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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/07 20060101AFI20241018BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B60C9/07
B60C19/00 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021109738
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006891
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】清村 崇
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/106916(WO,A1)
【文献】特開2011-011594(JP,A)
【文献】特開2008-265499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
23/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコア間をトロイダル状に延在するカーカス本体部と、前記カーカス本体部から延び、前記ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されているカーカス折返し部とからなるカーカスと、
前記カーカス折返し部のタイヤ幅方向外側に埋設された通信装置と、
を備える、タイヤであって、
前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記カーカス折返し部のコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜しており、
前記基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記通信装置の長手方向は、前記カーカス折返し部の前記コード延在方向に対して傾斜している、タイヤ。
【請求項2】
前記基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記カーカス本体部のコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜しており、
前記カーカス本体部の前記コード延在方向と前記カーカス折返し部の前記コード延在方向とは、タイヤ径方向を挟んで傾斜が反転している、請求項に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記カーカス折返し部の前記コード延在方向は、タイヤ径方向に対して3度から10度の範囲で傾斜している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記カーカスのクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、
前記基準状態において、前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の端部は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置している、請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記基準状態において、前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の前記端部は、タイヤ最大幅の位置の近傍に位置している、請求項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記カーカスのクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、
前記基準状態において、前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の端部は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向内側に位置している、請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤにRFタグなどの通信装置を埋設した構成が知られている。例えば、特許文献1には、タイヤのサイドウォール部にRFタグが設けられたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-55450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のタイヤでは、タイヤに荷重が加えられた際に、通信装置に負荷が掛かり、通信装置が損傷する場合があった。そのため、タイヤに設けられた通信装置の耐久性を向上させることが依然として求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、タイヤに設けられた通信装置の耐久性を向上させた、タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、一対のビードコア間をトロイダル状に延在するカーカス本体部と、前記カーカス本体部から延び、前記ビードコアの周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されているカーカス折返し部とからなるカーカスと、前記カーカス折返し部のタイヤ幅方向外側に埋設された通信装置と、を備える、タイヤであって、前記タイヤを適用リムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記カーカス折返し部のコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜している。
本発明に係るタイヤによれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、カーカス折返し部を構成するコードがタイヤ周方向に撓むことで、サイドウォール部におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を抑制することができる。そのため、タイヤのサイドウォール部に埋設された通信装置にひずみが生じにくく、通信装置が損傷しにくくなる。したがって、本発明に係るタイヤによれば、タイヤに設けられた通信装置の耐久性が向上する。
【0007】
本発明に係るタイヤでは、前記基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記通信装置の長手方向は、前記カーカス折返し部の前記コード延在方向に対して傾斜していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられ、カーカス折返し部がタイヤ周方向に撓んだ際に、通信装置を折り曲げる力が通信装置に加わりにくくなる。このため、カーカス折返し部のタイヤ幅方向外側に埋設された通信装置が更に損傷しにくくなる。
【0008】
