に、上述した第一実施形態による免震機構および免震構造物の作用・効果について図1乃至図4に基づいて説明する。
図1(a)および図2(a)に示すように、免震機構11は平時において免震装置5と摩擦支承6とで上部構造体重量Wの抵抗力を負担し、上部構造体2に作用する風力等の方向性外力による変位に抵抗する。
この場合、上記の方向性外力に抵抗する免震装置5の傾斜復元力Fおよび摩擦抵抗力Fと、摩擦支承6の摩擦抵抗力Fとは、免震装置5が負担する上部構造体重量をW、摩擦支承6が負担する上部構造体重量をW、摩擦支承6(摩擦材61の当接部)の摩擦係数をμ、任意の時点でのX方向の水平変位をxとすると、上記の各定義と合わせてそれぞれ次式で表される。各力と水平変位との関係図は図3(a)から(d)となる。なお、図3図4および後述する図6に示す原点Oは平時における摺動体53の位置となる。
【0043】
[数1]
=Wtanθ(|x|≦x),F=Wtanθ(|x|>x
【0044】
[数2]
=μ(|x|≦x),F=μW(|x|>x
【0045】
[数3]
=μ(|x|≦x),F=0(|x|>x
【0046】
免震層4内において他にダンパー等が設けられていない場合、総抵抗力(総反力)FはF,F,Fの総和となり、漸増変位x≧0に対して次式で表される。また、図3(d)に示すように、免震機構11は水平変位xが離間時水平変位x以下(|x|≦x)で最も大きな総抵抗力(最大抵抗力)F,-F(以下、|F|)を有する。なお、例として最大抵抗力|F|を考慮する際は、設計最大風荷重に対して免震装置5の傾斜復元力Fと摩擦抵抗力Fと摩擦支承6の摩擦抵抗力Fとによって抵抗し、かつ、地震動等による水平変位の発生時に摩擦支承6が離間できればよい。つまり、最大抵抗力|F|は設計最大風荷重以上であり、地震動等の水平せん断力以下であればよい。
【0047】
[数4]
=F+F+F=Wtanθ+μ+μ=F(0≦x≦x
【0048】
[数5]
=F+F+F=Wtanθ+μW(x>x
【0049】
また、図1(b)および図2(b)に示すように、地震動Aによって、上部構造体2が離間時水平変位x以上(|x|>x)水平方向に変位すると、摩擦支承6は滑り板21から離間し、摩擦支承6を除いた免震装置5で免震構造物1が制御される。また、地震動Aにより発生する力の大きさは一般に風荷重よりも大きい。
【0050】
地震動Aによる免震層4の変位は、複雑な軌跡となるが、大振幅時には原点(平時における免震機構11の位置)をほとんど通過しない特性があり、上記の機構によれば、摺動体53は上部案内材51および下部案内材52のいずれの滑り面を摺動する場合においても、原点(平時における摺動体53の位置)をほとんど通過せず、摺動体53の水平変位は離間時水平変位以下とならない。すなわち、大地震時において摩擦支承6は、ほとんど滑り板21に当接せず離間したままの状態となる。そのため、上部構造体2には、摩擦抵抗力がほとんど作用しないか、作用したとしても静止摩擦力よりも小さい動摩擦力がごく短時間だけ作用することとなる。
【0051】
以上の機構により、本実施形態における地震動Aによる水平変位が生じ摩擦支承6と上部構造体2とが離間した状態の免震機構11と、摩擦支承6が設けられていない免震機構とを比較しても、免震装置5の免震効果はほとんど低下しない。つまり、摩擦支承6は大地震時における免震効果の発揮に影響しない構成となっている。
【0052】
また、公知の研究によれば、傾斜滑り面を有する免震装置の傾斜復元力は摩擦抵抗力の0.5倍以上であれば残留変位はほとんど生じないことが確認されている。本実施形態においては、傾斜復元力Fが次式を満たせば残留変位がほぼ生じないこととなる。
【0053】
[数6]
≧0.5(F+F
【0054】
なお、水平変位および平時における風荷重等の外力はX方向、Y方向同時かつ連続的に作用するため、上記のX方向の水平変位xに対する一連の機構はY方向の水平変位yに対しても同様に作用する。そのため、上部構造体2と摩擦支承6とが離間するときのY方向の水平変位を離間時水平変位yとすると、水平変位yが0に近傍する範囲(|y|≦y)で最も大きな外力への抵抗力を持ち、離間時水平変位y以上の水平変位yが生じている状態(|y|>y)における摩擦支承6も同様に免震装置5の免震効果の発揮に影響しない。なお、一般的には離間時水平変位x=yとされ、摩擦支承6が摩擦抵抗力Fを持つ水平変位範囲B(|x|+|y|<x)は図4(a)に示す菱形領域となる。また、図4(b)に示すように、免震構造物1の水平変位がさらに増加すると摩擦支承6の摩擦抵抗力Fが消失する復元力特性を有する。
【0055】
以上より、図4に示すように、摩擦支承6が摩擦抵抗力Fを持つ水平変位範囲Bは上部構造体2のX方向、Y方向の水平変位がいずれも離間時水平変位x,y以下であることが求められる。また、摩擦支承6の摩擦抵抗力Fは、圧縮ばね63の反力で支持する(摩擦支承6が負担する)上部構造体重量Wがほぼ一定に保持されるので、滑り板21と摩擦材61とが当接している間は一定となる。
【0056】
以上の機構により、風力等の方向性外力による免震構造物1の揺れを防止し、かつ、所望の免震性能を有するパッシブ型の免震機構11と免震機構11を備えた免震構造物1を提供することができる。また、一つのパッシブ型の免震機構11によって方向性外力と地震動との両方を制御することが可能となるため、免震装置5の拘束を制御する新たな機構や、制御対象の外力を切り替える新たな制御機構が不要となる。そのため、信頼性を備えた上で免震機構の設置費用と維持管理費用とを削減することが可能となる。