本発明に係るタイヤでは、前記基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記カーカス本体部のコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜しており、前記カーカス本体部の前記コード延在方向と前記カーカス折返し部の前記コード延在方向とは、タイヤ径方向を挟んで傾斜が反転していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、カーカス本体部及びカーカス折返し部がタイヤ周方向に撓むことで、サイドウォール部におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を更に抑制することができる。そのため、タイヤのサイドウォール部に埋設された通信装置にひずみが生じにくく、通信装置が更に損傷しにくくなる。
【0009】
本発明に係るタイヤでは、前記基準状態におけるタイヤ幅方向視で、前記カーカス折返し部の前記コード延在方向は、タイヤ径方向に対して3度から10度の範囲で傾斜していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤの重量及び生産コストの増加を抑制しつつ、サイドウォール部におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を抑制することができる。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記カーカスのクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、前記基準状態において、前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の端部は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、サイドウォール部において、カーカス折返し部が配置されていない部分がより撓みやすくなり、カーカス折返し部が配置されている部分がより撓みにくくなる。このため、タイヤのサイドウォール部のカーカス折返し部が配置されている部分に埋設された通信装置が損傷しにくくなる。
【0011】
本発明に係るタイヤでは、前記基準状態において、前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の前記端部は、タイヤ最大幅の位置の近傍に位置していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、通信装置が損傷する蓋然性を抑えたまま、通信装置を配置する場所の選択肢の幅を広げることができる。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記カーカスのクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルトを更に備え、前記基準状態において、前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側の端部は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向内側に位置していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤによれば、サイドウォール部の途中でカーカス折返し部が終端している構成に比べてサイドウォール部の剛性が高くなり、タイヤ径方向の荷重がタイヤに加えられた場合に、サイドウォール部におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が生じにくくなる。このため、タイヤのサイドウォール部に埋設された通信装置が損傷しにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤに設けられた通信装置の耐久性を向上させた、タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向における部分断面図である。
図2図2は、図1に示されるカーカスの一例の部分斜視図である。
図3図3は、図2に示されるカーカスをタイヤ幅方外側からの視点で示した概略図である。
図4図4は、図1に示されるカーカスの他の例の部分斜視図である。
図5図5は、図4に示されるカーカスをタイヤ幅方外側からの視点で示した概略図である。
図6図2は、本発明の第2実施形態におけるタイヤの、タイヤ幅方向における部分断面図である。
図7図7は、図6に示されるカーカスの一例の部分斜視図である。
図8図8は、図7に示されるカーカスをタイヤ幅方外側からの視点で示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0016】
本明細書において、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいう。「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいう。図面において、タイヤ幅方向、タイヤ径方向、タイヤ周方向は、それぞれD、D、Dと表記されている。
【0017】
また、本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0018】
本明細書において、特に断りのない限り、タイヤの各要素の位置関係等は、基準状態で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤを適用リムであるホイールのリムに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした状態である。以下において、タイヤは、内腔に空気が充填され、乗用車等の車両に装着されるものとして説明する。ただし、タイヤの内腔には空気以外の流体が充填されていてもよく、タイヤは乗用車以外の車両に装着されてもよい。
【0019】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organization)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、或いは、将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTOのSTANDARDS MANUAL2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられる。
【0020】
本明細書において、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、本明細書において、「規定荷重」とは、上記産業規格に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する荷重をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合には、「規定荷重」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタイヤ1について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向における部分断面図である。図1において、タイヤ1は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。
【0023】
タイヤ1は、一対のビード部2と、一対のサイドウォール部3と、トレッド部4とを有している。サイドウォール部3は、トレッド部4とビード部2との間に延在している。詳細は後述するが、タイヤ1のサイドウォール部3には、通信装置9が埋設されている。
【0024】
本実施形態において、タイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して対称な構成であるものとして説明する。しかしながら、タイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して非対称な構成とされていてもよい。
【0025】
タイヤ1は、ビード部2に配置された一対のビードコア5と、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上のプライからなるカーカス6と、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルト7と、を備えている。
【0026】
ビードコア5は、タイヤ周方向に延在する環状のケーブルビードからなっている。ビードコア5の延在方向に直交する面の断面形状(タイヤ幅方向の断面形状)は、円形又は略円形とされている。ただし、ビードコア5のタイヤ幅方向の断面形状は、四角形又は六角形等、任意の形状とされていてもよい。ケーブルビードは、例えば、高炭素の鋼線をゴム被覆して構成されている。ビードコア5のタイヤ径方向外側には、ゴム材料等で形成されたビードフィラー8が設けられている。ただし、タイヤ1は、ビードフィラー8を備えない構成とされてもよい。
【0027】
カーカス6は、一対のビードコア5間にトロイダル状に延在する1枚以上(本実施形態では1枚)のプライからなる。プライは、複数のコードをゴム被覆して構成されている。プライを構成するコードは、例えば、ナイロンコードなどの有機繊維コードである。本実施形態において、コードは、トレッド部4においてタイヤ幅方向に延在するように配置されている。即ち、カーカス6は、ラジアル構造とされている。カーカス6は、一対のビードコア5に係止されている。具体的には、カーカス6は、一対のビードコア5間をトロイダル状に延在するカーカス本体部6Aと、カーカス本体部6Aから延び、ビードコア5の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されているカーカス折返し部6Bとからなっている。
【0028】
図2及び図3を参照して、カーカス6の構造を更に詳細に説明する。図2は、図1に示されるカーカス6の一例の、部分斜視図である。図3は、図2に示されるカーカス6をタイヤ幅方外側からの視点(タイヤ幅方向視)で示した概略図である。なお、図2及び図3は、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bのそれぞれを構成するコードの延在方向を模式的に示している。図2及び図3は、説明のため、複数のコードのうちの一部(4本のコード)を示すものであり、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bのそれぞれを構成するコードの数を限定するものではない。
【0029】
図3に示されるように、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜している。例えば、コード延在方向は、カーカス6の折り返し位置Pからコードが延在する方向で評価される。カーカス6の折り返し位置Pは、カーカス6のタイヤ径方向において最も内側の位置である。図示例では、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾きθ1で傾斜している。これにより、例えば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス6がタイヤ幅方向外側に撓むとともに、カーカス折返し部6Bを構成するコードがタイヤ周方向に傾きθ1が大きくなるように(図3において矢印で示された方向に)撓む。カーカス折返し部6Bを構成するコードがタイヤ周方向に撓むことで、タイヤ1に加えられた荷重の一部が支持され、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が抑制され得る。そのため、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられても、タイヤ1のサイドウォール部3に埋設された通信装置9にひずみが生じにくく、通信装置9が損傷しにくくなる。
【0030】
基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向の、タイヤ径方向に対する傾きθ1は、例えば、3度~10度の範囲とされていてもよい。傾きθ1が小さくなると、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス折返し部6Bを構成するコードが、タイヤ周方向へ撓みにくくなり、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形の抑制効果が低減する。一方で、傾きθ1が大きくなると、カーカス折返し部6Bを構成するコードの長さが長くなるため、タイヤ1の重量及び生産コストが増加する。そのため、傾きθ1を3度~10度の範囲とすることで、タイヤ1の重量及び生産コストの増加を抑制しつつ、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を抑制することができる。より好ましくは、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向の、タイヤ径方向に対する傾きθ1は、5度~10度の範囲とされていてもよい。
【0031】
さらに、図3に示される実施例では、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス本体部6Aのコード延在方向が、タイヤ径方向に対して傾斜している。カーカス本体部6Aのコード延在方向とカーカス折返し部6Bのコード延在方向とは、タイヤ径方向を挟んで傾斜が反転している。図示例では、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス本体部6Aのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して、カーカス折返し部6Bのコード延在方向とは反対側に傾きθ2で傾斜している。これにより、例えば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bがタイヤ周方向において異なる方向に撓むことで、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が更に抑制され得る。このように、タイヤ1のサイドウォール部3に埋設された通信装置9にひずみが生じにくく、通信装置9が更に損傷しにくくなる。
【0032】
本実施形態では、カーカス折返し部6Bのコード延在方向のタイヤ径方向に対する傾きθ1の大きさと、カーカス本体部6Aのコード延在方向のタイヤ径方向に対する傾きθ2の大きさとは、互いに略等しい。これにより、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス本体部6Aとカーカス折返し部6Bとのタイヤ周方向への撓みを均一化することができ、サイドウォール部3が更に面外変形しにくくなる。
【0033】