【0057】
また、免震装置5と摩擦支承6とは、ともにX方向、Y方向の両方向に作用するため、1方向のみに効く摩擦ダンパーと比較して免震機構11の設置台数を減らすことができ、上記と同様に免震機構の設置費用と維持管理費用とを削減することが可能となる。
【0058】
また、免震機構11は方向性外力と水平変位に対して、上部構造体2と摩擦支承6とが摺動体53の動きに追従して当接または離間することで対応することができるため、支持対象の外力が切り替わった際の機構や部材の破損等がなく、例えば大きな地震動を免震した後等においても継続的に免震機構11を使用することが可能であるため、免震機構の維持管理費等を削減することが可能となる。
【0059】
また、免震機構11は、平時における摩擦支承6の摩擦抵抗力Fを上部構造体2と摩擦支承6とが離間しない範囲で圧縮ばね63の伸縮によって調整することが可能であるため、圧縮ばね63のばね定数と設置前に予め与える予ひずみ(圧縮量)により、摩擦支承6の摩擦抵抗力Fを任意に設定することが可能である。そのため、設計最大風荷重と地震時層せん断力に対し、摩擦抵抗力(F+F)および最大抵抗力|F|の設定の自由度を高めることが可能となる。また、所望の摩擦抵抗力を容易に備えることが可能となる。
【0060】
また、摩擦支承6は構造が簡易であるため、設置場所の自由度が高い。例えば、免震層4内において内部においても外周部においても容易に設置可能である。そのため、上部構造体2と免震装置5との重量の支持のバランスを考慮して設置できるため、平面計画上の制約等も少なくなる。
【0061】
また、滑り板21はX方向、Y方向の水平変位がそれぞれ離間時水平変位x以下、y以下の範囲内で摩擦材61と当接し、ピストン62が摺動できればよいため、公知の免震滑り支承と比較すると少ない面積で形成できる。そのため、設置費用や維持管理費用を削減することが可能となる。
【0062】
また、上記の免震機構11は、免震構造物1を新築する際だけでなく、既存の免震構造物1においても、免震層4に摩擦支承6を免震装置5と並列配置して追加するだけでよいため、容易に適用することが可能である。
【0063】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図5および図6に基づいて説明する。なお、上述の第一実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
【0064】
図5および図6より、第二実施形態は、第一実施形態のように滑り面51Aおよび51Bが一定の勾配をもつものではなく、一定の曲率をもつ球面形状の滑り面を有し、滑り面51Aおよび51Bの滑り面形状が略一致する形態(球面滑り支承)を対象とする。この形態では摺動体53が変位する前の位置(原点)付近の滑り面形状がほぼ水平となり、第一実施形態より滑り面51Aおよび51Bの傾斜角θは小さくなる特徴を有する。
【0065】
本実施形態において摺動体53は全方向の水平変位に対して効くため、摩擦支承6が摩擦抵抗力Fを持つ水平変位範囲B(|x|+|y|<x )は図6(a)に示す原点を中心とし、半径が離間時水平変位xの円形領域となる。また、本実施形態においても図6(b)に示すように、免震構造物1の水平変位が離間時水平変位以上になると、摩擦支承6の摩擦抵抗力Fが消失する復元力特性を有する。
【0066】
以上、本発明による免震機構および免震構造物の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、摩擦支承6は、摩擦材61が摩耗している等の状況を除いて微小間隙6Aの間で高さが変化するが、水平変位の作用時に上部構造体2と摩擦支承6とを離間させることができれば、摩擦支承6と上部構造体2の下部との離間前の高さと離間後の高さとが一致してもよい。
【0067】
また、例えば上記の実施形態では、上部滑り面51Aと下部滑り面52Bとが、それぞれの中央部から両端部に向かってそれぞれ傾斜角θを有して形成されているが、所望の免震性能が得られれば、それぞれの滑り面の形状が円弧状に形成され、摺動体53の上下摺動面の形状が滑り面と略一致する円弧形状に形成されてもよい。
【0068】
また、例えば滑り板21は、上部構造体2の下端部から滑り板21と摩擦材61との当接部の端部に向かう方向に傾斜するテーパー面が形成されてもよい。上記の構成によって、免震装置5が、原点(平時における免震装置5の位置)付近で水平変位の増加に伴い上部構造体2をZ方向上向きにわずかしか持ち上げない(Z方向の変位が小さい)構成であっても、テーパー面によって水平変位が減少した際に滑り板21の端部が摩擦支承6と衝突せず、第一実施形態と同様の摩擦抵抗力Fおよび免震効果を発揮できる。
【符号の説明】
【0069】
1 免震構造物
2 上部構造体
3 基礎構造体
4 免震層
5 免震装置
6 摩擦支承
6A 微小間隙
11 免震機構
21 滑り板
31 基礎底部
32 擁壁部
51 上部案内材
52 下部案内材
51A 上部滑り面
52A 下部滑り面
53 摺動体
61 摩擦材
62 ピストン
62A 凸部
62B 凸側当接部(摺動部)
63 圧縮ばね
64 シリンダー
64A 凹側当接部
64B 開口部
A 地震動
通貫高さ
微小間隙高さ
離間時微小間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6