しかしながら、傾きθ1の大きさと傾きθ2の大きさとは互いに異なっていてもよい。例えば、カーカス6の他の例として、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス本体部6Aのコード延在方向が、タイヤ径方向と略平行とされていてもよい。カーカス6の他の例を、図4及び図5に示す。図4は、図1に示されるカーカス6の他の例の、部分斜視図である。図5は、図4に示されるカーカス6をタイヤ幅方外側からの視点で示した概略図である。図5において、カーカス本体部6Aを構成するコードは、タイヤ径方向と略平行に延在している。当該構成とすることで、例えば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス本体部6Aがタイヤ径方向の荷重に対して耐性が強くなるとともに、カーカス折返し部6Bがタイヤ周方向に撓むことで、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が抑制され得る。なお、図4及び図5は、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bのそれぞれを構成するコードの延在方向を模式的に示している。図4及び図5は、説明のため、複数のコードのうちの一部(4本のコード)を示すものであり、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bのそれぞれを構成するコードの数を限定するものではない。
【0034】
再び図1を参照して、本実施形態では、基準状態において、カーカス6のカーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eは、ベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向外側に位置している。すなわち、サイドウォール部3には、タイヤ径方向において、カーカス6のカーカス折返し部6Bが配置されている内側部分3Aと、カーカス6のカーカス折返し部6Bが配置されていない外側部分3Bとが含まれている。サイドウォール部3の内側部分3Aは、カーカス折返し部6Bが配置されているため、外側部分3Bよりも剛性が高い。このため、例えば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、サイドウォール部3の内側部分3Aと外側部分3Bとの剛性の違いにより、サイドウォール部3の外側部分3Bがより撓みやすくなり、内側部分3Aがより撓みにくくなる。そのため、サイドウォール部3の内側部分3Aにおけるタイヤ幅方向への面外変形が抑制される。したがって、カーカス折返し部6Bが配置されているサイドウォール部3の内側部分3Aに通信装置9を埋設することで、通信装置9が損傷しにくくなる。
【0035】
より具体的には、基準状態において、カーカス6のカーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eは、タイヤ最大幅Wの近傍に位置していてもよい。ここで、「タイヤ最大幅W」の位置とは、タイヤ1を適用リムであるリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態において、タイヤ1の幅方向の長さが最も長くなる位置である。タイヤ1のサイドウォール部3のタイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向内側に通信装置9が埋設されている場合、通信装置9の埋設位置の外表面に縁石又は小石などの障害物がぶつかりにくくなる。そのため、カーカス折返し部6Bをタイヤ最大幅Wの位置の近傍まで延在させることで、通信装置9が損傷する蓋然性を抑えたまま、通信装置9を配置する場所の選択肢の幅を広げることができる。例えば、通信装置9の埋設位置をタイヤ最大幅Wの位置に近づけることで、通信装置9よりもタイヤ幅方向外側に設置された電子機器と通信装置9が通信する場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置9の通信の妨げとなりにくい。そのため、通信装置9のタイヤ径方向に対する通信性を向上させることができる。ここで、タイヤ最大幅Wの「近傍」とは、タイヤ1においてタイヤ径方向内側の端部からタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方高さを100%とした場合に、タイヤ最大幅Wの位置からタイヤ径方向内側又はタイヤ径方向外側に5%までの範囲とされてもよい。
【0036】
ベルト7は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト7は、タイヤ赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された1層以上(本実施形態では2層)のベルト層によって構成されている。ベルト7は、トレッド部4において、カーカス6をタイヤ径方向外側から覆うように設けられている。本明細書では、1層以上のベルト層のうち、タイヤ幅方向における長さが最も長いベルト層を「最大幅ベルト層」ともいう。そして、ベルト7の最大幅ベルト層のタイヤ幅方向外側の端部7Eを、単に、ベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eともいう。本実施形態では、2層のベルト層のうち、タイヤ径方向内側のベルト層が最大幅ベルト層である。ただし、最大幅ベルト層は、タイヤ径方向において最も内側のベルト層でなくてもよい。また、ベルト7が1層のベルト層で構成されている場合、最大幅ベルト層は、この1層のベルト層を指す。
【0037】
タイヤ1には、通信装置9が設けられている。
【0038】
通信装置9は、無線通信を行う。通信装置9は、例えば、RF(Radio Frequency)タグである。RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグともいう。通信装置9は、制御部及び記憶部を構成するIC(Integrated Circuit)チップ9Aと、ICチップ9Aに接続された1つ以上のアンテナ9Bと、を備える。ICチップ9Aは、タイヤ1の識別情報、製造年月日など、タイヤ1に関する任意の情報を記憶してもよい。本実施形態では、図3に示されるように、通信装置9は、直線状、波状、又は螺旋状に延びる2つのアンテナ9BがICチップ9Aから互いに反対方向に延びるように設けられ、装置全体として長手状の形状を有している。ただし、通信装置9の形状は、図示例に限られない。例えば、通信装置9は、1つのアンテナ9BがICチップ9Aから直線状、波状、又は螺旋状に延びるように設けられ、装置全体として長手状の形状を有していてもよい。或いは、通信装置9は、螺旋状に延びる1つのアンテナ9Bの内部にICチップ9Aが埋設され、装置全体として長手状の形状を有していてもよい。
【0039】
ICチップ9Aは、1つ以上のアンテナ9Bで受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置9は、パッシブ型の通信装置であってもよい。或いは、通信装置9は、電池を更に備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置9は、アクティブ型の通信装置であってもよい。
【0040】
再び図1を参照して、通信装置9は、カーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設されている。これにより、通信装置9よりもタイヤ幅方向外側に設置された電子機器と通信装置9が通信する場合に、カーカス6が通信装置9の通信の妨げとなりにくい。そして、上述のとおり、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向が、タイヤ径方向に対して傾斜していることで、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス折返し部6Bの近傍におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が抑制される。そのため、カーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設されている通信装置9がタイヤ径方向に引き延ばされにくくなる。これは、通信装置9の損傷が、特に、通信装置9が引き延ばされて通信装置9に引っ張りひずみが生じた際に起こりやすいため、通信装置9の耐久性向上に有効である。なお、本実施形態では、通信装置9は、タイヤ1に完全に埋設されているものとして説明する。ただし、通信装置9がタイヤ1に埋設されていることは、通信装置9の少なくとも一部がタイヤ1に埋設されていることを含み得る。
【0041】
本実施形態では、通信装置9の長手方向は、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向に対して傾斜している。図3を参照すると、通信装置9は、ICチップ9Aと、ICチップ9Aから互いに反対方向に延びるように設けられた2つのアンテナ9Bとを備えている。本実施形態では、通信装置9の長手方向は、ICチップ9Aから2つのアンテナ9Bが延在する方向である。これにより、図3に矢印で示されるように、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられ、カーカス折返し部6Bがタイヤ周方向に傾きθ1が大きくなるように撓んだ際に、通信装置9を折り曲げる力が通信装置9に加わりにくくなる。このため、カーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設された通信装置9が更に損傷しにくくなる。
【0042】
通信装置9は、カーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設されているものとして説明したが、この限りではない。例えば、通信装置9は、タイヤ幅方向において、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bの間に挟まれる位置に埋設されていてもよい。或いは、通信装置9は、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bの両方にタイヤ幅方向外側を覆われる位置に埋設されていてもよい。上述のとおり、通信装置9の損傷は、特に、通信装置9に引っ張りひずみが生じた際に起こりやすい。この観点から、サイドウォール部3における通信装置9の埋設位置を、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合にタイヤ径方向に引き延ばされにくいタイヤ幅方向内側に近づけることは、通信装置9の耐久性向上に有効である。
【0043】
通信装置9が、タイヤ幅方向において、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bの間に挟まれる位置に埋設される場合、通信装置9の長手方向は、カーカス本体部6Aのコード延在方向及びカーカス折返し部6Bのコード延在方向の両方に対して傾斜していてもよい。これにより、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられ、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bがタイヤ周方向に撓んだ際に、通信装置9を折り曲げる力が通信装置9に加わりにくくなる。
【0044】
通信装置9が、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bの両方にタイヤ幅方向外側を覆われる位置に埋設される場合、通信装置9の長手方向は、カーカス本体部6Aのコード延在方向に対して傾斜していてもよい。これにより、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられ、カーカス本体部6Aがタイヤ周方向に撓んだ際に、通信装置9を折り曲げる力が通信装置9に加わりにくくなる。
【0045】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係るタイヤ1について、図6図7及び図8を参照して説明する。図6は、本発明の第2実施形態におけるタイヤ1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向における部分断面図である。図7は、図6に示されるカーカス6の一例の、部分斜視図である。図8は、図7に示されるカーカス6をタイヤ幅方外側からの視点で示した概略図である。図6において、タイヤ1は、タイヤ1を適用リムであるホイールのリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。なお、図7及び図8は、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bのそれぞれを構成するコードの延在方向を模式的に示している。図7及び図8は、説明のため、複数のコードのうちの一部(4本のコード)を示すものであり、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bのそれぞれを構成するコードの数を限定するものではない。
【0046】
図6に示されるように、第2実施形態では、カーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eの位置が、第1実施形態と異なっている。以下に、第1実施形態と異なる点を中心に第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0047】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、タイヤ1のサイドウォール部3に、通信装置9が埋設されている。より具体的には、通信装置9は、カーカス6のカーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設されている。また、図7及び図8に示されるように、第1実施形態と同様に、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜している。
【0048】
再び図6を参照すると、第2実施形態では、カーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eが、ベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向内側に位置している。すなわち、カーカス6では、エンベロープ構造が採用されている。本実施形態では、カーカス折返し部6Bの端部6Eは、カーカス本体部6Aよりもタイヤ径方向外側に位置しており、ベルト7よりもタイヤ径方向内側に位置している。このように、サイドウォール部3全体にカーカス折返し部6Bが延在していることで、サイドウォール部3の途中でカーカス折返し部6Bが終端している構成に比べて、サイドウォール部3の剛性が高くなる。このため、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が生じにくくなる。そして、カーカス折返し部6Bが長くなることで、タイヤ1に加えられた荷重のうち、カーカス折返し部6Bがタイヤ周方向に撓むことで支持可能な荷重の量が増え、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が更に抑制され得る。
【0049】
本実施形態では、通信装置9は、基準状態において、サイドウォール部3のタイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。かかる構成によれば、通信装置9の埋設位置の外表面に縁石又は小石等の障害物がぶつかりにくくなり、通信装置9が故障する蓋然性を低下させることができる。一方で、通信装置9は、基準状態において、サイドウォール部3のタイヤ最大幅Wの位置よりもタイヤ径方向外側に配置されていてもよい。かかる構成によれば、路面など、タイヤ1よりもタイヤ径方向外側に位置する電子機器と通信装置9が通信する場合に、タイヤ1の他の部分が通信装置9の通信を妨げにくくなる。
【0050】
第1実施形態と同様に、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス本体部6Aのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜していてもよく、或いはタイヤ径方向と略平行とされていてもよい。
【0051】
以上述べたように、本発明の各実施形態に係るタイヤ1は、一対のビードコア5間をトロイダル状に延在するカーカス本体部6Aと、カーカス本体部6Aから延び、ビードコア5の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されているカーカス折返し部6Bとからなるカーカス6と、カーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設された通信装置9と、を備える、タイヤ1であって、タイヤ1を適用リムであるリムRに組付け、規定内圧を充填し、無負荷とした基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜している。かかる構成によれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス折返し部6Bを構成するコードがタイヤ周方向に撓むことで、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を抑制することができる。そのため、タイヤ1のサイドウォール部3に埋設された通信装置9にひずみが生じにくく、通信装置9が損傷しにくくなる。したがって、タイヤ1に設けられた通信装置9の耐久性が向上する。
【0052】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1では、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、通信装置9の長手方向は、カーカス折返し部6Bのコード延在方向に対して傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられ、カーカス折返し部6Bがタイヤ周方向に撓んだ際に、通信装置9を折り曲げる力が通信装置9に加わりにくくなる。このため、カーカス折返し部6Bのタイヤ幅方向外側に埋設された通信装置9が更に損傷しにくくなる。
【0053】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1では、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス本体部6Aのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して傾斜しており、カーカス本体部6Aのコード延在方向とカーカス折返し部6Bのコード延在方向とは、タイヤ径方向を挟んで傾斜が反転していることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、カーカス本体部6A及びカーカス折返し部6Bがタイヤ周方向に撓むことで、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を更に抑制することができる。そのため、タイヤ1のサイドウォール部3に埋設された通信装置9にひずみが生じにくく、通信装置9が更に損傷しにくくなる。
【0054】
本発明の各実施形態に係るタイヤ1では、基準状態におけるタイヤ幅方向視で、カーカス折返し部6Bのコード延在方向は、タイヤ径方向に対して3度から10度の範囲で傾斜していることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ1の重量及び生産コストの増加を抑制しつつ、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形を抑制することができる。
【0055】
本発明の第1実施形態に係るタイヤ1は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルト7を更に備え、基準状態において、カーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eは、ベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向外側に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、サイドウォール部3において、カーカス折返し部6Bが配置されていない部分がより撓みやすくなり、カーカス折返し部6Bが配置されている部分がより撓みにくくなる。このため、タイヤ1のサイドウォール部3のカーカス折返し部6Bが配置されている部分に埋設された通信装置9が損傷しにくくなる。
【0056】
本発明の第1実施形態に係るタイヤ1では、基準状態において、カーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eは、タイヤ最大幅の位置の近傍に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、通信装置9が損傷する蓋然性を抑えたまま、通信装置9を配置する場所の選択肢の幅を広げることができる。
【0057】
本発明の第2実施形態に係るタイヤ1は、カーカス6のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されたベルト7を更に備え、基準状態において、カーカス折返し部6Bのタイヤ径方向外側の端部6Eは、ベルト7のタイヤ幅方向外側の端部7Eよりもタイヤ幅方向内側に位置していることが好ましい。かかる構成によれば、サイドウォール部3の途中でカーカス折返し部6Bが終端している構成に比べてサイドウォール部3の剛性が高くなり、タイヤ径方向の荷重がタイヤ1に加えられた場合に、サイドウォール部3におけるタイヤ幅方向外側への面外変形が生じにくくなる。このため、タイヤ1のサイドウォール部3に埋設された通信装置9が損傷しにくくなる。
【0058】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:タイヤ、 2:ビード部、 3:サイドウォール部、 3A:(タイヤ径方向)内側部分、 3B:(タイヤ径方向)外側部分、 4:トレッド部、 5:ビードコア、 6:カーカス、 6A:カーカス本体部、 6B:カーカス折返し部、 6E:カーカスのタイヤ幅方向外側の端部、 7:ベルト、 7E:ベルトのタイヤ幅方向外側の端部、 8:ビードフィラー、 9:通信装置、 9A:ICチップ、 9B:アンテナ、 R:リム、 CL:タイヤ赤道面、 W:タイヤ最大幅、 P:カーカスの折り返し位置、 θ1:傾き、 θ2:傾き
図1
図2
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図6
図7
図8